2008年11月09日
11月6日の記事「オバマ大統領の誕生と軍事政策」でチェコ紙の記事などを例に「ポーランドとチェコは、オバマが米次期大統領になっても東欧MD配備をそのまま進めるだろうと認識している」と紹介しましたが、7日にオバマ次期米大統領自身が「ロシアに反対されてもMD配備をそのまま進める」とポーランドのカチンスキ大統領に電話会談で語りました。




ロシアは米大統領選の結果が判明しオバマが当選したのと同時に、ポーランドへのMD配備の牽制として飛び地カリーニングラードへ短距離弾道ミサイル「イスカンダル」の配備を発表、米次期大統領に対して圧力を加えましたが、オバマは意に介す気がありませんでした。

ロシア、ポーランド隣接の飛び地にミサイル配備 - 日経新聞

なお最新鋭のイスカンダル短距離弾道ミサイルですが、グルジア戦争の際に損傷の少ない不発弾が丸ごと回収されてしまい、アメリカ側に性能を解析されてしまっている恐れがあります。命中精度の高さが自慢のミサイルなのですが、目標を外れてトンでもない所に落ちてしまい、ロシア側による回収が出来ませんでした。

「ゴリに着弾したロシア軍の大型ミサイル(イスカンダルと推定)」

イスカンダルは短距離弾道ミサイルである為に飛行高度が低く、大気圏外の高々度で迎撃を行うポーランド配備のGBIでは迎撃できません。その為、大気圏内迎撃用のPAC3を配備して防御する必要があります。一部ではイスカンダルの事を「MDを突破できるミサイル」と紹介するケースがありますが、このミサイルが発射後に行う軌道変更はアメリカ軍のATACMS短距離弾道ミサイルと同様に発射地点を対砲レーダーで探られない為のものであり、特にMD突破を意図したものではありません。


今回のオバマ談話により、アメリカ次期政権でもミサイル防衛の存続と推進が確定しました。当初はMDに否定的な事も口にしていたオバマですが、今となってはその様子を垣間見る事もありません。MD以外でも軍縮について積極的に動き出す様子が見られず、防衛予算の大幅な削減も行わないことが分かっています。軍事面以外でもオバマは、一年前にはNASAの予算を削って教育予算に廻すと語ってもいました。これでスペースシャトル後継機計画が大きな影響を受ける所でしたが、ところが三ヶ月前に前言を翻し、NASAへ20億ドルの追加予算を行う事を認めました。

オバマの政策・戦略は、本人が若く経験がまだ浅いために、周囲のスタッフの意見をよく聞いて取り入れる必要に迫られています。故にこのような主張の転換、変化が多くの分野に見られ、政権が本格始動する来年までにまた変わっている事も有り得るでしょう。
01時39分 | 固定リンク | Comment (33) | ミサイル防衛 |

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  1. 当たり前っちゃあ当たり前ですが、やはり大筋では外交方針に変化なしですね、オバマ政権。

    オバマ時代―日本外交も刷新のときだ(朝日新聞社説)
    ttp://www.asahi.com/paper/editorial20081107.html

    「「ブッシュ後」の米国が、そして世界が大きく変わろうとしている……選挙中、オバマ氏が発したメッセージを思い出してみよう」
    「日本政府にとっては、ハシゴをはずされた感があるに違いない」
    残念、ハシゴを外されたのは朝日新聞のようで。
    まあ自分で勝手にはしごをかけて誰も居ないところに登ってたただけですが。

    Posted by 名無しОбъект at 2008年11月09日 02:06:53
  2. 夜遅くの更新お疲れ様。


    Posted by 名無しОбъект at 2008年11月09日 02:14:17
  3. オバマのこの決定は、MD反対派のプロ市民にとっては失望だろうなぁ。

    Posted by 名無しОбъект at 2008年11月09日 02:31:37
  4. こうも真逆になるとは……
    その内、民主党政権≒中国寄りっていう先入観も
    オバマ次期大統領が払拭させてくれるだろうか?

    Posted by 名無しОбъект at 2008年11月09日 02:35:03
  5. 熱心な支持者は大いに幻滅するだろうね>オバマ



    Posted by 名無しОбъект at 2008年11月09日 02:36:36
  6. オバマと世界:識者に聞く ロシア・米国カナダ研究所副所長・クレメニュク氏
    http://mainichi.jp/select/world/news/20081107ddm007030044000c.html
    >オバマ氏は米国の東欧へのミサイル防衛(MD)計画に懐疑的な考えを持っているかもしれない。民主党主導の議会が同調して、巨額な資金拠出に反対する可能性もある。
    ----

    いきなり外れたクレメニュクさん涙目。

    Posted by 名無しОбъект at 2008年11月09日 02:57:50
  7. 逆に日本の民主党は指導部が軒並み高齢で経験も下手に豊富だから心身の内外に制約が出来すぎて身動きが取れない。

    Posted by 名無しОбъект at 2008年11月09日 02:58:48
  8. >7

    前テカさんは? 軍事に詳しい民主党の若手ホープ、前テカさんなら日本のオバマになれると思う。

    Posted by 名無しОбъект at 2008年11月09日 03:15:00
  9. むしろロシアがオバマ就任で挑発に出た事がオバマの姿勢修正を強いてしまった面もあるよ。
    就任当日にロシアの恫喝に屈したとあっては話にならないからね。オバマが周囲に関係なく政治的宣伝の為に勝手に撤回する分には可能性があったとしても、
    ロシアの恫喝が理由という形で引く事は出来ない。

    >>7
    選挙対策で我慢してるだけで日本の民主党はまとまりが無くバラバラ。仮に政権をとっても
    昔の様に自壊しそう。

    Posted by 名無しОбъект at 2008年11月09日 03:29:17
  10. したがって、オバマに変な期待している人達の希望、北朝鮮、イラン、ロシア相手への大幅譲歩というのは難しい。
    なぜなら、どの国もまず妥協という事を知らない、約束を守る事が無い事について定評がありすぎるので・・・
    一時的に熟慮するというポーズをみせたとしても、結局どうなるかは、過去の例を見るまでもない。
    結局、ロシア、イラン、北朝鮮が何らかの譲歩をしてオバマに政治的得点を挙げさせないと進展が無い。

    Posted by 名無しОбъект at 2008年11月09日 03:33:19
  11. >>8
    これまでの体たらくを見るに、オバカさん止まり
    のような・・・

    Posted by 名無しОбъект at 2008年11月09日 03:42:37
  12. <オバマ大統領誕生へ>世界のメディアは(3) 中国−−「楽観を許さない」 韓国−−保護主義回帰を警戒
    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081108-00000008-maiall-kr
    >中国共産党機関紙・人民日報が発行する6日付の時事情報紙「環球時報」は中国人識者5人のインタビューを一挙掲載し、オバマ氏の対中政策について「楽観を許さない」と伝えた。同氏が選挙期間中、対中摩擦が多い分野として(1)貿易不均衡(2)為替レート(3)知的財産権の保護−−を挙げたと指摘。「中国の内政に口出しした」と不快感をあらわにした。
    -----

    オバマは親中だと騒いでいる奴らはこの事態を同認識してるんだろ。ヒラリーならともかくね。

    Posted by 名無しОбъект at 2008年11月09日 03:49:54
  13. オバマ大統領誕生へ:世界のメディアは(2) ロシア−−「緊張緩和へ」、英国−−「変化ない」
    http://mainichi.jp/select/world/news/20081108mog00m030006000c.html

    ロシアの期待は早速裏切られた形だが・・・イギリスは冷静だな。

    「6日付タイムズ紙はオバマ氏の当選に関する「米国は言われるほど変化していない」との論説で、欧州流社会民主主義に変身しないと述べた。同氏の得票率はマケイン氏を6ポイント上回っただけで、民主党の大勝と言えないと指摘。政治意識に関する出口調査の回答はリベラル派22%▽穏健派44%▽保守派34%で、「米国は依然、中道右派の国だ」と強調した。」

    「6日付デイリー・テレグラフはコラムで「いずれ新大統領は外交政策の危機に行き着く」と予測。安全保障問題などで米国の国益と欧州の見解が衝突し、オバマ氏への「大いなる幻滅」が広がり、「6カ月もあれば反米主義が息を吹き返す」と冷めた見方を示した。」

    Posted by 名無しОбъект at 2008年11月09日 03:53:13
  14. >>11
    所謂保守合同の意味での保守側から言えば民主内の意見を不統一にする効果はある。憲法改正レベルの懸案が持ち上がったとき改憲側で使えれば十分な存在価値だし、それ以上は期待して無い。

    獅子身中の虫なら自民党にもいるじゃないか、と言うかも知れないが、官僚と財界と学界の半分をバックにしていることで膨大な政策情報とシンクタンクを抱えているのと同じ状況なので同列には言えない。地方じゃ草の根レベルの組織力も違うからそう言う意味でも上がって来る情報は多い。民主はマスコミと浮動票受けはするけど本当に意味のある情報戦では全敗でしょ。

    民主党の構造は社会党時代から背景の構造に進歩が無く、労組と浮動票頼みで与党のような情報処理能力は無い。理想主義的な学界の半分が加担するだけだ。

    仮に民主議員全員の教養が共産の指導部並みに優れていたとしても政策は多くの人間の知恵を集合させて形成されるから意味が無いんだよね。自民の場合は背負っている権益が資本家・消費者同士ガチンコで競合するから、そういう意味では坩堝。他人の話は聞く習慣をつけざるを得ないし、むしろ知的レベルの低さを自覚している議員の方が舛添や竹中なんかより姿勢は謙虚な傾向があるように思う(タレントとかは別。2世系)。誰かがオオポカヤってもまともな方向に軌道修正がかかる。

    まあ、筑摩の新書で自民党のこと取り上げた本はそれも終わりだと言ってるが、民主党の基本構造が完全無視だからなぁ、あの本。

    Posted by 名無しОбъект at 2008年11月09日 04:30:55
  15. >>13
    そうなると仲介役として英国の存在が際立つとかまた夢見てるのかもしれないよ。冷静に見えて見栄っ張りだからね。

    Posted by 名無しОбъект at 2008年11月09日 04:36:13
  16. >>12
    米国民主党が比較的中国よりだったのは怪しいお金が流れていたのもあるが、
    政局判断として局面に立たされていないからだというのもある。

    日本の民主党と違ってあっちの民主党は長年の経験のある政党なので判断する場にたった時、
    国民にアピールしてみせなければならない。

    米国の経済が不安定に陥っている今、中国の諸問題に毅然とした態度を見せないと総スカンにあう。
    日本みたいにマスコミの方が侵略弾圧犯罪大好き中国にペコペコする所ばかりなら別だが。

    Posted by 名無しОбъект at 2008年11月09日 05:24:21
  17. 「ミサイル防衛約束」を否定=ロシアに配慮、慎重姿勢−オバマ陣営
    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081109-00000012-jij-int

    一体どちらが正しいんだ?

    Posted by 名無しОбъект at 2008年11月09日 09:19:05
  18. 「ミサイル防衛約束」を否定=ロシアに配慮、慎重姿勢−オバマ陣営
    11月9日9時10分配信 時事通信
    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081109-00000012-jij-int

    まだ政権が固まらない内はロシアとことを構えたくないってことでしょうか。
    オバマ氏本人ではなくて安全保障分野の顧問の話ってのが気になりますが。

    Posted by 名無しОбъект at 2008年11月09日 11:24:26
  19. 朝日新聞はもうキチガイ専用に特化する道を選んだんじゃないの?
    あまりにも世間一般の信頼を失っちゃったから、
    常識路線に戻ろうとしても何を今更って事で見向きされないだろうし、
    常識路線に戻ろうとすれば、現在の主要購読層=キチガイにすら見放されてしまう、
    だから地獄行き一直線とは知りながら、キチガイ御用達をやめられないのだ、
    ってな、こんな感じなんではないでしょうか。

    Posted by 名無しОбъект at 2008年11月09日 12:59:01
  20. >>1
    就任前のリップサービス全開な国内向け演説で
    世界が大きく変わるほど、基本的な世界戦略を変更できるほどアメリカ次期大統領も偉くはないわな。

    まぁ朝日が本当に言いたいのは
    >「日本政府にとっては、ハシゴをはずされた感があるに違いない」
    >米国の戦略に付き従うことが自動的に国益にかなうと言い張れた時代は過ぎ去ろうとしている。
    の方で、実はオバマが何を言ったかなんてどうでもいいという罠。



    Posted by 名無しОбъект at 2008年11月09日 14:20:29
  21. 私が気になるのはバイデン副大統領がかつてイランの核開発を容認するかのような発言をしたことなんですよね。
    http://www.tkfd.or.jp/blog/sasaki/2008/09/no_360.html

    一応オバマ大統領はイラン核開発を否定しましたけれど。イランからオバマに祝電が来たのはそのせいですかね。本当に大丈夫かな…

    Posted by 名無しОбъект at 2008年11月09日 14:26:49
  22. >>20
    朝日は毎年それ言うんだよな。いや、毎回か。どんな小さな交渉でもそれ一つで日米関係全てが
    梯子外される論へと行き着く。そしてそうなったらもう中国しかないぞ!乗り遅れるな!と繋ぐ。

    Posted by 名無しОбъект at 2008年11月09日 15:15:33
  23. 昔から変わらんな、そのへん

    Posted by 名無しОбъект at 2008年11月09日 16:20:44
  24. しかしこれだけ圧倒的な人気を得て当選された方ですから
    これだけいろいろ自分の言をひっくり返してるのを見ると
    非常に危うさを感じますねぇ

    Posted by 名無しОбъект at 2008年11月09日 17:13:03
  25. > 一体どちらが正しいんだ?

    常識的に考えれば、今の時期にMD推進を明言するわけがないと思いますが。

    Posted by 名無しОбъект at 2008年11月09日 17:19:11
  26. >>24
    オバマ氏の政策は抽象論に留まっていますので、これから具体的な政策を打ち出していくと、色々な分野で自分に都合良く解釈していた方々から非難の大合唱を浴びる可能性がありますね。

    あと一番心配なのは知識、経験不足から来る定見の無さでは無いかと。
    スタッフによって自分の意見が左右されるのでは政策の軸足が安定せず、その結果としてその時々の発言によって国内外が振り回されたり、テロリストやそれらを支援する組織・集団に対して誤ったメッセージを発信してしまう危険性が高いです。

    世界情勢をますます混乱させるような事態になら無い事を祈ります。

    Posted by 名無しОбъект at 2008年11月09日 17:46:20
  27. というか、アメリカは良くも悪くも現実的。
    どっちの政党になろうとも極端な政策転換はおこなわないよ。

    日本のアホな人はオバマさんになったとたん、米軍がイラクからすぐに撤退すると信じている人も多い。

    国防政策をコロってかえるような不安定な政策は絶対に米国はとらないよ。それが強さの秘密でもあるけど。

    ベトナムの撤退も何年かかったと思ってるんだろうなぁ。基本的に民主だから「親中」とか「反日」ってのはないと思う。米国はいつでも冷徹に自国の権益と影響力と国益を重視した「現実的」な政策をとるよ。


    Posted by 名無しОбъект at 2008年11月09日 18:52:54
  28. んま誰がトップになろうとやるべき事は一緒だからな。

    イラク即時撤退も
    中東のあの場所にボッカリ軍事的空白地域を作るなんてアフォな真似は
    アメリカの為政者ならやらんよ。

    Posted by 名無しОбъект at 2008年11月09日 19:13:35
  29. オバマは周囲の人間に丸投げちゃう傾向が強いそうで。
    「それで何か問題ある?無いならそれでいいよ。」みたいな。
    まぁソースは日経なんで、信じるかはさて置き
    オバマ本人より周囲のブレーンの発言に注目した方がいいかも。

    Posted by 名無しОбъект at 2008年11月09日 19:29:48
  30. 時期列で言うと、ポーランド政府が7日にオバマとポーランド大統領の会談でオバマが「ミサイル配備計画を進める」と明言したと発表。その後、8日にオバマの側近(マクドナフ外交政策アドバイザー)が「推進継続を約束したわけでない」とポーランド政府の発表を修正したってことが正解かと。ただし同時に「技術が機能すると立証されれば、システム配備を推進する」とも述べていて、実際にはポーランド側にはかなり前向きな(ポーランドにしたら期待できる)反応を示していたんじゃないかとも。少なくとも日本の一部のメディアが見出しにつけてる「慎重姿勢」はまぁともかく、「否定」とはニュアンスが違うような。

    Posted by 名無しОбъект at 2008年11月09日 20:10:17
  31. >>24
    いや、そこまで圧倒的な訳でもないし、投票に行かなかった休眠票や支持層が無かった浮動票が
    動いた格好だから、あんまり磐石な人気という訳でもない。ヘマ打ったら足元すくわれるよ。

    >>25
    条件付ながら推進を名言してますが。有効性が確認されたらってのは失敗でもしなきゃやるってことだよ。

    >>29
    大統領になると権限が段違いになるので豹変するとかよくあるので、そこらへんは今後どうかな。
    彼がおとなしかったのは有色人種で47歳という比較的若い世代、移民二世に近しい外の人間というのもある。

    Posted by 名無しОбъект at 2008年11月09日 22:00:10
  32. >>30
    結局、オバマは本人が撤回は無いと相手に伝えていて、マクドナフ等が選挙民対策として慌てて誤魔化したって程度だね。
    オバマ自体は結局配備を推進するで止めるという条件が技術問題でしかない。
    民主党として困るってだけでオバマは配備方針を連発でやらかしてる格好。

    Posted by 名無しОбъект at 2008年11月09日 22:13:04
  33. >>30
    反対する内容が技術問題でしかない場合、あんまり意味の無い言い訳なので慎重姿勢ですらないかも。
    情勢を見て等なら分かるんだけどね。まあ、情勢関係無いって言っちゃってるのが現場やポーランドに
    とってのポイント。もはや技術面以外での再判断をしない、規定の方針って事だ。

    態度を翻した事への言い訳に終始した。というのが付けられるべき題かなあ。

    Posted by 名無しОбъект at 2008年11月10日 20:06:24
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