米空母がベトナム沖合に 南シナ海、中国を刺激 :共同通信
【ハノイ共同】AP通信によると、米海軍横須賀基地配備の米原子力空母ジョージ・ワシントンが8日、ベトナム中部ダナン沖合の南シナ海に到着した。南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)、西沙(同パラセル)両諸島の領有権をめぐってベトナムと対立する中国を強く刺激しそうだ。
また米国は同空母を米韓合同軍事演習の一環として、中国の「玄関先」である黄海に派遣する方針を既に表明しており、中国の反発が一段と高まる可能性もある。
APによると、同空母の訪問は、米国とベトナムの国交正常化15年祝賀の一環とされる。ベトナム戦争を戦った両国だが、2003年には米軍艦船が戦後初めてベトナムに寄港、両国の軍事協力は活発化している。
南シナ海での領有権をめぐっては中国とベトナム、フィリピンなどが対立。ベトナムで先月開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)閣僚会議でも討議の焦点となり、クリントン米国務長官は米国の南シナ海への関与を強化する考えを表明した。ベトナムと米国が、中国けん制で一致したとみられている。
この状況の解説は以下の記事を読むと良いでしょう。
我が国で報道されない海外事情って、文脈に対する理解の問題じゃないか:山本一郎
http://kirik.tea-nifty.com/diary/2010/08/post-a554.html
Hillary Clinton Changes America's China Policy : Gordon G. Chang
http://www.forbes.com/2010/07/28/china-beijing-asia-hillary-clinton-opinions-columnists-gordon-g-chang.html
大失態演じた中国外交、米中対立どこまで:宮家邦彦
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/4147
元外交官の宮家邦彦氏は軍事知識が素人レベルで安全保障の話に不安がありましたが、山本一郎氏に聞いて見ると 「外交状況に対する認識は極めて正確だと思います」と聞かされましたので、今回は外交に比重が置かれた話題なので分析に関しては大丈夫だと思います。
中国、武装艦で威嚇 拿捕の漁船、解放迫る :毎日新聞
青く、穏やかな南シナ海に緊張が走った。6月23日、インドネシア領ナトゥナ諸島のラウト島から北西57カイリ(約105キロ)。現場海域からの立ち退きを命じるインドネシア海軍艦船に対し、中国の白い大型漁業監視船が、「拿捕(だほ)した中国漁船を解放しなければ攻撃する」と警告。大口径の機銃が銃口を向け、インドネシア海軍艦も応戦準備に入った−−。
南シナ海での中国の振る舞いに東南アジア各国は我慢の限界に近づいて来ており、ベトナムと中国の間では海上で頻繁に発砲事件が発生していましたが、インドネシアとの間でも発砲寸前のトラブルを引き起こしています。
東南アジア各国は、中国が将来この海域に大規模な艦隊を送り込んでこれまで以上の振る舞いを行う事を警戒し、対抗としてこの地域で海軍軍拡競争が始まっており、特に潜水艦の大幅な増勢・新規取得が目立っています。ベトナムはロシアからキロ級潜水艦6隻を購入します。そして、アメリカ海軍を呼び寄せ、中国への牽制としたのです。アメリカは現在、シンガポールのチャンギ港を利用しており、この方面に睨みを聞かせていますが、今後はベトナムのカムラン湾にも頻繁に現れる事になるでしょう。カムラン湾は2002年までロシア海軍が租借していましたが今は撤退しており、それ以降ずっとアメリカは租借出来ないかと打診し続けていました。
ベトナムとしてはアメリカは仇敵です。しかしベトナムは中越戦争を経て中国が目の前の最大の脅威であると痛感しました。ソ連が健在の頃はソ連海軍艦隊のカムラン湾駐留で中国への海上での牽制は出来ていましたが、ソ連崩壊後に弱体化したロシア海軍の再建は途上であり、今はまだ頼る事が出来ません。そこで、アメリカ海軍を呼び寄せる方針を選択する、そういう事になるのでしょう。前述のようにアメリカは以前からカムラン湾の使用を求めており、ベトナムが許可を出せば成立します。
カムラン湾 - Wikipedia
本格的な根拠地(横須賀や佐世保のような)として使うのではなく、定期的に訪れる泊地となるでしょうが、米空母がカムラン湾に頻繁に現れるようになれば、中国海軍の行動は大きく抑制される筈です。