このカテゴリ「平和」の記事一覧です。(全164件、20件毎表示)

2015年09月30日
現在は停戦し小康状態になっているウクライナ東部での動乱では、ウクライナ政府とロシアが支援する東部独立派がお互いに相手を「白燐弾を使用した!」と非難し合っていた事があります。しかし着弾現場から落ちていた不発弾が回収され、ロシア製多連装ロケット「BM-21グラード」のクラスター焼夷弾型ロケット「9M22S」の「9N510弾頭」に入っている特徴的な六角柱の子弾が発見されています。


МОСПИНО Реактивный зажигательный снаряд 9М22С(六角柱状の焼夷子弾に着火した様子)

Зажигательные снаряды в небе Донецка. 04.02.2015 ドネツクの空、焼夷弾(2015年2月4日)

六角柱の金属ケースはマグネシウム製で内容物は白燐ではなくテルミットです。六角柱の形状やその構造はアメリカ軍が第二次大戦中に使ったM50エレクトロン焼夷弾によく似ています。ロシア製の9M22S焼夷ロケット弾はそれより小さく出来ています。


Ilovaisk、ウクライナ東部(2014年)

9M22S焼夷ロケット弾はクラスター型の為、多数の子弾が燃えながら落ちて来ます。その様子がファルージャやガザで使用されたM825A1白燐弾に似ている為に当初混同されてしまったのでしょう。ただしM825A1白燐弾は剥き身の白燐を空中でバラ撒く仕様で煙幕弾として設計された兵器であり、特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の付属議定書3の焼夷兵器の定義からは除外されています。一方で9M22S焼夷クラスターロケット弾は明確に攻撃兵器として設計されており、CCWで使用制限をされる焼夷兵器に分類されます。つまりM825A1白燐弾よりも深刻な問題とされるべきものでした。ですが、ウクライナ東部での9M22S焼夷クラスターロケット弾の使用に付いて、国際的には殆ど騒がれずに終わっています。

Protocol III to the Convention on Prohibitions or Restrictions on the Use of Certain Conventional Weapons which may be deemed to be Excessively Injurious or to have Indiscriminate Effects - 国連軍縮局(UNODA)

しかし、焼夷兵器の使用制限に関する特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の付属議定書3に、ロシアもウクライナも入っているように見えます。(韓国やイスラエルは受諾していない)

※この戦争はロシアによる「ウクライナ侵攻」が正しいため、内戦という表記は不適当であり訂正し、侵攻に改めます。
05時29分 | 固定リンク | Comment (5) | 平和 |

2015年09月28日
シリアでアサド政権軍が市街地でナパーム弾を大量使用し問題になっています。内戦初期の頃にはテルミット焼夷弾を大規模に使用して使い尽くし、今は使用されていなかったのですが、今度は代わりにナパーム弾が使われ始めました。




攻撃後に不発弾が回収され、内部にゼリー状の物質が確認されています。火を付けると激しく燃えだし、ナパームであることが確定しました。ナパーム弾を含む攻撃用に設計された焼夷兵器は、特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の付属議定書3で国際的に使用が制限され、市街地での使用は禁止対象となっています。ただしシリアはこの条約に参加していません。

関連記事:シリア軍は白燐弾を使用せず、テルミット焼夷弾を使用(2012年12月16日)
22時10分 | 固定リンク | Comment (9) | 平和 |
2014年05月16日
初めてこの主張に触れた人は「反戦平和の立場なのに徴兵制を願うってどういうことなの?」と面食らうかもしれません。

徴兵制を導入した方がよいかもしれない - 森永卓郎:マガジン九条
「日本の若者に戦争への危機感がないのは、「自分は関係がない」と思っているからだろう。だから、私はいっそのこと若者たちに徴兵制を適用したらどうかと思う。そうすれば、戦争の恐ろしさを、自分自身のこととして、考えるようになるだろう。もちろん若者だけではなく、国会議員にも任期を終えたら戦地に赴く義務を課し、国家公務員は人事異動で前線に配属できるようにすべきだ。そうすれば、安倍内閣がこれだけの暴走をすることに危機を感じるようになるだろう。」


しかし実は反戦平和の立場からの徴兵制導入論は、以前からアメリカではリベラル派の間ではよく唱えられてきた論調で、別段驚くべき主張ではないのです。例えば10年前にアメリカの民主党のチャールズ・ランゲル下院議員とフリッツ・ホーリングス上院議員はHR163-S89法案(下院提出のHR163法案および上院提出のS89法案)を議会に提出しました。このランゲル-ホーリングス立法は18〜26歳の男性および女性(アメリカ合衆国の市民あるいは永住資格者)に施行される徴兵制を再設立するもので、下院にて402対2の圧倒的大差で否決されています。

イラク戦争を憂いたニューヨーク・ハーレム出身の黒人である民主党ランゲル議員は「犠牲は平等に」「皆が戦争に向き合うように」という反戦平和の観点から、否決されることを覚悟の上で議論を提起するために、徴兵制復活法案を提出したのです。

この事は理解され難かった為に、当時インターネット上では「共和党が徴兵制復活を画策している!」という全く逆の誤解まで生まれてしまいました。また日本では護憲派が古色蒼然の「改憲したら徴兵制になってしまう!」という時代錯誤な主張をすることが未だに多く、反戦平和の観点からの徴兵制導入論はなかなか理解されていません。

しかし森永卓郎氏が記事中で指摘しているように、アメリカもイギリスも徴兵制ではなく志願制の軍隊を採用しています。志願制のままでも戦争を行えているという現実がある以上、改憲したら海外派兵の為に徴兵制になってしまうという主張は説得力に欠けています。西側先進国の大国の中では唯一、徴兵制を残していたドイツも既に志願制に移行しました。中国も人民解放軍は志願者だけで充足している状況で、ロシア軍もずっと志願制への移行を模索しており将来的には徴兵制を廃止してしまう計画です。世界的な趨勢から見ても軍事的な観点からは徴兵制は不要のものと捉えられており、徴兵制復活の恐怖を煽るやり方は時代遅れで相手にされなくなっています。そこで新たな考え方として出て来たのがアメリカで行われているような反戦平和の観点からの徴兵制導入論です。日本ではなかなか根付かないと思いますが、唱える人が出て来たというのは何らおかしなことではないと思います。(高齢の国会議員へ任期後に戦地に赴く義務を課すのはいさかか現実的ではないですが)

ただし反戦平和の観点からの徴兵制導入論はアメリカでは唱えられていますが、現代でも王族が率先して戦場に赴くイギリスで聞かない論調なので、万能な主張ではないのでしょう。実際に徴兵制が導入されても戦争を抑止する効果が高いかどうかは、それぞれの国の状況によって一概には言えないのではないかと思います。イギリスのような国では導入しても抑止力としての効果は薄く、他の国でも導入した後にイギリスと同じような社会文化になれば効果は期待できなくなります。

現状では反戦平和の立場からの徴兵制導入論は議論を喚起する効果以上のものは望めません。軍事的な観点からは先進国では徴兵制は不要なものという認識になっていますし、反戦平和の観点から「犠牲は平等に」という題目で徴兵制を施行するならば、以前のドイツ連邦軍で行われていたような良心的兵役拒否制度は採用できないことになります。実現性が殆ど無い上に、もし実際に施行するとなった場合、唱えた方も困ってしまう事になるでしょう。あるいは最初から議論を喚起する効果のみを狙った主張なのかもしれません。
22時07分 | 固定リンク | Comment (173) | 平和 |
2013年09月07日
2011年1月頃から始まったシリア内戦は今も膨大な犠牲者を出し続けています。この内戦では様々な兵器が使用されています。市街地への無差別な砲撃や航空爆撃、弾道ミサイル攻撃、クラスター爆弾、テルミット焼夷弾。そして今、毒ガスの大量使用事件を契機に、アメリカとフランスが軍事介入しようとしています。しかしそれは内戦を終わらせる為というよりは化学兵器を使った事に対する懲罰が目的で、巡航ミサイルを中心とした限定的な攻撃が予定されており、仮に実施しても戦局には殆ど影響を与えないでしょう。

シリア軍は白燐弾を使用せず、テルミット焼夷弾を使用:週刊オブイェクト(2012年12月16日)

シリアでは毒ガス以前に焼夷兵器であるテルミット焼夷弾が大量に使用されていました。しかしガザやファルージャの白リン弾ではあれだけ大きく騒がれていたのに、シリアのテルミット焼夷弾ではほとんど反響が無く、大勢の人は無視してました。煙幕弾として設計された白リン弾に対し、攻撃用に設計されたテルミット焼夷弾の市街地での使用は間違いなく特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)に触れるのに、大きな問題として議論されませんでした。そしてこれがエスカレートした結果が毒ガスの使用です。ガザとファルージャの白リン弾で騒ぎ、シリアのテルミット焼夷弾を無視しておきながら、アメリカのシリア介入を批判する人たちが居ますが、この事を理解していないとしか思えません。

ただし、この2年間で10万もの人命が失われたシリア内戦で、最も多くの人を殺害したのは焼夷弾でも毒ガスでもありません。


دير الزورهام وخطيرقنابل فسفورية محرمةدولية

2012年2月25日、シリアのホムス中心部ババ・アムル地区。榴弾砲の砲弾が短遅延信管で作動。

高性能炸薬が充填された通常榴弾が建造物を貫通し内部で炸裂。最も多くの死と破壊を撒き散らしたのは、条約で使用を禁止されていない通常榴弾を市街地に対し無差別に砲撃して建造物を破壊する行為でした。これに加えて大量破壊兵器の大々的な使用は犠牲者の数を膨大に増やす事になり看過できる事ではありませんが、毒ガスが使用されたことだけをクローズアップするのではなく、この2年間でシリアのアサド政権が自国民に対し何をして来たのか、それを十分に議論すべきではないでしょうか。
20時22分 | 固定リンク | Comment (245) | 平和 |
2013年06月22日
6月22日、ユネスコの世界遺産委員会は、日本の富士山を三保松原を含めた上で世界文化遺産として登録することを決定しました。それは良いニュースなのですが、一部に「自衛隊とアメリカ軍の演習場があるのにふさわしくない」「これまで登録が遅れたのは軍事演習場があったからだ」「世界遺産に登録されたのだから演習場は廃止すべき」といった声が持ち上がっています。しかしこれは思い込みによる感覚的な違和感に過ぎません。以下の地元新聞のコラムが端的に現わしているでしょう。

2011年9月2日付 記者の目COLUMN 「違和感」- 山梨新報社
 防衛省などから北富士演習場での日米共同訓練実施申し入れを受け、8月26日会見した横内知事は世界文化遺産を目指す地域での軍事演習について「(世界遺産の)構成資産の中や付近に演習場があったり、演習が行われることは、別に世界遺産と矛盾しないし、ユネスコもそういう判断だ」と述べた。主張の根拠は先発の世界遺産。ハワイの自然、文化複合遺産「パパハナウモクアケア(母なる大地の神と父なる天の神、の意)」やフランスの「ボーバンの要塞群」では遺産区域内に演習場が、またイスラエルの「ネゲブ砂漠都市」でも隣接地域がその名も端的に「ファイアーゾーン」として軍事演習が実施されているからだ。登録に向けた行政的な手続きだけの問題なら、確かに何の矛盾もないように見える。


山梨新報社の「記者の目COLUMN」はこの部分に対し有効な反論を全く行えておらず、『ユネスコの「世界遺産」なる称号とは、その程度のもの、という不謹慎な思い≠ウえ芽生えてくる。』『世界遺産登録という立派な肩書きに、はたして軍事施設が馴染むのか、という感覚的な違和感はどうしても付きまとう。』と述べるばかりです。諸外国の世界遺産では軍事施設と隣接したものは既にあるので反対理由にならないという事は理解していても、感情的に受け入れたくないという事なのでしょうが、あまり説得力がある主張ではないでしょう。

そもそも要塞群が世界遺産として登録されているのに軍事施設が駄目というのは、それこそ違和感が有ります。
23時42分 | 固定リンク | Comment (131) | 平和 |
2012年12月16日
激化するシリアの内戦は戦闘を撮影した動画が次々と投稿されています。市街地への無差別な砲撃や爆撃の映像、戦闘機やヘリコプターが対空ミサイルで撃墜される映像、戦車同士が撃ち合う映像、クラスター爆弾が使用された映像、240mm重迫撃砲弾の残骸の映像、痛ましい遺体の映像…。最近ではスカッド弾道ミサイルが使用されたという情報もあります。そして白燐弾らしきものが使用されたという映像が上がっていました。

Syria video purports to show use of white phosphorus - WashingtonPost


دير الزورهام وخطيرقنابل فسفورية محرمةدولية

2012年12月6日、シリアのデリゾールで撮影。

WP? ハインド攻撃ヘリコプター

アサド政権側のハインド攻撃ヘリコプターが上空を通過後、煙を出しながら拡散して落ちていく物体が映っています。これを白燐弾と疑う報道が出ていますが、地対空ミサイルを欺瞞するフレアー(囮熱源)ではないかとする意見もあります。しかしヘリコプターが放出したフレアーにしては展開の様子がおかしい点があります。映像は空中の2点で炸裂してから大量に拡散しているように見えますが、フレアーは1個ずつバラ撒かれるため、これはフレアーではないと推定出来ます。

この物体がヘリコプターから投下されたものだとした場合は、白燐弾ではなく、クラスター型の焼夷弾だと思われます。それもロシア製クラスター焼夷弾「РБК-250 ЗАБ-2,5(英語; RBK-250 ZAB-2.5)」です。実は以前からシリアでは「RBK-250 ZAB-2.5」の残骸が幾つも発見されていますので、ほぼ間違いないでしょう。ZAB-2.5子弾はテルミット焼夷弾という本格的な攻撃用の焼夷弾です。一つの親爆弾に2.5kgの子弾が48発搭載されています。嘗てファルージャでアメリカ軍が、ガザでイスラエル軍が使ったM825A1白燐弾は分類上は煙幕用の発煙砲弾でしかなく、これと比べると「RBK-250 ZAB-2.5」は遥かに高い殺傷力を持つ焼夷弾です。「RBK-250 ZAB-2.5」は子弾が金属ケースで覆われおり、ある程度燃えたら内蔵の炸薬に引火して爆発し、燃焼しているテルミットが飛散します。


حلب - قبتان الجبل || براميل انفجرت منها قنابل عنقوية

2012年11月21日、シリアのアレッポで撮影。

РБК-250 ЗАБ-2,5
РБК-250 ЗАБ-2,5 親爆弾の方にはっきりと書かれてあります。

ZAB2.5
この小さな円筒形の物体が子爆弾です。ЗАБ-2,5 テルミット焼夷子弾。

Russian Arms forumを参照:РБК-250 ЗАБ-2,5 - разовая бомбовая кассета с зажигательными боевыми элементами(RBK-250 ZAB-2.5 - クラスター爆弾焼夷子弾)
http://www.russianarms.ru/forum/index.php?topic=7181.0

そして以下が、シリアで「RBK-250 ZAB-2.5」が投下された直後と思われる映像です。


Thermite cluster munitions dropped by the Syrian Air Force on the town of Aqraba.

2012年12月12日、シリアのダマスカス郊外県アクラバで撮影。

RBK-250 ZAB-2.5 incendiary cluster bomb, thermite. Aqraba, Rif Dimashq, Syria
Aqraba, Rif Dimashq ダマスカス郊外県アクラバ

RBK-250 ZAB-2.5 incendiary cluster bomb, thermite. Kafr Batna, Rif Dimashq, Syria
كفربطنا (Kafr Batna) ダマスカス郊外県カフル=バトナ

بالقنابل العنقودية الحارقة (クラスター爆弾焼夷弾)

シリアのアサド政権側が使用した「RBK-250 ZAB-2.5」クラスター焼夷弾はテルミットを使用したもので、攻撃用に設計された殺傷力の高い焼夷兵器(Incendiary weapons)です。明確に特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)に該当する兵器です。クラスター爆弾禁止条約(オスロ条約)にも触れるでしょう。但し、シリアはどちらの条約にも参加していません。
07時22分 | 固定リンク | Comment (94) | 平和 |
2010年10月03日
ドイツが徴兵制の停止(事実上の廃止)へと踏み出しました。


German Conservative Parties Agree To End Conscription - Defense News
BERLIN - The executive committees of Germany's Christian Democratic Party (CDU) and Christian Social Party (CSU) agreed to allow the end of military conscription.


ドイツ政権与党のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)は徴兵制の廃止に合意しました。連立政権与党には他に自由民主党(FDP)もあり、野党の社会民主党(SPD)や緑の党の反対も有り得るのでまだ決定ではありませんが、徴兵制を停止する法案が議会を通ればドイツ連邦軍は志願制軍隊になります。
07時12分 | 固定リンク | Comment (128) | 平和 |
2010年07月10日
最近、「ファルージャは広島原爆の40倍の放射線被害だと、欧州放射線リスク委員会のバスビー教授が述べた」という常軌を逸したデマが流れています。イギリス在住のフリーライター・nofrills(いけだよしこ)氏が、そのようなデマは拡散させるべきではないと警鐘を鳴らしています。


ファルージャと、「広島の40倍」というキャッチーなフレーズ:tnfuk [today's news from uk+]
で、バズビー教授のこの発言は、科学的に厳密なことを言おうとした発言なのか、相手の注意を確実に引くための修辞なのか、ということを確認しようにも、ニューズクリップはここで終わっているし、このクリップとは別にアップされているフルのインタビューは、英語の上にアラビア語の同時通訳がかぶされているので私には無理な範囲だ。だがいずれにせよ、確実な確認はできないにしても、「広島の40倍」をそのまま科学的に根拠のある言葉だと受け取ることはできないと判断するのが無難な選択だという結論には無理はなかろう。

それでも、「広島の40倍」というキャッチーなフレーズはそれだけで一人歩きしてしまう。「何が広島の40倍なのか」とか、「核分裂による熱核反応の広島の原爆と、イラクで使われた可能性があるウラン兵器とは単純に比較できないが、何を比較しているのか」といったことが明確に説明されていない以上は、そのフレーズをコピペしてまた他に伝えること(いわゆる「拡散」)は、避けるべきだろう。


何故、あからさまなデマは自分達の信用性を激しく損なう事を理解できないのでしょう? そもそも装甲目標(戦車)が存在せず、強固な地下施設(バンカー)が存在しないファルージャ掃討戦で徹甲弾である劣化ウラン弾を大量使用する事など有り得ない事です。軍事作戦上、インドア戦主体の市街戦闘、対ゲリラ掃討戦で徹甲弾(劣化ウラン弾)をドカスカ撃ち込む理由が無いのです。アメリカ軍のM1戦車には劣化ウラン弾が積まれていますが、しかしそれは戦車を相手に使用するものであり、対人戦闘で使われるものではありません。

航空爆弾である貫通爆弾(バンカーバスター)にしろ、劣化ウラン製の物はごく一部で、配備されているのは鋼鉄製外殻で出来た物が殆どです。ファルージャに地下坑道があったとしても簡易な物でしかなく、通常の鋼鉄製外殻の貫通爆弾で十分に破壊できるものであり、劣化ウランを用いた特殊なバンカーバスターを大量使用する理由が存在しません。

またA-10攻撃機の30mm機関砲弾は劣化ウラン弾ですが、ファルージャのような市街地では固定翼機による近接支援を機関砲では行い難くく(建造物が射線を邪魔する)、固定翼機は上空からの爆弾投下で支援爆撃し、アパッチ攻撃ヘリコプターが機関砲とミサイルで近接支援を行っています。ヘリコプターは空中でホバリング出来る為、自由に射線を調整できるので、固定翼機では困難な市街地での機関砲掃射が問題無く行えます。そしてアパッチの30mm機関砲弾は榴弾系のみで(焼夷榴弾と多目的榴弾)、徹甲弾が用意されていません。つまりアパッチ攻撃ヘリコプターには劣化ウラン弾は一発も搭載されていません。

どう考えても劣化ウラン弾を対人戦闘で使う理由が無いのです。少なくとも大量使用される理由は有りません。ファルージャでの劣化ウラン弾の使用自体がゼロか限りなくゼロに近い状況で「広島原爆の40倍」とか、頭がおかしいとしか思えないです。・・・そして「欧州放射線リスク委員会」という名前に、ちょっと聞き覚えがあったので思い出しました。

(2009/02/05)ガザで使われた貫通爆弾GBU-39(SDB)を劣化ウラン弾扱いする酷いデマ
(2009/02/07)ガザにいるノルウェー人医師の残虐兵器に関する証言をデマであるとICBUWが認定
(2009/02/09)ガザのDIME被害を証言した医師のトンデモ発言の詳細が判明

ガザで使われた小直径爆弾SDB(鋼鉄製)の派生型DIME(カーボン外殻及びタングステン芯)の事を、なんと核兵器呼ばわりしたノルウェー人医師マッズ・ギルバートの根拠がこれでした。

欧州放射線リスク委員会

ギルバート医師の言う欧州委員会とは欧州放射線リスク委員会の事です。ガザでの「DIMEは核兵器」という妄言とファルージャでの「広島原爆の40倍」という妄言の出所が同じ欧州放射線リスク委員会という事になると、この団体は信用が置ける団体とはとても言えなくなってしまいます。何度も妄言を繰り返すおかしな団体として取り扱うしかありません。

European Committee on Radiation Risk (ECRR) - 欧州放射線リスク委員会
Dr. Chris Busby - クリス・バスビー教授
Dr. Mads Gilbert - マッズ・ギルバート教授

どうもこの辺りはおかしいです。


※ 欧州放射線リスク委員会(ECRR)は別に公的な団体ではなく、単なる市民団体であるようです。
15時29分 | 固定リンク | Comment (287) | 平和 |
2010年07月03日
スウェーデン国防軍(Sverige Försvarsmakten)が正式に一般徴兵制(Allmän värnplikt)を廃止しました。とは言ってもかなり以前から徴兵制は有名無実化して志願者だけを採用しており、運用実態に制度を合わせた形になります。


Inget liv i luckan - Dagens Nyheter
Den allmänna värnplikten är borta i Sverige från och med i dag. Det är sannerligen på tiden. Värnplikten har blivit både gammalmodig och ineffektiv.


「Värnplikten har blivit både gammalmodig och ineffektiv.」
(徴兵制は時代遅れ且つ非効率なものとなっている。)

スウェーデンの最有力紙「ダーゲンス・ニュヘテル」ではこのような評価となっており、徴兵制廃止を歓迎しています。

【スウェーデン国防軍Youtube公式アカウントより】


Försvarsmakten har satt punkt för 109 års värnplikt. Onsdagen den 30 juni höll överbefälhavaren tal och delade ut medaljer på Slottets yttre borggård i Stockholm.

スウェーデン国防軍の徴兵制109年の歴史に終止符が打たれました。
11時36分 | 固定リンク | Comment (114) | 平和 |
2010年03月04日
これは・・・一体誰がこんな文言を盛り込ませたのやら。


自民、徴兵制検討を示唆 5月めど、改憲案修正へ:共同通信
論点では「国民の義務」の項目で、ドイツなどで憲法に国民の兵役義務が定められていると指摘した上で「民主主義国家における兵役義務の意味や軍隊と国民との関係について、さらに詰めた検討を行う必要がある」と記述。直接的な表現は避けたものの徴兵制復活の検討をうかがわせる主張を盛り込んだ。


5年前の改憲草案では"徴兵制の禁止"を明記しようと試みていた自民党が、今度は真逆の事をやろうとしているとは、もう政権復帰は諦めて少数右派政党として末永くやっていこうということなのでしょうか?


来月中旬の了承は微妙 自民の改憲草案大綱:共同通信 2004/11/28
加えて「女性天皇容認」「徴兵制禁止の明記」など党内でも意見が割れる内容を「あえて盛り込んだ」(保岡氏)ことで、「総務会で異論が相次ぎ収拾がつかなくなる」(同調査会幹部)との懸念も浮上。


この時は最終的には明記されずに終わりましたが、「徴兵制禁止の明記」を進言したのは現役の陸自幹部です。現役の軍人は徴兵制を不要としています。

周辺諸国を見渡せば、昨年、台湾は徴兵制の廃止を宣言しました。中国も運用上は既に志願制です。ロシアは志願制に移行しようとずっと模索中です。韓国は北朝鮮と地続きで睨み合っているので徴兵制を止められませんが、極東方面では多くの国が軍隊を志願制へと移行しつつあります。

徴兵制 復活?

アメリカ、イギリス、フランス、イタリア、スペイン、オランダも志願制に移行済みで、NATO主要国で徴兵制を残しているのはドイツくらいです。そのドイツですら良心的兵役拒否制度があり、2年前の時点で全軍の2割しか徴兵がおらず、8割は志願兵という状態になっています。

こんな状況で今更、徴兵制がどうとか言われても、時代遅れとしか言いようがありません。自民党がどうして5年前と正反対の事を言いだしているのか、全く理解できません。これが選挙の際に保守票の獲得に繋がるとか思っているなら、甚だしい勘違いで、逆効果です。一部の老人が喜ぶだけで反発の方が遥かに多くなります。

むしろ5年前の改憲草案で「自衛隊を自衛軍とする」としていたのを変更し、「国防軍」または単に「軍」と呼称する、とやった方が、若者を含めた保守層への受けはいいと思うのですが・・・というか「自衛軍」という響き、恰好悪くて、自衛隊の方がまだいいです。



【追記】


自民が「徴兵制」検討? =幹事長、即座に否定談話:時事通信
これに関して大島氏は同日夜、「論点整理はあくまでも他の民主主義国家の現状を整理したものに過ぎず、わが党が徴兵制を検討することはない」との談話を発表した。


Twitter / 佐藤正久
ネットで「自民、徴兵制検討を示唆、改憲案修正へ」と報道。しかし国防部会長の佐藤も知らないのに 何故そのような報道がでるのだろうか?佐藤は今日一日、予算委員会だった。先程まで政調会長の石破氏と一緒だったが彼も知らないという。憲法改正推進本部で議論があったのだろうか?


共同通信の勝手な拡大解釈だった模様です。これを受けて共同通信は最初の記事に後から否定談話を挿入しています。

もうこのような誤解を受けない為にも、自民党は5年前に提起したように改憲草案へ「徴兵制の禁止を明記」とやってしまってください。そちらの方が国民投票の際にも全体からの票を得やすい筈です。


【お知らせ】

早朝4時25分27秒から4時53分7秒の間に数分おきに11連投稿を繰り返し、約2時間後の7時14分36秒から7時48分54秒の間に数分おきに21連投稿を繰り返してきた人物に対し、強制的に識別用ネーム「まお」を付与しました。一人で大量に連続投稿する行為は荒らし行為であり迷惑ですので、お控え下さい。
22時52分 | 固定リンク | Comment (493) | 平和 |
2010年02月04日
英語版の方がより詳しかったので紹介しておきます。


Israel disciplines officers over Gaza shelling - CNN.com
The new Israeli report stated: "...in one case, a Brigadier General and a Colonel had authorized the firing of explosive shells which landed in a populated area, in violation of IDF (Israel Defense Forces) orders limiting the use of artillery fire near populated areas," .

It went on to say the two officers were "disciplined" for "exceeding their authority in a manner that jeopardized the lives of others."

The two officers were the highest-ranking members of the Israeli military disciplined for actions in the military offensive, also known as Operation Cast Lead.


「explosive shells」とあります。これは榴弾の事です。イスラエルが国連に提出したレポートで将校二人を処分したという案件は、榴弾の砲撃に関するものです。白リン弾の事ではありません。イスラエル紙「ハーレツ」はこの部分を勘違いして白リン弾の事だと思い込み、後に当局によって否定されたというわけです。



The Israeli military has denied the accusation and in the same report stated "the use of this weapon in the operation was consistent with Israel's obligations under international law."


この箇所の「this weapon」とは白リン弾の事を指し、イスラエルは同じレポート内で白リン弾の使用は国際法に合致していると主張しています。つまりイスラエルは、榴弾の砲撃で問題があったので将校二人を処分したが、白リン弾の使用については問題がなかったというレポートを国連に提出しているのです。つまり白リン弾についてはスタンスが何も変わっていません。

壊れる前に…: イスラエル軍が白リン弾使用で処分

この方はハーレツ紙の誤報を見てこのような記事を書いてしまったようです。書き手についてを見ると、議論はしたくないとあるので、コメント欄での指摘は控えてトラックバックのみを送って置きました。


はてなブックマーク - 壊れる前に…: イスラエル軍が白リン弾使用で処分
D_Amon イスラエル, 白燐弾 イスラエル軍自体が戦争犯罪と認めた結果の処分。ネットの日本語圏で見られた条文だけを読んでのオラ解釈の方が間違っていたということ。 2010/02/02


この方も、誤報を鵜呑みにしないように気を付けましょう。ところで「オラ解釈」ってなんです? 国際法をその通りに適用することが勝手な独自解釈になるとでも言いたいのですか? そんな馬鹿な・・・。
23時13分 | 固定リンク | Comment (214) | 平和 |
号外連発ですがあくまで号外なので更新頻度からはノーカウント、日刊じゃなくて週刊だよのオブイェクトへようこそ皆様こんばんわ。じゃあ時間が勿体無いので号外扱いの「メールへのお返事」を手短にやっておきますねー。

では届いたメールの内容はこれです。



JSF完全敗北キターーーーーーーーーーーッ!!

壊れる前に…: イスラエル軍が白リン弾使用で処分
http://eunheui.cocolog-nifty.com/blog/2010/02/post-ccd5.html


やれやれ・・・じゃあ反論ソース置いておきますね。

CNN.co.jp:イスラエル軍、准将ら将校2人を処罰 ガザの人口密集地攻撃で
http://www.cnn.co.jp/world/CNN201002020012.html
>イスラエル軍報道官は将校2人の処罰は白リン弾の使用とは無関係と地元紙に説明している。

今回の処罰は砲弾の種類が問題なのではありません。白リン弾を使ったから処罰されたのではなく、軍の交戦規則(目標選定と砲撃決定までの過程)に違反したから処罰されたのです。

あんまり余計な手間を取らせないで下さい。この手の浅はかなメールに対応するのは時間の無駄です。
18時14分 | 固定リンク | Comment (100) | 平和 |
2010年01月20日
SPA!で記事になり話題となった現役陸自幹部のトンデモ妄言の数々。

[PDF]総力特集 大マスコミが報じない隠された真実|新型インフルはウイルステロだった!ホメオパシージャパン株式会社

これに対するツッコミは、幻影随想の黒影さんが最もよく纏まっています。

SPA!のトンデモ記事および池田一等陸佐の免疫学に対する無知を切る:幻影随想

ホメオパシーについてはこの記事も読んでおくとよいでしょう。数あるトンデモ疑似医療の一つです。

ホメオパシー - Wikipedia
ホメオパシー - Skeptic's Wiki
幻影随想: ホメオパシーヤバイ

自衛隊も24万人近い人が居るのですから、中にはトンデモな人が混じっていても仕方が無いかもしれませんが、幹部、それも隊内で教育に携わる人がトンデモだったら、その害悪の影響が隊内に広まってしまう事になり、看過できる問題ではありません。池田一佐は陸上自衛隊小平学校の教官です。以前紹介した「平和宇宙戦艦」でも同じような問題が起きています。自衛隊は、こんな事を続けていたら隊全体の正気が疑われてしまいます。

即座に人事的な処理を行うように、願います。

なお現役のある一尉に池田一佐の事を聞いてみたところ、以下のようなコメントが返ってきました。



語りたくない人物が話題にw

昔自衛隊内の機関紙(幹部自衛官用)に、
「水は話しかけると美味しくなるのですよ」
という内容のすさまじい投稿を載せて以来、注目していた。

つか、そういう類の投稿しかしていない。
科学・実証を第一と考える小官からしたらある意味アンタッチャブルな人<池田1佐


・・・池田一佐は「水からの伝言」の信奉者だった模様。トンデモ疑似科学のオンパレードでくらくらして来た・・・隊内では以前から有名人だったみたいです。

水からの伝言 - Wikipedia
「水からの伝言」を信じないでください
水はなんにも知らないよ (著)左巻 健男


【追記】
1月23日に産経新聞が書評で池田整治氏の著作を好意的に紹介。


【書評】『マインドコントロール』池田整治著:産経新聞
GHQ(連合国軍総司令部)による自虐史観の刷り込み、宗教を隠れ蓑(みの)とした謀略、水道水の塩素を巡る米軍との衝撃的なやりとり、添加物(化学物質)で汚染された食卓、インフルエンザなどのウイルス兵器で脅される世界、大和王朝成立の本当の背景、戦争のたびに儲(もう)ける支配層による仕組み作り、江戸の素晴らしさを否定された日本人への罠(わな)など、これまで普通の日本人が陰謀史観だと思い込まされていた事象の一つひとつを、独自のコメントで引っくり返していきます。


内容は憂国ネタで陰謀と電波に塗れた代物です。
21時21分 | 固定リンク | Comment (298) | 平和 |
2010年01月17日
反戦平和運動は、それは大いにやって貰って結構なことなのですが、軍隊にも応じられることと応じられないことがあるので、その線引きについてはある程度、了承して欲しいものです。

新社会党の浦田秀夫・船橋市議会議員は、陸上自衛隊の第一空挺団や特殊作戦群が駐屯する習志野駐屯地の、習志野演習場新火薬庫建設に反対しているわけですが・・・


新弾薬庫建設問題、説明は地区連会長へ:浦田秀夫(うらたひでお) 通信
防衛省は、火薬庫の設計図面や設置場所の正確な位置を示す地図、火薬の種類や砲弾の数・量など具体的な資料を提示し、住民に直接説明すべきである。


そんな資料を提示したらテロリストやスパイに貴重な情報を与える事になってしまいます。

普通に利敵行為ですよ、それは・・・浦田議員に自覚が有るのか無いのか知りませんけど、これはとても応じられない話です。ある程度の大まかな情報は出せても、細部に渡って具体的に詳しい情報までは説明できません。軍隊が「軍事機密だから」と情報を開示しない場合があるのは、何も周辺住民に意地悪しているわけじゃありません。敵に知られたくない情報だから隠しているだけです。新弾薬庫の位置はどうせ直ぐ分かる事です。ですが設計図面を提示しろって、施設の内部構造を晒してどうするんですか? 破壊工作員が喜ぶだけじゃないですか。というかなんで周辺住民や議員がそんな情報を欲しがるんです? 火薬の種類の細かい情報を提示するのも、スパイが大喜びするだけで、そんな危険を冒して住民に知らせる意味が分かりません。第一、貴方たちが弾薬の細かい種類を知ったところでどうなるのです? 別に核弾頭やDU弾があるわけじゃなし・・・。

この問題は、蔵量21トンの弾薬庫を新設するというものです。現有施設は1トンまでの小規模なものです。いや21トンでもかなり小さいんですが、しかし反対派の皆さんは「大規模火薬庫」と称していているので、なんというか、やれやれな話です。
10時56分 | 固定リンク | Comment (321) | 平和 |
2010年01月16日
無防備宣言運動・・・まだやってたんですね。下手な鉄砲数撃ちゃ当たると言いますが、忘れた頃にどこかの自治体がうっかり条例化してしまうこともやりかねないので、一度ちゃんと国家政府がきっぱりと警告した方がいいかもしれません。「地方自治体が勝手に無防備宣言を行った場合、中央政府への反乱行為と見做す」と。

那覇市議会、無防備条例を賛成少数で否決:琉球新報

認識に差 理解進まず 無防備宣言、那覇市議会否決:琉球新報

無防備宣言運動についてはカテゴリー『無防備』をご覧下さい。この運動の問題点は「ジュネーブ条約を根拠として謳っているにも拘らず、ジュネーブ条約に違反した宣言を標榜している」という事に尽きます。赤十字による同条約の解説では、困難な状況に無い限り地方自治体が勝手に無防備宣言を出す事は出来ないとされています。「困難な状況」とは例えば、中央政府が先制核攻撃で全滅してしまった場合など、自分達だけで判断しなければならない状況を指します。そもそもこの宣言は、戦時に置いて敵軍が自分達の目の前に迫った状況でないと宣言できない代物です。なお革新政党である日本共産党がこの運動に反対しているのは、敵対的な左翼セクト「MDS」がこの運動の推進母体であるからで、これが判明する以前は賛成の立場に居ました。

なお那覇市での無防備条例運動の推進者には、あの方も居ました。

(2009/08/11)暗黒邪神トートーメー・破壊神ジュゴン・大海獣ウミセドン、南海の大決戦

(2009/08/13)トンデモ古代史を根拠に非武装を訴える沖縄反戦平和運動の怪

えーっと・・・沖縄の反戦平和運動は、これから何処へ向かっていくのでしょうね。
23時59分 | 固定リンク | Comment (132) | 平和 |
2010年01月13日
アフガニスタン対テロ戦争は今や「オバマの戦争」と呼ばれ、アメリカ軍は兵力の増派を行っていますが、それについてのアフガン民衆の世論調査が出ました。


外国軍増派、6割が支持=タリバン批判広がる−アフガン世論調査:時事通信
米英独のテレビ局がアフガニスタン国民を対象に実施した世論調査の結果が11日公表され、米軍や北大西洋条約機構(NATO)軍の増派を支持する人が61%に上ることが分かった。早期の治安回復を望む声を反映したものとみられ、反政府勢力タリバンに対する反発の広がりがうかがわれる。

調査は米ABC、英BBC、独ARDが昨年12月、アフガン国民約1500人を対象に面接方式で実施。国が正しい方向に向かっていると考える人は約1年前の前回調査より30ポイント増の70%、今後1年間で生活が改善されると期待した人も同20ポイント増の71%に達した。

米軍駐留を支持する人は約7割に上ったが、戦闘が激化している南部や東部での支持は約4割にとどまった。


70%が「正しい方向」と回答 アフガン世論調査:産経新聞
英BBC放送などが11日に公表したアフガニスタンでの世論調査によると、同国が正しい方向に向かっていると考えるアフガン人が1年前の40%から70%に上昇した。

オバマ米政権が昨年12月に公表した米兵3万人の追加増派についても61%が支持すると回答、アフガン国民の間で、当面は米軍などの駐留の下で治安の回復などが進められることへの期待が広がっていることを示しているとみられる。増派反対は36%だった。

米軍の駐留は、支持が68%と1年前から5ポイント増加。2001年の米国によるアフガン攻撃については、良かったとする回答が1年前に比べて14ポイント増の83%となった。

今後1年間の先行きについては、良くなるとの答えが1年前に比べ20ポイント増の71%で、悪くなると答えたのは5%だった。(共同)


アフガニスタンでタリバーンは決して支持されておらず、特にカブールなどの都市部ではタリバーンへの反発が広まっている様子が分かります。結局のところペシャワール会の中村哲医師の言うような「アフガン民衆はタリバーンを支持している」というような報告は、都市部から離れた農村の、パキスタン国境に近い部族地域に限定されたものでしかありません。

(2008/11/15)大多数のアフガニスタン民衆は外国軍の駐留を望む‐カナダの世論調査

以前に別の世論調査でもこのような結果が出ています。

ところで・・・


【松浪健四郎が語る】(2)「アフガン問題はおれしかできない」:産経新聞
「対米政策も絡んでくるが、アフガン問題の第一の解決策は、米国が大人になってイランと国交を回復することなんですよ。それを米国はやろうとしないから。で、パキスタンだけではタリバンやアルカーイダの掃討作戦は成功しない。アフガンとイランの国境線がどれだけ長いか。そして、そこに峻険(しゅんけん)な山岳が横たわっている。イランの方にも本気でやってもらわないと、彼らを温存させることになるという現実を米国はもっと理解しないといけないですね」


アフガニスタンのタリバーンがイラン領内に逃げ込んで戦力を温存とか、有り得ない想定をされてもなぁ・・・イラン(シーア派原理主義)とタリバーン(スンニ派原理主義)は犬猿の仲で、過去にイラン外交官殺害を発端として戦争寸前までに至った事もあるし、イランはアフガニスタンのタリバーン政権が健在だったころは一貫して対抗勢力の北部同盟を支援していたことも知らないのかなぁ・・・つまりイランはアメリカから頼まれなくてもタリバーンが自国に侵入してきたら積極的に掃討する筈で、タリバーン自身もイランに逃げ込もうなんて真似はする気も起きないでしょう。松浪健四郎・元議員にアフガン問題を任せてはいけないと思いました。

あと、それとはまた別の話ですが・・・

(2009/06/03)イラン、タリバーン打倒でアメリカと利害一致、共闘の可能性

半年前に書いたこのエントリーで、毎日新聞テヘラン支局の春日孝之記者が「アフガン対テロ戦、イランに補給路要請」と書いた記事を紹介しましたが、あれ以降、後追いの続報が全く無く、毎日新聞以外の報道機関からの情報も、アメリカやNATOからの公式発表も無い為、毎日新聞の春日孝之記者によるトバシ記事であると現時点では判断せざるを得ません。

なお春日孝之記者が2006年に出版した著作「アフガニスタンから世界を見る」は、消印所沢氏によると疑問点・不審点が多く、情報の信頼性は低いとの事です。
00時18分 | 固定リンク | Comment (120) | 平和 |
2009年08月13日
前回の記事で紹介した沖縄の反戦平和運動家・海勢頭 豊(うみせど ゆたか)氏は、那覇での無防備地域運動の立ち上げだけでなく、憲法9条沖縄連絡会の共同代表、他にも米軍基地反対運動の一環として行っているジュゴン保護キャンペーンセンター代表で、現在、沖縄県でアクティブに動いている反戦平和運動の中心に居る人物です。生まれも育ちも沖縄県で、ご本人の職業は「平和音楽家」だそうです。

そしてこの沖縄の反戦平和運動の中心人物と言える海勢頭氏の持論に、大変奇妙なものがあるので困惑しています。


2007年活動報告 4月1日:「世直しの歌とゆんたく」ジュゴンと琉球のきよらなこころ 場所:ドーンセンター | ジュゴン保護キャンペーンセンター
古代から琉球は非武反戦の島でした。
琉球から太陽信仰を持ち帰り、弥生時代末期の戦乱の世直しをしたのは、倭迹迹日百襲姫(ワトトヒモモソヒメ)すなわち卑弥呼と考えられます。
卑弥呼は沖縄でジュゴンに出会い、ヒトを襲わない平和な姿に影響を受けたのではないでしょうか。


邪馬台国の卑弥呼が琉球にやって来ていたとか、正直、全くわけが判らないので、ユタ(沖縄の巫女)の口寄せ(降霊術)を真に受けたのかと思いましたが、どうやら違うようです。海勢頭氏のこの主張は、瀬戸内短期大学の名護 博(なご ひろし)教授の説に大きく影響を受けたもので、これは学会では全く受け入れられていない、数ある邪馬台国仮説の一つのようです。それは世の中に殆ど知られていない奇抜な説でした。名護教授は沖縄出身で、この学説を記した著書『邪馬台国総合説 赤椀の世直し』も沖縄の出版社から世に送り出されています。沖縄限定で有名なのかもしれません。


邪馬台国総合説 赤椀の世直しOnline
戦乱の弥生時代前期末〜中期の北部九州で、沖縄・奄美を戦乱のない「ユートピア」(常世の国)とみなし、その「太平の世」を日本本土に回復しようする「世直し」の連帯運動が発生した。原初ヤマト国家(倭国≒邪馬台国)は、その「世直し」が拡大・発展したもので、3世紀半ば頃には「大和・山城」を首都とする平和を目指す連合国家として成立した。しかし数十年の短命な国家であった。
(※名護教授の専攻は化学で農学博士。歴史は専門外)


概説にはこうありました。

『邪馬台国とは、北部九州に始まり、瀬戸内・畿内、さらには東海、北陸、東北南部にまで共鳴的に拡大発展して生まれた不戦・平和をめざす連合国家のこと。』

狗奴国との戦争を続けていた邪馬台国の目的は不戦・平和だったんですか〜って、そんな理屈が成り立つならどんな戦争でも「平和を取り戻す為に戦うんだ!」で説明付けられますが、何を言ってるんでしょうか、この人は。よく理解できません・・・

次に名護教授とは別の、海勢頭氏の独自研究についてです。


古代世直しの旅  心は9条と同じ、非武非戦
沖縄9条連共同代表・シンガーソングライター
海勢頭 豊 (うみせど ゆたか)

 私は3〜4世紀の古代邪馬台国を統一したヒミコの世直し運動を評価すべきだと思ってきた。
 そして今、1700年の時を越えて、世直しの心を守り、生かし広める時が来たと決意している。
 その謎解きに人生を賭けてきたが、「憲法9条の心は沖縄の心」をテーマに、沖縄9条連を立ち上げたのも、古代平和運動の真実が見えてきたからであった。
 ヒミコは琉球のジュゴン=サメに絶対平和の思想を学び、その化身(けしん)として豊玉姫・玉依姫(たまよりひめ)の姉妹神話を創り、また琉球の太陽信仰から天照神話を創生して「世直し」に立ち上がったと考えられる。
 ジュゴンのペンダントの勾玉(まがたま)を掛けて祈り続けてきた琉球の神女(かみんちゅ)たちの伝統祭祀(さいし)もまた、非武非戦の9条の心を守り続けてきた平和運動であったのである。


海勢頭氏は音楽業の傍ら、「古代史の謎解きに人生を賭けてきた」そうです。そして、大和(やまと)の思想・神話は元々は琉球オリジナル!と主張しています。また、勾玉(まがたま)がジュゴンのペンダントとは、どういうことなのでしょうか。


曲玉はジュゴンのペンダント:孵でぃ果報
だが私は、ジュゴンを守らなければならない立場の物としては、まがたまの秘密を証さなければなるまいと考えて来た。そして答えは昨年10月8日、平安座島のシヌグ祭りに神人として参加した時に見つかった。

もしかしたら曲玉はジュゴンの首飾り?と、ふと思いついたのであった。古代ヤマトの戦乱の世を非武の思想で統一し、邪馬台国の女王となったヒミコと琉球の世直し運動の時代(3〜4世紀)にリセットして考えると、曲玉は間違いなく、ジュゴンの非武のパワーを込めたものとなる。

ジュゴンは日本の古代語でサメと言う。沖縄の方言ではサンまたはザンと言う。神女達が芒の葉をクルッと巻いてサンを結ぶと、それがたちまち邪気を祓い清める鮮烈なパワーを持つことを、沖縄人なら誰もが知っている。

その効能と全く同じなのが曲玉である。


語感が何となく似ているだけからくる、コジツケ論以外の何物でもないような気がします。「謎解きに人生を賭けてきた」という実態とは、祭りの最中にふと思いついただけで、何の検証も無いまま「間違いなく」と断言する非常に危ういものでした。



その昔、琉球=竜宮を訪ねたヒミコは、太陽信仰とともに竜宮神であるサメから非武の絶対平和思想を学び、世直しを行った。そして、海神であるサメすなわちジュゴンの化身として、豊玉姫、玉依姫の姉妹を神話にして国中に平和思想を広げて行った。その平和な国造りを補完する神器として、サメの真玉(まがたま)を作ったと考えられる。

天皇家の保有する三種の神器の1つは「八尺瓊勾玉(やさかにの勾玉)」こそは、正しくヒミコの作った物ではなかろうか?

八尺は2m42,4cmの大きさで、瓊(に)は赤。ピンクに光り輝く辺野古の海のジュゴンを模したと思ってよい。

その日本神話の原郷である聖なる海を破壊する者は、恐ろしい事を覚悟しなければなるまい。


なんだか、どんどん妄想を暴走させていってませんか? まともな根拠が何処にも見当たらないです。主張の根底にあるのは大和(やまと)の源流は琉球なのだ!の一点張りで、根拠の無い断言と無理矢理なこじ付けの連続です。そして最後には「沖縄の海を破壊する者は恐ろしい事を覚悟しろ」と脅迫を行う。これが平和思想の担い手の言う事なのですか? 平和運動の邪魔をするものは神罰に焼かれて滅ぼされるわけですか?

最後の脅迫行為は、海勢頭氏の内なる攻撃性が現れたようにしか見えません。これは「平和主義者の好戦性」を体現した例となるのか、それとも、海勢頭氏は平和主義者の仮面を被った民族主義者に過ぎないのか、少なくとも海勢頭氏が平和運動家として活動し続ける限りは、これは「平和主義者の好戦性」と見做される事になるでしょう。


結局、色々調べてみましたが「邪馬台国の卑弥呼が琉球に行ってジュゴンと会って来た」というトンデモ古代史の根拠は何処にも見当たりませんでした。邪馬台国についても、戦争を行って勢力を拡大し、大陸の強大国家・魏と関係を結び、その威光を傘に着て周辺国を併呑していった目的が不戦・平和であったという根拠も、何処にも見当たりません。根拠の無い断言と無理矢理なこじ付けしか発見できませんでした。

中世から近世にかけての琉球王国が非武装平和国家であったという幻想については、今や根拠付きで何時でも打ち破る事ができます。

(2008/10/28)琉球王国の火力装備と平和国家の幻想
(2008/10/30)「琉球王国は武器を持たない平和な国」と大田昌秀・元沖縄県知事が信じていた件

中世〜近世の琉球王国は火力装備を有した普通の国家でした。しかし、詳細がよく判っていない古代の琉球と邪馬台国を結び付けて、「非武装の琉球が大和に伝えた大事な思想」などというステキな脳内ストーリーを組み上げられていたとは、思いもしていませんでした。反戦平和思想というより民族主義的な思想、いえ、両者の合体ですね、これは。

そして出来上がった代物がトンデモ古代史です。自分達がこんな勝手な歴史の捏造をしているようでは、教科書問題などを非難できなくなるだけでしょうに。
02時41分 | 固定リンク | Comment (172) | 平和 |
2009年07月26日
殺人未遂事件が発覚してから11日が経過し、みのお9条の会が正式にコメントを出しています。


みのお9条の会からのお知らせ | 箕面9条の会
 さる7月14日(火)朝刊に、車のトラブルによる事件で中井多賀宏氏が逮捕されたとの報道がありました。
 中井多賀宏氏は、当時、みのお9条の会の呼びかけ人でしたが、同氏の行為は全く個人的なものであり、みのお9条の会とは何ら関係のないものであります。また、ナイフを使用したとの報道が事実とすれば、決して許されるものではありません。
 みのお9条の会としては、呼びかけの本意と相容れない行為をとった中井多賀宏氏を、今後みのお9条の会呼びかけ人としては扱わないことと致しました。
 なお、今回の事件をきっかけに、みのお9条の会に対する誹謗中傷がありますが、みのお9条の会は、憲法9条を守ることを目標とする多くの方々とともに、これまでどおり活動を続けていくことを表明するものです。
2009年7月25日

                       
 みのお9条の会呼びかけ人
     新井せい子   内田富美子   岡田 和義   小椋 芳子
     黒田悠紀子   樋口 泰一   目黒 郁朗    森 南海子


会として殺人未遂容疑者を擁護せずに切り捨てに掛かるのは当然ですし、呼びかけ人として名前を載せ続けるわけにいかないことも当然ではあるでしょう。個人の犯行であり会は関係無い・・・そう主張するのは結構ですが、中井多賀宏が元・呼びかけ人であった事実は消えませんし、呼びかけ人という、会の中心に居た人物の不祥事に対し、申し訳ないという気持ちが全く見えて来ない声明を出すというのは、10日以上遅れた対応といい、火消しとしてはかなり拙い対応のように思えます。

せめて一言でも、謝罪ではなくてもせめて「遺憾の意」程度でもよいですから載せておけばよかったのに、そのようなものが一切無いこの声明からは、開き直りのような態度しか伝わってきません。

・個人的な行為であり、会とは一切関係が無い。
・中井多賀宏は今後、呼びかけ人としては扱わない。
・会に対する誹謗中傷があったが、今後も活動を続ける。

上記の主張に対し、みのお9条の会が認めた事実は以下だけです。

・車のトラブルで中井多賀宏が逮捕された。
・ナイフを使用したのが事実であれば、決して許されない。
・9条の会の呼びかけの本意と相容れない行為。

車のトラブルがあった、ナイフが使用された、という言及はありますが、被害者が滅多刺しにされて重傷を負った事が語られていません。逮捕された理由が殺人未遂容疑である事も言及がありません。都合の悪い事を何とかして隠そうとする態度は、不誠実です。加害者の関係者であるのに、殺されかけた被害者に対して回復を祈る言葉も無く、会の中心人物が行った凶行への謝罪の言葉も遺憾の意すらも無いというのは、非暴力平和を訴える人達の取る態度とは、とても思えません・・・。

ですが、明確に彼らが認めた事があります。

中井多賀宏の行為は、9条の会の呼びかけの本意と相容れない行為であると、認めました。9条護憲反戦平和を訴える行為と、ナイフで他人を殺そうとした行為は、相容れないものであり、同じ人間がこの二つの行為を行う事は主張の矛盾を引き起こし、二重規範(ダブルスタンダード)となる事を、みのお9条の会は認めました。

軍隊を無くし、戦争を放棄し、話し合いで解決しようというのが9条護憲派の主張です。話し合いをせずに武器で先制攻撃、相手を殺傷してしまっては、何の説得力も無く、批判されて当然の話です。

みのお9条の会は、この件で会に対する誹謗中傷があったと主張していますが、それは誹謗中傷では無く正当な批判であり、真摯に耳を傾けなければいけないでしょう。その上で事件は中井多賀宏という個人が引き起こした事であり、会としてこれを処断、切り離した上で運動を継続する事には異論はありません。

ですが現状の貴方達の態度は不誠実です。
06時42分 | 固定リンク | Comment (254) | 平和 |
2009年07月18日
平和主義者の好戦性について、よく引用されるリデル=ハート卿(イギリスの著名な戦略思想家。ベイジル・リデル=ハート - Wikipedia)の格言にこうあります。

「戦争屋と話をすれば、平和を目指す努力以前に彼らの人間性の鈍感さにガッカリするが、それ以上に平和主義者の好戦性によって戦争を排除することに絶望を感ずる」(B.H.リデル=ハート)

この発言が実際にリデル=ハート卿のものかどうか、以前調べましたが見付ける事が出来ず、少し前の記事で「何方かご存知でしたらお知らせ下さい。」と呼び掛けたら、早速答えを頂きました。



リデル=ハート卿の発言の英語文献を見つけました。

# Pacifism and Politics in Britain, 1931-1935
# Michael Pugh
# The Historical Journal, Vol. 23, No. 3 (Sep., 1980), pp. 641-656 (article consists of 16 pages)
# Published by: Cambridge University Press
http://journals.cambridge.org/action/displayIssue?jid=HIS&volumeId=23&issueId=03&iid=3334160

これの645ページに以下の文章があります。

Liddell Hart commented, for example:' contact with many of my pacifist friends, with whose outlook I am naturally in sympathy, too often has the effect of making me almost despair of the elimination of war, because in their very pacifism the element of pugnacity is so perceptible'.11

リデル=ハートは例えば次のようにコメントしている。
「多くの平和主義者の友人と付き合っていて、彼らの見解にはもちろん共感するんだが、戦争の廃絶について私をほとんど絶望させることがあまりにも多い。というのも、彼らの熱烈な平和主義の中にある好戦的な要素が目の前にちらつくからだ」

11 Liddell Hart to G. Glasgow, 14 May 1934, notes for history file, Liddell Hart papers, Medmenham. A minor testimony to pacifist pressure was the British Legion's public defence of the Remembrance ceremony as a celebration of peace and not war, British Legion Journal, xi (May 1932), 396.

たぶんこれに近いんじゃないでしょうか?
British Legion Journal が一次資料になるのかもしれませんが、残念ながらそっちは見つけられませんでした。




sennjuさん、どうも有難うございました。なお該当資料のPDFファイルはこちらにも置いておきます。Pugh,1980.pdf

これは1980年に書かれた、英ブラッドフォード大学のマイケル・パフ教授の論文ですね。ブラッドフォード大学の平和学科は、この分野における世界最大の研究センターとなっていて、此処からは多数の政治家、国連職員、NGO職員を輩出しています。

このマイケル・パフ教授の論文内容については、以下の通りです。



ちなみにPugh氏の論旨は、

In political terms, pacifists extended their vision beyond the issue of individual consience to the prospect of converting whole societies. No longer content merely to protect the dissenter and justify the dissenting conscience, the pacifist set out to win converts through missionary activity such as the lobbying of L.N.U. branches. It was this process of politicization which annoyed not only Beaverbrook but less hostile observers as well. Liddell Hart commented, for example:' contact with many of my pacifist friends, with whose outlook I am naturally in sympathy, too often has the effect of making me almost despair of the elimination of war, because in their very pacifism the element of pugnacity is so perceptible'.

政治的な見地から言えば、平和主義者は個人の良心の問題だった彼らのビジョンを社会全体の変革に向けた展望へと拡大した。
もはや単に反対者を擁護したり、見解の異なる良心を正当化することにも我慢がならず、平和主義者はLNU(League of Nations Union;国際連盟協会;国際正義・集団安全保障・永久平和を謳う英国の団体)支部のロビー運動のような布教活動を通して、転向者に勝利することを企だてている。これはビーバーブルック卿(保守派の重鎮?)だけでなく、もっと友好的な観察者をも悩ませた政治化のプロセスであった。
例えば、リデル=ハート卿は次のようにコメントしている。
「私の平和主義者の友人の多くと付き合っていると、彼らの見解にはもちろん共感するんだが、戦争の廃絶について私をほとんど絶望させることがあまりにも多い。というのも、彼らの熱烈な平和主義の中にある好戦的な要素が目の前にちらつくからだ」

---
人間やってることは昔から同じなのか。




反戦平和運動は半ば宗教と化し、布教活動を行う者は異なる意見に耳を貸そうとせず、反対意見を持つ者に対して勝利を得ることを企てている・・・それは、とても攻撃的で、平和的な性質のものではなかった・・・「平和主義者の好戦性」について嘆く声は、今も昔も変わりが無いのでしょうね。
23時25分 | 固定リンク | Comment (242) | 平和 |
2009年07月16日
自己を全否定する行為を・・・憲法9条を唱える無防備論者がナイフを使って殺人未遂。

車の通行めぐりトラブル、大学生刺され重体 大阪:朝日新聞

中井多賀宏 - Wikipedia

「戦争屋と話をすれば、平和を目指す努力以前に彼らの人間性の鈍感さにガッカリするが、それ以上に反戦平和主義者の好戦性によって戦争を排除することに絶望を感ずる」(B.H.リデル=ハート)

上の格言はリデル=ハート卿が実際に言ったものなのか、一度調べて見た事があるのですが、英語圏の文献・サイトでは該当するものが見付かりませんでした。何方かご存知でしたらお知らせ下さい。

平和主義者の好戦性・・・有名人に憲法9条護憲派で無防備論者でありながら、家庭内暴力を奮う事で有名な人物も居ますから、今更な事なのかも知れませんが・・・

井上ひさし - Wikipedia

好戦的な平和主義者という人種は、そこいら中に普通に居るものと思った方が良いでしょうね。これまで私も山ほど見てきました。
21時17分 | 固定リンク | Comment (203) | 平和 |