2008年01月08日
以下はノーボスチ・ロシア通信社(РИА Новости)の政治解説員、ピョートル・ゴンチャロフ(Петр Гончаров)氏の書いた記事(日本語版)です。

もはや避けられないMD思想 - ノーボスチ・ロシア通信社

なお、本国ロシア語版の同記事のタイトルは以下の通りです。

Противоракетная оборона как неизбежность? - РИА Новости

元のロシア語記事では?マークが付いています。・・・なんで日本語版は削ってるんでしょうか。それと日本語版にある「思想」という単語もちょっと変ですので、これは「構想」にするか最初から付けないか(元のロシア文にはそういう単語が入ってない)の方が自然です。すると元記事の和訳は「ミサイル防衛はもはや避けられない?」という感じになります。

アメリカのミサイル防衛システムに反対しているロシアですが、実は日本の配備しようとしているMDには反対していません。何故なら反対する法的根拠が無いからであると、記事中で説明されています。(ロシアの反対しているMDは、東欧配備のアメリカ軍の装備)その上、このノーボスチ通信の記事は日本がMDを配備する事に大きな理解を示しています。(専守防衛の範疇であるとまで)

そして記事タイトルと本文中にある通り、もはやミサイル防衛思想は避けられないものであり、今後はMDを含めた戦力の均衡を図っていく段階にあると説いています。アメリカのミサイル防衛に批判的なロシアから、このような主張が出ている事は、少し意外な感じを受けました。しかしそれは当然の事なのかも知れません。

米国の迎撃ミサイル体制の仮想と現実 - ノーボスチ・ロシア通信社

少なくとも近い将来に置いて、ロシアの戦略兵器にとってアメリカのミサイル防衛は脅威ではない(東欧配備予定のMDは配備位置からして米本土防衛用ではない)という分析が為されています。とはいえ、軍がこの程度の事を把握しているのは当然ですが。(つまりロシアのMD反対は多分に政治的なもの)ABM条約(Anti-Ballistic Missile Treaty)からアメリカが抜けた時も、ロシアは反対はしましたが「ロシアの安全保障に影響は無い」との声明を出しています。

なお、ABM条約の対象は「戦略弾道ミサイルを迎撃するシステム」を指すので(戦略兵器削減交渉の対象であるICBMとSLBMが戦略弾道ミサイル)、実はSRBM迎撃用のパトリオットPAC3はABM条約に抵触しません。ロシアのS300V地対空ミサイルもです。スタンダードSM3やTHAADは微妙ですが、戦略弾道ミサイル迎撃システムに組み込まれない限り触れません。つまり現状で嘗てのABM条約に触れる迎撃ミサイルは、GBIとなります。
22時46分 | 固定リンク | Comment (51) | ミサイル防衛 |

2007年12月19日
イージス艦「こんごう」に搭載されたスタンダードSM-3迎撃テストは成功裏に終わり、来月には実戦配備に就きます。今回は購入した9本のSM-3のうち1本をテスト用に射耗しました。








海自イージス艦、初の弾道ミサイル迎撃に成功…ハワイ沖-読売新聞
過去、SM3による迎撃実験は、米軍が13回実施し11回成功しているが、海自が実験するのは初めて。今回は、北朝鮮が保有する中距離弾道ミサイル・ノドン(射程約1300キロ)を想定、模擬弾も、発射後にミサイルの推進部分と弾頭部分が分離する「ノドン型」と呼ばれるもの。分離しない「スカッド型」と呼ばれる模擬弾に比べ、飛行速度(マッハ10前後)が速く、迎撃の難易度は高い。実験の成功によって、イージス艦による迎撃の信頼性の高さが証明された。


なおハワイにはイージス艦の他にUP-3Cも派遣、迎撃テストに参加しています。


AIRBOSS ミサイル標的の探知・追尾に2度目の成功-TRDI
技術研究本部電子装備研究所では、航空機に搭載し、遠距離のミサイル等を捜索し、自動的に探知、追尾する光波センサシステムについての研究を行っております。  日本時間の12月18日未明、米国ハワイ・カウワイ島沖で実施された護衛艦「こんごう」SM−3ミサイル発射試験にともない、将来センサシステム(搭載型)(通称:AIRBOSS※)を搭載したUP−3Cを用いた性能確認試験を実施し、ハワイ州カウワイ島から発射されたミサイル標的を捜索・探知・追尾することに成功しました。


こちらはあまり報道されてないですが、AIRBOSSは日本独自装備なのでこれからも注目していきたいですね。

さて、今回のSM-3試射成功を受けて各地では色々と騒がしくなっているようですが・・・朝日新聞や東京新聞、報道ステーションは批判的な論調。韓国の朝鮮日報や中央日報は逆に羨望的な論調。一方、北朝鮮や中国はまだコメント無し。果てさて、MDに対する議論はこれから熱くなっていきそうです。
00時56分 | 固定リンク | Comment (146) | ミサイル防衛 |
2007年02月12日
ミサイル防衛で敵の弾道ミサイルを破壊したところで、スペースデブリは発生しない。何故なら弾道ミサイルは第一宇宙速度に達しておらず、地球周回軌道に乗っているわけではないので、直ぐに地表に落ちてくるからです。破片も同様です。

・・・しかし毎日新聞の金子秀敏編集委員は、「ミサイルの迎撃は大量の宇宙ゴミを出すので、低軌道を使う人工衛星が永久に使えなくなる」とアメリカの科学者の話を紹介する形で、スペースデブリ(宇宙ゴミ)となる危険性を訴えています。仮にも報道機関でそれなりの役職にある人物の主張です。科学者の具体名も何も紹介されていませんが、全くの無根拠、妄想というわけでもないでしょう。

そこで金子氏の主張するような事実があるのか、検証して見たいと思います。


まず、地球から打ち上げられた物体が地表面に落下することなく人工衛星として飛び続けるために必要な速度を「第一宇宙速度」と呼びますが、これは地表面の零高度で秒速7.9kmです。高度が上がれば引力(衛星を引く力)は弱まりますので、高度200kmでは秒速7.73km、高度1000kmでは秒速7.45km、高度3,6000kmでは秒速3.1kmで地球周回軌道を回り続けることが出来ます。

弾道ミサイルの中で最も速く最も到達高度が高いのは射程の長いミサイル、つまり大陸間弾道弾(ICBM)です。これは秒速6km、最大到達高度1000kmくらいになります。弾道頂点付近で迎撃・破壊するとして、命中時に出た破片が弾道ミサイル進行の水平方向へ・・・もう秒速1.5kmほど加速されれば、この破片はスペースデブリとして地球周回軌道に乗ることになります。

つまりミサイル防衛システムの迎撃体が、敵弾道ミサイルに対し真後ろから秒速7.5km以上で追突すれば、破片の一部が第一宇宙速度まで加速して・・・って、後から追いかけて迎撃が間に合うわけが無いですね・・・というか秒速7.5kmも出ていたら迎撃体自身が人工衛星になってしまいます。

ミサイル防衛システムの内、宇宙空間で迎撃するシステムは現在のところ三種類です。SM-3、GBI、THAAD。この中で最も速く、到達高度が高いのは、一番大きなブースターを持つGBIです。これに載せたキネティック弾頭は最大で秒速6.4kmのスピードになります。第一宇宙速度までは到達しません。

やはり結局は、目標である弾道ミサイルも、迎撃側であるミサイル防衛システムも、地球周回軌道に乗るような兵器ではありません。お互いがそうである以上、ぶつかり合ったとしても発生した破片は地球周回軌道には乗らないわけです。スペースデブリは発生しません。


そこで「アメリカの科学者が言っていた」そうですから、該当しそうなキーワードを使って検索を掛けて見ました。「space debris missile defence …etc.」すると何となく、該当しそうなものが見えてきました。

科学者の懸念していることは、SM-3やGBIのような従来型の地上(艦上)発射、或いは空中発射などの地球から打ち上げる迎撃システムではなく、将来に登場するかもしれない衛星軌道上に存在する迎撃システム・・・つまり人工衛星に弾道ミサイル迎撃用のキネティック弾頭を積む場合の話を、しているのではないかということです。

母機である人工衛星が地球周回軌道に存在している以上、キネティック弾頭も第一宇宙速度を維持しています。切り離し時に逆噴射を掛けながら突入(例えば部分軌道爆撃システムが地上に再突入するように)するならば問題ありませんが、軌道に乗ったまま突入した場合、スペースデブリが発生する事になります。


しかし、キネティック弾頭を積んだ迎撃用戦闘人工衛星の構想は計画にGoサインが出たわけでもなく、全くの白紙状態といってよいのですが・・・ただし中国のASAT(衛星破壊兵器)実験を受けて、この迎撃衛星の配備へのハードルが下がったようには、見受けられます。
00時09分 | 固定リンク | Comment (65) | ミサイル防衛 |
2007年02月09日
中国の衛星破壊兵器(ASAT)実験が発覚してから約3週間。アメリカのミサイル防衛(MD)を批判してきた人達が中国のASAT実験に付いてどう反応するか興味深く見守ってきました。当初はまるで反応が無かったのですが、幾つかの反応が出てきました。

MDを批判することは別に構わないと思います。しかしその一方で中国のASATを擁護したり言及しないのであれば、それはおかしな話です。「敵側の宣伝のために身を売った例」となってしまいます。また、勝手な思い込みで見当外れな批判することもいけません。これはそんなブーメラン返しのお話です。




星くずのブーメラン=金子秀敏 [2/8 毎日新聞]
ミサイル防衛に反対する米国の科学者たちは「ミサイルの迎撃は大量の宇宙ゴミを出すので、低軌道を使う人工衛星が永久に使えなくなる」と警告している。中国製のデブリが悪いなら、ミサイル防衛で出る米国製デブリも非難されなければならない。

人工衛星は地球を周回する軌道に存在しています。これは第一宇宙速度(約7.9km/s)に達しているからです。一方、弾道ミサイルは弾道コースを飛んできます。当然、速度は人工衛星より遅いです。そうでないと地上に落ちてこないので対地攻撃が出来ません。弾道ミサイルは地球周回軌道には乗っていません。地球周回軌道に乗るのは弾道ミサイルではなく、旧ソ連の開発したFOBS(部分軌道爆撃システム)のような種類の兵器です。

人工衛星を破壊した場合、多くの破片は第一宇宙速度を維持し、地球周回軌道にスペースデブリとして存在し続けます。希薄大気によって運動エネルギーが徐々に奪われ、長い年月の果てに地表に落ちてくるその日まで。

さて一方、弾道ミサイルを破壊した場合ですが、弾道ミサイルは弾道コースに乗って飛んできます。地表に再び落ちていくわけです。ということは、破壊した時に発生する破片も殆どがそのまま直ぐに、地表に落ちてきます。

ASATによる衛星破壊とMDによる弾道ミサイル破壊による結果を同一視する事は出来ません。MDによる迎撃で出来る破片は第一宇宙速度に達せず、スペースデブリとはならないからです。同一視できるのは軌道爆撃システムを迎撃した時くらいのもので、そしてそれに類する部分軌道爆撃システム「FOBS」はソビエト連邦の技術です。

また、ミサイル防衛で出る破片の責任は、弾道ミサイルを発射した側の方にある筈です。迎撃とは防衛行為であり、「核弾頭を撃墜しなかった場合には着弾地点の都市で何万人と死ぬ事になる」以上、迎撃に成功して出来た破片による被害などより遥かに被害が大きい事は確実なので仕方が無い、正当防衛だ、文句は弾道ミサイルを撃った奴に言え ― こう切り返される事になるでしょう。



ではデブリの出ない衛星攻撃兵器ならいいのか。中国の実験後、米国政府が公表した資料によると、中国が研究しているのはミサイルによる衛星撃墜だけではない。「米国の衛星は最近、中国から地上レーザーの照射を受けたが、損害はなかった」という。宇宙軍拡で米国を追う中国はデブリの出ないレーザー兵器も研究しているのだ。完成しているかもしれない。

その地上からのレーザー照射は、光学偵察衛星のカメラに対する目潰しを狙ったものです。当たり前の話ですが、他人の財産を使用不能にしたら器物損壊として抗議されます。戦争においては、条約に違反しない限りは合法です。

今回の中国の衛星破壊実験に対し、アメリカやヨーロッパなどの各国が抗議しているのは、実際に実行され実害が出る可能性が出てきたからです。レーザー照射は決定的な証拠が無い上に実害も無いので抗議し難いですが、衛星破壊実験は明確な証拠と中国自身が認めたことで、世界中が抗議しています。



だが、これもブーメランである。衛星のミサイル攻撃を禁じたABM条約を一方的に破棄したのは、米国のブッシュ大統領である。ミサイル防衛に不都合だったからだ。


いいえ、ABM制限条約とはその名の通り弾道弾迎撃ミサイル制限条約です。弾道ミサイルへの迎撃を制限するものです。ASATは衛星破壊兵器ですので、この条約とは関係がありません。

ブーメラン・・・一体何が、ですか?

そもそもABM条約はアメリカとソ連の2国間条約であり、中国は関係無い筈ですが。



一方、ジュネーブ軍縮会議で衛星攻撃兵器の禁止を提案してきたのは中国だ。米国は反対した。日本が中国の宇宙軍拡に反対しようとするなら、ミサイル防衛にも反対しなくては筋が通らないのである。

反対されて当然でしょう。衛星破壊実験をしたばかりの国が衛星攻撃兵器の禁止を提案してきたのでは、「お前はどの口で言っているのだ」と、アメリカでなくても警戒します。言っている事とやっている事が違い過ぎます。筋が通らない事をしているのは中国の方でしょう。また中国はASATだけの禁止を提案してきたわけではありません。宇宙での兵器使用禁止を、宇宙条約の制限にある範囲(大量破壊兵器を軌道に乗せる事)以上に広げる事を提案しています。

『中国はミサイルギャップを埋める為に相手国に条約で足枷を嵌めた上で、自分自身は約束を反故にし、裏で開発を続ける気なのだろう』

こう勘ぐられても仕方の無いことを中国はやっています。そして実際に以前にも同じ事をやっているのです。「宇宙の平和利用と宇宙戦争」でも紹介しましたが、2001年に香港紙・星島日報が「中国が対衛星の新兵器の試験を行う模様」と報じています。そしてその翌年2002年に中国は宇宙兵器禁止条約を提案して来ています。しかしその後も衛星破壊試験は毎年のように続けて行われ、2006年末に成功するまで3回、宇宙空間での実地試験に失敗しているとCNNなど複数の情報筋は報じています。中国は「宇宙の平和利用」という大義名分を掲げつつ、裏では宇宙軍事技術の獲得を密かに行い続けている以上、彼等の口先だけの提案を拒否するのは、当然の反応でしょう。


毎日新聞の金子秀敏氏。筋が通らないことをしているのは貴方と、中国です。金子氏、貴方は、「敵の同調者」なのでしょうか。
23時39分 | 固定リンク | Comment (76) | ミサイル防衛 |
2007年02月06日
軍事板常見問題の[MD(ミサイル防衛)]に載っている、自分が関連した質問回答の中で、最も驚いたのはこれでした。まずこれを清書した上で再掲載、そして何が問題なのか考察して見たいと思います。


パトリオット配備・不安と負担の押し付け [2006-10-1 琉球新報]
 沖縄の表玄関、那覇空港に程近い那覇軍港近辺には異様な気配が漂っている。ほとんど味わったことのない「きな臭さ」である。
 在日米軍再編の日米合意に基づく米陸軍地対空誘導弾パトリオット・ミサイル(PAC3)の沖縄配備に向け、日米政府が本格的作業を開始した。
 搬入作業は、早ければ9月30日の深夜から翌未明にかけて行われるとみられ、一部の関連装備は国道58号経由で配備先の嘉手納基地へ運び込まれる。
 搬入に伴い使用される車両は米陸軍防空砲兵大隊のレーダー装備や発電装置を搭載した大型車両約500台に上る。
 恐らく見たこともない異様な長い車列をつくるに違いない。産業活動や県民生活に欠かせない公道を大型車両がわが物顔で通る。そんな光景を想像するだけでも背筋が寒くなる。
 軍用道路1号線と呼ばれた復帰前に逆戻りしたも同然ではないか。断じて容認できない。
 湾岸戦争時にしきりにテレビで放映されていたのがPAC2。PAC3はその改良型だ。発射された敵国の弾道ミサイルを着弾直前に迎撃する高精度のミサイルとして知られる。自衛隊への導入も確実視されている。
 政府がPAC3二十四基の沖縄配備を発表したのは7月末、在日米軍再編の最終報告から2カ月とたっていなかった。あれからわずか2カ月、地元の意向を無視しての強行配備だ。
 しかもこれほど大規模な装備展開だというのに一片の事前通知さえない。頭越し、地元無視もここに極まった形だ。強い憤りを覚える。
 12月末までに一部の運用を開始し、来年3月ごろには本格運用に入る。配置兵員は600人。家族を含めると1500人が新たに沖縄に駐留することになる。
 基地負担の軽減を切望し、平和な沖縄を目指す県民の願いは一顧だにされない。基地機能の強化を強いるやり方は、絶対に認めるわけにはいかない。
 嘉手納基地へのPAC3の大量配備は、経済成長を背景に防空能力の向上を推し進める中国の動きをにらんでいよう。北朝鮮のミサイル発射も巧みに利用されている事情が透けて見える。
 日米政府は、口を開けば「抑止力」を強調する。だが他の国々にとっては軍事的脅威としか映らないはずだ。「抑止力」は無益な対立を生む危険性をはらんでいる。
 嘉手納基地の一部の訓練移転はまだ詳細が見えないままだ。基地機能の強化だけを一方的に押し付けられたのでは、県民はたまったものではない。PAC3の配備は受け入れられない。

開いた口が塞がりません。

>経済成長を背景に防空能力の向上を推し進める中国の動き

中国の軍拡の動きは「防空能力の向上」とオブラートに包む訳ですか。在日米軍のパトリオットPAC3については、あたかも攻撃用兵装であるかのように騒ぎ立てている一方で・・・。当たり前のことですが、PAC3は迎撃用の対空ミサイルであり、敵が侵入してこない限り出番はありません。PAC3は敵の「攻撃能力」に備える為のものであり、それ以外には使えません。つまりPAC3こそ「防空能力の向上」となる筈です。

一方で中国の軍拡の動きは、スホーイSu-30MKKのような戦闘爆撃機や、ウクライナより購入し大連港で改修作業中の空母ワリヤーグといったように、防空能力というよりも長距離侵攻能力の拡充といった面が顕著に現れています。Su-30MKKはSu-27の複座爆撃型で、主にDEAD(敵防空網破壊)任務に使われます。つまり戦争の第一撃を行う為の機体です。

防衛用にしか使えない地対空ミサイルをあたかもを攻撃用兵装であるかのように騒ぎ立てる一方で、長距離侵攻能力がある複座戦闘爆撃機の大量取得を始めた国の動きを「防空能力の向上」と擁護するその態度は、理解し難いものがあります。この社説を書いた人の脳内では、中国海軍"漢級"原子力潜水艦浸入事件も無かった事になっているのでしょうか。

「アメリカの対空ミサイルは攻撃用」
「中国の長距離戦闘爆撃機は防御用」

・・・幾らなんでも無理があるでしょう。有り得ません。使うべき言葉を自分たちの都合で意図的に違え、破綻した文章を恥かしげも無く提示する。このような社説を書く人物が実在する事に驚きを覚えます。


敵国の攻撃に対する、スイスの回避策/「民間防衛」より引用 P259
新聞、出版物、ラジオ及びテレビは、このような心理戦争の段階に於いては、まさに決定的な役割を果たすものである。そのため、敵は、編集部門の主要な個所に食い込もうとする。われわれ国民はこれに警戒を怠ってはならない。敵を擁護する新聞、国外から来た者を擁護する新聞は、相手にしてはならない。われわれは、われわれの防衛意識を害するあらゆる宣伝に対して抗議しよう。

この事を、本気で心配する必要があるのかもしれません。以前から不審には思っていました。何故、この新聞社は聞かれてもいないのに中国の擁護を始めたがるのだろう。PAC3にしても、普通に考えればまず北朝鮮の事を想定する筈なのに・・・と。

疑問その一.PAC3を対北朝鮮用ではなく対中国用だと声高に叫んでいるのは何故なのか?

謎は解けました。いや最初から気付いてはいましたが、信じたくはありませんでした。ですが中国の軍拡はきれいな軍拡とばかりに「防空能力の向上」とオブラートに包み、新型の侵攻爆撃用複座戦闘機の存在を隠し、その一方で米軍の防衛用ミサイルを攻撃用兵装であるかのように騒ぎ立てる有様を見て、信じざるをえないでしょう。

琉球新報の編集部門の主要な箇所は、敵とその同調者によって侵食されています。

違うというのでしたら、「経済成長を背景に防空能力の向上を推し進める中国の動き」の防空能力とは何か具体例と、その「防空能力」に対しどうやって対空兵器(PAC3)が牽制となるのか、説明して下さい。
22時44分 | 固定リンク | Comment (99) | ミサイル防衛 |
2007年01月29日
1/20に書いた「中国、ASATシステムの試射に成功」のコメント欄で、以下のような指摘を受けました。



>宇宙条約に抵触

宇宙条約を読んでみたんですが、
ASATがどの条文に抵触するのかよくわからないのです。
わかる方がいたら教えて頂けませんでしょうか。

第4条かなとも思ったのですが、
大量破壊兵器の軌道投入禁止のみを謳っている条文ですし、
何度読んでもよくわからないのです。
Posted by 名無しT72神信者 at 2007年01月24日 21:31

ご指摘の通り、宇宙条約の第4条には大量破壊兵器の軌道投入禁止と、月その他天体に対する軍事利用禁止が書かれており、軌道上での通常兵器配備や戦闘行為を禁じたりするものではありません。慎んで訂正致します。…以前、「弾道ミサイルと軌道攻撃兵器」で部分軌道爆撃システムの事を「宇宙条約違反スレスレだが合法」と書いた時に調べておきながら忘れていました。


宇宙条約法林 Lawtext forest

第四条【軍事的利用の禁止】
 条約の当事国は、核兵器及び他の種類の大量破壊兵器を運ぶ物体を地球を回る軌道に乗せないこと、これらの兵器を天体に設置しないこと並びに他のいかなる方法によつてもこれらの兵器を宇宙空間に配置しないことを約束する。


これまで中国とロシアは、宇宙空間での軍事利用禁止を訴え、これまでの宇宙条約よりも対象兵器の範囲を広げた条約を提案して来ました。それは2002年6月に提案された「宇宙空間の兵器配置、宇宙空間の物体に対する武力行使あるいは武力行使威嚇の防止に関する国際条約」です。それは対衛星兵器(ASAT)や弾道ミサイル防衛(MD)が該当するものでした。

ところがその前年、2001年1月にこういった報道がありました。



香港紙・星島日報は五日、消息筋の話として中国が対衛星の新兵器を研究していると伝えた。「寄生星」と名付けられたこの兵器は他国の衛星に寄り添い、戦時になると地上からの指令で衛星の機能を妨害、破壊するという。地上での実験をすでに終え、近く宇宙での実験の準備に入るという。


これは当時、日本の共同通信や朝日新聞も配信しています。今から思えば、発覚したばかりの用廃済み気象衛星・風雲2号Cの破壊実験は、これだったのかもしれません。アメリカの報道によると中国は実験成功までに3回、失敗していたとされます。2001年から2006年末までの期間、5年で数回の実験ならば実験ペースとしては妥当な所です。そうなると今回の破壊実験は、ソ連式のキラー衛星に近い形態の兵器によるものだったと言えます。(計画途中で新方式に変えた可能性もありますが、中国の技術力を考えるとキラー衛星そのものである可能性が高い)

つまり中国は、宇宙の平和利用を推進しようと宇宙兵器開発禁止を訴える一方で、同時に宇宙空間を戦場とする兵器の開発に余念が無かった事を示しています。時期的にアメリカのミサイル防衛構想が声高に叫ばれる前から、ミサイル防衛構想の推進が強力に進められる前から計画を実行に移しています。(ミサイル防衛構想そのものはSDI構想中止以後も細々と続けられていた)


この中国の二枚舌行為は、最初から将来、宇宙空間が戦場になる事を見越して、新しい条約でアメリカに足枷を嵌め、その間に追い付いてしまおうという作戦なのか。
それとも相手の軍拡に対しこちらも軍拡を行う事で、相手に軍拡競争を行う事のデメリットを示してお互いの軍縮を提案する、以前NATOが「二重決定・ゼロオプション」として行った行為に準ずるものなのか。

残念ながら後者である可能性は低いのです。まず計画時期が古くからある事、そして破壊実験には成功したものの、技術レベル的にアメリカを脅かすほどの物にはまだ到達していないからです。破壊した衛星は低高度に分類される高度約850kmの軌道で、MDシステムの根幹である早期警戒衛星、最新の軍隊に必須な情報通信衛星が存在する静止軌道(高度約36000km)や、GPS衛星(高度約20000km)にまでは届きません。20年以上前のNATO二重決定にソ連が応じ、両者の軍拡が軍縮に転じたのは、ソ連がパーシング2を深刻な脅威と受け止めたからです。今回の中国の実験は技術的にはまだ低いもので、「中国は宇宙戦争を行う意思と準備がある」ことを宣言する以上の効果が、期待できません。20年後、30年後には脅威になるかもしれませんが、それはその時になってからでないと交渉には持ち込めないでしょう。

中国は、核ミサイルを保有しているにも関らず米露の核軍縮条約には入れて貰えず、相手にされていません。同様に対衛星破壊兵器を保有したところで、まだ脅威とみなされない場合には、軍縮を提案する話し合いには大きな影響を及ぼさないでしょう。むしろ軍拡の口実に使われる可能性があります。


中国軍幹部「宇宙の超大国一つではない」 [1/28 産経新聞]
 スイス・ダボスでの世界経済フォーラムに出席している中国軍事科学院世界軍事研究部第2研究室の姚雲竹主任(上級大佐)は25日、中国が衛星攻撃兵器(ASAT)の実射実験に成功したことを踏まえ、「われわれの時代に宇宙空間は軍事化されると予測している」とコメントした。

 中国軍の現役幹部が実験に公式言及したのはこれが初めて。姚主任は「宇宙での超大国は一つではない」と暗に米国を牽制(けんせい)した。(ダボス AP)

この記事は産経新聞が独自に取材したものではなく、AP通信の記事を配信したものですので、産経新聞が翻訳を間違っていない限りは概ね信憑性があると思います。

やはり最初から将来宇宙空間が戦場になる事を見越しているのでしょうか。


社説:衛星撃墜実験 中国に宇宙の非軍事化迫れ [1/28 毎日新聞]
敵のミサイル攻撃を察知する偵察衛星という「タカの目」があればこそ、迎撃ミサイルを目標に発射できる。その目が簡単につぶされてしまうなら、ミサイル防衛の信頼性は著しく低下する。中国が偵察衛星を撃墜する能力を持つことがはっきりと証明された以上、ミサイル防衛システムへどのような影響があるのか、政府はまず国民に明確に説明すべきではないか。破片問題はその次だ。

取り合えずミサイル防衛で使われる、静止軌道上に存在する早期警戒衛星(DSP衛星)への影響はありません。そもそも偵察衛星(光学画像衛星など)はミサイル防衛にとって大きな意味を持ちません。弾道ミサイルが地下サイロに隠されていたり、トレーラーに載せた移動式発射台や潜水艦に搭載されていた場合、元々探知できないからです。実戦ではテポドンのように地上にあれだけ大きな発射台を用意して…なんて目立つ事はやりません。

ですが赤外線を探知するDSP衛星ならば、上昇する弾道ミサイルの大きな熱源を捉える事が出来ます。そのDSP衛星は静止軌道の高度約36000kmに存在するので、今回の中国の破壊実験(高度約850km)で脅威に晒されたと証明されたわけではないのです。

将来的には弾道ミサイル防衛構想でも、低高度軌道にSpace Tracking and Surveillance System (STSS)という宇宙追跡監視システムを数十個打ち上げて監視強化する計画(SBIRS-Low)があるので、これについては影響があります。しかしDSP衛星の後継にSBIRS-High(Space Based Infrared System High)と呼ばれる、静止軌道と超楕円軌道に早期警戒衛星を打ち上げる計画も同時進行しており、ミサイル防衛が無力化されると騒ぐにはまだ早過ぎるでしょう。SBIRS-LowのSTSSに至ってはそもそもまだ存在しません。
22時08分 | 固定リンク | Comment (95) | ミサイル防衛 |
2007年01月20日
中国が宇宙空間でスペースデブリを発生させたらしいです。


中国、対人工衛星破壊兵器試験実施 [1/17 宇宙開発情報]
米国の軍事向け宇宙航空分野雑誌 「Aviation Week and Space Technology」によると、米諜報機関は、高度800km以上を飛行する中国製の古い気象観測衛星を目標にして、弾道ミサイルに動作停止装置を搭載させて衛星を破壊する試験に成功したと信じえる情報を得たと報じた。

Anti-satellite weapon. 対衛星破壊兵器、略称『ASAT』。
冷戦時代にアメリカとソ連が実用化し、装備体系に組み込むことを見合わせた(明らかに宇宙条約に違反する宇宙の平和利用の精神に反する)兵器です。アメリカは戦闘機に対衛星ミサイルを積む方式で、ソ連はキラー衛星による攻撃システムでした。今回、中国が実施した方式は弾道ミサイルを打ち上げロケットとして使用し、運動エネルギー弾頭を衛星にぶつける方式です。

なお、この試験で使われた用廃済み衛星は気象衛星の風雲一号C型。気象衛星といっても静止軌道(高度約36000km)を描く衛星ではなく、極軌道を周回する低軌道衛星です。風雲一号C型の場合は高度約850kmと、ICBMクラスなら上がって来ることが出来る高度です。

さて、問題となるのはこの迎撃実験がどれほどのものであったのか。弾道ミサイルに積み込んだ運動エネルギー弾頭に本格的な終末誘導能力(自分で目標を捕捉し突入する)があるのか、ないのか。どういうことかというと、目標となる人工衛星の軌道を計算して迎撃突入弾頭を交差させただけの可能性があるかもしれません。この場合、迎撃実験というよりは衝突実験に近いものになります。数ヶ月前にはインドが同種の弾道ミサイル同士を空中でぶつけ合う実験を行っていましたが、それに近いことになるでしょう。

もし本格的な終末誘導装置を備えた突入弾頭だったとしたら、頻繁に軌道変更を行う偵察衛星に対しての攻撃力を持つことになります。少なくとも現段階で言えることは、中国が宇宙空間で人工衛星を破壊する能力を持ち、意思を持っているという事です。
10時26分 | 固定リンク | Comment (50) | ミサイル防衛 |
2006年12月28日
記事タイトルを愛・蔵太さん風味にしてみました。うん、分かりやすい(けど長すぎ)。

ではまず時系列に沿って紹介していきます。実は今年の8月の段階で2基目のXバンドレーダーの追加配備検討は始まっていました。


ミサイル防衛レーダー 米が九州へ追加配備検討 [8/21 中国新聞]
 北朝鮮による長距離弾道ミサイル「テポドン2号」発射などを受け、米国防総省当局者は二十一日までに、ミサイル防衛用移動式早期警戒レーダー「Xバンドレーダー」の西太平洋地域への追加配備を検討していることを明らかにした。

 同当局者によると、配備候補地は九州、沖縄、韓国、グアムの四カ所。Xバンドレーダーは弾道ミサイルを探知する高性能のレーダーで、米軍が六月末から暫定的に運用を始めた航空自衛隊車力分屯基地(青森県つがる市)に続き、日本周辺では二基目の配備となる。

 米当局者によると、一基目を配備した車力分屯基地が日本の北寄りに位置するため、もう一基を日本の南部などに配備することで弾道ミサイルの追尾、捕捉の範囲を広げる狙いがある。

 候補地のうち、沖縄はやや南方にあり、グアムは北東アジアから距離があるため、北朝鮮により近い九州や韓国に配備する可能性が高いとみられている。

そして二週間ほど前に現物がMDA(Missile Defense Agency:ミサイル防衛局)に納品されました。


Raytheon Ships Second Ballistic Missile Defense System Radar [12/11 Raytheon]
Raytheon Company has shipped ahead of schedule and under budget the second Ballistic Missile Defense System (BMDS) Forward Based X-Band Transportable (FBX-T) radar to the Missile Defense Agency (MDA), Vandenberg Air Force Base, Calif., for final testing and acceptance.

そして日本に対し正式に追加配備の打診をしてきました。しかし朝日新聞の記事はタイトルからして飛ばしてます。


米向けミサイル警戒レーダー 米、日本に追加配備打診 [12/26 朝日新聞]
北朝鮮による7月のミサイル連続発射や10月の核実験を受け、米軍や国防総省が、米本土を狙う大陸間弾道ミサイル(ICBM)迎撃のための早期警戒レーダー「Xバンドレーダー」を日本へ追加配備したいとの意向を、防衛庁に伝えてきていることが分かった。同レーダーは5月の米軍再編の最終合意に基づき航空自衛隊車力(しゃりき)分屯基地(青森県)に配備されているが、北朝鮮のミサイルの監視をさらに強化したいという米側の危機感の表れとみられる。防衛庁などでは受け入れの可否を検討している。

記事タイトルと冒頭で「米本土を狙う弾道ミサイル迎撃の為のレーダー」と断言的に紹介していますが・・・


米側が追加配備を打診したのは11月中旬。米本土を射程におさめる可能性が高い北朝鮮の長距離弾道ミサイル「テポドン2」の監視強化が狙いで、レーダー配備の主眼が米本土防衛にあることを示している、といった見方もある。

急に弱気になっています。「といった見方もある」という書き方はつまり、朝日新聞の見方であると解釈すべきでしょうね。


7月の北朝鮮のミサイル発射の際、車力のレーダーは米本土を狙うミサイルの探知・追尾のため監視エリアを上方に設定。このため、いずれも高度が低かった7発のミサイルを1発も捕捉できず、日本側から「米側が監視しているエリアと日本が監視してほしいエリアは一致していない」との声が上がっていた。

テポドン2は長距離ミサイルなのだから、これが発射されそうだと情報が得られたら上方を見据えるのは当たり前のことです。行き先がアメリカでなくともレーダーパネルは上方を見据えます。そもそも1998年のテポドン1の実験の際に、日本列島を飛び越えていってしまった事を忘れてしまったのでしょうか? テポドン2もあの時と同様のコースを飛んでいった場合、青森県の車力はまさに飛行ルートの直下であり、ドンピシャだったのですが・・・

結果的にテポドン2は打ち上げに失敗、近距離で墜落するだなんて予想外でしたし、更には短距離弾道弾も同時に7発が発射されるという事態も、誰も予測できなかった筈です。これらが捕捉出来ていなかったとしても仕方がない(水平線の陰に隠れて死角になってしまう)ですし、ましてや「アメリカ向けの軌道を警戒していたから捕捉出来なかった」という説明は的外れです。



嘉手納基地などを狙った弾道ミサイルのコースを想定した場合、「九州か中国地方の日本海側の自衛隊基地」への配備が有力視されている。

それって既に「米向け」とか「米本土向け」ではないわけですが・・・記事タイトルや冒頭での説明と食い違うことに、気付いていないのでしょうか。断言口調で書いてたというのに。


私は以前、「Xバンドレーダーの探知距離」「弾道ミサイルと大圏コース」で述べた通り、Xバンドレーダー・FBX-Tでは能力的にも配置的にも米本土防衛用ではなく、青森の車力に配備するのであればハワイ防衛用と日本防衛用であると指摘しました。もし九州ないし中国地方に配備するなら、グアム防衛、沖縄防衛、日本本土防衛用であると考えられます。特に今回話題となっている、追加配備されるかもしれない2基目のFBX-Tレーダーは日本の南西方面に配置されるわけで、何処をどう見ても米本土防衛用とは解釈できません。

だから今回の朝日新聞の記事の書き方は読者を誤解させかねず、全く感心できません。これは記者がXバンドレーダーについてよく理解していない(FBX-Tと他の大型Xバンドレーダーとを混同している可能性がある)からだと思います。

例えば朝鮮日報も今回の朝日新聞の記事を引用する形で記事を書いていますが、海上移動型シーベースドタイプと車載移動式FBX-Tを混同している様子が見て取れます。確かにどちらも移動式ですが、能力的に桁違いの開きがあります。もしシーベースドタイプだったら米本土防衛用としても良かったのですが・・・。

21時17分 | 固定リンク | Comment (118) | ミサイル防衛 |
2006年11月02日
【琉球新報】自国に銃口を向けている国に旅行に行きたいと思うだろうか

これを初見で「え、日本に核ミサイルを向けている国に旅行に行きたくないのは当然?」と読んでしまったのはご愛嬌。琉球新報は逆の事を書いており、未だにパトリオットのことを攻撃用兵器であるかのように喧伝してるんですね。

ちなみに数ヶ月前の記事の方がより凄まじいクオリティだったりします。(琉球新報のサイトにはもう保存されていない)


パトリオット配備・対中戦略の拠点にするな [2006/06/26 琉球新報]
沖縄には中国と親密に交流してきた歴史がある。首相の靖国参拝問題などで日中に溝ができても、沖縄と中国は友好関係が続いている。その中国にミサイルを向けようものなら、沖縄も「敵対地域」とみなされ、攻撃目標とされる懸念すら出てこよう。沖縄を対中戦略の拠点とすることは、政府が認めても、県民が許すまい。


疑問その一.PAC3を対北朝鮮用ではなく対中国用だと声高に叫んでいるのは何故なのか?
疑問そのニ.敵が来ないと出番の無い地対空ミサイルをどうやって「中国に向ける」事が出来るのか?

沖縄に巡航ミサイルや弾道ミサイルは存在しません。戦略爆撃機も存在しません。嘉手納基地のF-15C戦闘機は制空用で爆撃任務には使われませんし、パトリオットPAC3は対空防御用で攻撃には使えません。

ちなみに似たような苦労はアメリカ軍だけではなく、ロシア軍でもあるようです。


外務省:最近のロシア情勢 [平成18年5月]
ミハイロフ・ロシア空軍総司令官は、2006年2月、ベラルーシにロシア空軍基地を開設する計画を発表。4月4日には、ロシアの対空ミサイル「S300」のベラルーシへの実戦配備が始まった旨発表。総司令官は、同ミサイルは防衛的なものであり、誰にも不安を呼び起こさせないはずであると強調。


S300にはミサイル防衛システムとして弾道ミサイルとの交戦能力があるモデルも存在します。なお中国も購入しています。
21時47分 | 固定リンク | Comment (65) | ミサイル防衛 |
2006年07月13日
度重なる失敗で開発が一時停止されていたTHAAD(Terminal High Altitude Area Defence:終末段階高々度地域防衛)が、再設計されて久々に飛行テストを再開し、迎撃実験に成功しました。


米、戦域高高度ミサイル防衛実験に成功[7/13 日経新聞]
米国防総省のミサイル防衛局は12日、戦域高高度防衛ミサイル(THAAD)による迎撃実験に成功したと発表した。米国本土を射程におさめる可能性がある長距離弾道ミサイルを北朝鮮が発射した後だけに、大気圏外で敵ミサイルを撃ち落とす同ミサイルの実験成功で、防衛システムの充実を誇示する狙いもある。


多くの人は存在を忘れていたかもしれないですね。確か、6年ぶりの実験ですから。ちなみに車力に配備されたXバンドレーダー「FBX-T」は、このTHAADシステムのレーダーです。(関連日記:「Xバンドレーダーの探知距離」


このTHAADシステムが早くから物になっていれば、PAC3を配備する必要は無かったのですが・・・基本的にPAC3は短距離弾道弾迎撃用で、台湾や韓国が配備するなら意味がありますが、日本のミサイル防衛(想定目標は中距離弾道弾)にとってはあまり意味が無いのです。(拠点防空任務が限度)しかしTHAADなら射程も長く、大都市圏といった範囲での防空任務が可能となるでしょう。
21時21分 | 固定リンク | Comment (40) | ミサイル防衛 |
2006年05月26日
さて今回は「地球の自転と弾道ミサイル」の本文及びコメント欄と、送られてきたメールから考察して見ました。(単なる、一発ギャグ話です…)


* 条件(大陸間を射程範囲に収める事)
1.東向きに発射しなければならない。
2.目標に向かうには途中で大きな針路の変更が必要。



リューシー 「! ま、まさか。この条件に合致する兵器って・・・」

ヴォルフ 「し、知っているのか、雷電!?」

ソフィア 「いや、男塾ネタはいいから。・・・それはともかくとして、まさかアレか?」

リューシー Fractional Orbital Bombardment System!」

ソフィア 「フン、やはりか」

ヴォルフ 「何か知っているんですか、大尉」

ソフィア 「嘗てソビエト連邦が開発し、装備していた代物だ。ブースター部分はミサイルだが、弾道を描かないので、弾道ミサイルとは異なる。

Fractional Orbital Bombardment System. 略称“FOBS”。

日本語で“部分軌道爆撃システム”と呼ばれるソレは、その名の通り核弾頭を軌道に打ち上げて、軌道上から地上を攻撃する」

ヴォルフ 「き、軌道って・・・衛星軌道上からの攻撃は、宇宙条約に違反するのでは?」

リューシー 「いえ、“部分”とあるように、軌道を周回しきる前に逆噴射を掛け地上へ向かうので、宇宙条約的には何ら問題ありません」

ヴォルフ 「かなり無茶な解釈に聞こえるのだが・・・」

ソフィア 「いや、違反スレスレではあるが国際的に一応、問題は無い。そもそも条約違反を全く気にしない国だってあるからな・・・身近にあるだろ、そういうの」

リューシー 「そして素晴らしい事に、このシステムならば見事に、

1.(東向きに打ち上げる)と2.(大幅な針路変更)の条件をクリアするんですよ」

ソフィア 「まず、地球を周回する衛星軌道上にまで打ち上げる必要があるが、この際に地球の自転を利用して東向きに打ち上げて速度を稼ぐ。宇宙ロケットと全く同様だ。

そして一旦軌道に乗った核弾頭は人工衛星と同じで、地球を周回する間にアポジモーターを使い時間を掛けて針路変更を行えるので、弾道ミサイルでは不可能な水平方向への大幅な針路変更が可能となる。

ソ連はFOBSでこうした機動を行うことで、NORADの防空網が集中している北米大陸の北側以外の方向、つまり側面から侵入して突破を図ろうとした」

リューシー 「更にもし“部分”ではなく地球周回軌道を何回でも回って良いならば、軌道上に人工衛星の如く数をため込んでおいて、何時でも地球上のいかなる地点も攻撃可能となるでしょうね」

ヴォルフ 「・・・しかし、衛星軌道にまで重い核弾頭を打ち上げるには、相当大きなミサイル(ロケットブースター)じゃないと無理。

ましてや核弾頭の軌道投入、軌道上での針路制御、大気圏への再突入タイミング・・・どれを取っても、北朝鮮には手に余る技術の筈」

ソフィア 「それはそうだ、私はあくまで軍事評論家K氏の主張する条件に当て嵌まる兵器を紹介しただけだからな」

リューシー 「つまり・・・氏は“北朝鮮が既に軌道爆撃システムを完成させている!”と言いたかったんですよ!!!」

ヴォルフ 「な、なんだってぇぇぇ〜!!!」

ソフィア 「おいおい、ちょっと待て・・・K氏は、“北朝鮮は技術的に未熟だから東に向けて発射する必要がある”と言っていたんじゃなかったか?

だが逆に、軌道爆撃システムは高度な技術が必要とされる兵器だ。ソ連がアメリカの防空網(北米大陸の北側に集中)を潜り抜ける為に開発したわけで、技術力が低いのに警戒が手薄な側面方向(東、又は西)から攻撃できるなら苦労はしない。

そんな楽な方法があるなら、当時のソ連が気付いていない筈が無いだろうに」

リューシー 「こう考えるべきです・・・K氏は、“技術力が高い”を“技術力が低い”と言い間違えた。つまり、

“北朝鮮の技術力は高く、既に軌道爆撃システムを完成させている”と、氏は言いたかったのですよ!!!」

ヴォルフ 「いや、それは流石に有り得ないから・・・」

ソフィア 「まぁ、マトモな人工衛星を打ち上げた事の無い北朝鮮に、そこまでの技術力があるとは思えないし、今のところ1.(東向きに打ち上げる)と2.(大幅な針路変更)の条件をクリアするのは軌道爆撃システムしか無い事も事実。北朝鮮が持てる代物ではない。

K氏は一体、何のつもりだったのやら・・・。

その軌道爆撃システムにしたところで回避できるのは地上の警戒網だけで、宇宙空間に存在する警戒衛星、つまり赤外線で熱源を探知するDSP衛星やレーダー監視衛星には引っ掛かってしまう。

FOBSは確か一度、核軍縮条約で規制された後、その条約が無効になった現在でも何処の国も配備していない筈だ。配備する労力の割りには成果が見合わない、そんな所だろうな」
19時18分 | 固定リンク | Comment (25) | ミサイル防衛 |
2006年05月19日
以前書いた「弾道ミサイルと大圏コース」に関連するお話です。


J-RCOM 神浦元彰HP 最新情報(06.5.19更新分)
※先日、What Newで、北朝鮮はアメリカを狙うには、東に向けて弾道ミサイルを撃つしかないと書いたら、北朝鮮から北極圏の上空を経由して、アメリカ本土を狙うのが常識というメールを頂きました。そのことですが、弾道ミサイルが進歩したロシアや中国なら、そのような弾道でアメリカを核攻撃すると思います。しかし未熟な北朝鮮の弾道ミサイルは、射程を伸ばすために、地球の自転を利用して東に向けて撃つしかないという意味です。テポドン発射のように日本海を飛び越え、東北地方の三陸海岸の上空を通過する東コースです。アメリカが空自の車力駐屯地(青森県)に移動式Xバンドレーダーを配備するのはそのためです。


>射程を伸ばすために、地球の自転を利用して東に向けて撃つしかないという意味です。

ええっと・・・神浦氏はロケットの打ち上げ方法と混同しているのでしょうか? 地球の自転方向(東向き)に向けて発射すると自転速度が加算されますので、ロケットは宇宙速度(地球周回軌道に乗る第1宇宙速度、太陽周回軌道に乗る第2宇宙速度)に達しやすくなります。故に宇宙ロケットはなるべく赤道に近い(自転速度が地表で最も速い)場所から東に向けて打ち上げるのが一般的です。

ですが弾道ミサイルは地球から発射され地球に着弾します。地球の自転で発射地点の速度が加算されても、着弾地点も発射地点と同様に自転しているわけですから、地球上に置けるミサイルの射程距離は伸びません。

つまり例えば、電車の中でボールを投げた場合、電車の外から観測すればボールの速度は電車の速度が加算されていますが、電車の中から観測した場合、ボールの速度は投げた速度のままである、そして飛行距離も変わりが無いという事です。

射程を伸ばす云々は別として、確かに弾道ミサイルは地球の自転の影響を受けますが、それはコリオリ力により軌道が曲がっていく現象であり、微弱な力なので細かい設定で解決していく問題です。

>テポドン発射のように日本海を飛び越え、東北地方の三陸海岸の上空を通過する東コースです。

1998年に三陸沖に着弾したテポドン発射実験は、単純に射程距離の関係から着弾地点(実験である以上、精密にポイントを観測する必要がある)を其処にせざるを得なかったというだけの話です。冷戦時代ですら北朝鮮が長射程ミサイルを開発する事を認めていなかったロシアや中国が着弾地点の提供を行うわけが無い以上、東か南の公海上に向けて撃つしかないのです。そして人工衛星打ち上げという言い訳を使う以上、東を選ぶのは当然です。

というか、弾道ミサイルを北朝鮮から東に向けて発射してアメリカ本土に着弾させる場合、ミサイルは大幅な軌道修正を行いつつ飛行する事になりますが、もしそういう事が出来る弾道ミサイルがあるならそれは高度な技術力で造られた兵器です。・・・だって飛行経路の観測から着弾地点を算出する事が非常に困難になるのですから。ちょっと北朝鮮が開発できるとは思えません。

>アメリカが空自の車力駐屯地(青森県)に移動式Xバンドレーダーを配備するのはそのためです。

いいえ、違います。
16時55分 | 固定リンク | Comment (56) | ミサイル防衛 |
2006年04月03日
最近、青森県の車力に配備されるアメリカ軍のXバンドレーダーについて書いてみましたが、執筆にあたり、現地の様子を知る上で役に立ったのが東奥日報の特集「米軍Xバンドレーダー」でした。その中で東奥日報は2月9日に「米の狙いグアム防衛か/Xバンドレーダー車力配備/探知能力2000キロ?北朝鮮ミサイル想定」という記事を載せ、レーダー専門家や軍事評論家の話としてXバンドレーダーの探知距離を2000km、目的はグアム防衛と指摘しています。

そして、これについて私は3月14日に書いたエントリー「Xバンドレーダーの探知距離」に置いて、東奥日報の提示した条件(海上型の最大探知距離とアンテナ面積など)から計算すると探知距離2000kmは有り得ず1000km以下(米軍発表は500km"以上")である事、そして性能と配置場所からアメリカ本土防衛用には使えず、日本本土防衛用(およびハワイ、グアム防衛用)であると書きました。


そして10日後。


加野幸司・防衛庁弾道ミサイル防衛室長に聞く[2006/3/24 東奥日報]
−FPS−XXの最大探知距離が二千キロ程度なのに対して、高周波のXバンドレーダーは五百−千キロといわれる。


解説/既定路線の感否めず[2006/3/30 東奥日報]
千キロ前後といわれながら、ついに明らかにされることがなかった最大探知距離
「Xバンドが本当に守ろうとしているのは、太平洋軍の一大拠点であるグアム、ハワイではないか」。多くの軍事専門家は口をそろえる。


・・・どうやら「2000km説」は取り下げた模様ですね。それにグアムだけでなくハワイについても言及しています。「弾道ミサイルと大圏コース」の図を見れば分かりますが、車力への配備はグアム防衛には向いてない事が分かります。

ただ、「FPS−XXの最大探知距離が二千キロ程度」と書いてあるのが気になります。レーダーパネル面積・バンドの種類・出力を勘案すると、もっと長そうだと私は思うのですが。
21時51分 | 固定リンク | Comment (26) | ミサイル防衛 |
2006年03月22日
1週間前に「Xバンドレーダーの探知距離」でこう書きました。


中国の奥地からアメリカ本土に向けて放たれる大陸間弾道弾に対しては無力です。もうこの位置から発射されてしまうと北極点付近上空を飛んでいくので、アラスカやグリーンランドに配置したレーダーに頼る事になります。

車力に配備される車載移動式Xバンドレーダー「FBX-T」では、能力的にも配置的にもアメリカ本土防衛の役には立たないのですが、これだけでは説明が足りなかったのか(コメント欄から)


中国からアメリカ本土に向けて発射するICBMが北極圏の上空を通るとは、クマー! にはあんまり思えないですし、ましてグリーンランドのレーダー基地が中国のICBMを捕捉する確立は相当低いでしょう。

・・・う〜ん・・・地球は丸いんですが・・・既にコメント欄で指摘されている通り、地球儀を見ればすぐ分かるのですが、大圏コース(二つの地点を結ぶ最短通路)を通ろうとするとそうなる(北極上空通過)んですよ。これくらいの事はMDを語る以前に弾道ミサイルの飛行経路として把握して置かないといけません。

それでは地図を使って説明しておきます。ここでは北極点を中心とした心射方位図法を使います。これは任意の大圏コースを直線で表すことができる図法です。(あくまでコースが正確なだけで、距離や面積、形状は歪みが大きくなる)

注:以前の図が平射方位図法だと判明、画像差し替え。




【弾道ミサイル飛行経路図】

大圏コース

赤:中国(西部) 青:中国(東部) 黒:北朝鮮




このようになります。赤と青は中国の基地、黒は北朝鮮の基地から弾道ミサイルが発射された場合の飛行経路を示しています。アメリカ本土東海岸を狙う場合、どの飛行経路も北極圏上空を通過、発射地点によってはグリーンランド上空を横切っていきます。
01時42分 | 固定リンク | Comment (48) | ミサイル防衛 |
2006年03月14日
アメリカ軍のミサイル防衛用Xバンドレーダーが、日本に配備されようとしています。当初の候補地は北朝鮮に近い佐渡島でしたが、あまりにも最前線に近く、しかも島なので、空爆や特殊部隊が上陸して来た時の対処が困難になる為、本土の自衛隊基地の敷地内に持ってくる事にしました。

こうして最終候補地として選ばれたのが、青森県つがる市に在る航空自衛隊車力分屯基地です。

そのXバンドレーダーについて、あらぬ誤解が広がっているようなのです・・・


まず、車力に配備予定のXバンドレーダーは車載移動式のFBX-Tレーダーと呼ばれるモデルです。


移動式Xバンドレーダー


見ての通りこれはTHAADのレーダーと全く同じ物です。THAADはSM3やPAC3と違い、ミサイル本体の迎撃実験の成果が芳しくなく開発が遅れています。そこでレーダーだけでも先に配備して警戒用に使おうというわけです。アクティブ・フェイズド・アレイ方式で、1パネル辺り前方左右各45度の計90度が捜索範囲となります。

Globalsecurity.orgより
The FBX-T is a high-resolution, X-band, phased array radar based upon the Terminal High Altitude Area Defense Radar (THAAD) hardware and software design.


一方、こちらの巨大なレーダーは基地型の固定式Xバンドレーダーのプロトタイプ、GBR-Pです。


固定式Xバンドレーダー


FBX-Tよりも遥かに巨大で台座の部分がレールとなっており360度回転します。(更に風雨除けの球状レドームを被せて完成)当然、同じXバンドレーダーでもFBX-TよりGBR-Pの方がより出力が高く遠くを探知でき、全周囲をカバーできます。ちなみにGBR-Pを海上プラットフォームに搭載した海上基地型(Sea-Based)も計画されています。


そしてこれは自衛隊の将来警戒管制レーダー、FPS-XXです。


固定式Lバンドレーダー


GBR-Pと同じく基地型の固定式レーダーサイトで、周波数帯はLバンドを使用し、パネル3枚で回転せずに全周囲を警戒します。ただしこれは試作型の為パネルは2枚で、建造物が丸ごと回転します。試作型は本来、今年度中に解体される予定でしたが、量産型が稼動するまで運用研究の名目で残される事になりました。



さて、ミサイル防衛に使われるこれらのレーダーについてなのですが・・・報道現場は混乱しているようです。


車力に米レーダー配備へ [2005/10/26 東奥日報]
Xバンドレーダーは天候の影響を受けやすいものの探知距離が長く、弾道ミサイルが発射する「おとり」の弾頭を識別する能力も高い。情報は空自航空総隊司令部(東京都府中市)を通じ米軍から提供される見通しだ。

これに対し日本は、探知距離などはXバンドレーダーより劣るものの天候の影響をほとんど受けないFPS−XXの情報を提供する。防衛庁幹部は「異なる探知能力を持つレーダー情報を提供することでギブ・アンド・テークになる。


ミサイル防衛の要・Xバンドレーダー [2005/12/17 東奥日報]
一般的に、周波数が高く、波長が短いX帯は探知距離が短い半面、精密に測定できるというメリットを持っている。

これに対して、周波数が低いL帯は識別能力で劣るものの、遠くまで広く探知できるとされている。
レーダー装置に詳しい空自幹部は「弾道ミサイルの発射そのものは米軍の早期警戒衛星が探知する。その警報を受けて、探知距離が長く捜索範囲の広い空自のFPS−XXがキャッチ。さらに米軍のXバンドレーダーが追尾し、正確な弾道や着弾点、着弾までの時間を解析することになるのではないか」と説明する。


2ヶ月も経たずに言ってる事が180度変わっています。最初はXバンドレーダーの方がFPS-XXより探知距離は長いと言っていたのに、その後FPS-XX(Lバンド)の方が探知距離が長いと説明しています。空自幹部の説明も早期警戒衛星→FPS-XX→Xバンドレーダーの順で補足する事を述べています。

この混乱は恐らく、車力に配備されるXバンドレーダーをGBR-Pと勘違いした結果なのでしょう。GBR-Pは巨大なレーダーパネルと大出力に物を言わせて長大な探知距離を実現しています。しかしFBX-Tは車載する為にレーダー自体が小さく発電力も低いのです。車載式としては破格の出力ですが、固定式レーダーサイトのGBR-PやFPS-XXには及びません。そして出力差もさる事ながら、レーダーアンテナ面積の差が決定的です。


レーダー探知距離を大きくするには,どうすればいいか?軍板FAQ
この式を眺めると,遠距離探知のために出力Pを大きくすることと,受信感度σを小さくする(受信感度を良くする)こととは,同じ程度で利く.

それに対して,アンテナ利得は2乗で効果がある.2倍の探知距離を得るには,レーダー出力は16倍にせねばならぬが,アンテナ利得(アンテナ面積)は4倍にすればいい.

電波の波長λも同様に2乗で利くが,λを大きくする(周波数を低くする)と,同じ開口面積Aのアンテナでは,レーダー電波のビーム幅が広くなり,アンテナ利得が小さくなる.簡単にλを大きくすることは考え物だ.

結局,アンテナの縦・横の寸法を大きくしてビーム幅を絞り,利得を上げるのが,レーダー探知距離を大きくするのには一番である.

Rmax

「この式」とは↑これを参照。レーダーの最大探知距離 Rmax.


そこでこの式を踏まえて、FBX-T(THAAD)レーダーの探知距離について考察してみます。


THAAD[army-technology.com]
The radar has the capability to acquire missile threats at ranges up to 1,000km.


探知能力2000キロ? [2006/2/9 東奥日報]
軍事機密という壁に最も阻まれているのが探知能力だ。それを探る手掛かりの一つがアンテナの大きさとなる。ちなみに、海上型のアンテナの表面積は百二十三平方メートル。移動型は説明図から推測して十四平方メートル程度だから、約十分の一の大きさということになる。

海上型の最大探知距離は四千キロ以上といわれ、二千キロ程度で弾頭の形状を識別できるとされる。これに対して、移動型は緊急展開用のため「能力的に劣ると考えられる。能力は海上型の半分程度ではないか」とレーダー専門家は分析する。

半分だとすると、探知距離は二千キロ。それでも、日米が仮想敵と位置付けている北朝鮮全域をカバーできることには変わりない。「いずれにしても、探知距離が最高機密である以上、米軍は防衛庁にも教えるはずがない」とレーダー施設に詳しい空自幹部は話す。


さて、army-technology.comでは「探知距離1000km」とあり、東奥日報では「探知距離2000km」と予測しています。一体、どちらが正しいのでしょうか? まず明確に判明しているGBR-P(Sea-Based)とFBX-T(THAAD)のアンテナ面積差からレーダー最大探知距離Rmaxの公式を当て嵌めていくと、「能力は海上型の半分程度ではないか」という分析がおかしい事に気付きます。

アンテナ面積差は123m²と14m²で約9倍。これをRmaxの公式に当て嵌め、他の変動要素を同じとして比較したならば、最大探知距離Rmaxは3倍の差になっていないといけません。つまりFBX-TはGBR-Pに比べ3分の1の探知距離しかない。GBR-Pが4000km探知できるならば、FBX-Tは1300km程度だという事です。しかも出力差も考慮に入れると更に差は広がります。当然の事ながら発電力は固定レーダーサイトの方が上です。

恐らく、FBX-Tの実用的な最大探知距離は1000km前後、もしくはそれ以下であると思われます。アメリカ軍は、500km"以上"の探知距離があるとしか公式には発表していません。(海軍のイージス艦のレーダーSPY1にしても似たような発表)詳しい数値は軍事機密です。


もし1000km以下説が正しい場合、車力にFBX-Tを置く事は米本土ミサイル防衛にあまり役に立ちません。北朝鮮からニューヨークを狙う場合、ミサイルは北極寄りを通過していきます。ギリギリで捕捉できません。想定コース上、レーダーはアラスカやアリューシャン諸島に配置すべきです。仮に2000km説の方が正しければ車力からでも概ねカバーできます。

ですが2000km説でも、中国の奥地からアメリカ本土に向けて放たれる大陸間弾道弾に対しては無力です。もうこの位置から発射されてしまうと北極点付近上空を飛んでいくので、アラスカやグリーンランドに配置したレーダーに頼る事になります。しかし車力では位置的に例えGBR-Pを配置しても、殆ど役に立ちません。

つまり日本にミサイル防衛レーダーを配置する事は、日本本土防衛は当然の主任務ですが、アメリカ本土防衛にはあまり意味が無いのです。つまりハワイやグアムの防衛を視野に入れているのでしょう。


そして自衛隊のFPS-XXですが、このような情報があります。(ロシア報道なので信憑性はどうなのか)


日本のBMDレーダー、謎のミサイルを追跡プチソ連
日本防衛庁の技術研究本部が設計・建設したプロトタイプのFPS-XXレーダーが、1,000マイル北東のオホーツク海でロシア原潜が行なった、弾道ミサイルの試験発射をモニターした。レーダーは次に、ロシア北方を横切り極海に位置するバレンツ海へ至る、数千マイルにおよぶミサイルの飛行を追跡したと防衛庁は述べている。


これが事実なら、FPS-XXはGBR-P並かそれ以上の探知距離を有している事になります。果たして、どうなのでしょうね?
20時19分 | 固定リンク | Comment (75) | ミサイル防衛 |
2005年12月01日
F-35Aの次は、AL-1A計画がキャンセルされそうです。

U.S. said mulling ending airborne laser project [11/30 Reuters]

空中レーザー砲による弾道弾迎撃計画は頓挫か。その一方、THAADシステムは実験継続の話を聞かなくなったのに、計画そのものがどうなるかをあまり聞かないですね。GBIインターセプターの方に力を入れてるんでしょうか。

実は今年の初めに日本へAL-1A計画の参加打診があったのですが、このままではお流れになりそうです。
22時32分 | 固定リンク | Comment (13) | ミサイル防衛 |
2005年06月26日
これは何が言いたいのだろう、日本も対抗してトマホークを導入しろと言いたいのでしょうか。


巡航ミサイル技術 イランから北に流出か 日本全土射程に [6/26 産経新聞]
ウクライナの旧クチマ政権がイランに売却した長距離射程の巡航ミサイル「Kh55」の技術が北朝鮮に流出した疑いが二十五日、浮上した。複数の政府・与党筋が認めた。Kh55は核弾頭搭載可能で、北朝鮮が配備すれば日本全土が射程に入る。政府は北朝鮮の弾道ミサイルに備えミサイル防衛(MD)の整備を急いでいるが、海上スレスレを飛んでくる巡航ミサイルには対応できず、新たな対抗措置を迫られる可能性も出てきた。

偵察衛星を保有していない北朝鮮が、どうやってKh-55を運用するのでしょうね? (この巡航ミサイルを運用するには合成開口レーダー衛星による地形等高線照合が必要となる) 独自の偵察衛星を持つ中国が手に入れたのは厄介ですが、北朝鮮やイランがこれを手に入れたところで直ぐには実用化できません。とりあえず放っておいても構わないでしょう。

それと、海面すれすれを飛んでくる巡航ミサイルの迎撃方法なんて今まで通りです。


早期警戒機で見つける

待機中の戦闘機に指示

空対空ミサイルで迎撃


『新たな対抗措置を迫られる可能性も出てきた』って、一体何がしたいのでしょうか。

巡航ミサイルのような亜音速で飛んで来る低高度目標ならば、発見する事さえできれば既存の対空兵器で対処可能です。地上や海上にあるレーダーでは低高度目標は地平線の影に隠れて長距離での探知はできませんが、空中に存在するレーダーならば遠距離での探知が可能です。航空自衛隊にはAWACS(早期警戒管制機)のE-767が4機、AEW(早期警戒機)のE-2Cが13機存在します。この陣容はアメリカ軍の次に優秀な早期警戒網です。古いE-2Cの近代化改修も始まりました。何が不満なのでしょうか。

自衛隊はソ連が第一仮想敵国であった時代から、巡航ミサイル対策をずっと真剣に考えてきました。敵国が弾道ミサイルではなく巡航ミサイルで攻撃してくるなら、むしろそちらの方が対処し易いでしょう。
20時19分 | 固定リンク | Comment (30) | ミサイル防衛 |