2017年07月26日
ロシアの地対空・艦対空ミサイル「9M96」系列の考察。コールドランチで発射されるミサイルでメインロケットモーター点火前に姿勢を転換するには通常サイドスラスターが用いられる。しかし9M96はサイドスラスターが中央の重心付近にあり、終末誘導時のスライドする動きによる位置修正用であるために姿勢転換には使えない。

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実際の発射を見ると、中央のサイドスラスターではなく前方の部分から黒いガス噴射を継続していることが分かる。



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↓9M96の発射を真下から見た映像。90度倒した映像で、画面左側が甲板。



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ガスの噴き出しがこの2方向に見える。このガス噴射と前方操舵翼で発射直後の姿勢転換を実施している可能性。
22時40分 | 固定リンク | Comment (34) | 軍事 |

2017年4月23日、沖縄県うるま市・米軍施設ホワイトビーチで開催された「2017ホワイトビーチフェスティバル(2017 White Beach Festival)」に登場したアメリカ陸軍のミサイル発射機。PAC-3MSE用の新型ランチャーと推定される。






PAC-3MSEは従来型PAC-3より直径が太くなっていて、ランチャーも新型が用意されている。初めて確認された形状のランチャーの為、当初はMMLかと誤認されたが直ぐに訂正。ただしアメリカ軍がホワイトビーチでの展示の際に何も説明していなかった上に、現在に至るまでホワイトビーチでしか確認されていないランチャーである為、PAC-3MSEのランチャーであるかは未だに推定の段階。アメリカ本国でも公開されていない。

PAC-2・・・一つのランチャーに最大4発。
PAC-3・・・一つのランチャーに最大16発。
PAC-3MSE・・・一つのランチャーに最大12発。
22時35分 | 固定リンク | Comment (8) | ミサイル防衛 |
2017年04月16日
4月15日の北朝鮮軍事パレードに登場した新兵器に付いて。

今回初登場の新兵器。装軌型の自走発射機に搭載された地対艦ミサイル。ソ連が開発した亜音速対艦ミサイルKh-35の北朝鮮版を4連装ランチャーに収めてると推定される。北朝鮮はシルクワーム系の地対艦ミサイルも装軌型の自走発射機に搭載しており、上陸直前の敵を射程に収めるべく沿岸部で移動を行い待ち構える必要上、野外機動力を重視している。

今回初登場の新兵器。スカッドないしノドンの改良型? ミサイル先端側の翼は1点のピボットで装着されており、操舵翼であることが分かる。終末誘導能力を持つと思われる。対地型なのか対艦型なのかは不明。対艦型の場合は短距離弾道ミサイルであると思われる。(対艦用で中距離弾道ミサイルでは索敵も誘導も困難になる為)

パレードでは初登場の北極星1号SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)。モックアップなのかそれともカバーで覆われているのか、ノズル部分は機密扱いとして隠されている。

パレードでは初登場の北極星2号(KN-15)。SLBMの北極星1号(KN-11)を地上発射型に改良した中距離弾道ミサイル。コールドランチ式の固体燃料型弾道ミサイルで、ミサイルはキャニスターの中に収納されている。

KN-08長距離弾道ミサイル。従来は16輪TELに搭載されていたが、今回のパレードはムスダン中距離弾道ミサイル用の12輪TELに搭載されている(そのため、ミサイルの先端が車両より飛び出ている)。タイヤカバーはホットランチ時の膨大な熱からタイヤを守るためで、ムスダン発射試験の際にも装着されていた実用的なもの。

今回初登場の新型ICBM。16輪重野戦機動トラック型TELとトレーラー型TELの2種類。コールドランチの固体燃料型と推定される。

韓国の最新鋭複合型ライフルK11にそっくりなライフルを持つ北朝鮮軍特殊部隊の兵士。複合型ライフルとはライフルとグレネードランチャーを一体化したコンセプトの銃で、グレネードは小型軽量のものを使う代わりに高度なスマート時限信管を用いて最適な位置で起爆させる。
21時56分 | 固定リンク | Comment (23) | 軍事 |
2017年04月15日
4月15日、北朝鮮で故金日成主席生誕105年記念式典が行われ、軍事パレードで新型ICBMが登場しました。驚くべきことにキャニスターに収められたICBMは発射方式がコールドランチ式であることが確定し、固体燃料式である可能性が高いと言えます。これまで知られてきたKN-08やKN-14といったホットランチ式のICBMよりも、北朝鮮のミサイル技術が進化を続けている事を見せ付けました。

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新型ICBM(重野戦機動トラック式TEL)

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新型ICBM(トレーラー牽引式TEL)

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KN-08長距離弾道ミサイル(TELが全長の短いムスダン用のもの?)

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新型弾道ミサイル(正体不明、短距離ないし中距離?)

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ムスダン中距離弾道ミサイル

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北極星2号(SLBM転用の地上発射型弾道ミサイル)

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北極星1号(SLBM、潜水艦発射弾道ミサイル)

関連:16輪の大型TEL車両に搭載された北朝鮮の新型長距離弾道ミサイル(2012年04月15日)
13時19分 | 固定リンク | Comment (30) | 軍事 |
2016年11月17日
ロシア製の爆撃照準装置SVP-24(СВП-24)は「精密誘導爆弾並みの精度で無誘導爆弾を使用できる」とされていますが、これは明らかに事実ではありません。喧伝されるCEP数mという数字は宣伝目的の誇大広告と受け取るべきでしょう。

というのも、母機側の照準装置がいくら正確に機能したとしても、いざ爆弾投下時に母機の姿勢が乱れると誤差が生じてしまいます。投下後に風向きや風量が変化しても誤差が生じます。無誘導の自由落下爆弾では投下後に修正が効かないのです。投下高度が高ければ高いほど大きく外れてしまう結果になります。

これが精密誘導爆弾ならば操舵翼を動かして修正が効くので、母機の姿勢が乱れたり風向きや風量が変化しようと問題が無く、投下高度が高ければ高いほど修正する余裕が生まれて命中精度が高まります。無誘導の自由落下爆弾と決定的に違う部分がこれです。仮に「正確な照準装置で無誘導爆弾を落とす」場合と「正確な精密誘導爆弾を大雑把に落とす」場合を比べた場合、精密誘導爆弾の方は最後まで誘導を続けられるため、命中精度はこちらの方が上になります。機械の構造的な特性の問題で、この差は基本的に埋まりません。

つまり「精密誘導爆弾並みの精度で無誘導爆弾を使用できる」という謳い文句は有り得ないのです。風の変化が無く母機の姿勢も乱れない理想的な状態なら精度を近付けることは可能であっても、戦場で使う以上は望むべくもありません。風は変化し、対空砲火は撃ち上がり、過酷な状況が待ち受けています。

「ロケットと大砲ロシア科学アカデミー」会員で「地政学問題アカデミー」創設者の一人、コンスタンチン・シヴコフ軍事学博士はVPKニュースで以下のような見解を述べています。

Основная часть целей в Сирии поражается неуправляемым оружием, применяемым с высокой точностью
С учетом всех названных факторов можно оценить точность боевого применения свободно падающих бомб с использованием СВП-24 показателем в 20–25 метров.

要点だけ抜き出して紹介しますが、様々な要因から戦闘時におけるSVP-24照準装置を用いた無誘導爆弾の命中精度は20〜25mと推定できる、としています。シヴコフ博士は開発者が喧伝している精密誘導爆弾並みの数mという数字を実戦では達成不可能とみています。

もともとSVP-24はSu-24攻撃機の改修計画で精密誘導爆弾の運用能力を持たせたいがコストが掛かるので妥協案として選ばれた安上がりな改修です。安い妥協案である以上は高価なシステムと同等の性能を発揮することができないのは明白なことですし、既に説明した通り機械の構造的な特性の問題で、母機側の照準装置がいくら精度が良かろうと爆弾投下以降は誤差を修正できない無誘導爆弾は、どうしても精密誘導爆弾の命中精度よりも劣ってしまうことは仕方が無い事なのです。


Видео ударов палубных истребителей Су-33 по позициям боевиков в Сирии

これはSVP-24照準装置を搭載したSu-33艦上戦闘機がシリアで爆撃する様子を無人偵察機で撮影した動画ですが、大きな工場らしき建造物を狙った爆撃は直撃できず至近弾となっています。工場の中央を狙ったと仮定した場合、数十mは外れているでしょう。

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17時00分 | 固定リンク | Comment (61) | 軍事 |