美爾依(みにー)さんが私宛のエントリーを書いてくれたそうです。うーん・・・何だこれ・・・反論以前の問題なのでは?(日本語の読解力とか、論旨の組み立てとか、その辺りの問題)
まぁとりあえず行ってみましょう。場合によっては「初心者のための軍事講座」ではなく「初級日本語会話」の講義になるかもしれませんが。
それでは分かり易くするために、私の過去記事は
青色で、美爾依(みにー)さんの主張は
黄色で表示する事にします。
■JSFさんの反論への答え カナダde日本語まあ、これは論文などの正式なものではないし、ただのブログなので憶測でものを言ってもいいはずですが、何か?憶測が的中することもあるし、はずれることもあるのは、みなさま、ご存知ですよね。ええ、何もバイアスが掛からずに適当にものを言った場合、当たったり外れたりするでしょう。しかし自分の願望が混じり過ぎた勝手な憶測でものを言った場合、的中率は格段に下がることは皆様もご存知の通りです。それを究極的に体現した存在は
【逆神】と呼ばれ、主張した事の悉くが外れてしまうと揶揄されています。国内政治の森田実、国外政治の田中宇、軍事の神浦元彰、選挙の福岡政行、経済の紺谷典子などが逆神として有名。
私が言っているのは、もし、これを上回る兵器(最近ロシアで開発されたような弾頭部分に加速用のエンジンがついたもの)が使われたら、いくらキネティック弾頭とは言え、的中率が低くなってしまうわけで、そうしたら全く使い物にならなくなってしまうわけでしょう。命中率が低くなったらいきなり「全く使い物にならない」とするのは論理が飛躍しています。"全く"という表現を使う場合は命中率がゼロの状態でなければなりませんよ。多少命中率が低くなった程度なら迎撃ミサイルの数を増やせばカバーできるわけですから。
そして兵器開発がシーソーゲームなのは古来より当たり前のことです。だからこそSM-3もBlock1A、Block1B、Block2と更なる進化をすべく開発が進められています。相手が進化するならこちらも進化して、敵のミサイルを上回る性能を持てばいい。それにブーストフェイズ段階を狙えばトーポリMも他の弾道ミサイルと同じですから、将来、ブーストフェイズでのMDシステムが実用化された場合トーポリMが無力化される可能性もあります。
どちらにせよ弾道ミサイルは基本的にコースをジグザグに変更したりはできません。それを行うと目標地点への着弾命中率が極端に下がる恐れがあるからで、現状でこの技術を中国や北朝鮮が実現できるものとは思えず、こちらもまた将来の話となります。
だから、そうなったら、再利用するために改良して(例えば、キネティック弾頭部分を六ヶ所再処理工場で作ったプラトニウムを使って核弾頭として交換すれば、殺人ミサイルに変わるということです。いいえ、そのような事は有り得ません。私は以前こう言った筈ですよね。
SM-3の技術的な核心部分はキネティック弾頭と呼ばれる、宇宙空間で自律機動する特殊な弾頭部分にあります。SM-3の非常に多額な開発費用の殆どはこの特殊弾頭に費やされています。そしてこのキネティック弾頭の技術はどう考えても地上攻撃用装備には成り得ません。分かりますか、SM-3で一番お金が掛かっているのはキネティック弾頭です。SM-3はキネティック弾頭の性能でほぼ命中率が決まります。推進ブースター部分は目標付近に届きさえすれば何でもよいんです。
そして美爾依(みにー)さんは更に以前、こう仰られています。
SM-3は防衛のためのミサイルと言われている割には、全く役に立たないのだ。そんな役に立たないものを540億円も出して無駄にできないだろう。そこで、戦争になったら、これを地上攻撃用に使おうとするだろう。だから、殺人ミサイルになるのだ。お金が掛かって勿体無いから地上攻撃用に転用しよう、という話でしたよね。でも前述のようにSM-3の肝心要のキモであり、一番お金が掛かっているのはキネティック弾頭です。・・・弾頭入れ替えちゃったら費用の回収が出来ずに意味無いですよ。美爾依(みにー)さんが最初に主張していた目的が何処かに吹っ飛んでいます。
仮にもしSM-3を対地攻撃用にするとなると、実用上の威力を与えるためには第三段ブースターを取り払って弾頭炸薬容積に充てないといけません。(元々SM-3の構造はSM-2の弾頭炸薬部分をブースターに充てたもの)そうなるともうそれはSM-3を一旦SM-2に戻してから対地攻撃型に作り直すようなものであり、だったらSM-3をベースにするよりも最初からSM-2をベースにした方が早いです。結局のところ「SM-3を対地攻撃に転用」とは労力的に無意味でしかなく、SM-3に投じた多額の開発費用をほんのちょっとですら回収できず、行う意味がありません。もし核弾頭を搭載したければ巡航ミサイルを使えば安いし早いし確実です。
つまり美爾依(みにー)さんの言う「弾頭部をプラトニウム(原文ママ)を使って核弾頭として交換すれば、殺人ミサイルに変わるということです」という主張は現実的には全く有り得ないナンセンスな光景でしかありません。私ならトマホークA型か、開発中のALAMを使いますね。SM-3を対地転用する事にどんな利点があるのか全く理解できないです。
私が言いたかったのは、JSFさんの尊敬する山田先生が(笑)、「宇宙ロケットが改良によって大陸間弾道ミサイルになってしまう」ともおっしゃられていたことです。ちょっと書き方がまずかったかな? いいえ、私は山田先生の事を軽薄しています。何故ならば、何も知らない初心者に全くの嘘を教えているからです。その原因が山田先生自身の無知から来るのですから救いようがありません。素人が講師役をすべきではありません。私のブログを読んだ上で「JSFは山田先生を尊敬している」という結論に至ったのであれば、美爾依(みにー)さんの読解力は著しく低いものだと認識せざるを得ません。
ところで美爾依(みにー)さん、貴方は書き方が拙いどころか、日本語の使い方を理解していないのですか? それとも自分が過去(ごく最近)に行った発言をもうお忘れになられたのですか?美爾依(みにー)さん、貴方はそもそもこう言っているのです。
防衛のためのミサイルも簡単な改良によって地上攻撃用に使えると書いてある。 「防衛のためのミサイル」と言っている以上、それは「宇宙ロケット」を指すものでは無い筈です。それなのに貴方は後になってから宇宙ロケットの事でしたと言い出しています。貴方は自身の過去発言との整合性を無視しています。
『地表で爆発するよりも宇宙空間で爆発したほうが危険』と主張される気ですか? もちろんですよ。第一に、核弾頭は迎撃で破壊されても核爆発はしません。核爆発のシークエンスは複雑かつ精密なもので、適当にぶつけて破壊しただけで勝手に反応してしまうようなお手軽な物なら誰も苦労して核実験などしないです。 ええとですね。このところは激しく反論します。偶然JSFさんのコメント欄で見つけた次の文章はJFSさんも読まれたでしょう。
大気圏外核爆発の危険性というとこういうやつですね?
電磁パルス兵器で大惨事の恐れ―米専門家
同書は「精密に設計されたEMP兵器は、最も人口密度が高い都市で核兵器が爆発したときよりも多くの米国人を間接的に殺害できる」とし、EMP兵器に対するインフラの脆弱性を改善するよう提言している。
EMP兵器は、上空での核爆発によって強力な電磁パルスを発生させ、電子システムを破壊する兵器で、一個の小型核爆弾でも甚大な被害をもたらすことができる。
美爾依(みにー)さん、核爆発を利用したEMP兵器も起爆前に撃墜してしまえば核反応が起きないのでEMPも発生しません。それにそもそも貴方の最初の論旨はこうでしたよね。
それから、藤岡惇教授(立命館大学)の論文「米国の宇宙と核の覇権と軍産複合体」にもあったとおり、このまま米国の宇宙軍事化が進んで、宇宙空間が核戦場となれば、放射能汚染が地上を襲い、癌で死ぬ人が激増するだろう。そうすれば、一見防衛のためのミサイルが結果的には癌を蔓延させる殺人ミサイルに変わってしまうというわけだ。放射能汚染で癌が発生する事が問題だと仰られています。それなのに・・・
ということで、こういった可能性もあるということです。宇宙放射線とは全く別のものです。ただ、私は実際にその現場をみたわけではないので、ただ藤岡教授の主張をサポートするだけで、絶対にという確証はありません美爾依(みにー)さんが最初に引用した藤岡教授の主張は、宇宙空間での核爆発による放射能汚染で癌が蔓延するというものだった筈ですが・・・EMPは電磁パルスであって放射線ではありませんよ? 藤岡教授の主張をサポートするどころか全く別のものになってやしませんか?
しかも美爾依(みにー)さんは気付いていないようですが、EMP兵器は攻撃側が意図的に宇宙空間で核爆発させるものです。つまりMDが無くても宇宙空間で爆発させる気であり、しかも投射手段は従来の弾道ミサイルでよいわけですから、アメリカの宇宙軍事化とは何の関係もありません。
・・・もう一度、美爾依(みにー)さんの最初の論旨を再掲して置きます。
このまま米国の宇宙軍事化が進んで、宇宙空間が核戦場となれば、放射能汚染が地上を襲い、癌で死ぬ人が激増するだろう。そうすれば、一見防衛のためのミサイルが結果的には癌を蔓延させる殺人ミサイルに変わってしまうというわけだ。むしろ爆発前に叩き落せばEMPも発生しませんから、EMP兵器を恐れるならMDを積極的に推進すべきなのではありませんか?EMP兵器の使用(宇宙空間で起爆させる事)は攻撃側の意思であり、防御側の迎撃によって宇宙空間が核戦場になるわけではありません。
分かりますか、EMP兵器による宇宙空間核戦場化はアメリカの責任ではないのですよ。特に「SM-3が殺人ミサイルだ」なんて主張とは何も関係が無いです。
核反応させずに核物質を消滅させてしまうような兵器が早く開発されたらいいですね。 EMP兵器はただ核物質が在るだけでは作動しません。核反応する必要があります。そして起爆前に破壊すれば核反応は起きないのでEMPも発生しません。
え?ゲンダイにこの記事が載っていたのですか?は? いえ、美爾依(みにー)さんの文章「全く使えないようだから、やんなっちゃう。」の“全く使えない”という部分にゲンダイの記事へのハイパーリンクが貼ってあったでしょう、そこへのレスです。
ところでハイパーリンクといえば、美爾依(みにー)さんのエントリー
「2007年度予算でミサイル防衛費過去最高」の後半に、読売新聞のMD予算関連記事「ミサイル」過去最高の1826億円…07年度予算 」の紹介があるのですが、この新聞記事タイトルへのハイパーリンクの行き先が何故かこれなんですよね。
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=134169&media_id=20 mixiやりながら記事を書いていてコピー&ペーストを間違えたんでしょうか?
神浦元彰特集」と「山田先生特集」は読ませていただきました。何よりも、このお二人は軍拡反対派、JSFさんはミリヲタという全く反対の思想がバックにあるので、JSFさんを初めとするミリヲタさんたちはお二方の主張に賛同できないのは当然だと思います。美爾依(みにー)さんは勝手に「ミリオタは軍拡支持」と決め付けていらっしゃいますが、それは間違いです。ミリタリーマニアでも軍縮に賛同する人は大勢居ます。なにより神浦元彰氏は一応、“軍事評論家”という肩書きではないですか。軍事評論家とミリタリーマニア、プロとアマチュアの違いがありますが、軍事を勉強しているという点では同じ筈ですよ。
山田先生は歴史の教授で軍事知識に関しては、専門性といった意味ではJSFさんの方が高い知識をお持ちなのはわかります。山田先生の戦間期の軍事史研究は斬新で目を見張るものがあります。
神浦氏は軍事評論家なので、それなりに軍事に関する知識はあると思います。いえ、素人以下です。この人はMDに関して、昨年までGBIの存在を知らずTHAADと混同しているような認識ですから。(読者による間違いの指摘には逆ギレする有様)
そして、北朝鮮のCIA陰謀説は100%否定できるものではないと思います。いいえ、100%否定されました。根拠については
「テポドン2はCIAの捏造?」および
「核実験準備はCIAの捏造?」をご覧下さい。
山田先生は50%の根拠を述べることが出来ませんでした。 JSFさんもそれより高い確率の根拠を述べることはできないでしょう。 山田先生連載第5回より
http://www.magazine9.jp/gunji/005/index.html >PAC3は、これまでの迎撃実験ではどの程度成功しているのですか。
>
>アメリカでの実験回数や結果についても、具体的な数字や条件などが公表されていませんのでなんともいえません。
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実験の具体的な数字や条件は公表されています。通算成功率は約86%です。
Kojii.netより
http://www.kojii.net/news/news060908.html
ニューメキシコ州の White Sands 実験場で、米 Lockheed Martin 社の PAC-3 (Patriot Advanced Capability-3) が TBM (Tactical Ballistic Missile) ターゲットの要撃試験を成功裏に実施した。過去 22 回実施して 19 回目の成功。飛来するターゲット (旧型 Patriot の流用品) に対して 2 発の SAM をつるべ撃ち (ripple-fired) したもの。今回の試験では、地上側機材のソフトウェアが改良されており、それが試験対象になった。
弾道ミサイルが発射された時点で敵国の先制攻撃とみなされるのですか?でも、そのミサイルが米国向けで日本を狙ったものではない場合は、集団的自衛権を行使しないとそのミサイルを撃つことはできませんよね。 私はこう述べています。
弾道ミサイルのブースト段階を狙うMDシステムはABL(空中レーザー砲)ですが、日本に導入予定はありません。また弾道ミサイルが発射された時点で敵国の先制攻撃とみなせます。そしてアメリカ合衆国は憲法九条の制約などありませんので、そもそもお構い無しに迎撃するでしょう。 そもそも米国向けのミサイルを日本の装備では迎撃は出来ません。(ブーストフェイズを狙うしかないが日本にABL導入予定はない)
確かに弾道飛行ということは水平飛行ではないでしょうね。でも、加速用のエンジンがついていたら、水平飛行も可能かもしれませんね。 高空を水平飛行すると狙い撃ちされてしまいますが、それでよいのですか?(巡航ミサイルは低空を地形に沿って這うように飛んでいくため狙い撃ちされにくい)
だから、ロシアでその新しい弾頭ミサイルが開発されたということは、北朝鮮もそれを手に入れる可能性があるということです。 そのような可能性は皆無です。歴史上、ロシアはソ連時代を通じてICBMを他国に供給した事実はありません。また、現状の北朝鮮に対してロシアがそのような援助を行う事は絶対に無いでしょう。全世界を敵に廻す気ですか? ロシアに何のメリットがあるのです?
そして、基本的にそのような機能はなくても、応用的にはあるわけで・・・・。 基本すらままならない(テポドン2打ち上げ失敗)ような北朝鮮に難易度が非常に高い応用が出来るわけが無いでしょう。中国ですら出来ないというのに。
それは可能でしょうが、的中率はかなり低くなるのでは?いえ、FCSがコンピュータ制御なら意外と簡単なんです、弾vs弾は。そりゃ全て人力なら難しいですけどね。
実験は多くがその弾のスピードや飛距離など、前もって計算つくされたものだし・・・・いえ、SM-3は標的弾の正確な発射時刻を知らせないなど実戦に近い形式を取った実験を既に成功裡に終えています。
「迎撃が成功すれば核爆発は起きない。生物兵器は搭載された菌が死滅、化学兵器も燃やし尽くされます。」なんて都合のいいことがありえるのでしょうか。まず物理的素養のある人なら「迎撃が成功すれば核爆発は起きない」事は常識の範疇です。核爆発の手順がどういったものか調べればすぐに分かる筈です。
生物兵器については、これは非常にデリケートなものです。実を言うと迎撃以前に、着弾の衝撃や大気との断熱圧縮による熱で細菌やウィルスが死滅する可能性すら真面目に心配されており、弾道ミサイルへの生物兵器の搭載は実用性自体が疑われている代物です。ましてや迎撃に成功すれば中の生き物は全滅必至です。
化学兵器については・・・化学物質は燃焼したら変質してしまいます。それは理解できますか?
それにしても、とてもご親切にわかり易く教えていただいたので、参考になりました。ありがとうございました。
又、軍事関係でわからないことがあったら、JSFさんにお聞きしますね。いえいえどうも。分からない事があったら気軽にメールで聞いてください。現在のところ返信率はmixiのメールが一番良い(チェック回数が頻繁)と思います。また、mixiのコミュニティで「初心者の為の軍事講座」を開こうかと計画中ですので、よろしければご参加下さい。
ではでは。