このカテゴリ「政治」の記事一覧です。(全153件、20件毎表示)

2010年08月09日
アメリカは中国の東南アジア影響力拡大に歯止めを掛ける事を宣言し、その上で空母を用いた砲艦外交を行いました。


米空母がベトナム沖合に 南シナ海、中国を刺激 :共同通信
 【ハノイ共同】AP通信によると、米海軍横須賀基地配備の米原子力空母ジョージ・ワシントンが8日、ベトナム中部ダナン沖合の南シナ海に到着した。南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)、西沙(同パラセル)両諸島の領有権をめぐってベトナムと対立する中国を強く刺激しそうだ。

 また米国は同空母を米韓合同軍事演習の一環として、中国の「玄関先」である黄海に派遣する方針を既に表明しており、中国の反発が一段と高まる可能性もある。

 APによると、同空母の訪問は、米国とベトナムの国交正常化15年祝賀の一環とされる。ベトナム戦争を戦った両国だが、2003年には米軍艦船が戦後初めてベトナムに寄港、両国の軍事協力は活発化している。

 南シナ海での領有権をめぐっては中国とベトナム、フィリピンなどが対立。ベトナムで先月開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)閣僚会議でも討議の焦点となり、クリントン米国務長官は米国の南シナ海への関与を強化する考えを表明した。ベトナムと米国が、中国けん制で一致したとみられている。


この状況の解説は以下の記事を読むと良いでしょう。

我が国で報道されない海外事情って、文脈に対する理解の問題じゃないか:山本一郎
http://kirik.tea-nifty.com/diary/2010/08/post-a554.html
Hillary Clinton Changes America's China Policy : Gordon G. Chang
http://www.forbes.com/2010/07/28/china-beijing-asia-hillary-clinton-opinions-columnists-gordon-g-chang.html
大失態演じた中国外交、米中対立どこまで:宮家邦彦
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/4147

元外交官の宮家邦彦氏は軍事知識が素人レベルで安全保障の話に不安がありましたが、山本一郎氏に聞いて見ると 「外交状況に対する認識は極めて正確だと思います」と聞かされましたので、今回は外交に比重が置かれた話題なので分析に関しては大丈夫だと思います。


中国、武装艦で威嚇 拿捕の漁船、解放迫る :毎日新聞
青く、穏やかな南シナ海に緊張が走った。6月23日、インドネシア領ナトゥナ諸島のラウト島から北西57カイリ(約105キロ)。現場海域からの立ち退きを命じるインドネシア海軍艦船に対し、中国の白い大型漁業監視船が、「拿捕(だほ)した中国漁船を解放しなければ攻撃する」と警告。大口径の機銃が銃口を向け、インドネシア海軍艦も応戦準備に入った−−。


南シナ海での中国の振る舞いに東南アジア各国は我慢の限界に近づいて来ており、ベトナムと中国の間では海上で頻繁に発砲事件が発生していましたが、インドネシアとの間でも発砲寸前のトラブルを引き起こしています。

東南アジア各国は、中国が将来この海域に大規模な艦隊を送り込んでこれまで以上の振る舞いを行う事を警戒し、対抗としてこの地域で海軍軍拡競争が始まっており、特に潜水艦の大幅な増勢・新規取得が目立っています。ベトナムはロシアからキロ級潜水艦6隻を購入します。そして、アメリカ海軍を呼び寄せ、中国への牽制としたのです。アメリカは現在、シンガポールのチャンギ港を利用しており、この方面に睨みを聞かせていますが、今後はベトナムのカムラン湾にも頻繁に現れる事になるでしょう。カムラン湾は2002年までロシア海軍が租借していましたが今は撤退しており、それ以降ずっとアメリカは租借出来ないかと打診し続けていました。

ベトナムとしてはアメリカは仇敵です。しかしベトナムは中越戦争を経て中国が目の前の最大の脅威であると痛感しました。ソ連が健在の頃はソ連海軍艦隊のカムラン湾駐留で中国への海上での牽制は出来ていましたが、ソ連崩壊後に弱体化したロシア海軍の再建は途上であり、今はまだ頼る事が出来ません。そこで、アメリカ海軍を呼び寄せる方針を選択する、そういう事になるのでしょう。前述のようにアメリカは以前からカムラン湾の使用を求めており、ベトナムが許可を出せば成立します。

カムラン湾 - Wikipedia

本格的な根拠地(横須賀や佐世保のような)として使うのではなく、定期的に訪れる泊地となるでしょうが、米空母がカムラン湾に頻繁に現れるようになれば、中国海軍の行動は大きく抑制される筈です。
20時08分 | 固定リンク | Comment (727) | 政治 |

2010年08月07日
先月の毎日新聞の記事で、抑止力と相互依存に関する議論について公平に良く纏まったものが有りました。抑止力について当ブログでは以前に 「中国人民解放軍軍事科学院の江新鳳上級大佐が警戒する沖縄米海兵隊の抑止力」で解説した事があるので、今回は「相互依存」について紹介したいと思います。


反射鏡:民主党と抑止力「考えれば考えるにつけて」=論説委員・岸本正人:毎日新聞
 相互依存関係にある国に侵攻すれば、自国の経済・社会もダメージを受ける。得失を考えれば、その国は簡単に侵略・侵攻の政治決定を下せない−−相互依存を重視する理論は、こうした想定を前提にしている。

 米国のジョセフ・ナイ氏らの「複合的相互依存」論の展開も、軍事的安全保障の役割を相対的にとらえる議論である。

 反論も当然ある。第一次世界大戦前、英国のノーマン・エンジェルは著書「大いなる幻想」で欧州諸国の相互依存の深まりを根拠に戦争無益論を主張したが、その後、英国などと深い貿易関係にあったドイツを当事者とする2回の大戦が勃発(ぼっぱつ)した。歴史的事実は相互依存論の限界を示しているとも言える。

 理論上も、相互依存の進展がただちに侵攻、軍事的圧力の政治的意図をくじくと考えるのは短絡過ぎるだろう。中国の海軍力増強や最近の日本近海での行動を挙げるまでもない。また、理論的には、相互依存が新たな分野で摩擦を生み、軍事衝突の背景になる可能性もある。

 相互依存の過大評価は誤りに違いない。しかし、安全保障政策や抑止力の検討にあたって依存関係を考慮することは有益である。相互依存の深化が軍事対立を回避する方向に作用する可能性はありうるからだ。「対抗」より「関与」に軸足を置く日本の対中政策は、そうした考えの延長線上にあるはずだ。

 私たちが抱える最大の問題は、政権政党・民主党が体系的安保政策も抑止力の構想も持ち合わせていないことだ。同党は参院選マニフェストでは、衆院選で掲げていた「在日米軍基地見直し」の看板を下ろした。構想力欠如の告白に違いない。


抑止力について議論をしていると、「相互依存関係が深まっている国同士では戦争になる事は無い」と言い出す人が必ず出てきますが、過去の歴史を見る限りは過大評価であると言えます。ノーマン・エンジェルの著書「大いなる幻想」は当時の欧州で流行となりましたが、すぐに世界大戦が勃発して幻想そのものとなってしまいました。また欧州だけでなく、日本も最大の貿易相手国である米英と戦争してしまうなど、幾らでも反例があるのです。

相互依存は戦争の可能性を減らす事は出来ますが無くす事は出来ません。

ある意味当たり前の結論ですが、興味深い事に毎日新聞の記事で相互依存論を唱えたと紹介されているアメリカのジョセフ・ナイ教授は、毎日新聞の別の記事の取材に 「米軍地上部隊の日本駐留が拡大抑止に不可欠」と答えています。一方で沖縄海兵隊の抑止力を認めて注視している中国の江新鳳上級大佐も、「軍事を含めて相互交流と相互理解が日中の緊張緩和ひいては両国の発展に繋がる(中国語記事)」と、相互交流の重要性を唱えているのです。

つまり、相互依存は戦争の可能性を減らす事は出来ても無くす事は出来ない、という結論は前提として当たり前の事であると、米中の安全保障問題の専門家は認識している事になります。
23時59分 | 固定リンク | Comment (241) | 政治 |
2010年08月06日
広島原爆投下の日にちゃんと明言しました。思い切った事ですが、首相の責務をきちんと果たしたと言えます。


「核抑止力は引き続き必要」菅首相、平和祈念式後に:朝日新聞
 菅直人首相は6日午前、原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式(平和記念式)に出席後、広島市内で記者会見し、「核抑止力は、我が国にとって引き続き必要だ」と述べた。広島市の秋葉忠利市長が平和宣言で「核の傘」からの離脱を求めたことへの対応を問われたのに対して答えた。記念式では「核の傘」への言及は避けていた。

 一方、秋葉市長が求めた非核三原則の法制化について、首相は「非核三原則を堅持する方針に変わりはない」と述べた。ただ、仙谷由人官房長官は6日午前の会見で「改めて法制化する必要はない」と否定的な認識を示した。


という事なので、文句のある方は首相官邸( http://www.kantei.go.jp/ )の方にお願いします。
23時45分 | 固定リンク | Comment (266) | 政治 |
2010年07月12日
民主党は50議席どころか44議席しか取れなかったのか・・・事前にJ2kawaさんから「民主45議席」と予想を聞いた時はそこまで負けるのかと半信半疑でしたが、結果はJ2kawaさんの予想がほぼ正解でしたので驚きました。

なお選挙直前にTwitterで行ったSOB発言で新聞報道までされた勝見貴弘氏(日本語アカウントを tkatsumi09j から tkatsumi06j に変更。英語アカウントは tkatsumi09e から tkatsumi10e に変更)が秘書を務める民主党現職議員の犬塚直史氏は落選しました。結構票差は付いているので勝見氏のSOB発言はさほど影響してないとは思いますが、マイナス要因になったのは確かでしょうね。

Togetter ーまとめ「2010参院選 長崎選挙区開票→自民金子氏当確→民主党元議員秘書 勝見貴弘氏の英語ツイート再開まで」

それと、「ペンタゴンに聞いてごらん」の有田芳生さんは当選しました。

有田芳生ペンタゴン

有田さん、他人に対してペンタゴン取材を勧めておきながら、自分はペンタゴンに取材せずにテニアン側だけ取材して「普天間基地の移設先はテニアンで既定の路線」と言い切っていたのがちょっといただけません。有田さんこそペンタゴンに聞いてみるべきだったと思います。結果として、普天間移設先としてテニアンは日米両政府から終始論外扱いされていますので、有田さんの取材のやり方は間違っていたと言えるでしょう。有田さんが議員として普天間問題に首を突っ込んで来たら、この辺の事を聞いて見たいです。

Tgetterーまとめ「普天間移設先は○○で決まり!」と吹聴した著名人一覧

ところで元巨人軍の堀内恒夫さんが出馬して落選していたんですね、ちょっと残念でした、というのも・・・


球界地獄耳・関本四十四の巨人軍、ダッグアウト秘話(17) ホリさんのアキレス腱
ミーティングで熱心にメモを取っているから、川上さんが「ほら見てみろ! 堀内はあんなに熱心にメモを取っているだろう」と、他の選手の模範としてほめる。

ところが、実際は何をやっていたのか、オレは近くにいるからよく見える。ノートに書いているのは、大好きな戦闘機のことや、空母のことなんだよ。野球に関するミーティングのことなんか、1行だって書いてない。これには後日談があって、最後には川上さんにばれてしまったんだけどね。


私は阪神ファンですが、思わずニヤリとしてしまいました。ネット選挙が解禁されていたら投票を呼び掛けていたかも?
23時49分 | 固定リンク | Comment (338) | 政治 |
2010年06月02日
安全保障問題で日本の首相が辞任に追い込まれたのは、岸信介以来五十年ぶりの事になります。戦後政界史でも稀なケースです。

鳩山首相が辞任表明 小沢幹事長も辞任:朝日新聞

ただ、安全保障問題を混乱させた事で辞めたというよりは、「自ら行った約束を次から次へと破っていった」という、政治家としての不誠実さが最大の問題となって辞めざるを得なくなったのだと思います。

鳩山首相の退陣発言全文 / 西日本新聞

辞任理由は大きく二つ。「普天間問題」と「政治とカネ」です。

○鳩山首相辞任会見のNHKニュース動画。


記者会見動画に付いてはNHKニュースのみが会見内容の恣意的なブッタ切り編集を行わず、全内容をYoutubeに上げてくれていました。

【大本営発表】鳩山代表の辞任を承認 新代表選出へ 鳩山代表「クリーンな新しい民主党へ」を訴え:民主党公式サイト
>このメッセージは全議員の万雷の拍手で承認され、近日中に代表選挙が実施されることになった。

>全議員は、立って拍手で鳩山代表を見送った。

↓↓↓↓↓ 

鳩山首相辞任:辞意に驚きの声 民主党両院議員総会 - 毎日jp(毎日新聞)
>約20分のあいさつが終わると、立ち上がって拍手をする議員もいたが、大半は着席したままだった。

????? 

(2009年12月4日)小泉元首相「鳩山政権は参院選までもたない」:朝日新聞

小泉純一郎元首相は昨年の時点で鳩山政権が参院選まで持たない事を予測済み。

竹中平蔵

竹中平蔵氏によると小泉元首相の予測はほぼ完璧だった模様。これだけだったら信じられないところだが、昨年12月時点での朝日新聞の記事もあるので信憑性が高い。

【首相在職ランキング】
1.佐藤栄作 2798日
2.吉田 茂 2616日
3.小泉純一郎 1980日
4.中曽根康弘 1806日

12.鳩山一郎 745日

20.安倍晋三 366日
21.福田康夫 365日
22.麻生太郎 358日

24.細川護煕  263日
25.鳩山由紀夫 260日←(今ここ)

28.宇野宗佑 69日
29.石橋湛山 65日
30.羽田 孜  64日
31.東久邇宮 54日

※6月4日に首相交代予定なので、鳩山さんの首相在職期間は262日となり、細川護煕さんに1日及ばない結果となります。
※追記。首相任命式は6月8日に伸びたので、鳩山さんの首相在職期間は266日となり、細川護煕さんを抜く事が出来ました。
10時39分 | 固定リンク | Comment (942) | 政治 |
2010年03月26日
これは凄い企画です。アメリカでは戦闘機どころかB-2ステルス爆撃機を球場の開会式に呼んだりするんですが、日本の球場で軍用機を呼び寄せてフライオーバー(Fly Over)をさせるとは・・・良い時代になりました。


ブルーインパルス、Kスタ上空飛行 27日・楽天ホーム初戦:河北新報
楽天野球団は、27日にクリネックススタジアム宮城(Kスタ宮城、仙台市宮城野区)で開催されるプロ野球、東北楽天ゴールデンイーグルスの今季本拠地開幕戦(対西武)に、航空自衛隊松島基地(東松島市)所属の曲技飛行チーム「ブルーインパルス」を招き、開幕を祝う飛行を行う。

午後1時の試合開始の前に行われるセレモニーで、6機がKスタ宮城上空に飛来する。

球団は地域密着活動として、陸上自衛隊仙台駐屯地(仙台市)のイベントに球団マスコットを派遣したり、駐屯地から激励を受けたりして交流している。

今季はマーティー・ブラウン新監督を迎えて体制が大きく変わることから、インパクトのあるイベントとして飛行を企画し、自衛隊に要請した。航空機のイベントは大リーグでも実施されているという。
球団は自衛隊と協力して近隣住民に説明し、理解を求めたいとしている。


例えばメジャーではB-2ステルス爆撃機を呼んでいます。



アメリカンフットボールでも呼ばれていますし、C-17輸送機や戦闘機の編隊、大型ヘリコプターなど、他に軍用機だけでなく民間のジャンボ旅客機を呼んでフライオーバーさせることもあります。アメリカの球場では開会式の国歌斉唱と飛行機のフライオーバーは頻繁に行われています。



ただし飛来するタイミングが重要で、国歌斉唱後の直後に飛んで来てくれることが重要です。

楽天イーグルスチャンネル - ニコニコチャンネル

27日のホーム開幕戦、ブルーインパルスもちゃんと中継してくれるんでしょうか? だったら最高ですね。

さて、しかし・・・例によって空気の読めない団体が動き出しました。


楽天開幕戦に空自編隊飛行、市民団体が待った:読売新聞
ブルーインパルスの飛行をめぐっては、これまでも議論が起きている。愛知県の小牧基地では昨年10月、住民の反対意見から航空ショーを取りやめた。福岡県の芦屋基地では同9月、ショーの騒音への苦情電話が数本あったが、満員の観衆に配慮し、飛行を続けた。

宮城県内では2000年7月、ブルーインパルス2機が旧牡鹿町(現石巻市)の山林に墜落している。共産党系の市民団体は24日、飛行の再検討を楽天に申し入れ、社民党県連なども楽天や航空自衛隊に中止を申し入れている。

また、仙台市スポーツ振興課は3月中旬、同基地に「過去に事故が起きており、騒音も想定されるので万が一のことがないように」と口頭で伝えた。県も「安全対策に万全を期してほしい」と連絡している。

これに対し、楽天スタジアム部は「安全性を十分確保できる高度を飛ぶ。飛行中はエンジンを噴かさないので、付近の方々に迷惑をかけるほどのものではない」と説明する。飛行区域の連合町内会長にも説明し、町内会からは目立った抗議はないという。町内会長からは「見てみたい」との声も出ているという。

楽天の担当者は「ファンに楽しんでもらえるはず。安全面に十分配慮していることをこれからも説明していきたい」と話している。


地元の市民は好意的なのに、余所者の反戦団体が勝手に中止を申し入れ? 航空自衛隊が拍手喝采を浴びるのが気に入らないだけで反対ですか。心の狭い事ですね・・・

それに実を言うと既に昨年、サッカーのJリーグで航空自衛隊はフライオーバーを実行済みなんですけどね。


J's GOAL | フォトニュース | [ J1:第1節 鹿島 vs 浦和 ]
試合開始前、自衛隊の飛行機3機が編隊を組んで、スタジアム上空を通過し、開幕の雰囲気を盛り上げる。いきなりの登場に、飛行機が去った後に場内ではどよめきが起こった。


茨城県立カシマサッカースタジアムでの出来事。これは正式に呼んだわけではなく、すぐ近くの百里基地のF-15戦闘機のようで、偶然に訓練の途中で球場の上空を通過していったものです。たまたまタイミングがばっちりでした。

※)あ、あくまで偶然だったんだからねっ!
19時20分 | 固定リンク | Comment (124) | 政治 |
2010年03月22日
2年前に書く予定だったけれどうっかり忘れて今に至るネタをふと思い出して書いてみました。


軍事特許に非公開制度導入へ:産経新聞 2008年1月6日
経済産業省は5日、軍事転用可能な民生技術の特許を非公開にする制度を導入する方針を固めた。特許技術として公開された情報が他国に無断使用され、軍事的脅威が増大するのを防ぐことが目的。平成21年の通常国会での立法化を目指す。


・・・あれ、もしかして選挙のゴタゴタでまだ立法化が出来て無かったりしてます? あれから特許法が改正されたという話を聞かないんですが・・・

特許電子図書館

最近の軍事特許が出て来る・・・非公開制度の立法化は出来ていなかったんですか。拙いでしょう、これは。非公開化されると趣味で楽しむ事が出来なくなりますが、国防上は秘密にするのが当然です。検索していると興味深いのですけどね、例えばIHIエアロスペースは「人工衛星防御システム」(特許公開2008−309445)のような未来兵器の特許を提出しています。他にも探せばロシアのシュクヴァル水中ミサイルと同じタイプの技術特許が出されていたり、サイドスラスター技術や弾道ミサイル防衛にレーザー兵器、戦車用のアクティブ防護システム、複合装甲、砲弾、ミサイル、信管・・・あと個人が「宇宙戦艦空母」(国際公開番号 : WO01/020164 )を提出していたりと、別の意味で興味深い案件もあります。
21時12分 | 固定リンク | Comment (105) | 政治 |
遂にXP-1、XC-2、US-2の海外輸出への道が開けました。


自衛隊機を民間転用 次期哨戒機を旅客用に輸出、政府方針:日経新聞
政府は自衛隊が使う輸送機などの民間転用を進める方針を固めた。第1弾は哨戒機や輸送機などの国産3機種で、4月にも関係省庁による検討会を発足させる。民間機と仕様が変わらないため、武器や武器技術の海外輸出を禁じる「武器輸出三原則」には抵触しないと政府は判断した。財政事情などで防衛費は減少しており、輸出の実現で防衛産業の活性化と技術レベル維持を狙う。

3機種のうち、次期哨戒機XP1と次期輸送機XC2は川崎重工業が防衛省と開発し、飛行実験を進めている。救難飛行艇US2は新明和工業が製造し、海上自衛隊で実際の運用を始めている。


この三機種の内、最も有望なのがXC-2輸送機です。大きな改造無しにそのまま民間型として提示できます。特殊貨物を運べる太い胴体の輸送機でありながら、胴体の細い旅客機と同等の速度を出せるというXC-2の特徴は、民間市場への大きなセールスポイントとなるでしょう。XP-1哨戒機の旅客型は原形を止めないほどの大改造が計画されているので、これは出来てみない事には分かりません。US-2飛行艇については消防飛行艇として売り出す計画があります。

川崎YCX
08時22分 | 固定リンク | Comment (214) | 政治 |
2010年03月21日
就任直後は沖縄県与那国島への陸上自衛隊配備を「隣国を刺激すべきではない」と否定していた北沢防衛大臣ですが・・・※昨年9月24日の記事


政府、米と地元に移設案を非公式打診へ:読売新聞
一方、中国海軍が東シナ海で活動を活発化させていることに関連し、沖縄県与那国島に陸上自衛隊部隊を配置する構想について「監視能力や抑止力の観点からどの程度のものを持っていくか、(検討を)急いでもいい」と前向きの姿勢を示し、近く同島を視察する考えを明らかにした。


何時の間にか前向きな姿勢に転換していました。これもちゃんと勉強して必要性を認識した事による方針転換なのでしょう。口の悪い人は「防衛官僚の言いなりだ」と言うかもしれませんが、ちゃんと現実を認識した上で判断であるなら好ましい事です。

北沢防衛大臣は就任直後には他にも「インド洋での海上自衛隊の洋給油活動は国際的な評価が低い」と間違った認識をしていました。※実際には国際的評価は高かった。しかし、その後は急速に評価を上げて行きます。普天間基地移設問題、防衛予算、22DDH、武器輸出制限緩和・・・どれも安全保障面で納得のできる対応を示されています。今や、鳩山内閣閣僚の中で最も安心して見ていられる存在で、防衛大臣に就いてから本当によく勉強されているんだなと感じています。

【与那国島】


さて話は変わりますが、もし与那国島への陸上自衛隊配備が実現した場合、中国現代国際関係研究院日本研究所の楊伯江所長による予測が早速的中したという事になるわけですね。

(2010/03/03)中国の分析「日本の鳩山政権は対中強硬路線へ」

普天間基地問題でも、中国の識者は複数名が沖縄県内移転を昨年末の時点で予想しており、これも当りそうです。彼らの分析力は高いものであると認めた方が良いでしょう。
21時17分 | 固定リンク | Comment (127) | 政治 |
やはり"TORO"と言えばマグロのトロです。日本外交の鮮やかな勝利、大西洋産クロマグロの禁輸否決は、蓋を開けてみれば「圧倒的ではないか、我が軍は!」状態でした。


極秘リビア説得工作が奏功…クロマグロ禁輸否決:読売新聞
新興国や中国、韓国との連携や、欧州内の足並みの乱れを確認し、事前の劣勢との見方が一変。日本政府は次第に否決に自信を深めていた。

「いまなら勝てそうです」

赤松農相のもとに、17日、ドーハの町田勝弘水産庁長官から電話報告が入ると、赤松農相は「勝てるなら一気呵成(かせい)にやろう」と、即日採決で否決に持ち込もうとするアラブ諸国に乗る腹を固めた。

「モナコ大敗」。農林水産省内の対策室に、マグロ禁輸案否決を伝える現地・ドーハから電話が鳴ったのは、マグロ禁輸の議論初日の18日深夜だった。


正に戦争の様相を呈したドーハ決戦で、日本はマグロ禁輸を唱えたモナコを打ち破りました。日本はリビアにトリックスター役を頼み「マグロ禁輸は先進国の陰謀だ!」と叫んで貰い一気に途上国の支持を集め、中国とは「フカヒレ」の件で共同戦線を張り、戦前の予想では不利だった戦況を一変させ、大逆転劇に持ち込みました。何という戦上手、鮮やか過ぎる外交の手並み。食い物が絡むと日本人は実に恐ろしい・・・。

しかしこの勝利は問題の先延ばしに過ぎず、マグロ資源の枯渇を食い止めなければ結局は自分の首を絞める事になる日本は、資源保護の為にマグロの乱獲を抑制しつつ、資源に悪影響を与えない「人工孵化から育て上げるマグロ完全養殖」をもっと普及させなければなりません。近畿大学水産研究所が2002年にクロマグロの完全養殖に成功しており、技術的には確立されています。最近ようやく量産化の目処が立ち、海外への輸出も始まりました。

近畿大学水産研究所|クロマグロなどの魚の養殖、種苗生産、品種改良

ドーハ海戦の勝利で稼いだ時間を有効に活用し、マグロ資源問題を解決させなければなりません。また、マグロのトロばかり持て囃される傾向もあまり関心はしません。マグロの肉の大半は赤身であり、トロは部位の一部分に過ぎません。トロを大量供給しようとすると赤身が過剰供給になり、資源の有効活用ではなくなってしまいます。赤身の再評価、そして別魚種の再評価によってトロの需要そのものに歯止めを掛けるべきだと個人的には思います。

そこで私が推す新たな寿司ネタが「オオニベ」です。スズキ目ニベ科の大型種で、最大で体長1.5mを超え、場合によっては2m近くになります。

オオニベ:ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑



オオニベはヨーロッパではコルビナ(Corvina;スペイン語でニベ科の総称)と呼ばれ養殖が盛んですが、日本国内では宮崎県だけが養殖と種苗放流を行っています。宮崎県ではサーフ(砂浜)からのキャスティングでのルアー釣りで狙えます。日本でルアー釣りのキャスティングで狙える魚としては最大の存在で、釣り師なら知っている人も多いでしょう。私は10年前くらいに宮崎県で釣れる事を知りました。

肉質はニベの仲間だけあって柔らかく、マダイやスズキよりも美味しいです。白身としては最上級の部類でしょう。そして何より大きいので一匹で多くの肉が取れます。なぜ日本ではこの魚の評価が低いのか不思議で、ヨーロッパ以外では中国や韓国でも高く評価されています。

釣り上げたら超大物オオニベ、345万円で取引―広東省堪江市:レコードチャイナ

中国では人気高過ぎです。「揚げる」「蒸す」といった調理法が多い中華料理との相性が抜群に良い点が、これほどの高評価を産んでいるのでしょう。(逆に中華料理との相性が悪いサケ・マス類は、中国では評価が低い)

自分がこれまで食べた事のある寿司ネタの中で美味しいと思ったのは他に「カゴカキダイ」「ミナミハタンポ」「クエ」「アブラソコムツ」ですが、カゴカキダイとミナミハタンポは小さ過ぎて大量供給には向かず、ミナミハタンポは天ぷらネタの方が向いていると思いますし、ハタの仲間のクエは、魚の肉とは思えない程の旨さで大型種ですが数は獲れず、大量供給は困難です。アブラソコムツは食べると下痢を起こす(脂肪成分が人体には吸収できない)ので、市場流通は禁止されています。

そうなると、今は大きく流通していない魚の中で評価が高まり大量供給される可能性があるのは、オオニベ(及びクエ)だと思うのです。オオニベは一時は宮崎県以外でも養殖が行われましたが廃れています。しかし、再評価されてもいいのではないでしょうか?

※クエ完全養殖に成功した「静岡県温水利用研究センター」では1.5キロ、生後1年で出荷が可能。●御前崎クエ
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2010年03月03日
自分の国の政治予測を国内から予測するよりも、他の国の目線から予測した方が冷静な判断が為される場合が有ります。それは常にそうあるわけではありませんが、客観的な見方が可能になるという利点が有ります。他国からでは判断材料となる情報量が少なくなる、という側面もあるのですが・・・


鳩山政権、対中政策を「友愛」から強硬路線に変更か―中国紙 - レコードチャイナ
2010年3月2日、中国紙・国際先駆導報は、「友愛」を掲げていた鳩山政権の対中政策が強硬路線に転じ始めていると論じた、中国現代国際関係研究院日本研究所の楊伯江(ヤン・ボージアン)所長の寄稿を掲載した。


そんな馬鹿な、と思われるかもしれませんが、中国の識者は昨年12月時点でも、日米同盟への評価と普天間基地移設問題についての予想は以下の通りでした。

普天間問題と日米同盟の行方、中国専門家による分析―中国紙 - レコードチャイナ
・梁雲祥教授 「沖縄県西南部への前進配備」
・洪源事務局長 「国外移設は有り得ない」
「普天間、日米同盟への影響は限定的」 中国軍関係者ら:日経新聞
・江新鳳研究員 「現行案(辺野古)で解決するのではないか」
・于鉄軍教授 「日米同盟を安全保障政策の礎にする日本の方針は揺るがない」

中国の識者は日米同盟を高く評価し、普天間基地移設問題程度では揺らがないと分析しています。特に注意する点は、どの識者も普天間基地移設問題は沖縄県内移設しかないだろうと予測している点です。最近でこそ日本政府は辺野古キャンプ・シュワブ陸上案を中心に推していますが、その動きが出始めるのは2月中旬の話であり、その2ヶ月前の時点で予測していたわけですから、中国の識者たちの見解は侮れないものであると認識すべきでしょう。

『もし自分が日本政府の立場だったら、絶対にそうする。それが一番、自分達(中国)にとって最も効果的で手強い選択だからだ―』

彼らはそういう物の見方で分析しています。これは想定する対象がマトモであったら大変に有効な思考分析なのですが、もしマトモでは無い場合、合理性を放棄して斜め上の選択をしてくる可能性など考慮に入れていません。そのあたりの不確定要素まで予測に入れる事は難しい話です。今のところ、普天間基地移設問題では中国側の予想は当たりつつありますが、果たして対中強硬路線への転換については・・・年末の防衛大綱の選定で結果が見えて来ると思います。
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2010年02月01日
アメリカのオバマ政権は台湾への64億ドルの武器販売を決定しました。


米国が台湾に武器販売計画 冷え込む米中関係:中央日報
米国が台湾に64億ドル分の最新武器販売計画を明らかにし、中国が強く反発している。今回の事態は、米国防総省が先月29日(現地時間)、台湾に販売する武器目録を米議会に通知したことで触発した。

30日以内に議会の反対がなければ執行される今回の販売計画には、新型パトリオット迎撃ミサイル(PAC−3)114機、UH−60Mブラックホークヘリコプター60機、オスプレイ級掃海艇2隻、地上・艦上発射が可能な先端ハープーンミサイル12基、多機能情報流通システムなどの各種先端武器が含まれている。


台湾側が要望していたF-16戦闘機の最新バージョンやディーゼル潜水艦の供与は見送られました。今回の目玉はパトリオットPAC-3とハープーンBlock2になります。

なお、台湾は既に独自開発の弾道ミサイル防衛システム「天弓3型」を装備しており、PAC-3と併用することで多層防御を行うとしています。天弓3型はPAC-3のサイドスラスター制御と異なり、推力偏向ノズルを装備した地対空ミサイルです。

「天弓3型」長距離地対空ミサイル - 日本周辺国の軍事兵器

推力偏向ノズルとサイドスラスターは共に高機動を実現し、空気が薄くなった高空で空力操舵が効き難くなっても有効な操舵方法ですが、特性は異なってきます。

防衛省・自衛隊:平成14年度 事後の事業評価 政策評価書一覧表より、「飛しょう体の研究」から。

TVC

サイドスラスター

推力偏向ノズル制御は高機動目標向きで、サイドスラスター制御は高速目標向きの制御システムです。故に、弾道ミサイル防衛用にはPAC3の方が天弓3型よりも精度は高くなります。また推力偏向ノズルはメインモーターが燃焼し終わると効力を失うので、航空機相手の長距離迎撃時には意味が無いものとなります。

さて、台湾紙「自由時報」の反応は・・・

台湾自由時報

一面トップが武器売却と釘宮理恵というあたり、台湾は何時もどおりだなと思いました。ちなみに自由時報は台湾4大紙の一つです。
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2010年01月15日
15日で終了する海上自衛隊のインド洋補給活動は、アメリカを中心とする有志連合が行っているアフガニスタン対テロ戦争を支援するものでした。海上自衛隊の高速補給艦による有志連合軍艦艇への燃料補給活動は、作戦開始当初はともかく、近年では補給実績は大きく減少し、日本の民主党政権は補給活動を中止しても問題は無いと判断しました。新政権発足直後に閣僚の中から「海上自衛隊の給油活動は国際的な評価が低い」との発言まで飛び出しました。

しかしこの直後、パキスタンのクレーシ外相は「補給活動に大変感謝している。新政権でも支援継続を希望する」と伝えてきました。そしてアフガニスタンのスパンタ外相から「日本のインド洋補給活動は大きな貢献だ。継続して欲しい」と要請され、カナダのハーパー首相からは「日本の補給支援活動は非常に有益だ」と述べられ、イギリスのミリバンド外相からは「インド洋の給油活動は非常に重要で継続をお願いしたい」と頼まれました。これ等は全て新政権発足直後の9月中の出来事です。

初めての外遊で、次々と日本のインド洋補給活動が高く評価され継続を強く希望された事に岡田克也外務大臣は困惑の色を隠せず、9月30日に『給油支援「絶対ノー」とは言わず』と給油継続に含みを持たせる発言すら行いました。一体この民主党の計算違いは何だったのでしょうか。どうして各国は日本の補給実績が大きく低下しているにも関わらず、その活動を高く評価し、補給活動の継続を訴えたのでしょうか。

(PDF)日本の補給支援活動に対する評価・感謝の言葉:日本外務省

アフガニスタン、パキスタン、サウジアラビア、オーストラリア、シンガポール、カナダ、バーレーン、フランス、アラブ首長国連邦、ドイツ、イギリス、アメリカ、インド、ニュージーランド、EU、国連・・・多数の国が、機関が、日本の補給活動を高く評価し、継続を求めています。「海上自衛隊の給油活動は国際的な評価が高い」と言うことが出来ると思います。これ等の評価は、日本の給油実績が大きく低下し、現状ではあまり仕事をしていない事を十分に把握した上で、その上での評価なのです。

実はこの事は、インド洋に日本の艦隊が存在している事に大きな意味があり、実際に補給活動をしているかどうかは関係が無い、どうでもいいと国際社会がそう認めていると、読み取る必要があるのです。日本が対テロ戦争に参加しているという事実、それが重要なのであり、たとえ日本の給油活動が有志連合軍の役に立たなくても、アフガン民衆を救う役に立たなくても、実用的な役割を果たさずとも、政治的に日本がアフガン対テロ戦争に参加している事実だけで十分な支援が得られていると、国際社会は認めてくれているのです。日本の民主党はそれがまったく読めていませんでした。前政権の自民党は、それが読めていたからこそインド洋補給活動の継続に拘っていました。

インド洋補給活動はリスクが少ない上に国際社会が認めてくれる、実に割のいい仕事だったのです。なにしろ実際に仕事をしなくても其処にいるだけで構わない、それこそが重要なのだと言われているのですから。日本はアフガニスタンの陸地で血を流して戦わなくてもいい口実を、インド洋の海上に存在するだけで得られるのです。アフガニスタンでの戦闘がいくら激化しようと、インド洋上は安全なままです。無料ガソリンスタンドと揶揄されようと、必要経費は少なくて済み、地上派遣や資金援助に比べると大変に安上がりです。はっきり言って日本は甘やかされていると言われてもおかしくないくらい、美味しい役割を与えられてきたのです。それを自ら捨て去った民主党政権は、せっかくの国際社会の好意を受け取らないという決断をしました。それは果たして熟考した上での判断だったのでしょうか?

民主党政権はインド洋補給活動の停止の代わりに、アフガニスタンの地上へ自衛隊を派遣することも決断できず、民生支援に5000億円を提供する事だけを決めました。これは給油活動の費用よりも年間当たり10〜20倍の金額となり、遥かに高額なものですが、国際社会の評価は芳しくありません。治安維持が出来ていない状態でお金だけ渡されても、民生支援に有効活用することは決して出来ないからです。そして「日本はお金を出すだけで血も汗も流そうとしない」と批判されることになります。インド洋補給活動は、血は流していませんが汗は流していました。お金を出すだけの状況とは、国際社会の評価は大きく異なってきます。

私は、海上自衛隊の補給活動は継続すべきだったと思います。リスクが少ない割に得られる評価が高く、国際社会に申し訳ないくらいの好条件での活動だったからです。しかしこれは幾ら理屈は正しくても、正義と言えるものではありません。何故ならこれは、

『日本がやっている補給活動はアフガン安定の為には全然ならないが、国際社会がそれを望み結果として日本も利益を得られる"政治的儀式"であるので継続すべき、アフガンの陸地に人員を派遣するのはリスクが高過ぎ、今のままインド洋でお茶を濁した方が安全で得策、日本はアフガン民衆のために血を流したくないしアフガンの陸地がどう地獄になろうと知った事ではない』

という独善的なものだからです。しかし国際社会(当のアフガン政府ですら!)がそれで納得しているのでそれに乗っかれ、ですからね。 このような事を政治家が表立って言うのは自殺行為です。言えば政治生命は終わりです。 大手マスコミもこのような主張を行って意義を説くべきではないでしょう。良心を捨てたマスコミは存在する価値がありません。

結果として日本の前政権である自民党政府は、インド洋補給活動の本当の意義を国民に説明して来ませんでした。言えるわけがないのです。日本の国益となる本当の意味を、説明したくても出来なかったのです。こんな事を説明してよいのは、どこぞのシンクタンクやブロガー等の責任のない立場の者しか出来ない事です。日本はアフガンを本当に助けようとする気が無いけど、アフガン支援と称して一番楽で国際的評価の高い仕事を継続したいなどと・・・国益の追求と言えば聞こえは良いですが、正義とはとても呼べません。選択が損得勘定の上で正しくても、それは利己的で独善的なものです。

そして民主党政権はここまで理解した上で「アフガン民衆にとって本当に役にたつ支援をしたい」と言っているわけではありません。そのような主張ができるのであれば立派なものですが、それを言ったが最後、お金だけ出してお茶を濁すような真似は国際社会が認めてくれません。日本に対し、共に血と汗を流せと要求してくることになります。今、アフガンで最も求められているのは治安の安定化です。治安が安定せねば効果的な民生支援など出来る状況にはなりません。では陸上自衛隊をISAFに参加させるという事を、今の日本政府は決断できるかと言うと、それは困難な事でしょう。小沢幹事長は以前、陸自ISAF参加を唱えていましたが、それが実行出来るとは今の政府の状況からは到底思えません。

アメリカはアフガニスタンへの戦力増派を行いました。各国もそれに続き、春が来て雪解けが始まったら、東南部のカンダハル方面は激戦が始まるでしょう。パキスタンもそれに呼応し、トライバルエリアでの攻勢を始めるでしょう。昨年終盤、パキスタン軍は攻勢を強めており、タリバーンの聖域(サンクチュアリ。訓練と休養ができる安全区で、ゲリラ戦で必須の場所)に手を掛けようとしています。アフガニスタン東南部からタリバーンを叩き出し、パキスタン・トライバルエリアでも圧迫を強めれば、アフガニスタン北部(元々、北部同盟の支配地域)や西部(イラン国境であり、イランとタリバーンの仲は非常に険悪)へ逃れる事の出来ないタリバーンは息の根を止められます。しかし、カンダハル方面のアメリカ軍はともかく、パキスタン軍が対テロ戦争にどこまで本気で全力を出して攻勢を強められるかは未知数で、この大攻勢が成功するかどうかは、何の保証もありません。しかしアメリカのオバマ大統領はアフガニスタン駐留に期限を設けました。この2010年中に片をつけなければ、有志連合軍は敗北することになります。あるいは、オバマ大統領が撤退の期限を撤回する羽目になります。

アフガニスタン情勢の大勢が決まる最後の決戦が行われようとする直前に、日本は対テロ戦争から逃げ出した事になります。あまりにもタイミングが悪い話で、もし有志連合軍が敗北しアフガニスタンの治安維持がままならない状況になれば、日本の民生支援用5000億円の資金提供も、まともに有効活用できないままで終わってしまいます。その事をちゃんと理解しているのでしょうか・・・アフガニスタンはこれから激戦が展開される、これまで以上の熾烈な戦場と化すのです。
21時47分 | 固定リンク | Comment (780) | 政治 |
2010年01月06日
反捕鯨団体シーシェパードのバットマンカーもどきの抗議船「アディ・ギル」号が、日本の捕鯨船「第2昭南丸」と接触。アディ・ギル号は船首切断で沈没しました。(沈没せず大破で免れたという情報も)



日本の捕鯨船側からの動画が早速、公開されています。(財)日本鯨類研究所の提供でお送りしました。

なんかこう、悪役っぽい形だったからこうなるんじゃないかなーと思っていたら、もう沈んだのか・・・早かったな・・・お約束だな・・・



こちらはシーシェパードの別の抗議船ボブ・バーカー号からの視点で、衝突の瞬間のビデオ映像です。

シーシェパード側は「真の捕鯨戦争の始まりだ!」と息巻いていますが、日本は戦後直後に軍艦を改装して捕鯨に使っていた過去があります。占領軍に「捕鯨に使いたいから軍艦を返して下さい」と頼んだら、返答のリストには戦艦長門があったのは有名な話。実際に捕鯨に使ったのは一等輸送艦(艦尾がスロープ状で獲物を引き揚げ易かった)ですけれど。


戦標船南氷洋を行く 日の丸捕鯨船団の戦い 第一章:天翔艦隊
しかし、「よし、何でも貸してやる」と示されたリストを見て、申し出た方も仰天した。なんと第一行目に『バトルシップ・ナガト、三万三〇〇〇トン、八万馬力、ダメージ』と記されていた。年明けて昭和21年(1946)1月のことである。


戦艦長門に及ばずとも一等輸送艦とて127mm連装砲を装備していた武装輸送艦。過去に軍艦を捕鯨に使っていた実績のある日本に対し、捕鯨戦争を挑もうとは笑止千万な話であります。
19時05分 | 固定リンク | Comment (540) | 政治 |
2009年12月18日
2010年度防衛予算の大まかな編成方針が決定され、これから細部が詰められていきます。防衛予算は「極力抑制」とされ、全体の削減は避けられそうになく、人員増とPAC3本体の購入は消えました。ただPAC3についてはシステム改修に予算が確保されているので、将来何時でも拡大配備できるように準備は行うようです。実質上、ミサイル防衛は推進されていく事になります。


実質的な拡大路線に 10年度防衛予算 “実”を取る防衛省:東京新聞
<解説> 政府が決定した二〇一〇年度防衛予算の編成方針は「現在の防衛計画の大綱の考え方に基づく」ことを掲げながら、現大綱には記されていないミサイル防衛(MD)の迎撃ミサイルPAC3の追加配備に、実質的に着手する内容となった。

大綱は一九七六年、日本が軍事大国とならない意思を示すために導入。これに基づく中期防衛力整備計画で防衛力の上限が定められている。だが、大綱見直しが先送りされたことで、一〇年度の防衛費は基本方針を喪失した状況で決めざるを得ない。

こうした中、今回の方針では「現有機能の維持」の路線から、PAC3のミサイル本体は追加配備を見送ったが、周辺システムの改修を明記。防衛省としては“実”を取った格好だ。ある幹部は「PAC3の『頭と目』を先に用意しておいて『やり』は後で買えばいい」と語る。

旧海軍の空母に匹敵する大きさのヘリ空母型護衛艦の建造についても、方針には明記されていないが、同省は「装備品の更新」に当たるとして進める意向。日本の防衛力は、基本設計図を欠いたまま拡大しようとしている。 (政治部・三浦耕喜)


防衛予算全体は削減されるのに、まるで軍拡を行うかのような書き方をする東京新聞ですが・・・そんなにミサイル防衛が継続され、実質上の多目的空母22DDHの建造が認められ、新型戦車TK-Xの調達予算が確保されそうな流れが気に入らないのでしょうか。気に入らないんだろーなー。
00時12分 | 固定リンク | Comment (156) | 政治 |
2009年12月16日
GXロケット中止は仮に自民党政権のままでも同じ結果でしたね。


官民共同のGXロケット計画中止(2009年12月16日 読売新聞)
開発費用などを検討した結果、〈1〉今後の国の負担は約940億円と見積もられ、5年間で開発する場合は毎年平均約200億円必要となり、衛星計画などに影響する〈2〉打ち上げ需要があると判断するのは困難〈3〉GXがなくてもH2Aロケットで対応可能――と判断した。GX用に宇宙航空研究開発機構が開発中の液化天然ガス(LNG)エンジンは、他の用途も念頭に研究続行を決めた。


では、政権交代前の今年8月25日の合意内容を見てください。


GXロケット開発で政府見解「需要見込めず」(2009年8月25日 読売新聞)
GXは、IHI(旧石川島播磨重工業)と一部の国会議員が開発を主張。だが、政府内では中止論が大勢を占め、民主党もこのまま続けることへ批判が強い。このため、政権交代をも視野に、来年度の予算要求は民主党も同意しているLNGエンジン開発だけにとどめた。


実は自民党内でもGXロケット中止で話は纏まっていました。そして民主党もGXロケットは中止してもLNG(液化天然ガス)ロケットエンジンの予算要求は同意済みだったのです。つまり今日の結果は事前の合意通りで、順当な決着の付け方となっています。LNGロケットエンジン開発の命脈が絶たれることは回避されていますので、仕分けの時にこの事を説明していれば反発は少なかったでしょうね。

LNG(液化天然ガス)ロケットエンジンは環境に優しい燃料を使用します。世界の商用ロケットは殆どがヒドラジン/四酸化二窒素という毒性の高い物質を使っていますが、環境問題を考えればクリーンな燃料が望ましいです。ケロシン燃料はそれほど害はありませんが、気化しにくいので海に落ちれば海洋汚染になります。毒性も無く直ぐに気化する液体水素は理想的ですが、比重が軽いので必要とされる体積が大きく、ロケットは大きくなってしまうので、中小型ロケットには向いていません。そこでLNG(液化天然ガス)という、毒性が少なく気化しやすくてロケットを小型に出来る燃料が、次世代商用ロケットの主要燃料になるべき、となります。

今のところ商用ベースに乗せるにはまだまだですが、日本がLNGロケットエンジン開発に関しては世界で一番進んでいます。

19時15分 | 固定リンク | Comment (136) | 政治 |
2009年11月30日
永世中立国スイスは、一般的な平和な国というイメージとは裏腹に、世界でも有数の兵器輸出国の一つです。そのスイスですが、兵器輸出の是非を問う国民投票が11月29日に行われました。


永世中立国スイスが問われる、兵器輸出の是非 - swissinfo
11月29日に行われる国民投票では、兵器輸出禁止を求めるイニシアチブの是非について問われる。平和主義者、左派政党、緑の党、キリスト教教会などが参加するグループ「軍隊のないスイス」はイニシアチブを発足させるために必要な10万人分を9000人分上回る有効署名を集め、2007年9月に政府に提出した。
兵器輸出の禁止を求めたイニシアチブが国民投票で問われるのは、1997年以来2度目となる。前回は投票者の約8割が反対し否決された。今回も、政府や議会はイニシアチブの要求に反対している。


スイス国民投票、ミナレット禁止が可決。武器輸出は引き続き認められることに - swissinfo
11月29日に行われた国民投票で、イスラム寺院の塔「ミナレット」の建築を禁止するイニシアチブが予想に大きく反し、大差で承認された。イニシアチブが可決されるためには、過半数の賛成票と、賛成票が過半数を数える州の数でも過半数を取ることが必須で、極めて珍しい。現行憲法が発布された1874年以来、今回の承認は17番目となる。
一方、兵器輸出禁止を求めたイニシアチブは反対票68%の大差で、否決された。今回の投票率は50%を超え、スイスでは高い投票率となった。



兵器輸出禁止の提案が否決された事は予想通りです。前回の80%の否決と比べ今回は68%と数値が若干下がっていますが、果たして遠い将来にスイスの兵器産業の終焉の日が、やって来るのでしょうか。自国軍隊の規模が小さい(緊急時の動員兵力は多く歩兵装備は多いが、戦車や戦闘機などの大型機動兵器の類は少ない)為、兵器輸出が禁止されればスイスの兵器産業はお終いです。今のところは、スイス国民の間では「兵器輸出継続は当然」という認識が大勢を占めているようです。

ちなみにスイス国営兵器産業『RUAG』は、ヨルダン陸軍のアル・フセイン戦車(イギリス製チャレンジャー1戦車)の改修計画「Falcon2砲塔」に携わっており、自社製120mm50口径CTG滑腔砲を提供しています。砲塔自体は南アフリカのISTダイナミクスが開発しています。これは主力戦車に初めて搭載される低姿勢砲塔(Low Profile Turret:LPT)です。装甲車ではストライカーMGSが採用しているものです。

Falcon Turret | Military-Today.com
06時01分 | 固定リンク | Comment (161) | 政治 |
2009年11月27日
昨日のエントリー「良く知らない分野で知ったかぶりをする人間の大失敗」にも通じる話ですが、幾ら高名な研究者でもちょっと自分の専門分野から外れると、途端にトンデモ主張を繰り広げてしまうもの。だからこそ自分の知らない分野に切り込む際は、ちゃんと勉強してからでないと全く用を為さないのですが・・・

事業仕訳人 金田康正 東大大学院教授のトンデモ認識 - 下総ミリタリースクエア



金田研究室ホ−ムペ−ジにようこそ!

軍事素人の数学者さんに防衛装備を語らせて、マトモな受け答えを期待できるわけが、なかったのです。

「インターネットで調べたら一丁30ドルから買えるというのもありましたからね。」

教授・・・もし学生さんが小論文の提出で「ソースはインターネット」とやって詳しい根拠を書かなかったら、それ認めるんですか? 正規品の値段じゃないでしょう、それは。

というか設計年代が何十年と違う銃器の値段を比べても、あまり意味は無いと思うのですが。ロシア製の最新アサルトライフルAN94「アバカン」は、AK正規品の数倍の製造コストが掛かります。



その為、ロシア政府はあまり買ってくれません。AN94はAK系列とはうって変わって複雑な構造で、整備も大変です。その為、製造元のイズマッシュ社は、古くて安いAKを納入し続けた結果、深刻な経営危機に陥っています。儲けの幅が小さくて利益が出なかったのです。あっちこっちでコピー生産されたAKは、国外販売で本家の売り上げを妨害し、違法コピーはロイヤリティが入って来ず、自国政府は利益率の高い新型ライフルを買ってくれず、経営破綻寸前となっています。

製造技術の維持の為にも、安く買い叩けばいいという問題でもないのが兵器調達なのです。また日本が仮に30ドルのAK(何処の市場に流れてるんだそんな安物)を調達しようとすると、新品なら必然的に違法コピーの粗悪品ということになり、イズマッシュは抗議してくるかも知れません。「うちの会社の正規品を買ってよ!」・・・言いたくもなります。

金田康正教授が「30ドルのAK」を例に出した事は、何の意味もありません。ちゃんとした国がそんな値段の銃器を新品で調達出来る筈が無いのです。正規軍の装備を闇市場で格安に大量調達してくるだなんて、漫画でもやらないでしょう。
02時15分 | 固定リンク | Comment (390) | 政治 |
北沢防衛大臣の頑張りに最後の望みを掛けていましたが、やっぱりこういう方向ですか・・・


防衛予算を厳しく抑制 来年度、鳩山政権方針案:朝日新聞
鳩山内閣が検討している来年度の防衛力整備方針案が25日、分かった。基本原則として「マニフェスト財源捻出(ねんしゅつ)の必要性や中期防衛力整備計画策定による経費総額の見積もりがなされていないことなどを踏まえ、新規後年度負担額を厳しく抑制する」と明記。09年度まで7年連続で減少を続けている防衛予算の、更なる削減を目指す。

前政権で年内に予定されていた新たな防衛計画大綱と中期防衛力整備計画の策定が、来年度に先送りになったことに伴う新たな方針。北沢俊美防衛相が、同日午前の基本政策閣僚委員会で示した。

基本原則では、防衛予算削減のため「現有装備の改修による有効利用」を挙げた。ただ、「必要な人員は確保」し隊員数は維持するとした。

一方、北朝鮮の弾道ミサイル発射に対処するための地対空誘導弾パトリオット3(PAC3)については、前政権と同様に追加配備する方針。ただ、追加配備には岡田克也外相らから慎重論も出ており、今後の議論の焦点になる。


中期防を策定しなかったのは民主党政権自身の責任で行っているのだから、これを理由に予算を大きく削減するのはおかしな話で、防衛大綱と共に来年に先送りしたなら、取り合えず今年は現状維持で話を進めるのが筋というものでしょう。ただ、ミサイル防衛については一先ず安心なようで、実際に今日の仕分けでもPAC-3追加配備については「政治判断を待つ」と判定は下されず、このまま行くようですが、そうなると他の装備に皺寄せが来て、新型戦車TK-Xや新型ヘリコプター護衛艦22DDHが削られかねません。

それでは以前の纏めを見てみましょう。選挙前の最後の纏めです。

(2009/08/25)民主党の安全保障政策が問題視されている最大の原因とは?

「民主党が防衛予算を大幅に削減するのではないか」という事を最大の問題としました。一方で民主党の安全保障政策は大丈夫だと擁護する政治評論家や政治系ブロガーは、この点をまるで考慮しておらず、彼らの分析能力の埒外にある為、不安をぶつけて見ても、恐らく有効な回答は返って来ないとしました。

それは実際にそうでした。以下は「マニフェスト選挙」に踊らされる民主党の愚(前編) - かみぽこぽこ。のコメント欄より。


甘い、話にならない    JSF.さん(2009年08月25日 03時57分55秒)
>基本的にこれで、安全保障を理由に
>民主党への政権交代に難色を示すことは
>論理的に破たんしたということです(苦笑)。

全く破綻していません。それは何故かと言うと、そもそも論点が異なるからです。

民主党の安全保障政策が問題視されている最大の原因とは?
http://obiekt.seesaa.net/article/126414704.html


ブログ開設当初の楽天広場時代からお互いを知っている旧知の間柄である、かみぽこ氏の所に書き込んでは居たのですが、お返事は貰えませんでした。返事が無いことは予想通りで、仕方が無いだろうとは思いますが・・・この問題部分で切り込んでいる政治評論家やブロガーって、居ないですよね。少なくとも著名な人では、見当たりません。
00時52分 | 固定リンク | Comment (130) | 政治 |
2009年11月26日
事業仕分けで予算が凍結と判定が出された次世代スーパーコンピュータ事業ですが、菅直人・国家戦略相が見直すように表明し、引っくり返りそうな情勢です。そして当然こうなると梯子を外されてしまった人が出て来るわけですが、特に酷いのが日経BPのこの記事です。

国策スパコンを事業仕分けで凍結、これはグッドニュースだ - 東葛人的視点:ITpro

内容を見るとスーパーコンピュータについての知識も怪しいのですが、それよりも同列に述べられたGXロケットの認識については、あまりにも的外れ過ぎて開いた口が塞がりませんでした。



今回の事業仕分けでは、国策スパコンと共にGXロケットにとっても13日の金曜日となった。このロケットの開発も抜本的に見直すように結論づけたという。これはある意味、象徴的な話だ。H2Aロケットが立派に育ち、さらに大型のH2Bロケットも打ち上げに成功するなかで、なんで別方式のロケットが必要なのだかと思っていた。「大陸間弾道ミサイルを開発したいのでは」と他国に無用の嫌疑を持たれてまで、別方式のロケットを無理やり開発する必要はあるまい。


・・・反吐が出ます。この方には即刻、筆を折って執筆家業を辞めて頂きたい。何もかもがデタラメです。GXロケットのサイズ、使用燃料を理解していれば、こんな事は絶対に書けない筈です。JAXAや開発メーカーから抗議されて責任問題に発展してもおかしくありません。

H2ロケットは大型ロケットで、GXロケットは中型ロケットです。大きさの時点で棲み分けが出来ており、H2ロケットを使うまでもない小さなペイロードを運ぶのにGXロケットを用います。またGXロケットの使用燃料は、日本開発担当部分の二段目はLNG(液化天然ガス)を用います。酸化剤には液体酸素を用います。これ等は低温での貯蔵管理に手間が掛かるため、発射直前にロケットに注入する必要があり、即応性が要求される弾道ミサイルには不向きの燃料であり、軍事転用の疑いを掛けるなど的外れもよい所でしょう。これはH2ロケットの燃料である液体水素/液体酸素にも言える事です。ごく初期の弾道ミサイルには酸化剤に液体酸素が使われていましたが、直ぐに常温でミサイル内保存が可能な四酸化二窒素に取って代わられています。

もし宇宙ロケットを軍事転用する気なら、固体燃料ロケットかヒドラジン/四酸化二窒素の液体燃料ロケットを用意するでしょう。そして日本の宇宙開発は最初期から固体燃料ロケットを使ってきました。その行き着いた先は世界最大の固体燃料ロケットΜ-5(ミュー・ファイブ)です。現用のΜ-5は廃止され、次期固体燃料ロケット(名称はイプシロンが有力候補)の開発が始まります。日本の宇宙ロケットについて軍事転用の懸念など、今更な話です。それなのに、軍事転用にまるで不向きな低温貯蔵液体燃料を使用するGXロケットを掴まえて「大陸間弾道ミサイルを開発したいのでは」と嫌疑を掛けるのは、あまりにも技術に無知過ぎて、どうしてこのように思い込みで良く知らない対象を叩けるのか、大変理解に苦しみます。

GXロケットについては開発費用が当初の予定よりもかなり高騰をしており、失敗プロジェクトと判定されても仕方の無い面もあります。ですが、このような的外れな批判は完全にお門違いです。


そして一方こちらは「東葛人的視点」とは逆に、スパコン仕分けに批判的な立場から記事を書いて、最終的に意味不明な事を口走ってしまった例です。


NECも日立も、スパコンを止めてしまった。一番喜ぶのは米国メーカーである。 - 株式日記と経済展望
蓮舫参院議員が中国のスパイだからではないかと言う意見もありますが、そうだとすればスーパーコンピューターを戦艦大和だという池田信夫氏もアメリカのスパイなのだろうか? 戦艦大和は蒸気タービンエンジンでジーゼルエンジンではなかった。だからアメリカの新鋭戦艦はジーゼルエンジンで速力も速くて航続距離も長かった。だから大和は作られたとたんに旧式化して戦争では使いものにならなかった。当時のエリート海軍技官も蒸気タービンからジーゼルへの時代の流れが読めなかったのだ。


・・・誰がスパイなのかは知りませんが、TORA氏、貴方の主張は完全に出鱈目な捏造です。日本の戦艦「大和」と同時期以降に建造されたアメリカの戦艦(ノースカロライナ級、サウスダコタ級、アイオワ級)は、全て「大和」と同じく蒸気タービン機関です。世界的な技術の流れとして「蒸気タービンからディーゼルへ」などというものはありません。

当時の各国の戦艦は殆ど全て蒸気タービンであり、ディーゼル機関はドイツがポケット戦艦ドイッチュラント級に採用したのが例外的にあるくらいで、これも次に建造したシャルンホルスト級巡洋戦艦やビスマルク級戦艦では蒸気タービン機関に戻っています。ドイツのZ計画ではO級巡洋戦艦やH級大型戦艦にディーゼル機関を採用する計画もありましたが、全て中止されました。「大和」級も最初はディーゼル機関を採用する予定でしたが、他の艦で試験的に搭載されたディーゼル機関の不具合が続発して、採用を見合わせています。なおドイッチュラント級は公試運転で28ノット、実用上は26ノットを発揮しましたが、大和級は公試運転で29ノット、実用上は27ノットを発揮しています。当時のディーゼル機関は高速力を発揮するには蒸気タービン機関よりも劣っていました。

軍艦でディーゼル機関が主流だったのは潜水艦ぐらいです。これは蒸気タービンが始動に時間が掛かるのと給排気に大きな煙突が必要な為で、イギリスのK級潜水艦が蒸気タービンを採用した(フィッシャー提督の発案)以外は、潜水艦は殆どディーゼル機関でした。

結局、戦艦や空母などの大型戦闘艦にディーゼル機関が採用されるような時代の流れは来ませんでした。ディーゼル機関の性能と信頼性が高まった時には、戦艦は過去の遺物と成り果てて、空母は蒸気カタパルトを運用する都合上、蒸気タービン機関(原子力機関も蒸気タービンを回す点では同じ)でなければなりませんでした。そしてその間にガスタービン機関が発達し、現在の水上戦闘艦の主流はガスタービンへという流れになっています。潜水艦についても、イギリスのBMT社がガスタービン機関を採用するSSGT (Ship Submersible Gas Turbine) という提案を行っており、低速の輸送艦にディーゼル機関を採用する以外では、軒並みガスタービン化の波が押し寄せています。空母についても、スキージャンプや電磁カタパルトを用いて蒸気カタパルトを使わないのであれば、蒸気タービン機関である必要が特に無く、事実イギリスの新型空母は6万トン級の大型艦ですがガスタービン機関を採用しています。

今後もし高速大型戦闘艦にディーゼル機関が採用される事があったとしても、例外的なものに止まり、ディーゼル機関が主流となるような流れにはならないでしょう。TORA氏の主張は過去・現在・未来の何れに置いても存在しない事象であり、思い込みと妄想から来る完全な捏造であり、口走るべきではありませんでした。
03時00分 | 固定リンク | Comment (228) | 政治 |