それに対し民主党の小沢さんや鳩山さんは、過去に核武装についての議論を容認すべきだと訴えていたのに、いざ政府を叩けそうだとなると簡単に前言を翻して議論そのものを否定しようとするのは・・・まぁ、相変わらずの行動だな、としか。そして国民世論の動向を読み間違える、と。(これも相変わらずのパターン)
初陣2勝、政権に弾み 衆院補選 [10/23 朝日新聞]
中川昭一自民党政調会長や麻生外相の核保有議論をめぐる発言を批判したが、流れを変えられない。「(核保有発言に)世論や報道が反応しなくなっている」。小沢氏は18日、こうぼやいた。
日本テレビ2006年11月定例世論調査 [11/13]
[ 問15] 政府・自民党内で、日本の核保有をめぐる議論が出ています。安倍総理は、「核は保有しない」「非核三原則は守る」とした上で、核の議論を容認する考えを明らかにしています。あなたは、核について具体的な議論をすることについてどう考えますか?
(1) 積極的に議論すべきだ 25.4 %
(2) 議論があってもよい 46.6 %
(3) 議論をする必要を感じない 12.1 %
(4) 絶対に議論すべきでない 9.7 %
(5) わからない、答えない 6.2 %
核武装の論議についての容認が72%、これは別に驚くような数値ではありません。実は冷戦時代の真っ盛りの頃の似たような調査でも、核武装の“可能性自体”は否定しない、という意見が5割ありましたから、北朝鮮の核実験という昨今の情勢を考えれば十分予測できる数字です。
何故、民主党が世論の動向を読み間違えたのかは、条件反射的な政府叩きや党内左派への配慮もあるでしょうが、それ以上に「独自の調査能力の欠如」が大きいと思います。自民党は独自に世論調査を行っている事が既に知られています。今回の閣僚の核武装論容認発言も、事前に得た国民世論のデータを踏まえた上で発言を行っていると考えるべきです。
民主党はこのままでは政権交代など覚束ない事は間違いなく、二大政党制の先輩たち(英国の労働党、米国の民主党は政権奪取の折にライバル政党の政略を真似てより強化する場合がある)に学ぶ事もないのでしょう。
さて、そこで議論自体をすべきでないと主張する方を紹介して見ます。
議論すること自体の問題:la_causette
そのことは、「国土防衛の手段として核兵器を独自に保有」しようとしている北朝鮮政府に対してそれは「選択が許されない政策」だとしてこれを止めさせようとしている国際社会を裏切るような話なので、非難囂々となることは仕方がないことです。
ところが前述のように国内世論は7割が容認していますし、国際世論でも非難轟轟とはなっていません。何故なのか? 実は、20年前にヨーロッパで同じような先例があるからなのです。
それは、ソビエト連邦が新型中距離核ミサイル「RT-21M(NATOコードSS-20 SABER)」を配備したことから始まる狂想曲でした。このIRBM(中距離弾道弾)としては大柄なSS-20は、ヨーロッパ全域を射程に収めた上にMIRV化し、三つの核弾頭を搭載する非常に強力な核戦力であり、只でさえ核戦力に差を付けられていたと思っていた西側諸国は恐慌状態に陥りました。「SS-20に対抗する為、我が国にNATOの新型核ミサイルを配備しろ!」という要求がNATO・・・いえアメリカに出されました。当時左派SPD政権のシュミット首相のドイツからさえも。
そこでNATO、アメリカは決断を下します。
「ソ連に対しSS-20の撤去を要求する」
「SS-20の脅威に対抗する為に、パーシング2を配備する」
「ただしSS-20を全廃させれば、パーシング2も撤去する」
こうしてドイツに中距離弾道弾パーシング2(終末誘導に画像認識装置を装備し、IRBMとしては驚異的な命中精度を誇る)と核攻撃型トマホーク巡航ミサイル(G型)が配備されました。ソ連の軍拡に対し軍拡で対抗しつつ、同時に軍縮(お互いにゼロにする)を提案するという zero-zero offer ,いわゆるゼロオプションの提示です。SS-20の配備を非難し撤去を要求しておきながら、自身もパーシング2を配備する為に『二重決定』として知られています。
そしてこれはご存知のとおり、中距離核戦略全廃条約(INF条約)へと発展し、外交戦略として大きな成功を収め、核軍縮の道筋を開きました。只単に相手に放棄を迫っても聞く耳を持たれないから、こちらも対抗戦力を用意するという手法の有効性を指し示しています。
果たしてこれが現在の朝鮮半島核危機に参考になるかどうかは分かりませんが、一つの事例として議論の材料となるべきものであることは、確かです。日韓の核武装化、在韓米軍・在日米軍の再核武装化などの選択儀を議論の対象として排除しないという事です。