地方自治体が無防備宣言を出せるのか? [軍事板常見問題]
それにしても運動の根拠となるジュネーブ条約の該当部分をよく読めば、その時点で「条例として宣言する」事は何の意味も無いと気付いて良さそうなものなのですが・・・。実は無防備宣言は新しい概念ではありません。元となるハーグ陸戦規定(100年近い歴史がある)にある「無防備都市」の部分を都市から地域へと対象を広げただけで、基本的な運用形態は変わりが無いのです。ジュネーブ条約、ハーグ陸戦規定ともに戦争法規ですが、特に戦争や軍事に詳しくなくとも世界史に興味がある方ならば馴染み深いと思います。無防備宣言とは無血開城宣言であり、敵軍に占領されることが前提となります。
【ジュネーブ条約追加第1議定書59条】
1.紛争当事国が無防備地域を攻撃することは,手段のいかんを問わず禁止する.
2.紛争当事国の適当な当局は,軍隊が接触している地帯の付近またはその中にある居住地で,敵対する紛争当事国による占領のために開放されているものを無防備地域と宣言することができる.無防備地域は,次のすべての条件を満たさなければならない.
a.すべての戦闘員ならびに移動兵器及び移動軍用設備が撤去されていること.
b.固定した軍用の施設または営造物が敵対的目的に使用されていないこと.
c.当局または住民により敵対行為が行われていないこと.
d.軍事行動を支援する活動が行われていないこと.
>軍隊が接触している地帯の付近またはその中にある居住地で,敵対する紛争当事国による占領のために開放されているものを無防備地域と宣言することができる.
このような状況下でないと宣言が出来ません。敵正規軍が該当地域の目の前に迫っていて直ぐにでも占領されるような状況でないとならないのです。つまり空襲には何の意味も無く、不正規戦であるゲリラ、テロには無力です。
ところがこの運動を展開している団体はこの部分を意図的に無視しています。
Q&A 「無防備地域」ってなに? [品川無防備平和条例の会]
「無防備地域」は、4つの条件を満たしていれば自治体が宣言できます。
ジュネーブ諸条約第一追加議定書の第59条に「無防備地域」の規定があります。それは、戦争が差し迫った時、武器や軍隊を持たない地域を「無防備地域」として宣言できる規定です。その「宣言」をすると、地域全体がまるごと攻撃禁止になり、違反すると戦争犯罪になります。
「無防備地域」は、次の4つの条件を満たしていれば自治体が宣言できます。
(a)すべての戦闘員が撤退しており並びにすべての移動可能な兵器及び軍用設備が撤去されていること。
(b)固定された軍事施設の敵対的な使用が行われないこと。
(c)当局又は住民により敵対行為が行われていないこと。
(d)軍事行動を支援する活動が行われていないこと。
>それは、戦争が差し迫った時、武器や軍隊を持たない地域を「無防備地域」として宣言できる規定です。
嘘だ!
「戦争が差し迫ったとき」なんて条件じゃない。「敵軍が目の前に迫っていて占領されるとき」という条件なのに。それ以外の状況で宣言しても物笑いの種にされるだけ。この宣言は敵国軍に向けて出す降伏宣言であり、条例として「平和都市宣言」的に掲げるものではないのです。この運動はジュネーブ条約に対する誤った認識を広めており、なぜ運動当事者達が疑問を持たないのか不思議です。運動の根拠となる条約を読めば誰にでも矛盾点に気付く筈です。
特に軍事や歴史を勉強しなくても、読んだ時点で判るはずですが・・・