この浅尾議員、本人の公式サイトに掲げてある政策などを見ていると、どちらかというと内政向きの人なんじゃないかなぁ、と思うのですが・・・どうやら軍事面での知識はかなり怪しげなモノのようです。そんなネクスト防衛大臣が放つ一発ギャグ。
【珍説】
「空母が海上封鎖をするわけないんです。空母は甲板の位置が高すぎて、臨検できないんですよ」
by 民主党ネクスト防衛大臣 浅尾慶一郎
【ノリツッコミ】
甲板の位置を下げたかったら、サイドエレベーターを下げれば問題解決♪


(同縮尺)左:空母キティホーク 右:駆逐艦アーレイ・バーク
上図を見れば分かるように、空母のサイドエレベーターを下げた状態は、駆逐艦の上甲板とほぼ同じ高さとなる。
【マジツッコミ】
海上臨検で洋上横付けなんて、駆逐艦クラスの大きさの船でもやりませんよ。小回りが効きませんし、相手船からの攻撃(自爆含む)への対処が困難になりますから。
海上臨検する場合は、艦載艇に臨検班を乗せて相手の船に乗り込みます。又は艦載ヘリコプターを使い、空中からリぺリング降下させます。その間、母艦は相手との距離を保って何時でも反撃できるよう準備しつつ、援護します。
強行移乗:海上警備友の会
しかし、止まれと言っても止まらない、往生際の悪い犯罪者が相手となると、これはもうしょうがないからまだ動いてる相手船に無理やり乗り移る事になります。足の速い小型の巡視船艇は自分から突っ込みますが、中/大型の巡視船ともなるとそうも行きません。自身は足も遅いし小回りも効かないので、代わりに搭載している警備救難艇に行かせて自分は援護に回ります。
上記は海上保安庁の海上臨検(強行移乗)についての話ですが、海軍の駆逐艦やフリゲートは海保の大型巡視船並みの大きさになります。
駆逐艦やフリゲートですら自ら横付けして海上臨検などしないのに、「空母の甲板は高いから海上臨検などできない」とする浅尾議員の主張は、海上臨検の基本的なやり方を理解しておらず、更に空母のサイドエレベーターの存在も知らないようです。そしてヘリコプターを使ったリペリング降下による強行移乗も知らない(空母ならヘリを搭載していて当然であり、それならば臨検行動が可能)・・・つまり浅尾議員は到底、軍事面について明るいとは言えない人物です。海上阻止行動について何も理解していない。そのような人が民主党のネクスト防衛大臣を担当し、自民党の石破防衛大臣と相対していく・・・とても務まりそうにありません。これでは結局、前原議員や長島議員が前面に出て来ざるを得ないでしょう。
アメリカ海軍はMSO(海上阻止行動)に空母や強襲揚陸艦(空母同様、甲板位置が高い)を普通に投入しています。海上臨検には数十隻の艦艇が参加し、海上自衛隊が支援している海域のCTF150では10〜20隻の艦が活動しています。その作戦海域はインド洋といってもペルシャ湾入り口からオマーン、イエメン沿岸、紅海の入り口までと、面積的には日本海と同じくらいですが、この海上阻止行動は艦船だけでは行えません。航空機からの空中哨戒による支援が無ければザルのようなものです。つまり陸上基地からの哨戒機に加え、空母艦載機による支援もあるなら大変役に立つ事でしょう。
浅尾議員の「空母が海上封鎖をするわけないんです」という主張には、同意しかねます。ましてやその理由が「空母は甲板の位置が高すぎるから」では、最早、笑い話になってしまうのです。
浅尾議員の発言は22分30秒あたりからです。
浅尾:「漁船の高さってせいぜい、1mか2mぐらいです。航空母艦の一番高いところって何十メーターあるわけです。漁船をどうやって航空母艦で取り締まるんですか? 取締りようがないんです。」
おかしいですね、航空母艦の飛行甲板の高さは15mくらいです。「一番高い所」って、まさかアンテナマストの高さの事でしょうか。それなら確かに数十mあるでしょう。
でも比較している漁船とはダウ船の事ですよね。舷側は1〜2m程度でしょう。でもセイルマストの高さは十数mはありませんか。比較の仕方がおかしくありませんか。浅尾氏は上甲板高度と最頂高を混同している(どころか、自分の言っている数値の意味を理解していない可能性が高い)・・・いやそもそも、海上臨検で空母の高さを論じる事自体がおかしいのですが。ダウ船が相手なら駆逐艦だって直に横付けなんて出来ませんよ。搭載艇を出します。
それに、テロリストの武器・麻薬輸送は木造のダウ船ばかりではなく、大型貨物船の荷室に紛れ込ませるケースもあります。