ハワイ沖でのリムパック演習を終えて帰投中の韓国海軍イージス艦「セジョンデワン」で急病人が発生。日本近海まで来ていたものの、艦載ヘリコプターの航続距離が陸地まで足りなかった為に、日本に救援を求めました。
海自が韓国兵を急患搬送 宮城・金華山沖、災害派遣で初:共同通信
防衛省は12日、宮城県・金華山沖を航行中の韓国海軍のイージス艦に乗り組む男性兵士(22)が急病となり、災害派遣要請に基づき、海上自衛隊がUS1A救難飛行艇で海自厚木基地(神奈川県)に搬送したと発表した。災害派遣で自衛隊が外国兵を急患搬送したのは初めて。兵士に命の別条はないという。
防衛省によると、在日韓国大使館が同日午前3時15分ごろ、海上保安庁に急患搬送を依頼。第2管区海上保安本部(塩釜)から災害派遣要請を受けた海自が、金華山沖東約880キロの太平洋で兵士を収容した。胃に穴が開き出血した状態という。
イージス艦は、ハワイ周辺海域で行われた環太平洋合同演習(リムパック2010)を終え、韓国に戻る途中だった。
海上自衛隊の救難飛行艇は以前にもアメリカ空軍のF-16戦闘機が洋上で墜落した際にパイロットの救助を行った事が有ります。今回の韓国水兵救助は「災害派遣」という手続きを取った上で行った初のケースになります。二つのケースは共にヘリコプターでは到達が困難な距離で、救難飛行艇があればこそ迅速な搬送ができたと言えます。ただしかし、今回の韓国水兵急患搬送のケースは、行おうと思えばもっと早く出来た筈です。
日本防衛省:韓国海軍艦艇からの急患輸送に係る災害派遣について(最終報)
http://www.mod.go.jp/j/press/news/2010/08/12c.html8月11日23時30分、関東東方1000海里沖の韓国イージス艦で急病人が発生。
8月12日03時15分、在京韓国大使館から海上保安庁へ急患輸送の要請。
8月12日10時10分、第二管区海上保安本部長から海上自衛隊航空集団司令官に対して災害派遣要請
防衛省に要請が来る迄に10時間も掛かっています。これは墜落機の捜索救助とは異なり、軍医も乗っている軍艦での急病人なので、そこ迄一刻を争うほどの状況では無かったのかもしれません。ですが韓国海軍としては出来るだけ早く患者を届けたかった筈です。
10時10分 第二管区海上保安本部長から海上自衛隊航空集団司令官に対して急患輸送に係る災害派遣要請。
10時49分 第3航空隊のP-3C×1機が厚木基地を離陸。
11時02分 第71航空隊のUS-1A×1機が厚木基地を離陸。
15時35分 第71航空隊のUS-1A×1機が現場(宮城県金華山沖東方約476NM)に着水。
15時51分 US-1Aの救助ボートにより患者収容。
16時07分 第71航空隊のUS-1Aが現場を離水、厚木基地へ搬送。
18時31分 第3航空隊のP-3C×1機が厚木基地に着陸。
19時50分 第71航空隊のUS-1A×1機が厚木基地に着陸。
20時11分 患者引渡し後、撤収要請。
※第71航空隊(岩国)のUS-1Aについては、厚木基地に前進待機中の航空機が対応。
韓国イージス艦セジョンデワンは15時間で1000ー476=524海里(970km)も日本に向かって接近しています。なんと平均時速64km(35ノット)。実際にはセジョンデワンのスペック上、ここ迄の速度は出せませんので、大まかな距離が正確では無いのでしょう。ですが30ノット以上の最大速力を発揮していた事は間違いありません。彼等は一刻でも早く患者を届けようと努力していました。それでも艦載ヘリコプター「スーパーリンクス」を陸地まで届かせるには、更に3時間以上は艦を走らせる必要がありました。其処からヘリコプターの巡行速度を考えれば、飛行艇を使って稼げたのは4〜5時間という事になります。
深夜0時に患者が発生、午前3時に韓国大使館から海上保安庁に救難要請、午前10時に海上保安庁から海上自衛隊に要請。しかし夜間の洋上着水は無理でも夜明けと共に出動していれば、飛行艇の航続力ならば1000海里先でも行けたのですから、もっと早く急患を運べたのではないでしょうか。それが出来なかったのは「災害出動の手続き」というお役所仕事だったのだとすると、少し残念に思います。深夜の要請だったので伝達が手間取るのは、ある程度は仕方の無い話ではありますが・・・海上保安庁で7時間も伝達が止まってしまったのは、長過ぎると思います。