2007年08月27日
日本が長距離爆撃機を開発? ソースが韓国の新聞、統一教会系の世界日報ですから、一体何処から与太話を拾ってきたのやら・・・と思って見ていたのですが・・・以下はヤフーコリアに載った世界日報記事(韓国語)です。それを自動翻訳に掛けた後に少し手直しし、日本語に翻訳してあります。


日本、長距離爆撃機を独自開発へ [8/24 世界日報]
24日、東京の軍事消息筋によれば、日本は今後、自衛隊を自衛軍に改編して海外派兵を本格化し、米軍と共同展開する海外作戦に備えるための拡充方針に従って爆撃機を開発する事を決めた。この爆撃機は空中発射巡航ミサイルと精密誘導爆弾などで武装して軍事衛星通信装置などを搭載して全天候作戦能力を持つように設計される。この消息筋は 「米ボーイング社が製造する旅客機主要部品の40%以上が日本から調逹される点を勘案すれば、日本の基幹防衛企業たちが爆撃機を製造するのに技術的に問題は無い」と語った。日本航空自衛隊は戦闘爆撃機と輸送機などを保有しているが、長距離戦略爆撃機は持っていない。

爆撃機開発計画に対する政府内の反論も強いと消息筋は伝えた。戦争を放棄した国家が攻撃用武器を開発することは名分が立たず、憲法に違反するというのが反対論者たちの指摘だ。しかし日本政府は爆撃機を防御用だけではなく各種災害災難に緊急投入、国際的な貢献度を高めるのに必要だと強調する計画だと消息筋は伝えた。


一方その頃、日本では・・・


J-RCOM 最新情報 [8月24日]
政府が空母と同じように”わが国では保有が許されない兵器”として、長距離爆撃機の名前が挙がっている。なぜ長距離爆撃機がダメかと言えば、「国土防衛に限定して配備した自衛隊は、他国を攻撃出来る兵器は持てない」という説明だった。しかし長距離爆撃機なら、爆弾の代わりに大規模災害の援助物資を搭載し、国際貢献に活用出来るという話しが可能になる。だから政治的には空母同様に日本が長距離爆撃機(空中発射巡航ミサイルや精密誘導爆弾を搭載)を配備する可能性が出てきた。それくらい今までの防衛論争は暴論が平然と行われていたことになる。だから防衛政策の解釈を変更することも「指先で弾(はじ)く」ぐらいに簡単にできることになる。



か、神浦さんが情報源だったのか。・・・と思ったのですが、記事の日付からすると世界日報の記事のほうが早い(午前6時35分)です。となると世界日報が神浦さんのサイトを見て書いた可能性は無いわけで、すると前日までに世界日報が神浦さんに取材を済ませていたのか、それとも世界日報の記事を読んで神浦さんが参考にしたのか、或いは両者がそれぞれ別個に似たような結論に辿り着いた、というのか・・・ただ、神浦さんが世界日報の記事を読んでいるとは考え辛く(日本語版にはこの記事は無い)、それぞれが別個にこの結論に辿り着くにしては突拍子も無い論調なので、謎が深まるばかりです。

少なくとも今現在、世界日報の主張と同じ様な事を言っている日本の軍事評論家は、神浦元彰さん以外に知りません。

ところでそもそも、日本が長距離戦略爆撃機を開発するという情報自体が突拍子も無い主張なのですが、「爆撃機を災害救難用に活用する」という主張も相当におかしいと言わざるを得ません。爆弾倉には嵩張る荷物は積めないのです。爆弾は鉄と火薬の塊であり、小さい割りに重い荷物です。ですから爆弾倉のスペースは意外と狭く、輸送機のカーゴスペースとは比較になりません。輸送機は重さの割りに嵩張る荷物を運ぶ為に、太くて広い胴体を持っているわけです。というかそもそも爆撃機の爆弾倉の扉は下に向かって開くわけで、荷物の出し入れには向いていないでしょう・・・。


日本が、単純に空中発射巡航ミサイルの大型母機が欲しければ、P-X哨戒機をそのまま無改造で使えばいいことです。外装レールに対艦ミサイルを8発も搭載できるのですから、長距離巡航ミサイルさえ確保できれば相当な打撃力を有する事になります。

しかし敵地に乗り込んで爆撃をする気なら、今の時代ではステルス性能が必須です。ステルス能力が低ければ、高速性や低空侵入能力が最低でも要ります。それらはP-Xには有りません。

最後に。神浦さん、過去の国会答弁で保有できない兵器として名指しされたのは「大陸間弾道弾、長距離戦略爆撃機、攻撃型空母」の三種類ですから、中距離弾道弾や戦術爆撃機、ヘリ空母はそもそも関係が有りません。(訂正:IRBMも国会答弁で言及されていました)かといって中距離弾道弾を保有しようと言い出したら、諸外国の反発は物凄い事になるでしょうが・・・爆撃機はSu-32やF-111ぐらいの規模の機体なら戦略爆撃機扱いされませんし(必要とも思わないが)、諸外国も気にしないでしょう。ちなみにそもそも攻撃型空母は今や存在しない艦種です。アメリカ海軍が戦後の一時期、攻撃型空母(CVA)と対潜空母(CVS)という分類を行っていたのですが、今では空母(CV)に統一されており、攻撃型空母(CVA)は存在しません。

攻撃型空母 - 通信用語の基礎知識

つまり存在しない以上、日本が普通の空母を持とうとも国会答弁には反しないわけで(訂正:ニミッツ級やフォレスタル級を名指しする国会答弁の存在)・・・必要性があるかどうかとは、また別の話ですが。



訂正協力…Posted by 名無し(T72神信者ではない) at 2007年08月28日 20:47:31さん
19時16分 | 固定リンク | Comment (96) | 報道 |

2007年08月02日
※ JSF氏のブログに関して
http://eiji.txt-nifty.com/diary/2007/08/post_458e.html

大石英司さんからのお返事です。

>フランス製カタパルトが実質米国製であるというのは、私が知らなかったことで、これは貴重な情報を有り難うございました。

大石氏は自らの誤りを認めて下さいました。バトルプルーフどころか存在しないフランスの空母技術を中国が採用する事は出来ません。しかし"実質"という表現が少し気に掛かります。仏原子力空母シャルル・ド・ゴールに搭載されているC13-3蒸気カタパルトは、アメリカから完成品を輸入している以上、"実質"という枕詞が付く理由など無いと思います。

大石氏に質問します。"実質"とは、一体どういった意図が込められているのですか?

>私のブログのコメント欄でのやりとりをして、私がそれを主張しているかのように解釈されるのは困るわけですね。

そのような解釈などしていません。私は前回の記事で投稿 | 2007.07.31 07:20が大石氏の主張だとは書いていない筈です。私は仏原潜の原子炉技術の低さを示す為に、コメント欄でのやり取りを紹介したつもりでした。コメントを大石氏の言だと混同させる意図は全く無く、もし誤解されたのでしたら私の注釈が足りなかった事をお詫びいたします。

>また、誰かが1しか書いていないことをして、5から7を推定して批判するというのも良くあることです。

そのような事はしていない筈です。大石氏は、私が具体的な個所を指し示すように言ったらそれを明確に拒否されました。具体的なことを言わずに批判するのは単なる印象操作です。そのような反論しかしないつもりであるならば、最初から言うべきではありません。大石氏はもう言う気がないようですから、私もこれ以上は求めませんが、納得の出来る対応とは言い難いです。

>「私が書いたことはここまで、ここから先は相手様の推論に過ぎませんから」ということが伝われば良し。

既にコメント欄で述べられていますが、

「存在しないフランスの空母技術を売る事など出来ない」
「漢級はソ連の技術指導を受けて建造されたわけではない」
「水上艦の原子力機関は特別なものではない」
「その証拠にドゴールは原潜の原子炉を転用」

という私の主張は推論などではありません。事実です。特に水上艦の原子力機関の技術については、例えドゴールが原潜の原子炉を転用しているという知識を知らなくても、少し考えるだけで「水上艦の原子力機関は、原潜の原子力機関を転用すればいい」という事に考えが至るのではないでしょうか。

大石氏は「だって中国は水上艦用原子力エンジンの技術だって全く持ってないんですよ。」と言いました。しかし、そもそも水上艦用原子力エンジンの技術は原潜の原子炉を転用すれば良いだけの話ですから、中国も新型原潜の原子炉を空母用に転用すれば済む話です。

つまり、大石氏の「中国は仏製武器で埋め尽くされる」という記事は、知識が足りなかったというだけでなく、考察も足りなかったという事が言えます。

>JSF氏のブログのコメント欄の名無しさんの大部分はハンドルを見る限り、軍板からそっくり流れて来た人々なのでしょうか。

いえ、それは誤解です。「名無しT72神信者」はデフォルト名無し設定なんです。つまり名前欄に何も書かずに投稿すると、自動的にハンドルが「名無しT72神信者」となります。(解説:T72神

ですから、私のブログのコメント欄の人達が軍板からそっくり流れてきた人達という事は言えないと思います。私もJSFという名前で軍板に書き込んだ事は一度しか無く、実は私は軍板の常連コテハンではありません。

>若干建設的な要素に欠けるのは、せっかくの知識をお持ちのご本人にとってもあまりプラスにはならないのでは? と愚考する次第です。


先ずは事実関係の確認をはっきりさせた上で、その後に建設的な議論をすればよいというのが私のスタンスです。お互い、議論対象に対しある程度の正しい情報を持っていないと、建設的な議論どころか議論そのものが出来る状況では無いからです。その意味で大石氏の記事は間違った認識があまりにも多く、議論以前の段階でした。

最後に確認をしておきます。


中国は仏製武器で埋め尽くされる:大石英司の代替空港
必ずフランスと組むことになります。で、その姿をアメリカが指をくわえてみているはずもないから、どこかで対中武器禁輸も解除されることになるでしょう。


この文章の意味するところは「フランスと中国が組む姿をアメリカが指をくわえてみているはずもないから、(アメリカが)どこかで対中武器禁輸も解除されることになるでしょう。」で、宜しいのでしょうか。2年前に「中国の空母には何が載る?」という記事で「F−35という線も捨てきれないわけだが」と書いたのは、そういうことなのですね。

過去にアメリカが中国に武器を売っていたのは、敵の敵は味方という理論で、ソ連と仲の悪かった中国を支援していたというのが理由なのですが。ソ連は崩壊し、ロシアとは関係改善を果たした中国に対し、アメリカが武器を売る理由が見出せません。この点については推論ですが、可能性として非常に低い事は確かでしょう。

フランスと中国が組むという根拠にしても、空母技術に関してはフランスに独自技術が無い以上、物理的に有り得ないですし、水上艦原子力技術についても前述の通りです。
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2007年07月26日
産経新聞の田村秀男編集委員は、FSX要求仕様も知らずにF-2関連記事を書いていたようですね。多方面から取材した結果とやらは、基本的なことすらおざなりにして行った事が露呈しています。

読者の疑問に対して答えようとする姿勢は評価できますが、批判に対する反論が新聞掲載記事よりも突っ込み所多数といった有様では、傷口を悪化させているようにしか思えません。


田村編集委員の皆様への返答を紹介します [2007/07/25]
「やばいぞ日本 第一部見えない敵1」の筆者、田村秀男です。記事について、さまざまなご批判があることは真摯に受けとめております。 記事については、防衛省幹部、F2開発及びテスト飛行担当者、メーカー、米国防総省関係者の多方面から取材した結果です。 取材を総合した結論は、F2が残念ながら「価格に比べて性能がかなり劣る」戦闘機であるという現実です。中国側にそれが知られているとの冒頭の証言でそれを指摘しました。 ご承知のように、F2は当初、支援戦闘機としての使命を与えられていましたが、配備段階で、対艦、対地、対空の三つをこなすよう使命が拡張されました。韓国のF15Kに比べた性能が劣ることを「空の勇者」が嘆くことを重く受けとめるべきです。 F2の性能がライバルの戦闘機に劣れば、実戦で不利。だからこそ、量産がされても一層の改良努力をしなければならない。しかし、価格高と性能不足はどうしようもなく、調達数は大幅に減らされたわけです。 「対艦ミサイル四基を搭載した場合の主翼の振れ」については基本的に試験飛行での話です。 飛行制御のプログラムを「主翼が振れない領域に設定」し、三沢基地に配備されている分は2004年の時点で「戦闘能力点検」をパスしています。 しかし、複雑な実戦のケースや他の装備などに応じて、なおより高度の飛行性能のためテスト飛行を続けている、この試験の段階では振れる場合があり、さらなる改良が必要です。 対艦、対空とも実戦能力に乏しい、しかも価格は高い。失敗だと認めてこそ教訓が得られる、その教訓を生かすようにしたい、というのが記事で訴えるところです。 産経新聞編集委員 田村秀男


>F2は当初、支援戦闘機としての使命を与えられていましたが、配備段階で、対艦、対地、対空の三つをこなすよう使命が拡張されました。

いいえ、F-2は構想段階の時点でそれら三つの任務を全てこなせる様に仕様要求が出されています。1985年1月に、航空幕僚長から技術研究本部長に対して下記のような運用要求を提示されています。


  • 空対艦ミサイル4発装備した状態で戦闘行動半径450海里を有すること。

  • 短距離空対空ミサイルと中距離空対空ミサイルをそれぞれ2〜4発装備できること。

  • 全天候運用能力を有すること。

  • 高度な電子戦能力を有すること。


以上のように「中距離空対空ミサイル」を運用できる事がFSXの仕様要求でした。F-1支援戦闘機が短距離空対空ミサイルまでしか運用できない点と比較すれば、FSXに対し高い対空戦闘能力が求められている事が分かります。

田村秀男氏は配備段階で使命が拡張された、と言いますが、恐らく氏の主張の根拠はF-2がアラート任務に就いている事からなのでしょうが、F-1もアラート任務には就いていたのですから根拠とは成り得ません。

>取材を総合した結論は、F2が残念ながら「価格に比べて性能がかなり劣る」戦闘機であるという現実です。

1機あたり80億円の予定が120億円になってしまった事は、一々総合的に取材しなくても普通に公表され判明している事実です。この調達予定価格の失敗は、防衛省も認める所ですから。ですが田村秀男氏の記事は、それ以上の意味合いで「F-2は欠陥機だ」と主張するものです。

私は「価格と性能は吊り合っていないが、致命的な欠陥があるわけではない」と反論しています。

>中国側にそれが知られているとの冒頭の証言でそれを指摘しました。

・・・ああ、中国に知られているF-2の弱点って「価格に比べ性能が劣る」事なんですか? だからそんなことは普通に公表されている事でしょう、「隠しても無駄だ」ってそりゃそうですよね、調達価格など普通に発表されている事ですから。

冒頭の証言って意味あるんですか?

「弱点」というモノは性能上の問題点でない限り、実戦で足を引っ張るものではありません。「価格に比べ性能が劣る」という事は、問題点は高い価格であって、性能上の不都合な欠陥がある事を意味しません。

>韓国のF15Kに比べた性能が劣ることを「空の勇者」が嘆くことを重く受けとめるべきです。 

重く受け止めろ? 馬鹿馬鹿しい、

鼻で笑ってるんですよ。

軽すぎますね、その「空の勇者」さんは。一体誰です? 「竹島の制空権は失った」だなんて、あまりにも程度の低い煽り文句で、一般紙で目にするとは思いませんでした。領土紛争の係争地、しかも相手が実効支配している地帯の上空の制空権を「失った」と、全国紙新聞記者の前で表現するような、政治的センスの欠片もない「空の勇者」が居るとしたら、それは航空自衛隊にとって大変不幸な事です。

そもそもF-16ベースのF-2の空戦能力がF-15ベースのF-15Kに劣るのは当たり前の話です。機体規模そのものが違うクラスなのですから。だから、性能差を大袈裟に嘆く様な戦闘機乗りが居たとしたら、そりゃ田村さん、貴方は担がれてますよ。

しかもF-2もF-15Kも戦闘爆撃機(戦闘攻撃機)であって、お互いが空戦を行う機会はまず訪れません。機会があるとしたらお互いの国が総力戦に突入し、あらゆる機体を防空戦に注ぎ込む死闘を繰り返す事態くらいでしょうね。竹島や尖閣諸島のような小さな孤島を巡っての地域紛争では考えられない事態です。

通常、制空権はお互いの制空戦闘機同士で行われます。敵の戦闘爆撃機に味方の制空戦闘機が攻撃を仕掛ける場合もあるでしょう。ですがお互いの戦闘爆撃機同士が交戦する可能性は低いのです。日本航空自衛隊の制空戦闘機はF-15Jです。韓国空軍はKF-16です。制空権云々はこれらの機体で争われます。仮に韓国空軍がF-15Kを制空任務に使用してきたとしても、航空自衛隊側で相手をするのはF-15Jです。それも新型空対空ミサイル「AAM-4(99式空対空誘導弾)」を運用できるF-15J改が相手となるでしょう。F-15Kの運用するAIM-120「AMRAAM」を射程で上回るAAM-4ならば、優位な戦いを展開する事が出来ます。それに加え、早期警戒機の支援などで元々、航空自衛隊のほうが有利な状況を構築できているのです。

「竹島の制空権は失った」という証言の無意味さは、理解して頂けましたか?

>「対艦ミサイル四基を搭載した場合の主翼の振れ」については基本的に試験飛行での話です。

もう既に不具合が解消された、という事に触れずに記事を書いたのですね。

>飛行制御のプログラムを「主翼が振れない領域に設定」し、三沢基地に配備されている分は2004年の時点で「戦闘能力点検」をパスしています。

プログラムだけでなく、パイロンの位置変更を行って振動問題を解消した事はご存じないのですね。

>複雑な実戦のケースや他の装備などに応じて、なおより高度の飛行性能のためテスト飛行を続けている、この試験の段階では振れる場合があり、さらなる改良が必要です。

それはF-2に限った話ではありません。F-16でも、爆弾満載で急激な機動を行えば翼は捩れるので、G制限は掛けられています。どんな戦闘機でもそうです。複雑な実戦のケースや他の装備などに応じてあらゆるパターンを試さないといけないのですから、新型ミサイルが出来て新たに搭載する場合には、その都度旧い機体でも試験を行わなければなりません。

>対艦、対空とも実戦能力に乏しい、しかも価格は高い。

対艦・・・「対艦ミサイル4発と増槽2本を抱いて大バンク角での旋回を行うF-2支援戦闘機の映像」

対空・・・「USFJ Commander takes a spin in Japan's new F-2 fighter」

対地・・・「日米共同「コープ・ノース・グアム」終わるF−2初の対地実爆」

何処が実戦能力に乏しいのですか。具体的に指摘してください。



田村編集委員の返答をブログに載せた、中静敬一郎・産経新聞論説副委員長は、【やばいぞ日本】連載の取材班キャップを勤めています。中静氏は最後にこう纏めています。

>◆  以上、田村編集委員の主張を紹介しました。実戦に使えない航空機でよいのか、それを考えない日本でよいのか、という「やばいぞ日本」の問題提起と受け止めていただければ、幸甚です。

私は実戦で使えると反論しています。大きな欠陥があるわけでは無いですから。そして調達コストが予定より高くなったことは失敗だったと認めているからこそ、防衛省は調達予定数を減らしました。にも拘らず「失敗を認めていない」と主張する、田村氏の記事はおかしなものです。それ以前に間違い箇所が山のようにあるのはどうにかしてくれませんか。F-35やF-22の主翼は複合材一体成型ではありませんよ。

ですがそれよりも何よりも、「竹島の制空権は失った」という、あまりにも程度の低い煽り文句が、田村氏の記事に批判が殺到している真の理由です。何も知らない一般人はこんなセリフに騙されて「やばいぞ」と煽られてしまうのでしょうが、ちょっとでも軍事を齧ったことのある人間なら、馬鹿馬鹿しいと一蹴する内容でしかありません。
22時39分 | 固定リンク | Comment (67) | 報道 |
2007年07月24日
さて、この記事は署名が無いですけれど、恐らく田村秀男記者が書いたものでしょうね。


【国際政治経済学入門】次期戦闘機選定はF2の教訓を生かせ [7/23 産経新聞]
日本側は開発に10年もの期間をかけ米側が提供を拒否した飛行制御ソフトを自力で製作し炭素繊維の強度不足をソフトで制御している。防衛省は「失敗」とは認めず未だに「改良」にカネを投じているが、それでは次のステップに進めない。一機当たりの価格がF16の二倍以上なのに、性能はたいしたことがない。本家の米側の評価はきわめて低いから、FXは機種を問わず「丸ごと買え」と言われかねない。

ロッキード・マーチン社のほうは、日本からノウハウを無料、無条件で導入した炭素繊維複合一体成形加工技術を生かし、F22とF35の開発につなげた。しかし、米国はF22とF35への日本の貢献も認めない。


>日本側は開発に10年もの期間をかけ米側が提供を拒否した飛行制御ソフトを自力で製作し炭素繊維の強度不足をソフトで制御している。

飛行制御ソフトはフライバイワイヤのコントロール用で、日本はF-2以前からT-2CCV実験機でデータの蓄積がありました。開発に10年も掛けてなどいませんよ。それと何度も言いますが翼の強度不足は翼そのものの改修で既に直っています。

>防衛省は「失敗」とは認めず未だに「改良」にカネを投じているが、それでは次のステップに進めない。

予定より調達コストが増大した失敗は認めています。また、改良に金を投じることは当然の事です。アメリカ海軍のF/A-18も当初は失敗作呼ばわりされましたが、改良を重ねて今や名機となっている事は周知の事実です。

「それでは次のステップに進めない」とはどういう意味なのでしょうか。F-2はどうにもならない失敗作であり、完全に見切りをつけろとでも言いたいのでしょうか。

>一機当たりの価格がF16の二倍以上なのに、性能はたいしたことがない。

田村秀男記者。貴方は4年前に「1機当たりのコストは80億円、F16の約4倍」と言っていたのに、今度は4倍ではなく2倍ですか。日経新聞時代の記事の間違いを認められた上で今回の発言をされているのなら良いのですが、どうもそのようには見えません。

F-16C/Dの最新型Block60は1機あたりのコストが100億円を超えますし、性能面についても対艦ミサイル4本と増槽2本を抱いて運用できる戦術戦闘機はF-2の他に存在しません。対空戦闘についても、アメリカ第五空軍所属のF-16戦闘機を相手にしたDACT(異機種間戦闘訓練)で、F-2は満足のいく成果を収めています。「性能は大した事が無い」とは、一体何を根拠に言われているのでしょうか。F-2の製造コストが予定をオーバーした事は批判されてしかるべきですが、根拠の無い批判は止めて頂きたいものです。

>本家の米側の評価はきわめて低いから、FXは機種を問わず「丸ごと買え」と言われかねない。

アメリカがF-22のライセンス生産を認める可能性が低いのは、F-2とは全く関係が無く、最新鋭技術の情報漏洩を警戒してのものです。F-35についても国際共同開発計画時に参加していませんから、直ぐにライセンス生産させろという要求は通りません。どちらについてもF-2の評価とは関係の無い問題です。

ライセンス生産がしたければ、F-15EやF/A-18Eを選択すれば問題なく応じてくれるでしょう。やはりF-2がどうのこうのは無関係な話です。

>ロッキード・マーチン社のほうは、日本からノウハウを無料、無条件で導入した炭素繊維複合一体成形加工技術を生かし、F22とF35の開発につなげた。しかし、米国はF22とF35への日本の貢献も認めない。

F-22及びF-35戦闘機は炭素繊維複合材一体成形加工技術を使っていません。F-22の開発時期を考えればF-2の技術導入自体が有り得ないことですし(YF-22の初飛行は1990年9月30日)、F-35は先行量産機のAA-1が一体成型の主翼で作られましたが、その後の量産機では主翼は3分割されチタンの桁材が使用されます。F-22の主翼にもチタンの桁材は入っています。両機共に炭素繊維複合材一体成形ではないのです。

F-2の翼に補強を入れたら失敗作だとする田村秀男氏の主張に沿うなら、F-22やF-35も失敗作となるのでしょうか?


さて、記事の最後にはこうあります。

>日米が「真の共同開発」をめざす、その原則のうえでFXの機種選定をするのがF2の教訓ではないか。

FXの調達予定時期は直ぐ其処にまで迫っています。F-4戦闘機の老朽化は進んでおり、F-1の時のような大幅な退役時期延期は出来そうにありません。故に、「共同開発」などしている時間などありません。今既にある機体をFMSで取得するかライセンス生産するかしか選択肢は無いのです。

どうしてこう、頓珍漢な記事を書くのでしょうね・・・もっとハッキリ書いてしまえばいいでしょう、「F-22をFMSで入手する事になったら国内企業の仕事が無くなるので産経新聞は反対します」と。
22時12分 | 固定リンク | Comment (64) | 報道 |
2007年07月20日
産経新聞の【やばいぞ日本】連載第一部「中国軍に知られたF2の欠陥」を書いた記者、田村秀男氏は日経新聞を定年退社した後に産経新聞の特別顧問となっています。そこで今回は田村秀男氏が日経新聞記者時代に書いたF-2関連記事を見てみることにしましょう。

日経新聞「NET EYE プロの視点」田村秀男コラム「イラク戦争以降の世界を読む」より。


「独立国」日本が欠くもの(2003/7/21)
1980年代末にブッシュ(父)政権との間で、防衛庁次期支援戦闘機「FSX」の開発が決まった。当時米側は日本企業の技術に脅威を感じていたこともあって、米国製F16の採用を迫ったが、日本側は100%国産での開発にこだわった。すったもんだの挙句に日米共同開発にこぎつけた。約5000億円の国費を投入。開発は3年前に終わり、「F−2」として三菱重工業が量産を開始し、三沢基地などに配備されている。

1機当たりのコストは80億円、F16の約4倍。最先端の技術を世界に先駆けて使ったが、当初目標の速度で飛行すると軽量の複合繊維による尾翼にヒビが入る。同じく世界初利用の「アクティブ・フェイズド・アレイ・レーダー」は敵味方の識別が不可能。つまり、練習用はともかく、実戦ではとても使い物にならない。にもかかわらず、だれも責任は問われないし、欠陥品の量産が続く。世界のほかにそんな「国」があるだろうか。

F−2の失敗にもかかわらず、防衛庁は日本独自の長距離輸送機「CX」と哨戒機「PX」の国産化を計画している。これらも世界初の光ファイバーによる配線など最先端技術の採用を計画しているが、コストはやはり国際標準価格の2倍以上となる見込みだ。防衛庁内でも「F−2の二の舞」を懸念する声はあるが、計画をだれも止められない。

「日本に対するいかなる攻撃も米国に対する攻撃とみなす」(アーミテージ国務副長官)のが日米安保体制の建前である。アメリカのおかげさまで日本は馬鹿高く、実戦に役立たない装備をそろえるゆとりがあった。アメリカも一時は日本の技術力に脅威を感じたが、F−2で安心したのだろう。CX、PXでは「米国製を買え」とも言わなくなった。


・・・こりゃ大変だ。何処から突っ込めばいい?

>約5000億円の国費を投入

いいえ、開発費は3270億円です。

>1機当たりのコストは80億円、F16の約4倍

いいえ、80億円はF-2開発当初の目標価格のはずです。実際には計画値をオーバーし、1機当たりのコストは120億円です。

なおF-16の輸出価格はバージョンにもよりますが、C/D型の後期なら50〜80億円。最新鋭のBlock60ならば100億円を超えます。つまり日本がF-2を開発せずF-16をそのまま導入した場合、時期的にBlock50を選択していたでしょうから、FMSで導入なら安くても60億円、ライセンス生産なら80億円は掛かります。(これでも見立てはかなり甘いかも)

F-16が20億円というのは、初期型のアメリカ軍への納入価格です。その値段では同盟国でも買えません。ましてや後期型のF-16は元がもっと高いのです。

>軽量の複合繊維による尾翼にヒビが入る

2002年の段階で改善済みです。

フォローアップを量産機に反映Aircraft of Japan
防衛庁では、F-2開発に関する約一年半のフォローアップ活動を行い、「改善事項にかかわる対応はほぼ終了した」とのこと。(2002年5月30日付Asagumo Newsより)

これまでの問題点

  • 低空高速でのロール時に、水平尾翼と後胴部が設計荷重を超過しないよう、飛行制御プログラムが改修されたため、一部の飛行領域でロール・レートの低下があった。

  • シミュレーション試験によって、一部の搭載形態では高迎角時に不安定な運動が発生する可能性が判明したため、これを防止する飛行制御プログラムを設定。この措置で、一部の飛行領域でロール・レートの低下があった。

  • 翼下、胴下のドロップタンクの燃料搭載量が多い場合、低高度高速での急激なロール時に、設計荷重を上回る荷重が機体にかかる可能性が判明。このため、ドロップタンク燃料搭載量に若干の制限が生じていた。

改善策

  • 飛行制御プログラムを調整して、ロール・レートの低下を防ぎつつ、上記問題を改善できる見込みを得た。

  • 胴下ドロップタンクについては、地上強度試験で設計荷重を拡大した。

改善された飛行制御プログラムは、平成14年度中に入手予定で、順次、量産機に反映されるとのこと。
また、胴下ドロップタンクについては、平成14年1月に制限を解除したそうです。


>「アクティブ・フェイズド・アレイ・レーダー」は敵味方の識別が不可能

敵味方識別はIFF(Identification Friend or Foe)が行う作業の筈です。何か勘違いしてやいませんか。

F-2の搭載レーダーの不具合は、ロックオンが勝手に外れたり、ブリップが突然消えるなどの現象だった筈です。これついてはレーダーそのものではなく、レーダーと機体の干渉、艤装の問題であり、初期不良の範疇だと言えます。

F-2支援戦闘機は、2004年3月19日からアラート任務に就きました。夜間任務にも就いています。もしレーダーに不具合があるというなら、昼間の飛行はともかくとして夜間飛行任務はこなせない筈です。この時点で不具合は解消されたと見るべきでしょう。

ちなみに似たようなレーダー初期不具合は、欧州の開発した新鋭戦闘機EF2000ユーロファイター/タイフーンでも発生しています。(レーダーが空対空モード中に勝手に対地モードに切り替わる現象)これももう既に直っており、ユーロファイターは夜間飛行任務にも就いています。


・・・結局の所、田村秀男氏が最近書いた産経新聞の記事は、4年前の日経新聞時代の記事と基本的に変わりが無さそうです、とても防衛省関係者から新たな情報を仕入れた上で書いているとは、思えません。しかもよく見たら二つの記事に使われているF-2の写真は、全く同じものではありませんが角度が少し違うくらいで、同じ情景を撮ったものです。つまり田村秀男氏は新聞社を移籍したにも拘らず、4年前に一度使ったネタの使い回しを行ったわけです。


>F−2の失敗にもかかわらず、防衛庁は日本独自の長距離輸送機「CX」と哨戒機「PX」の国産化を計画している。これらも世界初の光ファイバーによる配線など最先端技術の採用を計画しているが、コストはやはり国際標準価格の2倍以上となる見込みだ


田村秀男氏の言う「国際標準価格」とはお幾らなのでしょう? 

欧州のA400M輸送機の開発費が15億ユーロ=2440億円、アメリカの対潜哨戒機P-8Aの開発費39億ドル=4680億円ということを考えれば、2機種合わせて開発費3450億円というC-X/P-X計画のコストパフォーマンスの良さが分かると思います。

1機あたりの製造単価については、まだ試作機しか納入されていない為、量産機のコストはまだ分かりません。そもそも世界各国に売る事が出来るA400MやP-8Aに比べると、C-X/P-Xが割高になるのは仕方ない気もしますが、国際標準価格の2倍とは一体誰が言ったセリフなのでしょうか。

>アメリカも一時は日本の技術力に脅威を感じたが、F−2で安心したのだろう。CX、PXでは「米国製を買え」とも言わなくなった。

アメリカのP-8A対潜哨戒機は、本来は民間機B-737からの転用で安く仕上げるつもりが開発費の異様な高騰であの有様ですから、むしろアメリカ側から日本のP-X買いたいとか言い出したりして・・・それはないか。C-Xについてはそもそもアメリカに同クラスの輸送機はありません。


「戦えない最先端の翼」を巡り読者が論争(2003/8/1)
7月21日付「『独立国』日本が欠くもの」で指摘した「戦えない最先端の翼」F-2支援戦闘機を巡り、読者から様々な視点での意見が届いているので紹介する。


案の定、当然と言うか何と言うか、4年前にも炎上していたみたいです。しかし何故か読者からの意見を見ることが出来ません。日経メンバーズクラブの会員登録をすれば読むことが出来るのでしょうか? どうもよくシステムが分かりませんね。
00時50分 | 固定リンク | Comment (67) | 報道 |
2007年07月17日
コメント欄でエントリーと無関係な話題を延々とされても困るので、とりあえず仮設置。


【やばいぞ日本】第1部 見えない敵(1)中国軍に知られたF2の欠陥 [7/14 産経新聞]

「F2の弱点は隠しても無駄だ。中国軍幹部にも知られているんでね」。航空自衛隊元幹部が重い口を開いた。

F2は総額3700億円以上を投じ、米国の戦闘機F16を土台に日本の誇る先端技術を取り込んだ「日米共同開発」の産物だ。1990年に開発を始め、対地・対艦用の支援戦闘機として設計されたが、対艦ミサイル四基を搭載すると主翼が大きく振動する欠陥が直らない。

支援戦闘機としては失格でも、爆弾を積まなければ自由自在に舞うことはできるとの理由で迎撃用戦闘機用として航空自衛隊三沢基地などに配備されている。しかし、戦闘能力についても「F2は韓国のF15Kに劣る。竹島の制空権は失った」と空の勇者たちは嘆く。



ソースが名無しの航空自衛隊元幹部だそうですが、そういった情報源で良いなら私でも出せます。主翼の振動問題については治ってる筈ですが・・・匿名ソース合戦では決着がつかないので、表に出せそうなソースを探して見ます。

しかし航空自衛隊関係者が「F2は韓国のF15Kに劣る。竹島の制空権は失った」等と馬鹿げた事を言うとは、とても思えません。憂国の国士な人(但し軍事的には無知な人)を煽ろうとしているとしか・・・何故って、F-2とF-15Kの性能差は当然の話でしょう。それはF-16とF-15を比べるようなもので、差が有って当然の話です。韓国のF-15Kと比べるならF-15J改とすべきです。F-15J改ならばAAM-4空対空ミサイルが使えますから、AMRAAM使用のF-15Kと対等以上に渡り合えます。

それ以前に、機体の性能差だけで制空権がどうのこうの論じられる筈がありません。防空網は早期警戒機などシステム的なものであり、総合的な面から論じなければならないからです。決定的な性能差、例えばF-22戦闘機が相手だというなら、それだけで「制空権を失った」と表現しても良いでしょうが・・・。

ちなみにアメリカ軍司令官によるF-2への公式評価は以下の通りです。米軍準機関紙「Stars & Stripes」(星条旗新聞)に載った、F-2対F-16によるDACT(異機種間戦闘訓練)についての記事です。


USFJ Commander takes a spin in Japan's new F-2 fighter[July 8, 2004 Stars & Stripes]
The U.S. commander said he was impressed with the F-2, which is designed and built by the Japanese. The aircraft has some capabilities “that our aircraft does not,” Waskow said, mentioning the Active Electronically Scanned Array radar, which has three times the range of a conventional antenna.


アメリカ第5空軍司令ワスコー中将は“日本が設計したF-2に感動した、我々の(F-16)には無い幾つかの能力を持っている”と、AESA(Active Electronically Scanned Array radar)を優位点とし、それは従来のレーダーに比べ3倍の捜索範囲を持っていると言及しました。これは以前の日記でも指摘している通り、「F-16にもAESAを付けたい」というおねだりのダシに使われた側面もあるのですが、一応の公式見解です。実際のDACTでF-2が好成績を収めた事は確かです。

また軍板FAQでのF-2の項目を参照して下さい。


それにしてもこの産経新聞の【やばいぞ日本】連載は、どうも低俗な煽り記事としか受け取れないのですが・・・例えば連載第二回目はこのようなタイトルです。

【やばいぞ日本】第1部 見えない敵(2)500年後は縄文並み人口15万 [7/15 産経新聞]

別に統計学を学んだ人でなくても、ここ最近の人口減少ペースが500年間続いたら、という仮定に何の意味も無いだろう事は理解できるでしょう。一時期の極端な変動がその後数百年に渡って続く保証など無いし、縄文時代の全地球人口と人口爆発の構図、分かっているんでしょうか・・・そういった話を抜きにして「このままでは縄文時代並みの人口になる」だなんて、極端過ぎやしませんか。

【やばいぞ日本】連載の序章を見ても、幾らかは同意できる部分もありますが、論調の大部分はどれも煽り記事です。憂国を煽るのも結構ですが、煽り方が悪過ぎます。一歩間違えればゴシップ誌と同レベルというのは、全国紙として問題があるでしょう。
11時59分 | 固定リンク | Comment (79) | 報道 |
2007年06月07日
共産党が陸上自衛隊情報保全隊の内部文書とされる資料を公開、「市民団体や共産主義者を監視していた!」と問題視するこの事件ですが、主要紙の中で真っ先に飛び付いたのは当然のように朝日新聞でした。なにやらリストに載っていたようで。


情報保全隊―自衛隊は国民を監視するのか [6/7 朝日新聞]
忘れてはならないのは、武力を持つ実力組織は、国内に向かっては治安機関に転化しやすいという歴史的教訓である。戦前、軍隊内の警察だった憲兵隊がやがて国民を監視し、自由を抑圧する組織に変わっていった。


慌てて書いたので碌に推敲しなかったせいなのか、それとも狙ってやっているのか知りませんが、この辺りの記述は間違っています。

『軍隊が治安維持を行うという意味 』

戦前の日本の憲兵隊は、フランスの国家憲兵制度(Gendarmerie nationale)を参考にして創設されているので、治安維持任務は最初から仕事の内の一つです。朝日新聞の社説を書いた人は、MP(ミリタリーポリス:軍隊内警察)と国家憲兵の区別が付いていないのか、まるで軍隊内でしか活動できない憲兵が、やがて国民を取り締まるようになったかのように書いているようですが、違います。戦前の憲兵隊の場合、最初からそれは任務でした。なお現在の自衛隊はアメリカ軍のMPを参考にして創設された「警務隊」があります。これは軍隊内警察です。


次に本題ですが・・・ここを読めば、今回の件はどういった事態なのかが分かるでしょう。


自衛隊情報保全隊員いんちきやかた
なお、一応言っておきますが、情報保全隊が自衛官以外の人間や団体を調査する事自体は、別に違法でも何でもありません。上の業務一覧にて「自衛隊に対する外部からの働きかけ等から部隊を保全するために必要な資料及び情報の収集整理」というのを挙げましたが、例えば反自衛隊活動の一環としてどこぞの団体が自衛官への接触・反自衛隊思想の吹き込みを図っていると見られる場合、情報保全隊はその団体と活動内容について調査を行うでしょう。ただこの場合、調査の権限はまったくの非強制、任意調査の範ちゅうに限られるという事です。


注目すべきなのは、このサイトは二年前から更新を停止しており、この記事は今回の事件よりも前に書かれている、という点です。そう、つまり違法性が無いことは以前から指摘されていることなのです。

(だから問題があるとしたら共産党にスパイされてしまった点に置ける防諜体制のあり方か。とはいえ過去にも開発中の90式戦車「走行試験用車体」のスクープ写真を入手してきた、日本共産党のスパイ能力は侮れないものがあります)
23時57分 | 固定リンク | Comment (300) | 報道 |
2006年10月20日
昨日、「隠さないで、名前書こうよ」というトラックバックが来ていました。最初は何の事かさっぱりわからなかったのですが・・・実は、こういうことでした。


【磨】軍事評論家評判記 [10/19 iza(イザ!):産経新聞社]
一方、今夏以来の北朝鮮危機に関して、一貫してCIAによる危機創出のためのニセ情報説を主張し、ネット界で“逆神”のあだ名を奉(たてまつ)られたのが某氏。「予言したことの逆が現実になる、超自然的存在」という意味で、すでにその予想の外れ具合に定評?のある某“元帥”に迫る評価を得つつある。国際緊張時に限らず、普段から自分のサイトで情報発信することで存在感をアピールし、固定読者確保に努める新タイプの軍事評論家だが、結果的に口数の多さが裏目に出ている格好だ。


とうとう神浦さん、直接の名指しは避けられたものの、遂に大手マスコミ系列の記事で【逆神】として捕捉されてしまいました。こうして大いなる伝説は語り継がれていきます。次は実名デビューで決まりですね!?

関連記事:「逆神・神浦元彰伝説〜北朝鮮核実験〜」
23時56分 | 固定リンク | Comment (28) | 報道 |
2006年10月09日
今日、ついに北朝鮮が核実験を行ったと発表しました。やはり、こうなってしまったのか。日本有数の【逆神】である神浦元彰さんは「核実験準備はCIAの捏造」と言い放つ以前から、「核実験準備は演技」「何時もの瀬戸際外交で実際には行わない」と誤神託を降されていましたから、覚悟はしていました。・・・それにしても恐るべき的中率です。テポドン2発射の時も脅威的な的中率を発揮していた上に、今回の核実験でもこれですから、本当に凄まじい。


以下は最近の神浦さんの戦歴(北朝鮮関連)です。


特にCIA陰謀論に拘っている様子が見て取れます。

さて、神浦さんは10/3の北朝鮮外務省の核実験予定発表を目の当たりにし、自身のサイトで4日に「やるか、やらないかはもはや予測できない」と弱気になり、5日には「”核実験”というカードを切ろうとしていると思えてきた」となり、6日の記事では「いつどこでやるかという段階だ」と言い出しています。(7日と8日には言及無し)

ちゃんと軌道修正してるではないか、逆神ではないではないか・・・という人も居られると思いますが、それは違います。いかに逆神とはいえ、ほぼ完全に確定された事象を覆すほどの神通力は持ち得ないのです。これは【大明神】とまで称えられている森田実ですらそうであり、選挙予想の福岡政行に至っては軌道修正をあまりにも頻繁に行う為に、最終的な予測は実際と近くなりますが、やはり逆神としての神格は落ちているわけではないのです。

つまり、今回の北朝鮮核実験の場合、3日の北朝鮮外務省発表の段階でほぼ決行は確定事項であると一般人にも理解できる状態であり、ここから後の予測は素人にでもできるものなので神としてのお告げは出てこない、と理解して下さい。
20時46分 | 固定リンク | Comment (41) | 報道 |
2006年10月03日
8月頃から偵察衛星や通信傍受の結果、「北朝鮮で地下核実験準備の兆候あり」と報道されてきましたが、今日になって北朝鮮外務省が核実験の実施予定を発表しました。彼等はとうとう、最後の手札に手を付ける気なのでしょうか。


北朝鮮外務省、将来核実験を行うと表明=朝鮮中央通信 [10/3 ロイター]
朝鮮中央通信によると、北朝鮮外務省は3日、安全が確実に保証される状況下で、将来、核実験を実施するとの声明を発表した。ただ、対話と交渉を通じて朝鮮半島の非核化を実現するという北朝鮮の基本姿勢に変更はない、としている。


さて、例によって前日10/2の神浦元彰さんの言動をチェックしておきます。


神浦元彰HP 最新情報 [10/2]
まさか北朝鮮で地下核実験の兆候ありも、CIAあたりが勝手に流したニセ情報ではないだろね。北朝鮮の軍部は地下核実験の話しに驚いていたという情報もある。


・・・凄いよ神浦さん。

以前の「テポドン2はCIAの捏造」と同様の路線を(テポドン2の存在はCIAの捏造ではないと確認されたにも関らず)捨てずに、「北朝鮮、弾道ミサイル7基発射」の時と同じ恐るべきタイミング(前日)での発表を実現しています。

また解説するのもアレですが、北朝鮮自身が「核実験の準備を進めている」と言った以上、核実験準備が演技であろうがなかろうが、今後もCIA陰謀説を唱える為には「北朝鮮はCIAの命令で動いている」といったトンでも説を主張せねばなりません。流石にそれは無理がある主張でしょう。最初の兆候情報をキャッチ・分析したCIAが正しかったと考えるべきです。


軍事アナリスト・神浦元彰さんは、日々、逆神としての神格を高められていると感じました。最早、「田岡元帥なにするものぞ!」といったところでしょうか。

なお核実験準備の兆候が初めてキャッチされた頃の予言は以下の通りです。


神浦元彰HP 最新情報(過去ログ) [8/18]
[コメント]こうした北朝鮮の動きを本物と見るか、あるいはわざと目立つ動きだけの瀬戸際外交と見るかだが、私は北朝鮮は核実験の準備だと思わせるジェスチャーと見る。すなわち演技であって本物の核実験の準備ではない。


神浦元彰の絶対・断言。
20時34分 | 固定リンク | Comment (54) | 報道 |
2006年07月28日
読者の方から神浦さんだけでなく、前田哲男についても語って欲しいと要望がありました。・・・しかし、この人は軍事的にもネタ的にも問題外のような気がするんですが・・・とりあえず最近の氏の主張よりツッコミを試みてみます。



有名無実の事前協議 パトリオット嘉手納配備 [7/10 琉球新報]
協議対象の「装備の重要な変更」とは「核弾頭や中・長距離ミサイルの持ち込みや、それによる基地建設」というのが政府の見解。PAC3は「核や中・長距離ミサイルとは性質は異なり、迎撃ミサイルであり、防御的な武器。事前協議の対象とはなり得ない」(外務省)との立場だ。

しかし軍縮問題や安全保障に詳しい沖縄大学の前田哲男客員教授は「そもそも中距離ミサイルの定義が必ずしも一定していない。PAC3が中距離ミサイルに当たるのか。基地の建設にも該当するわけだが、この2つの要件についてきちんとした議論をしなければならない」と政府判断のあいまいさを指摘する。

嘉手納のPAC3に前田教授は「ハワイに向かうミサイルを撃ちにいくのが役割」と説明。その場合「わが国から起こされる戦闘作戦行為になる可能性が高い」と問題点を指摘した上で、「米原子力空母ジョージワシントンの母港化も『配置の変更』に当たるが、うやむやのうちに行われている。事前協議制度は実質的には自壊しつつある」と断じた。


・・・相変わらず問題外だよこの人。


>そもそも中距離ミサイルの定義が必ずしも一定していない。

この場合は中距離弾道弾などの中射程の攻撃用ミサイルを指し、地対空ミサイル(防御兵器)であるPAC3はそもそも関係ありません。

>PAC3が中距離ミサイルに当たるのか。

いいえ、射程20km程のPAC3は地対空ミサイルとしても短距離ミサイルに該当します。

>嘉手納のPAC3に前田教授は「ハワイに向かうミサイルを撃ちにいくのが役割」と説明。

それはひょっとしてギャグで言ってるのか?

PAC3の射程としてミッドコース迎撃は物理的に不可能だし、そもそも北朝鮮からハワイ目掛けて撃ったら北海道上空を通る筈じゃ・・・グアムにしても広島県上空経由だし・・・地理的にもまるで沖縄は関係無い筈。

・・・ほうら、すぐ終わってしまった。ネタとしても楽しめないです、この人は。
00時20分 | 固定リンク | Comment (60) | 報道 |
2006年07月22日
さて、Jwings 9月号(7月21日発売)を入手しました。先月号で「テポドン2はCIAの捏造?」と書いてしまった軍事アナリスト神浦元彰氏は、今月号でどのような記事を書いているのでしょうか・・・。

Jwings 9月号(7月21日発売)の66ページ。神浦元彰の軍事ジャーナル「オレに言わせろ!」第37回目「時速30kmのF1マシン、テポドン2発射!」

ちなみに締め切り日である7月9日現在で書かれた文章だそうです。(ということは毎月その日が締め切りだとして、先月号の原稿は6/9以前に書かれたものなのでしょう)



神浦テポドン


私は、北朝鮮はテポドン2を保有していないと見ていた。アラスカやハワイ近海に弾道ミサイルを撃ち込んでも、軍事的な効果は期待できず、逆にアメリカの政治的な制裁を強めるだけだからだ。北朝鮮はそれでもテポドン2がアメリカの周辺まで達し、そのことで恐怖に怯えるアメリカが、北朝鮮への制裁を解除してくれると期待したんだろう。しかし結果は2段目の点火や、1段目の切り離しもできない、幼稚な致命的欠陥ロケットの存在を証明しただけだった。北朝鮮は大恥をかいてしまったのだ。アメリカの制裁解除どころではなくなった。


神浦さん・・・これでは、「CIAが米議会で誕生させた虚像の兵器」だとした先月号の分析の言い訳にはなっていないですよ。いや、そもそも言い訳をする気が無いのでしょうねきっと。

>私は、北朝鮮はテポドン2を保有していないと見ていた。
>アラスカやハワイ近海に弾道ミサイルを撃ち込んでも、軍事的な効果は
>期待できず、逆にアメリカの政治的な制裁を強めるだけだからだ。

この部分で神浦さんは「保有する事」と「発射する事」の区別がついていません。意図的に混同しているのか、それとも素でゴッチャになってしまったのか・・・後者だろうな。・・・さて、発射のリスクについての分析自体はそれなりに妥当なものですが(それですら外れてしまったわけですが)、保有自体に付いては、テポドン1もテポドン2も米本土まで届かせるICBMを開発する過程のステップに過ぎない、と考えれば存在してもおかしくは無いです。その分析を誤ってしまったのが氏のJウィング先月号のコラムでした。

>北朝鮮は大恥をかいてしまったのだ。

この件で自分自身が大恥をかいた人が、よくこういうセリフを書けるな・・・と思った人は素人。コレができないようでは『逆神』の役割は務まらない。


さてそれでは他の部分で気になった点を紹介しましょう。特に問題がある部分は2点です。


人口衛星?


完全な打ち上げ失敗である。これでは北朝鮮が事前に語っていた人工衛星打ち上げなのか、あるいはアメリカに到達できる弾道ミサイルの実験なのか不明のままだ。


驚くべき事に神浦さんは、この後に及んでまで人工衛星打ち上げ説を捨てていません!
真東に向けて発射していない事は無視ですか?
スカッドやノドンと一緒に発射された事は無視ですか?
北朝鮮自身が「ミサイル演習」だと認めた事は無視ですか?



人工衛星?その2


テポドン2が失敗した事により、人工衛星(宇宙の平和利用)という発表をすることができず、通常の軍事訓練を装うためにスカッド、ノドンを発射した可能性もあるのではないか。


・・・もし仮にテポドン2が人工衛星打ち上げでありそれに成功したとしても、スカッドやノドンの同時発射を諸外国に詰め寄られたら「人工衛星打ち上げ」という言い訳は成り立たなくなります。何故、人工衛星打ち上げとミサイル演習を同時に行う必要があるのか、ミサイルと関連付ける事によりこの宇宙ロケットを何時でもミサイルに転用できるぞという脅しではないかと、国際社会は確実にそう受け取ります。

しかもこのミサイル演習の最初の2発はテポドン2よりも前に発射されている、という点を考えれば、北朝鮮は最初から人工衛星打ち上げ等という言い訳をするつもりが無かった事は明白でしょう。

それにしても「人工衛星(宇宙の平和利用)」と、わざわざ平和利用を強調する辺りが・・・神浦さんらしいなぁ。


F1例え話


北朝鮮は時速300キロ以上が出るという触れこみでF1レーシングカーを作った。しかし実際に走らせてみると、時速30キロで車軸が折れて走行不能になった。でも車の形がF1マシンそっくりなら、時速30キロでしか走れないものをF1マシンと呼ぶのだろうか―。



これは神浦さんのサイトでも書かれていた文章の使い回し、流用ですね。よほど気に入った言い回しなんでしょう。
でも呼びますよ、もちろん。「F1マシンの失敗作」と。車軸が折れたなら次は其処を強化して改善するだけです。それが開発というものですから。一度の試走で失敗したからといって、いきなり軽トラックに分類する人は居ないでしょう。

次は最後の締め部分です。


半島守護神


テポドン2の打ち上げは失敗しても、北朝鮮をアメリカから守る守護神は生きている事を確認させた。


守護神って、そんな言い回しは・・・絶句。
23時28分 | 固定リンク | Comment (18) | 報道 |
2006年07月05日
人工衛星打ち上げと言い訳のできない方向への発射、そして宇宙ロケットにはなりえないスカッドやノドンの同時発射。推定される射程よりも遥かに短い距離で落ちたテポドン2。未だに謎が多く、不可解な北朝鮮のミサイル発射実験・・・いや、スカッドやノドンの大量発射は「演習」というべきか・・・これは一体、何のつもりなのだろうか。現段階では憶測しか言えません。

ただ言えることは、神浦さんの≪間≫の悪さは、前回の「テポドン2はCIAの捏造?」に引き続き、凄まじいという事くらいです。


所長ご挨拶 第78回 [2006年7月4日]
このホームページはお陰様で予想以上の支持を得ていると実感しています。また先月の「テポドン2」の騒動では、早い段階で「弾道ミサイル(人工衛星)の発射はない」とその理由を説明しました。その私の考えをこのホームページで知り、数々のメディアが放送や記事で紹介してくれました。ですから98年8月のような異常な「テポドン騒動」になりなかったと思います。


そうです、この文章は昨日の4日に書かれたものなのです。そして翌日5日早朝、北朝鮮ミサイル発射・・・なんて凄まじいタイミング・・・このままでは神浦元彰さんは、【元帥】田岡俊次を超える『逆神』へと成って果てるのかもしれません。
22時52分 | 固定リンク | Comment (69) | 報道 |
2006年06月28日
先日、本屋で航空雑誌「Jウィング」を立ち読みしていたら・・・神浦さん・・・なんて事を・・・

Jwings 8月号(6月21日発売)のP66に神浦さんの連載記事があります。
神浦元彰の軍事ジャーナル「オレに言わせろ!」第36回目「軍事情報の収集と活用」

そこに・・・こんな主張が・・・あまりにも気になって後日、Jウィングを購入してしまいました。以下に一部を引用します。



66ページ 問題の部分のアップ

北朝鮮のテポドン2は典型的なウソ情報である。テポドン2はCIAが勝手に創り出した2段式の弾道ミサイルで、誰も実物の写真を見た事がないし、北朝鮮で実験発射が行われた事もない。北朝鮮からアメリカに届く弾道ミサイルとして、CIAが米議会で誕生させた虚像の兵器である。



・・・神浦さん、なんて間の悪い人なんだ・・・北朝鮮の舞水端里(ムスタンリ)のミサイル実験施設にテポドン1より明らかに大きいミサイルが姿を現し、発射台に据え付けられた状況が偵察衛星によって確認されたのが18日頃の話。そして21日にJウィング発売。その時には既に「誰も実物の写真を見た事がない」という状況が変わってしまったのです。民間の商業光学衛星にも写っており、インターネットを通じて誰でも見ることが出来ます。原稿を書いている時点では、こんな事になるとは思ってなかったんだろうな・・・

さて、これをどう取り繕いましょうか。「アメリカの偵察写真は捏造だ」と言い張ってみても、他国が自前の偵察衛星で発射台をチェックすれば存在が無いならすぐバレてしまいます。しかしロシアや中国がそのような指摘を行っていないどころか、日米と歩調を合わせ北朝鮮に自制を促している以上、発射台にテポドン1より大きなミサイルが存在する事は事実であり、それが例えハリボテだとしても用意したのは北朝鮮でありCIAではありません。

つまりテポドン2が実際に発射されようがされまいが、発射台に存在する物が本物だろうが偽物だろうが、CIA陰謀説は否定されました。もし無理に主張しようとすると「CIAと北朝鮮はグル」という説しか無くなりますが、それは幾らなんでも無茶苦茶です。

神浦さん、来月号のJウィングでこの件に付いてきちんと説明されることを願います。
01時09分 | 固定リンク | Comment (58) | 報道 |
2005年08月07日
そういえば一ヶ月くらい前に、香港の大手新聞『東方日報』「中國第一航母明年下水08年服役」という記事が載っていました。満載排水量78000トン、艦載機38機、蒸気タービン機関、速力32ノット、滑挑起飛(スキージャンプ)、斜線布局(アングルド・デッキ)、雷達“頂板”(トッププレート・レーダー)、6連装VLS×2、37mm機関砲・・・というスペックの大型艦を、今年8/2から起工し、来年までに進水・艤装・試験航海にまでこぎ着けて、更に2年後の2008年迄に空母乗組員と艦載航空団の訓練を完熟させ、戦力化するという計画です。


紅美鈴 「スケジュール的に絶対無理ですぅ〜」


どれだけ急いでも起工から進水までに3年くらいは掛かるでしょう。実は上海近郊に誰にも知られていない10万トン級ドックが密かに存在しており、今までに他国の偵察衛星やスパイにも感知されず、既に船体の殆どが組み上がっているという落ちでなければ。(魔法でも使わないと無理)

もし今から建造を始めたとして、途中何のトラブルもなく順調に事が進んだとしても、起工から進水までに3年、艤装に2年、試験に1年、訓練に3年・・・10年近く掛かります。しかし初めて建造・運用する兵器に何のトラブルも無いだなんて事はあり得ず、7年前のジェーン・ディフェンス・ウィークリーでは「(建造開始から)中国海軍が空母を戦力化するまでに20年」とされています。


紅美鈴 「っていうか、ソースが“東方日報”って時点で胡散臭いと気付いて下さい〜」


東方日報は香港で最もよく売れている日刊紙です。高級紙ではありません。日本や韓国では「最もよく売れている日刊紙」=「有力紙」=「信頼の置ける情報」という図式が成り立つのですが、他の国ではそうでは無い場合があります。知識階層向けの少部数高級紙「クオリティ・ペーパー」と呼ばれる物と、一般大衆向けに娯楽記事が多く部数の多い大衆紙の2種類に大別され、「部数が多い」=「質が高い」という条件が当て嵌まりません。

例えばイギリスで最も売れている大衆紙「サン」や「デイリー・ミラー」は、日本で言うなればスポーツ新聞が書くような記事を載せています。(イギリスでは高級紙と大衆紙の差がとても激しい)そして香港は1997年までイギリス領でした。・・・つまり香港の新聞も、イギリスと似たようなスタイルとなっています。東方日報はサンほどハッチャケてはないですが、やはり大衆寄りの新聞です。



というわけで、今回も読者の方からのネタ提供で記事を書いてみました。「軍事的に考察して欲しい」と言われたのですが、以前の沖縄戦体験談ネタと同じく、考察する以前の話で終わってしまったような気が・・・これでいいんでしょうかね。[…アイコン画像について]
03時00分 | 固定リンク | Comment (58) | 報道 |
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