2009年03月02日
フレシェット弾という武器があります。英語で書くと「flechette」で、矢弾の事を指します。1発単体で発射する場合もあれば、1発の弾の中に多数を詰め込んでいるものもあり、発射形態もライフル弾や散弾銃のシェル、大砲の砲弾や航空爆弾など様々な方式があります。1発単体で発射するタイプは貫通力を重視したもので、1発の砲弾に多数のフレシェット弾を詰め込んだタイプは、榴散弾(弾子は球形)の一種の変化形として扱われます。フレシェット1発あたりを大型化すれば装甲目標にも通用しますし、小型のものは対人専用になります。

戦車砲弾の対装甲用APFSDSも矢型弾で、広義の意味ではフレシェット弾の一種ですが、一般的にはフレシェット弾とは呼びません。航空爆弾やライフル弾で使用されるものは一時期出現しましたが今は廃れており、現在使われているフレシェット弾は散弾タイプで、戦車砲の砲弾、航空機用ロケット弾の弾頭、散弾銃のシェルで存在しています。


ガザ攻撃 『フレシェット弾使用』 人権団体、戦争犯罪と非難:東京新聞
【ロンドン=松井学】国際人権団体、アムネスティ・インターナショナルは二十三日、イスラエル軍のパレスチナ自治区ガザへの攻撃で非人道的な兵器と指摘される「白リン弾」や「フレシェット弾」を使っていたとする報告書を公表した。アムネスティは、一般住民が多い市街地での使用は「戦争犯罪」だと非難、国連安全保障理事会に速やかな調査を求めている。

報告は、イスラエル軍と、イスラム原理主義組織ハマスのいずれもが、外国製の兵器で市街地を攻撃したことを強く批判し、国連が兵器の禁輸措置を双方に課すことも求めた。

アムネスティは、イスラエル軍は白リン弾のほか、砲弾がさく裂する際に無数のクギ状の矢が飛び出す対人殺傷兵器フレシェット弾を使ったと報告。兵器の大半は米国から輸入されたと結論づけた。

イスラエル軍は先月、白リン弾の使用を認め、独自に調査を行うと発表しているが、戦争犯罪との批判には「兵器は国際法に従って使用している」と反論している。


ここでアムネスティが非難しているフレシェット弾は、戦車砲で発射するタイプの散弾型フレシェット砲弾を指します。砲弾の中に多数のフレシェット弾子が詰まっており、発射後に時限信管を用いて空中炸裂し、フレシェット弾子を撒き散らす対人兵器です。

アムネスティはフレシェット弾を非人道兵器と非難していますが、国際法に違反しない兵器である事も確かで、それはアムネスティ自身も認めています。その上で残虐兵器だと非難しているのですが・・・実はアムネスティを含め幾つかの団体はフレシェット弾の事を何年も前から、私の知る限りでは10年以上前から、恐らくはもっと以前から非難しているのですが、地雷廃絶運動やクラスター爆弾廃絶運動のように国際世論を喚起する事が全く出来ず、無視されているのが現状です。

どうして無視されているのかと言うと、フレシェット弾は大して効果的では無く、使い難くて、どうせ廃れゆく砲弾であるからです。大砲用としては一時期生産されましたが、もう既に生産されておらず、今ある砲弾の在庫が尽きれば消えて無くなります。簡単に言うと105mm戦車砲用フレシェット弾は存在しますが、120mm戦車砲用フレシェット弾は存在しません。105mm戦車砲は第二世代戦車で一般的な戦車砲で、現行の第三世代戦車は120mm戦車砲を搭載しています。つまりフレシェット弾は120mm戦車砲用には新たに開発されず、対人用にはフレシェット弾以外の新型砲弾を各国が開発中で、一部は既に実用化済みです。

アムネスティは報告書の中で、フレシェット弾は120mm砲から発射されるとしていますが、このサイズのものは存在しません。この事については現役軍事ライターの某氏とも話をしましたが、「120mmのフレシェット弾は聞いたことがないですね」と、アムネスティの報告に疑問を呈されていました。

(PDF) Fuelling conflict: Foreign arms supplies to Israel/Gaza | Amnesty International

今回のアムネスティ報告書のPDFファイルにはフレシェット弾について「120mm shells」と明記されてしまっています。ですが検索してみれば分かりますが、フレシェット弾の戦車砲弾タイプは105mm砲弾しか見当たらない事がすぐに分かる筈です。細かいようですが、この事は重大な意味を持ちます。既に述べたとおり、120mmタイプが存在しないという事は、戦車砲弾用には新たに生産されておらず、既に生産が停止済みの種類の砲弾であるという事を意味しているからです。

そしてこのアムネスティの報告書のフレシェット弾に関する部分の最後には、このように書かれています。

「The weapon is not regarded as reliable or effective and gunners have a difficult time in aiming this properly."」

フレシェット弾は有効な兵器とは見なされておらず、照準設定に時間が掛かって面倒だ、と記載されているのです。これは時限信管の調整が面倒で使い難い兵器だと見なされているのです。

威力面についても問題があります。戦車砲用の105mmフレシェット弾M494 APERS-Tは、細長い矢弾は空気抵抗が小さく貫通力が高い事を利用し、弾子1発あたりを非常に軽く設定し、代わりに沢山の数を詰め込んで弾子密度を上げようとしました。しかし1発が僅か0.8グラムしかないそれはあまりにも軽すぎて、少し距離を飛べば威力が激減し、ちょっとした遮蔽物で防がれてしまい、完全に開けた野外でしかマトモに運用できない代物となっています。問題無く抜けるとしたら木の葉くらいで、木の幹や枝に当たれば威力を失ってしまいます。

また効果範囲は起爆後の弾子の最大有効射程が約300m、これが円錐状に広がって、円錐状の底部が約100mの範囲で広がります。つまり小さな角度で飛散していくわけで、これは塹壕や蛸壺に隠れた敵兵には全く効果が無いことを意味します。市街戦で言うなら建造物の陰に隠れた場合でも同じです。

この「飛散範囲の角度が小さい」という現象は、榴散弾でも見られますが、尾部の羽根で姿勢を安定させるフレシェット弾はより飛散角度が小さく、結果として曲射砲である榴弾砲にはフレシェット弾は殆ど普及しなかった理由(105mm榴弾砲用M546 APERS-Tが有るぐらい)でもあります。榴散弾は一時期に榴弾砲で広く使用されていましたが、ある時期を境に急速に廃れて、榴弾が全盛の時代が到来します。それは野戦で塹壕が活用され始めた時期です。榴散弾は普仏戦争のあたりまでは野戦砲の主力砲弾として使用されていました。この時の戦争は歩兵が隊列を組んで前進し、陣地も暴露状態であった為に、散弾効果のみで通用したのですが、日露戦争で強固な要塞を攻略するには大口径榴弾の直撃が必要である事が分かり、そして第一次世界大戦で塹壕線が築かれると、榴弾の直撃、あるいは榴弾の破片が効果的であると判明し、榴散弾は廃れていきます。

塹壕に隠れた敵を攻撃するには、当然ですが真上からの攻撃が必要になります。榴弾を直撃させれば問答無用で破壊できますが、それでは命中率が悪いので、地表炸裂は上部に蓋がある強固な陣地に使用し、無蓋の塹壕については砲弾の空中炸裂によって広範囲に真下に打撃を与えます。これを曳下射撃と言うのですが、これには榴散弾よりも榴弾の方が向いていました。榴散弾の内蔵炸薬は弾子を飛び散らせる為のもので量が少なく、弾殻を大きく破壊する力には欠けています。弾子を飛び散らせる速度も遅く、この為に弾子は砲弾自体の終末速度が大きく影響し、弾子の飛散角度は前方寄りの小さな角度に限定されますが、榴弾は大量の炸薬によって弾殻そのものを爆散させて破片とします。静止状態ならば爆風破片は球形状に広がっていきますが(正確には弾殻の薄い側面方向に爆風が伸びる為に素直な球形状とはならない)、破片の飛散速度は速く、これに砲弾自体の終末速度が加わって、飛散破片は大きな角度の範囲で広がっていきます。

つまり破片が飛散する角度の大きな榴弾は、真下の方向に打撃を与えやすく、弾子の飛散角度の小さな榴散弾は、塹壕攻撃に向いていませんでした。榴散弾で効果的な曳下射撃を行う為には、起爆前の砲弾自体の突入角度を大きくするしかありません。大角度で砲弾を発射すれば大角度で落下していきます。しかしあまり大きな角度で砲弾を発射すれば射程が短くなってしまいますし、前述のように榴散弾の弾子散布パターンは小さな角度の円錐状なので、砲弾自体を急な対地角度で使用する事は制圧面積の大幅な減少を招きます。90度の角度で真円状、角度が浅くなるほど大きな楕円形状で制圧面積が増大していきます。そもそも榴散弾とは浅い着弾角度で使用すべき砲弾で有り、曲射砲には向いていない種類の砲弾だったのです。




この動画はPhunで曳下射撃を表しています。UP主さんは「どちらかというと榴霰弾かな」と説明されていますが、実際の榴散弾よりはかなり大きな角度の弾子散布パターンです。

散弾タイプのフレシェット弾は、榴散弾と基本的な概念は一緒です。弾子の形状を工夫しているのが違いで、本質的な用途には変わりがありません。そして既に述べたとおり、戦場では榴散弾は廃れ、同様に散弾型フレシェット弾も廃れつつあります。戦車砲弾用はもう消えていく運命にあり、航空機用ロケット弾の一部や、警官が使う散弾銃(ボディアーマー貫通用フレシェット弾)などの一部の用途で残っていくばかりとなっています。

しかし冷戦終結後の現代では、大規模機甲師団の激突よりも対テロ戦闘、治安維持で戦車の対人戦闘が重要視され、新たな戦車砲弾用の対人攻撃弾が開発されています。フレシェット弾は効果的では無いと判明したため、120mm戦車砲弾用に新たに開発されたM1028キャニスター弾は、対人散弾へと回帰しました。時限信管は組み込まず、砲口から飛び出た直後から飛散し始めるショットガンタイプの砲弾で、1発あたり約10グラムのタングステン製ボール弾を約1100発内蔵しています。




ただしこの砲弾は対テロ戦争を意識したものというよりは、朝鮮戦争で中国軍の取った人海戦術を意識したもので、1994年の朝鮮半島核危機の数年後に在韓米軍方面から開発要求が出されています。後に105mm戦車砲弾用に同種のM1040キャニスター弾が開発され、ストライカー装甲車の機動砲タイプに搭載され、イラクに送り込まれました。ライフル弾よりも重いタングステン製ボール弾子の威力は大きく、近距離ならばブロック塀も破壊できる打撃力を有しています。また信管の調整が必要無く、接近戦での即応性にも優れています。イスラエルはM1028とM1040の両方を所有しており、更にキャニスター弾子を非致死性スタン弾に置き換えた低致死性砲弾を開発中です。

またフランスはノルウェーと共同開発で戦車砲弾用にHE弾(通常榴弾)を開発、ルクレール戦車に装備しています。西側陣営では、HEAT弾が出現してから戦車砲弾用にHE弾は見られなくなった時期がありましたが、再び脚光を浴びて復活しつつあります。

ドイツやアメリカでは空中炸裂させる際の時限信管へのデータ入力を瞬時に行える砲弾を開発しています。レーザー測遠器のデータから目標との距離を算出し、時限信管の起爆タイミングの数値を瞬時に計算し、砲弾の信管へ自動で入力を行い、即応性を高めています。この砲弾は空中炸裂だけでなく、着発炸裂、遅延炸裂などの数種類の起爆モードを選べる多機能弾として開発されています。アメリカで開発中の物は120mm戦車砲弾の「XM1069 LOS-MP(Line of Sight Multi-Purpose)」と呼ばれる多目的榴弾で、前述のM1028キャニスター弾が果たす役割も取り込んでおり、このLOS-MP弾が完成すればM1028キャニスター弾は必要無くなる予定です。

そしてイスラエルでは戦車砲弾用のクラスター砲弾を開発しています。APAM(Anti-Personnel/Anti-Materiel)は6つの子弾を内蔵しており、空中炸裂、着発炸裂、遅延炸裂の三通りの起爆モードを選べ、着発と遅延では子弾を撒かずにそのまま通常榴弾として機能します。最初に開発を終えた105mmタイプでは時限信管の設定は手動入力でしたが、開発中の120mmタイプでは自動入力になっています。

このように、対人用には新たな砲弾が開発されており、戦車砲弾用フレシェット弾は時代遅れの遺物と化しつつあります。フレシェット弾の時限信管も全自動入力にすればもう少し使い勝手が良くなりそうですが、それを行う動きもありません。新しい技術を得て榴弾と散弾が復活し、フレシェット弾は消え去りつつあります。在庫のフレシェット弾は古いもので、もう暫くすれば使用できなくなります。

その時、アムネスティを始め各団体は、新たな種類の砲弾を非難するのでしょう。クラスター砲弾のAPAMあたりは狙われそうですし、キャニスター弾も難癖を付けられる事になるでしょう。APAMもキャニスター弾も既に実戦に投入済みですが、彼らはまだ気付いていません。

一つ、彼らに問いたいのですが、通常榴弾は問題にせずに何か特殊そうな砲弾ばかり問題視する事には何か意味があるのですか? 私には、通常榴弾の進化形であるXM1069LOS-MP弾による、FCSと連動した時限信管全自動数値入力によるエアバースト砲撃の方が、最も効果的な対人砲撃だと思えます。APAMはクラスターとはいっても子弾は僅か6発に過ぎず、単弾頭との差はあまりありません。アメリカ軍はLOS-MP弾が完成すればキャニスター弾はもう生産しないでしょうから、未来の戦場で使われるであろう対人攻撃用の戦車用砲弾は、これが主流になる事はほぼ間違いないでしょう。その時、榴弾を問題視してこなかった人達は、基本的な構造が榴弾であるLOS-MP弾をどう認識するのでしょうか?

おそるべき残虐兵器フレシェット:アムネスティ・スタッフブログ

非難対象の兵器の実際の能力を無視あるいは無理やり誇張して残虐兵器とレッテルを貼るのは簡単ですが、そんなことばかりしていると、そういった手法では非難できない新兵器(それも殺傷効果が高い)が出て来た場合、何も言えなくなってしまいます。

兵器そのものが違法なのでは無く、使用手段が違法なのだと言うのであれば、兵器単体を残虐兵器と糾弾するやり方はどうかと思います。それが本当に残虐であるなら良いのですが、何でもかんでも安易に残虐兵器呼ばわりする行為は止めて、慎重に対象を検証して欲しいものです。

例えば反戦平和団体が良く引用するフレシェット弾の解説図があるのですが、大きな間違いがあります。


ガーディアンによるフレシェット弾解説図

BBCによるフレシェット弾解説図


上の二つの画像は、前者が英紙ガーディアンの記事、後者が英BBCニュースの記事からです。二つとも良く反戦平和団体のサイトで引用されていますが、明確な間違いが幾つも散見されます。まずイスラエル軍が使用しているフレシェット弾は戦車砲用のM494であり、榴弾砲用のM546ではありません。またM494のフレシェット弾子は1発0.8グラムで5000個内蔵、M546の弾子は1発0.5グラムで8000個内蔵です。ガーディアンもBBCもM546を解説している時点で間違いですし、M546の弾子を5000発としたBBCはM546の解説としても間違っています。両社ともM494とM546を混同しています。二つの図を並べて紹介しているサイトも多いのですが、M546を解説しているのに片方が8000発、片方が5000発という時点でおかしいと思わなかったのでしょうか。ガーディアンはFASの「M546 APERS-T 105-mm」の記事を参考にしているようですが、解釈を間違えています。FASのM546の記事にある左側の解説図には「105mm HOWITZER」と明記されています。「HOWITZER」、ハウザー(ホイツァー)とは、榴弾砲の事を意味します。イスラエル軍が使用した戦車砲弾用とは別物なんです。

またBBCとガーディアンの二つの図は共通の間違いがあります。レシェフ社のオメガM127電子時限信管の位置説明がおかしいです。M127信管は弾頭部にあり、弾底を信管としている両図は間違いです。弾底部のその部分は、曳光剤が詰まっている部分です。良く考えてみれば分かる事です。APERS-TのTとはトレーサー(Tracer)、つまり曳光剤の事を指すのですから。


オメガ127


レシェフ社の公式サイトから「Reshef - Products - OMEGA M127 Electronic Time Distance」を見れば分かりますがこれは弾頭に装着する信管です。当たり前の話ですがタイマーを調整する時にはこの位置に無いと無理です。弾底部はその後ろに薬莢が装着されているのですから、どうやって弄るのですか?(レシェフ社のサイトも、M127をちゃんとTank fuseの項目に入れておきながらRocket fuseと間違った記述をしているウッカリした個所もありますが、全体の説明で間違いは無いです)

イギリスの著名メディアが揃って間違えているというのも凄い話です。これを鵜呑みにしてしまった反戦平和団体を責めるのは酷かもしれませんが、今後は注意して資料を集めて下さい。とはいえ私がこの件に気付いたのも、今回の記事を書く途中で前述の現役軍事ライター氏と情報交換している最中にようやくという有様で、「そうだ信管の生産メーカーのサイトを見ればハッキリするよ」と思い立つに至るまでは結構な時間が掛かりました。しかしマスコミならそのくらいの仕事はしてほしいです。そうでないと大勢の人が勘違いしてしまうのですから。


06時00分 | 固定リンク | Comment (109) | 平和 |

2009年03月05日
国際人権擁護団体アムネスティ・インターナショナルは、国連との協議資格を持つ有力なNGO(非政府組織)です。その為に発言や報告書にはそれなりに重みがある筈なのですが、今回のガザ紛争に関する報告書を読み進めると、幾つかのおかしな記述が散見され、あまり良い仕事をしているようには見えません。

前回の記事「ガザで使用されたフレシェット弾について」でも指摘しましたが、アムネスティ報告書にはこの世に存在しない120mmフレシェット弾なるものが記載されてしまっています。ただこれについては105mmフレシェット弾との混同ですので、数値をうっかり間違えただけとイージーミスとして主張出来なくもないですが、一方でそういう言い訳が通用しない致命的な間違いも見付かっています。

(PDF) Fuelling conflict: Foreign arms supplies to Israel/Gaza | Amnesty International

PDFファイルの報告書9ページにある、照明弾に関する項目「Illuminating artillery shells」がこうなっています。



Amnesty International delegates encountered 155mm M485 A2 illuminating shells used by the IDF which had landed in built up residential areas in Gaza. These eject a phosphorus canister, which floats down under a parachute. At least three of these carrier shells were found which had landed in people’s homes. These shells are yellow and one had the following markings: TZ 1-81 155-M 485 A2. TZ is a known marking on Israeli ammunition.


アムネスティ報告書は、155mmM485A2照明弾の事をこう説明しています。

「These eject a phosphorus canister, which floats down under a parachute.」

「phosphorus = 燐」、つまりアムネスティは照明弾を白燐弾扱いしているのですが、間違っています。M485A2照明弾の反応薬剤は「sodium nitrate」 と「magnesium powder」、つまり硝酸ナトリウムとマグネシウム粉です。この組み合わせは現代で最も一般的な照明剤であり、M485A2は三個の子弾を内蔵し、それぞれが強烈な光を出しながらパラシュートによってゆっくりと降下し、周囲を照らし続けます。


照明弾

照明弾
00時45分 | 固定リンク | Comment (80) | 平和 |
2009年03月08日
これはちょっと苦笑するしかない勘違い。元記者のお爺ちゃん、旅行中に現役時代を思い出して張り切り過ぎです。微笑ましい記事なのかもしれないですけれど、何も悪い事をしていない自衛隊が悪者扱いされているのでちょっとツッコミを入れておかないといけませんね。


危ない!潜水艦と漁船が接舷:中国新聞 '09/2/17
桜島フェリーから見る潜水艦


鹿児島市沖の鹿児島湾で昨秋、海上自衛隊の潜水艦に接舷する漁船の写真を、広島市安佐北区の元中国新聞社写真部長千原忠二さん(70)が撮影していた。1月に潜水艦と漁船の接触事故が起こった同じ湾内だった。

撮影は、桜島へ旅客船で渡っていた11月7日。停泊する潜水艦の左側に接舷した漁船に、潜水艦の乗組員が乗り移る様子をとらえている。「危険な光景と思いシャッターを切った」と千原さん。

約2カ月後、約20キロ北東の霧島市沖で接触事故があったのを受け、「潜水艦と漁船が近距離で行き交う状況が恒常化していたのではないか」と本社に写真を提供した。


千原さんが撮影した、この「はるしお」型潜水艦の写真は、別に危険な光景というわけでは有りません。単に沖合い停泊している潜水艦に、渡船が接舷して物資や人員を輸送している様子を写しているだけです。

衝突した様子を撮影したならスクープですけど、単に接舷しているだけで何で危険な光景だと思い込んじゃったんだろう・・・地元の人に聞けばよいのに。桜島水道のあの位置には海上自衛隊の潜水艦が頻繁に投錨停泊していて、桜島フェリーからよく見かける光景に過ぎないんです。

2ヵ月後に別の潜水艦(おやしお)が鹿児島湾の奥(試験所がある)で海自側が試験警戒用にチャーターした漁船と接触事故を起こしたので、この写真も危険な様子だったに違いないと中国新聞本社も勘違いしちゃったんですね。仮にこの「はるしお」型の写真が接触事故だったとしても、投錨停泊中で動かない潜水艦側は何も悪くないですし、それ以前にそもそも事故ですらないわけです。接舷しているだけで危ないとか言われても、それは苦笑するしかないのですよ。
01時49分 | 固定リンク | Comment (76) | 報道 |
アムネスティを権威ある団体だと思い込み過ぎて、報告書の間違った記載を素直に受け入れられず、無理矢理なこじ付けで弁護する行為は、むしろアムネスティの恥を余計に晒す行為になってしまうでしょうに・・・


はてなブックマーク - 照明弾と白燐弾を混同したアムネスティ報告書 : 週刊オブイェクト
scopedog 白リン弾, 白燐弾, 誤読・誤訳 ”phosphorus”には、光を発する物質という意味もあるんだよ。別にリンに限定されるわけじゃない。”white phosphorus”とは書いてないから、わかりそうなもんだが。 2009/03/06


「phosphorus」は燐(リン)を意味する英語です。

phosphorus の意味とは - 英和辞典 Weblio辞書

ギリシャ語の語源では「光を運ぶもの」という意味ですが、これは英語の報告書ですからそのような意味に解釈して翻訳する人は誰も居ないです。常識で考えて下さい、「光を発する物質」と言いたいなら「light」なり分かりやすい単語がある筈でしょう。間違えてしまった言い訳を無理矢理捻り出すにしても、あまりにも苦し過ぎて全くお話になりません。アムネスティ報告書は白燐弾の項目でも「white phosphorus」と書かずに「phosphorus」のみで書いている個所もあり、当然それは燐を意味し、白燐の事を指す表現です。報告書には白燐以外の別の燐の同素体は出て来ませんので、「phosphorus」と記載されてる箇所は全て白燐を指していると考えてよいでしょう。照明弾の項目で使われている個所だけギリシャ語の意味で表現されていると解釈するのは、とてもおかしな話です。

他に、アムネスティ報告書の翻訳で分かってない方にはこのような人も居ます。


アムネスティ・インターナショナルGAZA報告書(4): ni0615の日記
Missiles from UAVs – or “drones”, helicopters and aircraft 

無人機すなわち「ブォ〜ン(drone)」(機)からのミサイル、そしてヘリコプターと飛行機


ドローン(drone)とは無人機の別名です。UAVもまた無人機の意味です。ドローンという言葉は他にも沢山の意味があり、「怠け者」「雄蜂」更には蜂の羽音が「ブンブン」という音を出す意味でも使われ、持続低音を意味する音楽用語にもなっています。そして音の意味としては不可算名詞として、単数形でしか使えません。

drone の意味とは - 英和辞典 Weblio辞書

アムネスティの元文では「drones」とあり複数形ですから、音の意味で翻訳するのは間違いです。ですからブログ主のpippoさんには翻訳ミスですよと伝えたのですが聞き入れて貰えませんでした。「ブーンブン」が「ブォ〜ン」には変更されましたが、これではお子様が自動車の事を「ブーブー」と呼ぶのと同じような有様で、真面目な報告書が台無しになってしまいます。

更にアムネスティ報告書には無人機の語源の話は一切出て来ないので、ここでのドローンの事を「雄蜂」といった意味で翻訳すべきではありません。語源の意味と文章の翻訳は異なります。それは「drone」でも「phosphorus」でも同じ事です。ドローンの場合は普通にそのまま無人機と訳せばよいでしょう。ただしUAVも無人機の意味なので、直訳すると無人機が二つ並んでしまい適切ではありません。ですからこの場合は以下のように翻訳するのが良い筈です。

Missiles from UAVs – or “drones” 
無人機(UAVまたはドローン)からのミサイル


それでは最後に、可能性だけなら何でも言えてしまうお話です。



こういう可能性はないのか。
M485A2 - 155mm のなかの、「the Illuminate candle」。その中身である火薬を入れ替えることも可能なのでは? つまり、「compatible」。

前に、「marine markers」についての説明かなにかに、「phosphorus candle」の火薬を入れ替えることも可能だ、という表現がどこかにあったような気がする。

まあ、中身を入れ替えないまでも、言葉として、
「the Illuminate candle」を通称「the phosphorusu candle」とか「the phosphorusu canister」、つまり「リン缶」とか呼んだりして。

私には半解なので詳しい人、教えて!


Posted by 名無しT72神信者 at 2009年03月07日 11:11:20


何とかアムネスティを擁護しようと必死なのは分かるんですが、ソースは御自分で見付けて来てください。私は「悪魔の証明」に付き合う気は無いので知りません。中身を入れ替えたら〜って、勝手にそんな仮定を前提にされても話にならないです。
23時09分 | 固定リンク | Comment (155) | 議論 |
2009年03月11日
勝手に単語の意味を拡大解釈されるのは困りものですね。ではちゃんとした意味をこちらで解説しましょう。


2009-03-10 - 誰かの妄想・はてな版
英英辞典だと、「phosphorus」の意味としてちゃんと、「phosphorescent substance」も記載されているんだが。

phos·pho·rus (fsfr-s)
n.
1. Symbol P A highly reactive, poisonous, nonmetallic element occurring naturally in phosphates, especially apatite, and existing in three allotropic forms, white (or sometimes yellow), red, and black. An essential constituent of protoplasm, it is used in safety matches, pyrotechnics, incendiary shells, and fertilizers and to protect metal surfaces from corrosion. Atomic number 15; atomic weight 30.9738; melting point (white) 44.1°C; boiling point 280°C; specific gravity (white) 1.82; valence 3, 5. See Table at element.

2. A phosphorescent substance.

http://www.thefreedictionary.com/phosphorus

「phosphorescent」というのは、継続的に発光するとかいう意味で、「phosphorescent lamp」だと蛍光灯の意。照明弾は蛍光灯のような弱い光じゃないとか言われそうだが、戦場で使用することを考慮すれば、爆発などの閃光ではない照明弾としての継続的な発光を「phosphorescent」と解釈して別に不思議じゃない。

もちろん、工業・農業などの化学的な表現中で用いれば、元素としてのリンであるわけだし、一般的にもリンは馴染みのある語ではあるので、「phosphorus」=「リン」と解する場面が多いのは確か*1だが、例えば、そうだね、時計の文字盤についている蛍光部分とかは「phosphorus」と表現したりする。他には釣りのルアーに使う蛍光塗料なんかでも「phosphorus」を使う。いずれも元素のリンとは関係ない。


英英辞典にある「phosphorus」にある2番目の意味「A phosphorescent substance」とは「燐光物質(燐光体)」を意味するので、用法としては著しく限定されるものです。単に「継続的に発光する」というような広い意味では使えないのですよ。「phosphorescent」は燐光を発するという意味で、燐光とは「phosphorescence」と言います。ちなみに厳密には燐光と蛍光は区別され、蛍光とは「fluorescence」と言います。「fluorescent」で蛍光を発する、という意味です。広義の意味では燐光も蛍光の一種とされ、どちらも纏めて蛍光と呼びます。

では英英辞典で検索してみましょう。「phosphorescent」で検索すると自動的に「phosphorescence」のページが出てきます。

phosphorescence (fsf-rsns)
n.
1. Persistent emission of light following exposure to and removal of incident radiation.
2. Emission of light without burning or by very slow burning without appreciable heat, as from the slow oxidation of phosphorous: "He saw the phosphorescence of the Gulf weed in the water" Ernest Hemingway.
http://www.thefreedictionary.com/phosphorescent

1番目の意味は、入射光が除去された後も発光が継続する、という意味です。
2番目の意味は、火災や熱の無い、或いは殆ど無い状態で発する光、特に燐のゆっくりとした酸化現象という意味です。ヘミングウェイの一節は「彼は水中で海藻が燐光を発するのを見た」というものですが、実際に海藻は水中で淡く発光します。

1番目の意味を詳しく解説します。燐光や蛍光はルミネセンス(luminescence)という発光現象で発せられる光の事を指します。これはその物質に光を当てて分子内の電子を励起して、この励起された電子が基底状態に戻る時に余分なエネルギーを光として放出する現象です。励起光を切った後すぐに発光しなくなるものを蛍光、切った後もしばらく継続して光っているものを燐光と呼びます。英英辞典で解説されている1の意味は、この現象に限定されます。

蛍光分光法の原理:蛍光・燐光とは:ホリバ・ジョバンイボン

つまり「燐光」や「蛍光」を照明弾の光として解釈する事は有り得ません。「luminescence」は辞書でも(熱を伴わない)発光と明記されています。「phosphorescence」でも同様の事は書かれています。

燐光とは燐が暗闇で弱く光り続けている状態を指す言葉で、燐が派手に燃え始めた場合の光を指す言葉では無いのです。scopedog氏は「継続的な光ならば強い光でもそう呼ぶんだ」と主張しているようですが、それは間違いです。硝酸ナトリウムとマグネシウム粉を反応させる照明弾は、激しい燃焼を伴って強い光を発するからです。英英辞典で解説されている2番目の意味で考えても、照明弾の光を燐光扱いは出来ません。

故にもしアムネスティが照明弾の発する光を「燐光」の意味で使っているとしたら、完全に言葉の使い方を誤っています。
12時30分 | 固定リンク | Comment (109) | 議論 |
2009年03月12日
最近発売された「軍事研究」2009年4月号はご覧になられたでしょうか?



表紙雑誌の紹介
軍事研究2009年4月号

軍事研究2009年4月号

雑誌
出版社: ジャパンミリタリーレビュー
月刊版 (2009/3/10)
ASIN: B001U8CV4Y
発売日: 2009/3/10
商品の寸法: 20.8 x 14.8 x 1.4 cm

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この最新号の58ページに、このような記事があります。



マスコミとネットがつくる超兵器
“シェイク&ベイク”と呼ばれる戦術
「白燐弾」の恐怖と真実
勘違いや放言がネットやメディアで増幅されてトンデモ伝説となってしまうのが昨今の風潮だが、イスラエルのガザ侵攻では白燐弾が“悪魔の超兵器”となってしまった。非人道行為を非難するなら、それは科学とロジックに拠らなければならない。白燐弾の構造と戦術を解説する。

<軍事評論家> 野木恵一



ジャパンミリタリーレビューのブログでも、簡易な見出しが紹介されていますので確認できます。

Japan Military Review「軍事研究」: 軍事研究 2009年4月号

この記事は本当にこの雑誌に掲載されているのです。内容は・・・タイトルと見出しで容易に推測できると思います。

『一匹の妖怪がパレスチナを徘徊している。白燐弾という妖怪が。』

『白燐弾に限ったことではなく、ここ数年マスコミが特定の兵器について、威力や効果を著しく誇大化する誤まった情報を伝え、それがネットで増幅されつつ広まる事例が目立つ。』

『そこで今回は白燐弾に関する誤情報を取上げて、真実を明らかにしたい。』

このような感じで続いていきます。そう、内容は、私がこれまで書いてきた白燐弾の記事と大部分が被っています。私がネット上で白燐弾の真実を明らかにし、野木恵一さんが軍事専門誌で白燐弾の真実を明らかにする。ネット社会とリアル社会の両方で、白燐弾に関する軍事的デマを叩き潰す。それが実現出来ました。私が一人ネットで吼えていたところで、現実の社会への影響力など微々たる物と認識していましたが、もはやそうではありません。リアルで、私の主張に同調してくれる人が現れました。私のやってきた事が、無駄ではなかった事に、報われた思いです。

軍事研究2009年4月号では、p58からマスコミの白燐弾の記事、p59からネットの白燐弾の記事がトンデモ記事として紹介されています。p59〜60には「あ、あの人のサイトの記事だよ」というのがズラズラと並んでいますので、心当たりのある方はチェックしてみて下さい。p60からは白燐弾デマ騒動の発端である、イタリア国営放送RAIの放映したファルージャ戦の話が始まります。RAIがインタビューしたジェフ・エングルハート兵士が出鱈目な証言をした事を暴き、p62からは燐に関する説明、p63からはM825A1白燐弾に関する説明です。p64からは「シェイク&ベイク」(燻り出し)戦術について、p66では科学的な誤りについての説明で、筆者自身が白燐弾の煙に捲かれた経験を踏まえながら、デマを暴いていきます。p67では国際法上の問題について語り、白燐弾が化学兵器に分類されず、焼夷兵器の定義からも除外される事を述べています。そしてp69で終わりです。

野木恵一氏は白燐弾のシェイク&ベイク戦術について、「パニックを起こさせる心理兵器として使われている」のではないかとしています。実際に煙幕弾をそういった目的で使う事については、白燐弾が騒がれだす2005年11月8日(RAIの白燐弾特集放送)以前に、マスコミ自身も認識しています。

2発の弾痕を確認 サマワ陸自宿営地砲撃 : 共同通信 2004/04/08
>発煙弾については、殺傷力が弱いため部隊を混乱させる狙いだった可能性がある。

サマワでの自衛隊攻撃に使われたこの発煙弾は黄燐(白燐)です。マスコミもおかしな先入観が無ければ、正しい認識が出来ていたのかもしれませんね。そしてシェイク&ベイクの項目の最後で、野木恵一氏はこう述べています。

『パニックを起こさせる心理兵器として使われているのであれば、相手が兵器に恐怖心を抱くほどに効果的になる。イスラエル軍の白燐弾使用を人道に反するとして糾弾し、その残虐性を言い立てている人々は、結果的には白燐弾の効果を過大に宣伝して、イスラエル軍の燻り出し戦術を助けているとの皮肉もいえそうだ。』

もしそうだとすると、白燐弾は見た目は派手だが、実は榴弾などよりも遥かに殺傷力が低いという事実を宣伝し、白燐弾は簡単な防御策で無効化できる(M825A1のような空中炸裂ならば貫通力は皆無)ので、これをパレスチナ側に徹底すれば、イスラエル軍の意図を挫く事が出来るのではないでしょうか。正しい知識を普及させる事こそが、最善なのではないか・・・そう思います。

そして野木恵一氏は最後にこう結んでいます。

『意図的にデマを流すのは問題外だが、善意や正義に立脚したつもりで誤りを流布させる行為も、長い目で見れば反戦運動人道運動にとってはマイナスではないだろうか。』
20時36分 | 固定リンク | Comment (126) | 平和 |
2009年03月13日
北朝鮮はヒラリー・クリントン国務長官に「人工衛星発射の資格なし」と言われたのを受けて、こう出て来ました。

北朝鮮:来月4日にもミサイル発射 国際機関に通告か|毎日新聞
北朝鮮:衛星発射で秋田沖など危険区域 IMOに事前通告|毎日新聞

正式に手続きを取って事前通告してきました・・・これで政治的に迎撃が難しくなりましたし、飛翔コースも東に向けてハワイ近辺に向うので、アラスカやカリフォルニアに配備されているGBIの射程外となり、物理的にも迎撃は出来ません。イージス艦のSM-3Block1では、テポドンクラスの上昇中に後から追い駆けて迎撃するのは困難です。GBIでインターセプトするチャンスが無いのであれば迎撃は出来ず、イージス艦の役割はレーダーで警戒する事と、落ちてくるブースターに注意する事くらいです。

日米韓の三国はこれを受けて、「衛星打ち上げであっても国連決議1718号に違反する」、という立場を取ります。これは前から言っていることなので、国連安全保障理事会の議題に上げられる事は既定路線です。日米韓及び、中国やロシアも既に北朝鮮への警告を発しています。

Taep'o-dong 2 (TD-2) - North Korea | GlobalSecurity.org

グローバルセキュリティのテポドン2特集ページの、「Taep'o-dong 2 Flight Test」にテポドン2を東に向けて打つ、人工衛星打ち上げ用飛翔コースの図が乗っています。

http://www.globalsecurity.org/wmd/world/dprk/images/td2_sat-launch_ground-track.jpg

これが比較的分かりやすいですね。


ところでこの件でTBSの解説委員がアホな事を・・・


TBS解説委員「どう転んでも日本は困る」 北朝鮮の「衛星」発射|J-CAST
杉尾秀哉(TBS解説委員)は「北朝鮮の主張は矛盾している。衛星ならば周回軌道に乗せることが目的なので、日本海に落としたり、太平洋に落としたりしない。日米韓は、事実上、長距離ミサイルの発射実験だと見ている」と解説する。


日本海や太平洋に落ちる予定なのは第一段ブースターと第二段ブースターです、別にそこは変じゃないですよ? テポドンに限らず、大型の弾道ミサイルやロケットは多段式なのが当たり前でしょうに・・・
23時10分 | 固定リンク | Comment (77) | 軍事 |
2009年03月14日
どうでもいいですけど、なんでこの方は連絡用にコメント投稿やトラックバックを送ってこないのでしょうか。自分のサイトだけで記事を書いても、こっちは一々チェックしてないから気付かない場合もあるのですけど。


24時間経ってないけど、ま、いいや - 誰かの妄想・はてな版
phos·pho·res·cence (fsf-rsns)

n.

1. Persistent emission of light following exposure to and removal of incident radiation.

2. Emission of light without burning or by very slow burning without appreciable heat, as from the slow oxidation of phosphorous: "He saw the phosphorescence of the Gulf weed in the water" Ernest Hemingway.

http://www.thefreedictionary.com/Phosphorescent
で、この”phosphorescence”の説明を延々と始めるわけだが・・・





先に言っちゃうと、「2」の意味で「継続的な発光」と解せますね*1。照明弾は、熱を伝えることを目的としていないし、その目的上ゆっくり発光させるわけで、「very slow burning without appreciable heat」まんま。「the slow oxidation of phosphorous」が気になるんだろうけど、「as」でつないでいることに留意しよう*2。


「1」の意味の「継続的な発光」が、ルミネセンス(燃焼を伴わない発光現象)に限定される事を指摘されたscopedog氏は、「2」の意味から「継続的な発光」を見い出そうという、斜め上の主張を繰り出してきました。「without burning(燃えることなく)」とか「very slow burning(非常に遅い燃焼)」とか「without appreciable heat(感知できないほどの熱)」を丸ごと無視して。

あまりにも馬鹿馬鹿しくて、呆れるしかないです・・・

照明弾の主成分であるマグネシウム粉と硝酸ナトリウムがどういうものか、見て見ぬ振りをしているのでしょうか? 燃焼温度はテルミット反応よりは低いですが、ナパーム弾の燃焼温度よりむしろ高いくらいで、1〜2分燃焼しながら強い光を放ちます。ちなみにナパームだと10分以上、燃え続けているものもあります。つまりナパームは照明弾よりも低い温度でゆっくりと長い時間を掛けて燃え続けるわけですが、それではナパームは「感知できないくらいの熱しか無くて非常にゆっくりとした燃焼」なんですか? そんなわけが無いでしょうに。



「特に燐のゆっくりとした酸化現象」っておいおい(苦笑)。JSF氏、捏造もいい加減にしとけよ。
「as from the slow oxidation of phosphorous」の部分は単なる例示であって、これによる光、つまり燐光のみを意味しているわけじゃないことくらい理解できるだろ。


「特に〜」というのは「代表例」という意味で使っているのですが。つまりそれは例示ですので、別に限定していませんよ。

日本語でも英語でも「燐光」には2つの意味があります。Farlex英英辞典の「phosphorescence」で説明されている内容の1番目の意味は「ルミネセンスの燐光」です。2番目の意味が「燐の出す燐光(あるいはそれに類似した、熱を伴わない、燃えない状態で出す光)」です。

1番目の意味は、分かりやすく言えば夜光塗料の蓄光作用を意味しますので、照明弾とは無関係なことが直ぐに分かると思います。2番目の意味については、マグネシウム系の照明弾は派手に燃えていますので、とてもではないですが熱を伴わないとは言えません。



「luminous without sensible heat.」という説明は端的で実にわかりやすい。

「顕著な熱を伴わない発光」



うん、わかりやすい。これなら理解できるでしょ?

照明弾というのは、熱を感じられる距離で使うものではないので、「phosphorus」を(熱を伴わない)発光体と訳して何の問題もありません*7。


距離を離せばどんなものだって熱は感じられないでしょう。問題は、発生源が熱を出しているかどうかです。 ナパームより高温で反応する物体を指差して「熱を感じられない」とか有り得ない解釈ですね。

それに実は距離は近いのです。イスラエル軍のオペレーション・キャストレッドでは夜間に白燐煙幕弾と共に照明弾が多用されましたが、そのパラシュートを開いてゆっくりと落ちてくる照明弾が、光を放ちながら地表へ着弾、暫くそのまま光っている様子は幾らでも見る事が出来ました。着弾地点付近は大いに熱が感じられた事でしょう。M485A2照明弾は1〜2分間燃焼します。パラシュートが付いたキャニスターの降下率は10m/秒程度、 展開高度が上空500m以下ですから、着弾後も暫く燃えたままです。



大きな光が照明弾で、拡散している光が白燐煙幕弾です。照明弾がゆっくり地表に落ちて行き、そして着弾後も暫く燃えている様子が伺えます。

日本でもジャンボジェット機が山中に墜落した事故で、ヘリコプターの夜間捜索で空中投下照明弾を使うべきか検討されましたが、山火事になってしまうので断念した事があります。一方戦場では、照明弾は国際条約で焼夷兵器から除外されており、たとえ副次的な焼夷効果があっても使用の制限を受けません。

そして例えナパーム弾であろうと直撃あるいは至近距離じゃないと熱は感じられません。それは照明弾も同じです。もしもアムネスティが照明弾の副次的な焼夷効果に気付いていないのでしたら、それはそれで間抜けに過ぎるというか・・・市街地に燃えたまま着弾していても殺傷効率は榴弾より著しく低いから構わない、というのでしたら、白燐煙幕弾はいったいどうなるのでしょう?

どうも照明弾の事を「熱の伴わない光だ」と強弁するのは、墓穴を掘っているように思えるのですが、本当にそれで宜しいのですか?
05時30分 | 固定リンク | Comment (188) | 議論 |
2009年03月15日
今日は溜まっているネタを紹介するだけという、手抜き更新です。いやその、タイミングを逃しちゃって一個一個時間を掛けている暇が無くなっちゃったので・・・すみません。


台湾の徴兵制度に幕 緊張緩和、財政負担も 14年全廃:朝日新聞
台湾の陳肇敏・国防部長(国防相)は9日、49年に国民党政権が中国から台湾に撤退して以来、19歳以上の男性に義務づけられてきた徴兵制を5年後の14年に全面廃止することを明らかにした。


台湾が徴兵制を廃止する決定を行いました。中国軍も既に実質志願制に移行済み(必要に応じて選抜徴兵を行える制度を残しているが、現在は行使されていない)ですので、徴兵制廃止の流れは東アジア方面でも顕著になってきましたね。放置気味の「徴兵制 復活?」も忘れないでやってください。でもリニューアル計画は頓挫中・・・

このニュースで思い出したのですが、台湾軍の徴兵ネタと言えば「エセ外人の原色ライフ : あ〜み〜ぼん。」を読んで、徴兵制度での新人虐めというのは世界各国共通なんだろうかと思った次第です。


方式は“バブル”ですがエコ運搬船、三菱重が建造へ:読売新聞
三菱重工業は、燃費が1割以上、向上するエコ運搬船を建造する。

船底の前方から細かい気泡を噴き出して、船底を覆い、航行時の海流との摩擦を減らす。バブル・モジュール運搬船と呼ばれる新型船(総トン数1万5000トン、全長150メートル、幅40メートル)で、日本郵船が発注した。プラントなどの大型機械を輸送する船で、2010年春に就航する見通しだ。

気泡によって摩擦を軽減する船の建造は、80年代後半から研究が進められてきたが、商業ベースで建造されるのは初めて。


マイクロバブルを船体表面の境界層に流し込み、摩擦抵抗を低減する技術は数十年前から知られており、ずっと研究されていましたがなかなか実用化できず、世界的にも一時は諦めかけられていましたが、遂に世界初の商業実用船が誕生します。

船舶の摩擦抵抗低減デバイスとしてのマイクロバブルの可能性:社団法人日本機械学会 流体工学部門

なお軍事用途では類似技術のスーパーキャビテーション効果を使った水中ロケット魚雷「シュクヴァル」がロシアにあります。シュクヴァルは自身の高速力により周囲の水からキャビテーションによる気泡を生み出し魚雷全体に纏いますが、高速に達していない段階ではキャビテーション効果を得られないので、魚雷内部から自力で空気を放出し、マイクロバブルを纏います。ちなみに三菱重工は数年前に「シュクヴァル」と同様の水中ロケット魚雷を「水中航走体」という名前で特許を取得しています。実験は既にやっているみたいですね。


治安悪化 事業に危機感 米軍増員のオバマ政権にアフガン失望 ペシャワール会 中村哲医師:西日本新聞
中村医師は武装した現地職員の警備を受けながら、アフガン東部で活動を続ける。


流石に丸腰では危ないと気付かれたようです。


インドの原子力潜水艦、完成まであとわずか:アントニー防衛相 |ヴォイス・オブ・インディア
アントニー防衛相は11日、インドの原子力潜水艦が完成の最終段階に入っていると発表した。

バンガロールで開催中の航空ショー「エアロ・インディア2009」の会場でアントニー防衛相は、先端技術艦船(ATV)プロジェクトの進行状況について、「以前は障害もあったが、問題も解決し、完成の最終段階に入っている」と答えた。

ATVはインド初の原子力潜水艦プロジェクトで、射程距離750キロの核弾頭ミサイルなどが搭載される予定だ。試運転は4月から開始されるという。


世界的に何故か注目されていないインド初の原子力潜水艦。


ミサイル防衛へのロシアの協力を期待=米国務長官が表明:時事通信
クリントン米国務長官は4日、ロシアが反対しているミサイル防衛(MD)システムの東欧配備計画について、同国の協力に期待を表明した。

同長官はブリュッセル訪問の途上、機内で記者団に語ったもので、ロシアはMDへの脅威を以前よりは感じていないように思われると述べ、MD計画にロシアが参加するよう説得したいと表明した。同長官は「MD計画がロシアを対象にしたものではないことが徐々に理解され始めたようだ」と指摘した。


実はミサイル防衛に積極的なヒラリー・クリントン米国務長官。結構ノリノリであります。


そしてこれは・・・




アメリカ軍のA-10攻撃機に誤射されたイギリス軍の様子。30mmガトリング砲の射撃は爆撃かと思うほどの凄まじさで、これは怖過ぎ。
22時30分 | 固定リンク | Comment (87) | 軍事 |
2009年03月17日
反論が来ていたようですが、またトラックバックなどによる連絡すらせず、ですか。


誰かの妄想・はてな版 - 2009-03-16
今となっては「ギリシャ語の意味で〜」なんて恥ずかしくて言えないでしょうし、JSF氏も多少は無知の知というものを学んだでしょう。良かったね。


いいえ、無知の知を学んで主張を変えたのは私ではなくscopedog氏の方ですよ。何故なら私が「ギリシャ語の意味で〜」と言ったのは、最初にscopedog氏が『”phosphorus”には、光を発する物質という意味もあるんだよ。』と言い出したからです。単に「光を発する物質」という、あまりにも広い意味では、これに対応するのは語源であるギリシャ語の意味となります。


はてなブックマーク - 照明弾と白燐弾を混同したアムネスティ報告書 : 週刊オブイェクト
scopedog 白リン弾, 白燐弾, 誤読・誤訳 ”phosphorus”には、光を発する物質という意味もあるんだよ。別にリンに限定されるわけじゃない。”white phosphorus”とは書いてないから、わかりそうなもんだが。 2009/03/06


Farlex英英辞典の「phosphorous」の項目を見れば分かりますが、用法の1番目の意味が「燐」、2番目の意味が「燐光物質」、最後に「光をもたらすもの」「金星」と言う意味のギリシャ語やラテン語の語源が紹介されています。

故にscopedog氏が「phosphorous」の事を「光を発する物質」という非常に広い意味で主張する限り、私は何度でも「それは語源のギリシャ語の意味(光をもたらすもの)ぐらいしか該当しませんよ」と指摘しますよ。

そして次にscopedog氏は主張を微妙に変更してきたのです。


誰かの妄想・はてな版 - 2009-03-10
英英辞典だと、「phosphorus」の意味としてちゃんと、「phosphorescent substance」も記載されているんだが。

〜中略〜

「phosphorescent」というのは、継続的に発光するとかいう意味


scopedog氏は当初の主張「光を発する物質」から「継続的に発光する」という主張に変更してきました。当初の主張が外れ過ぎている事に気付き、徐々に主張を修正しようとしたのでしょう。scopedog氏の方が先に主張を変更されたので、私はそれに対応した説明を続けただけです。つまり「無知の知というものを学んだ」のは、scopedog氏なのですよ。勉強出来てよかったですね。

しかしこれでもまだ不足です。Farlex英英辞典の「phosphorus」の項目に記載されている2番目の意味「A phosphorescent substance」とは「燐光を発する物質」と言う意味です。故に燐光以外の光は除外されますので、単に「継続的に発光する」というような広い意味では使えません。「光を発する物質」と「燐光を発する物質」では、全く意味が異なります。後者の意味は前者に比べ著しく限定されるものです。

Farlex英英辞典で「phosphorescent(燐光を発する)」を引くと「phosphorescence(燐光)」のページが自動的に出て来ます。用法の1番目の意味が「入射光が切れても継続して発光する」という、簡単に言うと夜光塗料の蓄光作用の事を指したもので、2番目の意味が燐のゆっくりした酸化現象で発する光を代表とする、熱や火を殆ど伴わない発光を指しています。

つまりscopedog氏は「燐光を発する物質」という部分を「光を発する物質」と言い張ったり、「入射光が切れても継続して発光する」という部分を「継続して発光する」と言い張ったりと、肝心要の前提部分を抜き去ってしまうという致命的な間違いを犯しているのです。ワザとやっているのか、素で理解していないのか、どちらにせよscopedog氏は間違っています。

アムネスティが照明弾(主成分はマグネシウム粉、硝酸ナトリウム)について説明した箇所にある「phosphorous」を「燐」の意味で使っているなら素材の時点で明確に間違い、「燐光」の意味で使っているなら激しい燃焼を伴うマグネシウムの燃えている光を指す事は出来ず、やはり間違いです。どっちに転ぼうとアムネスティの間違いに変わりはありません。


誰かの妄想・はてな版 - 2009-03-16
やっぱり、誤訳は誤訳。


「特に」という日本語の意味に「限定」の意味はありませんから、日本語の段階でscopedog氏は間違えています。もし仮に「限定」という意味でなら致命的な誤訳だったかもしれませんが、「特に」とは強調された代表例という意味であり、例示なので、意味は通っています。別に誤訳と騒ぐほどのものではないでしょう。むしろ日本語の意味を全く違う意味で取り違えていたscopedog氏の早合点の方が痛いですよ。なお強調した理由は、燐の放つ光は文字通り燐光という言葉の大元であり、数ある例の中でも特別の存在だからです。

というかですね。問題の「phosphorescence」の項目の2番目の説明にはこうあるわけです。

「Emission of light without burning or by very slow burning without appreciable heat」

こんな単語が並んでいる文章を見れば、マグネシウムが燃えているような激しい燃焼を伴う照明弾の光には適用できないと一発で理解できるものと思っていましたから、この部分周辺で何か反論してくるとは全く思っていなかったですよ。scopedog氏は「継続的に発光する」と書いてきたので、「phosphorescence」の1番目の意味である「入射光が途切れても継続的に発光する」という意味を理解していないのだとばかり思っていました。実際にそうであって指摘された後に慌てて反論の手段を捻り出すべく、2番目の意味から無理矢理に理由を捻り出して来たようにも見えます。それで日本語の意味を間違えているのですから、scopedog氏は焦って自爆したわけです。


誰かの妄想・はてな版 - 2009-03-16
「燐が暗闇で弱く光り続けている状態」以外の意味がある、ということにJSF氏は同意した。

ということでいいですかね?


同意も何も最初から「燐光」の意味は、1番目が夜光塗料のようなルミネセンスの発光、2番目の意味が熱や火を伴わない発光であると主張しています。故に最終的に問題点は次の点に絞られました。


誰かの妄想・はてな版 - 2009-03-13
「luminous without sensible heat.」という説明は端的で実にわかりやすい。

「顕著な熱を伴わない発光」


うん、わかりやすい。これなら理解できるでしょ?

照明弾というのは、熱を感じられる距離で使うものではないので、「phosphorus」を(熱を伴わない)発光体と訳して何の問題もありません*7。


問題があり、間違っています。光の発生源と熱の発生源が同一ですので、「伴わない」と言い張るのは無理矢理すぎて無茶苦茶な主張です。仮に照明弾ではなくナパーム焼夷弾であっても、熱を感じられるのは直撃か至近距離での話で、離れたら熱を感じないのは当たり前です。しかも現実のガザでは、照明弾は地上に着弾してからも光を放ち続けている例が幾らでも確認できます。距離の問題を持ち出すのは、完全に的外れです。

この点について意見がありましたら、コメントを宜しくお願いします。


【追記】

scopedog氏に聞きたいのですが、分かりやすい質問を一つ、答えて頂けるでしょうか。アムネスティ報告書の155mmM485A2照明弾に関する問題箇所は「These eject a phosphorus canister」という部分です。「phosphorus」はFarlex英英辞典で1番目の意味が「燐」、2番目の意味が「燐光物質(燐光体)」です。しかし実際のM485A2照明弾の主成分はマグネシウム粉と硝酸ナトリウムですので、1番目の意味では完全に間違いです。

そこで聞きたいのですが、scopedog氏はマグネシウムと硝酸ナトリウムが「燐光物質」であると本気で思っているのですか? 物質とある以上、物質そのものの性質が問われているわけです。その点は理解されていますか? 要するに遠くから観測するから熱の無い光だ、という主張は全く通用しないのです。
05時45分 | 固定リンク | Comment (372) | 議論 |
2009年03月18日
海上自衛隊の新型護衛艦「ひゅうが」が本日、就役しました。




以下に比較対象として同縮尺の艦艇の図を並べて見ました。マウスを合わせると説明文が出ます。DDH「ひゅうが」は基準排水量13950トンと海上自衛隊の護衛艦では最大の大きさですが、全長は高速補給艦「ましゅう」の方が長いです。


DDH「ひゅうが」

輸送艦「おおすみ」

補給艦「ましゅう」

英空母「インヴィンシブル」

米空母「ニミッツ」

米空母「エセックス」

日本帝国海軍空母「大鳳」

DDH「はるな」

軽巡洋艦「大淀」

航空戦艦「日向」


ヘリコプター空母として運用される「ひゅうが」ですが、建造費用は半分くらいの大きさのイージス艦より安かったりします。今日は何かアクセス数が多いなと思っていたら、Yahooニュースのトピックスに当ブログが以前書いた記事『DDH-181「ひゅうが」進水』がリンクされていたみたいですね。


ところで話は変わりますが、ボーイングがF-15戦闘機の新しいバージョン「F-15SE」を発表した模様です。


【特報】F-15SE登場!:東洋亭パーツ館新本店
もちろん、この写真は日本初登場!(たぶん)

ボーイング社が日本時間のゆうべ発表したばかりの、正真正銘の第5世代戦闘機F-15Silent Eagle、通称F-15SEであります。(*´Д`)ハァハァ

セカンドエディションじゃないよ。Silent Eagleだよ。つか、ストライクイーグルとまぎらわしいけど。

いやこれは萌えますよ。すごいな、このシルエット。悪夢ともいえるが。なんというかもう朝から興奮しきりで。


おお〜。

リンク先の五十嵐洋さんの所でボーイング社のプレスリリースや画像、「FlightGlobal」の速報、動画などが紹介されています。情報量が多いので、是非見に行ってください。このF-15SEサイレントイーグルはステルス性を与える為、F-15Eストライクイーグルで使われているコンフォーマルタンク(CFT)の中に兵器倉を設け、双垂直尾翼に外側15度の傾斜を与えてあるようです。最初からステルス機として設計されている機体と比べれば収容能力は劣りますし、機体自体のステルス性も低いままですが、ミサイルを収容できるとなると剥き出し搭載のユーロファイターとの差別化ができるようになり、航空自衛隊のFX選定にも影響を与えるかもしれません。
21時11分 | 固定リンク | Comment (509) | 軍事 |
2009年03月19日
ソマリア沖で中国海軍の軍艦が国籍不明の潜水艦に追跡されたというニュースは、デマ報道だったそうです。大元はフリーライターの創作記事だったとの事。


「中国艦を追跡」記事は捏造 中国当局が掲載2紙を処分:産経新聞
中国海軍の駆逐艦が国籍不明の潜水艦に追跡されたとの報道は捏造(ねつぞう)だったとして、中国当局は記事を掲載した中国紙2紙に対し罰金などの処分を科した。中国新聞出版報が19日までに報じた。

処分されたのは四川省の「華西都市報」と山東省の「青島早報」。両紙は今年1月、海賊対策のためアフリカ東部ソマリア沖に派遣されている中国海軍の駆逐艦が潜水艦に追跡されたとの記事を掲載。記事はフリーライターが華西都市報向けに執筆した虚偽のもので、青島早報は華西都市報から有料で記事の提供を受けたという。

19日付の香港紙によると、記事は2月上旬、中国の各大手ニュースサイトにも転載された。記事中で潜水艦がインド海軍所属だった可能性を示唆していたため、インド政府が報道を否定するなど反響が広がっていた。(共同)


ちなみに以下は当時の中国での報道の様子です。


中国艦、追跡受け攻撃態勢 ソマリア沖、印潜水艦か:共同通信 2009/02/04
ソマリア沖到着後の1月半ば、3隻が3度目の護衛任務を控えて待機していた際、潜水艦が接近。駆逐艦が捜索を始めると妨害電波などを出してきたため、対潜ヘリを出動させたところ、潜水艦は最後に水面に浮上して“逃走”したという。


ソマリア沖であわや軍事衝突=インド潜水艦?と中国艦隊:時事通信 2009/02/04
4日付の香港各紙によると、アフリカ・ソマリア沖で1月15日、海賊対策のため派遣された中国海軍の艦隊が、ある国の潜水艦に追跡されていることを察知して逆に潜水艦を包囲し、一時攻撃態勢に入るという事件があった。中国紙・青島晨報の報道として伝えた。


この件はなんだか火葬戦記臭い匂いがするから本ブログでは取り扱いませんでしたが、まさか中国艦の活躍を一部誇張したどころではなく、出来事の全部が丸ごと捏造だったとは・・・なんというトラップ、引っ掛からなくて良かったです。

でもこの件、インド海軍が否定すると一部のインドメディアが「追跡はあった」って言っていたんですよね。

潜水艦は中国艦を追跡した、自国軍の主張を否定―インドメディア:Record China 2009年2月6日

そうなるとコレ、陰謀論とか言い出す人出て来るのかな・・・でもインド側の報道も「複数の関係筋からの情報」というソースのハッキリしないあやふやなものなので、捏造記事に創作で相乗りしただけのように思えます。
23時45分 | 固定リンク | Comment (170) | 軍事 |
2009年03月21日
一週間前にこのようなコメントがありました。



話は変わりますが、「大石英司の代替空港」の昨日の記事に在日米空軍の戦闘機の数を間違って記述している記事をのせていたので、田岡氏は、信用度0ですよというコメントと参考にJSFさんの過去記事のURL(http://obiekt.seesaa.net/article/111712166.html)を貼らしてもらった所、コメント削除とアク禁処置になりました。理由は、「当ブログ上では禁止ワード指定しているブログのURLを貼り付けた人がいたので」だそうで、JSFさんは何時も、的確な記事を書かれているなと感心してこのブログを読ませていただいている私としては、驚きです。実は、JSFさんも、大石さんのブログには、アク禁とかされてますか。

Posted by M.N at 2009年03月13日 19:11:50



大石さん、相変わらず手当たり次第にコメント削除とアクセス禁止を連発されてるんですね。どんどん悪化しているような・・・私はかなり前にアクセス禁止にされたようです。事前警告も事後通告も何も無く処理されて、聞いた話によると有料メールマガジン上でのみ私の名を出した上での削除宣告が行われたそうです。最近ではscopedogさんもそうですけど、連絡無しにそういう事をして陰でこっそり勝利宣言されてもなんだかなぁ。

私はアクセス禁止されるようなので、もう大石さんのブログにコメントも出来ないしトラックバックも打てないわけですから、何か有効なアクションを起こすにはこの件について記事を書くくらいしか手段がありません。

では取り合えず大石英司さんの主張を見てみましょう。


大石英司の代替空港 2009.03.13
昨日、神浦さんは本当はこんな人、元帥は本当はこんな人という形で、当ブログ上では禁止ワード指定しているブログのURLを貼り付けた人がいたので、削除の上アク禁にしました。

私は神浦さんは存じ上げません。どういう件でネット上で犠牲になったのかも知りませんし何の興味もありません。自分の経験だけで、何があっただろうかは容易に推測が付く。お気の毒なことです。元帥に関しては、私は、その主義主張をちゃんと吟味できる人だけに、その情報をお伝えしているつもりです。もっとはっきり言えば、ある種の思考ゲームの材料として。

人間は時には間違いを犯します。われわれは残念ながら完璧ではありません。ある人にとっては重大なミスも、ある人にとっては些末なミスだったりします。逆もしかり。

それがネットの匿名集団の手に掛かると、そのミスの蓄積が「戦果」として記録され、記憶され、侮蔑のネタにされる。

あなた方は、彼らと同じ努力を払ったのですか? こつこつと外国の資料を読み込み、あるいは難儀な交渉を経て自腹を切って地球の裏側まではるばる取材に行く労苦を考えたことがありますか。制服組と時にはけんか腰の議論をして情報を取ったことがおありですか? それだけの努力を払った上でなお、彼らはバカだ、というのであれば、私は貴方のご高説に耳を傾けましょう。きっと、彼らとは違うハイレベルな資料や情報源に基づく知識をお持ちなのでしょうから。

いつも、他人のふんどし、後知恵でもってそれら先達を嘲る人々がいる。時にはその侮蔑が他人からの孫引きだったりする。その後知恵孫引きの羅列が、まるで侮蔑のリファレンス・サイトとして機能しているような所まである。

貴方たちの揚げ足取りにいちいち耳を傾けていたら、この国から軍事ライターは一人残らず消え失せる羽目になるでしょう。


この大石さんの主張を簡単に要約するとこうなるわけです。

『取材する努力をしないマニアが、プロのライターやアナリストが苦労して得た成果について揚げ足を取るんじゃない。努力をしてから物を言え』

つまり批判の内容について問題にするのではなく、お前には批判を行う資格が無いと、批判そのものがいけないという論調です。でもこれって、ちょっと単語を入れ替えて見るだけで暴論だと理解できるでしょう。例えば「マニア」を「読者」に、「ライターやアナリスト」を「マスコミ」にして見ましょうか。

『取材する努力をしない読者が、プロのマスコミが苦労して得た成果について揚げ足を取るんじゃない。努力をしてから物を言え』

こんな主張をマスコミ人が言い放ったら、袋叩きにされてしまうでしょうね。容易に光景が目に浮かびます。例え記事が間違っていてもそれを指摘するな、そんな暴論なのですから。軍事ライターはマスコミに分類されます。軍事マニアは、その読者です。故にこの置き換えは、ごく自然なものの筈です。

第一、田中康夫や日垣隆など他人の批判に熱心な大石さんが「批判を行うな」という主張してもあまり説得力がありません。週刊金曜日に批判投稿を行うまでに本業そっちのけで執着されているわけですから、その辺どうなんですか?と思ったら既にコメント欄で指摘されていました。



>大石センセの勝谷誠彦・日垣隆・田中康夫批判

権力者の提灯を持つ奴とは戦いますよ。それは単純にわれわれの職業的使命の一つに過ぎない。

投稿: 大石 | 2009.03.13 16:59



マスコミは政治権力を監視・チェックする使命を負う、とはよく言いますが、ではそのマスコミは一体誰がチェックするのでしょう?

結局これは真っ先に読者が見てチェックする事になるんです。マスコミが間違った事を言っていたら指摘し、正す。でもこれを「読者の使命」だなんて構える気は無いです。気付いた人が指摘すればよい話で、気負う必要はありません。そしてマスコミにツッコミを入れるのは「読者の権利」であり、これは否定されてはなりませんし、マスコミはそれを出来ません。マスコミが読者による批判を否定したら、読者は離れていきます。読者の付かない新聞、雑誌、TVは潰れて行くしかないでしょう。読者の付かない漫画や小説が消えて行くのと同じように。彼らは読者によって生かされているのであって、読者の声を無視する事は出来ないのです。

取材というものは、結果を得る為の手段です。その行為はとても大事ですが、結果が間違っているのに「取材で苦労しているんだから批判するな」と言うのは、やはり通用しない話です。プロの仕事は結果で評価されるものであり、努力で評価されるものではありません。大石さんの主張は、結局は甘えでしか無いのです。

また大石さんは神浦元彰さんについて何も知らないまま、勝手な憶測で語ってしまい、結果として大石さんの主張は神浦さんに対して何の擁護にもなっていません。今の神浦さんは、全く取材をしない人です。海外に出掛けるどころか、国内の取材も行おうとせず、海外の資料をチェックしようともせず、日々の情報源は複数取っている一般新聞であり、マニア以上の努力をしているとは思えません。というか明らかにマニアより情報収集レベルが低く、一般人と大差が無い状況です。

田岡俊次さんについては、この方は自分の足で取材をされる方です。最近では田母神前空幕長の騒動で情報の裏取りをキチンと行い、論争相手を見事に言い負かしている様子は良い仕事をしているものだと感心しました。しかし冒頭でM.Nさんが私の過去記事を持ち出したとおり、田岡さんは在日米軍の航空戦力を実際の定数よりも遥かに少なくカウントし、「在日米軍の戦力は大した事が無いので居なくなっても穴は開かない」と主張しています。これは間違いと指摘されても仕方が無いでしょう。この件を持って田岡さんの全てを否定するわけでは無く、米軍が居なくなっても穴があかないという論拠の一部が崩れているのではないか、という話です。

人は誰でも間違いを犯します。当然、私も間違える事はあります。そしてお互いに間違いを指摘し合えば、全体の間違いは減っていきます。ミスが少なく良い記事を書く人は評価され、重大なミスを連発する人は問題視されるでしょう。それだけの事です。

素人にソース付きで間違いを指摘されるプロは、その事実を厳粛に受け止めるべきです。大石さんは「プロは努力をしているんだ!」と主張されています。では一般人より知識レベルの低いプロは努力を怠っていると見なして構わない筈です。努力の形態は取材に限られるものではありません。せっかく苦労して取材したのに、的外れな記事を書くプロは幾らでも居ます。元々の専門知識に欠けている記者は、取材対象への質問自体が的外れになりがちで、担当者が丁寧に説明して返答してやっても理解すること無く、的外れな記事を仕上げてしまう・・・これはよくある光景です。

それでも以前は通っていたかもしれませんが、インターネットが普及した今では通用しなくなりました。「情報の共有化」の効果は、一般のマニアのレベルを一気に押し上げ、平均レベルが底上げされた結果、読者の平均よりもレベルの低いプロのライターが沢山出て来ました。これに該当する人は、努力を続けなければ何時かは淘汰されてしまうでしょう。
01時45分 | 固定リンク | Comment (205) | 議論 |
2009年03月23日
【03式62口径76mm砲曳光平頭弾薬包】

対不審船用に用意された、炸薬無し76mm砲弾。水面に当たって跳弾となるのを防ぐ為、弾頭部は平たい構造になっている。水中弾効果を狙っており、不審船の喫水線下に穴を開けて浸水させ、逃走行動を封じる。能登半島沖不審船事件の教訓から開発。


不審船対策


海賊船対策でソマリア沿岸での活動を行う予定の海上自衛隊護衛艦「DD-106 さみだれ」「DD-113 さざなみ」ですが、76mm砲装備の「さみだれ」には、この海上警備行動用に専用設計した03式平頭弾があります。一方、127mm砲装備の「さざなみ」の方は主砲の威力が停船目的には高すぎて使い難いのですが、20mmCIWS(対艦ミサイル迎撃用のバルカン・ファランクス)に光学カメラを装着して対水上射撃も可能となったファランクスBlock1Bと呼ばれるバージョンを装備しています。

ただ、ファランクスBlock1Bの対水上射撃モードはあまり使い勝手が良くないようで、相手をなるべく死傷させずに停船させるという役目に使うには、弾がバラつき過ぎて問題があるかもしれません。





↑音量注意



動画は全てファランクスBlock1Bによるものです。一番上の動画はアメリカ海軍のイージス駆逐艦による海賊船への警告射撃です。真ん中の動画はイージス駆逐艦による水上の発煙弾を目標にした射撃試験で、照準カメラからの映像です。最後はアメリカ沿岸警備隊の最新鋭巡視船「バーソルフ」に搭載されたファランクスBlock1Bによる、小型高速水上移動目標に対する射撃試験です。

ファランクスBlock1Bの対水上射撃は手動ロックオン照準で行います。対空射撃モードは内蔵されたレーダーによる全自動射撃ですが、対水上射撃モードは光学カメラからの映像を見て操作員が射撃箇所を設定し、警告射撃、船体射撃を選択します。

ところがBlock1Bについてはあまり知られていないらしく・・・


護衛艦「さざなみ」「さみだれ」の2隻が演習を実施!:ASCII.jp
ファランクスBlock1B

高性能20ミリ機関砲(ファランクス)。レイセオン・システムズ社製の艦載近距離防空システムで、対艦ミサイルなどからの防御を目的としている。今回の海上警備行動は、対水上を想定しているため出番はないと思われるが、海賊が対艦ミサイルなどを使用した場合には、ファンラクスが活躍することだろう


伊藤さん・・・その解説は無いです・・・写真、それBlock1B・・・向って右側、対空レーダーのドームの横に光学カメラが付いてるじゃないですか・・・「さみだれ」はこれを主に海賊相手に使う気でいるんですけど・・・あと、「海賊が対艦ミサイルなどを使用した場合」ってこれ、皮肉か或いはウケ狙いですか? そうではなく、本気なんだろうなぁ・・・

記事は海上自衛隊を好意的に書かれており、悪意は無いと分かります。でもファランクスBlock1Bを写真に収めておきながらこの解説では何も分かっていないし、海賊が高価な対艦ミサイル(1発1億円前後)を装備していると想定するのも無意味です。そんな物を買うお金があれば海賊なんてしませんよ。
06時30分 | 固定リンク | Comment (181) | 軍事 |
2009年03月25日
よく弾道ミサイル防衛(MD)について懐疑的な意見の定番に「ピストルの弾をピストルの弾で撃墜するようなものだ、出来るわけが無い」というものがあります。これはMD開発当初からよく言われていた表現で、使い古された感すらあります。

結論から言うと、それはそんなに難しいものではありません。ただしもちろん、迎撃側はコンピュータ制御の高度なFCS(火器管制装置)を装備している事が前提条件なのですが、MDですらない迎撃システムで「ピストルの弾をピストルの弾で撃墜する」という事に近いことを実験でやってのけた例は複数あります。

まずアメリカ海軍は20mmバルカンファランクスで、艦載砲の5インチ(127mm)砲弾を撃ち落とす実験を行っており、「砲弾を砲弾で撃墜する」事を何十年も前に実践済みです。またイギリス海軍のシーウルフ艦対空ミサイルは、同じく艦載砲の4.5インチ(114mm)砲弾を撃ち落とす事をやってのけ、イギリス海軍や現生産元のMBDA社はこのミサイルの優秀性を示す時に、よくこの事実を誇示しています。

「It even has the accuracy to shoot down 4.5-inch artillery shells, and has done!」 - Royal Navy

「VL SEAWOLF (VL = Vertical Launch) is accurate enough to intercept 4.5 inch (114 mm) shells.」 - MBDA

古い話なのでファランクスの方は紹介しやすい資料を用意できなかったのですが、実はシーウルフ艦対空ミサイルの件も同じくらい古い話(VL化する前)だったりします。イギリスさんは、対艦ミサイルよりも遥かに小さくて撃墜し難い「砲弾」を撃破できた事が嬉しかったらしく、今でもこのように自慢しているのでした。

この手の「砲弾を砲弾で撃墜する」という事が出来そうな装備として、他にイタリアのOTOメララ社が開発中の76mmストラレス砲弾誘導システムがあります。実際にそういう実験をやったわけではありませんが、スペック上は恐らく可能でしょう。

このように、「ピストルの弾をピストルの弾で撃墜できるのか?」という事例に近いものは、以前からMD以外の迎撃システムで実践済みであり、MDで出来ないという理由には成り得ません。そもそもこの表現は比喩の話で、それくらい難しいんだという事を例えとして言いたいのでしょうが、元々これは例として相応しくないものでした。何故ならピストルの弾とピストルの弾では、目標体と迎撃体が同種のものですが、弾道ミサイルと迎撃ミサイルは別種のものだからです。

もし現実にピストルの弾を迎撃しようとしたら、ミリ波レーダーなどのセンサーで目標を捕らえ、コンピュータで自動制御されたFCSを用い、誘導ピストル弾あるいはタングステン散弾を発射すれば曲がりなりにも迎撃可能なシステムは組み上げられます。誘導ピストル弾なんてものはありませんが、その他のものは既存の技術です。ピストルの話を持ち出すのであれば、MDが行おうとしているのはこういう事であり、そしてMDは誘導迎撃体であることを忘れてはなりません。


ミサイル迎撃、外相「難しい」政府筋「当たらない」:朝日新聞
政府筋は「鉄砲をバーンと撃った時にこっちからも鉄砲でバーンと撃って(弾と弾が)当たるか。当たらないと思う。口開けて見ているしかない」との見方を示した。「実験したときは成功したと言うが、それは、『はいこれから撃ちますよ。はい、どーん』と撃ったやつだった。いきなりドーンと撃ってきたら、なかなか当たらない」とも述べた。


政府筋「7、8分たったら終わっている」北ミサイル迎撃に懸念:産経新聞
政府筋は23日、北朝鮮が弾道ミサイルを発射した場合に備える日本のミサイル防衛(MD)システムについて、「(事前予告がなければ、ミサイル発射から)7、8分たったら、浜田靖一防衛相から麻生太郎首相の所に報告に行ったら終わってる」と述べ、政府内での迎撃手続きに時間がかかると、撃ち落とすチャンスがなくなるとの見方を示した。


「バーン」とか「ドーン」とかお子様ですか、この政府筋さんは。とても頭が良さそうな人には見受けられないです・・・そしてこの方のMDに関する認識は完全に周回遅れです。今時ピストル(鉄砲)を例えに出したMD批判なんて、昨年にアメリカ軍がMDで軌道を外れた人工衛星を撃墜して見せてからは殆ど見られなくなった類のものですし、MD実験についての認識も古過ぎです。アメリカ軍はMDに関して、発射時刻を知らせない不意打ち実験を既に何度も成功させています。『はいこれから撃ちますよ。はい、どーん』という単純な実験の段階はとっくに過ぎ去っています。政府筋も中曽根外相も、MDに対する知識が全く無いのに印象だけで語るのは止めて欲しいものです。ましてや政府方針に異を唱えるに近い不用意な発言は、その政治センスの無さを疑われるものでしょう。

また、迎撃手続きに時間が掛かると撃ち落せないという主張に至っては、自分たち政府が決めた自衛隊法改正を全く理解しておらず、話になりません。

▼弾道ミサイル防衛政策(平成19年度防衛省PDF資料)

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前以て破壊命令を出しておく事で、閣議を経ず現場の判断で迎撃できるように法整備を行った筈です。

ただし、テポドン2が予定通りのコースを正常に飛行した場合、MDによる迎撃は不可能です。テポドン2は大陸間弾道弾に近い射程を有しており、高高度を飛んでいく為、現時点のMD装備で性能的に迎撃可能なものはアメリカ本土防衛用のGBIだけです。しかしGBIはアラスカとカリフォルニアにのみ配備されている為、ハワイ方面に向って飛んでいくテポドン2を迎撃する事は出来ません。

その為、日本が想定しているテポドン迎撃の準備とは、テポドンが予定通りに飛行していかない場合、事故あるいは意図的に日本国土に落下してくる不測の事態に備えてのものです。そもそも可能性が低い事態に対処する為のものであり、テポドンが打ち上がったら何が何でも撃墜するというものではありません。最も警戒されているのは、切り離されたブースターが予定外の場所に落下してくる可能性なのですから。

意図的にテポドンで日本本土を狙って撃って来る可能性は著しく低い(それをやるならノドンを使う)のですが、ミサイルの能力として不可能ではありません。長射程の弾道ミサイルでも極端に高く上がる弾道(ロフテッド軌道;lofted trajectory)や極端に低い弾道(ディプレスト軌道;depressed trajectory)を行えば、近距離へ叩き込むことは可能です。

可能性としては低いのですが、不測の事態に備えているのであり、SM−3を搭載した海上自衛隊のイージス艦は落ちてくるブースターを警戒し、航空自衛隊のPAC−3を東北地方に移動配備する意味は、本気で迎撃の用意をしていると言うよりは「PAC−3は首都圏しか守らない」という批判を払拭する絶好の機会であるからです。現在までアメリカ軍は三沢基地に米本土のTHAAD部隊を呼び寄せておらず、日本本土攻撃の可能性はまず無い事を理解しています。4月に予定されている北朝鮮のテポドン2発射は、早期警戒衛星及びイージス艦と青森県車力に配備されたアメリカ軍のXバンドレーダーで捕捉、追尾データを得る事になるでしょう。何か突発的な事態がなければ、基本的にはそれで終わりです。
00時30分 | 固定リンク | Comment (378) | ミサイル防衛 |
2009年03月27日
3月初めに、アムネスティのガザ報告書について色々書きました。その中で報告書に記載された明確な間違いとして、フレシェット弾の件(ガザで使用されたフレシェット弾について)と照明弾の件(照明弾と白燐弾を混同したアムネスティ報告書)を挙げました。

そして暫く後にメールで「砲弾の件は貴方の指摘通りかもしれないが、アムネスティの報告書全体の論旨から見れば枝葉瑣末な話ではないですか?」という意見を頂きました。しかし砲弾のサイズを間違えるのはともかくとして、砲弾の中味を取り違えてしまうのはかなり致命的な話だと思うのですが・・・分かりました、それではアムネスティのガザ報告書について、全体の論旨、その提言の根本的な認識の誤り、そしてこの報告書がどれだけ的外れであるか、簡単に解説します。

話そのものは簡単なのです。この報告書はタイトルと冒頭で言いたい事の肝心な部分が載っているので、先ずはそれに目を通して下さい。


Fuelling conflict: Foreign arms supplies to Israel/Gaza (PDF)
Both Israel and Hamas used weapons supplied from abroad to carry out attacks on civilians. This briefing contains fresh evidence on the munitions used during the three-week conflict in Gaza and southern Israel and includes information on the supplies of arms to all parties to the conflict. It explains why Amnesty International is calling for a cessation of arms supplies to the parties to the conflict and calling on the United Nations to impose a comprehensive arms embargo.


タイトルは「紛争を煽るイスラエルとガザへの外国による武器供給」とあり、続く文章ではアムネスティが紛争当事者への武器供給の停止を求めている事、国連に包括的な武器禁輸措置を取るように求めている事が述べられています。

要するにイスラエルにもハマスにも武器を与えないようにしよう、そうすれば紛争は過熱しない筈だ・・・そういった主張です。そして結論を言わせて貰えれば、まず実行不可能であり、そして仮に実行できたとしても何の効力も発揮しないでしょう。アムネスティのこの提言はするだけ無意味です。特に、仮に苦労して達成できたとしても紛争を解決する役には立たないという意味において、この報告書の意義そのものが問われてしまいます。

報告書はアメリカがイスラエルへ大量の武器を供給している事を非難しています。非難自体は構いませんが、アメリカがイスラエルに武器を売らなければイスラエルは戦争できなくなると思っているなら、完全に誤りです。イスラエルは最新鋭兵器ですら自国内で自力生産が可能です。つまり海外から武器供給が途絶えても、イスラエルにとってそれは軍事行動の停止を意味しません。大規模総力戦をやっている最中ならこれは大きな痛手ですが、ガザ侵攻やレバノン侵攻のような低強度紛争では、さして問題にならないでしょう。

イスラエルがアメリカから大量の武器を買っているのは、安く仕入れられるからです。実質上の援助兵器の譲渡ですが、仮に国連によってイスラエルへの武器輸出を禁止に出来るかというと、拒否権を持つアメリカの存在だけでもはや実現不可能ですし、仮に達成できたとしても、アメリカが資金援助を行い、イスラエルが自力で武器を製造すれば、武器禁輸など何の意味も持たなくなってしまいます。

ハマスについても、主力兵器であるカッサム・ロケット弾は自家生産が可能な簡易な構造です。アムネスティはロケット兵器の原材料の禁輸も訴えていますが、一般的な民生用材料で製作できてしまうので無理です。しかもイラン経由で本格的な軍用ロケット弾であるグラド・ロケット弾も地下トンネルから入り込んでおり、最初から密輸という形態をとっているため、ハマスへの武器供給を止める為に国連ができることはあまりありません。

その為、イスラエルは他国の主権を無視してまで、ガザへの武器密輸を実力で阻止しようとしています。

イスラエル、1月にスーダン空爆か=イランからガザへの武器密輸阻止:時事通信

イラン→スーダン→エジプト→ガザという武器密輸ルートの途中で空爆を行っています。

果たしてアムネスティはこういった現状を把握しているのでしょうか。実現性が乏しい提言を行うだけなら、まだ理解できなくもないです。理想と現実にはギャップがあるのは仕方が無い話です。ですが、仮に実現できても何にも事態が変わらないという提言に、一体何の意味があるのでしょうか?

イスラエルへの武器禁輸を行っても、彼らは自力で武器を生産してしまいます。ハマスも武器を自力生産できますし、外国からの武器入手では最初から密輸しているので、禁輸措置を取った所で状況は特に大きくは変わりません。私には、アムネスティによるこの報告書の提言に何か有用な意味があるとは思えないのです。

・・・とこう書くと、じゃあお前は何か有用な提言が出来るのか、言えもしないのに好き放題言うな、と言われそうなので、一つだけ消極的ですが問題の解決策を提案しておきます。ハマスはヒズボラと違って直接戦闘力はかなり低いので、カッサムやグラドのようなロケット弾さえ何とか出来れば、無理に直接侵攻して掃射する必要性がなくなります。

つまりロケット弾を撃墜してしまえばよいのです。


ロケット弾迎撃のミサイル・システム開発、成功と、イスラエル:CNN
イスラエル国防省は27日、隣国レバノンや境界を接するパレスチナ自治区ガザから撃ち込まれる短距離ロケット弾や砲弾を阻止する迎撃ミサイル・システムの開発に成功したと述べた。

「アイアン・ドーム」と呼ばれるシステムで、短距離ロケット弾を使った実験にも成功したとしている。バラク国防相は、システムの開発成功で飛来するロケット弾の多数の着弾を防ぐことが出来ると強調した。

同システムは、移動式で、全天候条件下、距離約70キロまで対応。開発元の地元企業、Rafael Advanced Defense Systemsによると、空中の標的を数秒内に破壊可能としている。


[PDF] Iron Dome - Rafael Advanced Defense Systems

ただしこの「アイアン・ドーム」は問題の根本的解決にはならないでしょう。この兵器は開発途中に予定された性能を満足に発揮できず、計画中止寸前に追い込まれていた代物で、曲がりなりにも完成に漕ぎ付けたようですが、これでハマスが放ってくるカッサム・ロケット弾やグラド・ロケット弾を完全に無力化するには、まだ程遠い性能です。しかも誘導ミサイルである為、一発の単価は高価なもので、単価が非常に安いロケット弾相手には費用対効果が割に合いません。これがMDならば、高価な弾道ミサイルを相手にするので十分に見合うものですが、「アイアン・ドーム」だけでハマスのロケット弾を全て撃墜しようとするのは、労力的にも資金的にも性能的にも無理があります。

つまり結局の所、迎撃レーザー兵器の完成を待つしかないのでしょう。

戦術高エネルギーレーザー - Wikipedia



アメリカとイスラエルが共同開発するTHEL(Tactical High-Energy Laser)ならば、リアクションタイムが極端に短い短射程ロケット弾の迎撃に申し分無い即応性を発揮し、一射撃辺りの単価も安く、ハマスのロケット弾を完全に無力化できる可能性を秘めています。しかし破壊用レーザー兵器の実用化となると困難を伴うのは当然で、軍内部でも実用化について懐疑的な意見があります。その為、以下のような手堅い兵器も開発中です。「アイアン・ドーム」もこの手堅い迎撃兵器の部類です。

Counter-RAM - Wikipedia



アメリカ軍は既存の技術からバルカン・ファランクスの陸上型「LPWS」を作製し、既にイラクで実戦投入試験が行われています。弾をバラ撒くので市街地に着弾しないように、20mm機関砲弾は自爆機能を有しています。C-RAMは幾つかの種類が提案されており、50mm機関砲弾に弾道修正機能のあるサイドスラスター付き誘導砲弾を使用するものも開発中です。

現在、レーザー兵器を含めて様々な種類の対ロケット弾迎撃システムが開発中であり、もし高確率でロケット弾を阻止できるようになれば、イスラエルはガザへ侵攻する理由がなくなります。
23時45分 | 固定リンク | Comment (412) | 平和 |
2009年03月30日
あれからトラックバックが無かったので放置していたのですが、scopedog氏は私宛の記事を書いていたようです。トラックバックなりコメント欄なりメールなりで連絡をしないと気付かなくて当然でしょうに、何をやっているんでしょうか。返事を要求する記事を書いておきながら通告をせず、返答が無ければ勝手にコソコソと勝利宣言とか、ちょっと臆病すぎるんじゃありませんか?

夜中の1時にUPした記事に対して朝6時に反論?を書くほど反応が早いならTBいらない気がする - 誰かの妄想・はてな版

JSF氏への返事・もういい加減けりをつけたいね - 誰かの妄想・はてな版

Phosphorecence(Phosphorecent)の使用例 - 誰かの妄想・はてな版

"a phosphorus flare"・あくまで参考として。 - 誰かの妄想・はてな版

放置中にscopedog氏は以上の4つの記事を書かれていますが、1番目の記事は核心部分からの話題逸らしに終始し、2番目の記事は簡単な質問(「マグネシウムと硝酸ナトリウムが燐光物質だとでも言うのですか?」)について、「分かり難い」と無理矢理に難癖を付けた揚句に、質問に対して質問で返すという有様で、3番目の記事が「使用例」だそうですが、何故か「phosphorus」の用例ではなく「phosphorecent」の用例であり、しかも自分で「燐光"のような"光」と訳して燐光そのものではないと認めており、4番目の事例は、照明弾の中身がマグネシウム粉&硝酸ナトリウム(ないしアルミニウム粉)であるという証明が無く、どの記事も的外れとしか言いようがありません。もしscopedog氏に他に用意している手札が無いのであれば、期待外れな結果となってしまいました。

それでは論点をもう一度整理してみましょう。そもそも私が問題にしているのは、アムネスティのガザ報告書に書かれているM485A2照明弾に関する記述です。


(PDF) Fuelling conflict: Foreign arms supplies to Israel/Gaza | Amnesty International
Amnesty International delegates encountered 155mm M485 A2 illuminating shells used by the IDF which had landed in built up residential areas in Gaza. These eject a phosphorus canister, which floats down under a parachute. At least three of these carrier shells were found which had landed in people’s homes. These shells are yellow and one had the following markings: TZ 1-81 155-M 485 A2. TZ is a known marking on Israeli ammunition.


アムネスティはこの報告書で、M485A2照明弾に対してこう記述しています。

「These eject a phosphorus canister」

この部分を訳せば「これらは燐(の入った)容器を放出します」となるわけですが、しかしM485A2照明弾の中身はマグネシウム粉と硝酸ナトリウムであり、燐(phosphorus)が入っているわけではありません。そしてこの指摘に対してscopedogさんが「phosphorusには光という意味もあるんだ」と言い出したのが議論の始まりなのですが・・・

Farlex英英辞典の「phosphorous」の項目を見れば分かりますが、用法の1番目の意味が原子番号15番の元素である「燐」であり、2番目の意味が「燐光物質(A phosphorescent substance)」、最後にギリシャ語の語源「光を運ぶもの」が紹介されています。

まず現代の用法で古い語源の意味で使う事はありません。1番目の意味で使っているならアムネスティの間違いは確定となり、scopedog氏は2番目の意味「燐光物質(A phosphorescent substance)」から何とか意味を捻り出そうとされていますが、途中で「燐光物質」という単語から勝手に「物質」という部分を捨て去り、単なる「燐光」のみの話にすり替えて議論を続けています。ここがscopedog氏の主張が誤魔化しである部分です。

簡単に言うと、「phosphorous」という単語は1番目の意味も2番目の意味も両方とも燐ないし燐光物質という物質の事を指しているのであり、光の事を指しているわけではないのです。

再度言いますが、アムネスティは報告書に「These eject a phosphorus canister」と記載しており、あくまで「phosphorus」と書いているわけです。「phosphorecence」や「phosphorecent」とは書いていません。つまり「phosphorus」が仮に原子番号15番の燐という意味以外である場合、「燐光物質(A phosphorescent substance)」という意味になるわけです。同じ文章中に「eject」や「canister」という単語が使われているのを見ても、光を放つというような意味では使えず、「phosphorus」という物質が容器に詰められて排出されるとしか解釈できません。

文脈の流れを見ても対象が物質である事は明白です。単語だけで見ても物質である事は明白です。そして「phosphorus」という物質が何かと問われた時、観測者の距離は関係ありません。物質そのものの性質は観測距離とは無関係な話です。scopedog氏の主張するような「観測者が熱を感じられなければ・・・」という誤魔化しは、通らないのです。

ですから私は前回、こう質問しました。

『そこで聞きたいのですが、scopedog氏はマグネシウムと硝酸ナトリウムが「燐光物質」であると本気で思っているのですか? 物質とある以上、物質そのものの性質が問われているわけです。その点は理解されていますか? 要するに遠くから観測するから熱の無い光だ、という主張は全く通用しないのです。』

未だにscopedog氏はこの単純な質問に答える事が出来ていません。当たり前の話ですが、こんなものは燐光物質(簡単に説明すると蓄光性を持つ夜光塗料の原材料)ではないのです。

そもそもアムネスティ報告書の照明弾の項目に記載されている「phosphorus」とは原子番号15番の元素である「燐」を意味するつもりで書かれてあると理解するのが普通で、「燐光物質」と解釈するだけでも無理があるのですが、これまで説明したように、仮にどちらの意味で使われていようと間違いである事に変わりはありません。
22時54分 | 固定リンク | Comment (101) | 議論 |