2007年02月27日
実はまだ完全には読了していませんので、取り合えず私以外の人の書評を許可を得て転載して時間稼ぎ紹介する事にしました。

第一弾は某巨大掲示板群で以前、HN「早稲田の論客」を名乗っていた「早稲田の論客だった人」氏です。氏がSNSで投稿されていた反戦軍事学の書評を、SNS内部だけで留めておくのは勿体無いと、ここで丸ごと公開します。


『反戦軍事学』レビュー 書いた人:早稲田の論客だった人
総論として、これはひどい。

前半部の入門編あたりは曲解と印象操作が見受けられる。
例えば、前半部に私小説を入れた空想に近い独白を入れているのが読者に予め感情的印象を与えた上で解説を加える手法からして卑劣だ。
第一章の徴兵制度についても、フランス革命による国民皆兵制度が「市民とは兵役の任を果たす者を指す」好例のはずだ。この徴兵制度が出るまでのフランス革命政権は、義勇兵による募兵が中心であったのだが、思うように集まらずに徴兵制度に切り替えた経緯がある。この点で留意されたいのが、この徴兵制度を決めたのは、フランス王政を打破した共和党政権共和制政権を担うブルジョワ=都市市民階級であり、王政による身分制度が無い以上、革命政権の指導者も国民にあたる。
 にもかかわらず、徴兵制度を敷いたのは革命政権での話し合いで「フランス国民は兵役の義務を負う」と決めたのではないか。これを正反対に「市民は兵役の任を果たす者ではない」とはいえないだろう。
 また、国民国家と国民軍の成立がたとい200年が歴史だというのなら、国家が国民を守る概念すら例外だろう。国家が国民の生活を守れない場合、自然権の範囲として国民が旧国家を打倒し新しい国家を打ち立てる革命権が存在するのは、人権を勉強すれば学ぶ権利だが、この権利はジョン=ロックによって考え出された17世紀終盤の思想であり、それまでは王権神授説による絶対王政であり、国民が国家=王様に反抗することは当然の権利ではなかった。
 またこれ以前の政権が「国民の生活を守る」国家であったかは、歴史が証明しているように、現代にそのような政権が残っているところは極めて少数である。
このような国民と国家の関係を無視した上で「例外的」と指摘したのはどういう事なのか。専制国家は歴史上長い歴史があるから良いとでもいうのだろうか。
 更に追記すれば、同じ時期に生み出された概念には私有財産制度の確立やメートル法もだが、それも例外だからと主張されるのだろうか。

 後半部になると、他著を引き合いに出したうえ、それを切り刻み個人的中傷を加えた上で、誤った見解を加えて自分の論拠すら立てて話せないのが情けない。
 的確な反証もできないまま刹那的、文章を切り出して短く非論理的な批判する行為はにちゃんねるで行われる掲示板の批判と似通ったものではないか。
 例えば石破茂の著作「国防」のくだりでは同氏を「軍事オタク」と呼ぶのはご愛敬としても兵頭二十八氏の著作批判では「軍学者というのは、ここまで非論理的に」「自分で自分が何を言っているのかわかっていない」「味噌汁で顔を洗ってから」などと酷くなる。
 上坂冬子氏では「何も知らないおばはん」「この本から無知と偏向を廃したら何も残らないだろう」「心象風景を紹介して思考停止している」などと枚挙に暇が無い。
 「心象風景を紹介して思考停止」と言うのなら、この本の前半部で稚拙な小説は、一般的でもない心象風景を書いたものであり、思考停止どころではない悪意の思考ですらある。
 またこのような心理的印象下ではまともな反証が書いてあったとしても、読者には感情で書いてあるとしか理解されないだろう。読者の感情が著者と同じであれば別であるが。

少なくとも、これで軍事が理解できるとは思えないし、帯にもあるような徴兵制・核武装など、あくまで個別論点をいかにして反証するかしか書いていない。左翼系の書店にある「救済ノート」(不当逮捕された時にどう行動するか書かれた本)的書籍ではなんら知的成長はあり得ない。まだ「孫子」「墨子」「戦国策」などのほうが、軍事のなんたるかを理解できるだろう。


作成日時 2007年02月18日 18:04
満足度 ★☆☆☆☆

えー・・・林信吾氏の毒舌は著書内でも行われており、他著作でもそれは確認できました。つまりブログのコメント欄でのあの言動も、何時も通りということなのでしょう。

さて、今後の私自身の書評についてですが、細かいツッコミを繰り返していると「枝葉瑣末にケチを付けている」と反論を受けそうなので、「主要部分(森と木の関係で言うと森)」と「細かい部分(木)」に分けて書いていこうと思います。これだと取り上げる部分が多岐に渡り、長い回数が掛かりますが、気長にノンビリやっていこうと思います。

最終的な纏めは消印所沢氏がやってくれる事でしょう。取り合えず私は手当たり次第に書評を書いたり、他者の書評の紹介をして行きます。

19時11分 | 固定リンク | Comment (29) | 議論 |

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  1. >なんら知的成長はあり得ない。
    噛砕いて言うと・・・

    小学生の作文並み?

    ・・・と、理解して良いのかねぇ?

    Posted by ( ̄ー ̄)ニヤリッ ◆dTQkcZeb9M at 2007年02月27日 19:22:23
  2. >まだ「孫子」「墨子」「戦国策」などのほうが

    この中に何故戦争論が入ってないのでしょうか
    いやなんとなく想像はできるけど

    Posted by 名無しОбъект at 2007年02月27日 19:28:37
  3. 「総論」は最後に書くことになると思います。それまでの間は、

    「著者の言いたいこと・論旨の主要部分」
    「著者の書いている軍事分野での間違い」
    「他者の書評の紹介」

    この三つを中心に紹介していきます。
    最初は徴兵制や核武装論から、あと書評の転載依頼は幾人かに要望しています。

    Posted by JSF at 2007年02月27日 21:02:13
  4. >小学生の作文並み?

    違いがあるとすれば、小学生ならば成長が期待できる事でしょうね。

    Posted by 名無しОбъект at 2007年02月27日 21:33:32
  5. なんでまた平和を唱える方々の他者に対する物言いが攻撃的というか嘲笑的というか…
    上からモノを言うようなスタンスになってしまうんだろう。

    長年に渡る疑問点なのです。

    Posted by 名無しОбъект at 2007年02月27日 21:40:23
  6. 今、反戦軍事学を読み進めていますが・・・架空小説部分で出てくる軍オタの「清田」君って、清谷氏がモデルなのかなぁ。

    まぁ、彼と林氏の仲なら彼も笑って許してくれるに違いない。

    Posted by 名無しОбъект at 2007年02月27日 21:45:40
  7. http://d.hatena.ne.jp/noraneko/20061209/p2

    うーん、こんな本でも感銘を受ける人間がいましたよ・・・

    Posted by 名無しОбъект at 2007年02月27日 22:52:57
  8.  では,纏めと重箱の隅つつきを担当させていただくということで.

    Posted by 消印所沢 at 2007年02月27日 22:55:59
  9. あー、私も重箱の隅突付きはしますよ。(一番面白い間違い個所があるので、其処を紹介しないなんて勿体無い)ただそれだけじゃ逃げの口実を与える事になるので、論旨の主要個所と切り離しつつエントリーを起こします。著者の言いたい事の主要個所をまず先に批評してみます。ただそれも複数あるので、細かい部分の指摘のエントリーを間に挟みながら、という形になります。

    Posted by JSF at 2007年02月27日 23:12:47
  10. 武運長久をお祈りいたします

    Posted by 名無しОбъект at 2007年02月27日 23:35:32
  11. 早く食いつかないかな〜♪
      ∧_∧  +
     (0゜・∀・) ワクワクテカテカ
     (0゜∪ ∪ +
     と__)__) +

    太い釣り糸と言うより捕鯨用の銛。
    それとも地雷原?
    あんまり包囲網広げちゃうと、かえって食いつきが悪くなるかな?

    Posted by 仙竜. at 2007年02月28日 00:05:27
  12. 逆に考えるんだ
    むしろ釣り針にかかっているのは俺らと考えるんだ

    これは林さんが自分の本の売り上げを伸ばすための壮大な釣りだったんだよ!!!!

    Posted by 名無しОбъект at 2007年02月28日 00:28:11
  13. >Posted by 名無しT72神信者 at 2007年02月28日 00:28

    な、なんだっt……

    あー…ありえそうだ(苦笑

    Posted by 名無しОбъект at 2007年02月28日 00:35:16
  14. >小学生の作文並み?
    小学生に謝れー。

    などとお約束をやってみる。

    うーん、釣りかどうかはさておき、なんだか自分も「反戦軍事学」を読んでみたくなってきた。(笑
    とりあえず次の書評をお待ちしています。

    Posted by 名無しX-15神信者 at 2007年02月28日 00:46:06
  15. 俺も読みたくなってきたよ。
    「この本を読み間違っていると思われる箇所に対して赤線を入れよ」みたいな感じで、初級軍オタチェック本としてやってみっかな。


    Posted by 名無しОбъект at 2007年02月28日 01:23:24
  16. 俄然読みたくなってきました。
    軍事なんてろくすっぽ知らないけど、斜に構えて読んでみたら素人でも「嘘だっ!」ってなりそうで。

    林神 v.s. 例の SNS の構図が見てみたいのですが。
    むしろ現状の他評がどうなっているのか……
    常識的な時間になったら見に行こう。

    Posted by 名無しОбъект at 2007年02月28日 05:15:33
  17. このオッサンのは「毒舌」じゃなくてもはや「暴言」だと思うよ。
    中身が見れたもんじゃない以上、毒舌って言い方は不適切のような気がする。
    暴言で十分。

    Posted by 名無しОбъект at 2007年02月28日 07:38:27
  18. >むしろ現状の他評がどうなっているのか……

    きちんと批評しているのは既に紹介されている「早稲田」氏と「東部戦線」氏くらいで、後は概ね左翼反戦側の支援評価ばかり。「参考になりました」と書いてある一方で何処が参考になったのか具体的な個所は何も書かれていないのが御愛嬌。

    >林神 v.s. 例の SNS の構図

    消印所沢氏の運営する支隊で専用トピックが立ち、ありとあらゆるツッコミが集積中。

    Posted by 名無しОбъект at 2007年02月28日 08:40:30
  19. >「参考になりました」と書いてある一方で何処が参考になったのか具体的な個所は何も書かれていない

    参考になりました、著者の神がかった言霊の数々を朝日新聞の勧誘員を叩き出す時の言葉遣いに応用してみたいと思います。


    とか?

    Posted by 名無しОбъект at 2007年02月28日 12:28:42
  20. 護憲左派というのは、政策への反論が人格攻撃に終始したり、一般通念上許されないほどの罵倒を行うんでしょうか?
    この傾向は林信吾氏に限らないと思います。ミクシィの安部政権やイラク戦争関連のニュースについたコメントを見るとかなり疑問に思います。

    Posted by 名無しОбъект at 2007年02月28日 12:45:58
  21. あれですね
    軍事本と名売っておきながら、内容は空想ノート
    内容に留まらず、本の存在からギャグをやられると、
    氏の体を張ったギャグなんじゃないだろうかと疑ってみたり

    Posted by 名無しОбъект at 2007年02月28日 17:01:16
  22. >>政策への反論が人格攻撃に終始

    代表例が佐高信かっ!

    Posted by 名無しОбъект at 2007年02月28日 17:45:38
  23. >このオッサンのは「毒舌」じゃなくてもはや「暴言」だと思うよ。
    >中身が見れたもんじゃない以上、毒舌って言い方は不適切のような気がする。
    >暴言で十分。
    >Posted by 名無しT72神信者 at 2007年02月28日 07:38

    その認識にはちょっとズレがありますね、そもそも「毒舌」が毒である所以は「それに直面する事があまりにも辛い事実」が直喩にせよ暗喩にせよばっちりと指摘されているという点にあるのです。
    事実無根の妄想の類はたとえどんなに見るに耐えない事が書かれていようが、これを論破し、きちんとした証拠に基づいて誤りを指摘できるという点に於いて毒性を発揮し得ないデムパに過ぎぬのです。

    そういった情報にはマーカーを引き、ハイパーリンクを併用して的確なツッコミを入れる。
    するとそのヴェクトルは完全に逆転した上、至って志向性の高い「情報爆弾」と化すのです。

    ま、そうやってこまいとこにいちいち突っ込みを入れてまわるのもバカバカしいことではあるんですが。

    Posted by ハインフェッツ at 2007年02月28日 21:02:16
  24. 戦闘的譲歩強要主義者の鑑のようなお人でつね。
    立ち読みで済ませて正解。

    Posted by 名無しОбъект at 2007年03月01日 10:42:07
  25. というか最初の2行でアイタタタなことが分かる、そんなレベルの本です。いやそもそも裏表紙を見た時点で買うのを止めますね、普通。モデルガンを構えてカッコつけてるだなんて、真面目な反戦派でなくても引くって。

    Posted by 名無しОбъект at 2007年03月02日 23:18:17
  26. 二日前その本(反戦軍事学)を買ったのだが・・・なぜか突っ込みを入れたくなるー。それも沢山。まずは一つ。
    米ソをはじめとする、イラクのサダム・フセイン政権に大量の武器を売却したり、(219ページ)
    アメリカはイラクに大量に兵器を売却していません。せいぜいヘリ(ベル206など)とか自走砲(M109)、装甲兵員輸送車(M113)、ステンガー携帯用対空ミサイルぐらいです。フセイン政権に大量の武器を売却したのは旧ソ連やフランス、中国、ブラジルです。




    Posted by 90式改 at 2007年03月03日 19:03:09
  27. >米ソをはじめとする、イラクのサダム・フセイン政権に大量の武器を売却したり、(219ページ)

    その次に「兵器製造技術を供与した諸国」とある。つまり林信吾は90式改氏のようなツッコミへのセーフティーを用意しており、尚且つ読者に「アメリカはイラクに大量の兵器を売った」という間違った情報を誤認させる書き方をしている。

    この卑怯なやり方は、東部戦線氏も同様に指摘している。

    Posted by 名無しОбъект at 2007年03月03日 20:07:50
  28. >「この本を読み間違っていると思われる箇所に対して赤線を入れよ」みたいな感じで、初級軍オタチェッ
    >ク本としてやってみっかな。

    そうか!この本は、初級軍事ヲタク用の「ダウトを探せ」本だったのか!
    期末試験には出ますか?


    Posted by 名無しОбъект at 2007年03月04日 01:25:13
  29. >期末試験には出ますか?

    イラク戦争に投入されているアメリカ軍の人種構成比率、これはテストに出るからな、林君もよ〜く覚えておくように。

    Posted by 名無しОбъект at 2007年03月17日 16:48:14
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