※ベローズ空軍基地。カネオヘベイ海兵隊基地から南に約10km
アメリカ軍のオスプレイは2007年から実戦投入され始めて、2012年の時点で178機が飛行可能状態であると計画主任のマシエロ大佐が述べていました。調達数と飛行可能数は正確には異なってきますが、3年間の追加調達分でオスプレイは既に200機以上が実戦部隊に配備済みとなっています。
そして今回の事故が起きる直前までのMV-22オスプレイの事故率は10万飛行時間あたりクラスAの重大事故が2.12件(海兵隊機の平均は約2.5件)です。年間飛行時間は1機当たり300飛行時間を少し超えるのが平均的で、200機のオスプレイが1年間飛んだ場合は6万飛行時間になります。つまり1年に1回の重大事故を起こしたとしても平均より低い事故率だと言えます。今回の事故を事故率の計算に入れても、それでもオスプレイの事故率は平均的なままです。
この為、オスプレイの安全性に付いてアメリカでは全く騒がれていません。例えば配備数が1500機近いアメリカ陸軍の汎用ヘリコプター、UH-60ブラックホークに至ってはこの機種だけで年間総飛行時間が数十万時間になるので、毎年のように事故で数機失われています。それでも問題にならないのは事故率で見ると別に悪くはないからです。オスプレイは現在200機以上が実戦配備されていますが、将来的には400機以上になる予定です。当然、事故件数は増えていくでしょう。しかし安全性に付いて論じるならば事故発生率で見なければならないのです。
むしろ機体数が100機程度と少ない割に事故が相次いで問題視されているのは海兵隊の大型ヘリコプターCH-53Eスーパースタリオン(および派生の海軍型MH-53Eシードラゴン)の方で、こちらは2012年に2件、2014年にも2件の墜落事故を起こしてしまい、2015年2月7日に問題点検する指示(AFB-346)を海軍航空システム軍団が発令。電気系統を中心に点検作業が今も続いていますが、4月15日にはCH-53Eがカリフォルニア州の海水浴場に燃料系統の不調で緊急着陸して話題になったばかりです。CH-53E/MH-53Eは引退が近付いている老朽機なので修理用部品の在庫も苦しい状況となり、5月13日には一足早く退役した日本海上自衛隊のMH-53Eを部品取り用としてアメリカに譲渡することが日本防衛省から発表されています。
【参考資料】防衛省資料よりオスプレイ事故率データ(2012年版)
オスプレイは2015年5月17日に新たにハワイで3年ぶりとなる墜落死亡事故を起こしましたが、これに加えてこの3年間に発生したその他のクラスA事故を入れたとしても、運用機体数が200機以上になっている為に飛行時間当たりの事故率は大きく変動せず、依然として海兵隊平均以下のままです。その為、この2012年時点での事故率の表も参考になるでしょう。