別添4:MV−22オスプレイ オートローテーションについて(PDF:266KB)
オートローテーションに付いての結論です。

※図の「又は」とあるのは翻訳ミスか意味が不明、無視しても問題ない。
シミュレータによるオートローテーション訓練視察結果
1.初期設定
○ 飛行モード:転換モード(ナセル角87度)
○ 飛行高度 :海抜2000ft(約610m)
○ 飛行速度 :約120kt(時速約222km)
2.オートローテーション開始
○ 両エンジン停止後、垂直離着陸モードへの移行操作を直ちに開始
○ エンジン停止後約2秒でナセル角後方一杯(96度)へ移行完了
3.途中経過
○ フラップを0度に設定
○ 飛行速度は120ktを維持
○ 機体姿勢を制御
○ 降下率は5000fpm(毎秒約25m)
4.飛行最終段階
○ 高度1000ft(約305m)あたりからフレア操作(※)開始
※ 着陸時における一連の機首上げ操作で、通常の進入姿勢から着陸姿勢へ移行するもの
○ 降下率を2000fpm(毎秒約10m)から1000fpm(毎秒約5m)に徐々に減少
○ 高度約500ft(約152m)からは、700fpm(毎秒3.6m)から500fpm(毎秒2.5m)の降下率で降下
5.接地段階
○ 速度も徐々に低下、着地した時は約70kt(時速約130km)
○ 着地の際に脚を出したが、2、3回のバウンドがあった。
降下率のfpmとはフィート/分の事です。5000fpmは毎秒25m、時速約90kmです。これは他のヘリコプター(機体重量によるが降下速度は時速40〜60km、重量級のCH-53Eだと3600fpm、時速65km)に比べて高い値ですが、フレアを掛ける事で降下率を抑える事が出来ます。フレアはオートローテーションを行う全てのヘリコプターが行う重要な操作ですが、この防衛省資料によるとオスプレイのフレアによる降下率の減少は以下の通りです。
・降下率5000fpm(時速91km)高度610m フレアに必要なローター回転力を蓄える。
・降下率2000fpm(時速35km)高度305m フレア開始。
・降下率1000fpm(時速18km)高度305m〜152m
・降下率700fpm(時速12km)高度152m
・降下率500fpm(時速9km)高度152m〜0m 着地。
接地段階での降下率は時速9kmです。なお速度約70kt(時速約130km)とあるのは前進速度(水平速度)を意味します。オスプレイのヘリコプターモードのオートローテーションは通常のヘリコプターと異なり、フレアを掛ける前はかなり急な角度(滑空比2:1)で降りて行きますが、フレアを掛けた後の前進速度が依然として速いままで、着地段階では浅い角度でのアプローチになり、ヘリコプターというよりは固定翼機の滑空着陸に近い印象を受けます。しかしフレアによって降下率が時速9kmまで落とせるなら着陸そのものは可能です。水平速度70ノット(時速130km)は、第二次世界大戦時のレシプロ戦闘機の着陸速度とほぼ同じです。オスプレイのオートローテーションは滑り込むような形になるのである程度広い着地場所を必要とするという点でヘリコプターより劣りますが、広い着地場所を必要とするのは通常の固定翼機の滑空着陸でも同様です。
オスプレイはオートローテーションそのものは可能です。ただし条件が限定される為、頼らないようになっています。このシミュレータでは前進速度120ノット(時速222km)で開始していますが、これはオスプレイのヘリコプターモードでの最大速度に近く、この領域では固定翼機モードへ転換を行っている場合が殆どで、そもそも両エンジン停止時にはオートローテーションの出番よりも固定翼機モードで滑空を行うケースが殆どになります。オスプレイのオートローテーションに出番があるとしたら、基地周辺でのヘリコプターモードでの場周経路の遷回中でなら速度も出ているので試みる事が可能です。なお前進速度が遅く高度が低い場合はオートローテーションが失敗する確率が高くなりますが、それは通常ヘリコプターでも同じ傾向はあります。機体重量が重いほどその傾向は強くなります。
現実的に見てオスプレイで飛行中にエンジン停止が発生する事態は、飛行中の95%を占める固定翼機モードの最中になるでしょう。そもそも両エンジンが同時停止する事態そのものが極端に低い確率で、しかも飛行時間の5%を占めるヘリコプターモードの最中に起こるとなると、確率は更に桁違いに低くなります。オスプレイは両エンジンが離れているので片方のエンジン破損がもう片方に影響を及ぼさないため、両エンジンが同時停止する確率は理論値に近くなります。両エンジンはシャフトで繋がっており、片方のエンジンだけでローターは両方とも回ります。オスプレイは片方のエンジンのみでの安全な着陸は実地で成功しています。

またCH-53EやMCH-101などの大型ヘリコプターはオートローテーションの訓練はシミュレータだけで済ませる場合が多く、それ以下の中型ヘリコプターでも実地訓練は途中までで、接地まで最後までやるのは小型ヘリコプターだけです。オスプレイのオートローテーション訓練がシミュレータだけなのは他の大型ヘリコプターと同様です。
オスプレイはオートローテーション機能自体はあります、ただし使う機会が訪れ無いでしょう。
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