「北朝鮮、弾頭も含めて太平洋に着水」 米軍発表:朝日新聞
北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)と米北方軍司令部は5日、北朝鮮が発射したミサイルについて、「2段目以降は弾頭も含めて太平洋に着水した」と発表し、北朝鮮が衛星打ち上げに失敗したことを明らかにした。
1998年のテポドン1でも人工衛星「光明星1号」の軌道投入に失敗しており、今回のテポドン2による「光明星2号」も失敗した事になります。
と思ったらロシアからは逆の情報が。
北の人工衛星、軌道に=「追跡システムで特定」とロシア:時事通信
インタファクス通信によると、ロシア外務省のネステレンコ情報局長は5日、「北朝鮮が人工衛星を打ち上げた」と確認した上で、「軌道に乗せた」と語った。さらにロシアの航空宇宙追跡システムを通じ、「衛星の軌道データが特定されている」と明らかにした。
これはまた一体・・・?
NORADの公式発表は以下の通りです。
NORAD and USNORTHCOM monitor North Korean launch
Stage one of the missile fell into the Sea of Japan. The remaining stages along with the payload itself landed in the Pacific Ocean.
ペイロード(人工衛星)自体も太平洋に落ちたとあります。
【追記】
時事通信が記事の文面を変更しています。「軌道に乗せた」という部分が無くなっています。「特定された」という部分も「特定中だ」と変わっています。記事タイトルも「特定」から「特定中」に変わっています。
ということは時事通信の翻訳ミスなのでしょうか?
ではインタファクス通信の記事でアンドレイ・ネステレンコ情報局長のコメントをチェックしてみます。
Что запустила Северная Корея? | Интерфакс
МИД РФ подтвердил факт запуска КНДР искусственного спутника Земли | Интерфакс
どうも「北朝鮮の衛星が地球周回軌道に乗った」という意味ではなく、ネステレンコ氏が言っているのは「テポドンは宣言どおり東向きの弾道で放たれ、ロシア領域には来ていない」という意味の事を言っているように見受けられます。
共同通信はネステレンコ氏の発言を以下のように翻訳して報道しています。これが正解なのでは?
ロシア「人工衛星と確認」 関係国に自制求める:共同通信
また、打ち上げで軌道は外れておらず、ロシアの領空にも入っていないと指摘。公式な評価を出す前に、軍事専門家による分析が必要だと述べた。
この場合の軌道とは人工衛星の周る地球周回軌道を意味せず、東向きに放たれた弾道軌道を意味していると、共同通信の記事からは読み取れます。私がロシア語の記事を見て思った感想に近い感じです。
「軌道に乗せた」の部分は"It is clear that there were no deviations from the trajectory."の部分だね。英文ソースでは内容は同じだで単語が違うものがあるが、これはロシア語からの翻訳の違いだろう。これは「打ち上げ軌道から外れなかった」であって、「軌道に乗せた」だと誤解を招く。
trajectoryは普通は弾道や飛翔経路の意味。軌道の意味もあるが衛星の場合orbitが普通は軌道の意味だな。でorbit投入確認と報じたところはない。
Posted by 名無しT72神信者 at 2009年04月05日 22:07:31
この方の分析が分かりやすいですね。時事通信は「ロケット飛翔経路(trajectory)」と「衛星軌道(orbit)」を混同して翻訳して、誤報を発した可能性が高いです。
インタファクス通信のロシア語記事でも「траектория」という単語が確認できます。英語で言う「trajectory」です。そしてロシア語記事には「orbit」に相当する単語である「орбита」は使われていませんでした。
時事通信はロシア語の翻訳を間違ってしまい、誤報を発した事になります。ロシアは北朝鮮のテポドン2によって打ち上げた人工衛星が、地球周回軌道に乗ったとは言っていません。危うくロシアが悪者にされる所でした・・・