このカテゴリ「平和」の記事一覧です。(全164件、20件毎表示)

2009年02月04日
今回のガザ侵攻ではイスラエル軍はクラスター爆弾を使用していませんでした。国連およびNGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」の専門家もそう判断しています。

イスラエル軍:ガザ攻撃で「クラスター使用せず」国連見解|毎日新聞 1月31日

しかし、3週間以上前には全く逆の報道が行われていました。

イスラエル:軍、ガザに地上侵攻 数千人、北部で激戦 クラスター弾使用か|毎日新聞 1月05日

つまり毎日新聞は1月5日に「ガザ攻撃でクラスター爆弾使用か」と誤報を流していた事に触れず、デマを流した責任を取ろうともしていない事になります(この記事は1月4日のネット配信が先で、翌1月5日に朝刊紙面に掲載)。どうして1月31日の記事で「ガザ攻撃でクラスター爆弾使用せず」と書いた時に過去の記事に対するお詫びと訂正を入れなかったのか、1月5日の記事は【エルサレム福島良典、前田英司】と署名があり、1月31日の記事では【ダボス(スイス東部)澤田克己、エルサレム高橋宗男】と別の記者達が書いた記事なので、気付いていないだけなのかもしれませんが、毎日新聞の最初の報道を信じて真に受けた人達が大勢出ている以上、何らかの説明は必要である筈です。

〔動画〕イスラエル軍がガザで「クラスター弾」を使用:低気温のエクスタシーbyはなゆー 2009.01.04

イスラエル軍、クラスター爆弾を使用:きっこの日記 2009.01.05

毎日新聞の記事を見て、イスラエル軍がガザでクラスター爆弾を使用したと日記を書いた著名ブロガーが現れ、それを見たブログ持ちの読者が更に記事を書き、デマが拡大再生産されていきました。また「きっこの日記」「低気温のエクスタシーbyはなゆー」の双方に引用されている動画を見れば分かりますが、M825A1白燐弾の空中炸裂をクラスター爆弾と勘違いした誤報記事となっています。

ガザ侵攻でイスラエル軍が白燐弾を使用:週刊オブイェクト 2009.01.06

私はファルージャの騒動の時から見慣れているので、今回の動画を見た瞬間に白燐弾だと気付きましたが、軍事方面に詳しくない人達が動画を見て白燐弾の空中炸裂をクラスター爆弾と勘違いするのは、ある程度しょうがない面もあります。でも落ち着いて考えればクラスター爆弾は特に光ったりするわけではない事に気付いても良さそうなものですが・・・

クラスター爆弾は親爆弾の中に多数の子弾が内蔵されている構造で、この子弾が「爆発性子弾」であるものを言います。一方、イスラエル軍が使用しているM825A1白燐弾は空中炸裂させた場合、剥き出しの白燐の欠片をバラ撒く事になりますが、これは「爆発性子弾」とは見なされません。地上への着弾の際に光が強くなって見えるのは、白燐の欠片が着弾の衝撃で砕けた結果、表面積が増加し、一時的に火勢が強まった結果であり、爆発しているわけではありません。


では記事タイトルのテーマに戻って、イスラエル軍がクラスター爆弾を使わなかった理由は単純な事なのですが、「クラスター爆弾は市街地への攻撃に全く向いていない」という兵器の性質によるものです。ただしそれは、通常爆弾よりも広範囲の面積を制圧できるクラスター爆弾が、軍事目標のみならず民間人を巻き込みやすいという事が大きな理由ではありません。それも理由の一つかもしれませんが、最大の理由は遮蔽物の多い市街地ではクラスター爆弾の攻撃力そのものが大きく半減してしまうという事であり、都市攻撃にはむしろ通常爆弾の方が向いているという話なのです。

これはクラスター爆弾関連の話でもしましたが、通常爆弾よりも広い面積を制圧できるクラスター爆弾はその代償として、子弾1発あたりの打撃力が小さく、種類にもよりますが子弾は手榴弾と同じかそれよりちょっと大きいくらいのもので、建造物を破壊できるようなものではありません。その為、建造物の中に隠れるだけでクラスター爆弾の攻撃をやり過ごす事が出来ますし、中に入らずとも建造物の陰に隠れるだけでも大きな遮蔽効果を得られます。

市街地は遮蔽物の集合体であり、火力を吸収してしまいます。第二次世界大戦でドイツ軍とソ連軍が大規模な市街戦闘を行った時、頼りになったのは1発あたりの破壊力が大きな重砲でした。歩兵を支援できるよう、接近戦で大口径榴弾砲を撃ち込む突撃砲が開発され、建造物に潜む敵兵を建造物ごと吹き飛ばしていきました。1発あたりの破壊力の高さが市街戦闘で重要視されたのです。つまり、市街戦で要求される能力はクラスター爆弾とは正反対という事になります。実際に現代のアメリカ軍も、当初はクラスター弾頭のみを用意していたMLRSやATACMSに、新規開発で単弾頭タイプを用意し、MLRSの単弾頭タイプであるM31ユニタリー弾は既にイラクやアフガンで市街地での攻撃に実戦投入されています。

結局のところ、市街地でクラスター爆弾を用いて効果が高い場所は少なく、広場や駐車場などに限定されます。しかし今回のイスラエル軍によるガザ侵攻の目的はハマスのロケット弾備蓄そのものを叩く事、カッサム・ロケット製造工場を叩く事、武器密輸に使われる地下トンネルへの攻撃などが主要目標であり、これ等への攻撃には建造物や地中を貫いてから起爆する貫通爆弾が必要となります。ハマス重要人物の邸宅を暗殺目的で爆撃する場合も必要なのは通常爆弾と貫通爆弾であり、ハマス戦闘員との地上戦闘でも、建造物や塹壕に籠って戦う相手に使用すべきなのはクラスター爆弾では無く、通常の爆弾です。建造物外にあるロケット弾の発射地点を叩く場合でも、例えばカッサム・ロケットの発射機は何でもよく、ベニヤ板で作られたものすらあり、そんな使い捨てのものを叩いたところで意味は無く、発射後に直ぐに建造物の中に入るか陰に隠れるハマス兵を狙う場合、やはり必要なのは通常榴弾や通常爆弾です。


イスラエル軍は、2006年のレバノン侵攻でヒズボラとの戦闘にクラスター弾(MLRSのM26ロケット弾)を使用しました。この時は使用したクラスター弾の殆どを停戦寸前の撤退直前に撃ち込んでおり、本当の意味の攻撃目的では無く「置き土産」を意図したもので有る事は明白でした。

今回のガザ侵攻の際に同様の事をしなかったのは、レバノン侵攻時の際の国際社会の非難、そしてアメリカの事前の圧力(もし市街地で使ったら二度とクラスター弾を売らないと警告)、そして無駄使い出来る使用期限の迫った弾薬の在庫はもう無かった事が挙げられます。
07時44分 | 固定リンク | Comment (89) | 平和 |

2009年01月30日
既に何度か書いている事ですが、イスラエル国防軍(IDF)の使用していたM825A1白燐弾は発煙弾(煙幕弾)として設計されており、通常榴弾や専用設計の焼夷弾と比べて殺傷力が大きく劣ります。(「有効範囲と散布密度」及び「焼夷能力と貫通力」)この事実も十分に広まってきたと思うのですが、それを受けて逆に「白燐弾は殺傷力が低いからこそ使っているのだ、榴弾は威力が高すぎるから使えないのだ」という意見が出ています。


白燐弾使用の何が問題か - 児童小銃 2009-01-17
それに対して週刊オブイェクトでは次のように反論している。対人殺傷を目的とした場合、白燐弾は効率が悪すぎる、殺傷目的なら普通の榴弾を使うはずだ、と。

だがこれは理屈がおかしいのではないか。いくら効率が良くても、いや効率が良いからこそ、民間人が多い人口密集地に榴弾を打ち込んだら大問題になる。白燐弾は煙幕弾だと言い訳できるのでそういう場所でも使える便利な兵器、ということなのではないか?

イスラエル軍は民間人の犠牲者が出ること自体は恐れていないようだが、言い訳できない形で民間人を殺傷することは避けていて、砲撃や爆撃は軍事目標に限定しているはずだ。しかしそれだと武装勢力がややこしい場所に紛れ込んだ場合は攻めあぐねてしまう。

そこでそのような場所では言い訳できる兵器として白燐弾を使っている、という可能性はないか? 効率が悪いので武装勢力を殺傷することは難しいだろうが、民間人の犠牲者を出すことで戦略爆撃的な効果を期待できるのではないか?

だとするなら、ガザ攻撃を認めない立場からは、言い訳できる兵器の言い訳を容認するわけにはいかない。攻撃ではないと称して攻撃できる抜け道は塞いでおかなくてはならない。そういう意味では白燐弾使用を非難するのは意味のあることなのではないかと思った。


「児童小銃」管理人rna氏は、根本的な部分で認識を誤っています。どういう事かと言うと、今回のガザ侵攻によるパレスチナ側の死者は1300名超、負傷者は5400名超という事態になっていますが、この死傷者の殆どは榴弾や爆弾による巻き添え被害の結果であり、白燐弾による死傷者は全体数から見て極一部であると言うことです。もし仮に殆どの死傷者が白燐弾によるものであったら、「榴弾を撃ち込んだら大問題になるから煙幕弾と言い訳できる白燐弾を使った」という主張も成り立つかもしれませんが、事実はそうではないのです。

そして、イスラエル国防軍のこれまでのやり方を十分に理解しているのであれば、彼らが必要とあらば人口周密地域の市街地に対して、榴弾による砲撃や戦闘機による爆撃を全く躊躇わない軍隊である事を忘れてはならない筈です。




ガザの市街地が次々と爆撃されていく様子です。これは明確に白燐弾によるものではありません。恐らくは航空機用の誘導爆弾です。




こちらは凄まじい爆発の結果、夜なのに辺りは昼間のように照らし出され、大火災が発生しています。一部の無責任な人達は「イスラエル軍が戦術核兵器を使った!」とまで騒いでいる動画です。しかし映像の様子を見ても核爆発の特徴は全くありません。恐らくはハマスの弾薬庫ないしカッサム・ロケット製造工場が爆撃され、盛大に誘爆を引き起こしたものだと思われます。

IDF Bomb Tunnels Gaza Egypt Border1
IDF Bomb Tunnels Gaza Egypt Border2
IDF Bomb Tunnels Gaza Egypt Border3
IDF Bomb Tunnels Gaza Egypt Border4

上の4つのYoutube動画は、ガザとエジプトとを繋ぐ密輸トンネルをIDFが貫通爆弾を用いて爆撃している様子です。密輸トンネルは農場に近い所にもあれば、市街地となっている場所にもあり、住宅が立ち並ぶすぐ横でも空爆が行われている事が見て取れます。

これがIDFの軍事行動です。市街地で平然と榴弾、爆弾を用いています。戦時国際法は市街地であっても軍事目標に対しては攻撃を認めています。そしてそもそも民間人を狙った攻撃は榴弾だろうが白燐弾だろうが全ての兵器で禁止されています。しかし誤射、誤爆は戦争犯罪ではありません。つまり「白燐弾ならば発煙弾だと言い逃れる事が出来る」という主張は、国際法的には何の意味もありません。そもそも通常の榴弾や爆弾は市街地で使用しても違法では無いからです。そしてIDFはその使用にさほど躊躇はありません。

実は「児童小銃」管理人rna氏の主張と似たような事を、軍事アナリストが主張している例もあるのですが・・・


殺傷能力高い「発煙弾」 ガザで使用? 白リン弾とは : 中日新聞 2009年1月16日付朝刊21面『特報』欄
「白リン弾は、ビルの間や鉄塔などに潜んでいる兵士を殺すのに効果的。ただ、爆破力はないので建物を壊すような被害が出ない。占領後に建物をそのまま利用できるというメリットもある」と指摘するのは軍事ジャーナリストの神浦元彰さん。

神浦さんは、イスラエル軍の意図を「一般の住宅地を通常爆弾で砲撃すると、一般市民が多数死んで大虐殺になり、国際世論の圧力に耐えられない。戦闘当初は市民は建物の中に隠れるので、白リン弾なら、外にいる兵士だけを殺すことができる。国際的に規制されていない発煙弾だと言い逃れられるという判断もあったんだろう」と分析する。


軍事界の【逆神】と呼ばれ、その軍事解説は十中、八九が外れてしまうという驚天動地の軍事アナリスト、神浦元彰氏の主張と言うだけでもう的外れだろうなという空気が漂ってきますが、実際にそんな感じです。




ガザは瓦礫の山です。そもそもIDFはガザを占領に行ったのではありませんから、占領後の利用など考えてもいない筈です。

ちなみにIDFは、ガザ侵攻中、発煙弾(煙幕弾)は榴弾と併用して使っている旨を発表しています。ただ、ガザ撤退まで白燐弾の使用を認めずただの煙幕弾だと言い張り、それ以前にIDFの女性報道官が明らかに軍事全般を理解しておらず、砲弾の構造の説明も無茶苦茶で、これはワザとやっている情報撹乱戦なのかと思ったぐらいなのですが、発煙弾と榴弾を交互に撃ち込んでいく砲撃パターンについては一般的な砲兵戦術ですし、IDFの言い分としては「白燐弾を攻撃用に単独で集中使用してはいない」となるのでしょう。勿論、IDF側の発表をそのまま鵜呑みにする事は出来ませんが、若干の裏付けとなる情報はあります。


[AML 23620] (ネヴ・ゴードン教授の論考)
2) イスラエルは、壊滅的なミサイルを発射する数分前に、意地悪な爆弾 −家を本当には破壊しない− を使用している。ここでもまた、イスラエル軍はもっとパレスチナ人を殺すことができるが、それをしないことを選択しているのだということを見せようとしている。


このネヴ・ゴードン教授が語る『意地悪な爆弾−家を本当には破壊しない−』とは、恐らくM825A1白燐弾の事・・・語られている情報が少ないので断定は出来ませんが、『壊滅的なミサイル』とは通常榴弾や航空爆弾の事であると仮定すれば、辻褄が合います。つまり発煙弾を先に撃ち込み、その煙へ向って通常榴弾による効力射を撃ち込むという情況になりますから、これは砲兵戦術として定番のものです。ただしネヴ・ゴードン教授自身はそれがどんな戦闘行動か理解していないようで、IDFがパレスチナ人を何か甚振っている様子と思っているようですが、そういう意味ではありません。

注;コメント欄でのバグってハニー氏からの指摘によると、ネヴ・ゴードン教授の言う『意地悪な爆弾』とはルーフ・ノッキング(Roof knocking、屋根叩き)という、IDFの爆撃警告法の事で、音だけ出る爆弾によるもので、白燐弾は関係ありませんでした。『壊滅的なミサイル』とは家屋破壊用の榴弾、爆弾のままで良いです。今回のガザ侵攻で損壊した建物は22,000棟にのぼるとのことで、破壊された戸数の割りに人的被害は少なく、建物3戸破壊あたり死傷者1名の割合でした。

また、以下の動画と解説は以前にも紹介したので再掲載になりますが、煙幕弾と照明弾を同時併用している事自体が、M825A1白燐弾を攻撃用として使っているわけではなく、目晦まし用として使っている事の証左となっています。また、あくまでこの動画の場合における使用状況についての話になります。





【質問】夜間に照明弾と共に白燐煙幕弾を使う意味は何でしょう? ガザでもファルージャでも同様の戦法が確認されています。これは威嚇効果、心理効果を重視した運用なのかと思うのですが、どうでしょうか。

【答え】このビデオクリップに限ればですが、煙によって光が散乱するために相手の視覚を一時的に奪うことによる組織抵抗の攪乱が期待できます。雪が降ってる時にハイビームにすると雪が光って(ハレーション効果)周りが何も見えなくなるようなものです。一般的な使用法ですね。因みにその効果は照明弾が上空にいた場合が一番効果が高いです。戦術的には、別の使用法もあります。自軍背後に使用することで自軍及び射撃光を相手の視覚から隠すこともできます。もっともその使用法は風向きを考えなきゃならないので使用できるシチュエーションが限定されますが。




動画では照明弾(照明専用設計のマグネシウム粉+硝酸ナトリウムの燃焼剤)と同時併用して白燐煙幕弾が使用されています。そしてこの同時使用戦法は2004年のイラク・ファルージャでも確認されており、今回のガザでも確認されました。これは目晦まし効果を狙った撹乱戦術として一般的な使用法のようです。そしてこの使い方なら現行の国際法には何も触れません。
22時51分 | 固定リンク | Comment (70) | 平和 |
2009年01月29日
今回のパレスチナ・ガザでの白燐弾問題は、以前のイラク・ファルージャで問題化したときと比べ、問題点が整理されています。


White Phosphorus (WP) | GlobalSecurity.org
Casualties from WP smoke have not occurred in combat operations.
「WP(白燐)煙からの死傷者は戦闘で生じていません.」

There are no reported deaths resulting from exposure to phosphorus smokes.
「白燐煙に晒された状態が原因だと報告された死亡例はありません.」

Generally, treatment of WP smoke irritation is unnecessary. Spontaneous recovery is rapid.
「一般に,WP(白燐)煙焦燥の治療は不必要です.自発的回復は迅速です.」


週報 第336号(昭和18年3月24日号):週報でみる戦時生活
黄燐焼夷弾の白煙は10分くらい吸っても無害とのことで、防毒面は附けずに消火活動を行うとのこと。


この手の情報が出回るようになり、白燐の燃焼で発生する煙は強い毒性のガスなどでは無いことが理解され、煙を吸ったら一巻の終わりだ等というデマが平然と流されていたファルージャの時と比べ、白燐弾の問題点は焼夷効果について絞られてきたと言えるでしょう。「白燐弾は化学兵器とは見なされておらず、明確に国際的に禁止された兵器でもない」と朝日新聞や毎日新聞も報じているくらいです。

それでも国際法に違反している"疑いがある"と主張するグループが居ます。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は「白燐弾は特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の焼夷兵器の使用禁止または制限に関する議定書(第3議定書)に違反している"疑いがある"」としています。ですが、この条約をそのまま解釈した場合、白燐弾は定義の時点で除外される対象になっています。


焼夷兵器の使用の禁止又は制限に関する議定書(議定書III)

第一条 定義

この議定書の適用上、

1 「焼夷兵器」とは、目標に投射された物質の化学反応によって生ずる火炎、熱又はこれらの複合作用により、物に火炎を生じさせ又は人に火傷を負わせることを第一義的な目的として設計された武器又は弾薬類をいう。

(a) 焼夷兵器は、例えば、火炎発射機、火炎瓶、砲弾、ロケット弾、擲弾、地雷、爆弾及び焼夷物質を入れることのできるその他の容器の形態をとることができる。

(b) 焼夷兵器には、次のものを含めない。

(i) 焼夷効果が付随的である弾薬類。例えば、照明弾、曳光弾、発煙弾又は信号弾

(ii) 貫通、爆風又は破片による効果と付加的な焼夷効果とが複合するように設計された弾薬類。例えば、徹甲弾、破片弾、炸薬爆弾その他これらと同様の複合的効果を有する弾薬類であって、焼夷効果により人に火傷を負わせることを特に目的としておらず、装甲車両、航空機、構築物その他の施設のような軍事目的に対して使用されるもの

2 「人口周密」とは、恒久的であるか一時的であるかを問わず、都市の居住地区及び町村のほか、難民若しくは避難民の野営地若しくは行列又は遊牧民の集団にみられるような文民の集中したすべての状態をいう。

3 「軍事目標」とは、物については、その性質、位置、用途又は使用が軍事活動に効果的に貢献する物で、その全面的又は部分的な破壊、奪取又は無効化がその時点における状況の下において明確な軍事的利益をもたらすものをいう。

4 「民用物」とは、3に定義する軍事目的以外のすべての物をいう。

5 「実行可能な予防措置」とは、人道上及び軍事上の考慮を含めその時点におけるすべての事情を勘案して実施し得る又は実際に可能と認められる予防措置をいう。


第二条 文民及び民用物の保護

1 いかなる状況の下においても、文民たる住民全体、個々の文民又は民用物を焼夷兵器による攻撃の対象とすることは禁止する。

2 いかなる状況の下においても、人口周密の地域内に位置する軍事目標を空中から投射する焼夷兵器による攻撃の対象とすることは禁止する。

3 人口周密の地域内に位置する軍事目標を空中から投射する方法以外の方法により焼夷兵器による攻撃の対象とすることも、禁止する。ただし、軍事目標が人口周密の地域から明確に分離され、焼夷効果を軍事目標に限定し並びに巻添えによる文民の死亡、文民の傷害及び民用物の損傷を防止し、また、少なくともこれらを最小限にとどめるため実行可能なすべての予防措置をとる場合を除く。

4 森林その他の植物群落を焼夷兵器による攻撃の対象とすることは、禁止する。ただし、植物群落を、戦闘員若しくは他の軍事目標を覆い、隠蔽し若しくは偽装するために利用している場合又は植物群落自体が軍事目標となっている場合を除く。



まず第一条「定義」の部分をじっくり読んでください。そしてイスラエル国防軍(IDF)が使用している155mm榴弾砲用のM825A1白燐弾は、発煙弾(煙幕弾)として設計された兵器です。つまり焼夷効果を第一義的に狙って設計されておらず、付随的(副次的)な焼夷効果を持つ弾薬類は焼夷兵器とは見なさないという条約上の定義に従えば、M825A1白燐弾をこの条約で規制する事は出来ません。

法自体の不備であるという批判は、それは自由に主張する権利があります。ですがこの現行法では違法ではない以上、「国際法に違反している」と声高に主張する事は間違っています。その点は気を付けて下さい。

またこの条約は例外規定が多く、その為に単なる「禁止条約」ではなく「使用禁止又は制限条約」というまどろっこしい題名となっています。照明弾や発煙弾、信号弾が除外されるのは勿論、複合弾薬も許可されており、徹甲焼夷弾なども除外される事になります。つまり劣化ウラン弾には副次的な焼夷効果がありますが、除外されます。また一部のクラスター爆弾には炸薬とは別に発火性の高いジルコニウムが内蔵されていて焼夷効果を狙っていますが、これもオマケ的に追加された副次的な効果である為に焼夷兵器扱いにはなりません。

それでは次に、この条約の運用核心部分である第二条を見て行きましょう。

まず1の「いかなる状況の下においても、文民たる住民全体、個々の文民又は民用物を焼夷兵器による攻撃の対象とすることは禁止する。」という部分はあまり意味の無い前置き部分です。というのも、民間人や民間施設を"故意に狙って"攻撃してはいけないという事は、特に焼夷兵器に限った事ではなく、全ての兵器について指定されている事だからです。ですからこの部分は枕詞みたいなもので、読み飛ばしても構いません。

重要なのは2です。「いかなる状況の下においても、人口周密の地域内に位置する軍事目標を空中から投射する焼夷兵器による攻撃の対象とすることは禁止する。」とはどういう事なのか。これは軍事目標であろうと人口周密地域にあるものを、焼夷兵器による空中投射による攻撃を行ってはならないとしています。実は基本的に人口周密地域であろうと軍事目標に対しては攻撃しても国際法に違反しません。それを焼夷兵器に関しては使用を禁止しようというのが、この条約の主旨です。

つまりこの条約は「焼夷兵器は残虐な負傷を伴うから禁止しよう」という主旨のもの"では無い"のです。もしそういう主旨ならばダムダム弾のように兵士に対しても使用を全面禁止するはずです。しかしそうではない、禁止対象は「人口周密地域」での使用という広い範囲である・・・これで理解できると思います。焼夷兵器は『延焼性』がある為に、仮に軍事目標だけを狙った攻撃が成功しても火災が発生し、周囲の民間施設を巻き添えにする可能性が高いから、使用を規制しようというのがこの条約の主旨なのです。

そこで3の部分です。空中からの投射ではなく、地上からの投射であっても、基本的に人口周密地域での焼夷兵器の使用は禁止されていますが、軍事目標が人口周密地域と分離され、民間人を巻き添えにしないように十分な予防処置が取られている場合なら、使用が可能となっています。つまり市街地の中であっても明確に分離された塹壕陣地内などであるならば、「焼夷兵器」である火炎放射器や焼夷手榴弾を投げ込んで敵兵を焼き殺しても合法扱いになる可能性が残されています。

そして2と3に共通する事ですが、この条約の条項だけでは野戦において敵軍に対して焼夷兵器を用いても違法となりません。

また4ですが、森林などの植物群落を無闇に焼き払う事を禁止していますが、敵が身を隠す目的で使っているなら焼き払っても構わないと許可されています。禁止する意味が無い文面に思えます。そして植物群落自体が軍事目標ならば許可されていますが、要するにケシ畑などを焼き払うのに焼夷兵器を使っても構わない、と言う事です。


ではこの条約をよく読んだ上で、M825A1白燐弾の話に戻ります。以前に「白燐弾が通常榴弾より殺傷力が劣る理由」で書きましたが、M825A1白燐弾は発煙弾(煙幕弾)として設計されて居る為に、「有効範囲と散布密度」及び「焼夷能力と貫通力」とう点で全般的に殺傷力に劣る兵器となっています。通常榴弾に対し破片密度で何十分の一という差を付けられており、対人殺傷という観点からは全く比較にならず、建造物に対する焼夷効果についても、専用設計の焼夷弾が建造物を貫通してから延焼させるのに対し、M825A1の白燐欠片は素のままで貫通力が全く無い為、ガザ侵攻中に火災が頻繁に発生したという事例も聞きません。一部では白燐弾による火災が発生しましたが、通常爆弾による火災(弾薬庫直撃による大炎上)も確認されており、白燐弾を使ったから火災がよく発生した、という事は、少なくとも現時点では言えそうにありません。

もしイスラエル国防軍(IDF)が人口周密地域を火災で焼き払おうとしていたなら、CCWの焼夷兵器に関する議定書の主旨に反していると言えます。しかし本気で焼き払う気なら空中炸裂など行わずに着発モードで建造物内部に突入させてから起爆させた方が、より確実に火災を発生させる事が出来た筈です。そして煙幕弾を煙幕として使っていただけなら、違法性はありません。
21時34分 | 固定リンク | Comment (120) | 平和 |
2009年01月21日
白燐は戦場に登場してから100年近く経ちますが、これまで化学兵器として扱われたことは一度もありません。数年前のファルージャの時はともかく、最近のガザの報道では「化学兵器では無い」という注釈は目立ってきました。朝日新聞や毎日新聞ですらそのように報道しています。

■イスラエル軍「白リン弾」使用か ガザの死者885人に (1月11日 朝日新聞)
http://www.asahi.com/international/update/0111/TKY200901110133.html
>化学兵器とはみなされておらず、国際条約上、明確に使用が禁止されてはいない

■ガザ侵攻:イスラエル軍が「白リン弾」使用…人権団体指摘 (1月11日 毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/world/news/20090112k0000m030064000c.html
>白リン弾は国際条約で明示的に禁止された兵器ではなく、化学兵器ともみなされていない。

少なくても大手報道機関は国内外を含めて同じ様な報道です。デマ報道が駆逐されつつあることは良い事で、歓迎していたのですが、ところが・・・


蛮行 許しがたい イスラエルの国連施設空爆 国連スタッフら非難 (2009年1月17日(土)「しんぶん赤旗」)
UNRWAのガザ地区を担当するジョン・ギング部長は、イスラエル軍が残虐兵器である白リン弾を多用しているとされることに言及。白リン弾が放つ炎に水をかけた場合、強い毒性ガスが発生するために消火活動が困難をきわめていると語りました。


白燐に水を掛けると強い毒性ガスが発生・・・って、そりゃ何て名前のガスでどんな化学式ですか?


        ノ L____
       ⌒ \ / \
      / (○) (○)\
     /    (__人__)   \     3年前のデマ報道に逆戻りかお!
     |       |::::::|     | 
     \       l;;;;;;l    /l!| !
     /     `ー'    \ |i
   /          ヽ !l ヽi
   (   丶- 、       しE |そ  ドンッ!!
    `ー、_ノ       煤@l、E ノ <
               レY^V^ヽl

注) カテゴリ「白リン弾」の2005年11月17日の記事「謎の超兵器と化した白燐弾」、及び2005年11月26日の記事「ファルージャ白燐弾デマゴーグ」を参照。

あれだけ苦労してデマを駆逐して、今では朝日新聞や毎日新聞も「化学兵器ではない」と記事を書いて成果も出てきたのに、また逆戻りですかそうですか・・・もういい加減にして下さいよ。

以下は太平洋戦争時に配られた政府広報で、攻撃用の黄燐(白燐)焼夷弾に対処する方法を記したものです。


週報 第336号(昭和18年3月24日号):週報でみる戦時生活
黄燐焼夷弾の白煙は10分くらい吸っても無害とのことで、防毒面は附けずに消火活動を行うとのこと。


黄燐(白燐)が燃焼した際に生じる煙(五酸化二燐)の毒性とはこの程度です。「毒性が薄くても濃度が濃ければ危険だ」という意見もありますが、そんな事を言い出したら大抵のガスや煙にも毒性は有るので意味は無い主張です。例えば燐系とは別系統の六塩化エタン発煙弾(HC発煙弾)も毒性は低いのですが、中毒例はあります。太平洋戦争中に忠海製造所で製造していた救難用マーカーの九四式水上発煙筒(HC系)が数百本、一度に引火してしまう事故が発生し、六塩化エタンによる中毒者が数名出ていますが、じゃあHC発煙弾は毒ガスですかと言うとそうではないでしょう。ただ毒性があるから毒ガスだ、ただ煙が出るから煙幕弾だ、ではないのです。兵器としてどのように設計され、どのような効果が期待できるのか、兵器としての実用性を無視して勝手に認定したりしないで下さい。全く毒性の無いハロン消火剤ですら、密閉された潜水艦で使用された場合は酸素濃度低下で窒息死する事故が発生しました。しかし白燐弾を開けた野外でしかも空中炸裂させて酸欠なんて事態にはなりません。

なお攻撃用に設計された白燐弾と煙幕用に設計された白燐弾の殺傷能力の違いは「白燐弾が通常榴弾より殺傷力が劣る理由」で指摘したとおりです。焼夷弾子に貫通力を持たせる工夫をしたり(金属ケースに充填しないと脆い白燐は貫通能力が無い)、ゴムを一緒に充填して付着性を強化したり(逆を言えば白燐自体の付着性はそれほど高くないのでこのような工夫が必要になる)、そのような設計を一切行わず素の白燐欠片をバラ撒くだけのM825A1白燐弾は殺傷能力、引火性ともに低いのです。

また政府広報の週報第336号には焼夷弾の消火には「何より必要なのは大量の水」とあります。もし黄燐(白燐)に水を掛けて猛毒ガスが発生するなら、その事を注意する記述がある筈ですがそのようなものはありません。逆に発生する煙は毒性が低いから10分吸い続けても大丈夫、防毒マスクは付けずに消火活動を行え、と書かれている以上、消火活動の放水で猛毒ガスが発生するような事は有り得ないでしょう。

黄りん :滋賀県医務薬務課より黄りん(白リン)の特徴を抜き出してみます。

・アルカリ水溶液と反応して自然発火の有毒なホスフィン(りん化水素:PH3)を発生する。
・小規模火災の場合土砂等で覆って消火する。
・大規模火災の場合は霧状の水を多量に用いて消火する。
・棒状の水を注ぐと溶けた黄りんが細かい粒子となり、飛び散って危険である。

3年前のファルージャ白燐弾デマ騒動でも有毒ガス「ホスフィン」の名は出ましたが、見ての通り水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液を掛けないと発生しないので、消火用の水でホスフィンが発生するようなことはありません。また水を用いた消化方法も、直線状の水流で高い水圧を掛けるなと言う注意書きであり、白燐そのものが飛び散ってくると言う話であって「強い毒性のガスが発生する」というのはウソです。これは浮遊性の高いゾルが発生するという事ではありません。あくまで飛び散った先が新たに発火する場合に消火作業が滞ると言う意味です。エアロゾルなら「飛び散る」という表現は有り得ません。他には燃焼し有害な強い刺激臭のある煙霧、つまり五酸化二燐の煙についても言及されていますが、既に述べられている通り、10分間吸い続けても平気な程度の弱い毒性です。

UNRWAのジョン・ギング部長が白燐の化学特性も知らずにデタラメな証言を行い、また再び白燐弾が「水を掛けると強い毒性ガスを発生する」という謎の超兵器と化そうとするとは・・・数年前にデマを叩き潰した努力は一体、なんだったんだ・・・
22時50分 | 固定リンク | Comment (417) | 平和 |
2009年01月19日
何時も通り白燐弾についてもトンデモ発言を繰り返している神浦さんですが、とうとうやっちゃいました。


イスラエルが堂々と使っている「白リン弾」の恐怖 : ゲンダイネット
「建物の周囲に潜んでいる人間を簡単に殺傷できるのですが、体内から焼かれるため遺体はキレイなままで残虐性が薄れる。それに、鉄筋造りのビルなどには全く効果がないのでインフラを破壊することがなく、占領後の統治がスムーズに運ぶ。人間を焼き打ちにする使い方を始めたのは、04年にイラク中部ファルージャを攻撃した米軍です」(前出の神浦氏)


遺体はキレイで残虐性は薄れるんですか。これまで白燐弾犠牲者の遺体損傷の酷さを訴えていた人達が困惑している様子が目に浮かびます。

取り合えず久しぶりに神浦さんのサイトを覗きに行ってチェックしたのですが、やっぱり他にも頭を抱えたくなるような記述で一杯です。どこから手を付けたらよいのだろう?


神浦元彰 最新情報(2009年1月15日)
それよりイスラエル軍の白リン弾を使った戦術に変化がでてきた。テレビのニュース映像では、イスラエル軍が白リン弾攻撃を行う前に、目標付近の風上に発煙弾を大量に発射し、目標一帯を発煙で遮って白リン弾攻撃を行うという戦術である。これは白リン弾をあくまで発煙弾と主張するためと、煙で視界を奪って白リン弾攻撃した方がハマスの恐怖心を高めることができるからである。目隠しをされて白リン弾攻撃から逃げ回れば恐怖心が一気に高まるからである。


いえ、その発煙弾が白燐弾そのものなんですが。別系統の発煙弾である六塩化エタン発煙弾(HC発煙弾)ならば煙の色が白燐弾と違いますので、見れば大体分かりますが、そういう映像は見当たりません。そもそも2種類の発煙弾を同じ場所に使用する意味がよく分からないのですが。白燐弾で煙幕、張れますよ?

・・・どうやら神浦さんは、白燐弾は発煙弾じゃないと思っている節があります。1月5日の記事で「仮に私はこれを”対人焼夷弾”と呼ぶことにする。」と書かれているように、何らかの新兵器が投入されたと思っているようです。しかも発煙弾ではない理由として「しかし写真では空中破裂をしている。」としています。どうやら榴弾砲用の発煙弾の空中炸裂が一般的な煙幕展開方法(参照:Smoke Projectiles)だとご存じ無いみたいです。・・・イスラエル軍の使用しているM825A1白燐弾は発煙弾として設計され、焼夷効果は副次的になります。この事を神浦さんにメールで教えて上げた方は何人か居たのですが、しかし幾ら説明しても理解してもらえなかったみたいです。


神浦元彰 メールにお返事(2009年1月12日)
その点では市街地の白燐弾はナパーム弾より残忍と考えています。


逆に神浦さんの脳内では、白燐弾がナパーム弾よりも残忍な超兵器にレベルアップしてしまいました。もう何がなにやら。私ならナパームで焼き殺される方がイヤだなぁ・・・「白燐弾が通常榴弾より殺傷力が劣る理由」でも書きましたが、通常榴弾や専用設計の焼夷弾と比べれば、発煙弾として設計されたM825A1白燐弾は攻撃力が低く、少なくともナパームよりは優しい兵器だと思います。


あと白燐弾と全然関係無いんですが、目についた明らかな間違いを放っておけず、ついでに突っ込んでおきますね。


神浦元彰 最新情報 (2009年1月17日)
[コメント]今から6週間以上前には、たとえ海賊船を見つけても、各国軍艦は監視する以外に手出しができなかった。それは公海の自由な航行を認めた国際慣例(国際法)があるからである。


いいえ、この説明は間違いです。国際法である海洋法条約第110条は全ての国の軍艦に公海上の海上警察権を与えており、海賊船の臨検・拿捕まで認めています。詳しくは月刊「健論」2000年8月増刊号・国連海洋法の解説・第10編 海洋の区分(8):公海の第2章 公海に対する管轄権の行使、第4節 例外(3):海上警察権を参照してください。
21時50分 | 固定リンク | Comment (167) | 平和 |
先日、日本テレビのニュースZEROで白燐弾に関するデマ報道・・・とまではいきませんが、ちょっとした誤報がありました。


いやまだ使ってますけど?


・・・いやまだ使ってますけど? 今年度も新たに白燐煙幕弾を新規調達したりしているんですけど・・・

防衛省装備施設本部の装備品に関する情報の調達予定品目の項目から、弾火薬室のPDFファイルにちゃんと書かれています。 

[PDF] 平成20年度 調達予定品目(中央調達分)(調達実施計画ベース)

・81mmM、JM42A1WP発煙弾
・120mmM、JM2WP発煙弾
・発煙黄りん手りゅう弾

Mというのはモーター(迫撃砲)の事で、WPとは(White Phosphorus)、つまり白燐弾の事です。黄りん(黄燐)とは少量の不純物を含む白燐の事で、色合いが少し違いますが英語圏では区別せず、両方ともWP扱いです。

74式戦車のスモークディスチャージャーが白燐で、90式戦車では赤燐を使っている事を「自衛隊は全部切り替えてもう使っていない」と早合点したんでしょうか、番組スタッフは。だとしたらお粗末過ぎるんですが・・・それと白燐にしろ赤燐にしろ、燃焼して発生する煙は同じ五酸化二燐が元になっています。
00時33分 | 固定リンク | Comment (90) | 平和 |
2009年01月18日
このAP通信の記事のタイトルを直訳すれば「赤十字国際委員会: イスラエル軍が使用した白燐弾は違法ではない」となります。コメントしたのは、地雷廃絶運動やクラスター爆弾規制で多大な貢献をして来たピーター・ハービー地雷/兵器ユニット管理部長です。

注;「the head of the organization's mines-arms unit」の適当な和訳が見付からなかったので、役職の部分の訳が正しいかどうかはちょっと自信がありません。


ICRC: Israel's use of white phosphorus not illegal | Associated Press
"In some of the strikes in Gaza it's pretty clear that phosphorus was used," Herby told The Associated Press. "But it's not very unusual to use phosphorus to create smoke or illuminate a target. We have no evidence to suggest it's being used in any other way."


白燐弾が煙幕や照明に使われるのは珍しい話ではなく、合法であり、イスラエル軍がそれ以外の目的で使用した証拠は何も無い、とハービー氏は述べています。人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの言い分を鵜呑みにせず、連日の報道を目に通した上でこう述べています。ハービー氏のこれまでの実績からすると白燐弾を激しく糾弾しそうなものですが、そのような態度は見せず、赤十字国際委員会は非常に慎重な態度を貫いています。ハービー氏は赤十字国際委員会の法規部兵器部門の法律顧問であり、戦時国際法などに精通しています。するとやはりCCWの焼夷兵器制限条約では、イスラエル軍の使用しているM825A1白燐煙幕弾が、焼夷兵器の定義の時点で除外されている事を十分に良く理解している(専門分野の人なのだから当然の話だが)のでしょう。なにしろ焼夷兵器に関する議定書の条項を字義通りに解釈した場合、使用方法以前に設計段階の時点で既に、焼夷効果が副次的な兵器は全て除外されてしまいます。

また、白燐弾は煙幕弾として使われたり照明弾として使われたりしているとありますが、以下のような使い方もあります。




【質問】夜間に照明弾と共に白燐煙幕弾を使う意味は何でしょう? ガザでもファルージャでも同様の戦法が確認されています。これは威嚇効果、心理効果を重視した運用なのかと思うのですが、どうでしょうか。

【答え】このビデオクリップに限ればですが、煙によって光が散乱するために相手の視覚を一時的に奪うことによる組織抵抗の攪乱が期待できます。雪が降ってる時にハイビームにすると雪が光って(ハレーション効果)周りが何も見えなくなるようなものです。一般的な使用法ですね。因みにその効果は照明弾が上空にいた場合が一番効果が高いです。戦術的には、別の使用法もあります。自軍背後に使用することで自軍及び射撃光を相手の視覚から隠すこともできます。もっともその使用法は風向きを考えなきゃならないので使用できるシチュエーションが限定されますが。




動画では照明弾(照明専用設計のマグネシウム粉+硝酸ナトリウムの燃焼剤)と同時併用して白燐煙幕弾が使用されています。そしてこの同時使用戦法は2004年のイラク・ファルージャでも確認されており、今回のガザでも確認されました。これは目晦まし効果を狙った撹乱戦術として一般的な使用法のようです。そしてこの使い方なら現行の国際法には何も触れません。
00時09分 | 固定リンク | Comment (186) | 平和 |
2009年01月17日
白燐弾は化学兵器禁止条約(CWC)のリストに載っていない為、化学兵器扱いされていません。特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の「焼夷兵器の使用の禁止又は制限に関する議定書(議定書V)」でも定義上、煙幕弾として設計された白燐弾(M110、M825等)は焼夷効果が副次的と見なされ、焼夷兵器扱いされません。

この事はカテゴリ「白リン弾」で過去記事を読んで頂ければ分かりますが、一番古い記事(2005/11/17)の時点で紹介済みです。それなのにこの事について語る度に『白燐弾は無害だとでも言うのか!』とか『白燐弾に焼夷効果は無いとかトンデモがまかり通っている!』などと過剰反応を受ける事がありました。しかし、私の過去記事では白燐の化学毒性や白燐煙幕弾の副次的焼夷効果にちゃんと触れていますし、消印所沢氏の「軍事板常見問題FAQ」で特集されている◆◆◆白燐弾デマゴーグ関連でも同様の事には触れられています。日本語のサイトで白燐弾に関して「謎の超兵器」と勘違いしないように呼び掛ける主旨の纏めサイトは、この私のブログと消印所沢氏のサイトの二つが中心となってやっているわけですから、無害だとか焼夷効果が無いなどの言説がネット上でまかり通る事は無い筈なのですが・・・多くの著名ブログやサイトの記事で言われていたなら「まかり通っている」で構いませんが、一部だけで主張された事をもって「まかり通っている」だなどと言う事は出来ない筈です。

3年前の日本での白燐弾デマゴーグは、白燐弾から有毒ガスのホスフィンが生じるという酷いデマでした。白燐からホスフィン(燐化水素)を発生させるには水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどが必要で、単純に燃焼しただけでは発生しません。このデマの発生源は現代企画室出版『ファルージャ 2004年4月』という書籍の編訳者いけだよしこ氏がイラク人男性 Raed Jarrar 氏のブログの日本語化も手掛けていたのですが、その Raed blog のコメント欄に書かれていた Rei という人物の投稿が大元でした。この投稿を翻訳し、いけだよしこ氏のブログ(書籍と連動したもの)で紹介されたところ、ファルージャ問題に関心を寄せていた反戦派のサイトがこぞって紹介し、一気に広まったのです。今でも関連キーワードで検索すればかなりの数のサイトがヒットします。しかし実際には、白燐が燃焼して生じる煙は五酸化二燐であり、毒ガスのような害は生じないわけですから、このデマは否定されました。いけだよしこ氏は誤りを認めています。

また世界的に見てもファルージャでの白燐弾使用を糾弾したイタリア国営放送RAIの証言者、ジェフ・エングルハート元兵士の主張「白燐弾は爆発すると雲をつくりだし、その半径150メートル以内にいたらお終い」「煙に巻かれたら皆焼かれて死ぬ」というもウソである事が発覚しています。実はジェフ・エングルハート元兵士は野戦司令部付きの護衛要員で、前線に出ておらず、無線通信の会話で白燐弾の使用を聞いていただけで、実際の白燐弾の着弾状況は目撃していませんでした。つまり白燐弾の煙が超高熱の危険なガスであるかのような証言は空想による捏造だったのです。この元兵士の主張が元で、白燐が燃焼して発生する煙は数千度の熱を持つと誤解した人達まで出ていました。しかし日本でも世界でも、これら反戦派の流してきたデマは正され、今回のガザの件では白燐弾の煙の事を「猛毒ガスだ」「超高温ガスだ」等と問題視する主張は見られず、副次的に生じる焼夷効果を中心に問題視されています。


さて前置きが長くなりましたが、白燐弾の対人殺傷能力はどれほどのものか検証していきたいと思います。タイトルにある通り結論は「白燐弾は通常榴弾より殺傷力が劣る」のですが、これは3年前のファルージャの時にも何回か書いてきた事なのですが、今回はその根拠を詳しく挙げていきます。大まかに分けて二つの理由があり、「有効範囲と散布密度」と「焼夷能力と貫通力」という話になります。


【有効範囲と散布密度】

155mm榴弾砲用の白燐煙幕弾にはM110系列(地表炸裂を重視、ポイントマーカーに向く)とM825系列(空中炸裂を重視、広範囲の煙幕展開に向く)があるのですが、どちらも信管を着発起爆にするか時限起爆にするかで両方の使い方が可能です。今回取上げるのは、ファルージャでもガザで多用されている時限信管を用いた空中炸裂、M825A1白燐煙幕弾についてです。Smoke Projectiles : FAS.orgでM825A1の画像と構造が紹介されていますが、この煙幕弾は空中炸裂させた際に拡散しやすいよう、白燐は116個のウェッジに分けられています。充填されている白燐は総合計12.75lb(5.78kg)ですので、バラける白燐欠片は1個当たり50グラムほどになります。

M825A1は155mmクラスター砲弾M483A1(DPICM)と弾道性能が類似しています。M483A1は88個の爆発性子弾を内蔵しています。一方でM825A1の白燐の欠片は爆発性子弾でない為、クラスター弾とは呼びません。落ちてくる白燐の欠片は地表に着弾しても爆発せずにそのまま燃え続けて煙を出します。M483A1の子弾は地表に落ちてくると爆発し、子弾それぞれが人間を殺傷できる数十個の破片を撒き散らします。つまりM483A1は合計で数千個の破片を有効範囲内に撒き散らす事になります。一方、白燐から生じる煙はそれほど有害でない以上、M825A1で人間に危害を加えるには燃え上がる白燐欠片を直撃させないといけません。ですが、M825A1は有効範囲内に116個をバラ撒くだけで、散布密度が薄過ぎるのです。クラスター砲弾でなくても、単弾頭の通常榴弾の弾殻破片でも155mm砲弾クラスなら1500〜2000個の破片が飛び散ります。戦車砲用の散弾だと、120mm砲用のM1028キャニスター弾(Youtube動画)で約1100個のタングステン製ボール弾を内蔵しています。M825A1とは散布密度の桁が違う事になります。もちろん、発生する煙は広がっていくので煙幕弾としてみれば十分な密度です。

散布密度

例えば上記写真は数年前にパレスチナで白燐弾が使用された時のものです。使用砲弾が榴弾砲用なのか戦車搭載のスモークディスチャージャーなのか分かりませんが、どちらにしろもし上空で起爆しているのが白燐弾ではなく通常榴弾であった場合、この人は絶対に助かっていない筈です。降り注いだ何千個もの破片で切り刻まれ、引き裂かれているでしょう。ですから、人に向けて煙幕弾として設計された白燐弾を撃ち込む意味はありません。対人兵器としては通常榴弾を使った方が確実に効率良く殺せます。上記写真にしても、この人に向けて狙って撃ったわけではなく、巻き込まれている様子を示しています。


【焼夷能力と貫通力】

直接的に対人殺傷を狙った場合はあまりに殺傷効率の悪い白燐弾ですが、焼夷効果を利用して二次的な火災を生じさせた場合の殺傷効率を考えて見ます。すると煙幕弾として設計されたM825A1は、専用設計の焼夷弾ではない事の問題点が浮上してきます。上記で述べたとおり、M825A1の白燐欠片は1個50グラムほどで軽く、比重が1.82と小さい為に空気抵抗を受けやすく速度は急激に落ち、貫通力が殆どありません。空中で炸裂させても建造物の屋根を食い破れないのです。

太平洋戦争でB-29爆撃機から投下された集束焼夷弾は、その開発過程で日本家屋を再現し、焼夷子弾は屋根を突き破った後にちょうど畳の上で起爆するように設計されています。この焼夷子弾は金属ケースに焼夷剤(ナパーム)と炸薬を内蔵した構造で、クラスター弾扱いとなります。日本家屋を目標に専用調整された構造だったのです。

しかしM825A1は煙幕弾として設計されている為、このような攻撃用焼夷弾のような工夫は施されていません。しかもガザの難民キャンプは滞在が長期化しているため、難民キャンプといってもテントを張っている訳ではなく、コンクリート製の建造物を住居としており、M825A1の空中炸裂で生じる小さな白燐欠片で火事を引き起こす事を狙うのは、効率が悪いのです。建造物の屋根や壁を食い破ってから燃え上がれば延焼火災を引き起こしやすいのですが、それを期待できない以上、火災の発生確率は大幅に下がります。現実に火災は発生していますが大火災は発生しておらず、散発的な火災が起きているに止まっています。15日に国連のUNRWAの人道支援物資倉庫が白燐弾によるものと思われる攻撃を受けて炎上しましたが、ガーディアンの動画ニュースを見ると物資は倉庫内から倉庫外にまで連なって集積されている上、シャッターが全開状態であり、此処から白燐欠片が飛び込んできた可能性があります。

もし私がIDFの砲兵指揮官で、M825A1を攻撃目的に使えと命令されたら、時限信管の空中炸裂など行わせたりはしません。信管は着発信管で建造物に砲弾を突入させた後で起爆させます。或いは先に通常榴弾を叩き込み、建造物を破壊して瓦礫の山を造った後にM825A1を撃ち込む戦法も考えられます。白燐煙幕弾の限定的な焼夷効果を最大限に発揮するには、そうするしかありません。

しかし現実にはIDFはそのような戦術を取っておらず、盛大にM825A1白燐煙幕弾を空中炸裂させています。見た目は派手で凶悪な攻撃が行われていると思い込まれがちですが、事実はそうではありません。対人兵器として殺傷力が通常榴弾に大きく劣り、副次的な焼夷効果もあの使い方と場所では碌に発揮する事は出来ないのです。
05時51分 | 固定リンク | Comment (445) | 平和 |
2009年01月13日
非人道兵器というものがあるなら、人道兵器というものはあるのでしょうか。実はあります。簡単なものでは「コンクリート爆弾」というものがあり、これは単純に通常の爆弾から炸薬を抜いて代わりにコンクリートを詰めたもので、レーザー誘導キットを取り付けてピンポイント攻撃に使用します。爆発しないので付随被害が発生せず、巻き添えで死傷する人を減らす事ができます。しかし全く爆発しないと満足に任務を達成できない場合もあるので、爆発はするが被害半径は極力抑えた兵器があると使い勝手がよい・・・その発想で作られた付随被害の少ない兵器がDIME(Dense Inert Metal Explosive)です。しかしこの「人道兵器」として作られたものを「新残虐兵器」だと言いだす人達が居ます。


新残虐兵器使用の疑い : 2009年1月12日「しんぶん赤旗」
同氏は、イスラエル軍がDIME(高密度不活性金属弾)という新兵器を使用している疑いがあると指摘しました。DIMEは、破壊力を強める一方、爆発の被害範囲が数メートル程度とされる米国で開発された新兵器で、二〇〇六年のイスラエル軍のガザ地区攻撃でも使用されたといわれています。当時、イタリア国営放送RAIニュース24がドキュメンタリーで報じ、負傷者の足の切断が「まるでのこぎりで切ったように骨まで切断されていた」との現場医師の話を伝えました。


ガザ市内のシファ病院で勤務するノルウェー人のギルバード医師が指摘しているわけですが・・・「破壊力を強める一方、爆発の被害範囲が数メートル程度」・・・被害半径が僅か数メートルしか無いなら、どうしてこれが残虐兵器扱いになるというのですか? 通常の爆弾ならば大きさにもよりますが、破片による殺傷範囲は数十メートルから数百メートルは被害半径になります。一方、DIMEは僅か数メートルと狭い範囲しか破壊できません。何が問題だというのでしょうか。「破壊力を強める」という部分が駄目なのでしょうか。ですが範囲が数メートルならば、通常の爆弾でも人間は絶対に助からないので、同じ事です。この兵器の意味を、開発された理由を、どうして調べないんですか。

そして読売新聞の記事は赤旗よりも激しく「謎の超兵器」化しており、もはや意味不明なシロモノとなっています。


イスラエルは最新兵器投入、ハマスは手製武器でゲリラ作戦 : 2009年1月13日 読売新聞
 【エルサレム=三井美奈】パレスチナ自治区ガザ紛争で、イスラエル軍は最新の高性能兵器を次々と投入している模様だ。

これに対し、イスラム原理主義組織ハマスは、住宅密集地での戦闘で独自の手製武器でゲリラ戦を挑んでいる。

ガザ市で活動するノルウェー人医師が地元テレビに語ったところによると、軍は米国開発の新兵器DIME(高密度不活性金属爆薬)を使った疑いがあるという。DIMEは超高濃縮炭素に金属粒を詰めた兵器で、人体の表面をほとんど傷つけずに骨や内臓を高温で焼いてしまう。殺傷力が高く、発がん性も強いとされる。


なんて酷いデマ・・・ってこれ、白燐弾に関するデマとDIMEの説明がゴチャゴチャになってませんか? 話にならないですよこの記事。こんな頭の悪い記事が編集を通るだなんて信じられません。DIMEのカーボン繊維弾殻の意味もHMTA(重金属タングステン)粉末の意味も全く理解していない。一体どうやったら物理的に「人体の表面を傷つけずに骨や内臓を高温で焼く」のか、ついさっき自分が口走った単語(炭素とか金属とか)でそんな効果がどうしたら現れるのか、説明して欲しいです。どう考えても不可能でしょうに。

DIMEに関しては2年前のヒズボラとの戦闘でも使用された疑いがあり、この時も新残虐兵器呼ばわりされています。当ブログでも記事にしているのですが、この時も赤旗はDIMEを残虐兵器呼ばわりしています。

DIMEが残虐兵器だって? : 週刊オブイェクト (2006年10月15日)

この爆弾がなぜ危害範囲が狭いのか簡単に言うと、殺傷能力のある弾殻破片がほとんど発生しないからです。実は爆弾の殺傷範囲は爆風よりも破片の方が遥かに長い距離まで届くのですが、DIMEのカーボン繊維弾殻は爆発で粉微塵になって、鉄製の破片のような殺傷力は有りません。その代りに不活性金属(火薬の爆発でも燃焼しない)のタングステン粉を入れてあります。粉末状なので空気抵抗で急速に威力は減衰し、DIMEの危害範囲は数メートルしかありません。

DIMEの危害範囲の境界線付近でタングステン粉を叩きつけられた事による「のこぎりで切ったかのような切断」という話はこの2006年の赤旗記事にも出ています。これが残虐兵器呼ばわりの根拠なのでしょうか。しかしもしDIMEではなく通常の爆弾だったら爆風と無数の弾殻破片に切り刻まれて人体は原形を留めていない、と思い浮かびそうなものですが、どうしてそういう比較した連想が出来ないのですか? 僅か数メートルの距離で爆弾が炸裂した時に、一体どれだけの人間が生き残っているのか、想像できませんか?

DIMEは巻き添えにする人間の数を大幅に減らす事が出来ますが、不幸にして巻き添えにされた場合、摘出困難な金属粉により治り難い傷を負う事は確かです。その意味で残虐兵器呼ばわりしているのでしょうが、DIMEではなくて通常爆弾ならば残虐じゃないのかと言うと、そうではないでしょう。DIMEの危害範囲(直径4メートル)周辺に人間が居たとして、通常爆弾が爆発した場合、そもそも全員助かりません。仮にDIMEを使用禁止にして通常爆弾に戻した場合、巻き添えになる死傷者は確実に増えます。

少数の死者と重傷者を出すDIMEと、多数の死者と負傷者を出す通常爆弾と一体どちらがよりマシなのか、単純にDIMEを残虐兵器呼ばわりするのではなく、その存在がどういったものかよく把握してから結論を出して下さい。
22時43分 | 固定リンク | Comment (204) | 平和 |
2009年01月12日
今回のガザでも白燐弾に関する間違った報道を鵜呑みにした例は、数年前のファルージャの時と同様に発生しています。典型例としてブログ「米流時評」さんを例に上げてみます。記事本文から白燐弾に関する部分のみをピックアップしていくと・・・


米流時評 : 「ガザジェノサイド」イスラエルの大罪を告発する!
○ジュネーブ協定違反の化学兵器も使用!

○ジュネーブ条約では市街戦では使用禁止となっている、極めて致死性の強い化学兵器であり、被爆すると皮膚や肉が溶解してしまう、とんでもない代物である。

○白燐弾についてのまとめサイトより、白燐弾についての記述の一部:この兵器は極めて卑劣な兵器である。なぜなら、白燐はその物質がなくなるまで燃え続けるものだからだ。当事者が白燐の破片を受ければ骨に達するまで燃えるものなのである。燃焼は白燐の脂溶性と発火性により第2級または第3級に値する程度になる。

○新兵器をひたすら消耗したい軍部首脳の狂気だろう。


どれも間違いです。白燐弾は新兵器などではなく、ジュネーブ条約に違反していませんし、化学兵器禁止条約のリストにも載っていません。

化学兵器禁止条約に規定された表剤 : 経済産業省

第一次世界大戦が終了した直後に毒ガス使用規制条約が結ばれましたが、その際も白燐は規制の対象外でした。そして今に至るまで対象に追加される事もなく、国際条約上、白燐は化学兵器とは扱われておらず規制されていないのです。またジュネーブ条約そのものには白燐の使用禁止を明記した条項は存在せず、特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の「焼夷兵器の使用の禁止又は制限に関する議定書」で人口密集域への焼夷兵器の使用を禁止されているのですが、イスラエル軍の使用したM825A1白燐煙幕弾は除外対象となっています。

●焼夷兵器とは、焼夷効果を第一義的な目的として設計された兵器をいう(第一条その1「定義」より)
●焼夷効果が付随的である弾薬類(発煙弾や照明弾)は焼夷兵器に含めない(第一条その1-b-iより)
 [参考:焼夷兵器の使用の禁止又は制限に関する議定書(議定書III)

M825A1砲弾は Smoke Projectiles (発煙弾)として設計されており、この議定書の定義上、明確に規制対象外となっています。条文をそのまま読んで解釈すると、それ以外に解釈のしようが無いのです。


 注)水色の砲弾がM825A1白燐煙幕弾です。


白燐弾は焼夷兵器禁止条約から漏れており、化学兵器禁止条約からも漏れている為、現状では違法兵器ではありません。つまり、「条約違反だ!」と声高に叫ぶ事は間違っています。それはデマを流す行為ですので、止めて下さい。デマでは無い、正しい、と言うのであれば、法的な根拠を指し示して下さい。しかし数年前にもこれと同じ流れになっており、白燐弾は条約違反だとする側は最終的に「条約に書かれていなくても国際慣習法のもとで不法であると論ずることができる」というアクロバット的な論法を繰り出しています。しかし白燐弾は問題化したのがつい最近の話であり、昔からの慣習であるとはとても認められません。

「国際慣習法と白燐弾」 (週刊オブイェクト 2005年12月9日)

ジュネーブ条約やハーグ陸戦条約、CCWの現状を問題視し、白燐弾を規制対象に入れようと運動するなら理解できます。ですがまだ規制されていないものを「条約で禁止された兵器」呼ばわりするのは、デタラメな行為であり、デマを流す扇動行為と見なされても仕方が無いでしょう。

・・・と言う事を簡潔に纏めて「米流時評」さんのコメント欄に書き込んできたのですが、最終的にコメントもトラックバックも全部消されてしまう結果となりました。消された事自体は了承済みですから気にしては居ませんが、最後までこちらの意図を読み取って貰う事が出来ず残念でした。一番気になったのは以下の点です。


http://beiryu2.exblog.jp/9173069/の2009年1月9日 05:48に記録された魚拓
White Phosphorusの市街地での使用が戦争犯罪であることは「11月のファルージャ攻撃」で米軍の大スキャンダルとなり米国ではすでに常識として定着していますが、日本では「極右」のブログで、これを無害として肯定する連中がいることを知り少々驚きました。

私は、右とか左とか、レッテルを貼られるのが大嫌いでして誰に言われたわけでもなく、いつも自分の直感と判断力を信じて、エントリーを書いていますが、今回の妨害は「声が大きい方が勝ち」というブログの悪い面のひとつの顕彰でしょうか。


おかしいですね、私は白燐弾が戦時国際法(国際人道法)の規制対象かどうか法律の話をしていただけで、一言も「白燐は無害だ」とは言っていないのに、どうしてこのようなレッテル貼りをされてしまうのですか? 「極右」というレッテルも酷いのですが、そういった根拠の無いデッチ上げのレッテルを相手に貼った直後に「私は右とか左とかレッテルを貼られるのが嫌い」と述べる態度を見て、理屈が通じる人では無いのだな、と思いました。「直感と判断力を信じ」とあるように、論理ではなく感情だけで書いているのでしょう。この方は欧米の報道で「条約違反の兵器だ」という記事を見て、そこで思考停止しています。実際にどの条約のどの部分が該当するか全くチェックを行わず、「常識だ」と繰り返すだけでは、生産的な議論を行う事は不可能です。どうして根拠となる原典を自分の目で見に行かないのですか? わざわざ目の前に提示したというのに・・・同じ様に誰も主張していない「白燐は無害だ」というレッテルは、大石英司ブログのコメント欄でも見受けられます。白燐が燃焼して生じる煙(五酸化二燐)は毒性は低いとする主張が、何故か白燐は無害だと主張していると誤解されてしまう例はこの他でもよく見受けられます。

この際だからハッキリさせておきますが、私は白燐弾を擁護してアメリカやイスラエルを擁護するのが目的ではありません。白燐弾に限らず、兵器本来の能力から大きく懸け離れた破壊・殺傷効果を喧伝し「謎の超兵器」をデッチ上げる行為は許さない、というのが行動原理です。ですから、正しい認識の議論の末に白燐弾が国際条約で禁止されるなら全く構いません。むしろ歓迎します。煙幕弾ならば他にも代替兵器は幾らでもありますし、自衛隊が困る事も特にありませんから。既に私は数年前のファルージャ白燐弾騒動で、反戦派が流していた「白燐が燃焼して発生するガスは猛毒だ」「半径150mの煙に入るとお終いだ」などというデマを叩き潰しました。勿論私一人で叩き潰したわけではなく、全世界で同じ様に反論を行った人達が多数現れて、反戦派の行き過ぎた誇張を修正していったのです。

だから、例えば今では白燐弾反対運動に積極的な日本の朝日新聞や毎日新聞ですら「白燐弾は国際条約に触れる兵器ではない」という事くらいは理解しています。それでも骨を溶かすとか誇張はかなり入っていますし、語るべきところを語っていない面もありますが、巷で流れているデマ報道よりはかなりマシなレベルになっています。


イスラエル軍「白リン弾」使用か ガザの死者885人に : 朝日新聞
白リン弾は、主に敵の目をそらす煙幕を張るために用いることが多いが、ざんごうなどに隠れている敵をあぶりだす際にも使われる。化学兵器とはみなされておらず、国際条約上、明確に使用が禁止されてはいないことから、米軍が04年にイラクで、イスラエル軍も06年のレバノン紛争で白リン弾を使った。

だが、高熱を発するためやけどだけでは済まず、体に深刻なダメージを与えることもあり「非人道兵器」との指摘も多い。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)も10日、ガザのような人口密集地での使用は国際人道法に違反すると訴えた。


ガザ侵攻:イスラエル軍が「白リン弾」使用…人権団体指摘 : 毎日新聞
白リン弾は国際条約で明示的に禁止された兵器ではなく、化学兵器ともみなされていない。だが、皮膚に触れると骨を溶かすほど激しく燃焼し続け、人体に深刻な被害をもたらすのが特徴だ。第二次大戦の空爆などにも使用され、消火が難しいことからその非人道性が指摘された。

現在は主に、発煙弾として使われているが、その使用の是非を巡って論争があり、元英軍少佐の軍事専門家、チャールズ・ヘイマン氏は英タイムズ紙(5日付)に「故意に市街地に投下すれば、国際刑事裁判所行きだ」と指摘している。

HRWは、白リン弾を焼夷(しょうい)弾と位置付け、人口密集地にある軍事目標や、民間人を焼夷兵器で攻撃することを禁じた「特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)第3議定書」に違反する疑いがあるとした。さらに、市民被害最小化の予防措置をとるべきだとする国際人道法の義務に反する、と強調している。


国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)が「CCWの焼夷兵器に関する第3議定書に違反している"疑いがある"」と、違反していると明言していないことに着目してください。つまりHRWとてCCW議定書の除外規定の存在(そもそも白燐煙幕弾は焼夷兵器のカテゴリーに入らない)は十分に理解しています。つまりHRWのこれからの運動方針は除外規定の撤廃あるいは条約の改正であり、朝日新聞や毎日新聞には其処まで触れて欲しかったのですが、それでも「条約に違反している」というような間違った事を明言しなかっただけでもマシです。あとチャールズ・ヘイマン氏のコメントはさほど意味を持ちません。これはイスラエル軍が「あくまで煙幕弾として使った、故意に攻撃を行ったのではない」と言い張った場合、罪に問うことはほぼ無理だからです。ハーグ国際司法裁判所でも過去に前例がありません。戦時国際法(国際人道法)は誤爆・誤射を戦争犯罪と規定しておらず、違法では無いからです。

ですから白燐弾を規制したければ現行法のままでは無理なので、条約改正運動を起こさなければなりません。反戦派は白燐弾の性質と国際法を良く理解し、地雷やクラスター爆弾のように規制できるように運動を行わなければなりません。しかしもしアメリカやイスラエルを叩ければそれで良く、白燐弾の規制には興味が無い(規制した所であまり誰も困らないから遣り甲斐が無い)というのであれば、反戦派は人道を口にしつつ人道を蔑ろにしているものと見なされます。

というか数年前に反米目的でファルージャでの白燐弾使用を非難したロシア議会という前例がありますので・・・自分達の軍隊がチェチェンで白燐弾を使っていた事を盛大にスルーして、良い根性をしています・・・


最後にオマケですが、「脂溶性」については数年前の時点で既に指摘されている事です。「軍事板常見問題FAQ」の、◆◆◆白燐弾デマゴーグ関連より。

【珍説】「黄燐(白燐)には発火性と脂溶性があり,反応する酸素が無くても,人間の肉体と反応して燃えることができます」???

これを言い出した模型ブロガーさんは既に記事を修正済みなのですが、其処を参考に纏めサイトを書かれていたmasterlow(ますたろう)氏はそれに気付いておらず、間違いがそのままになっており、「米流時評」さんがそれを鵜呑みにしてしまった、という話になっています。masterlow(ますたろう)氏が内容を修正してくれれば良いのですが、有名なフーリガンである彼は昨年、サッカー場で相手チームのサポーターに暴行を働き警察に逮捕されたゴタゴタで、もう白燐弾について書く気は失せているのか、最近のガザでの話題にも食い付いていないので、彼の纏めサイトを覗く場合は最新情報ではない事に注意してください。
01時52分 | 固定リンク | Comment (319) | 平和 |
2009年01月08日
4年前のファルージャ白燐弾狂想曲の発信源はイタリア国営放送RAIでしたが、今回のイスラエル軍によるガザでの白燐弾使用に反応しているのは、元イタリア共産党機関紙(経営不振で今は民間の資本が入り民営化)のウニタ紙(l'Unita')でした。


ガザでの白リン弾の使用 ウニタ紙より | P-navi info : パレスチナ・ナビ編集員ビーのブログ
イスラエルは白燐クラスター爆弾*を使用している。これはジュネーヴ条約と1980年の関連国際議定書に基づき、対民間人および人口密集地域での使用を禁止された兵器である。 [*註 クラスター状の白燐弾か?]


初っ端から出鱈目のオンパレードで萎えるのですが・・・使われたのは確かに白燐弾(155mm M825A1 white phosphorus smoke shell)ですが、クラスター弾ではありません。クラスター弾とは親弾から多数の子弾が分かれ、それそれの子弾が爆弾としての機能を持つ物を言います。クラスター弾を禁止したオスロ条約では「爆発性子弾」と定義されています。白燐弾は空中炸裂させると幾つかの破片に分かれますが、通常の榴弾でも破片は発生するわけですから、破片の事をクラスター子弾扱いは出来ないのです。調整破片やベアリング弾でもクラスター子弾とは呼びません。ならば白燐の破片でも同じ事です。イスラエル軍が使用したM825A1白燐弾は空中炸裂させた際に分散するように、白燐は多数のウェッジで分けられていますが、意味合いとしては通常榴弾の調整破片と同じ発想です。なお第二次世界大戦で使われた「集束焼夷弾」のような構造ならばクラスター焼夷弾と呼べますが(それでも焼夷効果のみの弾子ならばオスロ条約の定義から外れる場合がある)、集束焼夷弾は現在、どの国の軍隊も保有していません。

恐らくこの勘違いは、M825A1白燐弾がM483A1DPICM弾(クラスター弾)の弾殻をベースにしており、弾道が類似するように設計されている事から、両者を混同した結果なのかもしれません。或いは単純にバラバラに別れたら何でもクラスター弾だと思っているのか・・・何だかそっちの方が有りそうな話ですね。

Smoke Projectiles | FAS.org(M825A1の画像)

次にジュネーヴ条約と1980年の関連国際議定書で使用を禁止された兵器との事ですが・・・完全に間違っています。この事は数年前の騒動の時に私が書いた記事「国際慣習法と白燐弾」でも触れています。ジュネーブ条約とはハーグ陸戦法規の23条に記された禁止項目「不必要の苦痛を与える兵器、投射物その他の物質を使用すること」を意味するのでしょうが、これまでこれに基づいて使用禁止が明確にされた兵器はダムダム弾しか例が無く、白燐弾が戦場で使用され始めたこれまで100年以上、議論の対象物として俎上にも上がった事がありません。

そして1980年の関連国際議定書とは、特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の「焼夷兵器の使用の禁止又は制限に関する議定書」を指しているものと思われます。しかしこの議定書では、白燐弾は規制の対象外となっているのです。

●焼夷兵器とは、焼夷効果を第一義的な目的として設計された兵器をいう(第一条その1「定義」より)
●焼夷効果が付随的である弾薬類(発煙弾や照明弾)は焼夷兵器に含めない(第一条その1-b-iより)
 [参考:焼夷兵器の使用の禁止又は制限に関する議定書(議定書III)

今回イスラエル軍がガザで使用した155mmM825A1白燐弾は煙幕を発生させる発煙弾として設計された兵器であり、焼夷効果が付随的である弾薬類である為、この議定書の適用上の「焼夷兵器」の定義自体から外れています。つまり使用制限を何も受けません。条約に該当しない兵器であるにも拘らず、「使用を禁止された兵器」と報道する事はデマゴーグ以外の何物でもありません。そのような事をするから、ファルージャの時も誰にも相手にされなくなったのです。先ずは事実を述べてから、条約の規制対象になるように運動する事、それが正しい筋道でしょう?なぜ平然と嘘を吐けるのですか。・・・恐らく記事を書いた記者は、CCW議定書の条文を読んでチェックとか全然していないんでしょう。反戦団体の主張をそのまま信じ込んだ結果がこれです。
22時29分 | 固定リンク | Comment (171) | 平和 |
2009年01月06日
イスラエル軍がガザに地上侵攻した際に、数年前に話題になった(その後、忘れ去られてしまった)兵器が投入されていました。これについて本当に忘れ去られてしまっていたらしく、あちこちで「この兵器は何だ?」という疑問の声が上がっていたので、同兵器の動画を付けて解説します。



404 名前:名無し三等兵 投稿日:2009/01/04(日) 22:49:52 ID:???
これはどういう兵器なんでしょう?クラスター爆弾?多弾頭ミサイル?
http://sankei.jp.msn.com/photos/world/mideast/090104/mds0901042233009-l2.htm


これは白燐(WP:White Phosphorus)煙幕弾です。



【WP White Phosphorus over Gaza 2009】



【White Phosphorus Artillery Shoot Fallujah 2004】


2009年のパレスチナのガザ地区で使われたものと、2004年のイラクのファルージャで使われたものが、全く同一である事が分かります。これは野戦重砲から発射する発煙弾で、煙幕やスモークマーカーとして使います。地表への着弾による爆発と、時限信管を用いた空中での爆発の2種類の使い方があり、イスラエル軍は空中炸裂で発生する煙そのものを利用した砲撃を行っています。

以下の動画は地表で炸裂させた場合です。



【M110 155mm White Phosphorus (WP)】


そして以下は155mm砲弾ではなく、戦車に搭載するスモークディスチャージャーからの燐系煙幕弾(74式戦車が白燐、90式戦車が赤燐で、発生する煙はどちらも同じ五酸化二燐)を発射する様子です。



【富士総合火力演習 2007】


これについては数年前に書いた「空中炸裂する白燐弾を検証」もご覧下さい。というよりは、カテゴリ「白リン弾」に掲載されている記事を見て頂ければ、数年前のファルージャ白燐弾狂想曲の様子を知る事が出来ます。あの時、あれだけ大騒ぎしていたのに、白燐弾について一過性で終わってしまいました。地雷やクラスター爆弾のように規制する動きはついぞ出て来ず、国際的にも国内的にも白燐弾騒動は急速に忘れ去られてしまっています。

これは白燐弾を非難していた反戦平和団体が、白燐弾の事を実態よりも遥かに強力な兵器として喧伝した結果「謎の超兵器」と化してしまい、その虚像が暴かれ、相手にされなくなった事によります。思えばあの時、常識的な範囲内での糾弾に徹していれば、白燐弾の規制は進んでいた筈でした。白燐に近い種類でありながら毒性が無い赤燐(ただし燃焼して発生する煙は同じ五酸化二燐であり、発煙や焼夷効果を問題視する場合は白燐と意味合いは大きく変わらない)や、六塩化エタン発煙弾(HC発煙弾)など、白燐煙幕弾の代替となるものは幾らでもあるので、例え使用が禁止されてもさほど困らないのです。
01時11分 | 固定リンク | Comment (147) | 平和 |
2008年12月29日
前回の記事「核兵器シェアリングという幻想」は少し説明が長くなってしまいましたが、NATO方式の核兵器シェアリングを一言で言い表すと「アメリカがNATO加盟国に短射程戦術核兵器を使用直前に譲渡し、攻め込んできた敵軍を吹き飛ばす為のもの」です。短射程戦術核兵器である以上、敵国が持つ長射程戦略核兵器に対する抑止力とは成り得ません。ではどうしてこんな事を、核兵器をわざわざ手渡す必要があるのでしょうか。アメリカ軍がそのまま使ってしまった方が手早く効率的な筈です。核兵器シェアリングという回りくどい事をする意味・・・それは短射程戦術核兵器という存在の意味を理解すれば、その理由が分かります。

自国自身が、自己の判断で、自国領土内で、攻め込んできた敵軍に、核攻撃を行う。

これが短射程戦術核兵器を譲渡する事の意味です。攻め込んできたソ連軍に対し、アメリカ軍が核攻撃を行った場合、戦場となった国は大被害を受けます。アメリカ軍の行動がNATO指揮下のものであり、NATO加盟国が納得済みであったとしても、被害を受けた国の国民はとても納得できないでしょう。例え戦争に勝てたとしても、核攻撃を行ったアメリカは恨まれる事になります。味方殺しの罪・・・核兵器シェアリングとは、この味方殺しの罪を一緒に背負うという意味があります。アメリカ一国に罪を背負わせるのではなく、NATO全体で背負っていく為に・・・故に核兵器を使用直前に配備国へ譲渡し、配備国の責任の下に使用します。自国領土に核を落とす決断を、自国自身の手で行う為に。これほどまでの悲壮な覚悟を持っていなければ、核兵器シェアリングに参加することなど出来ません。お手軽に核武装できる手段だと勘違いしている人が居ますが、それは甚だしい間違いです。

構想自体が「自国領土内での迎撃戦闘に核兵器を用いる」という前提であるが故、核兵器シェアリングで譲渡される兵器は短射程のものに限られます。敵国の中枢部を直撃できる長射程の核兵器は、そもそもこの核兵器シェアリングという構想の目的外のものです。実は「アメリカ本土を攻撃できるような核兵器は譲渡されない」というのは副次的な意味での結果であって、それが第一の理由ではありません。その為、アメリカ本土さえ安全ならいいだろうと「日本とアメリカが核兵器シェアリングを行い、アメリカ本土は攻撃できないが中国の主要部に届く射程の核兵器を用意する」という選択は、出来ません。核兵器シェアリングとは配備国の意思で自国領土内で核兵器による迎撃戦闘を行うものである以上、敵国領土を攻撃する目的の核兵器は最初から有り得ません。そのようなものは存在自体が既に核兵器シェアリングという概念から外れてしまっているのです。

その為、もし日本に核兵器シェアリングを適用するとしても、NATOで行われているB61戦術核爆弾の譲渡は出来ないかもしれません。B61をNATOで使う場合には、ソ連中枢に叩き込もうとする国は無いでしょう。大規模地上戦闘が始まっている時点で、既にそのような目標はアメリカの戦略核兵器によって叩かれた後である上に、目の前に迫ってきている敵地上軍を何とかするほうが先決だからです。一方、日本の場合、中露への爆撃は無理でも北朝鮮への爆撃はどうにか可能であり、北朝鮮は大規模途洋侵攻をして来ないわけで、そうなると北朝鮮の長射程核兵器に対して、B61を核抑止力・核報復手段として使おうとしたがるでしょう。しかしそれは核兵器シェアリングの意味から逸脱してしまいます。よって、アメリカはNATO加盟国にB61を譲渡しても日本には譲渡しない可能性が高いです。その場合、日本が核兵器シェアリングで許される核兵器は、対空核ミサイルや榴弾砲用の戦術核砲弾などの、国内での迎撃戦闘にのみ使用できる物に限られます。

ところで・・・


【著者が語る】報道されない近現代史
アパグループCEO・元谷外志雄氏
(産経新聞出版・1575円)
FujiSankei Business i. 2008/5/24

本書では、米国が独、伊など5カ国に核抑止力のための政策として提供している「ニュークリア・シェアリング(核分担)」の有効性を説いた。これは、米国が戦時には核を保有しない同盟国に核兵器を提供する仕組みで、メディアは知らせようとすらしない。


まさか田母神前空幕長の元ネタはこの本なのか、それともアパの元谷社長に教え込んだ側なのか、それとも二人とも別の人の主張を鵜呑みにしているのか知りませんが・・・まさか核兵器シェアリングで長射程戦略核兵器が得られるとか、勘違いしていないでしょうね?
23時30分 | 固定リンク | Comment (40) | 平和 |
2008年12月28日
田母神前空幕長が「核ミサイルの発射権を日本に与えてくれという(米軍との)交渉は、私はできると思う」と主張したのは、NATO方式の核兵器シェアリングという構想を念頭に置いています。NATOの核兵器シェアリングとは、平時は駐留アメリカ軍が保管している核兵器を、有事の際に必要に応じて配備国へ譲渡し、使用権限を与えるという方式です。起爆コードは使用直前までアメリカ軍が管理します。現在受け入れ国はベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ、トルコの五カ国で、カナダやギリシャは既に離脱しています。

当然の事ながら決定権はアメリカ政府にあり、そして万が一にも譲渡した核兵器がアメリカ本土に向けられる事が無いように、長射程ミサイルなどは除外されます。つまり直接アメリカ本土を狙えるICBM級の長射程兵器は除外されますし、隠密裏にアメリカ本土に接近できる潜水艦に搭載できる兵器も除外されます。具体的に現時点で、譲渡される予定の核兵器はB61戦術核爆弾となっています。以前にはMIM-14ナイキ・ハーキュリーズ地対空ミサイルやCIM-10ボマーク地対空ミサイルの核弾頭型、AIR-2ジニー空対空核弾頭ロケット、MGR-1オネスト・ジョン地対地ロケット核弾頭型も譲渡対象の兵器でしたが、どれも射程は短い戦術核兵器で、中距離弾道弾どころか短距離弾道弾よりも射程は短いものばかりです。B61戦術核爆弾に至っては、単なる自由落下爆弾です。

B61 (核爆弾) - Wikipedia
MIM-14 (ミサイル) - Wikipedia
ボマーク (ミサイル) - Wikipedia
AIR-2 (ミサイル) - Wikipedia
MGR-1 (ロケット) - Wikipedia
Nuclear Weapon Effects Calculator(核兵器威力計算)

基本的にこれらの戦術核兵器は、押し寄せる戦車部隊を吹き飛ばしたり、爆撃機の大群を一網打尽に吹き飛ばす為に有ります。都市への攻撃や敵ミサイルサイロへの攻撃など、戦略目標を狙うには破壊力が劣り(それでも広島型原爆の数十倍の破壊力だが)、射程などを見ても全く不向きです。つまりこれは冷戦時代に考えられていた実戦での戦術核兵器の応酬に対抗する為のものであり、核抑止力を発揮する為にあるのではありません。地続きのヨーロッパなら戦争時の使い道は多いのかもしれませんが、大陸と海を隔てた日本の場合、あまり意味がありません。

例えば日本が現在のNATO核兵器シェアリングと同条件で、有事の際は在日米軍からB61戦術核爆弾を受け取り、使用できるとします。運用するのはF-15やF-4、F-2といった戦闘機となるわけですが、作戦行動半径の関係上、空中給油機を随伴させたとしても、ロシアや中国の奥地への攻撃はまず無理で、弾道ミサイルのサイロを叩きに行く事は出来ません。また威力不足で、硬化サイロを破壊できない可能性があります。それ以前に防空網を突破できるだけの戦力を送り込めそうに無く、ステルス戦略爆撃機にB83戦略熱核爆弾(2メガトン)でも積んで行くなら話は別ですが、B61戦術核爆弾程度では、ロシアや中国に対する抑止力とは成り得ないでしょう。北朝鮮ならば空中給油が出来ればなんとか空爆が行える範囲ですので、対北朝鮮限定ならばそれなりに意味はあるかもしれません。日本がNATO方式の核兵器シェアリングを行うという事は、得られる効果はこれが限度です。前空幕長ならこんな事ぐらい当然理解しているだろうからともかく、支持者の方で核兵器シェアリングに賛同している人は、この事をきちんと把握しているのでしょうか? 

アメリカがNATO諸国に許した核兵器シェアリングの兵器は基本的に全て迎撃用です。地対空ミサイルや空対空ミサイルの核弾頭タイプは敵爆撃機編隊迎撃用ですし(MIM-14は対地攻撃モードもあるが)、B61戦術核爆弾も、押し寄せる敵戦車群に放り込む事を想定しています。MGR-1地対地ロケットもその射程の短さから、侵攻してくる敵前線部隊相手にしか使えません。IRBM(中距離弾道弾)やICBM(大陸間弾道弾)、長射程の巡航ミサイルなどの兵器は、分担の対象にはなっていないのです。例えば冷戦時代、西ドイツ空軍が運用していたパーシング中距離弾道ミサイルは、ミサイルの発射権限と核弾頭はアメリカ軍の管轄下にあり、戦時でも西ドイツへの譲渡はされません。西ドイツのパーシング部隊は一度、アメリカ軍管轄の核弾頭を戦時に譲渡される体制を試した事がありますが、やはり駄目だと5年で中止されています。イタリアが計画していたポラリス弾道ミサイルを搭載する戦略ミサイル巡洋艦構想はミサイルが丸ごとアメリカの管轄下にあり、発射権限もアメリカ軍が握っています。

もし中国やロシアへの核抑止力が欲しいのであれば長射程兵器が必要ですが、この場合は核兵器シェアリングではなく、嘗ての西ドイツ空軍のパーシング部隊やイタリア海軍の戦略ミサイル巡洋艦構想のような方向で無いと、アメリカは許可しないでしょう。北朝鮮相手でも、B61のような自由落下の戦術核爆弾で長距離爆撃を行うのは大変で、しかも戦略目標を狙う気なら効果は低く、核兵器シェアリングは割に合いません。

しかも現状、NATOの核兵器シェアリングは冷戦時代の遺物だとされ、撤廃される方向で話が進んでいます。B61戦術核爆弾も古く、一部で延命されているものの、全体の多くは寿命に近付いています。もう核兵器シェアリングという考え方自体が消えてなくなる寸前にあるのです。それなのに日本が今更になって申し込んだりしたら・・・

田母神;「核ミサイルの発射権を日本に与えてくれ!」
米空軍;「分かった、君の国は専守防衛だったな、だったら地対空ミサイルのパトリオット核弾頭型で良いか? それとも君には馴染みのナイキが良いかな? 是非とも長沼に配備してくれ」

きっとアメリカさんとしては冗談だと思ってこんな返答を行うだろう、と思うのですがどうでしょうか。
22時00分 | 固定リンク | Comment (121) | 平和 |
2008年12月27日
今度はとうとう、根拠ゼロで99%支持ですって・・・一体、何処の国の独裁者の支持率ですか?


田母神氏「制服99%が支持」 講演で影響力強調 : 共同通信
政府見解の歴史認識を否定する論文公表で更迭された田母神俊雄前航空幕僚長が23日、熊本市内で講演し「制服自衛官の99%が私を支持していると思う」と自身の影響力を強調した。

講演に先立ち記者会見した田母神氏は「(講演では)一民間人の立場で話すが、前空幕長として見られるだろう」と発言。「日本は自衛官に発言させまいとする力が常に働いているが、自衛官はもっと自分の思ったことを言っていい」とぶちまけた。

講演では「専守防衛は抑止力にならない。自分の国がより強い方がより安全だ」「核ミサイルの発射権を日本に与えてくれという(米軍との)交渉は、私はできると思う」などと、核武装を容認する考えを並べ立てた。


制服自衛官が99%支持していると思う、というのは流石に本気で言っているのではないでしょう、もし本気で言っているなら頭がおかしくなっていると見るべきでしょうね。つまり何の根拠も無く99%という数字を出してハッタリをカマしたわけですが、もうその時点で「私は寝言を言っています」と宣言したようなもので、お笑い芸人としては良いかもしれませんが、政治的センスは微塵も感じられず、煽動家としても上手くはいかないでしょう。このまま放って置けばピエロで終わります。もうこの人を話題に上げる価値すらも見い出せなくなりつつありますね・・・今後はよほどのことが無い限り、取り上げる事は無いでしょう。

あと一点だけ。

「核ミサイルの発射権を日本に与えてくれという(米軍との)交渉は、私はできると思う」

何ですかコレ? 自主核武装の話をしているんですか、それとも核兵器シェアリングの話をしているのですか、どっちですか? そしてどちらだとしても厚顔無恥な話でしょう。あれだけアメリカを陰謀論だの何だので悪し様に罵り、アメリカに隷属するのはイヤだ、自主国防がしたいと言い張っておきながら、イザ核武装の際にはアメリカは日本に全面協力してくれるはずだ、OKしてくれる筈だ・・・あのですね、自分がアメリカの立場に立って見て下さい。もし日本がそんな事を言ってきて、呑むと思いますか? 日本がアメリカに核を向けないという保障が無い限り、危なっかしくてそんな事できるわけが無いでしょう?

日本の核武装論者に多く見られる傾向ですが、普段反米的主張を繰り返している癖にこういう時だけアメリカは助けてくれると信じきっているのは、甘えでしかありません。楽観主義にも程があるんじゃないですか?

もし日本が核を持てるとしたら、非核三原則を無くした上で、核兵器シェアリングですらないプラン・・・かつて1960年代にイタリアが実際に計画した「戦略ミサイル巡洋艦構想」ぐらいならまだ現実味があるかもしれませんがね。これはイタリアが用意するのが巡洋艦という容器だけで、アメリカの核弾道ミサイル(UGM-27ポラリスを4基)とその発射権限を有するアメリカ軍人を乗せる方式でした。この戦略ミサイル巡洋艦構想は既存の巡洋艦「ガリバルディ」をポラリス搭載改修まで行いながら肝心の核ミサイルを実装せずに終わりましたが、寸前まで行ったプランです。容器自体は別にディーゼル潜水艦でも構いません。

でもこのプランだと発射権限は日本が握れないので、自主国防論者の人には支持されないでしょう。そうでなくても単体プランとして見ても今の日本に適用するのはかなり無理がある話で、必要性があるとは思えませんし、国民の支持は得られません。ましてや「核ミサイルの発射権を日本に与えてくれ」などと、余計に通用する話では無い筈です。

Giuseppe Garibaldi (incrociatore 1961) - Wikipedia

これはイタリア版ウィキペディアのページですが、巡洋艦ガリバルディ改装後の弾道ミサイル・ポラリス搭載セルの写真「La sistemazione per i missili Polaris.」と、模擬発射試験の写真「Lancio di simulacro inerte di missile Polaris.」を見る事が出来ます。
23時33分 | 固定リンク | Comment (152) | 平和 |
2008年12月17日
軍事ネタを拾う手段の一環として、はてなブックマークのタグ「軍事」をチェック先として定期巡回しているのですが、ちょっと吹いてしまったネタを見つけてきました。



中国サイトで公開されている日本の軍事情報 | zero-in
中国のインターネットサイトでは日本の軍事情報がよく掲載されている。その多くが反日的色合いが濃いサイトで、日本が侵略国家として軍拡にいそしんでいるという宣伝素材として利用されているというものだ。ところがその内容に情報保全の面から見て、気になるものが含まれているという。

以下の写真は「焦点新聞」という中国の情報サイトで公開されているものの一部だ。

〜中略〜

「焦点新聞」では「あたご」が完成するまで、ほぼ2年間に亘って定点観測し続けた写真がズラッと並んでいる。撮影場所は写真の角度から、ほぼ特定できている。長崎の有名な観光スポットの近くとのことであり、ひょっとするとある種のマニアの人たちには有名な場所かも知れないが、撮影者は単なるマニアの域を超えた長期的な活動である。この写真の出所は中国の人民解放軍の広報サイトだという。

〜中略〜

今回のケースで重要なことは、日本の一般市民が、こうした撮影を長期間に亘って継続して行う外国の情報収集グループが自国内で日常的に活動している事実を認識することだ。


ほえ?・・・何時から「長崎県平和委員会」は人民解放軍の広報サイトになったんですか? いやその、zero-inで紹介されている中国サイト「焦点新聞」に掲載されている海上自衛隊のイージス艦建造写真は、全部日本にあるこのサイトが出所の筈ですよ。例えばzero-inの記事で中国サイト「焦点新聞」掲載写真とされている一枚目は、長崎県平和委員会の記事「新型イージス護衛艦の建設現場1」にある【2005年3月07日】の写真です。寸分違わず同じ写真ですね。二枚目はNo.3にある【2005年7月2日】の写真です。・・・確かに長崎県平和委員会の皆さんは、長崎港ウォッチングに関して言えば単なるマニアの域を超えた人達ですが、あくまで日本の一般市民であって、「外国の情報収集グループ」ではないですし、中国の軍事情報サイトは単に此処から写真を無断でパクっているだけです。要するに中国サイト「焦点新聞」は、写真の出所が日本人の運営するサイトからの丸ごと無断転載であると言えないから、人民解放軍の広報サイトから拾ってきたと言い訳をしているだけでしょう。長崎県平和委員会は焦点新聞に対し、画像の無断転載について正式に抗議するとよいと思うのですよ。画像だけでなく記事全体を丸ごとパクられてますよね、これって。

zero-inのこの記事を書いたのは編集部の何方かは署名が書かれていませんが、執筆陣の中には元自衛隊で情報戦の専門家である松本重夫氏が居られるので、おそらく同氏が書いた記事でしょう。仮にも情報戦のプロを自認されるのでしたら、「焦点新聞」の写真の出所が本当に人民解放軍の広報サイトからなのか、ちゃんと確かめて欲しかったです。もし本当に広報サイトに載っていた場合、人民解放軍の情報収集能力は他人のサイトから記事を丸ごとパクってくるしか能が無いという悲惨な有様が証明されていた筈です。しかしまぁ、そんなことはまず無いので、焦点新聞が嘘を吐いているだけなのでしょうけれど。
02時47分 | 固定リンク | Comment (56) | 平和 |
2008年12月16日
五百籏頭 真(いおきべ まこと)・・・日本国、防衛大学校長。
朱 成虎(Zhu Chenghu)・・・中華人民共和国、国防大学防務学院長。

両者は似たような役職に在ります。違いといえば朱成虎防務学院長は空軍少将の身分を持っているのに対し、五百籏頭校長は元は神戸大学の教授で、防衛大学校長へは招かれて就任しており、将官の地位は無く防衛省職員(自衛隊員)という扱いです。また防務学院とは中国人民解放軍国防大学の内部部局の一つです。防務学院長は国防大学の中の一つの学部長という役職です。今回は田母神論文騒動について、五百籏頭校長と朱成虎学院長の例を紹介します。

先ずは週刊フライデー12月26日号に掲載された田母神前空幕長インタビュー記事から、五百籏頭真・防衛大学校長に関する部分です。


FRIDAY 2008年12月26日号 田母神俊雄《前航空幕僚長》【激白】「過剰な文民統制が日本を滅ぼす」
一方では2年前に防衛大学校長が、新聞紙上で自衛隊のイラク派遣反対の意見や小泉総理(当時)の靖国神社参拝反対の意見を公表しました。防大校長も自衛隊員ですが、その発言の責任を問われる事はありませんでした。防大校長が政府の政策に真っ向から反対しているのに対し、私は私の歴史認識を述べただけなのです。この扱いの差は一体何なのでしょうか。


田母神前空幕長はどうやら勘違いをしているようで、五百籏頭真・防衛大学校長が田母神論文騒動以後に毎日新聞にコメントした最近の批判記事と、2年前の小泉内閣メールマガジンに掲載された内容とを取り違えてゴッチャにしている模様です。しかも内容自体をよく確認していないのか、「防大校長が政府の政策に真っ向から反対している」等と、事実とは異なる見解を述べています。


小泉内閣メールマガジン 第248号 (2006/09/07)
ちなみに私はイラク戦争が間違った戦争であると判断し、筋目の悪い戦で米国と一緒してもきっと後味悪い結果になると憂慮した。間違った戦争であることは、その後ますます明瞭となったが、イラクに派遣された自衛隊に悲劇は起こらなかったし、日米関係も悪化しなかった。

それどころか、小泉首相は自らの任期中に陸上自衛隊をサマワから見事に撤収した。しかも対米関係をこじらせることなく、ブッシュ政権から称賛を浴びながら。この魔術に対しては脱帽する他はない。


五百籏頭校長はイラクで大量破壊兵器が見付からなかった以上、間違った判断の元に開戦した事はますます明瞭になった・・・とは述べていますが、小泉政権がアメリカを支持し自衛隊をイラクに送り込んだ判断は結果的に正しかったと力説しています。靖国参拝に関して言えば、これは政府方針ではなく小泉首相個人の判断であり、これを批判したところで政府方針に反する事にはなりません。そして発行元が首相官邸からである小泉内閣メールマガジンに掲載されている以上、内容は官邸側でチェック済みであることは当然の話で、この件が問題になる要素は最初から存在しません。

つまり田母神前空幕長が言う『防大校長が政府の政策に真っ向から反対しているのに対し、私は私の歴史認識を述べただけなのです』という部分は最初の前提条件からして誤認であり、田母神論文騒動と対比できるものでは有りません。また、田母神論文の歴史認識が政府の政策と真っ向から反対している点を認めようとしないのはおかしな態度です。

そして『この扱いの差は一体何なのでしょうか』という投げ掛けについても、空幕長と防大校長では身分も立ち居地も違う、という事が言える筈です。防衛大学校は士官養成学校であると同時に学問と研究の場でもある為、学者の主張は学問の自由の範囲である程度容認されます。一般国立大学の教授が幾ら政府方針に反する主張を唱えても解任されたりはしません。防衛大学校はそれより制約はありますが、研究の名目で政府方針と異なる見解を述べる事は可能です。ですから仮に防衛大学校長が学者として一つの戦略論として「イラク派遣をすべきではない理由」という論文を出しても許容される可能性はありますし、田母神論文も防衛大学校の学者として出した論文であるならば、許容されていた可能性はあります。ただ逆に「こんなものは論文とは認められない」と、政府方針云々以前の次元で、学術的要素の問題で学者としての資質が問われてクビにされる可能性は高まりますが。

そこで例となるのが中国の朱成虎・国防大学防務学院長の場合です。朱成虎防務学院長は以前から先制核攻撃論を持論として度々陳述しており、その内容はすこぶる過激なものです。中国政府の基本方針が先制核攻撃の否定であるのに対し、朱成虎防務学院長の主張はそれを完全に逸脱しています。

中国は人口が多く地形も複雑なので、全面核戦争に突入しても人民が生き残る確率は他国より高い。世界人口が激減した場合でも中国の優位性は確保される。その為には中国主導で全面核戦争を引き起こせるだけの量の核弾頭を装備すべきだ・・・といった内容です。これは例えばロシア人が「核の冬が起きた場合、寒さに強いロシア人が最終的に生き残るので全面核戦争を是非ともしよう」と冗談で言うのに匹敵する内容ですが、中国の人口の多さと地形の複雑さによる核戦争下における生存性の高さは事実で、中国に世界中を攻撃できる核ミサイルの十分な数が有りさえすれば、世界を半ば滅ぼした後に勝利を手にする事が出来る・・・その勝利にどのような意味があるのかはともかく、戦術論としての先制核攻撃論は一面の真理が存在しています。あくまで学者による研究としての先制核攻撃論である為、それまで政府方針と異なっていても全く処分はされず、野放し状態でした。

ただ、朱成虎防務学院長は少し調子に乗りすぎたようで、英語に堪能な同学院長は香港で英米の大手マスコミを集めて会見を開き、その場でアメリカを名指しし、台湾問題でアメリカ軍が介入してきたら、それが通常兵器によるものであっても、中国は核攻撃による報復攻撃を行うと表明したのです。これが2005年7月14日の出来事です。アメリカ政府は朱成虎防務学院長の発言が中国の政府方針とは異なる事を理解して特に相手にせず、中国政府も何時もの事だと放置していましたが、大手マスコミの目の前で名指しで主張した為に騒動になり、アメリカ議会は下院が中国政府に対し朱成虎防務学院長の発言の撤回と免職を要求する決議を採択しました。

中国政府は暫く相手にしていませんでしたが、アメリカ議会からの圧力に抗しきれず、最終的に以下のような対応を取っています。朱成虎防務学院長は、アメリカ議会から免職要求を受けた初めての人民解放軍の将軍です。

Booming China promises peace and goodwill - Guardian
China punishes general for talk of strike at U.S. - International Herald Tribune

朱成虎防務学院長の受けた処分は、今後の昇進に響く様、"administrative demerit"(管理欠点とでも訳すのか)を書類上で報告しておく、というものです。発言の撤回はされず、地位的には免職もありませんでした。処分内容は正式な発表が無く、表向きにアメリカの圧力要求に屈したと認めるわけにはいかないのでしょう。処分されたとされる情報は全て匿名の軍情報筋からです。その為、何処まで本当に実行された事なのか不確実な部分もあるのですが、中国マスコミや欧米の大手マスコミが報じている以上、それを中国政府が黙認している以上、何らかの処分があったことは確かな事だと思います。朱成虎防務学院長は以前から過激発言が目立つ為、国防大学の戦略研究部門から軍事訓練部門(防務学院)へ移され、過激な発言がなるべく出来ないように隔離されていたとされています。

いくら国防大学の教授としての研究であるから政府方針と違っていても構わないといっても、モノには限度があったのが朱成虎防務学院長のケースです。
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2008年12月01日
当たり前の話なんですが、武装クーデターとは武装して行うクーデターであり、別に軍隊でなくても武装している集団なら実行は可能です。


発信箱:論文クーデター=広岩近広(編集局) - 毎日新聞
半藤さんはこう強調された。「自衛隊を軍隊にするのは反対です。なぜなら、どの国もクーデターは軍隊が起こしているからで、自衛隊を武装クーデターを可能にする軍隊組織にしてはなりません」


この話は作家の半藤一利さん(保守派の護憲派)から毎日新聞の広岩近広記者が聞いた話ですが、根本的に認識が間違っています。武装クーデターは武装組織ならばやり方次第でどのように存在にでも起こせる可能性があり、自衛隊が戦力そのままで名称を自衛軍あたりに変えたところで、今まで出来なかった武装クーデターが突然に可能となるわけではありません。

例えば実例として幾つかありますが・・・

「軍隊を持たない国が、他国から攻撃を受ける筈が無い?」

これは2年近く前に書いた話ですが、1988年にモルディブ共和国で発生したクーデターは、モルディブ国内の実業家がスリランカの傭兵を用いて決起し、インド軍によって鎮圧されたものです。当時モルディブは軍隊が存在せず、首謀者は軍人ではありませんでした。

また2000年のフィジー諸島共和国でのクーデターや、2004年のハイチ共和国でのクーデターは、反政府武装勢力が政権転覆を狙って起こしたものですし、2007年にアメリカで発覚したラオス人民民主共和国へのクーデター未遂計画は、退役アメリカ軍人と亡命ラオス軍人が傭兵を雇って総費用35億円で決行しようとしていました。

つまり正規の軍隊以外の集団で武装クーデターを謀る事は、意外と日常茶飯事に計画されています。もちろん、未遂に終わったり失敗に終わったりと成功率は低いのですが、どうしても戦力的に限定されてしまう以上、一か八かの大博打になりやすいです。ただ、傭兵を雇ってクーデターとか外国軍を誘致してクーデターといった手法は、古来より使い古された手垢に塗れたもので、一種の定番とさえ言えます。このやり方なら、当然の話ですが軍隊の存在しない国の方が簡単に政権転覆を狙えます。
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2008年11月28日
ようやくM26クラスター・ロケット弾の代替兵器候補としてM31ユニタリー・ロケット弾の名前が実際に出てきました。報道されるのは恐らくこれが初です。


クラスター弾全廃を決定=精密誘導弾で代替−政府 : 時事通信
今後は、子爆弾を出さない単弾頭型で命中精度の高い精密誘導弾の「M31ロケット弾」と「レーザーJDAM」を導入し、防衛力を維持する考え。防衛省は09年度予算で、クラスター弾廃棄に向けた調査費2億円と、精密誘導弾の整備費用73億円を要求。廃棄費用は200億円規模に上るとみられる。


クラスター爆弾規制方針が決まったダブリン会議の直後から、M31導入を唱え続けていたので、これで一安心なのです。M26クラスター弾頭の単弾頭化改造案は無くなったのか、それともM31単弾頭の導入と並行して行うのか、これはまだ詳細が分かりません。それと以前お伝えしたレーザーJDAMの件、朝日新聞8月30日朝刊の報道が正しかったのです。

「防衛省、MLRSクラスター弾頭の単弾頭化を検討」

「LJDAM導入の可能性?」

このレーザーJDAMの件について、ネット版の記事が出ていないからといって、原典の記事をチェックせずに、他人が新聞記事をネット上に転載した内容を鵜呑みにし、転載ミス(その人は悪気があったのではなく単なる思い込みでのウッカリ)に気付かず、朝日新聞の記事を非難した事は申し訳なく、謝罪します。今後は可能な限り自分の目でソースをチェックする事を心掛けたいと思います。

そうすると8月30日の段階でレーザーJDAMの件を報じた朝日新聞はスクープ報道をしていたことになります。調べてみると10月発売の航空専門誌(航空ファン、航空情報)でレーザーJDAM導入の記事があり、これが二番目で、そして今回の報道で三番目になるので、朝日新聞の報道はかなり速かったわけです。




レーザーJDAM導入で爆弾誘導キットとは別にレーザーターゲッティングポッドも導入する必要があります。

さてM31ユニタリー・ロケット弾(MLRSを進化させたGPS誘導GMLRSの単弾頭型)の話に戻りますが、5月の終わりにクラスター爆弾の規制がダブリン会議でほぼ決定した際に、私は真っ先にM31(XM31)の導入を最優先で緊急に行え、と書きました。

「クラスター爆弾、対戦車誘導型以外を全面廃棄へ」

これは元々、防衛省の中ではクラスター爆弾規制の話とは無関係に数年前からGMLRS導入の話が出ていたので、当然すんなりと決まると思い込んでいて、M31導入論など他の人でも誰でも思いつくありふれた意見だと認識していました。しかし実際には全くM31の名前が上がってこず、一部の新聞に至っては「クラスター爆弾規制でMLRSが全廃される見通し」などと信じられない事を言い出す有様でした。

「MLRSを全廃? 東京新聞は何か勘違いしているのでは・・・」

この時に自分が受けたショックは大きく、「そんな馬鹿な事がある筈が無い」と、この新聞報道を全否定する記事を書いたわけですが、今から見ると記事内容はともかく記事タイトルが疑問形で弱弱しく、当時一向に何処からもM31導入の話が出てこない困惑感から弱気になっている様子が見て取れます。

「『経済界』7.15号で田岡俊次氏が「MLRS調達費用2千億円が無駄になる」とトンデモ主張」

暫く後では立ち直りましたが。

「どのみちMLRSクラスター弾頭型は廃棄される方向にあった」

この記事は私が書いた一連のクラスター関連記事で最も重要なものです。アメリカは、ダブリン会議の決定とは無関係に2年前の時点でMLRS用クラスター・ロケット弾の生産を見合わせ、M31単弾頭ロケット弾の生産に重点を置く事を決定済みでした。M31がMLRSのスタンダードとなる事はとっくに確定していた事でした。

「MLRS単弾頭M31ロケット弾の実戦動画」



そしてM31が実戦で効果を上げている事を紹介しました。積極的にM31ユニタリー・ロケット弾の記事を書き続けました。しかしM31を導入する話はまるで報道されず、それどころかM31の存在に触れる記事すら殆ど出てきませんでした。ダブリン会議の決定以後では他に唯一、軍事研究8月号で野木恵一氏がクラスター爆弾特集記事を書かれた際に紹介されたのがあるくらいです。

そしてダブリン会議から半年が経って、ようやくつい先週に代替兵器について「GPS誘導のロケット弾」の話が出てきました。明らかM31の事です。そして今回初めてM31の名前が報道に出てきました。時事通信以外にも各マスコミで一斉に報じられています。今の今まで名前が出てこなかった理由についてはよく分かりませんが(予算獲得交渉が影響?)、取り敢えずはこれで一安心です。M31の導入とM270発射器の改修(装填した弾頭へ目標位置座標データの入力作業を行えるように)で、陸上自衛隊のMLRSはGMLRSに進化します。クラスター・タイプのロケット弾は使えなくなりますが、M31の長大な射程と精密誘導能力ならば、戦術の転換が迫られますが、総合的に見てむしろ自衛隊の戦力はアップするものと思います。

後の問題は調達予算です。
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2008年11月26日
田母神前空幕長が統幕学校長時代に呼んできた講師陣の面子を見て・・・本当に駄目だこれは、と思いました。アパ論文問題よりも重大で深刻な事態です。

統幕学校「歴史観」講義内容判明 講師に桜井よしこ氏ら  : 朝日新聞

統幕学校講義、田母神論文と共通点も 防衛省、内容公表 : 日経新聞

コミンテルン陰謀論を教えている講師がいる・・・とてもじゃないですが軍隊の将官に施す教育ではありません。何処の民族右翼過激派の勉強会ですか、これは。もうこの件は田母神の個人的な問題じゃなくなりました・・・トップダウンでこんな事が発令されて教育されていたのでは、組織そのものの責任問題になります。佐藤守・元空将が田母神論文を「幹部教育に適した内容」と評していたのは、こういった背景があったからなのですね。そりゃ論文を書いた当の本人が幹部教育を主導していたら、似たような内容の教育が行われていて当然でしょうね。

「歴史観」科目廃止も=統幕学校の幹部教育で防衛省 : 時事通信

当然ですがそのような教育方針自体がおかしいのであって、科目自体が無くなるか、講師の選任方法が統幕学校長の独断で行えないように多重チェックを通し監視する事になります。科目自体要らないと思いますけどね。先の大戦の歴史について学ぶ事は、失敗を教訓として活かし次の未来へ繋げる事の筈です。不要な戦争を回避する事、あるいは不幸にも戦争になった場合に負けたりしない事。それが軍人の役目でしょう。それなのに「日本は悪くなかった」という教育を施して何の意味があるんですか。負け戦をしたという、ただ一点の事実だけで、それは罪です。愚かにも負け戦からの教訓を得ようとせずに開き直っているようでは、次の戦争も負けるでしょう。

なお田母神前空幕長は隊内誌「鵬友」04年3月号で以下のような事を述べています。


航空自衛隊を元気にする10の提言〜パートU 田母神俊雄
7 身内の恥は隠すもの

身内の恥は隠すものという意識を持たないと自衛隊の弱体化が加速することもまた事実ではないか。反日的日本人の思う壺である。

自衛隊の精強化を望まない人たちは、どんなことにでも隠蔽体質とか言って攻撃をしてくるであろう。念のために断っておくが私は公開すべきものを隠せと言っているわけではない。各級部隊指揮官が、もはや何もかも公開しなければならないと思い、部隊や隊員を保全するという意識が低下しているのではないかと心配しているのである。情報公開法が我が国や自衛隊の弱体化を目論む人たちに利用される可能性についてもっと注意を払うべきだと思うのである。自衛隊は我が国有事に際し部隊の行動を秘匿しながら作戦を実施しなければならない。そのために常日頃から保全を意識した隊務運営を心がける必要がある。公開を要しない事項については徹底的に秘匿するということで、有事のための訓練をしていると思えば良い。秘匿すると決めたことを秘匿できないようでは作戦遂行に大きな支障が出る。指揮官はそれが出来るまで部隊を鍛えるべきである。もし現状でそれが不可能ならば、これを作戦実施上の重大な問題として認識しておくことが必要である。もし秘密が漏れたならば、なぜ漏れたのか、誰が漏らしたのかを徹底的に追求しなければならない。それが秘密漏洩の抑止力になる。それは国家のため、国民のために必要なことなのだ。自衛隊の秘密保全の態勢は、諸外国の軍と同様に完璧であることを求められている。私たちは航空事故ゼロを目指すと同じように秘密保全についても完璧を目指して努力すべきなのだ。


軍事機密は非公開が当然であり、軍事に関する事は徹底的に隠匿してくださって結構です。ですが、身内の恥を隠すのも有事の時の軍事機密保全の練習になるから、普段から軍事に関係無いことでも積極的に隠匿しろ、ですって?

ああ、この愚か者をクビにするのが遅過ぎました。

空自学校長が部下にセクハラの疑い 更迭、報道発表せず : 朝日新聞

空自空将補セクハラ:空将補を懲戒へ 浜田防衛相に報告せず : 毎日新聞

これも田母神前空幕長の方針だったのですね。・・・本当に馬鹿じゃなかろうか・・・結局のところ、田母神前空幕長の歴史観とは、「日本の恥は隠すべきであり、それを公開するのは自虐史観である」という事なのでしょう。あまりにも小物臭くて涙が出てきます。とても人の上に立つ器じゃないです。どうしてこんな人を出世させてしまったんだろう・・
23時06分 | 固定リンク | Comment (420) | 平和 |