このカテゴリ「報道」の記事一覧です。(全135件、20件毎表示)

2010年02月28日
朝日新聞の白リン弾報道です。この記事はアメリカ海兵隊が日本国内での演習で白リン弾を使った事を非難する内容なのですが、陸上自衛隊は普段の訓練で白リン弾を使っているのはスルーして、海兵隊だけ叩くのは何ででしょうね? 

記事を執筆した朝日新聞の野崎健太記者は、写真に撮られた水色の砲弾がM825A1白リン煙幕弾かどうか確認する為、軍事ライターの野木恵一氏に電話取材を行っています。そして野木氏は「軍事研究」2009年4月号掲載記事「マスコミとネットがつくる超兵器「白燐弾」の恐怖と真実」を教授し、白リン弾の脅威は誇張されているという見方を説明しています。

その成果が実り、地方版記事ではちゃんと両論併記になっています。


白リン弾強まる不信/日出生台-マイタウン大分:朝日新聞
◆国際法の規制なく
 脅威誇張の指摘も

白リン弾をめぐっては、「非人道的兵器」との批判がある一方、古くから発煙弾として使われてきた通常兵器で、化学兵器禁止条約などの国際法では規制されておらず、脅威が誇張されているとの指摘もある。

軍事評論家の野木恵一さんによると、白リン弾は通常弾と交互に撃ち込み、白リンの炎と煙に驚いて隠れ場所から出てきた敵を通常弾で攻撃する「あぶり出し戦術」で使われることがある。2004年に米軍がイラク・ファルージャを攻撃した際にも、この戦術がとられたという。この場合、白リン弾には殺傷力よりも、パニックを引き起こす心理的効果が期待されている、と野木さんは指摘する。

そのうえで、「民間人のいる人口密集地を攻撃すること自体が国際法違反で、戦争犯罪にあたる。白リン弾だけを規制しても根本的な解決にはならず、市街地などでの使用を監視すべきだ」と話している。


記事タイトルは白リン弾の使用に批判的で、内容も白リン弾の使用に否定的な反戦団体「ローカルネット大分・日出生台」の主張を主に紹介していますが、最後にちゃんと野木恵一氏の見解を載せており、両論併記の体裁は取られています。一方の主張だけを声高に垂れ流すのではなく、ちゃんと様々な意見があることを紹介した野崎健太記者の仕事は、良い仕事だったのですが・・・ところが全国版ではこうなっています。

米軍訓練で「非人道兵器」白リン弾使用 大分・日出生台:朝日新聞

タイトルが酷くなっている上に野木恵一氏の解説が全部無くなってしまっています。せっかく軍事専門家に取材した意味が無くなっています。これは全国紙版で編集上の過程でこうなってしまったのでしょうね・・・せっかく現場記者レベルではなるべく公平な記事を書いているのに、朝日新聞の体質がこのような結果を産んでしまったのでしょう。大変残念に思います。
23時23分 | 固定リンク | Comment (108) | 報道 |

今回はちょっとTK-X関連から外れて装甲車の話になりますが、どうもこの方が何を根拠にこんな事を言っているのかが全然分からなくて・・・


「新戦車は必要か」 清谷信一,コンバットマガジン2010年2月号,p129
しかもAPCは装甲が薄く、7.62mm弾に耐えられるレベルT程度の耐弾性(軽装甲機動車は5.56mmまで)で、戦車に随伴するのは難しい。


私がコマツの中の人に聞いた話と全然違うなぁ・・・APC(96式装輪装甲車)はモワグのピラーニャV装甲車と同程度の耐弾性があるし、軽装甲機動車はパナールのVBL装甲車と同程度の耐弾性があると聞いています。

別に装甲は薄くなんかありませんよ? そもそも軽装甲機動車を戦車に随伴させるような使い方はしませんけれど。
22時33分 | 固定リンク | Comment (362) | 報道 |
2010年02月22日
ドイツの新型IFV、プーマ装甲歩兵戦闘車。大変に高価な車両で円高ユーロ安の進んだ最近でさえ、1ユーロ125円換算で1両あたりの単価が9億円を超え、つい2〜3年前の1ユーロ160円時代なら1両あたり12億円近くもしていた「戦車より高い装甲車」です。高い高いと言われていた日本の89式装甲戦闘車でさえ1両あたり6億円台だったわけですから、その高価振りが分かろうというものです。ところで過去に89式装甲戦闘車を高過ぎると批判していた軍事ライターの中で、プーマ装甲歩兵戦闘車の単価の高さを批判している人、居ましたっけ・・・

【Schützenpanzer PUMA】
プーマ装甲歩兵戦闘車

さて今回は前の記事「40t級戦車に60t級戦車と同等の装甲を与える事は可能」で引用紹介した部分の直後の部分を紹介します。126ページ、「〜性能が何倍にも向上することはあり得ない。」の次の段落部分です。


「新戦車は必要か」 清谷信一,コンバットマガジン2010年2月号,p126
因みにドイツの新型歩兵戦闘車であるプーマは現状もっとも防御力の高い歩兵戦闘車であるが、無人砲塔を採用するなど、コンパクト化に力をいれている。その重量は増加装甲装着時で43t。新戦車とほぼ同じ重量だ。無人砲塔を採用している分、砲塔が小型で、その分装甲を厚くできる。にも関わらず、正面装甲は中口径の機関砲に耐えられるレベルでしかない。もちろん歩兵戦闘車と戦車を同列には比較できないが、装甲車両の軽量化がどれほど難しいかは理解できるだろう。


いいえ、プーマはコンパクト化とは逆の方向に突き抜けた歩兵戦闘車です。確かに砲塔は無人砲塔なので89式装甲戦闘車の有人砲塔よりも小型ですが、車体はむしろかなり大きく、世界の歩兵戦闘車の中でも最も大きな車両になります。プーマは全然コンパクトではありません。大型歩兵戦闘車です。

■プーマ装甲歩兵戦闘車
 全長 7.4m
 全幅 3.4m (防護レベルA)
 全幅 3.7m (防護レベルC)
 全高 3.1m
 重量 31.45t (防護レベルA)
 重量 41.00t (防護レベルC)
 重量 43.00t (最大車両重量)

■89式装甲戦闘車
 全長 6.8m
 全幅 3.2m
 全高 2.5m
 重量 26.5t

どちらも車両操作員は3名、搭乗歩兵は基本6〜7名で更に1〜2名の追加が出来ます。また歩兵戦闘車の機関砲は砲身が短く、戦車のように車体より前に突き出ないので全長=車体長となります。

プーマ装甲歩兵戦闘車

プーマの防護レベルの違いは、車体側面に装着する大きな増加装甲と、砲塔と車体上面に貼り付ける小さな増加装甲によるものです。プーマは増加装甲無しの防護レベルA状態ですら89式装甲戦闘車よりも全体的に大柄で、防護レベルC状態の全幅は嘗ての重戦車キングタイガーに匹敵します。車体長と全高もほぼ近いです。プーマの車体は重戦車並みの巨大なものです。各国主力戦車よりも大きく、ましてやコンパクトな日本の新戦車TK-Xは車体長、全幅、全高の全てでプーマより下回っています。

■キングタイガー(ティーガーU)
 全長 10.29m
 車体長 7.26m
 全幅 3.76m
 全高 3.08m
 重量 68.5t

■TK-X(10式戦車)
 全長 9.42m (主砲砲身含む)
 車体長 (詳細不明、少なくともプーマ以下)
 全幅 3.24m (プーマ防護レベルAより小さい)
 全高 2.30m (プーマ全高3.1mと比較にならず)
 重量 44t (40t、44t、48tの3形態がある情報も)

【TK-X 側面】
TK-X側面

基本的に歩兵戦闘車は3名の車両操作要員以外に6名以上の歩兵を搭乗させる必要があります。その為、車体の容積は大きく確保する必要があり、戦車よりも車体高さは大きくなります。一方、砲塔は機関砲用なので小さく出来ます。それでも歩兵戦闘車は「車体高+砲塔高=全高」の数値では戦車より大きくなりがちで、ドイツのマルダー、プーマ、アメリカのM2ブラッドレーは背が高い車両となっています。ロシアのBMP-3のように背が低いものは珍しく、日本の89式装甲戦闘車は西側車両としてはかなり背が低い歩兵戦闘車です。

歩兵戦闘車は歩兵搭乗の為に、車内容積を大きく確保する必要があります。体積が大きくなれば表面積も増え、装甲面積も増えて重量が嵩みます。戦車と同レベルの装甲を与えた上で立派な機関砲も付けようとすると、容易に主力戦車よりも重くなってしまいます。戦車より重い歩兵戦闘車など運用し難くて、何処の国も採用していません。そしてもし戦車と歩兵戦闘車が同じ重量なら、車体の大きい歩兵戦闘車の装甲が薄くなるのは当然で、それがプーマとTK-Xの数値に表れています。

清谷氏はどうも車両の容積という概念を理解されていないようで、単純に無人砲塔などを装備すれば大幅に軽量化できると思っているようですが、実際には無人砲塔はそれほど劇的な軽量化に寄与するものではありませんし、「コンパクト化」とは部品単位ではなく車両全体で見るべきものであり、それにさえ気を付けていれば、図体そのものが巨大な大型歩兵戦闘車プーマをコンパクト化の引き合いに出すようなおかしな真似は、避けられていた筈です。

22時33分 | 固定リンク | Comment (292) | 報道 |
40トン級戦車に60トン級戦車と同等の装甲を与える事は十分に可能です。これは戦車の歴史に前例があります。第二次大戦時、ソ連のIS-3スターリン重戦車(46トン)は、ドイツのキングタイガー重戦車(68トン)に比べ22トンも軽かったにも拘らず、同等以上の装甲を持っています。

(2009/11/19)『軽い戦車は装甲が薄い』という認識の落とし穴

以前に書いたこの記事をご覧下さい。装甲技術レベルが同等であっても、単純にコンパクト化するだけでも「小さくて軽くて分厚い」戦車を造り出す事は可能なのです。

それではコンバットマガジン掲載の清谷信一氏によるTK-X批判記事から、この件に関連する部分を紹介します。


「新戦車は必要か」 清谷信一,コンバットマガジン2010年2月号,p126
現在の3.5世代戦車は重量が60〜73tにも達しており、重量的には運用の限界とされている。これ以上の攻撃力、防御力を付加し、コンパクト化を目指すのであれば、例えば無人あるいは一人用砲塔の採用など、現用の戦車と大きく異なるコンフィギレーションを採用するしかあるまい。いくら装甲の高性能化やエンジンなどの小型化が進んだと言っても軽量化、小型化の寄与には限界がある。他国と同レベルの性能の戦車を20t前後も軽い44t(モジュラー装甲装着時)に収める事は現在の技術的に不可能である。例えば装甲板に採用されている質圧延装甲板の性能が何倍にも向上することはあり得ない。


以上、清谷信一氏の「20トンも軽いのに同等以上の性能を与えるなんて技術的に不可能」という主張は、JS-3スターリン重戦車という一例をもって否定する事が出来ます。技術的に可能であった証拠が其処にあります。何も特別な技術ではありません。車両そのもののサイズをコンパクト化し、体積を減らし、表面積を減らし、重量を減らすのです。

JS-3 in ベルリン戦勝パレード1945年9月7日
18時50分 | 固定リンク | Comment (249) | 報道 |
2010年02月21日
それではコンバットマガジンのTK-X批判記事への反論を始めたいと思います。指摘すべき箇所が多岐に渡る為、何回かに分けて行います。

「新戦車は必要か」 清谷信一,コンバットマガジン2010年2月号,p126〜129

この記事の内容について、最初から順番にではなく、分かり易い箇所から取り上げて行きたいと思います。先ずは新戦車のサイドスカートについて、他の戦車のサイドスカートと比較しながら考えて行きましょう。


「新戦車は必要か」 清谷信一,コンバットマガジン2010年2月号,p127〜128
一例を挙げてみよう。英軍のチャレンジャー2やカナダ軍のブッフェル戦車回収車などでは側面装甲を兼ねた背の高いスカートを採用している。これは前方の3分の2ほどまでで、厚さ5〜10cm以上の分厚いモジュール式の複合装甲(恐らく中空式)を採用している。その後部には重量軽減のためにスラット(格子)装甲を採用している。M1戦車の都市戦用パッケージ“TUSK”では側面装甲を兼ねた分厚い反応装甲を採用している。レオパルド2PSOやルクレールAZURなど都市戦を意識した戦車は同様なスカートや側面装甲を採用している。

これらはIEDやRPGに対向するためである。対して新戦車のスカートは厚さ1.5cmほどの厚みの鋼製装甲版である。車体上面はカバーされていない。これではRPGに対する耐性は低い。内部に複合装甲が貼ってあるのであれば車内容積が圧迫される事になり、必要な容積が確保できない。また被弾に際しても野外での迅速な修理は装甲板の交換は不可能である。少なくとも筆者が知る限りでは、新戦車がこのような構造を持っているとは聞いた事は無いし、技本がわずか数cmの厚みでHEAT弾を止めるような他国の何倍も強靭、あるいは軽量な画期的な圧延装甲と言う事も寡聞にして聞いた事が無い。

砲塔後部にバーアーマーを採用している戦車も多いが、新戦車はこのような装備は持っていない。それで他国の戦車並かそれ以上の防御力を持っているとするならば、同様に砲塔後部に分厚い装甲を有している事になる。筆者は新戦車のお披露目で外部はもちろん、車内を見る機会を得たが、少なくとも砲塔上面が厚いようには見えなかった。

昨今では戦車や装甲車の防御力向上の為に積極防御システムを採用する、あるは研究している国が多い。これは弾頭のシーカーをレーザーや赤外線などで惑わすソフト・キルと、弾頭を物理的な方法で迎撃するハード・キルがある。前者は開発が容易だが、RPGなど無誘導の弾頭には無効である。後者は技術的ハードルが高い。だがイスラエルのメルカバWは後者のハードキルタイプのアイアン・フィストをすでに採用している。現用戦車でもっとも重く重防御のメルカバWですら、このような積極防御システムを採用しているのだ。また装甲ではないが、車体から発する赤外線を局限化する特殊な樹脂版を装甲の上に貼り、ステルス性を高める方法もあるが、新戦車は採用していない。新戦車がこのような装備採用するならば、40tと言う重量を超えてしまう。


さてそれでは戦車のサイドスカートの意味合いについて解説します。

断面

この概略断面図の通り、サイドスカートの奥には車体側面の本装甲があります。つまりサイドスカートとは大きな中空装甲の一番外側の外板である、と見做す事が出来るでしょう。そして中空装甲の意義とは対戦車ミサイルなどのHEAT(成形炸薬)弾頭のスタンドオフ距離を狂わせる事にあり、薄い外板であろうとその役目は果たせます。

実はチャレンジャー2の増加装甲、M1エイブラムス"TUSK"、レオパルト2"PSO"、ルクレール"AZUR"などは全て、既存戦車へ後から装着する増加装甲キットです。

【レオパルト2 PSO】
pso1.jpg

しかし最近の新開発の戦車が登場時からこの種の装備を用意して出て来た例はあまりありません。日本の新戦車TK-Xはもちろん、韓国のXK-2、イスラエルのメルカバMk.4もそうです。

【メルカバMk.4】
mb4.JPG

それではTK-XとメルカバMk.4のサイドスカートを比較して見ましょう。

【戦車サイドスカート比較】
サイドスカート比較

このようにTK-XとメルカバMk.4のサイドスカートは同じようなものであり、レオパルト2PSOのような厚みのあるサイドスカートではありませんし、車体側面上部もカバーしていません。イスラエルのメルカバ戦車と言えば実戦で鍛え抜かれた重装甲の戦車です。対戦車ロケットRPG-7を全方向から撃ち込まれても耐えられる、とされています。そのメルカバMk.4が、サイドスカートはこの程度でよいとしています。車体側の本装甲さえしっかりしているのなら、サイドスカートは薄くても中空装甲の外板として機能し、HEAT弾頭を止められるという事なのです。

他の国の第3世代戦車(3.5世代含む)は、メルカバのように最初から側面装甲を重視していた設計ではなかった為に、後から側面装甲の強化の必要に迫られました。しかし後から車体の中の装甲を強化する事は困難だったので、車体外部に取り付ける増加装甲キットという形を取っています。つまり最初から計算に入れて設計していれば、本来は不要です。

メルカバMk.4は後日、レバノンに侵攻した際にヒズボラからロシア製の新型対戦車ミサイルの攻撃を受け損害が発生したので、これに対抗するためにラファエル社のアクティブ防御システム「トロフィーAPS」を追加装備しましたが、分厚い増加装甲キットは採用していません。あまり分厚い装甲をサイドスカートに付けると、キャタピラの整備が大変になるからです。メルカバMk.4のサイドスカート後部がスラット(格子)状なのは、この箇所がキャタピラの巻き上げた石や泥で詰まり易いので、隙間のある格子状ならそもそも詰まり難く、詰まっても軽量なので整備の際にスカートを跳ね上げやすいという理由があります。



イスラエルはRPG-7程度が相手ならトロフィーAPSなど必要は無いものの、メティスMやコルネットなどの最新型対戦車ミサイルが相手なら必要と判断したものと思われます。今のところコルネットを装備しているような装備の良いゲリラはヒズボラぐらいですから、特殊例扱いでいいでしょう。なお日本はアクティブ防御システムの採用には熱心ではありません。警戒用レーダーが電波を出す為、ステルス性を重視して隠れるには不都合である、という理由です。

なお、新戦車TK-Xは44tという基本形態の他に、40t、48tというバージョンがあるという情報があります。もしこれが本当ならば、40tバージョンは砲塔側面のモジュール装甲を取り外した形態で、48tバージョンは車体側面にモジュール装甲を追加した形態であるという予測が可能です。すると48tバージョンはレオパルト2PSOに匹敵する状態なのではないか・・・とも考えられますが、そもそも48tバージョンがあるのかは確定情報ではない上に、車体側面増加装甲とも分かっていないので、今のところは保留しておきましょう。

【新戦車TK-X】
TK-X.jpg

なおカナダ軍はレオパルト2をアフガニスタンでの戦闘用に緊急輸入した際に、スラットアーマーを装着しています。

【カナダ軍レオパルト2A6M スラット装甲】
leopard2_canada.JPG

スラットアーマーなら非常に短い期間で開発・生産が可能なので、この種の装甲が最初から用意されていないと批判する事はあまり意味が無いのかもしれません。いざ必要になった時に慌てて用意しても間に合う実例がこうしてあるわけですから。
23時03分 | 固定リンク | Comment (353) | 報道 |
2010年02月20日
実は昨年末から年明けに掛けて、沢山の軍事雑誌を買い込み、それをネタに記事を書く予定でした。先ずは雑談記事でノンビリやってから、それらの軍事雑誌ネタをやって、更新頻度も落とす・・・しかしその予定は、『普天間基地問題』の考察記事や『ミサイル防衛』のルーマニアSM-3地上型配備や空中レーザー砲による迎撃破壊試験成功の報、護衛艦『くらま』事故の続報、航空自衛隊次期輸送機『XC-2』の初飛行とロシア空軍次期ステルス戦闘機『PAK FA』の初飛行、更にはメールで『白リン弾』がどーたらで対応に追われ、更にはアフガニスタンでISAFは雪解けを待たずにマージャ攻略戦を始めてしまい、大変に忙しい1月2月となってしまいました。こうも大きな時事ネタがポンポン飛び込んで来るとは・・・しかしそろそろ、本来の予定に戻れそうです。

昨年末から年明けに掛けて購入した軍事雑誌と、その着目記事のネタは以下の通りです。

『PANZER』2010年1月号・・・TK-X
『世界の艦船』2010年2月号・・・日の丸原潜
『軍事研究」2010年2月号・・・US-2飛行艇
『戦車vs戦車』イカロスMOOK・・・TK-X
『コンバットマガジン』2010年2月号・・・TK-X

計5冊、全てツッコミ記事を書く為だけに購入して来ました。しかし忙しいので碌にチェックもせずに放ったらかしにして、最近ようやく読む事が出来ました。よく吟味した上で『世界の艦船』誌の特集記事「日の丸原潜を考える」については自分の理解の範疇に収まらず、よく分かっていない人間が批評したところで的外れになるだけだと、パスする事を決めました。餅は餅屋に任せるのが最良です。

【質問】『世界の艦船』 2010年2月号「原子力潜水艦日の丸原潜を考える」の内容はどうでしょう?

現職の原子力技術者『へぼ担当』さんによる一刀両断をご覧下さい。「世界の艦船」誌上で海上自衛隊の元運用者サイドが原子力技術を全く理解せずに原潜の取得を唱える様子は、子供が高価な玩具を欲しがるのと同じ構図です。本気で原潜を導入すべきと考えているなら、それこそ本職の原子力技術者に教えを乞わなければならないでしょう。『世界の艦船』誌も、原子炉に関連する記事を書かせるなら、元海将や軍事ライターではなく原子力技術者或いはそのOBに執筆を依頼すべきだと思います。

『軍事研究」2010年2月号のUS-2飛行艇ネタは、2009年3月号とセットです。これは後日、軽いネタとして触れる程度の内容で紹介する予定です。

つまりこれから始まる軍事企画記事とは、新戦車TK-Xに関するネタです。既に先行してイカロス出版のムック本『戦車vs戦車』の記事については処理しました。

(2010/02/09)戦車を新規開発するのは珍しい?またまたご冗談を・・・

鈴崎利治氏の記事「TK-X大解剖」にて、戦車について「日本のように新規開発は珍しい」とある間違った内容が、ムック本発売から数日後の共同通信の誤報に繋がった可能性が高いのではないかと推測します。何度も説明していますが、戦車自主開発能力のある10カ国中5カ国が新型戦車を新規開発しており、日本のTK-Xは別に珍しくありません。

また、以下の記事もこの企画と連動したものです。

(2009/12/29)作家・吉岡平の痛いTK-X批判への反論
(2010/02/08)新戦車TK-Xの火力は90式戦車よりも強化される
(2010/02/11)戦場ジャーナリスト加藤健二郎氏による出鱈目な新戦車TK-X評

小説家吉岡平氏の小説後書きでのTK-X批判の件は新刊発売当初に入手してチェックしていましたが、投入時期を完全に見失ってそのままではお蔵入りする予定でした。しかし年末にTK-X関連で酷い内容の記事が複数の軍事雑誌に載り、それらを全て反論する予定で企画を練っていたところ前座としてこれを採用すべきと思い至りました。結果、TK-Xの主砲が全くの新設計で同じ44口径でもラインメタルの砲より強力であるとする紹介記事に発展し、意義深いものとなったと思います。

戦場ジャーナリスト加藤健二郎氏の件は全くの予定外の飛び込みネタです。TK-Xを批判する方向性が大艦巨砲主義の吉岡平氏と全く逆であり、面白い対比の構図となる事が出来ました。どちらも両極端で、どちらも根本的に認識不足で、どちらも間違っています。

そして企画を本格始動する為に、『PANZER』2010年1月号の記事を読んだのですが・・・あまりの内容に言葉も出ない・・・これでは批評しても、とてもカテゴリ「TK-X (10式戦車)」に載せるべき価値があるとは思えず、此処で軽く触れるだけに止めておきます。


採用が近付いたTK-Xについて 木村信一郎,『PANZER』2010年1月号 p56
 TK-Xは防御装甲のレベルを変えることによって、40t、44t、48tの三つの状態が設定されている。
 最初の40トン状態の内容がよくわかっていないが、ほぼ74式戦車に近い防御レベルだと考えられる。
 また装甲の材質も、基本は圧延及び鋳鋼板を基本にしていて、その上に44tレベルや48tレベルの装甲を付加しながらその最終的なバリアーを形成しているものと思われる。
 また一昨年公開された本車のレベル、すなわち44tの状態は、外見から見て中空装甲を付加したものと考えられる。
 では最後の48t状態はどうかというと、44t状態の装甲と取変えるのか、この上にさらに追加するのかよくわからないが、少なくともバイタル・パート(重要部)には複合装甲が取付けられると考えられる。しかもその形状を想像するのも大変難しいが、少なくとも車体前面、砲塔前部はこれに変えられてかなり大きく変化するのではないだろうか。
 また車体側面も、やはり前半部より厚みのある中空装甲または積層装甲が取り付けられると思われる。ただ、公開された車体の状態(44t)より4tしか増加させる事ができないとすれば、あまり広範囲な装甲の追加はできそうもないと考えざるを得ない。


何を言っているのか理解できない・・・TK-X(40トン)で74式戦車(38トン)と同程度というのは単に重さだけで比較してる? TK-X(44トン)で中空装甲、TK-X(48トン)で複合装甲って、48トンでようやく複合装甲が装着されるんですか? 48トン状態だと外容も激変? 

あー、この解説、殆ど全部間違ってるんじゃないかなぁ、全部が。フリーザ様じゃないんだから・・・

「TK-Xはまだ変身を2回残している、この意味がわかりますか?」

2回変身する事までは否定しませんが、その変身内容がちょっと・・・それとこの記事、この装甲に関する以外の部分の内容もちょっとアレで、木村氏は中国の新戦車「0910工程」の存在はご存じない事が分かります。そして他には・・・


国産が本当にベスト・チョイスか…陸自の装備コストを考える 深川孝行,『PANZER』2010年1月号 p30
なにはともあれ、世界各国がまっさらな新型戦車の開発を控えている中での新型戦車の就役は、海外の関心を集めるに違いない。


イスラエルのメルカバMk.4、ロシアのT-95、中国の0910工程、韓国のXK-2、そして日本のTK-X・・・世界各国の新型戦車開発状況を一々説明するのはもう疲れました。戦車を自主設計生産できる10カ国中5カ国が新型戦車の設計開発取得に乗り出している事は、別に機密事項でも何でもない筈なのですが。


国産が本当にベスト・チョイスか…陸自の装備コストを考える 深川孝行,『PANZER』2010年1月号 p37
韓国の最新鋭K-2も8億5000万円というかなり強気の値段設定だが、その性能は明らかに90式より一枚上手だろう。


韓国のウォンが大暴落している事も計算に入れずに・・・2008年にウォンは対円で一挙に価値が半分近くになる大暴落を引き起こしているので、そのせいで安くなったように見えるだけの事です。2007年当時のレートだと1ウォン0.13円で、XK-2の1両当たりの単価は83億ウォン×0.13=10.79億円。ところが今現在のレートだと1ウォン0.08円なので83億ウォン×0.08=6.64億円。8億5000万円どころじゃありません。私も気付いたのは結構遅かったのですが、朝鮮日報日本語版を読んで驚きました。


mixi日記 「急激な円高ウォン安」 2009年09月02日00:20
【コラム】国防費をめぐる争い、間違っているのは誰か(上)
http://www.chosunonline.com/news/20090831000052
>世宗大王艦のようなイージス艦は1隻当たり1兆ウォン(約747億円)、空軍最新鋭のF15戦闘機は1機当たり1000億ウォン(約75億円)、世界トップクラスの次世代主力戦車XK2「黒ヒョウ」は1台当たり80億ウォン(約6億円)というぼう大な費用を要する。
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金額、おかしくないですか? どれも相場の半額ですよ、
と思ったら、為替レートが凄い事になってたのか・・・

1韓国ウォン = 0.0751886705 円

1〜2年前の価値と見比べると、半分以下になってるよ。
そりゃ半額感あふれて当然か。


PANZERの深川氏の記事は、韓国の他にも欧米ロシアの兵器価格と日本の兵器価格との比較がありますが、最近の急激な円高ドル安、円高ウォン安、円高ユーロ安を何ら解説していない上に、レート換算もちゃんと出来ていないようで、年代ごとに当時のレートで換算しておらず、昔の取引を今のレートで計算していたり、ちょっとこれでは・・・


さて新企画記事の本命は『コンバットマガジン』2010年2月号・・・「新戦車は必要か」、清谷信一氏の記事になります。ただし内容上、言及部分がかなりの量になるので、幾つか小分けして記事にしていく事になります。全部で何回になるのかまだ予定は立てていません。それでは次回の更新から始める予定です。

あとそれと、『軍事研究』誌のイラク戦争のレポートで、市街戦(確かファルージャ)では戦車の主砲の方が歩兵戦闘車の機関砲よりも付随被害が小さい、戦車の方が市街戦向きだったという記事が掲載されている号、正確に何年何月号がご存じの方はコメント欄で御一報下さい。確かに当時チェックしてはいたのですが、今現在は手元に無いのです。

あと全然無関係で趣味の話になりますが、懐かしのコンバットコミックで、ベルリンが舞台で二連装砲塔マウスが出て来た漫画が掲載されていた号、正確に何年何月号がご存じの方はコメント欄で御一報下さい。出来れば作者の名前もお願いします。
07時22分 | 固定リンク | Comment (237) | 報道 |
2010年02月11日
戦場ジャーナリストの「カトケン」こと加藤健二郎氏が、このような新戦車TK-X評を行っています。


自衛隊ロマン・新戦車=TK−X:東長崎機関
2010年度完成を目指して開発され、出来上がってた陸上自衛隊の新型戦車。報道公開された実物や情報公開されたスペックだけから、対戦車素人のカトケンが、この戦車について、その真価をあーだこーだいうのは難しい。しかし、言える部分もある。

まず、90式戦車から20年以上新化した戦車とはおもえないくらい、90式戦車の改良バージョンアップ版でしかない。TK−Xの設計思想が、90式戦車 と同等の火力、同等の装甲を持ち、重量の軽量化、デジタル指揮統制システムの搭載としていることから、90式戦車の改良バージョンアップ版でることがわかる。


軍事のプロが「戦車については素人だから」と言い訳を前置きした上で語り出す時点で、プロとしての覚悟が何も無く、とても残念な姿勢ですが、確かに自分自身が戦車の素人と自覚しているだけあって、その解説は何もかもが出鱈目な代物となっています。最初にはっきり申し上げますが・・・殆ど全て間違っています。

TK-Xは火力・装甲・機動力の全てに置いてこれまでの90式戦車を凌駕しており、その上でC4I機能と戦略機動性の向上を図った新型戦車です。90式戦車とは主砲も装甲もエンジンもトランスミッションもサスペンションも異なる全くの新設計で、主要各部で同じ物ないし同じ物の改良型などありません。何処をどう見れば「90式戦車の改良バージョンアップ版」になるのでしょうか。防衛省の公式発表資料、例えば政策評価書だけでも読めばTK-Xは90式戦車より火力・装甲・機動力が向上されると読み取れる筈なのですが、恐らく何も見ていないのでしょうね。



戦車の新化って、そろそろ限界なのだろうか。戦闘機の世界も、1970年代のF−15戦闘機が今だに第一線だし。


戦闘機の世界はステルス戦闘機が現れて大きな革新が始まっている筈ですが、まさかF-22やPAK-FAを知らないのでしょうか。非ステルスのF-15がまだ第一線に留まっているのは、敵国がまだステルス戦闘機を配備していないから暫くは使える、それだけの話です。戦車の世界も、恐竜的な進化が止まっただけで、重く使い難くなった兵器が軽量コンパクト化を果たす流れは、戦車に限らず兵器としてむしろ真っ当な方向性でしょう。



まず、日本の新戦車に120ミリ主砲は不要だとおもう。イラク戦争のような戦車が大量に投入された戦争でさえ、敵戦車を撃破した兵器のほとんどは、対戦車ミサイルであって、戦車の主砲ではない。ミサイルにはない120ミリ砲の利点については戦車ファンは100も承知なので、ここでは語らないが、不利な点は、火砲搭載によって、車体は重量化大型化し、また、乗員の錬度もミサイルより高いものが求められ、火砲には、車内事故による負傷も多い。


イラク軍の戦車は複合装甲を付与されていないダウングレード版のT-72ですから、対戦車ミサイルの成形炸薬弾頭(HEAT)で容易に撃破されても当然です。そんな事は第四次中東戦争でイスラエル軍の戦車がエジプト軍の対戦車ミサイルで大打撃を受けた時に判明していた事です。しかし、拘束セラミック複合装甲や進化したERA(爆発反応装甲)の登場により、第三世代以降の主力戦車の正面装甲を対戦車ミサイルで破壊する事は困難になっています。

なお、もう直ぐ登場する予定のロシアの新型戦車T-95は152mmガンランチャー(砲発射ミサイル)を採用していると推定されていますが、車体は重量化大型化しています。成形炸薬弾頭で厚い複合装甲を持つ戦車を撃破するためには、弾頭の威力増大を図る必要があり、大直径化を余儀なくされ、砲システム全体が大きくなりました。この為、高初速砲と比べ薬室を強固にしなくて良いガンランチャーであっても、結果的に重量面で有利とは言えないのです。

また車外の剥き出しランチャーに装備する対戦車ミサイルの形式では、再装填には一旦安全な後方に下がらなければならないので、継戦能力や突破力を失う事になり、駆逐戦車的に待ち伏せで使うならともかく、突撃力を期待される戦車としての使い方は出来ません。

錬度面については最近の戦車砲は目標自動追尾照準装置まで備え、電子機器の補助により昔のような職人芸までは要求されませんし、対戦車ミサイルの照準には錬度が要らないというわけでもありません。事故による負傷についても、ミサイルと火砲で特に差があるとは思えませんし、一旦誘爆を始めればAPFSDSよりもHEAT弾頭のミサイルの方が危険度は高く、より大きな事故になります。



どうしても、ミサイルでなく火砲が必要だとするなら、120ミリ砲と同等の威力の小口径砲の開発を真剣に考えたほうがよかった。90式戦車から20年もの歳月があったのだから。120ミリ砲弾は重いので、自動装填装置が故障したときに、乗員が手作業で復旧できず、戦力から離脱する可能性が高い。そのようなこともあり、主砲の小型軽量化が望ましかっただろう。今後の新人類君たちは、さらに腕力非力になる。
しかし、120ミリ主砲のない戦車なんて、戦車屋のロマンが許さないのだろう。


新型戦車に小さな主砲を採用しろと言うのは、なかなか珍しい意見です。しかし装填し難い大型砲弾だからこそ自動装填装置を備えているのですし、ラインメタル系120mm砲弾は種類にもよりますが完成弾重量で約20〜22kg、この程度の重さを持てずに復旧できないという事はありません。実はロイヤルオードナンス系105mm砲弾の完成弾重量は約18kgで、そんなに大きな差はありません。焼尽薬莢(120mm)と金属薬莢(105mm)のせいで差が詰まっているのかもしれません。

なお自衛隊では120mm戦車砲弾並みの威力を持つ105mm新型砲弾「93式105mm装弾筒付翼安定徹甲弾」を既に開発済みで、これは120mm戦車砲の初期型APFSDSに匹敵する貫通力を持ちます。しかし120mm砲弾の方も進化を続けていて、DM63やM829A3では貫通力を初期型砲弾よりも倍増しています。ここまで来ると105mm砲弾では性能面で付いていけなくなります。

では105mm砲を新設計して長砲身化すれば・・・しかし恐らく長砲身化した105mm砲は軽量化した44口径120mm砲と大差無い重量になるでしょうし、威力を上げる為に薬室サイズを大型化すれば当然砲弾の薬莢も大きく重くなります。そこまでして高初速徹甲弾の貫通力で何とか120mm砲弾に追い付いても、HEAT弾頭は直径で貫通力が決まるので劣ってしまいます。無闇に初速を上げても砲弾の弾芯が材質的に限界に来て構造が持たず、威力増大は頭打ちになりますし、105mm砲で最新鋭120mm砲弾に対抗する事は困難を極め、仮に達成できたとしてもシステム重量で大差ないものとなってしまうでしょう。



デジタル指揮統制システムの搭載は、今後の新兵器には必携であることはたしかだ。しかし、TK−Xは、乗員3人である。携帯電話を使用しながらの車の運転は事故に繋がるといわれいる昨今。デジタル指揮統制システムなんて、パソコンと携帯電話をこなしている以上の複雑な作業だ。肉体労働者が中心だった陸上自衛隊は、パソコンに向かった作業の負担をバカにしているのではないだろうか。こんなことやって司令部と議論しながら戦闘していては、目の前の戦闘行為が おろそかになることは明白だ。


なんですかこれは? 戦車素人以前に兵器素人の書いたような文章で幻滅してしまいます。

では簡単な例えを示しますが、車を運転していてナビの指示を得られる場合と何も無い場合と、どちらが先に目的地に辿り着きますか? ナビの指示を聞いたせいで事故を起こし易くなるから使うなと言えますか? 例えば戦闘機は早期警戒管制機や地上基地からの指令と情報を受けて戦闘するわけですが、「目の前の戦闘行為が疎かになるから受け取らない方がいい」とでも? ロシアのMiG-31戦闘機はデータリンクシステムで地上レーダーや僚機のレーダーとの情報を共有できますが、これもしないほうが良いのですか?

単座や複座の戦闘機でも大量のデータをやり取りしながら戦えるのに、3人乗りの戦車で出来ないと思う発想に至る事が理解できません。



以上のようなことは、どうせ、日本で戦車戦なんかない、ということを前提に設計された戦車ということであれば、たいした問題ではないが、そういうことなら、もっと革新的な新技術試験運用的な戦車にしてほしかった。たとえば、火薬不要の高初速砲といわれる電熱砲を本気で開発するとか。また、砲塔を無人化し て乗員は全員、車体内に収まるようにすれば、砲塔が格段の小型化でき、被弾時、乗員の生存率を高める設計にしやすい。戦車設計屋さんたち、ロマンが足りないね。


TK-Xには戦車搭載用としては世界初となる装備として、野外走行時の振動や主砲発射時の動揺を能動的に抑え込む「アクティブサスペンション」と、高効率な出力伝達が行える「HMT無段変速トランスミッション」が挙げられますが、これ等を革新的装備だと認識していないのでしょうか。それとも装備されている事自体を知らないのでしょうか。



TK−Xに欠如しているのは、市街戦での運用である。市街戦の交差点に、ドッカリと戦車を置いて撃ちまくるくことによる敵ゲリラ特殊部隊などへの威嚇攻撃の効果は意外とまだ高い。その場合、戦車に必要なのは、中小火器の乱発を車内から行えることである。120ミリ砲は市街戦では不要だ。車体上の無人砲塔に、機関 銃、機関砲、自動擲弾発射機、携帯ロケットやミサイルがハリネズミのようにあるのはどうだろうか。120ミリ砲をナシにすれば軽くなり、その分、増加装甲 をべたべたと貼り付けることができる。


イラク戦争の戦訓で、市街戦ではM2ブラッドレー歩兵戦闘車の25mm機関砲よりもM1エイブラムス戦車の120mm砲の方が使い勝手が良かったという報告が為されています。120mmHEAT弾は着弾すれば即座に起爆しますが、25mm機関砲は貫通力の高いAPDS弾は勿論、HEI弾でも建造物の壁を容易に貫通し、付随被害を増やしてしまうという報告がありました。また突入作戦の際に壁を砲撃で破壊してから歩兵の侵入を行う場合、25mm機関砲では時間が掛かり過ぎますが、戦車砲なら即座に穴あけが出来るので、戦車の活躍する場面が多くなっています。このあたりの話は「軍事研究」誌の数年前の号に掲載されていた事ですが・・・第二次世界大戦の戦訓でも「市街戦に必要なのは一発当たりの大きな火力」と、大口径榴弾砲を搭載した突撃砲をドイツとソ連は用意しました。建造物に潜む敵を建造物ごと吹き飛ばすためです。大口径砲こそ市街戦向きであると言えます。

なお加藤健二郎氏が主張しているような「中小火器の乱発を車内から行える」車両に近い物は既に有ります。

nagmachon.jpg

イスラエル陸軍センチュリオン戦車改造「ナグマホン」

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ロシア陸軍T-72戦車改造「BMPT」

この2車は装甲の厚い戦車の車体を流用して、大きな戦車砲を降ろし、機関銃又は機関砲、対戦車ミサイルを搭載しています。しかしナグマホンは低強度紛争向けで、しかも敵の装備レベルが低い場合にのみ使える市街地警備用車両です。ゲリラとしては装備レベルの高いヒズボラ相手には通用しない車両で、以前AT-3対戦車ミサイルで撃破されてしまいました。普段は専らパレスチナ自治区の治安維持任務に投入されています。BMPTについてロシア陸軍はT-90戦車の支援用と銘打ってあり、対歩兵戦での役割を戦車の代わりに全て行うものではありません。山岳地帯の谷間や高層ビルの上層部に居る敵は、戦車では主砲の仰角が大きく取れず攻撃し難いので、高仰角の取れる機関砲を搭載したBMPTで対処するという役割分担です。結局のところこの種の車両はロシアが言うように主力戦車のサポート役であり、戦車そのものを代替する存在にはなり得ません。

これまで他の記事でも何度も言及してきましたが、カナダ陸軍がアフガニスタンの治安維持任務にカンダハルへ展開、実戦での戦訓を経て「装甲車ではなく戦車が必要」と、それまで計画していた戦車を全廃し装甲車のみとする自国の革新的な将来方針を間違っていたと撤回し、オランダとドイツから急遽、レオパルト2戦車を調達した事からも、加藤健二郎氏の主張が今はもう周回遅れとなっている事が分かると思います。

大重量大口径砲を望んでいた「小説家・吉岡平氏の痛いTK-X批判」と正反対の主張を行った加藤健二郎氏もまた、間違った理解の元に出鱈目なTK-X評を行ったもので、やはりカトケンさんは「戦場ジャーナリスト」であって「軍事評論家」ではなく、畑違いの分野で迂闊な事を口走って欲しくありませんでした。これでは一般人の理解レベルと殆ど差がありません。
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2010年02月09日
昨年12/24の記事、「TK-Xと22DDHが予算通過の見込み」 では、共同通信の記事を紹介しました。例によってデマが書かれていた報道です。

■新型戦車、護衛艦導入へ 10年度防衛関連予算:共同通信 2009/12/23
>ただ主要国で新型戦車を調達している国はなく、政府の判断には異論も出そうだ。

一体何を言っているのか・・・戦車を自主開発できる国は全世界で10ヵ国ありますが、その半数は新型戦車を調達予定ないし調達中です。

アメリカ・・・M1エイブラムス
イギリス・・・チャレンジャー2
フランス・・・ルクレール
イタリア・・・C1アリエテ
ドイツ・・・レオパルト2
ロシア・・・新型戦車T-95
日本・・・新型戦車TK-X
中国・・・新型戦車0910工程
韓国・・・新型戦車XK-2
イスラエル・・・新型戦車メルカバMk.4

なおイタリアにはアリエテMk.2という計画があり、これは新造の予定なので、実行に移されれば10ヵ国中6ヵ国の過半数が新型戦車の調達を行う事になるのですが、一向に計画が進められる様子が無いので取り敢えず保留しておきます。インドの新型戦車アージュンについては、開発失敗と見てよいので、自主開発できる国にはカウントしていません。イスラエルのメルカバMk.4は2004年から調達開始されています。

共同通信にこの件で問い合わせてみたところ、以下のような回答が返って来ました。



共同通信ニュースセンターの多メディア担当、※※と申します。

ご指摘いただいた件ですが、出稿した政治部に問い合わせましたところ「主要国ではなく、いわゆる西側先進国(G7)という意味で、記述が不正確だった」との返答がありました。今後はこのような表現を安易に使わぬよう注意いたします。
貴重なご指摘ありがとうございました。


冷戦も終わって西側も東側も無いでしょうに・・・西側先進国だと日本の周辺国は全部外れてしまい、遥か遠くのヨーロッパの動向を気にしても意味が無いと思うのですが。日本の周辺国であるロシア、中国、韓国は新型戦車を調達する計画です。目を向けるべきは目の前の極東である、どうしてこんな簡単な事が分からないのか・・・

そこで私は更に返信を行いました。



西側先進国(G7)でも間違いです。G7メンバーのカナダは2007年にオランダから戦車を100両購入しています。翌年にはドイツから20両の戦車をレンタルしています。やはりこの記事は「主要国」だろうと「G7」だろうと間違いです。


カナダ陸軍はこれまでレオパルト1戦車を使ってきましたが、耐用年数が来ても新たな戦車は購入せず、戦車砲を積んだ装輪装甲車「ストライカーMGS」で代替する事を計画していました。戦車不要論を採用しようとしていたのです。しかし、自国軍がアフガニスタンでの戦闘に参加して得た戦訓からこの方針を撤回、分厚い装甲が必要だとレオパルト2戦車を緊急調達しています。戦線に即座に投入する為に、急いで纏まった数を手に入れる必要があり、オランダとドイツから余剰のレオパルト2の中古を調達しました。拘束セラミック複合装甲を有するレオパルト2は、均質圧延鋼装甲のレオパルト1よりも格段に重装甲で、その正面装甲は対戦車ロケットRPG-7の直撃に平然と耐えられます。カナダのこの選択こそ、戦車不要論を過去のものとした決定的な出来事です。対テロ戦・対ゲリラ戦でも戦車は頼れる重要不可欠な存在だと、証明されました。

なお共同通信からの返答はありませんでした。

またこれは私の勝手な想像になるのですが、共同通信の記者がこのような間違いを犯したのは、時期的に見てこの本が原因なのではないかと思います。

戦車vs戦車

2009年12月17日に発売された「戦車vs戦車」イカロス出版Jグランド特選ムックです。

この本の冒頭にあるTK-X特集に、このような記述があったのです。


TK-X大解剖 写真と文/鈴崎利治 ;「戦車vs戦車」イカロス出版 10ページ
諸外国では20年以上前に登場した第3世代の戦車をアップデートして使っているのが現状で、日本のように新規開発は珍しい。


共同通信の政治部の記者は、発売されたばかりのムック本を立ち読みして、この記事を読んで信用してしまった・・・というケースだったのではないかと思います。

くどいようですがもう一度書いて置きます。

アメリカ・・・M1エイブラムス
イギリス・・・チャレンジャー2
フランス・・・ルクレール
イタリア・・・C1アリエテ
ドイツ・・・レオパルト2
ロシア・・・新型戦車T-95
日本・・・新型戦車TK-X
中国・・・新型戦車0910工程
韓国・・・新型戦車XK-2
イスラエル・・・新型戦車メルカバMk.4

鈴崎利治氏の解説は、10ヵ国中半分の5ヵ国にしか当て嵌まりません。アリエテMk.2の事は忘れててもいいですが、メルカバMk.4やT-95の存在を忘れられては困ります。T-95はもしかしたら、5月9日のモスクワ戦勝パレードに出て来るかもしれません。今年は初めて来賓にNATOの軍人も呼んでいますから、もしお披露目されればJS-3ショックの再来となるでしょう。
21時09分 | 固定リンク | Comment (133) | 報道 |
2010年02月07日
世界的に権威のあるイギリスの軍事週刊誌ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー(Jane's Defence Weekly,略称JDW)の東京特派員は、これまで故・江畑謙介氏、清谷信一氏、そして現在は2009年1月から高橋浩祐氏が勤めています。

ジャーナリスト 高橋浩祐(Kosuke Takahashi)

自己紹介のところを見ると、元朝日新聞記者で、北朝鮮問題を専門とされています。

さて、高橋浩祐氏はどのような人物なのかと検索してみたら、「分からんなぁ:ギロニズムの地平へ」というブログの記事での書き込みが見つかりました。



僕の名前を出して批判するなら、君は誰だ?匿名で言いたいことを言うのは卑怯だと思うよ。自分だけ安全な場所にいて、攻撃する闇討ちみたいなものだ、僕にしたら。名をきっちり名乗って、責任を持って発言してくれ!お願いだ。

2006/4/24(月) 午後 2:24 [ 高橋浩祐 ]


高橋浩祐氏がどのような批判を受けたか、その内容と正否については此処では問題にしません。気になったのは、高橋浩祐氏のこの反応部分です。実名匿名論争に於ける実名絶対主義者。匿名者は実名者への批判は行ってはならない、批判を行うなら自ら実名を明かせと要求する、およそ現在の日本のネット常識では主流とは成り得ていない主張を行っています。高橋浩祐氏の主張を厳格に適用すると、政治家や芸能人、スポーツ選手などの有名人の名を出して批判する場合も匿名での批判は許されないという事になります。

大変、残念な姿勢であるなと思いました。



記事もそうですが、ブログや2チャンネルもそうです。匿名で書かれている意見や批判は、信用できないし、信用してはいけないです。
匿名で意見や批判記事を発信する人は、木陰から相手を闇討ちするかのごとく、卑怯者で勇気がないと思っています。
以前から何度もこのブログで書いているのですが、海外の読者は実名入りでバンバン、僕に批判意見とかを送ってきます。僕にしても、それの方が気持ちがいいです。日本人も早く、実名で何でも意見を言えるようになってほしいと希望しています。

2010/1/22(金) 午後 11:57 kousuke_takahashi.gif


4年経っても持論は変わっていないようです。匿名ならば批判のみならず只の意見を言う事も卑怯だ、そうです。私は卑怯とは思わないですね。議論を仕掛けに行った場合に捨てハンで挑むのは卑怯かもしれませんが、普段からずっと使っている名前ならばペンネームとしてそれで何ら構わないと思います。

「誰が言ったか」ではなく「何が書かれているか」が全てです。匿名だろうが主張の内容が正しければ、意見や批判は価値あるものです。実名で発言しても内容が間違っていればそれまでの事でしょう。

高橋浩祐氏の望むネット世界は、現在の日本に置いては存在せず、これからの未来にも存在する事は、無いだろうと思います。アメリカでも電子フロンティア財団(Electronic Frontier Foundation, EFF)は「ブログをやる場合は匿名を使うべき」と提言しています。だから外国は実名主義で日本だけ匿名主義、という主張は間違っています。


参考;

Geekなぺーじ : アメリカのネットって本当に実名主義なの?
http://www.geekpage.jp/blog/?id=2009/11/10/1
「日本人は匿名志向・外国では実名志向」を疑う - akoblog@はてな
http://d.hatena.ne.jp/oritako/20091104/1257732209
20時28分 | 固定リンク | Comment (229) | 報道 |
2010年02月01日
あー?


ロシアの最新鋭戦闘機T50がテスト飛行:朝鮮日報
また、ステルス機能の原理も異なる。F22ラプターは、機体に塗装を施してレーダーの電波を反射させるよう設計するというやり方で、ステルス機能を備えた。これに対しT50は、レーダーの電波を吸収する低温プラズマ膜を機体の周囲に形成するという方式を取った。


・・・まだ言ってるのか、権景福(クォン・ギョンボク)記者・・・

2007/12/19)プラズマでアクティブステルスの件

2年前のこの記事もモスクワ特派員の権景福(クォン・ギョンボク)記者が書いた記事で、ロシア側が発表してもいないプラズマ・ステルス機構を勝手に語ってPAK-FAに装備されていると記事にしています。一体どういう根拠でこんな事を書いているのだろう・・・
20時29分 | 固定リンク | Comment (75) | 報道 |
2010年01月13日
2年前にもこの手のネタが流れていましたけど、信憑性は無さ過ぎて・・・


海自補給活動 中国が“後釜”を検討  政府に広がる警戒感:産経新聞
15日で海上自衛隊がインド洋での補給活動から撤収することを受け、中国海軍が代わりに補給活動を引き継ぐことを検討していることが10日、複数の政府関係筋の話で分かった。原油の9割を中東に依存する日本にとって、そのシーレーン(海上交通路)でプレゼンス(存在)を失うだけでなく、中国にエネルギー政策の根幹を左右されることになりかねず、政府内に警戒感が広がっている。


給油孔の規格が合わないし、アタッチメントでも新たに用意するのか知らないけど、こんな話は中国側でも全然聞いたことが無い・・・と思っていたら、中国側からは「可能性は全くない」と否定されてしまいましたとさ。


インド洋補給交代、可能性ない=中国紙:時事通信
12日付中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報は、15日に期限を迎える日本の海上自衛隊によるインド洋の補給活動を中国海軍が引き継ぐことを検討しているとの一部報道について、「可能性は全くない」との軍事専門家・尹卓氏の見解を紹介した。


パキスタンは中国との数少ない同盟国だから、パキスタン海軍艦艇に中国海軍が給油するのは無理がない・・・とでも産経新聞は考えたんですかね? でもパキスタン海軍艦艇はイギリス製やオランダ製のものばかりで、NATOの規格と中国海軍の規格では合わないですし、技術面や練度の問題もさる事ながら、そもそも政治的に非常に考え難い話です。

なお約2年前にも産経新聞は同様の記事を書いています。その時の軍板での反応は以下のようなものでした。



  【質問】 
 以下の話の信憑性は?

 【湯浅博の世界読解】中国は海自の穴を埋めるか(産経新聞)
 11月1日に日本のテロ対策特別措置法が期限切れになると,海上自衛隊の補給艦が撤収しなければならない.
 その穴を中国艦が埋める可能性が現実味を帯びてきたというのだ.

 【回答】 
 馬鹿げている.政治的,軍事的に有り得ない.


なおこの時、私も「馬鹿らしい。産経の煽り記事もここまで来たか」とコメントしたのを覚えています。

また似たような件ではこのようなものも・・・



 【質問】
 『WEDGE』10月号,
「Point of View
 谷口智彦(前外務副報道官・慶應義塾大学大学院SDM研究科特別招聘教授)
 海上自衛隊の給油活動 実はローリスク ハイリターン」
に書かれていた,
>何かと不安定なパキスタンを,反テロ戦線に繋ぎとめてきた役割は,
>海自が果たしたと断じていい.
ってのはどうなんでしょう?

 【回答】
 断じていいですが,それは思い上がりです.

 パキスタンは自国内でタリバーン勢力と激しい戦闘を行っており,それを継続するか和平を行って停戦するかは,日本の給油活動の如何とは全く関係が無い次元の話です.

 で,つい最近まで和平路線を模索していましたが,先月末に打ち切り,タリバーン運動を非合法化し全面対決路線に入りました.
 怒った相手は大統領と首相を纏めて暗殺しようと,ホテルをふっ飛ばしましたが目標は殺せず,ってのが最近の出来事です.

 どうも保守派政治勢力の思い込みは,
「日本が給油活動を止めたら中国海軍が入り込んでくる!」
という妄想といい,妥当性が何も無いというか・・・


こっちは1年ちょっと前の話です。

日本が給油活動を止めたら中国が後釜に座ってしまう、と懸念する主張は、日本の産経新聞ぐらいしか見当たりません。もし本当にそんな動きがあるなら中国側からの報道があって当然なのに、一切見当たりません。対テロ戦争で支援を受ける側のアメリカ側からの報道も一切見当たりません。幾ら中文ソースや英文ソースを探してみても見つからないのです。

これはあまりにも不自然です。情報の出所が産経新聞のみで、他所からの後追い情報が一切無い、それも2年間もずっと・・・産経新聞は「複数の政府筋」「防衛筋」から情報を得たと主張していますが、全く信用できません。現状のままでは産経新聞のトバシ記事、デマ記事と判断するしかありません。
19時34分 | 固定リンク | Comment (177) | 報道 |
2009年12月29日
これまで、フィクション小説の間違いを名指しで批判する事はやって来ませんでした。上手く嘘を書く事がフィクション小説の醍醐味であり、間違いを突っ込むのは野暮なことだからです。勿論、嘘を嘘と分かって計算ずくで狙ってやったものと、単に無知から来るミスでは全く意味が異なってきますが、やはりフィクションである以上はそれを信じ込む方が悪いので、無知から来るミスであろうと放置してもそれほど実害はありません。ただし、ある有名作家の書いた小説を端に発する「90式戦車の底は河原の石に当たったら破れてしまう」という誤解のように、それを信じ込んでしまう人達が大量に生み出され、もはやデマの流行に近い状態になってしまった事があるように、場合によっては真面目に間違いを正す必要が生じるケースもあります。

さて、以下はそれとも異なるケースです。問題となる小説は、「無責任艦長タイラー」などの代表作で知られる小説家の吉岡平氏の最新作「突入! 痛戦車小隊」です。



表紙小説の紹介
itasensha.jpg

突入! 痛戦車小隊

吉岡 平 (著)
野上 武志 (イラスト)
価格: ¥ 1,050
新書: 320ページ
出版社: 朝日新聞出版
ISBN-10: 4022739231
ISBN-13: 978-4022739230
発売日: 2009/9/18
寸法: 17.2 x 11.2 x 2.2 cm

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吉岡平氏は、巻末の後書きでこう述べています。305〜306ページより。



自衛隊といえば90式! 間違ってもTK-Xではない。正式採用する前から陳腐化しているような戦車(ひょっとしてこの戦車、90式よりも先に退役するやも)に、自分の老後の国防が託されるかと思うと暗澹たる気分になってくる。こんなものに税金使いやがって! タミヤも間違っても、TK-Xのキットは出すなよ。いや、どこの模型メーカーも、射出成型(インジェクション)で出す価値なし。こんなものは、ガレージキットだけでじゅうぶんじゃ。

……と、ひとくさり怒りをぶつけてみたが、思えばTK-Xに失望したことが、自分の中ではこの作品を執筆する原動力になったような気がする。そう思えば、TK-Xにも幾分かの価値を見い出せよう―なんて、聞き分けのいいことは言ってやらない。大人げないと言われようが、どこまで嫌いなものは嫌いなのだ。


実際にこの小説では作中でTK-Xが失敗作扱いされて描かれています。このように現実世界の批判を行う為に作中に登場させた対象を叩くという手法、これ自体は結構よく見かけるもので、小説や漫画、ドラマや映画などで実在の政治家や国家をモデルにして風刺する場合があります。この場合は対象がたまたま新型戦車TK-Xだったわけですが・・・吉岡平氏は、小説内でTK-Xを悪く書くだけに止まらず、巻末の後書きで現実世界のTK-Xに対して散々な批判をされています。そしてその内容は悉く出鱈目な主張であり、看過する事は出来ません。後書きのそれはフィクションだという言い逃れが出来ない部分です。

故に、この場で吉岡平氏の痛いTK-X批判に対し、全て真面目に反論を行っておきます。小説内のTK-Xの描写については一切触れません。巻末の後書き部分で現実世界のTK-Xに対して触れた部分についてのみ、問題とします。吉岡平氏がTK-X嫌いなのは個人の趣味です、それは別に構いません。ですが出鱈目な事を吹聴されるのは大変に迷惑です。

それでは、始めましょうか。巻末の後書きから、冒頭の305ページより。



作中でもちょこっと触れたが、陸上自衛隊の新戦車TK-X(順当にいけば、10式戦車ってことになるのかねぇ)には失望した。凡庸な性能。スタイリングが酷い。主砲も従来のまま。そりゃまぁ、キューマルのバックアップで、なおかつ不況の折、防衛予算を圧迫しないという理由があるにせよ、二十年近く前に制式採用された戦車に見劣りするって、正直いかがなものかである。これが携帯電話やデジカメならば、二十年前はおろか半年前のスペックでも存在意義はゼロであろう。いや、存在意義ならわかっている。90式には渡れなかった橋が渡れて、90式を載せられなかった貨車やトレーラーに載せられる。極言すれば、それだけの戦車である。


×主砲も従来のまま。

○TK-Xには新設計の44口径滑腔砲が用意されています。
「新戦車TK-Xの火力は90式戦車よりも強化される」

×90式戦車のバックアップ。

○TK-Xは90式戦車のバックアップ用ではありません。

×二十年近く前に制式採用された戦車に見劣りする。

○TK-Xは90式戦車に劣る要素は存在しません。

TK-Xは決して凡庸な性能ではありません。スタイリングが酷いというのは個人の趣味でしかないので、そういう感想は御勝手に。大方の評判ではスタイリングにケチを付ける声は少ないですけどね。TK-Xの最も大きな要素は国内インフラ事情に合わせた戦略機動性の向上にあるわけですが、近隣の中国でも新型戦車開発計画「0910工程」に置いて、前作の99G式戦車(54トン)が重過ぎて国内では使い難いので、50トン以下の重量とする軽量化コンセプトを打ち出しています。

(2009/09/28)中国次期戦車0910工程とTK-Xの類似点

奇しくも、ライバルとなるであろう二つの国の新型戦車が同様のコンセプトで作られ、時期を同じくして登場するという状況となっています。これまでTK-Xを批判する人の中で、中国の0910工程に触れた人を一度も見たことがありません。是非とも0910工程の存在を彼らに教え、感想を聞いてみたいところです。

次に305ページ後半から306ページ、既に紹介している部分ですがもう一度詳しく挙げておきます。



正式採用する前から陳腐化しているような戦車(ひょっとしてこの戦車、90式よりも先に退役するやも)に、自分の老後の国防が託されるかと思うと暗澹たる気分になってくる。こんなものに税金使いやがって!


×正式採用する前から陳腐化している

○TK-Xには戦車搭載型としては世界初となるアクティブサスペンションやHMT無段変速トランスミッションが採用されており、世界の最先端を行く装備が付与されています。

×ひょっとしてこの戦車、90式よりも先に退役するやも

○全ての面で90式戦車を上回っているTK-Xが何故そのような事に?

どうして新型戦車が既存の戦車よりも早く退役する事になるのか、理解できない発想です。重大な設計ミスでもない限り、そのような事は有り得ない筈ですが・・・次に306ページ、後半部分です。



思えば韓国はいいなぁ。K2『ブラックパンサー』はTK-Xの百倍いいぞ。おまけに最近の韓国陸軍は、ロシアと蜜月関係にあるようで、互いに技術提供はおろか、中古のロシア戦車が配備されている。あのねぇ、かつては大韓航空機を撃墜された間柄でしょうが……。そう言ってみても、自衛隊にロシア戦車が配備される可能性はまずもって絶無なわけで、マニアとしては非常に羨ましいぞ。いっそ、次期主力戦車は韓国との共同開発というのもアリかも。少なくともTK-Xを造るよりずっと少ない予算で、より多くを調達できるはずである。そうですねぇ、チェ・ジウに女性陸上自衛官のコスプレをしてもらって、お返しに、藤原紀香か上戸彩か香椎由宇に、韓国女性士官のコスプレをしてもらうということで……。


×K2「ブラックパンサー」はTK-Xの百倍いいぞ。

○どこが百倍良いのか具体的な個所を提示して見せて下さい。

韓国の新型戦車XK2は技術的に注目すべき部分が何もありません。既存の各国の技術の寄せ集めに過ぎず、韓国の独自要素というものが何も無いからです。とはいえ、それは仕方の無いところで、韓国初のK1戦車が設計はアメリカで行われており、改修型のK1A1で設計の練習をしたとはいえ、実質的にはXK2戦車が韓国初の自主設計戦車となるからです。韓国の独自要素が出てくるのは次に開発する戦車となるでしょう、現状では他国の模倣の域を出ないのは仕方が無い事です。

×韓国陸軍は、ロシアと蜜月関係にあるようで、互いに技術提供はおろか、中古のロシア戦車が配備されている。

○韓国陸軍に配備されたT-80U戦車は、既にお荷物と化しています。

借金のカタとして戦車を現物支給された韓国ですが、今になって問題が生じています。輸入品の整備用パーツが満足に調達できなくなり、稼働率が大きく下がってしまったのです。今年8月に朝鮮日報がこの問題を記事にしています。整備体系が全く異なる旧東側兵器を少量導入しても、満足に戦力化することは困難な話で、これを教訓に韓国では、国産兵器の調達を重要視すべきという意見が強まりました。

そもそも「蜜月関係」というのは、インドのようにロシアからT-90戦車のライセンス生産を許可されたくらいのケースを言います。ライセンス生産が出来ればパーツ供給不足に悩まされる事も無くなります。インドは更にロシアと新型戦車を共同開発する約束も取り付けています。

×いっそ、次期主力戦車は韓国との共同開発というのもアリかも。少なくともTK-Xを造るよりずっと少ない予算で、より多くを調達できるはずである

○韓国に何か日本に提供できる独自技術があるのですか?

技術的に組むメリットが無い以上、金銭的な面での援助くらいしか韓国と組むメリットがありません。ですが、戦車開発でロシアと組んだインドや、中国と組んだパキスタンのような誠実な態度を韓国に期待する事は無理です。技術面で韓国は誠実な国ではありません、確実に日本から技術を盗もうとしてくるでしょう。そのデメリットを考えた場合、予算面での援助があってもマイナスにしかなりません。よって、仮に軍事技術で韓国と組む事が将来あっても(武器輸出三原則が緩和されても)、既に枯れた技術要素の案件でなければやらない方が賢明でしょう。

それでは最後に、306〜307ページから・・・



いや、最初は冗談で書いているうちに、なんだか実現しそうに思えてきた。思えば自衛隊も自国開発にこだわらず、どんどん世界から戦車や装甲車を輸入すべきである。少量ずつ、いろいろな国からおいしいところをつまんで、実験部隊を編成すればいい。個人的には、陸自仕様のチェンタウロ(日本には、装輪車体に105mm砲を搭載した威力偵察用の車両がないからね。必要ないんだけど……)なんか、見てみたいところではあります。


×最初は冗談で書いているうちに、なんだか実現しそうに思えてきた。

○目を覚まして下さい。

×個人的には、陸自仕様のチェンタウロ(日本には、装輪車体に105mm砲を搭載した威力偵察用の車両がないからね。必要ないんだけど……)なんか、見てみたいところではあります

○「機動戦闘車」の開発計画を知らないんですか?!

装輪車体に105mm砲を搭載した威力偵察用の車両なら、国産開発計画が持ち上がってるんですが・・・

吉岡平氏は、防衛省が公式発表している情報を何もチェックしていないのですね。チェックしていたら機動戦闘車の事は把握していないとおかしいですし、こんなセリフは吐けない筈です。という事は、TK-Xに関する公式発表も何も把握されていないのでしょう。だからTK-Xが90式戦車を全ての面で上回る事や、世界初の技術が搭載されている事も知らないのでしょう。

吉岡平氏は思い込みだけでTK-Xを憎んでいるとしか思えません。このような後書きを誰も止めなかったとは、小説の売り上げにも大きくマイナスとなるでしょうに・・・
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2009年12月13日
以前書いた記事「元防衛大学校教授・平間洋一氏の誤った日米戦艦運用方法についての認識」を経ても、平間洋一氏からは結局、記事を書く前に問い合わせたメールへの返事のメールはありませんでした。しかしサイトの記述は赤字で訂正が入っていた模様です。


「あ」号作戦ーマリアナ沖海戦の検証 (平間洋一 歴史・戦略・安全保障研究室
戦艦や巡洋艦が直接空母を護衛するアメリカに対し、 小沢艦隊のマリアナ沖海戦における陣形は、大和・武蔵など戦艦5隻は空母の後方100海里に配備され、 空母部隊の1撃後に戦艦部隊が突撃し「止めを刺す」という旧来の大艦巨砲主義の夢を脱したものではなかった(この部分はミッウェー海戦であり、不注意に間違えてしまったのですが。14年前に書いたこの部分を指摘されましたので修正します。しかし、出張中でこのメールを放置しましたところ、1週間後には大上段に批判されました。ネット社会は怖いですね)。


ええ、ネット社会は誰でも気軽に指摘に行けるので、便利で怖い世界でしょう。

この件の問題は、大きな間違いが14年間も放置され続けてきた、という点にあると思います。誰にでもミスはあります、例え著名な研究家でも、このようにうっかり他の海戦と混同し史実と正反対の事を書いてしまう事も有り得る事態です。その間違いを誰かが指摘しなければ、もし素人が権威ある研究家の記事を読んでしまえば、それを信じ込んで間違いが拡大再生産され続けていくのです。特に学研の歴史群像シリーズは初級者層が良く買う本ですから、間違いに気付かず多くの人が信じ込んでしまいます。本当なら学研編集部が出版前に間違いに気付いていなければならないことでした。しかし編集部が気付かなかったら、読者か同業の研究者が間違いを指摘しなければなりません。

それが行われたのが、なぜ14年も経ってしまったのか・・・出版された本のみならず、平間氏のサイトに同内容の記事が掲載されているにも関わらず、ずっと放置されてきたのは、問題があると思います。

ネット社会は誰でも気軽に指摘に行けるので、便利で怖い世界です。そして手軽に訂正をする事も出来ます。それはより正しい知識をより多くの人に広める事が出来る、という事を意味します。紙媒体だけが情報源だった時代は、おかしな記述が放置され、間違った事実が根強く広まっていたものでした。今はもう、そういう事がありません。

平間洋一氏、不躾な問い合わせメールを無視すること無く、サイトの記述を訂正していただけた事に感謝します。ありがとうございました。
11時54分 | 固定リンク | Comment (93) | 報道 |
2009年12月02日
よく誤解されている「大和級戦艦は低速で空母の護衛に使えず、金剛級高速戦艦のみが役に立った」「戦艦を空母の護衛に組み込んだアメリカの方が日本よりも優れていた」という都市伝説の類いは、素人な一般人どころか軍事マニアの間でも一時期、まかり通っていた事のある言説です。どうしてそんな事になってしまったかというと、プロの戦史研究家の中にそのような主張をする者が居たからです。

例えば学研の「歴史群像」の太平洋戦史シリーズ8「マリアナ沖海戦」の121ページには、以下のような記述があります。


「あ」号作戦とその敗因 文・平間洋一:学習研究社[歴史群像]太平洋戦史シリーズ8「マリアナ沖海戦」 p121
戦艦や巡洋艦が直接空母を護衛するアメリカに対し、 小沢艦隊のマリアナ沖海戦における陣形は、大和・武蔵など戦艦5隻は空母の後方100海里に配備され、 空母部隊の一撃後に戦艦部隊が突撃し「止めを刺す」という旧来の大艦巨砲主義の夢を脱したものではなかった。このため戦艦部隊はアメリカ航空機の飛行圏外に位置することとなり、 戦艦部隊の損害は軽微で榛名が爆撃を受け軽い損害を受けた程度であったが、空母部隊の方はミッドウェー同様に空母4隻と母艦パイロットの78パーセントを失い、この海戦以後は、特攻的作戦以外の作戦を立案することを不可能としたのであった。


出鱈目な事が書かれています・・・実際のマリアナ沖海戦では、日本戦艦は4隻が前衛部隊として第三航空戦隊の空母と共にあり、100海里後方に居たのは主力となる本隊の空母部隊の方です。対するアメリカは戦艦7隻を空母の直衛から外して第58.7任務群に集中し、突進してくる日本戦艦への迎撃準備を整えていました。また日本空母で撃沈されたのは4隻ではなく3隻です。

マリアナ沖海戦(1944年6月19日)の日米両軍の陣形は以下の図を参照して下さい。戦艦と空母の配置を記した概略図となります。各輪形陣内の細かい配置は違っているかもしれませんが、大まかにはこの通りです。

小沢機動部隊

第58任務部隊

巡洋艦や駆逐艦までの細かい参加兵力については以下を参照して下さい。

マリアナ沖海戦→参加兵力統合戦争辞典

平間氏の記事は日米の戦艦の配置が史実と全く逆となっています。平間氏は海上自衛隊の元海将補で、防衛研究所戦史部研究員、元防衛大学校教授という経歴をお持ちです。それなのに、艦隊編成表を読み間違えて実際の陣形を確認もせずに、海戦の検証を行うだなんて、やってはならないことです。日米の一次資料に目を通す事の出来る立場にあった方が、このような真似をされては、大勢の人に誤解を生んでしまうでしょう。学研のこのシリーズは一般人の初心者入門向けなので、これを信じ込んで事実に気付かない人が続出してしまいます。

またこの学研の本は14年前発行ですが、平間氏のサイトではほぼ同じ内容の記述が掲載されたままです。

「あ」号作戦ーマリアナ沖海戦の検証 (平間洋一 歴史・戦略・安全保障研究室

14年間、いや下手をすればもっと長い間、誰一人として指摘していなかったんですか・・・平間氏には私からメールを送り、サイトの記述を訂正するようにお願いしておきましたが、今のところ返事はありません。

マリアナ沖海戦で、日本海軍は戦艦に空母の直衛をさせながら敵艦隊へ突っ込む事を目指し、対するアメリカ海軍は戦艦を空母の直衛から引き抜いて、第58.7任務群に全ての新型戦艦を集中して日本海軍の戦艦を迎撃する準備を整えていました。

これは別に大艦巨砲主義の夢を見たというわけではなく、与えられた戦力を有効に活用する為に考案された戦術であり、日米両軍とも水上砲撃戦が発生する可能性を認識していました。もしマリアナ沖海戦での日本軍の陣形をミッドウェー海戦で実行していたら、どうなっていたでしょうか。それを考えれば、戦艦を前衛部隊に入れた意味が分かってくると思います。ミッドウェーでは日米両軍は戦艦を空母の後方に配置していますが、これはまだ空母を主力として運用する経験が双方共に浅かった為で、これがマリアナ沖となると逆の運用となっています。
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2009年11月19日
陸上自衛隊の90式戦車や新型戦車TK-Xについてよく言われる批判ですが、「諸外国の主力戦車よりも20トン近く軽いので装甲が薄い」というものがあります。重い方が装甲が強いという主張は、一見それっぽく見えますが絶対ではありません。同じ重量なら大きさが小さければ装甲は厚くできる為、上手くコンパクト化できれば軽くても装甲は強いままという事も有り得ます。過去には「ライバルよりも20トン以上軽いのに装甲は同レベル」という戦車が存在しました。

それは、我らがソビエトのWWU最強戦車、スターリン戦車3型(ИС-3;JS-3/IS-3)の事です。ライバルのナチスドイツの重戦車ティーガーUより23トンも軽いにも関わらず、その装甲は決して見劣りするどころか、同等以上の防御力を有していました。



ナチスドイツの重戦車「ティーガーU」を打倒すべく造られたJS-3は、コンパクト化と避弾経始を徹底した事により未来的なフォルムを得ており、今日から見ても斬新な設計である事が一目で分かります。戦争終結直後のベルリンパレードでこの戦車を目の当たりにした西側諸国は強いショックを受け、各国の戦後戦車の開発はJS-3を凌駕する事を目標に始まったほど、強い影響を与えました。


JS-3.png

○JS-3戦車

全長 9.85m
車体長 6.67m
全幅 3.2m
全高 2.45m
重量 45.8 - 46.5t

砲塔正面装甲 220mm(最厚部。上部は110mm)
車体正面装甲 110mm(120mmとする資料もある)

teigerII.png

○ティーガーU戦車

全長 10.29m
車体長 7.26m
全幅 3.76m
全高 3.08m
重量 68.5 - 69.8t

砲塔正面装甲 180mm
車体正面装甲 150mm(上部のみ。下部は100mm)


このように、JS-3はティーガーUに全く遜色の無い装甲を有しています。JS-3の砲塔装甲は亀の甲羅のような曲面形状なので、単純な比較は出来ませんが、曲率が小さくなり垂直に近い基部付近で最も分厚く220mmとして、曲率が大きくなる、つまり避弾経始で敵弾を弾き易くなる上部付近では110mmと薄くなります。主砲基部の防盾は曲面状で160mmとなっています。総合的に見てティーガーUの垂直に近い角度(垂直面から10度の傾斜角)の砲塔正面装甲180mmと、同等かそれ以上の防御力を有しています。

車体正面についても、ティーガーUの150mmよりも薄い110mmですが、角度が鋭い上に中央が出っ張る逆V字状の特殊な形式で、更に避弾経始を高めている構造です。その為、装甲防御力はこの部分でも両者は同等である上、ティーガーUの車体正面は上部こそ150mmですが被弾確率の低い下部は100mmに落ちます。JS-3は車体下部も110mmのままで、傾斜角度は車体上部より緩くなるので防御力は落ちますが、それでもティーガーUの車体下部よりも角度は鋭く、厚みも大きいので、この部分ではJS-3が凌駕します。

また側面装甲でもJS-3の方が分厚い上に傾斜角度も鋭い上、空間装甲に近い構造を採用してパンツァーファウスト対策としているなど先進性があります。ティーガーUが勝っているのは上面装甲と下面装甲前部くらいで、後面装甲は角度も勘案すればむしろJS-3の方が上回っています。上面装甲については、航空優勢を失った戦争後半のナチスドイツ軍では優先すべき強化箇所であり、ソビエト側ではそうではなかった、という差が出ているのでしょう。同時期のアメリカのM26パーシング重戦車も上面装甲は特に強化されていません。

結果、殆どの箇所でJS-3はティーガー2よりも装甲防御力が強力なものとなっています。ただしこれは車体の容積の少なさと引き換えにしたもので、代償としてJS-3は装填手が動き難い非常に狭い車内となってしまい、大きな砲弾と相まって砲弾装填速度の著しい低下を招いています。しかし戦車の数自体で勝るソビエト軍ではさほど問題の無い要素でした。そしてこの欠点も、最近のロシアや日本の戦車のような自動装填装置があればクリアできる問題です。


hikaku3.jpg

hikaku.jpg

hikaku1.jpg

JS-3はティーガーUに対して、

車体長・・・92%
全幅・・・85%
全高・・・80%

という割合です。複雑な形状を無視して単純に箱型としてモデルを組むと、この比率で算出される容積(体積)の割合は63%になります。そして体積=重量と言う簡易な置き方をすれば、予想重量がこの数値になります。実際の重量比率は、

重量・・・67%

という割合になっています。複雑な形状や主砲、エンジンなどの重量差を何もかも無視しているので違ってきて当然ですが、大雑把には近い数値が出ています。

つまり単純にこれだけコンパクト化すれば20トン軽くても同等の防御力を実現する事が可能です。ましてやエンジンや砲の軽量化や、今の複合装甲の時代では、装甲の厚さではなく装甲の材質の差で防御力が決まります。車体そのもののコンパクト化に加え、その他要素での軽量化を図れば、JS-3ほどのコンパクト化を達成しなくても、ライバルより軽くても重装甲を実現する事は、決して不可能な話ではありません。

日本の新型戦車「TK-X」と中国の新型戦車「0910工程」の二つは、それぞれの前作よりも軽量化されていますが、他国の主力戦車に対抗できるだけの防御力をちゃんと備えて登場してくるのは間違いないでしょう。

なお、「諸外国の主力戦車よりも20トン近く軽いので装甲が薄い」筈だと主張している代表格は、軍事ライターの清谷信一氏です。戦車誌PANZERでも他のライターが時折書くので、唯一ではありませんが。

清谷信一公式ブログ:防衛省 長島昭久政務官  予算がらみの質問にはお答えできません、でいいのでしょうか
>新戦車は軽量で諸外国の3.5世代戦車に比べて防御力が弱い、装備も劣っている。

この記事は他の部分もツッコミを入れたい部分が山ほどありますが、というか殆ど全部にツッコミが入りそうなのですが、それをやると夜明けが来るので止めておきます。

さて。

私にはこういう事を言う人が、JS-3戦車の存在をどう認識しているかに大きな興味があります。

Tiger2.png
※ティーガー2の装甲断面図(傾斜角は水平を基準にしている事に注意)

JS-3.jpg
※JS-3の装甲断面図(傾斜角は垂直を基準にしている事に注意)
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2009年10月22日
鍛冶俊樹という軍事ジャーナリストは、元航空自衛隊で情報関連任務に携わっていたそうなのですが・・・その経歴を疑ってしまうような軍事分析の数々が見受けられます。日経ビジネスオンラインに鍛冶俊樹氏の記事が幾つか掲載されているので、紹介して見ます。


米露中で渦巻く核の“微妙な均衡”:日経ビジネスオンライン
米国のミサイルは新式で、その性能は旧式のロシアのに比べ3倍優れている。
つまり米国の核兵器は1発でロシアの3発分の効果を発揮する計算になる。
従ってロシアは事実上、米国の3分の1の核弾頭しか持っていない勘定になる。


これについての感想は、現役軍事ライターである某氏が漏らした一言が全てでした。

「微妙な均衡とか言いながらすごい丼勘定ですね。」

他にも記事のそこかしこに妄想的断言が頻繁に見られますが、一番笑えたのがこの丼勘定です。

ところで鍛冶氏は、アメリカの主力ICBM「ミニットマン」は50年前の設計の古いミサイルだということを、知らないのでしょうか? 新式ICBM「ピースキーパー」はロシアとの核軍縮交渉で先に退役させているのですが。・・・どうも核戦力に関する基礎中の基礎を把握していないまま記事を書いているように見受けられます。殆ど空想で書いていらっしゃいますね。何の根拠も無しで。

では次は最近の記事です。米GMがハマーブランド(ハマーH1は軍用ハンヴィーの民生版)を、中国四川省の騰中重工に売り渡した事についての話なのですが・・・


「トヨタハマー」はなぜできない?:日経ビジネスオンライン
いつ中国に移転するかもしれない工場に留まりたいと思う米国人労働者はほぼ皆無だろう。 当然、中国企業としては、この事態を予想しているはずであり、生産技術の獲得に全力を尽くすだろう。しかしこれはさらに問題を生む。ハマーの技術が中国に流出し、軍事転用される公算が極めて高くなるのである。たかが自動車技術、軍事転用とは大げさだなどと思うなかれ。ここにこそ問題の本質があるのだ。なぜならハマーはもともと軍用車両なのだから。


ああ鍛冶氏は、人民解放軍のEQ2050多用途車を知らないんですね。



米GMがハマーブランドを中国四川省の騰中重工に売り渡す前から、中国の三大自動車メーカーの一角である東風汽車はハマーH1の中国バージョンを造っています。ハマー開発元の米AMゼネラルから技術支援を受け、主要コンポーネンツ(シャーシ、ギアボックス、エンジン)の部品供給を受けて生産しています。

つまりアメリカはとっくにハマーの製造技術を中国に教えているわけです。そんなものは軍事機密でも何でも無いからです。以前、人民解放軍はBJ212多用途車という車両も使っていましたが、こっちはジープXJチェロキーがベースの車両です。製造元の北京汽車はアメリカとジープ生産用の合弁企業も作っています。アメリカは中国に対して、昔からこの種の車両の技術支援は行ってきました。所詮は民間車両と同じ線上の物でしかないので、特に軍事的政治的な制限など置かれていません。チャイニーズジープ、チャイニーズハマー、どちらもアメリカの製造元から正規に許可を得て技術支援を受けながら製造されているものです。中国は他にロシアの自動車会社GAZからも技術支援を受けており、最新型のBJ2022多用途車はGAZベースです。



ここまで書けば、もうお分りだろう。米国がハマーブランドを中国に売るより、トヨタがハマーとハンヴィーを買い取って、日米共用の軍用、民生用自動車を生産、販売した方がはるかに望ましいのだ。


丸っきり的外れです。アメリカはハンヴィー後継車両の選定に入っており、時代遅れになったハンヴィー、ハマーの技術を中国に提供しただけです。日本のトヨタもそんなもの、今更要りません。というか自力で作れます。今のハマーブランドというのは、高級RV車ブランドとしての価値しかないのです。ラグジュアリーで馬鹿でかいハマーH2こそがその頂点でした。



具体的に言おう。ハンヴィーは米AMゼネラルが生産し、米軍に納入している。海外にも輸出しており、軍用品としてはヒット商品だと言える。だが先に述べたように、性能は今ひとつ物足りない。もしこれをトヨタが作れば、かつてのジープのように世界各国の軍隊で採用されることは間違いない。


関係者が聞いたら鼻で笑われます。



ここで再びハンヴィーを原型として、トヨタがハマーを作れば売れる余地がある。というのもハンヴィーのような車両は、実は軍隊だけではなく、警察や消防あるいは国境警備や災害行政などでも需要が高いのだ。しかもそこではGMのハマーよりもトヨタのメガクルーザーの方が評価が高かった。


寝言は寝て言いましょう。



中国の企業に売却すれば、数年後にはハマーブランドは消えてなくなるかもしれない。しかしトヨタが引き継げば安泰だろう。また中国に売られれば軍事技術の流出が問題化するのは目に見えているが、トヨタが作れば日米安保の強化、さらには日米関係の良好化に役立つのである。


いちいち突っ込むのも面倒だな、もう。



だが現実には、「トヨタハマー」は実現していない。不況の影響もあるだろうが、それでも北米トヨタは米国では優良企業だ。見込みのある事業なら銀行は喜んで金を貸すだろう。米国の指導層もハマーを中国に売るか、日本に売るかの選択を迫られれば、日本を選んで不思議はない。

にも関わらず・・・。その理由を突き詰めていくと、日本政府が掲げる武器輸出3原則に突き当たることになる。


要するにクソ長い前振りは「武器輸出3原則の撤廃」を訴えたかったわけですか。残念ですがそのクソ長い前振りの全てが的外れですので、もう何の説得力もありません。

軍事に関して勉強し直して来てください。鍛冶氏、貴方はとても「軍事ジャーナリスト」を名乗れるレベルにはありません。
22時32分 | 固定リンク | Comment (196) | 報道 |
2009年10月15日
岡部いさく(ださく)氏の最新単行本「世界の駄っ作機5」が刊行されました。そして巻末の後書きp226〜227に、F-2記事の訂正とお詫びが掲載されていました。そう、7月9日に当ブログのコメント欄に岡部いさく氏が降臨して約束された事が、現実のものとなっていたのです。

(2009/07/09)岡部いさく氏が降臨、F-2戦闘機の誤認識を「世界の駄っ作機」5巻で訂正すると約束

上記記事のコメント欄では、発売日前の10月9日の段階で既に訂正されている旨の報告があり、私も早い段階で把握していました。



表紙書籍の紹介
世界の駄っ作機5

世界の駄っ作機 5

著者名: 岡部ださく
単行本: 227ページ
出版社: 大日本絵画
ISBN-10: 4499230063
ISBN-13: 978-4499230063
発売日: 2009/10/14
商品の寸法: 19 x 13.8 x 2.4 cm

Amazon.co.jp



ここで皆様にお詫びしなくてはならないことがあります。第4巻の巻末に、モデルグラフィックス2003年10月号に掲載した連載100回記念のコラム「駄っ作機は夜空にきらめく星の数ほど無限にある」を収録したんだけど、その中で「―大きなミサイルを4発吊るすと主翼がもたないくせに―」と、航空自衛隊のF−2戦闘機のことをロコツに示唆する一節があります。しかし雑誌掲載当時から第4巻刊行までの間に、F−2の問題は改善されていて、今じゃちゃんと対艦ミサイル4発を装備してデモンストレーションするようになっています。第4巻に収録したコラムでは、その改善についての言及・修正・追記がない、と読者の方々からご指摘をいただきました。そう、2003年10月に雑誌に書いたまま、2009年6月刊行の第4巻に収録してしまったのです。申し訳ありません。

改めて、F−2の現状を追記せずに古い記述のままにしてしまったことをお詫びするとともに、今のF−2は立派に動いていることを記しておきます。第4巻が重版になることがあれば、第2版以降にはF−2の改善と現状について加えたいと思います。
(P226〜227)


岡部いさく氏の誠実な対応には頭が下がる思いです。本当にありがとうございました。

F-2戦闘機の件では、私自身も航空専門誌に記事を寄稿する機会を頂き、世間に広まっているF-2に関する誤認識を正そうとしましたが、私が書いた記事の影響力よりも、岡部いさく氏が「F-2の問題点は改善されている」と書かれた方が遥かに影響力が高く、今回の「世界の駄っ作機5」の意義は大変に大きなものだと思います。

今回は、本の紹介が遅れて申し訳ありませんでした。実は早売りで売られているのを12日に見付けて確認し、購入してホクホク顔で戻ってきたら・・・江畑謙介さんの訃報を聞き、何もかもを後回しにするしか、ありませんでした。
20時43分 | 固定リンク | Comment (255) | 報道 |
2009年10月14日
首藤信彦本人の反論やクライン孝子、田岡俊次の弁を紹介しておきます。


江畑謙介「自民寄り」と発言 民主党代議士ブログ炎上‐J-CAST
これに対し、首藤議員本人が、取材に応じ、ブログのエントリーを撤回することも、お詫びをすることもないことを明らかにした。その理由について、こう説明する。

「この分野に関係ない人が、内容を曲解して書いているんだと思います。現実を知らない人の話ですよ。イラク戦争のときも1日5000件来ましたが、同じような人が同じようなキーワードで書いているのでしょう」。


911同時多発テロやイラク大使館員射殺事件などで、根拠の無い陰謀論を信じ込んでいる妄想家の首藤信彦が「現実を知らない」と相手を批判しても、苦笑するしかありません。現実を知らないのはどちらでしょうか。

過去に首藤信彦は戦車不要論を唱え、戦車の代わりに装輪装甲車を導入しろと主張していました。カナダ陸軍が戦車を廃止し代わりにストライカーMGS(LAV装輪装甲車の機動砲型)を導入しようとしていたのに影響されたのでしょう。しかし当のカナダ陸軍は実際にアフガニスタンに展開して戦闘を経験した上で、歩兵が相手でも重装甲の戦車がやはり必要だという認識に達し、カナダ本国のレオパルト1A5戦車(レオパルトC2)をアフガ二スタンに運び、それでも足りないとドイツからレオパルト2A6M戦車を緊急リースし、今ではアメリカ軍の次に多くの戦車をアフガンに展開している有様です。



今は実戦での戦訓を踏まえて、戦車が再評価されている時代です。カナダ国防省は自国政府に対し、ストライカーMGSの調達を止め、戦車を存続させるように要求しています。しかし首藤信彦は、以前に自身のサイトの掲示板で戦車不要論を追及された時に、議論を強制的に打ち切って逃げました。その程度の人が軍事・安全保障問題の専門家を自称しているのですから、困ったものです。


クライン孝子の日記 2009/10/13 (火) 日本のメデイアの不思議!
2)訃報:軍事評論家・江畑謙介さん死去
http://mainichi.jp/select/today/news/20091013k0000m040012000c.html
イラク戦争開始直後たったかな、確かNHKでこの戦争に関して
解説されていたのをちょうど帰国して視聴しました。
即座にこれ英国のプロパガンダに巧みに乗せられているなと感じ、
外国人特派員協会でスイスのジャーナリストにそう感想を
もらしたら、彼「まさに正解」といっていました。
日本の軍事評論家ってその程度ではないかな、と思いました。


江畑氏の解説のどの点がイギリスのプロパガンダに影響されているのか何の説明も無い上に、スイスのジャーナリストが何処の誰かすらも示されておらず、一切何の根拠も示さずに印象論だけでこの言い草ですか・・・クライン孝子氏のやっている事こそ、程度の低い印象操作ではないでしょうか。


江畑謙介「自民寄り」と発言 民主党代議士ブログ炎上‐J-CAST
一方、専門家には、首藤氏の議論にも理解を示す向きがある。

軍事評論家の田岡俊次氏は、こうコメントを寄せている。

「江畑氏は本来、政治色がなく、技術的に精密でデータの豊富な記事を書かれ、感服することも多かった。ただ、首藤代議士のような中東・アフガニスタン問題の専門家から見れば、米国のアフガン戦争、イラク戦争などに関する江畑氏の論評には得心のいかない点が少なくなかったのもうなずける。首都を取ったから戦争はアメリカの勝利で、その後、治安維持に苦労した、という江畑氏の論評には私も首を傾げた。戦争は総合的なもので、首都を取っても負けた例は多い。ソ連のアフガン侵攻は初日に首都カブールを制圧したし、日中戦争でも日本は首都南京を攻略したが、戦争には勝てなかった。江畑氏は晩年、外務省等の政府の委員を委嘱されることが多かったためか、『米軍再編』などの著書もよく調べてはあるのだが、沖縄などの基地返還の可能性について否定的結論が多く、実際には米側がその後返還を申し出たため、食い違いが表面化したこともある。江畑氏の記事、論評はあくまで理科的であり、社会科的(歴史、民族性、政治、経済など)な観点で戦争を見る首藤代議士は不満だったのだろう。実際には、理科、社会の両面からの観察が必要なのだ」


イラク戦争の際に、田岡俊次氏は「アメリカ軍はイラク軍相手に苦戦し戦争は長期化する」と唱えていました。しかしこれは正規軍同士の戦闘でアメリカ軍が大打撃を受けるというもので、その後の治安維持で手こずる事になるという予測ではありませんでした。その為、バクダッドが簡単に陥落した時には田岡氏は厳しい批判に晒されています。また田岡氏は治安維持面では「スンニ派とシーア派が一体となってアメリカ軍に抵抗する」と予測しましたが、実際には両宗派間の対立は増しており、それどころかスンニ派内部、シーア派内部の対立と離反が目立つようになっている為、田岡氏の予測とは逆の結果となっています。

イラクでアメリカは勝ったのか負けたのか。軍事的には2008年にアメリカ軍の損害が急減しており、この傾向がこのまま続けば段階的に撤退して、一応は「勝った」と言い張れるでしょう。第二次チェチェン紛争がロシアの勝利で終わり、今年4月に対テロ作戦指令を解除して、撤退しつつあるように。それなのにこの田岡氏の書いたJ-CAST記事の文章を読んでいると、まるでアメリカはイラク戦争で負ける、いや負けて欲しいという願望が滲み出ているように見えます。アフガニスタンに比べれば、イラクの戦況はもう峠を越した時期に差し掛かっているのですが・・・

田岡氏はJ-CAST記事で、「首都を取っても戦争に負けた例」としてソ連のアフガ二スタン侵攻を挙げていますが、これは完全に例として不適当です。当時、アフガニスタンでは反共産党武装勢力がほぼ全土を覆い、アミン共産党政権はソ連に介入を要請しました。しかしソ連政府は反共勢力を鎮圧できない役立たずのアミン革命評議会議長の処分を決定し、特殊部隊で襲撃し暗殺、これに呼応して地上軍の大部隊を雪崩れ込ませ、一気に首都カブールへ進駐しました。要するにソ連侵攻時のアフガニスタン首都カブールとは、ソ連にとっても本来の敵である反共産党武装勢力の支配を逃れていた一角であり、カブールを取っても反共産党武装勢力との戦争に勝てない事など当たり前の話なのです。あれは負けそうになった友好国の首挿げ替え手術であり、敵勢力の中枢部を制圧した話ではありません。田岡氏の例話は完全に不適当です。

また日中戦争で日本は首都南京を攻略しましたが、蒋介石は重慶を臨時首都として戦い続けています。敵国の首都が新たに出現して、それは攻略できなかったのですから、これもイラク戦争とは状況が違い過ぎており、結び付けようとするのは全く不適当です。

『米軍再編』の件にしても、沖縄のアメリカ軍の基地返還は県内移転ばかりですし、主要な機能は維持したままです。大筋で江畑さんの主張は間違っていない筈ですが、田岡氏の主張する「食い違い」とは、一体何を指すのでしょうか。

そして「実際には、理科、社会の両面からの観察が必要なのだ」という主張に関しては、これはこちらの解説を参照して下さい。


江畑氏への哀悼と、氏への誹謗中傷に対する批判 - ミリ屋哲の酷いインターネット
江畑氏が「理科的」立場で発言していた、そのこと自体に意義はない。しかし、江畑氏はそのような自己のスタンスをしっかりと自覚しており、意見を求められるときは「『理科的』見地から分析した一意見」であることを明確にしておられた。そして、当然ながら「社会科」的見地からの意見の重要性も認識し、それら意見を総合的に判断して決断を下す責任は国民にある、という事を常に口にしていた。このような態度が、彼を「良く」知る人々が「知的誠実さを持ち合わせていた」と評する所以だろう。


誠実さからは程遠い首藤信彦の態度と見比べると、その差は歴然としている筈です。
23時55分 | 固定リンク | Comment (218) | 報道 |
J-CASTが首藤信彦ブログ炎上を記事にしました。その際に江畑謙介氏の妻、裕美子さんが首藤信彦に対し反論していたのですが、今は何故か反論が消されてしまい、逆に「仲良くさせて頂いていた」という真逆の内容に入れ替わっています。

↓削除前、http://www.j-cast.com/2009/10/13051574.htmlの2009年10月13日 22:31に記録された魚拓


江畑謙介「自民寄り」と発言 民主党代議士ブログ炎上‐J-CAST
実際の江畑氏は、どうだったのか。妻の裕美子さんは、取材に対し、自民寄りとの指摘について次のように語る。

「主人に思想はあったと思いますが、まったくどちら寄りということはないですね。政府の委員を引き受けますので、中立でないといけません。委員会では自民党の政治家の方とも親しくしていましたが、主人は政治家があまり好きでなく付き合いを避けていた方なんです。ブレーンになるなど政治に首を突っ込んだこともありません。仕事でも、中立的な解説を心がけていました」
また、現場を知らないとの指摘については、こう反論する。

「若いころは海外に取材に出かけていましたが、ここ数年は体調が思わしくなく、出られませんでした。しかし、そうしない方が、外から客観的に見ることができますし、情報も入りやすくなります。主人は、ジャーナリストと申しておらず、評論家として客観的に分析するのが仕事でした。理工学部出身なので、飛行機の性能などメカニックな形の評論を得意としていたわけです」


↓削除後、現在。


江畑謙介「自民寄り」と発言 民主党代議士ブログ炎上‐J-CAST
妻の裕美子さんは、取材に対し、「私どもは、仲良くさせて頂いたのでショックです」と話している。


これは一体どういう事なのでしょうか。裕美子さん自身が後から差し替えるように頼んだのか、それともJ-CASTが裕美子さんの発言を捏造して抗議されて差し替えたのか、あるいは・・・政治的圧力を受けて差し替えられてしまったのか。

差し替える前の裕美子さんの反論が、具体的で内容が濃いので、とてもJ-CASTが取材を取る前の予定稿を間違えてUPしたようには思えません。何も知らない記者が書けるようなものではないです。

生前の江畑謙介さんは、自身の政治思想がどうであるか語る人ではありませんでした。自身の事を右派であるとも左派であるとも、中道であるとも言いはしませんでした。江畑さんの視点は「軍事」であり、軍事情勢の判断に自分の政治思想的な好みを入れないように常に努力されてきた方です。これは言うほどに簡単な事ではありません。情勢の判断にはどうしたって自分の願望が滲み出てくるものです。それが江畑さんには殆ど無かった。そんな軍事評論家は、江畑さん唯一人でした。

◇下心のない男 軍事評論家・江畑謙介

そして此処に書かれてあるように、政治家になろう等と言う下心や、お金を沢山儲けようとする事も無く、自分の趣味と仕事が一体化している事に幸せを感じ、それで十分だと満足されていたのです。政治的野心なんか何も無い人でした。

そんな素朴な人だったのに・・・首藤信彦のやった事は本当に度し難いです。
12時17分 | 固定リンク | Comment (107) | 報道 |
2009年10月13日
亡くなられた途端に誹謗中傷をするんですか。それも内容は全て勝手な思い込みによる妄想・・・どうして江畑謙介さんがこのような最低の人間に辱めを受けなければならないのですか? 

卑劣な真似を行ったのは首藤信彦(すとうのぶひこ)という民主党議員です。

ある軍事評論家の死 - すとう信彦 & his band

内容を引用するのも気分が悪いです・・・出鱈目な話を並べ立てて、勝手な思い込みだけで誹謗中傷を行っている・・・江畑謙介さんの人となりを知る人なら、誰もがこの首藤信彦の日記を否定するでしょう。◇下心のない男 軍事評論家・江畑謙介

私は4年前に、首藤信彦の事を記事にしたことがあります。

(2005年3月24日)説明責任を果たすべき国会議員「すとう信彦」

国際連合安全保障理事会決議1718という根拠があるのに「対北朝鮮経済制裁は国際法違反だ」と出鱈目な主張を行い、嘘を吐いてまで北朝鮮を庇う一方、イスラエルに対しては経済制裁を主張するような人物でした。このような色眼鏡であらゆる物事を見ているのですから、騒動ばかり引き起こしています。

イラクでの外務省職員射殺事件を米軍の誤射だと言い出したり、機甲師団を解体し戦車を廃止してストライカーMGSを配備しろと言ってみたり、中国と仲良くすべきという根拠を「遠交近攻の策」だと解説して見たり・・・

私は首藤信彦がちゃんとした安全保障論を唱えているのを見た事がありません。何時も何時も肥大化させた妄想電波の産物ばかりです。そんな首藤信彦が、傑出した軍事評論家の江畑謙介さんを「擬似専門家」呼ばわりして辱めているだなんて・・・自身の程度も理解せずに、あまりにも愚かな行為としか言いようが無いです。
04時04分 | 固定リンク | Comment (381) | 報道 |