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2009年06月05日
これまで何度かアムネスティ日本支部とメールでやり取りしていたのですが、ようやくロンドン本部とのコンタクトが取れました。以前の日本支部とのやり取りは以下の通りです。

(2009/04/17)アムネスティから照明弾とフレシェット弾の件でお返事が来ました

とはいってもロンドン本部から私には待てど暮らせど返事が無く、私の書いた拙い英文では意味が通じていないのか、ずっと放置されていました。このままでは埒が明かないため、英語の達者な知り合いの人に代理を頼む事にしました。そこで、アメリカ在住で英語を日常的に使っておられる「バグってハニー」氏にアムネスティ本部(ロンドン)へ問い合わせメールを送ってもらうように頼みました。

一週間経過すれどやはり返事が無く、催促のメールを送ってみるとようやく反応あり・・・

「You have come thru to amnesty international - could you please repeat your inquiry, as we receive around 700 email everyday. 」
(毎日700通くらいメールが届くんで、もう一回送ってちょ。)

脱力しながらもう一度メールを送信。(バグってハニー氏によると、本部はロンドンなのに"Thru"のスペリングからしてアメリカンな感じ、だとか。イギリスでは通常"Through")

そしてようやくお返事が来たのです。問い合わせ内容は「照明弾の成分はマグネシウム粉と硝酸ナトリウムであって、燐は違うのでは?」という感じで簡素にしてあります。

では肝心の回答内容はと言うと・・・



The pyrotechnic round in the illumination shell is indeed mostly made up of sodium nitrate and magnesium powder, but phosphorus is also one of the chemical elements emitted.


アムネスティのロンドン本部は、照明弾の主成分がマグネシウム粉と硝酸ナトリウムであることを認めました。しかしその上で「燐も発せられる化学元素の一つだ」と述べて、報告書は間違っていないと主張しています。

・・・無茶な言い訳です。マグネシウム系照明剤の成分は、マグネシウム粉、硝酸ナトリウム、ポリエステル樹脂バインダー、この3種類で構成されており、燐を入れているような例は聞いた事が無いです。

例えば以下はマグネシウム系の照明弾を解体する方法を記した特許のページなのですが・・・


Process for disposing of pyrotechnic flares - Patent 3897237
Abstract: A process for the disposal of pyrotechnic flares comprised essentially of gnesium, sodium nitrate and a binder. The flare is crushed and then soaked in a solvent which softens and dissolves the binder material. The dissolved binder and solvent is decanted and the remaining magnesium and sodium nitrate are washed in water which dissolves the sodium nitrate. The aqueous solution of sodium nitrate is removed and is useful as a fertilizer. The remaining magnesium is dried and screened and is reusable as an ingredient in a pyrotechnic device.


溶剤でポリエステル樹脂バインダーを溶かし、マグネシウム粉と硝酸ナトリウムを分離して、再度新たな照明弾の材料に出来る他、硝酸ナトリウムは肥料にする事も出来ます、とあります。そして燐に関しては何の説明もありません。燐、この場合は白燐(黄燐)の事ですが、この化学元素には毒性があることはよく知られています。もし解体する砲弾にそのような毒性があるものが含まれているなら、その対処法が詳細に説明されていなければおかしいです。しかし、このページにはそういった説明が全くありません。

存在しないものに気を付ける必要は無いのです。

照明弾の主成分がマグネシウム粉と硝酸ナトリウムだと認めた時点で、アムネスティ本部は間違いを認めたも同然なのに、どうしてこのような根拠も示されていない言い訳(燐も入ってるんだ!)が出来るのか、よくわからないです。第一、主成分を記載せずに一部の成分だけ記載するとか、報告書として非常におかしいです。しかもその一部ですら実際には入っていない有様では・・・

なお気になった点として、アムネスティ本部の回答者は「照明弾から燐が検出された」という主張を一切しておらず、日本支部の「検出された」という回答と整合性が取れていない点が挙げられます。日本支部には「検出されたデータを見せて下さい。報告書にこの事が記載されていないのは何故ですか?せめて燐が付着した箇所の写真を見せて下さい」と質問してみたのですが、それ以降、返事が来なくなりました。

m485a2.jpg

アムネスティのガザ報告書の中でM485A2照明弾の写真は、上のものだけです。これは砲弾外殻であり、本来はこの中に照明剤入りキャニスター(パラシュート付き)が入っています。写真のM485A2照明弾はキャニスターを放出した後の外殻のみです。

M485A2-GlobalSecurity.org(写真有り)

つまり、外殻には照明剤の成分が付着する事はまず有り得ません。付着しているのはキャニスター部分でないとおかしいのです。もし外殻に燐が付着していたとしたら、M485A2が着弾した後に白燐弾の砲撃が行われ、M485A2に後から燐が付着しただけ、という可能性が高いでしょう。

私はアムネスティ本部がM485A2の写真を出してきたら、その点で判断する気でした。しかし「燐を検出した」とすら言って来なかったので、拍子抜けです。報告書に載せた写真以外にM485A2の写真があるものと思っていたのですが・・・

アムネスティのロンドン本部と日本支部の説明が食い違い、どちらかがいい加減な回答を行っている事になります。今の所、両方からこの件に関する新たな回答はありません。

現在、追加で質問を出しています。フレシェット弾の件についてもアムネスティロンドン本部側の主張は引き出していますので、また新たな事実が判明しましたら報告したいと思います。
20時42分 | 固定リンク | Comment (45) | 平和 |

2009年05月29日
北朝鮮はテポドン2の発射に続き、二回目の核実験を行い、周辺地域の軍事的緊張を高めています。我が国はこれに対応し、新たな軍備を調達し新たな手段を得ようとしています。これまで対北朝鮮を理由にミサイル防衛のような防衛的装備が配備されてきましたが、新たに敵基地攻撃能力の獲得が提言されました。敵地へ侵攻し目標を破壊する装備を調達せよ、というのです。


防衛大綱・自民素案「北策源地攻撃に海上発射の巡航ミサイル」:産経新聞
年末の防衛計画大綱改定に向け、自民党国防部会がまとめた素案概要が25日分かった。4月の北朝鮮弾道ミサイル発射を受け、海上発射型の巡航ミサイル導入など敵基地攻撃能力の保有を提言。米国を狙った弾道ミサイルの迎撃など4類型について政府解釈を変更し、集団的自衛権の行使を認める方向性も示した。

政府は敵基地攻撃は、敵のミサイル攻撃が確実な場合は憲法上許されるとするが、北朝鮮まで往復可能な戦闘機や長射程巡航ミサイルがない。素案は弾道ミサイル対処で、ミサイル防衛(MD)システムに加え「策源地攻撃が必要」と明記。保有していない海上発射型巡航ミサイル導入を整備すべき防衛力とした。

MDでは、自前の早期警戒衛星開発やPAC3より広い空域での迎撃が可能な「THAAD」(高高度地域防衛)システムの導入検討を提言。公海上に展開するイージス艦防護を念頭に、公海上の自衛隊艦船・航空機への不法行動にも武器を使用して対処できるよう検討することなどを打ち出した。

素案は日米協力や国際貢献のため、(1)公海上での米軍艦艇防護(2)米国を狙った弾道ミサイルの迎撃(3)駆けつけ警護(4)他国部隊の後方支援−の4類型について、集団的自衛権行使に向けた国民理解を深める必要性を強調。複数国による戦闘機などの共同開発を視野に武器輸出3原則を見直し、米国以外の企業とも共同研究・開発、生産を解禁する考えを示した。


記事本文にあるとおり、提出時期的にこの素案は北朝鮮の核実験を踏まえたものではなく、テポドン発射までを踏まえた内容のものです。あくまで提言の段階に過ぎず、防衛大綱に反映させる事が決定ではありませんし、第一その前に総選挙があるので与野党が引っくり返れば白紙となるものです。

ミサイル防衛については新たに「THAAD」の導入が提言されており、日本のMD計画の方針としては初めてその名が出てきました。もっと以前から導入する話は出ていましたが、マスコミが報じたのはこれが初出です。

また武器輸出三原則の緩和については、日米で共同開発中のMD計画「SM-3Block2」が関係してきます。日本は既にF-2戦闘機をアメリカと共同開発する際、武器輸出三原則を緩和していますが、F-2戦闘機自体は日本のみが配備調達する機材でした。しかしSM-3Block2は日本とアメリカが配備する他にオーストラリアが調達予定であり、新たにイスラエルも調達する可能性があります。現在のシステムのままだとイージス艦を保有している国以外には配備できませんが、「地上配備型SM-3」という計画案もつい最近になって提案されており、これが実現化すればSM-3を調達しようとする国は更に出て来る可能性があります。そうなると日本が開発に携わった兵器があちこちの国に売られていく事になるので、F-2戦闘機の時よりも更に武器輸出三原則を緩和する必要性が出て来ているのです。

MDを理由にした集団的自衛権の行使の問題については、これもSM-3Block2が関係してきます。どのみち、北朝鮮からアメリカ本土に向けて発射される弾道ミサイルは北極圏付近を通過していくコースになるので、日本が配備予定のMDでは位置的に迎撃する事は不可能ですが、ハワイやグアムに向けて発射される弾道ミサイルならば日本上空を通過するコースを通るので、最大迎撃高度が高いSM-3Block2ならば条件次第で撃墜することが可能ではないかと思われているからです。開発中のSM-3Block2の性能は今だ謎に包まれていますが、Block1よりも2倍以上の最大射程・射高を持っていると推測され、最大射程(水平距離)1000〜2000km、最大射高(高さ)500km以上と予測されます。

北朝鮮からハワイを射程に収める弾道ミサイルは射程7000kmの準ICBMであり、最大到達高度は約1200km、日本上空付近を通過する際は高度500〜800kmを飛んでいく為、日本海に前進配備したイージス艦ならば僅かながら迎撃のチャンスが生まれます。グアム向け弾道ミサイルならば射程3500kmあれば届くので、このギリギリの性能の弾道ミサイルならばSM-3Block2による迎撃が十分に可能ですが、ハワイ向け用の準ICBMをロフテッド軌道(極端に高い弾道軌道)でグアムに撃ってきた場合は対処が困難になります。

何れにせよ、基本的にIRBM(中距離弾道ミサイル)までの迎撃を想定しているSM-3Block2にとって準ICBM(大陸間弾道ミサイル)との交戦はよほど好条件でないと難しく、日本付近での中間迎撃はアメリカとしてもあまり期待はしていないでしょう。むしろ弾着地点付近で待ち構えて迎撃した方が対処し易いように思えます。或いはSM-3Block2は将来、更に格段の性能向上を遂げる計画があるのかもしれませんが、現時点では北朝鮮の脅威とMDを口実に政治的な要求を通そうとする要素が強く、技術的に本気でアメリカ(ハワイ、グアム)向けの弾道ミサイルを撃墜する気があるのかは見えてきません。


さて前置きが長くなりましたが、肝心の「MDに加え策源地攻撃が必要」という部分、具体的には海上発射型巡航ミサイルが上がっていますが、敵基地攻撃能力の整備についての話になります。

「策源地」とは本来、前線に物資を送り込む後方の補給拠点を意味します。しかしこの素案で使われているのはもう少し広い意味で、「攻撃しようと準備している場所」の事を指しています。敵国が弾道ミサイル等を日本に向けて撃とうと準備している場合、これを攻撃して脅威を排除する事は自衛権の範囲内であり、憲法に抵触しないと国会で答弁したのは1956年、当時の鳩山一郎首相です。しかし専守防衛の理念とぶつかる考え方の為、自衛隊はこれまで本格的な敵基地攻撃能力の獲得は行ってきませんでした。

それを今になって、北朝鮮の核とミサイルの脅威を背景に、弾道ミサイルの脅威を排除する手段として検討しようという動きです。ただし、これが弾道ミサイルの脅威を排除する主役には成り得ません。あくまでMDが主役であり、敵基地攻撃能力はその補佐、或いは弾道ミサイル以外の脅威を排除する手段として獲得する能力です。

弾道ミサイルを発射前に叩く事では防ぎきれない前例として、湾岸戦争での「スカッド狩り」が挙げられます。あの戦争では、アメリカを中心とする多国籍軍は数千機の作戦機を投入してイラク上空の航空優勢を確保、上空には戦闘爆撃機を常に待機させ、対地用早期警戒管制機「E-8ジョイントスターズ」で地上を見張り、スカッドを搭載した移動式弾道ミサイルランチャー(TEL;Transporter-Erector Launcher 輸送-起立-発射機)を発見次第に空爆、撃破を行いました。更には潜入した地上特殊部隊による大口径対物ライフルの狙撃でスカッドを破壊するなど、あらゆる手段を用いて破壊を試みたものの、イラク軍は日中はTELを隠し、バルーンデコイやTELに擬装したタンクローリーなど囮を配置し、夜間になると行動しゲリラ的な発射で弾道ミサイル攻撃を行っています。攻撃が夜間になったのは相手への心理的効果もさることながら、イラク軍自身が見つかりやすい日中は行動不可能だった面があります。

結果、湾岸戦争でイラク軍による弾道ミサイル攻撃はイスラエルに向けて約40発、サウジアラビアやバーレーンなどに向けて撃たれたものを含めると約90発が発射に成功しています。砂漠で監視しやすいイラクですら、この有様です。山間部の森林地帯である北朝鮮の国土では、TELの発見はより困難となるでしょう。アメリカ軍の圧倒的な戦闘爆撃機の数とE-8ジョイントスターズの存在、近隣に航空基地を確保した優位性を持っても、イラクでのスカッド狩りは成功率が非常に低かったのです。

しかし、アメリカ軍を中心とするスカッド狩りは成功率が低くても重要な成果を果たしていました。航空優勢を確保されてしまったイラク軍は、その行動は大きく制約され、大規模な纏まった行動が出来なくなり、それぞれが身を隠しながらゲリラのような散発的な弾道ミサイル攻撃を仕掛ける以外に取れる手段が無くなってしまったのです。

つまりそれは、多数のミサイルを一斉に発射して相手の防空網を突破する「同時飽和攻撃」が大変仕掛け難くなった、という事を意味しています。戦闘攻撃機が敵地上空で睨みを利かすことは、味方の対空迎撃部隊の負担を大幅に減らす効果を見込む事が出来ます。つまり現在で言えばMD部隊の迎撃成功率を高める効果が期待できるのです。

湾岸戦争では、戦闘攻撃機によるスカッド狩りも、パトリオットPAC-2によるスカッド迎撃も、どちらも成功率は低いものでした。しかし当時のPAC-2は弾道ミサイル対処能力が無かったものを無理矢理使った結果であり、あれから20年近く経った現在では専用の弾道ミサイル防衛用装備であるPAC-3、SM-3、THAADなどが登場しており、技術的には格段の進歩を遂げています。キネティック弾頭のような大気圏外で迎撃する兵器など、あの当時では夢物語のSF兵器に近しいもので、時代の流れというものを感じさせます。しかし一方、スカッド狩りのような手法は格段の進化を遂げているようには見受けられません。強いて言うならUAV(無人機)による監視と攻撃が挙げられるくらいで、確かに進歩はしていますが、それではE-8ジョイントスターズを上回る働きを期待できるかというと、やはりそれは違うように思えます。

MD(ミサイル防衛)と敵基地攻撃能力、どちらに弾道ミサイルへの対処の主軸を置くかは、自明の理だと思います。しかし、どちらか片方が有れば片方は無くても安心というものではなく、敵基地攻撃能力による敵同時飽和攻撃の抑制を行い、MDの迎撃成功率を高めるという効果を見込めるからこそ、両方が必要だという主張に繋がるのです。

敵基地攻撃能力を敵の脅威排除の主軸に置く事は出来ません。専守防衛の理念に反するという理由以前に、物理的に日本単独では実行不可能だからです。日本の航空自衛隊の乏しい攻撃戦力で、それ以前に目標を発見する能力すら低く、近場の韓国の航空基地を利用できるわけでも無いのに、一体何が出来るというのですか? 湾岸戦争でのスカッド狩りのような真似は、あくまでアメリカ軍が主軸でやってもらう話です。日本や韓国はそれの補佐を行う役割です。アメリカ軍と同じような事を単独で行うには、膨大な航空戦力が必要になります。それを本気で整備しようとしたら、MD費用どころではない金額が吹き飛んでいく事になります。

更に言えば「巡航ミサイル」ではスカッド狩りには向いていません。トマホーク巡航ミサイルのような長距離巡航ミサイルは、固定目標を攻撃するもので、移動式ミサイルランチャーを攻撃する為のものではありません。亜音速で長距離を飛行するトマホークは、発射から着弾まで数時間掛かる代物で、移動するTEL相手に撃っても何の意味もありません。しかも貫通能力が殆ど無い為、弾道ミサイルを収めた固定サイロ目掛けて発射しても、サイロが耐爆仕様の強化型ならば何の打撃も与えられません。トマホーク巡航ミサイルにはチタニウムを使用した弾殻強化の貫通タイプもありますが、可能なのはビルなど普通の建造物を貫通するのがやっとの代物で、本格的な耐爆バンカーや強化サイロには通用しません。つまり自民素案の「海上発射型巡航ミサイル」で破壊できる弾道ミサイルは、テポドンのような固定式暴露型発射台のものに限られます。しかしそれは実験用の試射台であり、実戦で使われるような代物では無い筈です。つまり「策源地攻撃が必要」という部分の策源地とは、弾道ミサイル以外の目標を狙う気でいると考えていると思われても仕方は無いでしょう。其処まで深く考えておらず、敵基地攻撃なら巡航ミサイルだな、と短絡的な発想を行っただけかも知れませんが。

本気でスカッド狩りの真似事を行う気なら、理想は戦略爆撃機を含む多数の作戦機を上空で待機させ、目標を発見次第に誘導爆弾で撃破する戦法が良いでしょう。しかし勿論、そんな贅沢な手段はアメリカ軍以外には出来ません。そして無人攻撃機は発展途上であり、このような作戦を行わせるような技術レベルには達しておらず、現有の機材では補佐的な事は出来ても主軸は期待できません。通常の有人戦闘爆撃による攻撃編隊の編成は、例えEA-18Gグロウラーのような電子戦機を加える事が出来ても、自衛隊の戦力では用意できる数が知れていて、100基単位の敵弾道ミサイルを撃破していくには難しい面があります。ステルス攻撃機ならば制空部隊も電子戦機も省けるので、自衛隊の全戦闘機がステルス化すれば非ステルス機による攻撃部隊よりも攻撃に割ける機体の数が増えますが、航続距離や空中給油機の数の問題も有るので、劇的に増えるわけではありません。

そもそもどうやって目標を発見するのか、難問です。日本にはE-8ジョイントスターズのような機材は無いのです。普通の有人偵察機や無人偵察機で代用できるような代物とは、思えません。

また韓国の基地を使って近場から反復攻撃を仕掛けたいのですが、政治的に自衛隊機が韓国を拠点に作戦行動を行うのは難しいでしょう。軍同士のレベルなら問題は無いし有事の際の協定も結んでいるとされていますが、政治的なわだかまりと国民感情が自衛隊=日本軍の展開を許すとは思えません。

そうなると「航空母艦を使って北朝鮮近海に接近、艦載機で反復攻撃」「航続力の高いステルス戦略爆撃の投入」などという、これまたアメリカ軍くらいしか実行できない贅沢な装備が必要となり、日本では実現不可能です。

今の所、敵基地攻撃能力でこれが効率的だ、と言える装備を思い付く事が出来ません。だからこそMDを重視すべきだと思っていますが、既に述べたように敵基地攻撃能力とMDを組み合わせると相乗効果を発揮できるので、有効な敵基地攻撃能力は保有すべきと考えます。ですがハープーンBlock2、ASM-2データリンク型、XGCS-2、マーベリック、JASSM、トマホーク、SDB、どれもスカッド狩りの決定打とは言い切れるものがありません。

「自衛隊はミサイル策源地への攻撃能力を獲得すべきだ」と唱える方は、具体的にどのような装備が良いのか、意見を聞かせてください。
23時19分 | 固定リンク | Comment (482) | 平和 |
2009年05月27日
軍事界で【逆神伝説】を積み重ねる日本最強クラスの逆神・神浦元彰こと神浦さんが、アフガニスタンで使用された白燐弾について珍解説を披露、新たな誤神託を我々に託されました。やはり逆神は凄まじい・・・そして、これほどまでに私の主張を補強する援護射撃も類を見ないでしょう。実に心強いです。


Re:メールにお返事 2009年5月27日 | 神浦元彰J-rcom
届いたメール
  神浦さんご無沙汰しております。 まだ国内では報道されていないようですが、アフガン武装勢力が白リン弾を使用しているというニュースが入ってきました。

http://www.cnn.co.jp/world/CNN200905200007.html

その際確認された物にはロシア製迫撃砲に使用する物の他に、中国製のロケット弾もあります。 中国製63式107mmWPロケット弾

http://www.sinodefence.com/army/mrl/type63.asp

白リン弾をIEDとして使用しているという指摘もあるようです。 今回発見された白リン弾、特にこの中国製ロケット弾は、発煙弾として用いられるものではなく、当初から焼夷目的で製造されており、市街地で使用すれば明らかに国際法に違反します。「あくまで煙幕として使用した」という意見は当てはまりません。 以上ご報告差し上げます。 それでは。

コメント
 お返事が遅れて申し訳ありません。北朝鮮の核実験でここへの掲載が遅れてしましました。

写真を見るとかなり大量の発煙がでていますね。私がガザの映像で見た白リン弾は、ほとんど発煙が出ていませんでした。いかにも発煙効果より焼夷効果を狙っていることがわかりました。

この写真は発煙弾ではありませんか。発煙効果を十分に期待できます。米軍陣地に発煙弾を撃ち込み、米兵の視界を奪って接近し、至近距離から手榴弾や自動小銃で制圧する方法です。私にはそのように見えます。如何ですか。


どうやら私のところの5月23日の記事「アフガンで武装勢力が白燐弾を使用、中国製63式107mmWPロケット弾か」を読んだ方が、神浦さんにツッコミを入れて来たようで、それに対する返答なのですが・・・神浦さんは豪快な勘違いを行って盛大に自爆しているようです。

神浦さんは「写真を見るとかなり大量の発煙がでていますね」「この写真は発煙弾ではありませんか」「米軍陣地に発煙弾を撃ち込み〜」と解説しているのですが・・・しかし紹介されているCNN記事の写真説明文をよく見て下さい。

cnn_wp0.jpg

CNN記事の写真説明には「米軍は2008年10月、東部クナール州コレンガル渓谷でのタリバーン攻撃に白リン弾を使用した」とあります。

この写真は米軍が武装勢力へ向けて白燐弾を撃ち込んでいる様子を撮影したものです。つまり武装勢力が国際部隊に向けて白燐弾を撃ってきた瞬間の写真を用意できずに、代用したんですね。記事本文にはパクティカ州やバーミヤン、ナンガルハル州で白燐弾による攻撃を受けたとあるのに、写真説明文はクナール州コレンガル渓谷と全く別の場所です。CNN記事はタイトルが「アフガン武装勢力が白リン弾使用 国際部隊が指摘」である為、神浦さんは写真も武装勢力が白燐弾を撃ってきたものだと勘違いしちゃったんです。そして神浦さんは写真を見てこう判断されたわけですよね。

「写真を見るとかなり大量の発煙がでていますね。」
「この写真は発煙弾ではありませんか。」
「発煙効果を十分に期待できます。」
「米軍陣地に発煙弾を撃ち込み、米兵の視界を奪って接近し、至近距離から手榴弾や自動小銃で制圧する方法です。私にはそのように見えます。如何ですか。」


cnn_wp1.jpg

確かに写真を見れば大量の発煙が出ており、これは発煙効果を十分に期待できる発煙弾であると判断できます。誰でも同じ感想を抱けるでしょう。しかしここからが逆神の逆神たる真骨頂・・・「米軍陣地」は間違いで「武装勢力(タリバーン)陣地」であり、「米兵」ではなく「武装勢力(タリバーン)兵」であるというのが正解です。CNN記事の写真から判断できるのは、そういう事です。神浦さんは結果的に米軍の使用した白燐弾が攻撃用では無く、発煙弾であると説明した事になります。

また神浦さんは「ガザで見たのと違う」と思っているようですが、私が見る限りは基本的に同じものです。小さな白燐欠片が空中に舞っているところから見て、155mmM825A1白燐煙幕弾であると思われます。ただし使用場所が市街地では無く野外、それも山中渓谷の森林地帯なので、使用方法を変えてあるようです。つまり空中炸裂を狙ったものでは無く地表で爆発するように着発信管に変えたか、時限信管にしてもタイマーの起爆を遅らせてより地表スレスレに近いポイントで起爆させたか、そういった工夫を行っている様子が写真からは読み取れます。そうするのは何故かというと、樹木が密生した森林地帯だからです。開けた場所なら空中炸裂で広範囲に小さな白燐欠片を撒いた方が効率よく煙幕で覆えますが、森林地帯では密生する木々に邪魔されてしまい、小さな白燐欠片から発生する個々の少ない煙の量では満足に広がっていきません。そうなると開けた場所で満遍無く煙が充満するように調整された空中炸裂方式では、同じように森林地帯で使えば煙幕が隙間だらけになってしまいます。だから使用方法を変えて着発起爆あるいは起爆高度を低く調整する必要があります。これだと煙幕展開範囲は正規の空中炸裂よりも狭くなりますが、隙間は発生しなくなります。

纏めると神浦さんによる恐るべき誤神託は、「アメリカやイスラエルの使った白燐弾は攻撃用で、武装勢力の使ってきた白燐弾は発煙用」となります。そしてこれは誤神託である為、全く逆が真実となるのでしょう。なおCNN記事と同時に紹介されている「Sinodefence.com」には中国製63式107mm白燐ロケット弾の解説がありますが、英語なので神浦さんは読んでいない筈です。英語が出来ない上に翻訳ソフトでチェックする事もしないのが神浦さんのスタイルですから。
16時00分 | 固定リンク | Comment (83) | 平和 |
2009年05月23日
白燐弾とは一般的な兵器です。西側兵器体系でも東側兵器体系でも普通に砲弾の種類(発煙弾)として用意されているもので、当然ながら敵味方双方が保有し、使用しています。

アフガン武装勢力が白リン弾使用 国際部隊が指摘:CNN

Reported Insurgent White Phosphorus Attacks and Caches : United States Central Command

最近、アフガニスタンで武装勢力(タリバーンあるいはタリバーンと連携した武装勢力)が白燐弾を使用しているとの報告がISAFとアメリカ軍から為されました。現物はロシア製の82mmWP迫撃弾、122mmWP榴弾及び、中国製の107mmWPロケット弾などであると発表されています。(WP;White Phosphorus=白燐)

未使用のものが発見されたのとは別に、82mmWP迫撃弾は普通に迫撃砲から使用されているようです。122mmWP榴弾はIED(仕掛け爆弾)の中に通常榴弾と一緒に混じっていました。107mmWPロケット弾は、中国製63式107mmロケット砲のロケット砲弾を簡易型の単発式発射台に載せて、ゲリラ的に運用しています。正規の多連装ランチャーは、元の設計から山岳戦での使用を考慮してありますが、ゲリラ運用では目立ちすぎて使えないのでしょう。122mmWP榴弾を砲撃で使っていないのは、大きな榴弾砲は更に目立つからです。中国製63式107mmロケット砲は中東ではかなり普及している種類の火砲で、弾薬の調達も比較的容易です。アフガニスタンでも良く見かける兵器です。射程は短く命中精度も良くありませんが、コストが安く軽量で輸送も容易なため、中東のみならず世界各国に輸出されたベストセラー兵器です。(注;ロシア製、中国製とありますが、現地でライセンス生産された物を含みます)


Type 63 107mm Multiple Rocket Launcher - SinoDefence.com
Ammunitions

The weapon fires electrically initiated 107mm rockets fitted with HE-Fragmentation warheads. The Type 63-2 ammunition introduced in 1975 is a 18.8kg rocket containing a 8.3kg TNT warhead, which can produce a 12.5m radius blast when detonated. The maximum firing range is 8.5km.

The PLA has also developed an incendiary rocket fitted with a warhead containing White Phosphorous (WP) and Aluminium. Other types of rockets include HE anti-tank (HE-AT) and chaff dispensing round.


「PLA」というのは中国人民解放軍(People's Liberation Army)の略語です。63式は基本的にHE(高性能炸薬)の通常榴弾タイプを使用しますが、白燐弾タイプも開発されています。

アフガニスタンの武装勢力が使っている白燐弾なのですが、中でもこの中国製63式107mmWPロケット弾は煙幕弾として設計されておらず、攻撃兵器として設計されている点が問題です。シノディフェンスには「中国人民解放軍は白燐とアルミニウムを含む焼夷ロケットを開発した」とあります。白燐に加えてアルミニウム粉を混ぜているのは、殺傷兵器としての威力強化を意味します。アルミニウム粉はテルミット焼夷弾にも用いられますが、酸化鉄が記載されていないのでテルミット反応との複合効果弾ではないでしょう。なお通常の榴弾の炸薬(トリトナル炸薬など)にもアルミニウム粉は混ぜられています。発煙弾としての煙の発生にアルミニウムは特に関係が無い以上、63式107mmWPロケット弾は設計段階で煙幕弾ではない事になります。

つまり煙幕弾として設計された155mm砲用のM825A1白燐弾のような「あくまで煙幕として使用した」という言い訳が、63式107mmWPロケット弾では出来ないのです。ただし攻撃用でも国際条約上、野外において軍隊相手に使う分には特に制限はありません。しかし市街地ではその使用に制限(発煙弾は例外)があります。報告では、107mmWPロケット弾を市街地の中で発見したとしています。

なお最近、アフガニスタンでの白燐弾被害としては初めての事例が正式に報告されています。

(2009/05/10)NATO、アフガンで白燐弾を使用、初の民間人負傷者

NATO側は自分達が白燐弾を使用した事を認めましたが、民間人への誤射は否定しており、武装勢力側の攻撃によるものではないかとしています。


ちなみに今年1月のイスラエルによるガザ侵攻の際には、ハマス側からの白燐弾攻撃も確認されています。これはロケット砲撃とありますが、実際は迫撃砲からの白燐弾攻撃だという情報もあります。


イスラエルニュース(2009年1月14日)
*昨日もガザから19発のロケット砲撃。うち1発は初めて白リン弾が使われたが、空地に落ちたため負傷者は無かった。(H,Y)


なおイラクでも5年前に自衛隊のサマワ駐屯地に目掛けて白燐弾攻撃が行われた事がありました。こちらはロシア系の設計の82mm迫撃砲から発射された白燐弾であることが分かっています。


2発の弾痕を確認 サマワ陸自宿営地砲撃:共同通信 2004/04/08
【サマワ8日共同】イラク南部サマワの陸上自衛隊宿営地を狙ったとみられる砲撃で、派遣部隊は8日、宿営地北側の運河を挟んで2発の弾痕を相次いで確認した。砲弾は8センチ程度で、1発はりゅう弾、もう1発は黄リン発煙弾とみられる。  

政府は同日、部隊を狙った計画的な攻撃とほぼ断定した。地元警察当局によると、砲弾攻撃直前、宿営地付近で不審な小型車が目撃され、発車後間もなく爆発音がした。防衛庁によると、弾痕は宿営地近くの運河を挟んで、りゅう弾が宿営地の北東約1キロ、発煙弾が北東数百メートルの地点で発見された。宿営地の北約3キロでは、迫撃砲の一部や砲弾1発が入った弾薬箱が放置されているのが見つかった。砲弾の種類は不明。

発煙弾が着弾したとみられる場所には、半径40−60センチにわたって地面が焦げ、燃えた黄リンが残留していた。発煙弾については、殺傷力が弱いため部隊を混乱させる狙いだった可能性がある。


イラク、ガザ、今回のアフガニスタンでの確認により、紛争地域ならば大抵何処でも白燐弾は敵味方双方が使用するものと理解した方が良いでしょう。白燐弾はごく有り触れた兵器です。
23時23分 | 固定リンク | Comment (76) | 平和 |
2009年05月10日
アフガニスタン:NATOが白リン弾使用 8歳少女負傷か - 毎日新聞
【ニューデリー栗田慎一】国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」は8日、アフガニスタン東部で3月にあった北大西洋条約機構(NATO)軍の空爆で「白リン弾が使われ、8歳の少女が顔などに深刻なやけどを負った」と非難声明を出した。NATO軍側は白リン弾の使用は認めたが、民間人の負傷は否定した。アフガンで白リン弾の使用が明らかになったのは初めて。


空爆で白燐弾? 該当するとしたら、ヘリコプターから発射するハイドラ70ロケット弾のシリーズに、目標マーカー用の白燐弾頭の設定がありますが・・・航空機用の爆弾に白燐を使うものはもう存在しない筈です。ミサイルにも在りません。というかそもそも本当に空爆だったのですか? そこで大元の「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」のサイトに掲載されていた記事をチェックしてみました。


Afghanistan: NATO Should ‘Come Clean’ on White Phosphorus | Human Rights Watch
NATO officials have said that according to their records, no rounds were found to have landed near the house, though have not denied using white phosphorus during this engagement. They have suggested that the Taliban may have fired the rounds, but have not provided any evidence for their claim. Today the International Security Assistance Force released information on four isolated incidents dated between December 2007 and May 2009 where they say insurgents used white phosphorus munitions.


「rounds」と書かれてありますから、これは空爆ではなく大砲の砲弾の事を指しています。恐らくは榴弾砲か迫撃砲によるものです。毎日新聞の栗田慎一記者は、もう少し英単語の意味をよく理解して日本語に翻訳してほしい所です。栗田記者の発信するこの地域(インド、パキスタン、アフガニスタン)の情報は、他紙を出し抜く特ダネ情報が多く、個人的に注目しています。


Taliban command of Afghan terrain makes fighting conditions difficult | Stars and Stripes
U.S. mortar teams fired more than 30 rounds of 60 mm high explosives and nearly 30 rounds of white-phosphorous smoke, according to Staff Sgt. Jason Calman, 27, of Las Vegas. Fire batteries at a nearby Canadian camp fired nearly 30 rounds of high-explosive 155 mm artillery rounds and another 18 rounds of white-phosphorous smoke. A NATO jet dropped a 500-pound bomb.


星条旗新聞には隠そうともせずアフガンでの白燐弾使用状況が兵士のコメントで詳細に載っていました。この戦闘例は南部のカンダハルであり、問題の8歳の少女が負傷した東部の戦闘とは別ですが、アメリカ軍の60mm軽迫撃砲で通常榴弾と白燐弾を30発ずつ混ぜながら発射、カナダ軍からは155mm榴弾砲から通常榴弾を30発、白燐弾を18発発射し、NATO軍のジェット戦闘機が500lb爆弾(高性能炸薬)を投下したとあります。

要するに、現地では日常的に通常榴弾と同時併用しながら白燐弾を使用しています。

ヒューマン・ライツ・ウォッチが今回問題にしているのは、アフガニスタンで初めて白燐弾による民間人被害が確認された、という点なのでしょう。ですが星条旗新聞の様子から、普段から日常的に使用していたことが分かります。これまで何年も戦闘で使用していながら、初の民間人巻き添え例(確認できるのは一人だけ)ということは、普通に誤射であった可能性が高そうです。
23時57分 | 固定リンク | Comment (53) | 平和 |
2009年05月08日
どのレベルの担当者が説明したのか知りませんが、自分のやっている事が程度の低い陰謀論だって事を、自覚していないんでしょうか・・・


村落を空爆、死者多数、誤爆か 米軍はタリバーンの「工作」と:CNN
一方、アフガン駐留米軍当局者は、空爆の事実は認めながら、2001年末の米英主導の軍事作戦で政権を追われたイスラム強硬派勢力タリバーンが、空爆の犠牲者と思い込ませるため住民を手りゅう弾で殺害した後、遺体を公開した疑いがあると語った。

これによると、タリバーンはアフガン軍、米軍へ攻撃を仕掛けて、空爆要請をし向け、爆撃開始前に住民を殺害したとしている。タリバーンが3家族を連れ出し、手りゅう弾で殺したことを示す信用すべき諜報を得たという。

この後、遺体をトラックの荷台に運び、空爆があった現場の住民に見せ付けたと説明している。米軍当局者は、タリバーンと米軍、アフガン軍の戦闘で一般住民が巻き込まれ、死傷した可能性はあるが、軍の調査で、空爆で多数の住民が殺害された形跡はないとも主張している。調査は空爆して大きな穴などが出来た4カ所で実施したという。


馬鹿らしい。手榴弾で死傷した場合と、航空機用爆弾で死傷した場合は、弾殻破片の大きさが全然違うのだから検死すればすぐ分かるでしょう、何故しないんです? クラスター爆弾の子弾なら手榴弾のような細かい破片になるでしょうけれど、大規模戦闘終結後のここ数年、アメリカ軍はクラスター爆弾を使用していないし、今回も使用していません。

それに手榴弾は威力が低く、一発で確実に殺せるのは2〜3人が限度です。100人殺すには数十発用意しなければなりませんが、あまりにも効率が悪いでしょう。というかそんな作業をしている最中に「手榴弾による死体と航空機用爆弾による死体では、損傷状態が大きく異なる」と気付きそうなものですし、「そもそも破片から手榴弾の種類が特定されたりしないか?」と気付いてもいいような気がします。もしアメリカ軍当局の主張が正しいとすると、タリバーンはそこまで間抜けなんですかね? せめて手榴弾ではなく155mm砲弾あたりを使わないと偽装出来ないんじゃないですか?




・・・初期調査では陰謀論の要素は見受けられないようです。正式発表が出るまで確定ではありませんが、ウンザリです。
22時56分 | 固定リンク | Comment (56) | 平和 |
2009年04月20日
ソマリア沖の海賊対策に、各国は海軍力を投入しています。マラッカ海峡の海賊対策では海上警察や沿岸警備隊などの警察力を中心としたのに、なぜ軍隊なのか? 

国際法は全ての国の軍隊に公海上の海上警察権の行使を認めており、日本で議論されているような「海上保安庁が海賊対策を一義的に担うべき」という決まりはありません。中にはイギリスのように海上警察に相当する組織を持っておらず、普段から海軍が海上警察としての役割を担っている国もあります。イギリスの場合は海軍が出てくるしかありませんが、それ以外の国では海軍を出そうが海上警察を出そうが、国際法上はどちらでも構いません。

ただ、大抵の国の海上警察や沿岸警備隊は、遠隔地で作戦を行う為の十分な能力を持っていないという物理的な理由もありますが、これはアメリカ沿岸警備隊(USCG)には当て嵌まりません。アメリカ沿岸警備隊は戦時の際に海軍の補佐をする為、遠隔地に赴く任務と能力が与えられています。ですがソマリア沖にアメリカ沿岸警備隊の巡視船(海軍のフリゲート並みの大きさ)は投入されておらず、少人数の沿岸警備隊員が法執行要員として海軍のソマリア派遣艦隊旗艦(指揮通信能力の高い強襲揚陸艦)に同乗しているくらいです。

ソマリア沖海賊対策で各国は全て、海軍力を投入しています。海上警察力を中心としたマラッカ海峡海賊対策と、何が違うのか、どうしてこうなっているのかは、ソマリアとマラッカ海峡周辺国(インドネシア、マレーシアなど)の情勢の違いが決定的な要因となっています。

ソマリアは今現在、無政府状態です。対してインドネシアやマレーシアは現地政府が機能していました。この差が海軍で対処するのか警察力で対処するかの線引きとなっています。


米、海賊対策でソマリア沖へ艦艇増派を検討(産経新聞 2009.4.14)
また、ゲーツ国防長官は同日、ソマリア沖での海賊問題の解決をめざす必要を述べる一方、海賊制圧に向けて沿岸各国の協力が得られたマラッカ海峡での経験が、政情混乱の続くソマリアでは生かせないという問題点を指摘した。

 
マラッカ海峡の海賊対策では、海上警察だけでなく沿岸国の陸上警察との連携で取り締まりが行われましたが、無政府状態のソマリアでは海賊の拠点(港町)に対する陸地での取り締まりを警察力で行う事が出来ません。もし拠点を取り締まろうとする場合、軍隊の陸上兵力を投入する以外に方法が無いのです。しかしそれはソマリア領土内での外国軍による軍事作戦を意味し、簡単に発動できるものではありません。しかしゲーツ長官の言うように、ソマリアでは沿岸当事国の協力が得られ無い為、マラッカ海峡の海賊制圧と同じようにはいきません。そして地上拠点取り締まり作戦を発動した場合、それはどう見ても陸上兵力による軍事作戦であり、海上でバックアップするのも海軍兵力であるべきで、海上警察力では対応しきれなくなります。各国が地上作戦まで覚悟しているとは限りませんが、「沿岸当事国が無政府状態で陸上警察力との連携が望めない」という状況下では、各国は海上警察力を送り込む事に意味を見い出せないのです。


海保巡視船建造見送り 補正予算 対海賊派遣 当面自衛艦が役割(東京新聞 2009年4月17日)
軍対応が最善ではないことは、海保主導で沿岸国と協力したマラッカ海賊の一掃で経験済みだ。巡視船派遣断念の理由に各国の軍対応を挙げるのは、説得力に乏しい。


ゲーツ長官の発言を見た後でこの東京新聞の主張を見ると、東京新聞がソマリアとマラッカの情勢の違いを何も理解していない事が良く分かると思います。ソマリアでは肝心の沿岸当事国との協力が望めない為、マラッカでの教訓は活かせません。二つの事例の違う点を何も説明せずに「片方は成功した」と主張したところで、説得力に乏しいと言わざるを得ないでしょう。


海賊、かつての巣窟マラッカでは激減 沿岸国一致の取り締まり奏功(産経新聞 2008.11.20)
こうした多国間協力が奏功すると同時に、海賊の拠点とされたインドネシア・アチェ州の紛争が終結し、治安が改善されたことも海賊事件激減の背景にある。

ただ、国際協力体制も治安改善も、それぞれが主権国家であり、海軍や沿岸警備隊が機能しているからこそ期待できる。現在のソマリア暫定政府は、自国の海賊を逮捕することも、裁く力もない。


マラッカ海峡での海賊が大幅に減った理由として、アチェ紛争が終結し、犯罪集団の取り締まりが行われ、海賊の拠点が失われた事が大きいのです。海上保安庁の功績も確かに大きいものがありますが、肝心の現地情勢の変化を見過ごしている人が多いのはどうしてなのでしょうか。マラッカ海峡海賊退治の事例を持ち出して「ソマリア沖でも海上保安庁の派遣を!」と主張する人達は、殆ど例外なく二つの事例の現地情勢が全く異なっていることをまるで理解していません。将来的にソマリアの無政府状態が終結すれば、マラッカ海峡の事例のように海賊問題も解決させる事が可能かもしれませんが、現在は違います。

各国は、沿岸当事国ソマリアが無政府状態だから、海上警察では無く海軍を派遣しているのです。
01時04分 | 固定リンク | Comment (138) | 平和 |
2009年04月17日
テポドン騒動ですっかり忘れていましたが、アムネスティ・インターナショナルに問い合わせていた件の回答がありました。ちょうどテポドン発射直前の頃です。

当初はアムネスティ・インターナショナル国際事務局(ロンドン本部)に問い合わせていたのですが、待てど暮らせど返事が無く、仕方が無いので日本事務局へ問い合わせていました。そして日本事務局経由で国際事務局に問い合わせて貰い、ガザ報告書(PDF)にある照明弾とフレシェット弾の件について回答を頂きました。質問内容については基本的に以下の2つの記事と同じ論旨です。

(2009/03/02)ガザで使用されたフレシェット弾について
(2009/03/05)照明弾と白燐弾を混同したアムネスティ報告書

アムネスティがガザ報告書に記載した「120mmフレシェット弾」はこの世に存在しない事、また「M485A2照明弾」の反応剤は白燐ではなく、マグネシウム粉と硝酸ナトリウムである事、以上の点で報告書に間違いがある件について問い合わせました。

その回答メールによると、アムネスティはガザ報告書にあるM485A2照明弾の記述、「These eject a phosphorus canister」の部分について「phosphorus」とは「白燐」の意味で記述したと明言しています。

これにより、scopedog氏が主張していた「phosphorus=光」説は無くなりました。

(2009/03/08)アムネスティを妄信する人による無理矢理な弁護の数々
(2009/03/11)アムネスティを擁護しようと無理矢理に英文解釈を捻じ曲げる人
(2009/03/14)照明弾から発生する熱を無視しようと無理矢理な人
(2009/03/17)誤魔化しと言い逃れに終始するscopedog氏
(2009/03/30)scopedog氏はマグネシウムを"燐光物質"だとでも主張するのだろうか?

結局、以上のやり取りは全部無駄だった事になります。

なおアムネスティの回答メールには、詳しくはこうありました。

> ご質問の件について、国際事務局の担当者に照会したところ、以下のような答えがありました。
>
> - 155mm M485 A2照明弾についてのご質問
>
> 調査団が発見した155mm M485 A2照明弾の弾筒の中から白リンが検出され、また、白リンが
> 燃えた痕跡も見つかったとのことです。

恐らく、着弾したM485A2照明弾の付近に後からM825A1白燐煙幕弾が撃ち込まれ、M485A2照明弾の弾筒に白燐が付着しただけか、もっと単純に発見した弾筒をM825A1とM485A2とで勘違いしたのか、アムネスティは間違えています。



この動画で確認できますが、イスラエル軍はガザ侵攻で夜間にM825A1白燐煙幕弾とM485A2照明弾の両方を同時併用しています。拡散する光の軌跡がM825A1白燐煙幕弾で、パラシュートを開きゆっくり落ちていく強烈な光の光源がM485A2照明弾です。この為、着弾したM485A2にM825A1の白燐が付着する可能性は十分に有り得ます。

現在、アムネスティに対してM485A2照明弾から白燐が検出されたという詳しいデータの提出を求めています。今の所、返答はありません。ガザ報告書にはこのような話は掲載されておらず、アムネスティの公式サイトにもそのような記事は見当たりません。この回答メールで初めてこの話を知りました。どうしてこれまで公になっていなかったのか、それも奇妙な話です。出ていたらその場でツッコミが入っていたでしょうけれど。

なぜ、アムネスティは兵器についてある程度知っている人にチェックして貰わなかったのだろう・・・照明弾の反応剤がマグネシウム粉+硝酸ナトリウムであることは、半ば常識といってよい話なんです。第二次大戦の頃は照明弾の反応剤はアルミニウム粉でした。つまり今も昔も金属粉を燃やして光源とするのが、照明弾という種類の砲弾なんです。

http://www.freepatentsonline.com/4094245.html
http://www.eldoradoengineering.com/mrpp/candle%20specifics.doc
http://uxoinfo.com/blogcfc/client/enclosures/Section15-4_Projos_DraftJune04.pdf

ざっと検索してみてもM485A2照明弾の反応剤がマグネシウム(Mg)と硝酸ナトリウム(NaNO3)であるとする資料は幾つか見付かります。2番目はDOCファイル、3番目はPDFファイルなので注意してください。

「The M485A2 155 mm Illumination Round contains a pyrotechnic charge that provides the bright light. This charge is made up mostly of sodium nitrate and magnesium powder.」

このような内容の資料は見付かりますが、M485A2照明弾の反応剤が「phosphorus=燐」であるとする資料は一切、見付かりません。そのような記述をしているのは今回のアムネスティのガザ報告書だけです。現在、アムネスティからの詳しい検出データ待ちですが、回答が得られたらそのデータを持ってアメリカとイスラエルの軍当局と砲弾製造元に問い合わせてみたいと思います。

なおフレシェット弾の件については以下のような回答を得ました。

> - フレシェット弾についてのご質問
>
> 120ミリで間違いないとのことです。
> イスラエル軍は120ミリ砲の戦車からフレシェット弾を発射しています。
> これについては、エレクトロニック・インティファーダの記事中で、参考になる情報があります。
>
> Israel's military debates use of flechette round
> http://electronicintifada.net/v2/article558.shtml

明らかに間違っています。アムネスティが120mmフレシェット弾の存在の根拠としているエレクトロニック・インティファーダの記事を見れば分かりますが、アムネスティは砲弾の種類を表す「APERS」という単語をフレシェット弾を意味するものと思い込んでしまっています。これは誤りです。「APERS」とは「Anti-Personnel」の略語で「対人」を意味するものでしかなく、対人兵器を表す言葉です。しかしフレシェット弾の「flechette」とはフランス語で「ダーツ(小型の投げ矢)」を意味し、矢のような形状をした兵器でなければなりません。

このエレクトロニック・インティファーダの記事は、2001年5月22日のジェーン・ディフェンス・ウィークリーの記事を紹介する形で「M494 105mm APERS-T round」について詳しく解説されていますが、M494戦車砲弾についてフレシェット弾である事、105mm砲弾である事、種別がAPERS-Tであることが詳しく解説されています。(Tはトレーサー、曳光剤の事)


Israel's military debates use of flechette round : The Electronic Intifada
Israel Military Industries has developed a 120mm APERS round and the more advanced 105mm and 120mm Anti-Personnel, Anti-Materiel (APAM) round, which is intended to defeat targets such as anti-tank teams. Military sources said the APAM has not been used against Palestinian combatants.



アムネスティが勘違いした部分はここです。記事内容の殆どがフレシェット弾である「105mm M494 APERS-T」について語ってある中で、この部分だけ別の砲弾である「120mm APERS round」と「105mm and 120mm Anti-Personnel, Anti-Materiel (APAM) round」について紹介されています。そしてアムネスティは「120mm APERS round」をフレシェット弾であると誤解してしまったのです。

しかし「120mm APERS round」の正体はフレシェット弾ではなく「キャニスター弾」であるM1028散弾の事です。これは丸い散弾を発射する戦車砲弾です。



なおアメリカ国防技術情報センター(DTIC)はM1028散弾の種別を「APERS」 であると記述しています。

[PDF]Performance Assessment of the M1028, 120MM APERS Tank Round - dtic.mil

そして「APAM」については、これは戦車砲から発射するクラスター砲弾です。対人攻撃(Anti-Personnel)ではクラスター子弾を分離し、対物攻撃(Anti-Materiel)では子弾を分離せずに通常の榴弾として起爆する多用途弾で、アンチパーソナルとアンチマテリアルの両方から文字を取って「APAM」という略称としています。105mmと120mmの両方が開発されています。

つまり「120mm APERS round」と「105mm and 120mm APAM round」はフレシェット弾ではありません。

アムネスティが自信を持って出してきた根拠がこの程度・・・どうして報告書を書く時に兵器の専門家に聞いてこなかったんですか? ロンドン本部ならジェーン編集部に直接聞いてくることくらい、出来るでしょう? もう頭を抱えるしかないです・・・フレシェット弾についての認識がこんな有様だとは思いませんでした。「105mmと勘違いしてました」で済ませれば傷は殆ど無かったのに、なんという自滅行為・・・

取り合えずアムネスティには上記の解説を行い、「120mmフレシェット弾で間違いないと断言するなら、物的証拠あるいは砲弾の形式番号を教えて下さい」とメールの返事を出しておきました。今の所、返答はありません。

これまでのやり取りを見る限りアムネスティの調査力、情報分析力は疑わしいものとしか思えません。根拠の無い自信を持って断言してくる様子を見て、専門家に助言を聞くという作業を何もしていないと感じました。

お問い合わせ | アムネスティ・インターナショナル日本
Contact us | Amnesty International

ちゃんと返事をしてくれる分だけ、アムネスティ日本支部の対応は誠実ですが、回答メールを読んだ瞬間に脱力してしまいました。まさかこの程度の認識だったとは、思っていませんでしたよ。
23時32分 | 固定リンク | Comment (125) | 平和 |
2009年04月15日
先月号の「軍事研究」誌の記事「白燐弾の真実」に続き、今月号ではDIME記事が掲載されていました。


Japan Military Review「軍事研究」 : 軍事研究 2009年5月号
マスコミが作る残虐兵器のウソと真実
DIME「高密度不活性金属爆薬」
イスラエルのガザ侵攻で白燐弾と共に残虐兵器として報道された「DIME」爆弾
野木恵一



これは簡易な見出しだけなので詳細は現物で確認をして下さい。



表紙雑誌の紹介
軍事研究2009年5月号

軍事研究2009年5月号

雑誌
出版社: ジャパンミリタリーレビュー
月刊版 (2009/4/10)
ASIN: B0021VNWKG
発売日: 2009/4/10
商品の寸法: 20.8 x 14.8 x 1.5 cm

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内容については、あのノルウェー人のマッズ・ギルバート医師のエピソードもバッチリ紹介されています。今回のガザ侵攻で反戦団体の間でDIME叩きが盛り上がらなかった原因は、この医師の酷い妄言(DIMEは核分裂装置〜)があったからじゃないかなと思ってみたり。視覚的に派手な白燐弾のような印象が無かったせいも大きいでしょうね。

この記事中にDIMEの説明としてこのようなものがあります。

「手の平に収まるくらいの一個の石を投げたら10mや20mは飛ぶだろうが、同じように手の平一杯の砂を思い切り投げても、砂粒は2、3mで地面に落ちるだろう。それと同じことだ。」

これはDIMEのタングステン粉が飛散した後に急速に速度を失っていく様子を例えたものですが、なんだか前回前々回のミサイル迎撃時に出来る破片の話にも説明として応用が出来そうです。
23時58分 | 固定リンク | Comment (69) | 平和 |
2009年03月27日
3月初めに、アムネスティのガザ報告書について色々書きました。その中で報告書に記載された明確な間違いとして、フレシェット弾の件(ガザで使用されたフレシェット弾について)と照明弾の件(照明弾と白燐弾を混同したアムネスティ報告書)を挙げました。

そして暫く後にメールで「砲弾の件は貴方の指摘通りかもしれないが、アムネスティの報告書全体の論旨から見れば枝葉瑣末な話ではないですか?」という意見を頂きました。しかし砲弾のサイズを間違えるのはともかくとして、砲弾の中味を取り違えてしまうのはかなり致命的な話だと思うのですが・・・分かりました、それではアムネスティのガザ報告書について、全体の論旨、その提言の根本的な認識の誤り、そしてこの報告書がどれだけ的外れであるか、簡単に解説します。

話そのものは簡単なのです。この報告書はタイトルと冒頭で言いたい事の肝心な部分が載っているので、先ずはそれに目を通して下さい。


Fuelling conflict: Foreign arms supplies to Israel/Gaza (PDF)
Both Israel and Hamas used weapons supplied from abroad to carry out attacks on civilians. This briefing contains fresh evidence on the munitions used during the three-week conflict in Gaza and southern Israel and includes information on the supplies of arms to all parties to the conflict. It explains why Amnesty International is calling for a cessation of arms supplies to the parties to the conflict and calling on the United Nations to impose a comprehensive arms embargo.


タイトルは「紛争を煽るイスラエルとガザへの外国による武器供給」とあり、続く文章ではアムネスティが紛争当事者への武器供給の停止を求めている事、国連に包括的な武器禁輸措置を取るように求めている事が述べられています。

要するにイスラエルにもハマスにも武器を与えないようにしよう、そうすれば紛争は過熱しない筈だ・・・そういった主張です。そして結論を言わせて貰えれば、まず実行不可能であり、そして仮に実行できたとしても何の効力も発揮しないでしょう。アムネスティのこの提言はするだけ無意味です。特に、仮に苦労して達成できたとしても紛争を解決する役には立たないという意味において、この報告書の意義そのものが問われてしまいます。

報告書はアメリカがイスラエルへ大量の武器を供給している事を非難しています。非難自体は構いませんが、アメリカがイスラエルに武器を売らなければイスラエルは戦争できなくなると思っているなら、完全に誤りです。イスラエルは最新鋭兵器ですら自国内で自力生産が可能です。つまり海外から武器供給が途絶えても、イスラエルにとってそれは軍事行動の停止を意味しません。大規模総力戦をやっている最中ならこれは大きな痛手ですが、ガザ侵攻やレバノン侵攻のような低強度紛争では、さして問題にならないでしょう。

イスラエルがアメリカから大量の武器を買っているのは、安く仕入れられるからです。実質上の援助兵器の譲渡ですが、仮に国連によってイスラエルへの武器輸出を禁止に出来るかというと、拒否権を持つアメリカの存在だけでもはや実現不可能ですし、仮に達成できたとしても、アメリカが資金援助を行い、イスラエルが自力で武器を製造すれば、武器禁輸など何の意味も持たなくなってしまいます。

ハマスについても、主力兵器であるカッサム・ロケット弾は自家生産が可能な簡易な構造です。アムネスティはロケット兵器の原材料の禁輸も訴えていますが、一般的な民生用材料で製作できてしまうので無理です。しかもイラン経由で本格的な軍用ロケット弾であるグラド・ロケット弾も地下トンネルから入り込んでおり、最初から密輸という形態をとっているため、ハマスへの武器供給を止める為に国連ができることはあまりありません。

その為、イスラエルは他国の主権を無視してまで、ガザへの武器密輸を実力で阻止しようとしています。

イスラエル、1月にスーダン空爆か=イランからガザへの武器密輸阻止:時事通信

イラン→スーダン→エジプト→ガザという武器密輸ルートの途中で空爆を行っています。

果たしてアムネスティはこういった現状を把握しているのでしょうか。実現性が乏しい提言を行うだけなら、まだ理解できなくもないです。理想と現実にはギャップがあるのは仕方が無い話です。ですが、仮に実現できても何にも事態が変わらないという提言に、一体何の意味があるのでしょうか?

イスラエルへの武器禁輸を行っても、彼らは自力で武器を生産してしまいます。ハマスも武器を自力生産できますし、外国からの武器入手では最初から密輸しているので、禁輸措置を取った所で状況は特に大きくは変わりません。私には、アムネスティによるこの報告書の提言に何か有用な意味があるとは思えないのです。

・・・とこう書くと、じゃあお前は何か有用な提言が出来るのか、言えもしないのに好き放題言うな、と言われそうなので、一つだけ消極的ですが問題の解決策を提案しておきます。ハマスはヒズボラと違って直接戦闘力はかなり低いので、カッサムやグラドのようなロケット弾さえ何とか出来れば、無理に直接侵攻して掃射する必要性がなくなります。

つまりロケット弾を撃墜してしまえばよいのです。


ロケット弾迎撃のミサイル・システム開発、成功と、イスラエル:CNN
イスラエル国防省は27日、隣国レバノンや境界を接するパレスチナ自治区ガザから撃ち込まれる短距離ロケット弾や砲弾を阻止する迎撃ミサイル・システムの開発に成功したと述べた。

「アイアン・ドーム」と呼ばれるシステムで、短距離ロケット弾を使った実験にも成功したとしている。バラク国防相は、システムの開発成功で飛来するロケット弾の多数の着弾を防ぐことが出来ると強調した。

同システムは、移動式で、全天候条件下、距離約70キロまで対応。開発元の地元企業、Rafael Advanced Defense Systemsによると、空中の標的を数秒内に破壊可能としている。


[PDF] Iron Dome - Rafael Advanced Defense Systems

ただしこの「アイアン・ドーム」は問題の根本的解決にはならないでしょう。この兵器は開発途中に予定された性能を満足に発揮できず、計画中止寸前に追い込まれていた代物で、曲がりなりにも完成に漕ぎ付けたようですが、これでハマスが放ってくるカッサム・ロケット弾やグラド・ロケット弾を完全に無力化するには、まだ程遠い性能です。しかも誘導ミサイルである為、一発の単価は高価なもので、単価が非常に安いロケット弾相手には費用対効果が割に合いません。これがMDならば、高価な弾道ミサイルを相手にするので十分に見合うものですが、「アイアン・ドーム」だけでハマスのロケット弾を全て撃墜しようとするのは、労力的にも資金的にも性能的にも無理があります。

つまり結局の所、迎撃レーザー兵器の完成を待つしかないのでしょう。

戦術高エネルギーレーザー - Wikipedia



アメリカとイスラエルが共同開発するTHEL(Tactical High-Energy Laser)ならば、リアクションタイムが極端に短い短射程ロケット弾の迎撃に申し分無い即応性を発揮し、一射撃辺りの単価も安く、ハマスのロケット弾を完全に無力化できる可能性を秘めています。しかし破壊用レーザー兵器の実用化となると困難を伴うのは当然で、軍内部でも実用化について懐疑的な意見があります。その為、以下のような手堅い兵器も開発中です。「アイアン・ドーム」もこの手堅い迎撃兵器の部類です。

Counter-RAM - Wikipedia



アメリカ軍は既存の技術からバルカン・ファランクスの陸上型「LPWS」を作製し、既にイラクで実戦投入試験が行われています。弾をバラ撒くので市街地に着弾しないように、20mm機関砲弾は自爆機能を有しています。C-RAMは幾つかの種類が提案されており、50mm機関砲弾に弾道修正機能のあるサイドスラスター付き誘導砲弾を使用するものも開発中です。

現在、レーザー兵器を含めて様々な種類の対ロケット弾迎撃システムが開発中であり、もし高確率でロケット弾を阻止できるようになれば、イスラエルはガザへ侵攻する理由がなくなります。
23時45分 | 固定リンク | Comment (412) | 平和 |
2009年03月12日
最近発売された「軍事研究」2009年4月号はご覧になられたでしょうか?



表紙雑誌の紹介
軍事研究2009年4月号

軍事研究2009年4月号

雑誌
出版社: ジャパンミリタリーレビュー
月刊版 (2009/3/10)
ASIN: B001U8CV4Y
発売日: 2009/3/10
商品の寸法: 20.8 x 14.8 x 1.4 cm

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この最新号の58ページに、このような記事があります。



マスコミとネットがつくる超兵器
“シェイク&ベイク”と呼ばれる戦術
「白燐弾」の恐怖と真実
勘違いや放言がネットやメディアで増幅されてトンデモ伝説となってしまうのが昨今の風潮だが、イスラエルのガザ侵攻では白燐弾が“悪魔の超兵器”となってしまった。非人道行為を非難するなら、それは科学とロジックに拠らなければならない。白燐弾の構造と戦術を解説する。

<軍事評論家> 野木恵一



ジャパンミリタリーレビューのブログでも、簡易な見出しが紹介されていますので確認できます。

Japan Military Review「軍事研究」: 軍事研究 2009年4月号

この記事は本当にこの雑誌に掲載されているのです。内容は・・・タイトルと見出しで容易に推測できると思います。

『一匹の妖怪がパレスチナを徘徊している。白燐弾という妖怪が。』

『白燐弾に限ったことではなく、ここ数年マスコミが特定の兵器について、威力や効果を著しく誇大化する誤まった情報を伝え、それがネットで増幅されつつ広まる事例が目立つ。』

『そこで今回は白燐弾に関する誤情報を取上げて、真実を明らかにしたい。』

このような感じで続いていきます。そう、内容は、私がこれまで書いてきた白燐弾の記事と大部分が被っています。私がネット上で白燐弾の真実を明らかにし、野木恵一さんが軍事専門誌で白燐弾の真実を明らかにする。ネット社会とリアル社会の両方で、白燐弾に関する軍事的デマを叩き潰す。それが実現出来ました。私が一人ネットで吼えていたところで、現実の社会への影響力など微々たる物と認識していましたが、もはやそうではありません。リアルで、私の主張に同調してくれる人が現れました。私のやってきた事が、無駄ではなかった事に、報われた思いです。

軍事研究2009年4月号では、p58からマスコミの白燐弾の記事、p59からネットの白燐弾の記事がトンデモ記事として紹介されています。p59〜60には「あ、あの人のサイトの記事だよ」というのがズラズラと並んでいますので、心当たりのある方はチェックしてみて下さい。p60からは白燐弾デマ騒動の発端である、イタリア国営放送RAIの放映したファルージャ戦の話が始まります。RAIがインタビューしたジェフ・エングルハート兵士が出鱈目な証言をした事を暴き、p62からは燐に関する説明、p63からはM825A1白燐弾に関する説明です。p64からは「シェイク&ベイク」(燻り出し)戦術について、p66では科学的な誤りについての説明で、筆者自身が白燐弾の煙に捲かれた経験を踏まえながら、デマを暴いていきます。p67では国際法上の問題について語り、白燐弾が化学兵器に分類されず、焼夷兵器の定義からも除外される事を述べています。そしてp69で終わりです。

野木恵一氏は白燐弾のシェイク&ベイク戦術について、「パニックを起こさせる心理兵器として使われている」のではないかとしています。実際に煙幕弾をそういった目的で使う事については、白燐弾が騒がれだす2005年11月8日(RAIの白燐弾特集放送)以前に、マスコミ自身も認識しています。

2発の弾痕を確認 サマワ陸自宿営地砲撃 : 共同通信 2004/04/08
>発煙弾については、殺傷力が弱いため部隊を混乱させる狙いだった可能性がある。

サマワでの自衛隊攻撃に使われたこの発煙弾は黄燐(白燐)です。マスコミもおかしな先入観が無ければ、正しい認識が出来ていたのかもしれませんね。そしてシェイク&ベイクの項目の最後で、野木恵一氏はこう述べています。

『パニックを起こさせる心理兵器として使われているのであれば、相手が兵器に恐怖心を抱くほどに効果的になる。イスラエル軍の白燐弾使用を人道に反するとして糾弾し、その残虐性を言い立てている人々は、結果的には白燐弾の効果を過大に宣伝して、イスラエル軍の燻り出し戦術を助けているとの皮肉もいえそうだ。』

もしそうだとすると、白燐弾は見た目は派手だが、実は榴弾などよりも遥かに殺傷力が低いという事実を宣伝し、白燐弾は簡単な防御策で無効化できる(M825A1のような空中炸裂ならば貫通力は皆無)ので、これをパレスチナ側に徹底すれば、イスラエル軍の意図を挫く事が出来るのではないでしょうか。正しい知識を普及させる事こそが、最善なのではないか・・・そう思います。

そして野木恵一氏は最後にこう結んでいます。

『意図的にデマを流すのは問題外だが、善意や正義に立脚したつもりで誤りを流布させる行為も、長い目で見れば反戦運動人道運動にとってはマイナスではないだろうか。』
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2009年03月05日
国際人権擁護団体アムネスティ・インターナショナルは、国連との協議資格を持つ有力なNGO(非政府組織)です。その為に発言や報告書にはそれなりに重みがある筈なのですが、今回のガザ紛争に関する報告書を読み進めると、幾つかのおかしな記述が散見され、あまり良い仕事をしているようには見えません。

前回の記事「ガザで使用されたフレシェット弾について」でも指摘しましたが、アムネスティ報告書にはこの世に存在しない120mmフレシェット弾なるものが記載されてしまっています。ただこれについては105mmフレシェット弾との混同ですので、数値をうっかり間違えただけとイージーミスとして主張出来なくもないですが、一方でそういう言い訳が通用しない致命的な間違いも見付かっています。

(PDF) Fuelling conflict: Foreign arms supplies to Israel/Gaza | Amnesty International

PDFファイルの報告書9ページにある、照明弾に関する項目「Illuminating artillery shells」がこうなっています。



Amnesty International delegates encountered 155mm M485 A2 illuminating shells used by the IDF which had landed in built up residential areas in Gaza. These eject a phosphorus canister, which floats down under a parachute. At least three of these carrier shells were found which had landed in people’s homes. These shells are yellow and one had the following markings: TZ 1-81 155-M 485 A2. TZ is a known marking on Israeli ammunition.


アムネスティ報告書は、155mmM485A2照明弾の事をこう説明しています。

「These eject a phosphorus canister, which floats down under a parachute.」

「phosphorus = 燐」、つまりアムネスティは照明弾を白燐弾扱いしているのですが、間違っています。M485A2照明弾の反応薬剤は「sodium nitrate」 と「magnesium powder」、つまり硝酸ナトリウムとマグネシウム粉です。この組み合わせは現代で最も一般的な照明剤であり、M485A2は三個の子弾を内蔵し、それぞれが強烈な光を出しながらパラシュートによってゆっくりと降下し、周囲を照らし続けます。


照明弾

照明弾
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2009年03月02日
フレシェット弾という武器があります。英語で書くと「flechette」で、矢弾の事を指します。1発単体で発射する場合もあれば、1発の弾の中に多数を詰め込んでいるものもあり、発射形態もライフル弾や散弾銃のシェル、大砲の砲弾や航空爆弾など様々な方式があります。1発単体で発射するタイプは貫通力を重視したもので、1発の砲弾に多数のフレシェット弾を詰め込んだタイプは、榴散弾(弾子は球形)の一種の変化形として扱われます。フレシェット1発あたりを大型化すれば装甲目標にも通用しますし、小型のものは対人専用になります。

戦車砲弾の対装甲用APFSDSも矢型弾で、広義の意味ではフレシェット弾の一種ですが、一般的にはフレシェット弾とは呼びません。航空爆弾やライフル弾で使用されるものは一時期出現しましたが今は廃れており、現在使われているフレシェット弾は散弾タイプで、戦車砲の砲弾、航空機用ロケット弾の弾頭、散弾銃のシェルで存在しています。


ガザ攻撃 『フレシェット弾使用』 人権団体、戦争犯罪と非難:東京新聞
【ロンドン=松井学】国際人権団体、アムネスティ・インターナショナルは二十三日、イスラエル軍のパレスチナ自治区ガザへの攻撃で非人道的な兵器と指摘される「白リン弾」や「フレシェット弾」を使っていたとする報告書を公表した。アムネスティは、一般住民が多い市街地での使用は「戦争犯罪」だと非難、国連安全保障理事会に速やかな調査を求めている。

報告は、イスラエル軍と、イスラム原理主義組織ハマスのいずれもが、外国製の兵器で市街地を攻撃したことを強く批判し、国連が兵器の禁輸措置を双方に課すことも求めた。

アムネスティは、イスラエル軍は白リン弾のほか、砲弾がさく裂する際に無数のクギ状の矢が飛び出す対人殺傷兵器フレシェット弾を使ったと報告。兵器の大半は米国から輸入されたと結論づけた。

イスラエル軍は先月、白リン弾の使用を認め、独自に調査を行うと発表しているが、戦争犯罪との批判には「兵器は国際法に従って使用している」と反論している。


ここでアムネスティが非難しているフレシェット弾は、戦車砲で発射するタイプの散弾型フレシェット砲弾を指します。砲弾の中に多数のフレシェット弾子が詰まっており、発射後に時限信管を用いて空中炸裂し、フレシェット弾子を撒き散らす対人兵器です。

アムネスティはフレシェット弾を非人道兵器と非難していますが、国際法に違反しない兵器である事も確かで、それはアムネスティ自身も認めています。その上で残虐兵器だと非難しているのですが・・・実はアムネスティを含め幾つかの団体はフレシェット弾の事を何年も前から、私の知る限りでは10年以上前から、恐らくはもっと以前から非難しているのですが、地雷廃絶運動やクラスター爆弾廃絶運動のように国際世論を喚起する事が全く出来ず、無視されているのが現状です。

どうして無視されているのかと言うと、フレシェット弾は大して効果的では無く、使い難くて、どうせ廃れゆく砲弾であるからです。大砲用としては一時期生産されましたが、もう既に生産されておらず、今ある砲弾の在庫が尽きれば消えて無くなります。簡単に言うと105mm戦車砲用フレシェット弾は存在しますが、120mm戦車砲用フレシェット弾は存在しません。105mm戦車砲は第二世代戦車で一般的な戦車砲で、現行の第三世代戦車は120mm戦車砲を搭載しています。つまりフレシェット弾は120mm戦車砲用には新たに開発されず、対人用にはフレシェット弾以外の新型砲弾を各国が開発中で、一部は既に実用化済みです。

アムネスティは報告書の中で、フレシェット弾は120mm砲から発射されるとしていますが、このサイズのものは存在しません。この事については現役軍事ライターの某氏とも話をしましたが、「120mmのフレシェット弾は聞いたことがないですね」と、アムネスティの報告に疑問を呈されていました。

(PDF) Fuelling conflict: Foreign arms supplies to Israel/Gaza | Amnesty International

今回のアムネスティ報告書のPDFファイルにはフレシェット弾について「120mm shells」と明記されてしまっています。ですが検索してみれば分かりますが、フレシェット弾の戦車砲弾タイプは105mm砲弾しか見当たらない事がすぐに分かる筈です。細かいようですが、この事は重大な意味を持ちます。既に述べたとおり、120mmタイプが存在しないという事は、戦車砲弾用には新たに生産されておらず、既に生産が停止済みの種類の砲弾であるという事を意味しているからです。

そしてこのアムネスティの報告書のフレシェット弾に関する部分の最後には、このように書かれています。

「The weapon is not regarded as reliable or effective and gunners have a difficult time in aiming this properly."」

フレシェット弾は有効な兵器とは見なされておらず、照準設定に時間が掛かって面倒だ、と記載されているのです。これは時限信管の調整が面倒で使い難い兵器だと見なされているのです。

威力面についても問題があります。戦車砲用の105mmフレシェット弾M494 APERS-Tは、細長い矢弾は空気抵抗が小さく貫通力が高い事を利用し、弾子1発あたりを非常に軽く設定し、代わりに沢山の数を詰め込んで弾子密度を上げようとしました。しかし1発が僅か0.8グラムしかないそれはあまりにも軽すぎて、少し距離を飛べば威力が激減し、ちょっとした遮蔽物で防がれてしまい、完全に開けた野外でしかマトモに運用できない代物となっています。問題無く抜けるとしたら木の葉くらいで、木の幹や枝に当たれば威力を失ってしまいます。

また効果範囲は起爆後の弾子の最大有効射程が約300m、これが円錐状に広がって、円錐状の底部が約100mの範囲で広がります。つまり小さな角度で飛散していくわけで、これは塹壕や蛸壺に隠れた敵兵には全く効果が無いことを意味します。市街戦で言うなら建造物の陰に隠れた場合でも同じです。

この「飛散範囲の角度が小さい」という現象は、榴散弾でも見られますが、尾部の羽根で姿勢を安定させるフレシェット弾はより飛散角度が小さく、結果として曲射砲である榴弾砲にはフレシェット弾は殆ど普及しなかった理由(105mm榴弾砲用M546 APERS-Tが有るぐらい)でもあります。榴散弾は一時期に榴弾砲で広く使用されていましたが、ある時期を境に急速に廃れて、榴弾が全盛の時代が到来します。それは野戦で塹壕が活用され始めた時期です。榴散弾は普仏戦争のあたりまでは野戦砲の主力砲弾として使用されていました。この時の戦争は歩兵が隊列を組んで前進し、陣地も暴露状態であった為に、散弾効果のみで通用したのですが、日露戦争で強固な要塞を攻略するには大口径榴弾の直撃が必要である事が分かり、そして第一次世界大戦で塹壕線が築かれると、榴弾の直撃、あるいは榴弾の破片が効果的であると判明し、榴散弾は廃れていきます。

塹壕に隠れた敵を攻撃するには、当然ですが真上からの攻撃が必要になります。榴弾を直撃させれば問答無用で破壊できますが、それでは命中率が悪いので、地表炸裂は上部に蓋がある強固な陣地に使用し、無蓋の塹壕については砲弾の空中炸裂によって広範囲に真下に打撃を与えます。これを曳下射撃と言うのですが、これには榴散弾よりも榴弾の方が向いていました。榴散弾の内蔵炸薬は弾子を飛び散らせる為のもので量が少なく、弾殻を大きく破壊する力には欠けています。弾子を飛び散らせる速度も遅く、この為に弾子は砲弾自体の終末速度が大きく影響し、弾子の飛散角度は前方寄りの小さな角度に限定されますが、榴弾は大量の炸薬によって弾殻そのものを爆散させて破片とします。静止状態ならば爆風破片は球形状に広がっていきますが(正確には弾殻の薄い側面方向に爆風が伸びる為に素直な球形状とはならない)、破片の飛散速度は速く、これに砲弾自体の終末速度が加わって、飛散破片は大きな角度の範囲で広がっていきます。

つまり破片が飛散する角度の大きな榴弾は、真下の方向に打撃を与えやすく、弾子の飛散角度の小さな榴散弾は、塹壕攻撃に向いていませんでした。榴散弾で効果的な曳下射撃を行う為には、起爆前の砲弾自体の突入角度を大きくするしかありません。大角度で砲弾を発射すれば大角度で落下していきます。しかしあまり大きな角度で砲弾を発射すれば射程が短くなってしまいますし、前述のように榴散弾の弾子散布パターンは小さな角度の円錐状なので、砲弾自体を急な対地角度で使用する事は制圧面積の大幅な減少を招きます。90度の角度で真円状、角度が浅くなるほど大きな楕円形状で制圧面積が増大していきます。そもそも榴散弾とは浅い着弾角度で使用すべき砲弾で有り、曲射砲には向いていない種類の砲弾だったのです。




この動画はPhunで曳下射撃を表しています。UP主さんは「どちらかというと榴霰弾かな」と説明されていますが、実際の榴散弾よりはかなり大きな角度の弾子散布パターンです。

散弾タイプのフレシェット弾は、榴散弾と基本的な概念は一緒です。弾子の形状を工夫しているのが違いで、本質的な用途には変わりがありません。そして既に述べたとおり、戦場では榴散弾は廃れ、同様に散弾型フレシェット弾も廃れつつあります。戦車砲弾用はもう消えていく運命にあり、航空機用ロケット弾の一部や、警官が使う散弾銃(ボディアーマー貫通用フレシェット弾)などの一部の用途で残っていくばかりとなっています。

しかし冷戦終結後の現代では、大規模機甲師団の激突よりも対テロ戦闘、治安維持で戦車の対人戦闘が重要視され、新たな戦車砲弾用の対人攻撃弾が開発されています。フレシェット弾は効果的では無いと判明したため、120mm戦車砲弾用に新たに開発されたM1028キャニスター弾は、対人散弾へと回帰しました。時限信管は組み込まず、砲口から飛び出た直後から飛散し始めるショットガンタイプの砲弾で、1発あたり約10グラムのタングステン製ボール弾を約1100発内蔵しています。




ただしこの砲弾は対テロ戦争を意識したものというよりは、朝鮮戦争で中国軍の取った人海戦術を意識したもので、1994年の朝鮮半島核危機の数年後に在韓米軍方面から開発要求が出されています。後に105mm戦車砲弾用に同種のM1040キャニスター弾が開発され、ストライカー装甲車の機動砲タイプに搭載され、イラクに送り込まれました。ライフル弾よりも重いタングステン製ボール弾子の威力は大きく、近距離ならばブロック塀も破壊できる打撃力を有しています。また信管の調整が必要無く、接近戦での即応性にも優れています。イスラエルはM1028とM1040の両方を所有しており、更にキャニスター弾子を非致死性スタン弾に置き換えた低致死性砲弾を開発中です。

またフランスはノルウェーと共同開発で戦車砲弾用にHE弾(通常榴弾)を開発、ルクレール戦車に装備しています。西側陣営では、HEAT弾が出現してから戦車砲弾用にHE弾は見られなくなった時期がありましたが、再び脚光を浴びて復活しつつあります。

ドイツやアメリカでは空中炸裂させる際の時限信管へのデータ入力を瞬時に行える砲弾を開発しています。レーザー測遠器のデータから目標との距離を算出し、時限信管の起爆タイミングの数値を瞬時に計算し、砲弾の信管へ自動で入力を行い、即応性を高めています。この砲弾は空中炸裂だけでなく、着発炸裂、遅延炸裂などの数種類の起爆モードを選べる多機能弾として開発されています。アメリカで開発中の物は120mm戦車砲弾の「XM1069 LOS-MP(Line of Sight Multi-Purpose)」と呼ばれる多目的榴弾で、前述のM1028キャニスター弾が果たす役割も取り込んでおり、このLOS-MP弾が完成すればM1028キャニスター弾は必要無くなる予定です。

そしてイスラエルでは戦車砲弾用のクラスター砲弾を開発しています。APAM(Anti-Personnel/Anti-Materiel)は6つの子弾を内蔵しており、空中炸裂、着発炸裂、遅延炸裂の三通りの起爆モードを選べ、着発と遅延では子弾を撒かずにそのまま通常榴弾として機能します。最初に開発を終えた105mmタイプでは時限信管の設定は手動入力でしたが、開発中の120mmタイプでは自動入力になっています。

このように、対人用には新たな砲弾が開発されており、戦車砲弾用フレシェット弾は時代遅れの遺物と化しつつあります。フレシェット弾の時限信管も全自動入力にすればもう少し使い勝手が良くなりそうですが、それを行う動きもありません。新しい技術を得て榴弾と散弾が復活し、フレシェット弾は消え去りつつあります。在庫のフレシェット弾は古いもので、もう暫くすれば使用できなくなります。

その時、アムネスティを始め各団体は、新たな種類の砲弾を非難するのでしょう。クラスター砲弾のAPAMあたりは狙われそうですし、キャニスター弾も難癖を付けられる事になるでしょう。APAMもキャニスター弾も既に実戦に投入済みですが、彼らはまだ気付いていません。

一つ、彼らに問いたいのですが、通常榴弾は問題にせずに何か特殊そうな砲弾ばかり問題視する事には何か意味があるのですか? 私には、通常榴弾の進化形であるXM1069LOS-MP弾による、FCSと連動した時限信管全自動数値入力によるエアバースト砲撃の方が、最も効果的な対人砲撃だと思えます。APAMはクラスターとはいっても子弾は僅か6発に過ぎず、単弾頭との差はあまりありません。アメリカ軍はLOS-MP弾が完成すればキャニスター弾はもう生産しないでしょうから、未来の戦場で使われるであろう対人攻撃用の戦車用砲弾は、これが主流になる事はほぼ間違いないでしょう。その時、榴弾を問題視してこなかった人達は、基本的な構造が榴弾であるLOS-MP弾をどう認識するのでしょうか?

おそるべき残虐兵器フレシェット:アムネスティ・スタッフブログ

非難対象の兵器の実際の能力を無視あるいは無理やり誇張して残虐兵器とレッテルを貼るのは簡単ですが、そんなことばかりしていると、そういった手法では非難できない新兵器(それも殺傷効果が高い)が出て来た場合、何も言えなくなってしまいます。

兵器そのものが違法なのでは無く、使用手段が違法なのだと言うのであれば、兵器単体を残虐兵器と糾弾するやり方はどうかと思います。それが本当に残虐であるなら良いのですが、何でもかんでも安易に残虐兵器呼ばわりする行為は止めて、慎重に対象を検証して欲しいものです。

例えば反戦平和団体が良く引用するフレシェット弾の解説図があるのですが、大きな間違いがあります。


ガーディアンによるフレシェット弾解説図

BBCによるフレシェット弾解説図


上の二つの画像は、前者が英紙ガーディアンの記事、後者が英BBCニュースの記事からです。二つとも良く反戦平和団体のサイトで引用されていますが、明確な間違いが幾つも散見されます。まずイスラエル軍が使用しているフレシェット弾は戦車砲用のM494であり、榴弾砲用のM546ではありません。またM494のフレシェット弾子は1発0.8グラムで5000個内蔵、M546の弾子は1発0.5グラムで8000個内蔵です。ガーディアンもBBCもM546を解説している時点で間違いですし、M546の弾子を5000発としたBBCはM546の解説としても間違っています。両社ともM494とM546を混同しています。二つの図を並べて紹介しているサイトも多いのですが、M546を解説しているのに片方が8000発、片方が5000発という時点でおかしいと思わなかったのでしょうか。ガーディアンはFASの「M546 APERS-T 105-mm」の記事を参考にしているようですが、解釈を間違えています。FASのM546の記事にある左側の解説図には「105mm HOWITZER」と明記されています。「HOWITZER」、ハウザー(ホイツァー)とは、榴弾砲の事を意味します。イスラエル軍が使用した戦車砲弾用とは別物なんです。

またBBCとガーディアンの二つの図は共通の間違いがあります。レシェフ社のオメガM127電子時限信管の位置説明がおかしいです。M127信管は弾頭部にあり、弾底を信管としている両図は間違いです。弾底部のその部分は、曳光剤が詰まっている部分です。良く考えてみれば分かる事です。APERS-TのTとはトレーサー(Tracer)、つまり曳光剤の事を指すのですから。


オメガ127


レシェフ社の公式サイトから「Reshef - Products - OMEGA M127 Electronic Time Distance」を見れば分かりますがこれは弾頭に装着する信管です。当たり前の話ですがタイマーを調整する時にはこの位置に無いと無理です。弾底部はその後ろに薬莢が装着されているのですから、どうやって弄るのですか?(レシェフ社のサイトも、M127をちゃんとTank fuseの項目に入れておきながらRocket fuseと間違った記述をしているウッカリした個所もありますが、全体の説明で間違いは無いです)

イギリスの著名メディアが揃って間違えているというのも凄い話です。これを鵜呑みにしてしまった反戦平和団体を責めるのは酷かもしれませんが、今後は注意して資料を集めて下さい。とはいえ私がこの件に気付いたのも、今回の記事を書く途中で前述の現役軍事ライター氏と情報交換している最中にようやくという有様で、「そうだ信管の生産メーカーのサイトを見ればハッキリするよ」と思い立つに至るまでは結構な時間が掛かりました。しかしマスコミならそのくらいの仕事はしてほしいです。そうでないと大勢の人が勘違いしてしまうのですから。
06時00分 | 固定リンク | Comment (109) | 平和 |
2009年02月25日
2007年、イスラエル空軍の戦闘爆撃機がシリアに侵入、シリア東部のアル-キバル(Al-Kibar)近郊の核施設を空爆し破壊した事件がありました。この施設は北朝鮮の核施設に酷似しており、北朝鮮が支援していたものと推測されていますが、シリアは核施設の存在自体を否認していました。しかし・・・


微量ウラン再検出 シリア空爆跡 原子炉疑惑濃く IAEA報告:北海道新聞 2008年2月21日
北朝鮮の支援で秘密裏に原子炉建設中だったとされるシリア北部の施設をイスラエルが空爆した問題で、国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長は十九日、現地調査などで新たに微量の人工ウランを検出したとする報告書をIAEA理事国に配布した。

シリア側は先に検出された人工ウランに関し「イスラエルのミサイル(劣化ウラン弾)に含まれていた」と主張してきたが、報告書は今回検出されたウランも含め、「ミサイル爆撃による可能性は低い」とし、原子炉建設疑惑が一層深まったことを明らかにした。


現地調査を行ったIAEAはシリアの主張する劣化ウラン弾説を支持せず、核施設が実際に存在していた可能性が高い事を報告しています。

この事件について、国際社会の反応が低く、イスラエルを非難する論調が殆ど見られません。反戦平和団体の間でもそれは同様です。アラブ諸国ですら黙っています。しかしそれで本当に良いのですか? 私個人の感想を言わせて貰えば、北朝鮮の支援を受けた核施設を破壊した行為は肯定します。シリアの核施設を経て核物質や製造データが北朝鮮に還元される可能性があるからです。ですが、このイスラエルが行った作戦は国際法に照らし合せれば非難されても仕方が無い話です。1981年にイスラエルが実行したイラク・オシラク原子炉空爆作戦では、国際的に非難の声は非常に大きなものがありました。そして2007年のシリア核施設空爆は、オシラク空爆と全く同様の意味を持つ筈なのに、何故か反応に落差があります。これはどうしてでしょうか。

もし将来、イスラエル軍がイランの核施設に対して空爆を仕掛けたら、大きな非難の声が出て来ることは容易に想像できます。ですがシリアの時の反応と違う事を、どう説明すればよいのでしょうか。シリア核施設空爆の件についての反応の低さは「他国の核施設を空爆で破壊しても大して非難されない」と、イスラエルにメッセージを送っているに等しい事に、誰も気付いていないのでしょうか。気付いた上でそれを黙認しているなら別に構いませんが、それはイランの核施設が空爆された時にも同様に発揮されなければ、ダブルスタンダードと成りかねない話です。

国際的な反応が低い理由、アラブ諸国ですら黙っているのは、何らかの高度な政治的判断が働いたものと思われますが、国家とは関係の無い民間団体までもが黙する理由は特に無い筈なのですが・・・
23時03分 | 固定リンク | Comment (76) | 平和 |
2009年02月24日
現在イラクでは治安が回復し、小康状態に落ち着いていますが、その1年前の期間は苛烈なテロ攻撃が頻発していました。中でも特筆すべきは、毒ガスを用いた自爆テロでした。使用されたのは塩素ガス。第一次世界大戦でも常用された毒ガスです。


また塩素ガステロ  スンニ派市民27人が死亡 イラク | 朝日新聞 2007年4月7日
イラク中部ラマディ近郊で6日、塩素ガスを積んだトラックによる自爆テロがあり、AP通信によると少なくとも27人が死亡、30人以上が入院した。検問所に突進してくるトラックに警官が銃撃したところ、検問所の手前約300メートルで爆発したという。周辺に市場や住宅があったため、多くの市民が犠牲になった。

塩素ガスによるテロは今年1月28日以降、9件目。現地では、国際テロ組織アルカイダ系過激派への反発から、スンニ派の部族勢力が政府治安部隊に合流している。この日のテロも、アルカイダ系による部族勢力に対する攻撃とみられている。


イラクで毒ガステロを考案したのはアルカイダ系テロリスト・グループで、当初は地元のスンニ派武装勢力と共闘していました。しかしアルカイダのやり方についていけなくなったスンニ派が離反し、アメリカ側のスンニ派取り込みが始まり、繋がりを切られたアルカイダはスンニ派への報復攻撃を行いましたが、それは結果としてスンニ派を更にアメリカ側へ追いやってしまい、イラク全体の治安改善へと繋がっていきます。一時期頻発していた毒ガステロも、今では見受けられません。

ただ不思議だったのは、この毒ガス攻撃を非難する反戦平和運動は殆ど見受けられなかった、という事でしょうか。

なお2004年のファルージャでもこのような物が・・・


猛毒ミサイルや自爆兵配備 武装勢力側も開戦準備 | 共同通信 2004/11/07
【バグダッド7日共同】米国、イラク両国部隊が近く制圧作戦に踏み切るイラク中部ファルージャで、武装勢力側は多数の自動車爆弾や自爆志願兵、猛毒の化学物質を取り付けたミサイルなどを既に配置し、開戦に備えている。7日付の英紙タイムズが伝えた。

欧米メディアで唯一、ファルージャ市内で取材を続ける同紙記者が、武装勢力司令官の話として伝えたところによると、市内各地には爆発物を積んだ車118台が配置され、米兵らが侵入すると爆発するように道路や建物にも爆薬を仕掛けた。米軍機などの空爆に対抗するため、地対空ミサイルも用意された。  外国出身の自爆攻撃志願兵約300人もファルージャ入り。イラク各地で雇われた狙撃兵も配置についている。


・猛毒の化学物質を取り付けたミサイル

これはシアン化合物を使用していたとされています。塩素ガスもそうですが、これもあからさまな違法兵器であるにも関わらず、反戦平和団体から非難の声は殆ど上がりませんでした。

もしも非難の声が殆ど無かった理由が、抵抗勢力・反権力だから大目に見よう、というのでしたら、オウム真理教の毒ガスについてもそういう認識なのでしょうか。アルカイダとオウム真理教は何がどう違うのでしょうか。毒ガスを使った時点で同類だ、とは考えられないのでしょうか。毒ガスを使って自国民を殺すような集団を、レジスタンス扱いしてよいものでしょうか。

目の前に明らかな違法兵器を使用した集団が居るにも関わらず、これを放置し、見て見ぬ振りをして、一方で米軍やイスラエル軍の使用する兵器(現行の国際法では違反にならない)ばかり問題視するのは、果たして本当の意味での「反戦平和」と言えるのでしょうか?
23時57分 | 固定リンク | Comment (204) | 平和 |
2009年02月19日
前回の記事の90式改さんのコメントについて補足説明をしておきます。第一次世界大戦で地中海に派遣された日本海軍の駆逐艦に関するエピソードです。


2月6日はブログの日? - 軍事評論家=佐藤守のブログ日記
ちなみに駆逐艦「榊」が「魚雷の直撃を受け」たと山口記者は書いているが、私が聞いた話では、船団に向かって走る魚雷の航跡を発見した「榊」は、間に合わないと見て「艦ごと魚雷に体当たりをした」のが真実だという。この「わが身を省みない勇敢な」行為を見ていた船団が感謝しなかったはずはない。「武士道」の国から来た軍隊を思い知ったに違いないからである。

英国出身の作家・C・W・ニコル氏は「海自がインド洋に派遣されているが、派遣の是非を論じる前に世界が称賛したこんなに勇敢で誇り高い日本人がいたという事実をもっと学んで欲しい」と言っているそうだが、肝心要の日本政府が、未だに「村山談話」を踏襲(とうしゅう)しているようでは、自衛隊員はおろか、国民にも誇りと勇気が持てるはずはない。


佐藤元空将が「私が聞いた話」としている部分の正体は、扶桑社刊「新しい歴史教科書」に記載されている明確な間違い箇所です。意図的な捏造と思われても仕方の無いほど、事実を捻じ曲げて美談に仕立て上げた個所であり、2001年に「新しい歴史教科書」が初めて世に出た際に、真っ先にツッコミが入っている筈なのですが・・・


『中学社会 新しい歴史教科書』2001年4月検定合格版(扶桑社刊)244〜245ページ
1917(大正6)年になって、ドイツの潜水艦が商船を警告もなく無制限に攻撃する作戦を開始すると、その暴挙にアメリカは参戦、日本は駆逐艦隊を地中海に派遣した。

地中海での作戦中、ドイツ潜水艦から魚雷が発射された。その魚雷の発見が一瞬、遅れたときに、日本駆逐艦は連合軍船舶の前に全速で突入して盾となり、撃沈されて責務を果たした。犠牲になった日本海軍将兵の霊は、今もマルタ島の墓地に眠っている。


まず日本海軍地中海派遣艦隊(第二特務艦隊)は、1隻の戦没艦も出しておらず、駆逐艦『榊』が魚雷攻撃を受け大破したのが最大の損害ですが、『榊』は艦首と艦橋を吹き飛ばされながらも何とか帰還しています。故に撃沈の事実はありません。

しかも被雷時、『榊』は護衛作戦を終えた後の帰還中であり、僚艦『松』と2隻のみで行動しています。守るべき船団など存在していませんでした。連合軍船舶の盾となったという美談は有り得ません。

そして『榊』を攻撃したのはオーストリア=ハンガリー二重帝国の潜水艦『U27』です。ドイツ潜水艦ではありません。

戦闘詳細は江戸屋敷01「駆逐艦榊の被雷」をご覧ください。また失われたオーストリア・ハンガリー二重帝国海軍 : 「ウィーン軍事史博物館」見学・その6では、『U27』の縦断面模型の写真が置いてあります。


・・・「新しい歴史教科書」の駆逐艦『榊』に関する記述は、歴史的事実を捻じ曲げて美談に仕立て上げた、悪質な捏造です。そしてそれは何年も前に指摘されて、もうとっくに終わっていた話だとばかり思っていましたが・・・しかも佐藤氏はC.W.ニコル氏を引き合いに出していますが、そのC.W.ニコル氏が編集に携わった「日本海軍地中海遠征記―若き海軍主計中尉の見た第一次世界大戦」(著者・片岡覚太郎、河出書房新社)にも、駆逐艦『榊』は被雷時に船団護衛中では無かった事が明記されているのです。片岡覺太郎氏(最終階級は中将)は駆逐艦『榊』の僚艦『松』の乗組員で、これは体験手記であり事実が書かれてあります。日本海軍が1938年に纏めた「近世帝国海軍史要」でも『榊』と『松』は護衛作戦を終えた後の帰還中に、2隻でいる時に、潜水艦による襲撃を受けた事が記載されています。

この史実と全く異なる駆逐艦『榊』の美談捏造は、「新しい歴史教科書」以前には見受けられず、デマの元ネタの根源は「新しい歴史教科書」です。元空将がこんなものをあっさり信じ込まれては非常に困ります。「私が聞いた話」で終わらず、ちゃんと確認してください。C.W.ニコル氏のコメントの都合の良い部分だけ抜き出さず、そのコメントが記載されている本を全部読んでいれば、避けられていた事態の筈です。

自衛隊員や国民に誇りと勇気を持てと仰られるのは結構ですが、嘘と虚飾に塗れた誇りなど必要ありません。
01時49分 | 固定リンク | Comment (158) | 平和 |
2009年02月13日
まず最初に説明しておきますが、黄燐(黄リン)とは白燐(白リン)に不純物が混じったもの(白燐は徐々に赤燐へ変化していく為、表面に赤燐の皮膜が出来る。これで白く見えず、黄燐と呼ばれる場合がある)で、基本的には同じものと扱ってよいです。


2発の弾痕を確認 サマワ陸自宿営地砲撃 : 共同通信 2004/04/08
【サマワ8日共同】イラク南部サマワの陸上自衛隊宿営地を狙ったとみられる砲撃で、派遣部隊は8日、宿営地北側の運河を挟んで2発の弾痕を相次いで確認した。砲弾は8センチ程度で、1発はりゅう弾、もう1発は黄リン発煙弾とみられる。  

政府は同日、部隊を狙った計画的な攻撃とほぼ断定した。地元警察当局によると、砲弾攻撃直前、宿営地付近で不審な小型車が目撃され、発車後間もなく爆発音がした。防衛庁によると、弾痕は宿営地近くの運河を挟んで、りゅう弾が宿営地の北東約1キロ、発煙弾が北東数百メートルの地点で発見された。宿営地の北約3キロでは、迫撃砲の一部や砲弾1発が入った弾薬箱が放置されているのが見つかった。砲弾の種類は不明。

発煙弾が着弾したとみられる場所には、半径40−60センチにわたって地面が焦げ、燃えた黄リンが残留していた。発煙弾については、殺傷力が弱いため部隊を混乱させる狙いだった可能性がある。


「砲弾は8センチ程度で、1発はりゅう弾、もう1発は黄リン発煙弾とみられる。」

「発煙弾については、殺傷力が弱いため部隊を混乱させる狙いだった可能性がある。」


サマワで使用されたのは、旧ソ連製の82mm迫撃砲から発射された迫撃砲弾です。白燐弾(黄燐弾)がファルージャの件で騒がれだす以前では、マスコミの白燐弾に対する認識は、このようなものだったのですね。実際に殺傷力は弱いのですから、正しい認識です。しかしそれが何故かアメリカ軍やイスラエル軍が使用すると白燐弾は「悪魔の兵器」呼ばわりされてしまいます。この豹変振りは、幾らなんでもおかしいでしょう?

イスラエル軍がガザで白リン弾。 悪魔の兵器の実像は : 東京新聞

・自衛隊が狙われたら「殺傷力が弱い白リン発煙弾」
・米軍やIDFが使ったら「悪魔の殺戮兵器、白リン弾」

これでは冷戦時代の、東西両陣営の核兵器に対するダブルスタンダードなロジックと、何ら変わりがありません。

・アメリカの核兵器は汚い核である。
・ソ連(中国)の核兵器は綺麗な核である。

何十年経っても進歩の無い人達としか、言いようが無いです・・・
20時34分 | 固定リンク | Comment (164) | 平和 |
2009年02月09日
2月7日の記事で紹介した「ガザにいるノルウェー人医師の残虐兵器に関する証言をデマであるとICBUWが認定」で、ICBUW(ウラン兵器禁止を求める国際連合)がマッズ・ギルバート医師(Dr Mads Gilbert)の証言を否定した事をお伝えしましたが、Youtube動画でカットされた医師の問題証言部分の詳細が分かりました。

pippoさんという方の紹介で、問題発言箇所を丸ごと掲載した上、日本語字幕まで付けている親切なサイトを教えて頂きました。「デモクラシー・ナウ!(Democracy Now!)」という北米の非営利独立系ニュース番組の日本語サイトです。日本語字幕付きというのは大変有り難いです。

イスラエルは白リン弾の違法使用に加え新兵器も実験? | DemocracyNow! Japan

問題発言箇所は15分ある動画の最後の方なので、静止画像をキャプチャーして見ました。


Dr Mads Gilbert の証言1

「またダイムは核兵器に分類されることもあります」

えっ、核兵器ですか?

「核兵器ですか?」

Dr Mads Gilbert の証言2

「はい 欧州委員会がダイム兵器は核分裂装置を伴うため」

Dr Mads Gilbert の証言3

「残留物の危険性を調査する必要があるとはっきり述べています」


         ___
        /⌒  ⌒\         ━━┓┃┃
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    \   。≧       三 ==-
        -ァ,        ≧=- 。
          イレ,、       >三  。゚ ・ ゚
        ≦`Vヾ       ヾ ≧
        。゚ /。・イハ 、、    `ミ 。 ゚ 。 ・


「核兵器に分類される」「核分裂装置を伴う」

トンデモ過ぎやしませんか、この医師は。

そりゃICBUWが「この医師が言っている事は本当ではありません!」と認定するわけです・・・欧州委員会がどうのこうの言っていますが、じゃあその情報ソースを出してくださいよ・・・マッズ・ギルバート医師、貴方はDIMEが原子爆弾か何かであると思っているのですか? もういい加減にしてください。


・ギルバート医師の言う欧州委員会とは欧州放射線リスク委員会の事。
・European Committee on Radiation Risk (ECRR) - 欧州放射線リスク委員会
・なおこの団体は公的機関では無く単なる市民団体。
22時21分 | 固定リンク | Comment (175) | 平和 |
2009年02月07日
前回の記事「GBU-39(SDB)を劣化ウラン弾扱いする酷いデマ」で紹介した「NO DU ヒロシマ・プロジェクト」の嘉指信雄代表が騒いでいた「ガザ空爆で、劣化ウラン使用?」の件ですが、ICBUW(International Coalition to Ban Uranium Weapons;ウラン兵器禁止を求める国際連合)の本部事務局(イギリス・マンチェスター)は事実を検証し、イスラエル軍がガザ空爆で劣化ウラン弾を使用した根拠は何も見当たらない事を把握しています。


Statement on Israel’s attack on Gaza - ICBUW
A report originating from Iranian Press TV claiming that uranium weapons have been used has, we believe, confused uranium munitions with tungsten DIME weapons. Interviews by Al-Jazeera with a Norwegian medical volunteer Dr Mads Gilbert, who was also quoted by Press TV, showed him blaming the use of DIME munitions containing tungsten for horrific civilian injuries; he then added that tungsten was radioactive. This is not the case.
(私達は、ウラン兵器が使用されたと主張しているイラン・プレスTVのレポートは、ウラン兵器とタングステン兵器DIMEを混同したのだと思っています。アルジャジーラによるノルウェー医療ボランティアのマッズ・ギルバート医師(彼はプレスTVにも引用されました)のインタビューは、一般人への恐ろしい怪我を引き起こすタングステンを含むDIME兵器の使用を非難するものでした。そして彼は、タングステンは放射性があると付け加えました。これは、本当でありません。)


つまりICBUWは、ガザで医療に従事するノルウェー人のマッズ・ギルバート医師(ノルウェー読みではマッズ・ギルベルト)の証言について、以下のような判断を下した事になります。

     *      *
  *     +  うそです
     n ∧_∧ n
 + (ヨ(* ´∀`)E)
      Y     Y    *

タングステンに放射性があるとか、幾らなんでも無茶苦茶です。という事は前回の記事で、ギルバート医師の証言が収録されたYoutube動画が一部カットされている事について、『動画がカットされているのは「この妄言は隠しておこう」と支援者が気を利かせていただけなんじゃないですか?』と予想していましたが、当たっていたわけですか・・・そしてICBUWは、ギルバート医師の証言を信じて勘違いしたイラン・プレスTVのレポートは間違っていると判断しています。当然ですね。

そしてICBUWは、GBU-39とDIMEについて以下のような認識を示しています。

「Thus far two weapons, DIME explosives and GBU-39 bunker busters, have come under scrutiny by campaigners and to the best of our knowledge neither weapons use uranium.」

両兵器共にウランは使用されていない、という認識です。またGBU-39については鋼鉄製弾殻であること、DIMEについてはカーボン製弾殻であることを理解しており、かなり正確に調べ上げている事が見て取れます。これは正直、感心しました。反戦団体は非難したら言いっ放しで、間違いだと判明しても訂正記事を入れてくれることは滅多に無いのですが、ICBUW本部事務局はデマに踊らされないようにきちんと事実を検証し、馬鹿な証言やレポートに組することなく慎重な態度を貫いています。

「NO DU ヒロシマ・プロジェクト」の嘉指信雄代表が根拠として挙げていた「planete non-violence」というフランス語サイトの情報については、触れられてすらいません。サイト自体が怪し過ぎて、信憑性など欠片も無いと捨て置かれてしまっています。

ICBUW本部事務局がこのような見解を示した以上、「NO DU ヒロシマ・プロジェクト」も同様の記事を可及的速やかに掲載して下さい。嘉指信雄代表の記事はあちこちに影響を与え、イスラエル軍がガザで劣化ウラン弾を使用したと早合点してしまった人を大勢生み出してしまっています。[転送・転載歓迎]等と書かれてしまっていた為に、AMLのようなメーリングリストや掲示板に転載され、それを見た人がブログの記事を書き、それらを全て訂正して廻るのは不可能である以上、大元のデマの発生源となってしまった「NO DU ヒロシマ・プロジェクト」が責任を取って訂正記事を書く事は義務である筈です。 

一体どうして不確かな情報であった段階で[転送・転載歓迎]だなんて広めるように煽ってしまったんですか? 無責任過ぎます。
01時19分 | 固定リンク | Comment (144) | 平和 |
2009年02月05日
なんでこんな酷いデマが・・・どうしてこんな有り得ない誤解が生じてしまうんですか?


ガザ空爆で、劣化ウラン使用?:NO DU ヒロシマ・プロジェクト
「イスラエルによるガザ空爆で、劣化ウランを含むGBU 39、いわゆるスマート爆弾が投入されているのではないか」との懸念は、ICBUW(ウラン兵器禁止を求める国際連合)のメンバーの間でも一昨日よりあがっておりまして、確認につとめているところです。

[1] www.planetenonviolence.org にアップされています下記の記事(タイトル:「ガザにおける劣化ウランによるジェノサイド」)では、冒頭、「今朝、イスラエルのプレスは、ガザ地域の標的を攻撃するために劣化ウランを含むGBU 39を使用している空軍のテクノロジー的功績を自慢した」とあり、また、段落の最後は、「エジプトとの国境近くで、トンネルを破壊するために最近行われた空爆は、SS(シオニスト兵士)軍のある将校によると、劣化ウランを含むGBU 39を用いて行われた」とあります。

[2]また、YouTubeにアップされていますビデオ・クリップ(初めてガザ地域に入ることを許可されたノルウェー人医師の報告))につけられた下記コメントには、"He also mentioned that these bombs appear to be radioactive as well." 「これらの爆弾は放射性でもあるようだとも言及していた」とありますが、残念ながら、現在アップされているクリップは一分ほど短くされてしまっていて、この言及はカットされてしまっているとのこと。
ICBUWのメンバーとも至急相談しまして、対応を検討したく存じます。

    
嘉指信雄 NO DU ヒロシマ・プロジェクト


GBU-39(SDB)は鋼鉄製の弾殻で、劣化ウランなんて使われていません。どうしてこの兵器の詳細を調べないんですか。この兵器の構造や開発主旨を理解すれば、劣化ウランなんて使われていない事は直ぐに理解できる筈です。最初に言っておきますが、貫通爆弾=劣化ウランだと思い込んでいるなら大間違いです。この世に存在する貫通爆弾の殆どは鋼鉄製の弾殻です。劣化ウランやタングステン、チタニウムを用いた貫通爆弾もあるにはありますが、数は多くありません。

[1]・・・情報ソースがイスラエルのプレスだそうですが、それでは何故、一次ソースが見当たらないんですか? 紹介されている「planete non-violence webzine」というフランス語サイトの記事を読んでみましたが、一次ソースが何処にも存在しません。また記事を読んだ限りでは、このサイトがGBU-39を勝手に劣化ウラン製だと思い込んでいるように見受けられます。イスラエルのプレスはGBU-39が使われた事を伝えていただけで、劣化ウラン製であるだなんて解説はしていないんじゃないですか? 

[2]・・・証言者はDIMEの事を残虐兵器扱いした、あのノルウェーのマッズ・ギルバート医師(Dr. Mads Gilbert)じゃないですか。なるほど、この人、口からデマカセを連発する人だったんですね。動画がカットされているのは「この妄言は隠しておこう」と支援者が気を利かせていただけなんじゃないですか? ちなみにDIMEとはGBU-39を改造したものです。鋼鉄製弾殻をカーボン繊維弾殻に換えて、軽くなった重量の調整と貫通能力の維持のためにタングステン弾頭とし、炸薬を不活性金属爆薬(HMTA;タングステン粉末入りの炸薬)に換えてあります。



そしてこれを真に受けたアラブ諸国はIAEAに調査を求める書簡を送り、IAEAは劣化ウラン弾が使用されたかどうか調査に乗り出す事になりました。


イスラエル:ガザで劣化ウラン弾使用か アラブ諸国が書簡|毎日新聞 1月20日
AP通信によると、アラブ諸国は19日、パレスチナ自治区ガザで、イスラエル軍が劣化ウラン弾を使用した痕跡が見つかったとの情報があるとして、国際原子力機関(IAEA)に調査を求める書簡を提出した。

IAEA to investigate Israeli uranium use | IRAN Press TV
The UN nuclear watchdog says it will open an investigation into Israel's alleged use of depleted uranium during its Gaza offensive.


GBU-39以外の兵器で劣化ウランを用いたものが使用されたかもしれないので、調査自体は行う意味はあるでしょうが・・・GBU-39を劣化ウラン製と疑ってその着弾地点を調査するなら、徒労に終わるでしょうね。

それでは、GBU-39(SDB)について説明します。これはアメリカ軍が開発した次世代主力爆弾で、SDB(Small Diameter Bomb ;小直径爆弾)と呼ばれる新コンセプトの小型爆弾です。SDBフェーズ1が固定目標用(GBU-39)、SDBフェーズ2が移動目標用(GBU-40)となっています。

GBU-39 Small Diameter Bomb | GlobalSecurity.org
SDB Small Diameter Bomb | Weapons School(日本語)
Boeing / Lockheed Martin SDB | Designation-Systems.Net

SDBは2001年より開発が始まっていますが、新しい小型爆弾の開発はMMTD、SBS、SSBといった名称でそれ以前から行われており、当初はステルス戦闘機の胴体内爆弾倉に沢山爆弾を積みたいという要求から開発が始まりました。ステルス戦闘機はステルス性を維持するため、機体の外部に爆弾を積むことが出来ないのですが、大きな戦略爆撃機ならともかく戦闘機の胴体の中には通常サイズの爆弾では2発しか積めません。沢山積む為には小さな爆弾が必要であると考えられましたが、通常爆弾の形のまま小型化してもそんなに多くは積めなかったので、直径の小さな細長い爆弾にする事が決められました。そして最も多用される500lb(227kg)爆弾の半分の重さ、250lb(113kg)の爆弾が出来上がりました。


概略断面図


これはSDB計画以前の段階での概略断面図ですが、SDBが装着する滑空飛行用の主翼(ダイアモンドバック・ウィング)が付いていない事を除けば、基本的に同じ構造です。SDBはこれに主翼を付けて285lb(130kg)の重さになっています。

細長い形状はそれだけで貫通性能が上がります。最も強力なバンカーバスター、5000lb(2273kg)クラスの貫通爆弾であるGBU-28ディープスロートも細長い形状をしていますが、弾体部分のL/D比(Length / Diameter;長さ/直径)はSDBと近い比率です。SDBは、最も多用されてきた貫通爆弾であるBLU-109よりも細長い形状で、2000lb(907kg)クラスのBLU-109に比べ数分の1の重量であるにも拘らず、これに近い貫通性能を得ています。




SDBは、弾体重量に比して炸薬量が少なくなっています。減らした炸薬の重さは弾殻重量と誘導装置に充てています。どれくらい炸薬量が少ないかと言うと、従来からある通常形状の250lb爆弾であるMk.81に比べて半分しかありません。炸薬量が減った分、爆発力は下がりますが、精密誘導装置によるピンポイント爆撃でカバーします。SDBはその開発過程でコソヴォ空爆の教訓を活かし、民間人への付随被害を抑える為に爆発力は小さく求められていた為、炸薬量が少ない事は寧ろ渡りに船でした。また民間人を巻き添えにする被害を抑えて非難されないようにと気を使った設計の爆弾に、非難対象の劣化ウランを使ってしまったら何の意味も無いわけで、設計段階の時点でそんな事をする筈がありません。

人道面に配慮した兵器である筈の低威力小型爆弾SDBが悪者扱いされかかっている事を懸念します。DIMEの件といい、新兵器を何でもかんでも新しい残虐兵器か何かと思い込むのはもう止めてください。
21時45分 | 固定リンク | Comment (111) | 平和 |