中国は仏製武器で埋め尽くされる:大石英司の代替空港
※ 中国軍、空母建設に本腰か ロシアから着艦制動装置購入
http://www.asahi.com/international/update/0727/TKY200707270428.html
これは失敗します。何しろロシアが持っているというカタパルトの技術自体が、必ずしもバトルプルーフされたものじゃないですから。どの程度使えるかは、誰にも解らない。結局試行錯誤の挙げ句に失敗した頃、フランス人が揉み手で近づいて、空母の技術やあれこれとラファールをセットで売りつけるんですよ。
だって中国は水上艦用原子力エンジンの技術だって全く持ってないんですよ。原潜だってロシアからのお下がり技術でまともに動いていない。この後、半世紀使う空母を通常動力でやるはずもないから、どこかで原子力推進ということになる。必ずフランスと組むことになります。で、その姿をアメリカが指をくわえてみているはずもないから、どこかで対中武器禁輸も解除されることになるでしょう。
大石英司さんのこの記事からは、総じてロシア技術に対する根拠無き不信感と、フランス技術に対する盲目的な安心感が見て取れます。それでは例を挙げます。
・まず「これは失敗します」と断言している事。
・バトルプルーフどころか存在しないフランスの空母技術を採用する筈だと主張している事。
・「原潜だってロシアからのお下がり技術でまともに動いていない」とロシア技術を低く見ていること。
・しかも漢級原潜建造にあたってはロシアから技術指導を受けた訳ではないので、そもそもの認識が間違いである事。
・フランスの水上艦用原子力エンジンの技術は原潜用の転用に過ぎないのに、特別な技術か何かと思い込んだ挙句、中国はこれを採用する筈だと主張している事。
・ロシアは水上艦にも潜水艦にも原子力機関を採用している実績があるのに無視されている事。
コメント欄に先行して書き込んでいるシア・クァンファ氏がロシアの空母技術(サキ飛行場の蒸気カタパルト施設、及び蒸気カタパルトを搭載予定だった未完成空母ウリヤノフスク級)や原潜原子炉技術を中心にツッコミを入れているので、私はフランスの空母技術と原子炉技術を中心にツッコミをコメント欄に入れています。
実は、フランスは独自の空母技術を持っていません。現行の原子力空母シャルル・ド・ゴールの蒸気カタパルトと着艦制動装置はアメリカ製で、先代のクレマンソー級空母の蒸気カタパルトはイギリス製でした。持ってない以上出せる筈が無いので、この時点で大石さんの記事は意味を失います。
また、中国の漢級原潜は、中国とソビエトが断交状態に陥った中で建造が進められており、当然、ソビエトからの技術指導はありません。つまり「ロシアからのお下がり技術」ではないのです。原子力ターボエレクトリックという形式の機関の原潜を現在保有している国は中国とフランスだけです。
そして大石さんの記事で不思議なのは「空母は原子力でなければならない」としている点です。アメリカ海軍のキティホーク級は大型空母ですが通常動力(蒸気タービン)で半世紀近く稼動していますし、イギリス海軍の次期空母CVFも6万トンを超える大型艦ですが、ガスタービン駆動の統合電気推進で原子力ではありません。別に原子力でなくても空母は動きます。
其処に連動しておかしな部分なのですが、フランスの水上艦用原子力エンジンの技術は何も特別なものじゃありません。空母シャルル・ド・ゴールの原子力機関は、戦略型原子力潜水艦ル・トリオンファン級のPWR-K15加圧水型原子炉を2基、搭載しています。つまり潜水艦用の転用であり、同じ様に中国も潜水艦用の原子炉を転用すれば水上艦を動かせるわけです。一体何故、水上艦の原子力機関は潜水艦とは別物だ、と思い込んだのでしょうか? ちょっと理解できません。
しかもこの原子炉は曰くつきで、ド・ゴール建造中に地上試験を行っていた同型の原子炉の原子炉容器に亀裂が入り、原子炉の大幅な改修を余儀なくされド・ゴール本体も建造を中断して大改修を施し、建造計画の大幅な遅延を招いています。ド・ゴールは就役後も原子炉要員の被曝量が年間許容量の5倍と報道されており、フランスが設計した唯一の原子力水上艦ですが、フランス国内でも失敗作であるという批判が高く、フランスは2隻目の空母計画PA2でイギリスのCVF計画に相乗りしてCVFのCTOL機運用型を採用する予定です。つまりフランスは原子力空母を新たに保有しないと決めました。
フランスの原子力技術は低いんです。それは空母に限った話ではなく・・・
>総じてロシア技術に対する根拠無き不信感と
潜水艦の原子炉で事故をおこしたのはロシアだけじゃないの?
一度も海鮮をしたことのない国家の船舶技術を信用しろといわれてもねえ。
投稿 | 2007.07.31 07:20
>潜水艦の原子炉で事故をおこしたのはロシアだけじゃないの?
1994年3月30日、ツーロン沖でフランスの攻撃型原潜リュビが蒸気爆発を起こして乗組員10人が死亡しています。これが西側の原潜で唯一、原子炉事故を起こした艦です。フランスの原子炉技術力の低さを実証した艦だと言えます。
・・・それにしても見事な墓穴を掘りましたね。
投稿 JSF | 2007.07.31 20:26
以上のように、大石さんの記事は根本から間違っており、中国がフランス式の大型空母をラファールとセットで買う、といった事態は有り得ません。ラファールも高いですから、購入できるとは思えないです。値段が高価というだけなら商談さえ折り合いが付けば可能性はありますが、空母技術についてはフランスが独自技術を持っていない以上、出せる筈がありません。もしアメリカ製の蒸気カタパルトを中国に横流しなんてしたら、フランスはアメリカの手で潰されてしまうでしょう。出来る筈がありません。リスクを犯すだけのメリットが無いのですから。