北朝鮮のロケット打ち上げに対応するために自衛隊はイージス艦とPAC3を配備しています。アメリカ軍からも海上配備Xバンドレーダーや各種観測機、イージス艦などが日本周辺に出動しており、その中にハワイのパールハーバーを母港とするイージス駆逐艦オカーンの姿がありました。ちょうど1年前、イージス艦による弾道ミサイル迎撃実験FTM-15「星のカロン」で射程3700km級の中距離弾道ミサイル標的の撃墜に成功し、迎撃ミサイルSM-3ブロック1Aが優秀な性能を持つ事を証明して見せたのがこのオカーンです。現在、中距離弾道ミサイルを撃墜した実績を持つ世界で唯一の艦です。
(2011年4月18日)
イージス弾道ミサイル防衛が中距離弾道弾の迎撃実験に成功イージス艦弾道ミサイル防衛の大気圏外迎撃用ミサイル「SM3ブロック1A」は
最大射程1200km、迎撃高度500km、速度4km/sを目標に開発されています。※PDF資料
AEGIS TMD: Implications for Australia 18ページ
"The SM-3 Block 1 missile is being developed to achieve exoatmospheric intercepts of medium to long range ballistic missiles at ranges to 1,200 km and altitudes of 70–500 km. Based on the SM-2 Block 4 design, the SM-3 also employs a third stage dual-pulse rocket motor as well as a fourth stage autonomously manoeuvring 23 kg kinetic warhead to impact the target at a speed in excess of 4 km/s."
欧州ミサイル防衛の配置場所からも、SM3ブロック1Aと1Bは迎撃高度500kmは上がれると推定できます。イラン西部から射程3000km級の中距離弾道ミサイルを発射するとドイツのベルリンやイタリアのローマに届きますが、ルーマニアの地上配備SM-3や地中海、黒海のイージス艦から迎撃するにはそれだけの能力が必要です。
北朝鮮は今回のロケット発射で人工衛星を高度500kmの地球周回軌道に乗せると発表しています。つまりロケットは正常に飛行した場合でも高度500kmまでしか上がりません。
「衛星、高度500キロを周回」=資源探査にも活用と主張−北朝鮮:時事通信テポドン2改造ロケット「銀河3号」は、本来2段式ミサイルであるテポドン2の弾頭ペイロードを第3段ロケット+小型人工衛星に置き換えたものです。弾道ミサイルとして弾道軌道を飛ばせば最大到達高度はもっと高く上がれますが、人工衛星を軌道投入する必要上、目的の高度以上に上がる事はありません。
イージス弾道ミサイル防衛は2008年に、制御を失って落下してくる人工衛星NROL-21をイージス艦レイク・エリーのSM3ブロック1Aで撃墜しました。この時は速度17,000mph (7.8km/s)のNROL-21を高度247kmで破壊しています。
"DoD Succeeds In Intercepting Non-Functioning Satellite"能力的にSM-3は正常飛行する銀河3号に届きます。ただし正常飛行する場合は日米のイージス艦は迎撃を行わない方針です。万が一、沖縄方面に落下する場合は韓国の西を飛行中に何らかの不具合が発生した場合です。この場合は済州島の西あたりで弾道頂点を迎える射程1500km級の準中距離弾道ミサイルと類似した軌道になります。不具合が起きた後は弾道ミサイルとして軌道を計算し、領土に落ちてきそうなら迎撃します。なお大気圏外ならば空気抵抗が無いので、不具合発生して以降は再突入するまで複雑な動きはしません。
赤い四角は北朝鮮が発表した第1段ロケットと第2段ロケットの落下区域です。ロケットの燃焼はそれぞれの落下区域より前に止まります。第2段ロケットの燃焼途中で不具合が起きた場合、済州島の西あたりで弾道頂点に達し、沖縄周辺に落下してきます。東倉里から沖縄本島まで約1500km、石垣島まで約1700kmです。第2段ロケットに問題無ければ日本周辺には落ちてきません。第3段ロケットは成功すれば衛星と共に軌道に乗ります。なお衛星フェアリング落下区域については北朝鮮から通告がありませんでした。