このカテゴリ「報道」の記事一覧です。(全135件、20件毎表示)

2016年06月22日
2016年6月22日、北朝鮮は中距離弾道ミサイル「ムスダン」を発射しました。4月から5月にかけて4連続で発射直後に吹き飛ぶという失敗が続き、今日は2回発射して午前5時58分に発射された1回目は150km飛んで空中爆発、午前8時5分に発射された2回目は400km飛んで日本海に着弾しています。今日の2回の発射でムスダンは計6回の試射を行ったことになります。しかし・・・

北朝鮮、さらにミサイル2発発射 1発は日本海に着水か:朝日新聞
軍事関係筋によれば、北朝鮮はさらに1発、この日3発目のムスダンを発射。失敗した1発目と異なり、2、3発目は一定距離を飛行し、うち1発は日本海に着水した模様だ。合同参謀本部は2発目が、日本海を約400キロ飛行したことを明らかにした。(ソウル=牧野愛博)

北朝鮮ミサイル、高度1千キロ到達 日本「深刻な懸念」:朝日新聞
「軍事関係筋によれば、北朝鮮は同日午前8時10分ごろまでに、3発目のムスダンを発射したとの情報もある。」
「軍事関係筋によれば、3発目も空中で爆発した模様で、確認を急いでいる。」(ソウル=牧野愛博)

ところが今日だけで3発発射したと報じているのは朝日新聞の牧野愛博記者の書いた記事だけです。韓国軍もアメリカ軍も日本自衛隊も今日は2発が発射されたと公表しています。韓国の報道も全て2発の発射と報じています。それなのに朝日新聞ソウル支局・牧野愛博記者だけが3発目が発射されたと報じているのは不可解で、牧野記者のいう「軍事関係筋」という情報源が何なのか全く不明です。

そして実はこの記事を書いた牧野愛博記者は6年前にも「軍事関係筋」をソースに北朝鮮のノドン弾道ミサイルの記事を書き、誤報となっています。

朝日新聞がノドン誤報で訂正記事:週刊オブイェクト(2010年05月09日)

この時は「ノドンは固体燃料である」という、あり得ない内容でした。訂正の内容も「固体燃料を使えるよう改良されたとの情報がある」という、不可解な言い訳でした。ノドンは一段式液体燃料であり、固体燃料化した場合は構造がもはや丸ごと別のものになってしまいます。それはもうノドンと呼ばれる代物ではありません。

朝日新聞の牧野愛博記者の言う「軍事関係筋」情報は、これで北朝鮮の弾道ミサイル関連で2度目の誤報となり、信憑性が非常に疑わしい情報源と言わざるを得ません。
12時28分 | 固定リンク | Comment (11) | 報道 |

2013年04月14日
兵器の費用には「フライアウェイ・コスト」や「ウェポンシステム・コスト」といった計算の仕方が有ります。機体価格はフライアウェイ・コスト(flyaway, 飛べる状態)を指します。ウェポンシステム・コストは機体価格に加えて補助機材を含む調達価格です。


F35、1機189億円 米国防予算案で判明 日本は財源難題 - 産経新聞(2013.4.14)
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130414/amr13041401000000-n1.htm

 【ワシントン=佐々木類】国防総省が予算計上した29機のF35のうち、米空軍が調達するF35Aは計19機で35億8200万ドル(約3564億円)。1機当たり約1・9億ドルの計算だ。日本政府は12年度予算で最初の4機を1機当たり102億円で計上しており、90億円近い差額を米側から請求されるのは必至。価格高騰分の財源をどう捻出するのか、新たな難題を抱えた形だ。


産経新聞のこの記事はフライアウェイ・ユニットコスト(機体単価)とウェポンシステム・ユニットコスト(兵器システム単価)を混同しています。佐々木類記者が根拠としているのはこの資料です。

[PDF] FY 2014 Program Acquisition Costs by Weapon System
http://comptroller.defense.gov/defbudget/fy2014/FY2014_Weapons.pdf

FY 2014 Program Acquisition Costs by Weapon Systemタイトルに Costs by Weapon System とある通り、この2014年度予算案は機体のコストではなく兵器システムとしてのコストを計上した資料です。米空軍のF-35Aは19機で3,582.3Mドル(Mはミリオン、35億8230万ドル)と書かれていますが、総額を機体数で割った「1機1.9憶ドル(約189億円)」とは機体単価ではありません。兵器システム単価です。F-35以外の機体の数字を見比べてみても割高に見える数字が載っているのはその為です。

よって、日本が購入するF-35A戦闘機の機体単価と、この資料から出て来た兵器システム単価を直接並べて比較する事は出来ません。産経新聞の記事は条件が異なる「日本向けF-35機体単価102億円」と「米国向けF-35兵器システム単価189億円(補助機材含む)」を同列に並べて比較しているので、間違っています。



Flyaway cost - Wikipedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Flyaway_cost

※フライアウェイコストとウェポンシステムコストの違いを解説。
16時11分 | 固定リンク | Comment (323) | 報道 |
2013年01月16日
朝日新聞はなぜ戦争を煽るような真似をしたのでしょうか?

領空侵犯に信号射撃 対中国で防衛相方針 - 朝日新聞

この朝日新聞記事は当初タイトルが「防衛相『領空侵犯、信号弾で警告』中国メディア質問に」 でした。しかし正しくは信号弾ではなく「曳光弾による信号射撃」、つまり一般的に言う警告射撃であったのでこれは差し替えているようです。曳光弾は機関砲弾の弾道を確認する為に実弾の底部に曳光剤を入れたもので、攻撃用の弾種であり信号用の弾ではありません。光って目立つので信号警告にも使えるというだけです。ただ、これは小さな問題です。そんな事よりも大きな問題は、そもそも小野寺防衛大臣は射撃による警告などとは一言も述べていなかったのです。

防衛省 - 大臣会見概要 平成25年1月15日(11時10分〜11時21分)

Q:つまり、中国の飛行機が日本のいわゆる領空に入ってきた場合、この警告射撃ということは、ありうるということでしょうか。
A:どこの国も、それぞれ自国の領空に他国の航空機が入って来て、さまざまな警告をした中でも退去しない、領空侵犯を行った場合、これはそれぞれの国がそれぞれの対応を取っておりますし、我が国としても、国際的な基準に合わせて間違いのない対応を備えていると思っています。

小野寺防衛大臣は香港メディアの記者の質問に、国際的な基準に合わせて対応を取ると述べただけです。従来通り見解に過ぎません。何か新しい方向性を示したというわけではないのです。


朝日新聞の記事は中国の環球時報にも転載されて中国版Twitterの「微博(ウェイボ)」で騒ぎになりましたが、小野寺防衛大臣に質問した当の香港メディア記者が「小野寺防衛大臣は警告射撃など言っていない、朝日新聞の誤報だ」と説明。そして中国共産党中央委員会の機関紙で中国最大の発行部数の新聞「人民日報」のWeb版「人民網」が朝日新聞の誤報である事を記事にしました。

日本防卫相从未表态将对中国飞机警告射击 日媒相关报道系误传 - 人民网

朝日新聞の誤報である事が明確に説明され、中国での騒ぎは収まりつつあります。人民日報の記事は中国政府の公式見解と見做されます。朝日新聞は名指しで捏造報道を批難された事になります。

そもそも戦闘機のバルカン砲による警告射撃は、航空自衛隊は冷戦期のソ連大型偵察機を相手に一回やったのみです。それもソ連機は沖縄本島上空の領空を侵犯し、航空自衛隊だけでなく嘉手納の米空軍戦闘機も迎撃に上がり、緊迫した事態でした。

対ソ連軍領空侵犯機警告射撃事件 - Wikipedia

沖縄本島まで乗り込まれる事態ならば警告射撃も仕方ありませんが、中国機は其処まで来ていません。離島の国境線付近でいちいち警告射撃を行っていたら、戦争にエスカレートしてしまう可能性があります。慎重に対処しなければならないのに、朝日新聞を含む日本メディアがまるで戦争を煽るような事実と異なる報道をした事を懸念します。
20時07分 | 固定リンク | Comment (249) | 報道 |
2011年05月06日
4月に発売された「世界の傑作機No.143ラヴォチキン戦闘機」の事について、触れておかなくてはなりません。1年前に発売された「世界の傑作機No.138ヤコブレフ戦闘機」にて、第二次大戦時のソ連空軍女性戦闘機パイロット、リディア・リトヴァクの英雄称号が「ロシア連邦英雄」と誤記載されていた問題(正しくは「ソビエト連邦英雄」)について指摘したところ、著者である航空評論家の藤田勝啓氏が訂正を約束されていました。(2010年06月25日 03:40:15)その件について「世界の傑作機No.143ラヴォチキン戦闘機」72ページで、訂正記事が掲載されていました。

藤田勝啓氏の誠意ある対応は素晴らしいものでした、当方の誤記載指摘が感情的だった事が逆に恥ずかしく思えるくらいです。今後は礼節を心掛ける事を誓います。藤田勝啓氏や岡部いさく氏(「世界の駄っ作機」でのF-2訂正)、野上武志氏(イタリア軍パスタ伝説訂正)の誠意ある対応は、なかなか出来る事ではありません。当方もブログ掲載記事については間違いを可能な限り訂正していきたいと思います。(間違い指摘は該当記事コメントかメールフォームでお願いします。)

なお「ラヴォチキン戦闘機」72ページでの藤田勝啓氏の記事は英雄称号についてだけではなく、「スターリングラードに散ったユリ」の訂正と追補がメインとなっています。英雄女性パイロットのリリーが乗機に白ユリを描いたという話は本当なのか・・・99%作り話だった説に傾くも、「残り1%は追求せずに、伝説は伝説のまま残した方がいいのかなとも思います。」というロマンチックな締めの言葉に、寛容さと創造性を大事にする心が伺えました。


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23時21分 | 固定リンク | Comment (100) | 報道 |
2010年11月04日
F-2戦闘機欠陥機説のデマには根拠の無い話が多い上に、主張の意味が読み取れない摩訶不思議なものがあります。


既に何度も述べていますが、三菱重工ですらつい最近までレーダーに欠陥があったと認めているわけです。その当時に、ASMの模擬弾4発を搭載して訓練してして問題がなかったのでしょうか。そのように疑いたくなるのが普通ではありませんか。

またソースコードの開発では米軍がベトナム戦争のデータをくれなかったので、朝鮮戦争のデータを参考に開発されました。

軍事評論家・清谷信一公式ブログコメント欄投稿「キヨタニ 2010/11/01 00:25」より


F-2戦闘機のJ/APG-1レーダーは三菱重工ではなく「三菱電機」製なのですが、一体何処の誰に聞いた話なのでしょうか。ASM模擬弾4発搭載訓練の話との関連性も見えてきません。対艦攻撃は搭載するASM(対艦ミサイル)が何発だろうと基本的に同一目標に叩き込むのですから(飽和攻撃)、2発だろうが4発だろうが発射母機のレーダーで行う作業は同じです。「レーダーに何らかの問題があってASM2発は大丈夫だけど4発は駄目」という状況が考えられないのです。

ソースコード云々の話に至っては全く理解する事ができません。「朝鮮戦争のデータ」が何を指しているのか全く不明です。私の知るF-2戦闘機のソースコード問題と言えば、アメリカがF-16のフライバイワイヤ制御用ソースコード(CCV機能が問題視された)を渡さなかったので、日本が独自に開発していたT-2CCV実験機のデータを元に制御ソフトを作成した・・・というものです。CCVとは簡単に言えば「機体軸と進行方向がズレたまま飛行可能」という技術です。 運動能力向上機 - Wikipedia

ベトナム戦争がどうとか朝鮮戦争がどうとか、ソースコードの問題には何も関係無いはずです。そもそもフライバイワイヤ制御はベトナム戦争の時代にも実用機はまだ無かった筈です。まともなコンピュータも無かった朝鮮戦争の頃のデータというのは、現代の戦闘機の制御ソフトのソースコードにどう反映されるというのでしょう? 全く意味不明です。
20時24分 | 固定リンク | Comment (369) | 報道 |
2010年10月22日
北朝鮮の軍事に関する予言では神通力が異様に高まり誤神託を毎度のように成就させる逆神。その驚異的な伝説がまた積み重ねられました。10月10日に行われた北朝鮮の軍事パレードの件です。


以前なら、私は軍事パレードが始まる前からテレビ局に待機し、夕方のニュースに間に合うように、外国の通信社から配信されるパレードの画面を見ながら解説するのが普通だった。

しかし今回は、事後の兵器の解説を含めて、日本のメディアから軍事パレードに関する問い合わせはまったく無かった。

神浦元彰HP 「最新情報」 2010年10月11日


どうしてマスコミ各社は連絡を取ろうともしなかったのか、これは何故なのか・・・謎は全て解けました。全ては先月に既に出されていた誤神託に起因していたのです。


そもそも今の人民軍に、戦車や装甲車が参加する軍事パレードは無理なのである。戦闘車両が隊列を組んで整然と行進することなど無理なのである。

エンジンなどの劣化と部品不足や、軍事パレードの訓練のための燃料がないからである。

〜中略〜

繰り返し言うが、今の人民軍に戦車部隊や自走砲部隊、それに航空機(小型ヘリを除く)が参加する史上最大の軍事パレードはとうてい無理なのである。

もし予定通りに10月10日に軍事パレードが行われても、今まで通りに徒歩部隊と軍用トラックが牽引する火砲やミサイルぐらいではないか。無論ミサイルの中身は砂を詰めたダミーである可能性が高い。

まあ、10月10日になればわかることである。

神浦元彰HP 「メールにお返事」 2010年9月29日


これぞ逆神の誤神託の中でも最も強力な「絶対断言」です。逆神が自信に満ち溢れた時の神通力は凄まじいものがあります。しかし、ここまで言い切られてはマスコミ各社が呼ぼうとしなかったのも仕方がないというか、それは当然の話でしょう。

そして10月10日、当日。



・・・見事。逆神、見事ナリ。

新型戦車の大群です。天馬号、暴風号、それと初めて見る砲塔の形状が異なる戦車も確認出来ます。これには上面の14.5mm機関銃の反対側に携行地対空ミサイルまでもが装備されています。そしてこれら新型戦車の主砲は125mm級、強力な戦車群です。

Корейские танковые новинки(朝鮮戦車ニュース)

上記ロシアのサイトで平壌のパレードに出て来た新型戦車の写真が掲載されています。

・・・さすがは逆神の誤神託、良い物を見させてもらいました。


ともあれ、軍事パレードのために使った燃料と整備部品のために、北朝鮮軍はさらに疲弊したことだけは確かである。北朝鮮軍が暴走する可能性が低くなった。まずはそれを以て、今回はヨシとしたい。

神浦元彰HP 「最新情報」 2010年10月11日


めだか師匠! 池乃めだか師匠じゃなイカ!

「よっしゃ、今日はこれぐらいにしといたるわ」

        ∧∧       
       ヽ(・ω・)/   ズコー  
      \(.\ ノ
    、ハ,,、  ̄
23時21分 | 固定リンク | Comment (187) | 報道 |
2010年09月22日
前回の記事で紹介した通り、軍事ライター清谷信一氏は軽装甲機動車の記事で「陸幕広報室の意図に反して内張りが撮影された」という記述が間違いであった事を認めて撤回しましたが、「撮影された内張りはクッションではなく装甲だ」という主張についてはまだ撤回していません。しかし問題のSATマガジン9月号26ページに掲載された写真に写っている内張りは、公開済みのもの(手触りが柔らかくクッションと判明済み)と見た目が全く同じで差異は見られず、清谷氏の主張には何の根拠も無い事が判明しています。 清谷氏は「写真でも見たのは初めてです」とも語っており、公開済みのものと知らなかったようです。

SATマガジン9月号26ページ PANZER7月号27ページ 2010年5月16日、霞ヶ浦駐屯地公開デー

左:SATマガジン2010年9月号26ページ
中:PANTZER2010年7月号27ページ
右:霞ヶ浦駐屯地公開(2010年5月16日)

ですが清谷氏はコメント欄でなおも強弁を続けます。


軽装甲機動車について:清谷信一ブログ
SATマガジンに写っているのは通常のクッションの内張ではなく、装甲です。
そうでなければSATマガジンが撮影の調整を必要としなし、某雑誌に許可がおりないというようなことはありません。

キヨタニ
2010/09/20 23:58



しかしこれでは全く根拠になっていません。調整や許可の有無は別の理由で行われた可能性が高いでしょう、見た目が全く同じ物を「クッションではなく装甲だ」と言い張るのは幾らなんでも無理があります。

そして清谷氏はまたしても気に入らないコメントを隔離しIP晒しを始めました。其処ではこう述べています。


【隔離部屋】軽装甲機動車について:清谷信一ブログ
軽装甲機動車の内張について、写真でみるとクッションと同じに見えるというは、それは例えれば写真でダイヤモンドとガラス玉を比べて、どちらがガラス玉に見えるから、それはガラス玉と非難するようなものです。


この例えは全くの的外れです。何故ならこの内張りの場合、見た目が同じという最大の着目点は「取り付け方が同じ(ボルトオン箇所が見当たらない)」という部分だからです。車内にダイニーマなど高分子繊維で出来た板を追加装甲として機能するように装着するには、ボルトの取り付け間隔を短くし、幅広ワッシャーを噛ませて装着する必要があります。そうしないと着弾の衝撃が分散出来ず、ボルトの取り付け部分周辺から割れてしまいます。(割れる、ではなく「引き千切られる」が適正な表現)

内面取付型付加装甲 20mmダイニーマ・スポールライナー

左:内面取付型付加装甲(TRDI)
右:ダイニーマ製スポールライナー着弾試験(中央に着弾していますが、大きいワッシャーを噛ましていないために上部のボルトが着弾の衝撃でライナーに食い込んでいます)

故に、クッションと同じ見た目の装甲など有り得ません。清谷氏の主張するような耐弾を目的とした頑丈な装甲であるほど、取り付け方法は工夫する必要が有ります。それが見られない以上、今までのクッション内張りと同じ物と見るべきです。


【隔離部屋】軽装甲機動車について:清谷信一ブログ
そのような論拠によって誹謗中傷、罵詈雑言を吐いている方々に聞きたいのですが、ご自分の主張が間違っていた場合、責任を取っていただけるのでしょうか。


清谷氏は思い違いをしているようですが、清谷氏が批判されている理由は捏造(幕僚広報室が頭を抱えているという妄想ストーリー)及び根拠の無い決め付け(クッションではなく装甲とする直接的な根拠がゼロ)が原因です。例え結果がどうあれ、清谷氏の考察過程が出鱈目である事は既に確定しています。仮にこれで当てたとしても単なる当てずっぽうに過ぎず、誰も評価しません。

装甲に関して、過去に清谷氏は「丸」2007年6月号のレオパルト2Eの記事でもグローサ(履帯に付ける爪)をモジュール装甲と勘違いするという有り得ないミスをしています。ただ勘違いするだけなら誰にでもある事ですが、清谷氏は「これはRPGなどを想定した装甲で、表面が×字型の凸になっているのは重量軽減のためである」などと妄想ストーリーを捏造するという、非常に理解し難い行為を行っています。これは今回のSATマガジン9月号26ページの写真に対する考察と同種の問題ではないでしょうか。根拠の無い勝手な推測を確定した事実のように述べるのは、大変迷惑な事です。

清谷氏は妄想を止めて、現実を見て下さい。
20時20分 | 固定リンク | Comment (291) | 報道 |
2010年09月20日
軍事ライター清谷信一さんが、相変わらず陸上自衛隊の軽装甲機動車について間違った記事を書いているようです。


軽装甲機動車について:清谷信一ブログ
 SATマガジン、9月号26ページの軽装甲機動車の写真に陸幕広報室が頭を抱えたらしいです。というのも本来公開するつもりがなかったドアの「内張」が写ってしまっているからです。これは通常のクッションの入った内張ではありませんでした。実は内張装甲で、これによって7.62ミリ通常弾に耐えられるようになったらしいです。話には聞いていましたが、写真でも見たのは初めてです。


現在は、黄色文字部分の「陸自広報室が頭を抱えた〜」の部分は削除されています。清谷氏本人が訂正報告をしています。

というのも、該当するSATマガジン9月号26ページの写真で陸幕広報室が頭を抱える筈が無いからです。

【SATマガジン9月号26ページ】
SATマガジン9月号26ページ

私には見慣れた「通常のクッションの入った内張」にしか見えません。

【PANZER7月号27ページ】
PANZER7月号27ページ

2009年5月16日、霞ヶ浦駐屯地公開、空挺団所属の軽装甲機動車(05-2863号車)の後部ドア内側


2009-01-12 平成21年 陸上自衛隊第1空挺団 降下訓練始め:下総ミリタリースクエア
 話題の内張り。これは軽装甲機動車です。同一の内張りが車内の全面に張られていました。もっとも、耐破片用というより緩衝材のようです。


降下始め2009

dragoner氏曰く、「09年に触った内張りはフニャフニャ」。SATマガジン9月号26ページに付いては該当号を直接見た上で、「厚さは変わらないように見えるし、ボルト等の位置も変わってない」との見解です。

結局、清谷氏の持論である「軽装甲機動車は5.56mm防御で、後から内部に装甲を貼って7.62mm防御にしている」という、清谷氏唯一人しか唱えていない説を裏付けるものではありませんでした。清谷氏は内張りを「初めて見た」と興奮気味に語っていますが、これはもうどんな顔をしたらいいのやら・・・「陸幕広報室が頭を抱えた」なんて妄想以外の何物でもなく、清谷氏の普段の仕事ぶりはこんな出鱈目な有様なんだな、と認識するしかありません。妄想と勘違いを出発点にしている為、主要論旨も壊滅しています。

対して、私の軽装甲機動車の防御力に対する認識は、「登場時から正面対12.7mm弾防御、側面及び後面対7.62mm防御」「イラク派遣の際に側面及び後面の窓ガラスを強化」というものです。今後は96式装輪装甲車に装甲強化型の96式装輪装甲車(U型)が登場しているように、軽装甲機動車にも更なる装甲強化型が登場して来る可能性が勿論ありますが、それは決して清谷氏の主張するような理由ではなく、より過酷な条件(同じ7.62mm弾でも高密度の集中射撃を受けた場合など)に対応する為のものでしょう。場合によってはRPG-7ロケット対策(ただしスラットアーマーは4枚ドアから乗降する軽装甲機動車には付け難い)も考える必要が生じるかもしれません。
01時06分 | 固定リンク | Comment (358) | 報道 |
2010年09月17日
中国では軍事評論家=現役軍人であり、そのレベルはとても高く傾聴に値するのですが、こうした専門家の意見を聞かずに新聞などのマスコミが独自に軍事記事を書いてしまった場合、そのレベルは途端に下がって問題外のレベルになってしまいます。

中日の陸海空技術の比較:中国網

『現在、一部のいわゆる軍事マニアはやはり10年前の視線で中国を見ており、とくに日本との比較では自らを低く評価しているが、実際、中国と日本の軍事技術面での格差は、想像するほどではない。人民網軍事コラムが伝えた。』


中日の陸海空技術の比較 4ページ目:中国網
主戦用タンクを例にすれば、大砲や装甲技術で中国は先端を行く。日本は高圧力大砲を生産する技術は有しておらず、ドイツが生産を許可するタンク砲を導入するしかない。だが中国はこの面で完全に自主技術を有しており、それはドイツの技術に匹敵する。日本の優位性は動力システムにあるものの、仮に中国が1100キロワットエンジンで難関を突破した場合、この分野でも日本に追いつくことになる。


いいえ、人民日報のこの認識は間違いです。日本陸上自衛隊の10式戦車は、日本製鋼所の完全国産120mm滑腔砲を搭載しています。この程度の事は、中国でも軍事評論家どころか軍事マニアの間でも常識の話です。

この人民日報の記事は全編この調子で、いちいち全てにツッコミを入れるのが面倒なので紹介はこれだけにしますが、どうして自国内に優秀な軍事評論家が居るのにコメントも取らずに妄想記事を書いてしまったのやら・・・いや、プロパガンダが目的ならこれで目論見通りなのかな?
22時12分 | 固定リンク | Comment (442) | 報道 |
2010年09月09日
昨日の「通りすがり」 事件について軍事ライター清谷信一氏の釈明が入りました。


コメント欄に関するお詫び:清谷信一ブログ
調査の結果、これは事務所に遊びにきていた友人が書き込んだものでした。ぼくが前の約束が押してしまって、事務所で待ってもらっている間に彼はぼくのPCでネットを使っていました。
内容上記の間違いがあったので、直接教えるよりもと気をきかして書き込んだようです。
その際に間違って会員用のボタンを押してコメントしたそうです。


・・・どうしてこんな子供じみた言い訳をするのでしょうか?
23時55分 | 固定リンク | Comment (436) | 報道 |
2010年09月08日
インターネットの書き込みで名前欄に「通りすがり」と書く人がよく居ますが、大抵の場合では通りすがりじゃない人の方が多いです。これもまたそんなお話し・・・。

通りすがりの清谷信一さん

「通りすがり 2010/09/08 13:39」という書き込みの名前欄リンク先が軍事ライターの清谷信一氏のブログのトップページでした。・・・BIGLOBEウェブリブログはログインしたブログユーザーが[コメント(会員用)]を選択して投稿すれば、名前欄が自動で自分のブログトップページとリンクしてユーザー証明とする事が出来るシステムです。外部ユーザーは名前欄にリンクを張れず、成り済ましが出来ません。

つまり「通りすがり 2010/09/08 13:39」は清谷信一氏本人である事が確定します。うっかりボタンを押し間違えたのでしょうが、普段から「通りすがり」というニックネームで書き込んでいたのでしょう、実際に過去記事コメント欄でも「通りすがり」が幾つも散見出来ます。どれも清谷信一氏擁護コメントでした。それらも同様に清谷信一氏のコメントだったとすると、ちょっとこれはあまりにも・・・

20時48分 | 固定リンク | Comment (406) | 報道 |
2010年09月07日
統合電気推進(IEP: Integrated Electric Propulsion)とは、旧来の艦艇用電気推進システムでは推進用の主機とは別に艦内電力用の発電機が用意され電源が別々だったのに対して、これを統合したものを言います。つまり主機で発電した電力を推進用と艦内用に振り分けます。故に統合電源方式(統合給電方式)とも呼びます。発電機の数を減らして軽量化でき、電力の適切な振り分けで高効率化する事が出来ます。

image-20100907192541.png

現在、日本海上自衛隊は統合電気推進を採用した大型砕氷艦「しらせ(二代目)」を運用しています。ユニバーサル造船が建造、日立製作所が推進システムを担当しました。

[PDF] 防衛省殿向け砕氷艦「しらせ」のテクノロジー:ユニバーサル造船

[PDF] 厳寒の南極海を航行する砕氷艦「しらせ」 - 日立評論2009年6月号

なお統合電気推進の英語の略称は一般的には"IEP"ですが、英海軍では"IFEP"、米海軍では"IPS"が用いられます。

IEP: Integrated Electric Propulsion 統合電気推進

IFEP: Integrated Full Electric Propulsion 統合全電気推進(英海軍)

IPS: Integrated Power System 統合動力システム(米海軍)

米海軍は当初"Integrated Electric Power System"とも呼んでいましたが、何故か"Electric"を抜いて正式名称にしました。詳しい事情は分かりませんが、検索の際に注意して下さい。

そういう訳ですので、以下の軍事ライター清谷信一氏の解説は間違っています。


統合電気推進導入に大きく遅れをとる海自:清谷信一ブログ
 拙著、「防衛破綻」では水上戦闘艦の推進システムとして、統合電気推進システム(IES、Integrated Electric System)を紹介したかったのですが、紙面の都合で割愛しました。そこでIESに関してここでご紹介をしようと思います。


先ず記事タイトルの時点で海上自衛隊が運用している砕氷艦「しらせ」の存在を忘れています。次に統合電気推進の略称を間違えています。"IES"ではありません。


統合電気推進導入に大きく遅れをとる海自:清谷信一ブログ
 英海軍のケースだと旧式のタイプ42(5000トン級)に対して、IEPを採用したタイプ45(7000トン級)では、船体が1.5倍になっているにもかかわらず、燃料消費は半分以下となっており、単純比較でも45パーセントの燃料の節約となっています。

 仮に1日の30キロリットルの燃料が削減でき、年120日に航行するのであれば年間2億5千万円の燃料費が削減できます。

 問題は導入コストですが、例えばタイプ45と同様なIEPを導入する場合、価格は75億円(1ポンド140円換算)、ライセンス生産の場合、1.5倍として100億円程度でしょう。
 対してCOGAGを採用した19DDはタービン・エンジンと減速器、発電機などで概ね50億円です。

 輸入IEPのコストが約2倍。輸入ならば1.5倍程度です。燃料費や整備コストの低減、人員削減などの要素を加味すれば3〜7年で初期投資の差は解消します。先の英海軍のケースだと約5年で価格差分を解消しています。


数値計算の見積もり方がおかしいです。年間2億5000万円の節約ならば50億円の初期投資差額を回収する為には20年掛かり、艦の寿命に近くあまり意味が有りません。さらっと「燃料費や整備コストの低減、人員削減などの要素を加味すれば3〜7年で初期投資の差は解消します。」と言われていますが、何をどれだけ加味すれば20年が7年に短縮されるのか計算が有りません。タイプ45駆逐艦の乗組員数は190名、たかなみ型が175名、19DDは200名弱なので、特にタイプ45駆逐艦が省力化出来ているようにも思えません。

そもそも、タイプ45駆逐艦の燃費の良さは統合電気推進よりも主機の新型ガスタービンWR-21(中間冷却器や廃熱再生器を採用)の良好な燃料消費率に起因します。WR-21は従来の同クラスエンジンに対して低出力領域で40〜57%、中間領域で30%、高出力領域で17〜21%の燃料消費率が小さくなっています。

image-20100907192609.png

ガスタービンの弱点である低出力領域での高い燃料消費率が大幅に改善されています。つまりタイプ45駆逐艦の燃費を達成するにはWR-21の導入が必要なのであり、統合電気推進(IEP)はオマケの話なのです。19DDへのWR-21搭載は真剣に検討され、ロールスロイス社は日本にWR-21の現物を持ち込んだ上でデモ運転までやって見せましたが、結局予算の都合上からか19DDにはスペイSM1Cの搭載が決まりました。WR-21と統合電気推進への初期投資額と、それを回収するまでの期間を勘案し、割に合わないと判断されたのでしょう。19DDは本来はもっと革新的なステルス艦になる予定が、たかなみ型の発展型の大人しい艦形になってしまっており、艦形が地味なのに推進系だけ最先端というのもバランスが悪いと思われたのかもしれません。

統合電気推進は水上戦闘艦に限ればまだ世界的に見ても英海軍のタイプ45駆逐艦にしか採用されていません(軍用艦の初採用は英海軍のアルビオン級ドック揚陸艦)。今後は英海軍の次期空母や米海軍のズムウォルト級駆逐艦が搭載して出て来ますが、これ等はWR-21のような次世代型ガスタービンを搭載しているからこそ燃費が良いのであって、統合電気推進(統合電源方式)にする意味は「リニアレールガン」「リニアカタパルト」「レーザーCIWS」といった近未来の大電力消費兵器へ対応し易いという利点があるくらいで、そういったものがまだ無い現段階では、分離電源方式でもそれ程困りません。またリニアカタパルトの場合は、艦を全速力発揮中にカタパルトを使用したい為、むしろ分離電源方式の方が相性が良い可能性が有ります。

海上自衛隊では電気推進システム搭載艦として既に砕氷艦や海洋観測艦、音響測定艦を保有しています。これは燃費の為ではなく、砕氷艦は前後進を頻繁に切り換えて氷を割る為に、観測艦は静粛性を重視した為です。海洋観測艦「しょうなん」では観測時の艦位を保持する運動性も考慮して360度回転可能な電気ポッド推進システムを採用しています。あと、言うまでもない事ですが潜水艦もディーゼルエレクトリックです。海洋観測艦や音響観測艦は観測時はほぼ停止状態になり、観測機器に大量の電気が必要な為、統合電気推進と相性が良く、今後の新造艦は電源が統合化されていくでしょう。

他には試験艦「あすか」がガスタービンと発電機でモーターを動かす電気推進(ガスタービンエレクトリック)と、ガスタービンエンジンそのままの推進力を組み合わせたCOGLAG(Conbined Gusturbine Electric and Gusturbine)方式をテストしていました。低速の苦手なガスタービンを補完するシステムで燃費を改善します。海上自衛隊は水上戦闘艦への電気推進システム搭載テストを行いながら採用していないわけで、それほど有意な差が出なかったのだと思います。

なお清谷信一さんはこの件で気に入らないコメントを追い出す為に【隔離部屋】を作ってIPを晒して収納というような真似をされていますが、これはあまり良く無い対応だと思います。

さて清谷信一氏の記事を真に受けた上で更に斜め上にぶっ飛んだ人が1人。


株式日記と経済展望:海上自衛隊の戦闘艦艇は推進機関でも大きな遅れをとっています。
しかも未だに統合電気推進システムIESを導入する気配もありません。

それに対するアメリカの戦艦はアイオワ級で33ノットの高速性能と15ノットで16600海里の航続距離も持っていた。性能からしてジーゼルエンジンと思ったのですが、週刊オブイェクトのJSF氏から蒸気タービンだという指摘を受けた。調べたら確かにそのとおりですが蒸気ギヤードタービンエンジンで21万馬力なのに対して大和は15万馬力で負けていた。

分からないのはアイオワがどうして16600海里も走れたのかと言う事ですが、ドイツのポケット戦艦は20、000海里の航続距離で大西洋を縦横無尽に走る事ができたのもジーゼルエンジンだったからだ。アイオワは減速機の進歩によって航続距離と高速性能を実現したのだろう。それに対して戦艦大和は片道沖縄までしか航続距離が無い。


懐かしの「株式日記と経済展望」のTORA氏の再登場です。相変わらず初っ端からあらゆる箇所を間違えています、学習能力無いんでしょうかこの人・・・。
20時41分 | 固定リンク | Comment (393) | 報道 |
2010年09月05日
最近紹介した朝日Web論座の谷田邦一記者の戦車不要論の記事、一応有料ページをチェックすると清谷信一氏のコメントが有りました。要するに、谷田記者は2年前の朝日新聞日曜版での戦車不要論特集(これにも清谷さんのコメントあり)と殆ど同じ構成の記事を書いていたのです。流石にカナダ軍の戦車再評価の事例は把握していたようですが、1年前に発表されていたアメリカ軍のM1A3計画が軽量化を目指している事に気付いておらず、このM1A3をぶつけるだけで谷田記者の記事内容は出だしから(谷田記者は「欧米の戦車は重くなっているのに日本の戦車だけ軽くなっている」と主張)否定されてしまう有様となっています。

その谷田記者の知恵袋的存在である軍事ライターの清谷信一氏がブログで10式戦車不要論をまた唱えています。

10式戦車は必要か その1:清谷信一ブログ
10式戦車は必要か その2:清谷信一ブログ
10式戦車は必要か その3:清谷信一ブログ

どれも清谷さんの以前からの持論で同じ主張の繰り返し、新鮮味に欠けるのでカテゴリ「10式戦車」でも見てチェックして貰えれば良いのですが、一つ奇妙な主張が有ったので特筆しておきます。


10式戦車は必要か その3:清谷信一ブログ
 最近コメント欄で74式戦車はボロボロで、機械的にもう限界だ。だから10式を導入すべしという主張が多いのです。ならば73式装甲車も同様だと思いますが、73式がボロになったから処分しろと言う主張はありませんね。


そりゃあ、73式装甲車の後継は96式装輪装甲車なのですから、逐次更新中のものにそのような主張をする必要がありません。

・・・もしかして96の存在を忘れてます?

10式戦車は必要か その3:清谷信一ブログ
 さて、73式を新型の装軌装甲車でリプレイスすると随分な金がかかりますが、どこからその金は湧いて出るのでしょうか。


96式と新型装輪装甲車でリプレイスするんじゃないでしょうか。新型の装軌装甲車の計画なんて影も形も無いですし。

・・・本気で96の存在を忘れてたんですか?

ただ、73式装軌装甲車はまだ暫くは使えると思います。74式戦車の油気圧制御サスペンションと違って簡素な足回りですから、比較的ヘタッていないでしょう。74式戦車を延命する気ならエンジン駆動系足回りを全交換してFCSも最新鋭にして・・・それだけやっても装甲と火力は基本的に第二世代そのままで、第三世代戦車には対抗出来ません。費用対効果が合わないと思います。カナダ軍もレオパルト1は引退させましたし、台湾軍は重いM1A2では橋が渡れない為、軽量化されるM1A3を待っている状態です。他国の事例を見ても、第二世代戦車を積極的に使い続ける意味があるとはちょっと思えません。

なお清谷信一さんはこの件で気に入らないコメントを追い出す為に【隔離部屋】を作ってIPを晒して収納というような真似をされていますが、これはあまり良く無い対応だと思います。
17時51分 | 固定リンク | Comment (310) | 報道 |
2010年08月23日
朝日新聞社の「Web論座」で戦車不要論の記事が上がっています。ただし全てを見るには有料になるので、最初の公開されている部分だけ紹介します。その短い部分だけでも決定的な間違いを指摘出来ます。


自衛隊は「冷戦思考」を超えられるか:Web論座
 防衛大綱は、年末の改定が迫る。21世紀に入っても相変わらず戦闘機、大砲、護衛艦など「冷戦型」の重装備に偏る自衛隊の今後を考える。


確かにヨーロッパ方面では冷戦が終わりました。しかしアジア方面では今まさに中国の軍事力拡大に端を発する軍拡競争が始まっています。既に東南アジア各国とオーストラリアは潜水艦を倍増する方針を打ち出しており、日本もこれに続きます。我々は既に中国の軍拡に巻き込まれました。アジアでは冷戦構造が形を変えて今も残っているのです。

21世紀に入っても相変わらず戦闘機、ミサイル、空母に潜水艦など「冷戦型」の重装備に偏る中国人民解放軍の事を考えて下さい。

周辺国はこれに対抗する上で、重装備を調達しなければならないのです。


冷戦思考から抜け出せぬ自衛隊に大ナタを 谷田邦一:Web論座
 その一方で、乗員の安全性に不安がささやかれている。各国の戦車の重量が、対戦車火器の威力の大型化に伴い増える傾向にあるのに、日本の戦車だけが逆に軽量になったからだ。なぜ対戦車火器から十分に防護できるのか理由が何一つ説明されていない。・・・・・


いいえ、前の型よりも軽量になるのは日本の戦車だけではありません。アジアの大国は全て新型戦車を調達する計画なのですが、以下の様に前の型から重量が変化します。

日本・・・90式(50トン)→ 10式(44トン)
中国・・・99G式(55トン)→ 0910工程(50トン)
印度・・・アージュン(58トン)→ FMBT(50トン)
韓国・・・K1A1(53トン)→ XK2(55トン)

アジアは日中印と軒並み軽量化路線です。日本はその最先端であり、中印を一歩リードしているのです。韓国の新型戦車は前の型より重量が微増していますが、これはまだ韓国が自力で戦車を開発する事が出来ず、ヨーロッパから技術を導入した為です。

これらアジアの新型戦車は50トン前後です。欧米の戦車が70トン近くまで重量化したのに比べて軽いのは、アジアの貧弱な道路インフラ事情に合わせてあるからです。重くて装甲が厚くても戦場まで辿り着けないと意味が無いですし、戦場で擱座して動けなくなっても意味が無いからです。

つまりアジアでは敵も味方も50トン前後の戦車を装備しているので、遠い西ヨーロッパの70トン近い戦車がどうだろうとあまり気にしなくても構いません。谷田邦一記者は「各国の戦車の傾向」と言いながらアジアを全く見ておらず、分析を間違えています。

また谷田邦一記者は「なぜ対戦車火器から十分に防護できるのか理由が何一つ説明されていない」と言っていますが、防衛省の発表を全く見ていないのでしょう、実に不勉強です。

(PDF) 防衛省技術研究本部50年史 第1研究所 P204〜238
第一研究所 P213

TRDI(防衛省技術研究本部)は既に90式戦車に使われていた複合装甲や防弾鋼よりも性能の良いものを開発し終えており、10式戦車にも採用されています。また10式戦車は90式戦車より小型化している為、体積が小さく装甲の面積も少なくて済む為、軽量化しつつ装甲を同等以上にする事が出来たのです。

第二次大戦の戦車でも68トンのキングタイガーと46トンのJS-3で装甲防御力はほぼ同等でした。これはキングタイガーに比べてJS-3は非常にコンパクトだったからです。

また10式戦車には砲塔側面にモジュール装甲が装着されています。これは90式戦車には無かったもので、見た目も分かり易い装甲強化ポイントです。

10式戦車

さて、Web論座のページで「関連情報 ブログ一覧」の箇所に隅田金属ぼるじひ社さんの「10式戦車なんて要らないだろう」という記事がリンクされているのが分かると思います。そこで先にこれに反論しておきました。

(2010/08/21)隅田金属ぼるじひ社の「戦車不要論」に反論する

そしてWeb論座側の説明によると、隅田金属ぼるじひ社さんの記事を手動で選んでリンクしたのだそうです。


手動で抽出した、というのが真実に近いかも。 @dragoner_JP //あれ単純にシステム的に直近で戦車に言及しているブログを抽出しただけじゃ… @obiekt_JP //論座の記事紹介で関連ブログとしてリンク貼られてる隅田金属さんにも言及する必要がどうしても出て来る。less than a minute ago via web



そうなるとWeb論座側には責任が生じます。間違いだらけの記事を紹介して読者を惑わせた事になるからです。Web論座の記事自体も戦車に関する基本認識が根本的に間違っており、お話になりません。
23時11分 | 固定リンク | Comment (996) | 報道 |
2010年08月21日
限りなく戦車不要論に近いですねこれ・・・実質上の戦車不要論でしょう。


10式戦車なんて要らないだろう:隅田金属ぼるじひ社
 10式戦車って要らなくね?

 90式に対するアドバンテージが「軽くなった」ことだけだもの。攻防走の性能は概略そのままだしね。


10式戦車が「軽い」以外に「火力」「装甲」「機動力」の全てにおいて90式戦車を上回っている事を知らないのかなぁ・・・防衛省の公式発表を知っていれば決して「概略そのまま」とは言えない筈です。過去記事のカテゴリ「10式戦車」でその旨は何度も解説しているので、そちらをご覧ください。新型砲、新型装甲、新型サスペンション、新型トランスミッション、C4Iシステム。90式戦車と異なる部分が殆どばかりか、アクティブサスペンションとHMTトランスミッションは量産される主力戦車用として世界初搭載です。


10式戦車なんて要らないだろう:隅田金属ぼるじひ社
『市街地戦やゲリコマ対処…』なんていっているけど、そんなの相手は歩兵でしょう、74式で充分でしょ。


最近の戦訓を知らないのかなぁ・・・カナダ軍は、主力戦車としてレオパルト1を使っていましたけど、大胆にも後継をストライカーMGS(105mm砲搭載の装輪装甲車)とし、主力戦車を廃止する予定でした。ところが、アフガニスタンへ派兵する際に、古いレオパルト1戦車を念の為に持って行きました。そしてアフガニスタンの戦場でレオパルト1は大活躍しました。「やっぱり戦車は必要だ、戦車全廃なんて中止しよう。でもレオパルト1は退役寸前。じゃあ新しくレオパルト2を緊急調達しよう」と、オランダとドイツから新しい世代の戦車を調達したのです。

ちなみにレオパルト1と74式は同じ(第二次大戦後)第2世代の戦車です。そしてカナダ軍は『市街地戦やゲリコマ対処』であっても「そんなの相手は歩兵でしょう、レオパルト1で充分でしょ」というような、いい加減な対応は取りませんでした。第2世代戦車は単純に古くなって寿命が来ていますし、複合装甲を持つ第3世代戦車の方が格段に防御力が上です。更新は当然の事でした。つまり日本も同様に74式でよいという話にはなりません。カナダが戦訓を示しているからです。

では既にレオパルト2と同じ第3世代戦車である90式を持つ日本はそれでよいのではないか、という話になりそうですが、そう単純な話にはなりません。

(2010/07/26)ランド研究所「不正規戦における機甲戦力の役割」

ランド研究所の報告によると、ドイツとイギリスは戦車の有効性を認めながら、山岳地帯での運用上の問題でアフガニスタンへの自国戦車(65トン級)の投入を見合わせています。ところが30トン級の歩兵戦闘車のマルダーとウォーリアは投入しています。そして今後、ドイツ軍のマルダー後継のプーマ歩兵戦闘車の最大重量は43トン、イギリスがウォーリア後継に検討しているアスコッドSV歩兵戦闘車も同様の重さになります。

65トンの主力戦車の投入は見合わせる、でも30トン台の歩兵戦闘車は投入出来る、次世代40トン台の歩兵戦闘車も投入するだろう。

ならば40トン台の10式戦車も同じ条件の場所に投入出来るでしょう。もし50トンの90式戦車に近代化改装を施し、10式戦車と同様な砲塔側面のモジュール装甲を取り付ければ数トンは増えてしまいます。そうなれば50トン半ばとなり、40トン半ばの10式戦車と結構な差が付いてしまいます。


10式戦車なんて要らないだろう:隅田金属ぼるじひ社
 内地での運用にしたところでね、まず日本に着上陸かませる国ってある?米国だけですよ。


これ戦車不要論というより陸自不要論に近いですね。ですがロシアはフランスからミストラル級強襲揚陸艦を取得する事で冷戦時代のソ連太平洋艦隊を上回る揚陸戦力をもうすぐ手にするでしょうし、中国も大型ドック揚陸艦「崑崙山」の2番艦の建造に着手しました。韓国にもドクト級強襲揚陸艦があります。日本周辺国の揚陸戦力は台湾以外は急速に拡大中です。また揚陸戦力は海軍の揚陸艦だけでなく、徴用した民間輸送船も投入するものです。我が国が専守防衛を基本防衛方針とする以上、どうしても迎撃は後手に回る事を考えれば、洋上撃破率を高くは望めませんし、着上陸の可能性を全く無視する事は出来ません。


10式戦車なんて要らないだろう:隅田金属ぼるじひ社
 実際に各国の海兵隊/陸戦隊/海軍歩兵の戦車はほとんど旧型。ソ連海軍歩兵の戦車なんてT−55のまま。


全くの出鱈目です。

「ロシア太平洋艦隊の海軍歩兵部隊で装備近代化が進んでいる。同艦隊の第155海軍歩兵旅団は、BTR-80M装甲兵員輸送車を受領したほか、今年中にT-90A戦車やBMP-3歩兵戦闘車を受領する」 http://brrs.exblog.jp/13924730/

これは今年の記事です。執筆者はモスクワ在住の軍事ライター小泉悠氏。というかウラジオストクの第155独立海軍歩兵旅団は現状でもT-72戦車を装備しています。何時までもT-55である訳がないです。

また韓国海兵隊第一海兵師団第一戦車大隊はK1A1戦車を装備しています。これは120mm砲を装備しており、XK-2が配備前の現段階では韓国最強の戦車です。

そして中国海軍陸戦隊には最新鋭の水陸両用戦車「05式水陸両棲突撃車」が配備されています。アメリカが開発中のEFV(遠征戦闘車)に影響を受けており、高速水上航行が可能。そして105mmライフル砲と高度なFCSを装備しており、水陸両用戦車としては世界一の攻撃力を持ちます。主力戦車より高価な装備ですが、配備が進められています。

このように、各国の海兵隊/陸戦隊/海軍歩兵の戦車はそれぞれの国が有する最新鋭の装備が廻されています。


10式戦車なんて要らないだろう:隅田金属ぼるじひ社
 でもね、内地で内陸の機動戦ってできるものかね? 内地の平野は狭い。水田が占める平野部では、田んぼに水を引いている間は戦車は機動を阻害される。対戦車崖のような3面張り河川や用水路も巡らされている。都市化も進んでいる…戦車って出る幕無くね?


似たような事を朝鮮戦争の前にアメリカ軍事顧問団は考えてましたよね、「山と川と水田の多い朝鮮半島では戦車は使えない」と。しかし北朝鮮軍のT-34戦車がやって来て痛い目に遭いました。そして水田の多いベトナムでも戦車は使えないと言われていましたが、実際に投入して見ると使えました。

軍事研究 2008年 10月号「地盤の固い水田を戦車が通過する能力は、朝鮮戦争当時と同様に南ベトナムでも実証された。要するに水田、湿地及び河川は、その地盤が固ければ、戦車の通過が可能であった。」p83

「地盤が固い水田」とはどういう事かというと、水田は泥部の深さが約30cmでその下に水を逃がさない目的で粘土層があるという構造です。更にその下の地盤が固ければそれ以上は容易に沈み込んだりしません。戦車の最低地上高は40〜50cm、油圧サスペンションで車高を上げられる10式戦車はそれ以上を確保出来ます。つまり意外と余裕が有るのです。勿論、泥濘は機動を阻害します。ですが全く突破出来ないという訳ではありません。ロシアでフィンランドで朝鮮でベトナムで、戦車は泥濘を掻き分けて前進して来たのです。


10式戦車なんて要らないだろう:隅田金属ぼるじひ社
 まあ、国土防衛は74式で充分でしょうということです。沿岸防衛を頑張っている台湾を見てご覧なさい、戦車はM48で済ませて、それよりも海空戦力や防空力の強化に力を注いでいるでしょう。沿岸防衛の戦車なんて「あれば充分」なんでよ。


台湾はM1戦車を欲しがってるのですが、アパッチ攻撃ヘリコプターに予算が取られ過ぎて後回しにされています。そんな中、台風被害で橋脚の設計荷重が低かった事が判明し、M1では重過ぎて橋が渡れないと二の足を踏んでいるのです。

(2009/10/08)台湾次期主力戦車計画を見直し、M1A2戦車より小型のものを検討

ただし、潜水艦売却のゴタゴタを見ると分かるように、台湾は政治的に自由に欲しい兵器が買えるわけではないので、M1戦車より軽い戦車が取得出来る保障はありません。ですが決してM48戦車などで我慢したい訳ではありません。


10式戦車なんて要らないだろう:隅田金属ぼるじひ社
 いま流行りの海外派遣を考えたとしても、それなら重量的に余地のある90式でしょう。10式戦車は90式と同等の防御力を持つ事になっていますけれども、増加装甲をつけたら90式の方が防御力は上ですからね。


この部分に付いては既に述べた「ドイツやイギリスは山岳地帯に重い戦車を持ち込めなかった」という事例を見れば10式戦車が適している事が分かります。10式戦車はプーマ歩兵戦闘車やアスコッドSV歩兵戦闘車と同等の重量であり、将来の派遣任務に関係して来る重量の制限をクリア出来ています。


10式戦車なんて要らないだろう:隅田金属ぼるじひ社
 とにかくねえ、10式戦車って中途半端なんですよ。富士学校分を作ってオシマイでいいんじゃないですかね。


10式戦車が中途半端? いいえ、そんな事はありません。

(2010/08/15)インドの将来戦車はアージュンより軽量化を図る
(2010/05/13)T-95調達中止とTK-Xへの影響
(2009/09/28)中国次期戦車0910工程とTK-Xの類似点

現在まで10式戦車のコンセプトが正しかった事が証明され続けています。
23時52分 | 固定リンク | Comment (619) | 報道 |
2010年08月08日
7月28日、ペルシャ湾のホルムズ海峡で日本の商船三井が保有するタンカー「M・STAR」号が損傷を受けましたが、事件発生当初はテロ攻撃の痕跡が見当たらず、修理の為に入港した先のUAE当局は地震で発生した波の被害を疑っていました。一方で商船三井側は波を否定、テロ攻撃を受けたと主張していました。

8月2日、アルカイダ系テロリストグループ「アブドラ・アッザム旅団」が犯行声明を発表し、日本タンカーへの自爆攻撃を敢行したと主張。このグループは5年前にヨルダンのアカバ港で、アメリカ海軍のドック揚陸艦アシュランドと強襲揚陸艦キアサージへカチューシャ・ロケット弾による攻撃を仕掛けた事が有ります。しかし、この手の犯行声明は実行していないのに手柄を主張する場合がある為、ホルムズ海峡での事件が本当にテロ攻撃であったか確定はしていませんでした。

8月6日、UAE当局がテロ攻撃の痕跡を発見し、これでほぼ確定しました。

日本タンカーへのテロと断定=船体から爆発物残骸−UAE:時事通信

しかし私は早期からテロ攻撃であるという確信を得ていました。逆神の誤神託が非常に力強い形で世に現れていたからです。


神浦元彰 最新情報 2010.07.30
同紙に掲載されたタンカーの写真を見たが、”へこみ具合”から明らかに火器(火薬類)で攻撃されたものではない。


つまり逆神がワザワザ付け足した「火薬類」が真相なのでしょう、火器(ロケット弾や砲弾など)では無く火薬類(プラスチック爆薬など)をそのまま搭載したモーターボートによる自爆攻撃ならば、弾殻破片による傷は発生しない・・・ただ、火薬の量が足りずに厚さ5cmの軟鋼で出来たタンカー船殻を凹ませる事しか出来なかったのではないでしょうか。


神浦元彰 最新情報 2010.07.29
今回は水辺線上で光が走るのを目撃したというから、使われた武器はRPG7ではなく、砲撃である可能性が高いように思う。艦載砲か陸上砲かはわからない。


なおこのタンカー側の目撃情報はこの誤神託の後に直ぐ訂正されて「水平線上で光を見た」という部分の"水平線"は撤回されています。これも神通力だったのだろうか・・・

逆神の伝説が、また一ページ。
13時43分 | 固定リンク | Comment (125) | 報道 |
2010年07月28日
戦車は、近年のイラクやアフガンでの戦訓により、対ゲリラコマンド戦でも無類の強さを発揮する事が分かりました。機甲戦だけではなく歩兵戦でも欠かせない存在であることが再確認されたのです。もともと戦車とは歩兵を支援する為に生まれた存在であり、それは当然の帰結だったと言えます。戦車不要論を実践しようとしていたカナダ軍が、派遣されたアフガンの戦場を目の当たりにして方針を撤回、オランダとドイツから戦車を緊急調達した事で戦車不要論は最後の止めを刺されました。今や戦車不要論を唱える事は時代遅れ、そう言い切ってしまって構わないでしょう。

しかし、そんな時代遅れの人が居ました。

戦車はゼロでいい―防衛予算の優先順位― 站谷幸一(たんや こういち)

しかも站谷幸一氏のこの記事はタイトル詐欺でした。実は記事本文では「戦車は200台程度で十分ではないか」と、主張が大人しくなっています。タイトルには「ゼロ」でいいとありながら本文でこれでは、嘘を吐いていると言われても仕方がないでしょう。本文よりもタイトルで過激な表現を使い注目を得ようとするのは有りがちな手法ですが、完全な嘘はルール違反です。

また、站谷氏の書き出しは余りにも下手です。



わが国の防衛政策は、どうしても(1)「ドンパチの議論」、(2)「ヘンテコな理屈」、(3)「他国の例のそのままの引用」で議論されがちである。


しかし(1)と(3)は何を言いたいのか推測出来ますが、(2)の「ヘンテコな理屈」が何を指すのか、站谷氏が何を言いたいのか推測出来ません。最初の段落でこれを説明しておらず、記事全体で分散して記述して、記事の最後にまたドンパチ、ヘンテコ・・・と同じ事を並べて結論付けようとしていますが、記事を通して見ても一体何が「ヘンテコな理屈」なのか分かり難く、文章の構成として大変に読み難いです。站谷氏の文章は支離滅裂で纏まりがありません。

そして文章構成力以前に、はっきり言ってしまえば「ヘンテコな理屈」を述べているのは站谷氏の方です。先ずは站谷氏の主張の最も特異な部分から論じて行きます。



 現在の戦略環境で予想される「日本流の戦争方法」、つまり、日本の軍事力が最低限求められる機能とは何か。それは極端な言い方をすれば(1)地域紛争の抑止力及び対処能力、(2)本土防衛において米軍を引きずり出す戦力、(3)国際協力における国家再建と治安維持に役立つ能力である。


このように站谷氏の主張の根幹を説明しているのはこの3つです。

(1)地域紛争の抑止力及び対処能力
(2)本土防衛において米軍を引きずり出す戦力
(3)国際協力における国家再建と治安維持に役立つ能力

站谷氏の(1)の抑止力の説明は微妙におかしいですし、対処能力の説明も細かい間違いがあります。(3)の国際貢献での戦車の使用例も、有名な事例が何故か意図的に語られていない部分があり、はっきり言ってしまえば全ての部分に突っ込み所があるのですが、やはり最も特異な主張部分は(2)本土防衛において米軍を引きずり出す戦力、という部分です。先ずは此処から切り込んで行きます。

一言で言うと站谷氏は「日本本土防衛にアメリカを引きずり出すべく、紛争を煽る為に敵地を攻撃する能力を持て!」と無茶苦茶な事を言っているのです。



(2)本土防衛―状況を作り出す力―
 わが国が周辺諸国との武力紛争に陥った場合、第一に必要なのは米軍の軍事プレゼンスを何としてもわが国の国際紛争に引きずり込むことである。では、米軍が介入しなければならない事態とは何か。それは、東アジア地域での紛争がエスカレートし、米国の経済に影響を与えかねない事態に他ならない。であるならば、この場合に必要とされる戦力は、限定的でもいいので何らかの戦力投射能力となる。つまり、巡航ミサイル、揚陸戦力、攻撃機、弾道弾などの「戦力」を相手に投げつけることで、戦争をエスカレーションさせられる軍事力が必要となる。勿論、敵地攻撃能力というものはほとんど純粋な機能としては意味を持たない。しかし、「米国が介入しないのならば、中国本土なりに独力で対処する」と政治的なハッタリが出来る能力としては敵地攻撃能力をはじめとする戦力投射能力に意味はある。しかし、戦車にはこうした能力はない。


正気とは思えない、はた迷惑な防衛戦略です。アメリカを介入させる為に地域紛争をエスカレーション為せるべく、火に油を注ぐ攻撃力を持てなどと・・・余りにも馬鹿げています。

站谷氏は二年前のグルジア戦争を覚えていないのでしょうか? グルジアのサーカシビリ大統領は、「始めてしまえばアメリカやNATOが介入してくれる筈」と勝手に決め付けて、事前了解無しにロシアとの領土紛争を抱える南オセチアに進攻、本気で逆襲して来たロシア軍に南オセチアどころかグルジア本領奥深くにまで逆進攻されましたが、アメリカもNATOもグルジアを見捨てました。事前に相談も無く勝手に戦争を始めて、介入する約束などしていないのだから当然です。グルジアは代償としてロシアとの係争地であった南オセチアとアブハジアを失い、戦争は完全敗北でした。ロシアは国際社会から経済制裁すら殆ど受ける事もありませんでした。

站谷氏は先ず、アメリカの基本方針として「同盟国の領土紛争には介入しない」とある事を理解すべきです。同盟国が勝手に戦争を始めた場合にアメリカが自動的に巻き込まれる事は避けなければなりません。介入してくれそうにないからと言って「米国が介入しないのならば、独力で対処する。紛争をエスカレートさせる」と言い出すような、はた迷惑な同盟国の面倒を見る事は有りません。グルジアのように見捨てられるでしょう。最悪の場合は地域の安定を乱す存在として、はた迷惑な同盟国をアメリカが処分する事も十分に考えられる事です。

それ以前の問題として、我が国は憲法九条の理念の下に「専守防衛」が基本戦略として義務付けられており、紛争をエスカレーションさせる目的の敵地攻撃は戦法として認められていません。站谷氏のような主張は憲法九条を改正して初めて論じられる戦略であり、憲法改正前の現時点で站谷氏のような主張は行なうだけ無意味です。このような主張を行いたければ、先ずは憲法を改正してからにして下さい。

以上のように、站谷氏の最も特異な主張部分は現時点では語るだけ無意味な上に、実行した場合でも目論見通り行く可能性は皆無に近く、歴史を紐解いても近い事例(グルジア戦争)は大失敗だったという事で、問題外だという事が言えます。

それでは後は站谷氏の残り二つの主張を見て行きましょう。微妙におかしい部分まで全部紹介して行くと全文引用になってしまうので、核心部分だけ紹介して突っ込みを入れて行きます。



日本の抑止が米国の提供する核抑止と各種通常戦力(と自衛隊)が中心になって担保されている以上、戦車と抑止を結び付けて、戦車が無ければ抑止力が弱体化するがごときは論理の飛躍でしかない。


論理の飛躍を行っているのは站谷氏の方です。日本の抑止力を担っているのがアメリカの核戦力と通常戦力、そして自衛隊の戦力が合わさったものである以上、日本の保有する戦車は抑止力の一部を担っています。一部が欠ければ全体として見ても弱体化するという論理に、飛躍はありません。日本が戦車を保有している事で、敵側は本格侵攻する際に戦車と対戦車兵器を持ち込む事を強いられます。これは兵站に大きな負担を与える事になります。戦車は存在するだけで敵の「軽装部隊のみでの本格侵攻」という選択を不可能に抑止しており、後は保有数が多ければ敵側が用意すべき戦車の数を増やさせ、侵攻作戦の難易度を上げさせる事が出来ます。



対処においてはどうか。これも疑問である。日本に影響する周辺での地域紛争は、半島有事、台湾有事、尖閣諸島・先島諸島・日中中間線での日中間での紛争、ゲリコマが予想されるが、戦車の出番はほとんどない。半島有事に関連して、北朝鮮の潜伏工作員やゲリコマが都市攻撃を行った場合、地方に存在する戦車が出動するころには逃げ去っているだろうし、都市部での運用には政治的な無理がある。実際、江陵浸透事件という北朝鮮の工作員26名が韓国内を逃げ回った事件では150万人が投入され、主力となったのはオートバイ部隊だった。また、尖閣諸島や先島諸島では戦車の運用は難しく、また基本的には海上戦力や航空戦力の投入が主流になる。沖縄なら運用の余地はあるから必要かもしれないが、北海道にあんなにおいておく理由にはならない。日中中間線での紛争では出番は無い。
 このように抑止と対処の意味ではあまり戦車の出番は無い。


站谷氏は日本本土への本格的上陸作戦を無視していますが、それは仮想敵国を甘く見過ぎていると言えるでしょう。冷戦時代のソ連海軍太平洋艦隊の揚陸戦力に匹敵する戦力ならば、ロシアと中国は数年以内に揃えて来ます。ロシアはミストラル級強襲揚陸艦をフランスから購入し、中国は崑崙山級ドック揚陸艦の2番艦の建造に着手しました。両国とも新造空母の建造も確実に行われます。本格的着上陸の可能性は無視してよいものではないのです。

また北朝鮮の潜伏工作員やゲリコマが都市攻撃を行った場合、すぐ逃げられてしまうというなら予め戦車を都市部に配備すればいいですし、別働隊のゲリラ狩りに戦車を投入してもいいでしょう。都市部での戦車投入はイラクやイスラエルの事例がありますし、山岳地での戦車投入はトルコ軍のクルド人ゲリラ狩りの事例があります。そして国内で戦争が始まった状態で「都市部での戦車運用には政治的な無理がある」という主張は不可思議です。有事法を発動すれば済む事です。政治的に無理云々を言うなら専守防衛を無視して敵地攻撃を行なう事の方が無理です。站谷氏の主張はダブルスタンダードが見受けられます。また、韓国の江陵浸透事件は例として不適当です。あの事件の北朝鮮工作員は破壊工作が任務では無く、情報収集や攪乱工作を行っていた浸透部隊です。迎えに来た潜水艇の座礁と発見で北朝鮮への帰還が絶望的になった為、止む無く山を逃げ回ったもので、都市ゲリラや山岳ゲリラ、特殊破壊工作戦の戦い方ではありません。

そして離島防衛では戦車の出番が無いと言いますが、中国海軍陸戦隊には戦車並みの高い砲火力を持つ新鋭の05式水陸両用戦車があり、状況次第ではこれと交戦する必要性があります。現状でこれに対抗できる車両は戦車と開発中の機動戦闘車だけであり、離島への投入は必要とあらば揚陸艦で行えます。機動戦闘車なら空輸で降ろす事も可能です。

次は国際協力編です。



 近年、アフガニスタンでの活動に必要だからカナダが戦車全廃を覆した事例によって、戦車不要論がなくなったと指摘する向きもあるが、これも論理の飛躍だろう。そもそも、議論のポイントとして、A.戦車が国家再建活動において有効なのか、B.わが国の手法に適しているのか、を議論していないからだ。


論理の飛躍を繰り返しているのは站谷氏の方です。それを説明して行きましょう。



Aについては、私自身は否定的である。コソボでの平和維持活動において、米軍は戦車を持ち込んだが復興すべきインフラ(道路・橋)を破壊してしまうことから投入を躊躇した。要するに発展途上国での戦車の運用は、復興の基盤を破壊し、引いては民心獲得に影響することで治安維持を困難にしかねないのである。また、度重なる被害にもかかわらずドイツがアフガニスタンに戦車を投入していないことも着目に値する。グーテンベルグ独国防大臣によれば、ドイツは戦車を投入しない理由は、1.戦車は「占領軍」のイメージが強すぎる、2.現地の橋が戦車の重量に耐え切れないため、としている。


站谷氏はコソボでのKFOR(Kosovo Force, コソボ治安維持部隊)にドイツ軍がレオパルト2戦車を投入した事を無視するという、不可思議な事をしています。戦車を投入したら民心が離れる? それは嘘だ、民衆は歓喜を持ってドイツ戦車を迎え入れました。

KFOR

沿道の脇を民衆が埋め尽くし、進駐するドイツ軍に手を振り歓迎する様子を見て下さい。KFORでの実績から、ドイツ軍は戦車を治安維持に投入する事に政治的な制約はもう有りません。アフガンで投入していないのはイギリス軍と同じ理由で、山岳地では重過ぎる戦車の維持が困難であるからです。しかしカナダ軍の戦車投入が大成功しているのを見て、ドイツでは戦車を送り込むべきだという声が高まり、議会では珍しく取っ組み合いまで行われました。既にドイツ軍はアフガンにマルダー歩兵戦闘車(重量33トン)を派遣しています。そして後継のプーマ歩兵戦闘車(最大重量43トン)の投入を計画しています。ですがレオパルト2戦車(重量65トン)の投入は躊躇しています。

ちなみに我が国の新型10式戦車は重量44トンです。もしドイツ軍やイギリス軍の手元に10式が有ったなら、躊躇無くアフガンに投入されているかもしれません。戦車を持ち込んだら復興すべきインフラ(道路・橋)を破壊してしまうという懸念も、10式ならばプーマ歩兵戦闘車と同程度のリスクで済みます。

つまり站谷氏の言う議論のポイントとして、「A.戦車が国家再建活動において有効なのか」という点を我が国の軽量な新型戦車、10式戦車はクリアしているという事が言えるでしょう。



B.については適していないと言える。確かに英国の事例のように、1.戦車による威嚇効果(実際に武装勢力の活動は低調になったという)、2.装甲の効果のように戦車は国家再建活動の戦術面で役立つ部分があるのは肯定できる。しかし、それをわが国の「戦争方法」に合致するかは別だろう。そして、おそらく合致しないだろう。わが国の国際平和協力活動の中心が、直接的な対氾濫作戦よりもPRTのような復興活動やその警備であることを考えれば戦車の活用はないだろうし、戦車の投入は現地の民心獲得に支障をきたす。加えて、各国の事例が示すように戦車の投入は兵站に大きな負担を掛ける。また、何より、日本の戦車が、アフガニスタンやスーダンの武装勢力を蹂躙する映像は政権にダメージを与えるだろう。こうしたことを考えればわが国の国際協力においても戦車の必要性は低いといえよう。
 要するに、戦車がゲリコマに役立つという論はわからなくもないが、戦術的効率性を強調するあまり、戦車を投入することによる戦略的、政治的影響を無視しているのである。


戦車は掃討戦のみに使用するものでは無く、警備など防御的な役割でも活躍する事が出来ます。KFORでドイツ軍とイギリス軍が戦車を投入した事例や、レバノンPKO(国連レバノン暫定軍:UNIFIL)でフランス軍がルクレール戦車とGCT155mm自走砲を大量に投入した事例からも分かるでしょう。




白いUNカラーに塗って国連平和維持活動でも戦車は活躍出来ます。日本が戦車を投入する事が無理とは全く思いません。自衛隊がカンボジア派遣で持って行く機関銃の一丁二丁で大騒ぎしていた時代は遠くに過ぎ去り、イラク派遣では装甲車と12.7mm機関砲まで持ち込みました。次は戦車を持って行っても全然不思議では有りません。KFORへ派遣されたにドイツ戦車のように、民衆から歓迎される状況だって有り得ます。レバノンUNIFILのフランス戦車のように、白く塗ってしまえば国連平和維持活動カラーです。必要とあらば戦車を持って行く事に、一体何の問題があるというのでしょう?
大戦後のドイツと日本の立場に、どういった差があるというのでしょう?

つまり站谷氏の言う議論のポイントとして、「B.わが国の手法に適しているのか」という点について、戦車投入は何ら躊躇する必要が無いと言えます。

さて次に結論部分です。



国家間紛争の様相さえ変化しつつある現在において、戦車戦がどこで生起するのだろうか。可能性は可能性だが、蓋然性と可能性は違う。確かに戦車全廃論を唱えるつもりは無いが、600台も残す必要は無い(機動戦闘車も含まれているので、実数はそんなに残らないだろうが)。「技能を残したいのなら歌舞伎や伝統芸能のように12台ぐらいでいいじゃないですか」とは言わないが、200台程度(三個大隊)もあれば十分なのではないだろうか。新型戦車の開発も正直疑問である。


站谷氏はタイトル詐欺を働きました。タイトルには「戦車はゼロでいい」とありながら記事本文では「戦車は200台程度で十分ではないか」では、嘘を吐いていると言われても仕方がないでしょう。本文よりもタイトルで過激な表現を使い注目を得ようとするのは有りがちな手法ですが、完全な嘘はルール違反です。しかも200台で十分という数値的根拠も全く見当たらず、あまりにも無責任です。

戦車同士の闘い、戦車戦がどこで生起するか、それは空母戦(空母対空母の戦いは太平洋戦争以降、生起していない)や潜水艦戦(潜水艦同士の水中戦闘は大戦時でも特異な事例のみ)が発生するより確率の高い話でしょう。少なくとも人類は過去20年に2回の戦車戦を経験しています。そして今や戦車は機甲戦のみならず歩兵戦でも有用な事が再確認されています。戦車とは元々、歩兵を支援する為に生まれたものであり、本来の任務に立ち返っているとも言えます。戦車は対テロ戦争でも活躍できる事が、最近の戦訓で実証されています。一体なぜ、戦車が200両程度でよいと言えるのでしょうか。日本が着上陸侵攻される事が有り得ないと信じているなら,それは日本の周辺国を舐め過ぎています。確かにソ連の消滅で着上陸の蓋然性は低くなりました、しかし蓋然性が低くなった事を考慮した上で600両に減らすと決めたのです。これが最低限の数であると。それなのに200両程度でよいと言うのは、新生ロシアと急速な軍拡を行なう中国が、嘗てのソ連海軍太平洋艦隊の揚陸戦力を上回りつつある現状を無視しているとしか思えません。



付記
 ごぶさたしております。先日の自給率の議論ではたくさんのコメントや議論有難うございました。特に、ネット界の江畑謙介先生と尊敬している、JSFさん(週刊オブイェクト管理人)から丁寧かつ正確なご批判をいただいたのは大変名誉なことでした。いずれにしても、シーレーン防衛の議論の硬直性についても今後触れたいと思いますし、前回のご批判に対して応じるものを書きたいと思っております。今後ともご批判、賛成、議論、感想など各種賜れれば幸いです。Twitterは、http://twitter.com/tanya_kouichi です。


站谷氏、故・江畑氏を持ち出すのは江畑氏に対して失礼ですので、止めて下さい。

(2010/04/05)食料自給率と自衛戦争〜站谷幸一アゴラ記事検証〜

前回の時もそうでしたが、站谷氏は「◯◯はゼロでもかまわない」というタイトルがお好きなようですが、タイトルと記事本文で詐欺行為を働くようなら、もう二度と使うべきでは無いです。貴方には使う資格が有りません。
06時52分 | 固定リンク | Comment (1002) | 報道 |
2010年07月22日
F-2戦闘機調達継続の可能性を報じた産経新聞に続き、今度は東京新聞がF-2戦闘機の主兵装となる新型空対艦ミサイルXASM-3に関する記事を紙面の一面に掲載しています。


防衛省 新型対艦ミサイル開発:東京新聞
防衛省が本年度防衛費で二十三億円を投じ、F2戦闘機から発射して艦艇を攻撃する超音速空対艦ミサイル(XASM3)の開発を始めたことが分かった。超音速のため迎撃するのは不可能に近く、空母建造を急ぐ中国海軍に対抗する狙いとみられる。(編集委員・半田滋)


話題性を考えれば扱いの大きさ(一面にデカデカと掲載)は少し違和感があります。特に今度の東京新聞の記事は今更感(XASM-3の開発は既に決まっていた事でスクープでは無い)と無理矢理感(「超音速のため迎撃するのは不可能に近く」とか煽り過ぎ。そこまで圧倒的な物では無い)に溢れており、「何故この時期に? ああ、ファーンボロに合わせてる?」と云う感想になってしまいます。この東京新聞の半田滋記者は防衛省や防衛企業に太いパイプのある記者なのですが、軍事知識は皆無に近く、出鱈目な記事を書いたりスクープ記事を書いたりと記事の質が安定していません。防衛関連人脈は有るが軍事知識を勉強する気が無いという困った人です。


防衛省 新型対艦ミサイル開発:東京新聞
超音速の空対艦ミサイルは米国やロシアにもあるが、いずれも特大で爆撃機に搭載する。憲法九条の制約から「攻撃的兵器」を持てない自衛隊は長距離爆撃機を保有できないため、ミサイルの小型化を模索。戦闘機に搭載できる全長六メートル、重量九百キロのXASM3の開発に踏み切った。


半田滋記者の上記解説は大半が間違っています。先ずアメリカは超音速の空対艦ミサイルを保有していません。ロシアは何種類か超音速の空対艦ミサイルを保有していますが、爆撃機用の他に戦闘機に搭載出来る小型の超音速対艦ミサイルも保有しています。Kh-31A空対艦ミサイルは全長5mで重量600kg、最大速度マッハ4.5です。これより大きなKh-41空対艦ミサイル(重量4500kg)やKh-61空対艦ミサイル(重量2500kg)でも戦闘機に搭載可能です。爆撃機用はKh-22空対艦ミサイル(重量6000kg)ぐらいです。半田滋記者はTu-22Mバックファイア爆撃機用のKh-22空対艦ミサイル位しか知らないのでしょう。「米国にもある」と言う妄想は一体どこから出て来たのか不思議でなりません。なおKh-31Aは中国も保有しています。

半田滋記者の記事にあるXASM-3が最大速度マッハ3、全長6mで900kgが本当なら(より小型化されるという話も有ります)、フランスのASMP超音速巡航核ミサイルと同程度です。台湾の雄風3対艦ミサイルも似たようなスペックです。前述のKh-31A空対艦ミサイルはより小型でより高速です。そうなると日本のXASM-3が大した事が無いように思われてしまいがちですが、そうではありません。

何故なら対艦ミサイルは半田滋記者が言うような「超音速を出せば迎撃不能」という単純な物では無いからです。幾らマッハ3を出せても高空を飛んで来たら早期に発見されて簡単に撃墜されてしまうのです。対艦ミサイルは出来るだけ海面すれすれを低く飛んで被発見率を下げなければなりません。これを「シースキミング」と言い、これが出来るミサイルを「シースキマー」と呼びます。優秀な対艦ミサイルはシースキマーである必要があります。しかし高速であればあるほどシースキミングの維持が困難になります。しかも空気密度の関係で、大気の薄い高空でマッハ3を出せても海面付近ではマッハ1.5付近が限界です。その上、衝撃波が海面を叩いて発生する水飛沫で発見され易くなったり、空力過熱で赤外線探知されてしまったりと、高速性と隠密性は両立しない場合があります。Kh-31Aは元は対レーダーミサイルとして開発されたもので、小型で高速ですがシースキミング能力が低く射程も長くはありません。XASM-3は逆に対艦ミサイルが基本で、対レーダーミサイルとしての能力を持つ事になります。XASM-3は高性能なシースキマーであるものと思われます。


防衛省 新型対艦ミサイル開発:東京新聞
海軍力強化を進める中国の艦艇は、沖縄近海を抜けて太平洋へ進出し、海上自衛隊との間で緊張が高まっている。XASM3の開発により、航空自衛隊も東シナ海や太平洋の「覇権争い」に参加する形となる。


まるで右翼・産経新聞の煽り記事を見ているような錯覚に陥りますが、これは左翼・東京新聞の記事内容です。「超音速だから迎撃不可能だ」とかいう過剰な煽りといい、ロシアの超音速対艦ミサイルを不当に性能を低く見せたり、あまりにも出鱈目過ぎます。
00時26分 | 固定リンク | Comment (264) | 報道 |
2010年07月15日
陸上自衛隊の10式戦車にRWS(リモートウェポンシステム)が搭載されていないと批判している人(軍事ライターの清谷信一さん等)が居ますけれど、当のRWS開発元のイスラエルがメルカバ戦車に積んでない点を見れば、今のところ戦車にはRWSは特に必要が無い事が実戦で証明されているという事が言えるでしょう。一応メルカバMK.4向けに提案されてはいますが一向に採用する様子が見られず、現状では戦車に搭載してもいいけれど優先順位が低い装備としか見做されていません。元々この装備は砲塔を持たない装甲車向けの装備であり、全周旋回砲塔に主砲と同軸機銃を持つ戦車に対して無理に追加する必要性が無いのです。(装甲車の場合でも、全周旋回砲塔に戦車砲と同軸機銃を積むストライカーMGSはRWSを装備せず、車長用ハッチには通常形式の上半身を乗り出して使う機関砲を装備しています。)

諸外国を見ても、戦車にRWSを搭載するコンセプト案は出ていますし輸出向けの提案はありますが、イラクやアフガンに投入されて来た各国の戦車にこぞって装備されるようになった事もありません。一部で試験運用がされているかもしれませんが、効果が高いならば普及しても良さそうなものですが、そういう動きがあるわけでもありません。

韓国の新型戦車XK2にもRWSは用意されていませんし、RWSを新造時から標準装備している戦車は有りません。レオパルト2やルクレール、M1エイブラムスといった既存の戦車に追加装備として提案されているくらいで、フランスがUAE向けに用意したルクレール熱帯仕様にRWSが装備されていたのがあるくらいです。フランス本国では装備するか検討中の段階で、それはドイツもアメリカもイスラエルも似たようなもので、ロシアや中国、韓国などでも主力戦車にRWSを積極的に搭載しようとする動きはまだ無く、これから一部で試してみようか、という段階です。戦車用としては優先順位が低い装備なので後回しにされています。

この各国の動きを見れば、日本の10式戦車にRWSが装備されていないからといって問題視されるような事では無いでしょう。もし必要になったとしても、後から幾らでも追加装備できますし、後回しにしても構いません。(RWSは日本でも装甲車向けに研究中です)

そもそもRWSとは防御用の兵装であり、戦車が積極的に攻性的な対人戦闘する場合は主砲と同軸機銃を使います。つまり周囲にゲリラや民兵が沢山潜んでいて何時襲ってくるか分からない状況ならば防御戦闘が重視されますが、少数の特殊部隊やテロリストを狩り出す任務ならば積極攻撃となるので、RWSの必要性は低くなります。日本国内で戦車が対人戦闘する場合を想定するならば明らかに積極攻撃する側であり、RWSを特に必要としないのです。

なおイラクやアフガンの戦場で戦車の対人戦闘能力が見直され、カナダ軍の戦車廃止計画が撤回されて戦車の再評価が高まり、所謂「戦車不要論」に最期の止めが刺されてしまったのが最近の世界の趨勢となっています。この評価は戦車の直接防御力の高さ(装甲が厚く正面ならRPGロケットに耐える)と攻撃力の高さ(戦車砲から発射する榴弾系の大火力)に起因しており、RWSは有っても無くても評価に関係していません。つまりアフガンのような周り中に敵が潜んでいるかもしれない状況でも、戦車にとって重要なのはRWSの有無よりも主砲火力と装甲の厚さなのです。

このように戦車用装備としては優先順位の低いRWSですが、有ってもそれほど困らないなら、費用対効果次第で普及する可能性はあります。しかしRWSの前身とも言える手動式の遠隔機銃(機関銃付きキューポラをハンドルで操作してソレノイド撃発するもの。61式戦車や73式装甲車に装備)やキューポラそのものを小型銃塔とするもの(M48/M60戦車に搭載されたM19銃塔キューポラ)、更には初歩的なリモートコントロール機関銃(MBT70や74式戦車試作車に装備)などなど、古くは第二次世界大戦中のM3中戦車の機関銃塔やヘッツァー駆逐戦車のリモコン機銃など、以前から何度か出て来ては普及せずに終わったのが車両用リモートコントロール機関銃です。

現在の進化したRWSならば、他に武装の無い装甲車ならば普及して来たと言えます。乗員が身を乗り出すより安全です。しかし戦車には既に身を乗り出さずに撃てる主砲と同軸機関銃があります。RWSはよほど性能が向上しない限り、戦車への普及は見られないでしょう。現在の進化したRWSは幾分に高価であり、費用対効果の面で戦車のあまり使わない付属装備としては釣り合いが取れず、何度も言いますが当のRWS開発元のイスラエルですらメルカバ戦車への搭載をまだ行っていない事から、必要性が薄い事が証明されています。

RWS - Wikipedia



BSフジLIVE PRIME NEWS. 毎週月曜日〜金曜日 20:00〜21:55
本日のプライムニュースは、『それでも戦車は必要か 日本の戦略と予算の壁 中谷元・元防衛庁長官』と題し神風英男 民主党・衆議院安全保障委員会筆頭理事、中谷元 自民党・衆議院安全保障委員会筆頭理事 元防衛庁長官、冨澤暉 元陸上幕僚長 東洋学園大学理事、清谷信一 軍事ジャーナリスト 元ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー日本特派員をゲストに迎えお話を伺います。

そこで、番組をご覧の皆様から、「日本の防衛に戦車はいる?いらない?」というテーマでご意見を募集いたします。

たくさんのご意見お待ちしております。


最初に結論ありきとしか思えない報道が今夜行われるようです。フジTVのニュースJAPANは先日の10式戦車特集でRWSが付いていないと批判していましたから、これもそういう流れにする気なのでしょう。果たしてRWS開発元のイスラエルがメルカバ戦車にRWSを付けていない事や、カナダ軍がアフガンでの戦訓を踏まえて戦車不要論を撤回しレオパルト2戦車を緊急調達した事を知らないのでしょうか?

今時「戦車はいる?いらない?」だなんてテーマは論外もいいところ。とっくに決着済みの、周回遅れの議論です。
13時28分 | 固定リンク | Comment (482) | 報道 |
2010年07月13日
よく調べもせずに一人で勝手に思い込んで盛り上がり、壮大なストーリーを練り上げる・・・ちょっといい加減にしてくれませんか?


中国の示威行為にしびれを切らす米軍 原潜には原潜を〜「中国株式会社」の研究〜その66 宮家 邦彦 : JB press
そもそも、この記事を書いた記者はどうやって3隻の米原潜が同時に浮上したことを知ったのだろう。香港に寄港したのならともかく、プサン、スービック、ディエゴガルシアなどという「知る人ぞ知る場所」がどうして分かったのか。

こんな記事、米軍関係者の情報リークがなければ容易には書けない。そう考えてくれば、同記事の結論部分は限りなく米国の本音に近いはずである。


何を馬鹿な事を・・・この程度の情報はアメリカ海軍公式サイト( http://www.navy.mil/ )で全世界に向けて公開されている事に過ぎません。関係者の情報リークなんて要りません。世界中の誰でもインターネット環境さえあれば閲覧出来る情報です。以下はアメリカ海軍公式サイトPhoto Galleryより。

busan_michigan.jpg
US.NAVY - The guided-missile submarine USS Michigan (SSGN 727) passes the Olyuk Rocks as she arrives in Busan for a routine port visit.

subic_ohaio.jpg
US.NAVY -The guided missile submarine USS Ohio visits Subic Bay, Republic of the Philippines.

diegogarcia_florida.jpg
US.NAVY - The guided-missile submarine USS Florida (SSGN 728) conducts a fast cruise in Diego Garcia.

soudabay_georgia.jpg
US.NAVY - The crew of the Ohio-class guided-missile submarine USS Georgia (SSGN 729) stands by as they pull up pierside

SSGN726 オハイオ - フィリピン・スービック湾
SSGN727 ミシガン - 韓国・釜山港
SSGN728 フロリダ - インド洋・ディエゴガルシア島
SSGN729 ジョージア - ギリシャ・スーダ湾

アメリカ海軍は以上のように公式サイトで各艦の動向を公開しています。「洋上のどの位置に居るか」といった情報は当然秘密であり公開される事はありませんが、他国の港に寄港する場合はその港の管理当局に許可を得る必要が有るので、どうせ隠す意味が無いからです。それどころか自国の母港に帰って来た時でも地元民なら誰でも気付く事だし、スパイが監視していたとしても隠す意味があまり無いからと、普通に帰港の報を発表しています。

(2010/07/09)砲艦外交に使える巡航ミサイル原潜SSGNオハイオ

以前書いた記事と内容が被ってしまいましたが、母港以外では姿を見せてはならない弾道ミサイル原潜(SSBN)と、戦闘行動時以外では姿を見せても構わない巡航ミサイル原潜(SSGN)とでは全く運用法が異なっている事、「見えない抑止力」と「見える抑止力」の意味の違いを理解しておく必要があります。

はっきり申し上げますと、巡航ミサイル原潜(SSGN)が平時に友好国の港湾で姿を見せる行動は通常通りです。別に特別な事では無いのです。今回のオハイオ、ミシガン、フロリダの三艦の行動が何か特別な意味を持っている訳ではありません。フロリダはインド洋でジョージアはギリシャですからこの二艦は対イラン用で、極東方面に居るオハイオとミシガンが対北朝鮮用と考えるのが自然ですし、何時も通りの無難な配置だと思います。大騒ぎするような事ではないのです。

トマホーク巡航ミサイルの最新型「タクティカルトマホーク」は最大射程が従来型の1600kmから3000kmにも伸びており、ギリシャ近海からイランを攻撃することも、フィリピン近海から北朝鮮を攻撃することも可能です。

あと、JB press記事を執筆した宮家邦彦氏に言いたいのですが、ディエゴガルシアはともかく釜山は「知る人ぞ知る場所」ってわけでもないでしょう、釜山はそんな田舎じゃありません。香港だけ特別扱いするのもよく分かりません。スービック湾に現われたSSGNオハイオはその直前に沖縄県ホワイトビーチに来ていますし、「安全保障の感度」が高ければこれくらい誰でも把握出来る情報です。重ねて言いますが米海軍公式発表ですので誰でも閲覧出来ます。よく調べもせずに関係者のリーク情報だと思い込むのは恥ずかしい行為です。よく調べなかった、其処までは仕方無いかもしれませんが、どうして勝手に内部リークだと思い込んでしまったのですか? その点が理解出来ません。
14時13分 | 固定リンク | Comment (461) | 報道 |