このカテゴリ「軍事」の記事一覧です。(全420件、20件毎表示)

2009年11月24日
Wikipediaの「F-X (航空自衛隊)」のF-35に関する解説では、以下のような記述があります。

F-X (航空自衛隊) - Wikipedia#F-35
「国際共同開発であるため、F-22以上にライセンス生産の可能性は低いとされていたが、ロッキード・マーティンは「全プログラムをロッキード・マーティンがコントロールできることになれば、F-35を、ライセンス生産を含めて提案することが可能になる」としている。」

また英語版Wikipediaの「F-35 Lightning II」の採用国トルコの解説では、以下のような記述があります。

F-35 Lightning II - Wikipedia#Turkey
「It is also anticipated that TAI after 2013 will also produce 100% of the F-35 under license from Lockheed Martin Corporation, as was also the case with the F-16 Fighting Falcon program Peace Onyx I and II.」

2013年以降にTAI(Turkish Aerospace Industries;トルコ航空工業)がロッキードの許可を受けて100%ライセンス生産を行う事が予期される、とあります。

そしてこれらの記述のソースを探していたら、英フライトグローバル誌にこのような記事がありました。今年の7月22日の記事です。

Japan and Lockheed mull F-35 assembly plant - Flightglobal
「Lockheed Martin executives have held initial discussions with Japanese government and defence ministry officials about building an in-country final assembly facility for the F-35 Joint Strike Fighter.

Sources close to Lockheed and the Japanese government say the proposal is similar to the final assembly and check out facility offered to Italy, and would fulfil Tokyo's wish to have a domestic production capability to support its indigenous industry as part of a next-generation F-X fighter procurement.」

しかしこれは最終組み立て工場に関する話ですね。ライセンス生産ではなくノックダウン生産という扱いになります。

色々と英語ソースを探して見ましたが、信頼あるソースでF-35のライセンス生産の可能性について触れた記事は見つかりませんでした。日米のWikipediaの元ネタは何処からなんだろう? 
02時06分 | 固定リンク | Comment (299) | 軍事 |

2009年11月23日
航空自衛隊のF-4ファントム戦闘機の代替計画、次期戦闘機FXはF-35ライトニングUとなるようです。




防衛省、次期戦闘機F35採用へ 約40機の導入想定:共同通信

F-35は多国間共同開発戦闘機であり、今から購入するには開発資金を後から補充という形で出資する必要があります。開発に後から参加するという形になる為、武器輸出制限の緩和が必要となります。

そして多国間共同開発という制約により、F-35はライセンス生産をさせて貰う事が事実上不可能で、完成機の購入が前提となります。部品の一部生産に参加する事は可能かもしれませんが、全ての部品から製造する事は認められないでしょう。開発に最初から携わっているイギリスですら自由にならないのに、後から参加する日本に有利な条件は与えられません。

また、F-35の納入は開発参加国が優先され、後から購入を表明した日本は後回しにされます。どんなに早くても2015年以降、2010年代後半或いは2020年以降にならないと実機を手にする事は出来ないでしょう。その間の10年近く、戦闘機の新規調達が出来なくなります。

ロッキードに交渉して、F-2戦闘機のロッキード側の製造権を譲り渡して貰って、日本国内でF-2の製造ラインを再構築し、F-35配備までの空白期間をF-2追加調達の少量生産で埋めるという手立てもありますが、それをやるとその場合のF-2の調達単価は跳ね上がる事になります。後から言ってもしょうがないですが、F-35導入が前提ならF-2の調達を中止すべきではなかったかもしれません。一度止めた製造ラインの再開には新たな資金が必要になってしまいます。

F-35戦闘機は空対空戦闘よりも対地爆撃を重視した設計です。ただしステルス性能の為に兵装は機体内部に搭載する為、空気抵抗が少なく、加速性能はそれほど悪くは無いというデータもあり、現状では機体内兵装庫内に空対空戦闘では4本の中距離空対空ミサイルしか積めませんが、短距離空対空ミサイルをもう2本、機体内兵装庫に積むように改修する計画もあるので、レーダー性能の高さとステルス性能を加味すればF-16戦闘機やF-15戦闘機を上回る空戦能力は有しているでしょう。

ただ、日本がF-35戦闘機を手にする頃には、ロシアや中国のステルス戦闘機が出てくる頃になります。航空自衛隊は次のFX、F-15PRE-MSIP機の更新にF-35を追加導入するのか、それとも国産戦闘機で行くのか、戦闘機の自国生産技術の維持が10年20年と空白が存在してしまう事になるのに、自国開発など果たしてできるのか・・・技術研究本部の「心神」はあくまで実験機に過ぎません。

F-22戦闘機の取得が不可能になったことで泥縄式の選定となった空自のFXはF-35戦闘機となりましたが、このように様々な問題を孕んでいます。選択自体は仕方が無いですし、悪いとも思いませんが・・・
20時08分 | 固定リンク | Comment (518) | 軍事 |
2009年11月21日
関門海峡で海上自衛隊の護衛艦「くらま」と韓国コンテナ船「カリナスター」の衝突事故は、主原因が「カリナスター」にある事がほぼ確定しています。

それなのに、佐世保地区労と社民党佐世保総支部、全日本港湾労組は海上自衛隊に謝罪要求を行ってきました。


関門海峡・護衛艦衝突:謝罪と原因究明、海自に申し入れ−−労組など /長崎 - 毎日新聞
関門海峡で海上自衛隊佐世保基地所属の護衛艦「くらま」と韓国船籍のコンテナ船が衝突した事故で、佐世保地区労と社民党佐世保総支部、全日本港湾労組は20日、海自佐世保地方総監部の加藤耕司総監あてに謝罪や原因究明を求める申し入れ書を提出した。

申し入れ書は、昨年2月のイージス艦「あたご」の漁船衝突事故に触れ「教訓が全く生かされていない」と指摘。早急な原因究明▽国民と港湾利用者への謝罪▽自衛艦の関門海峡通航停止あるいは夜間などの通航停止▽佐世保港湾での安全航行の具体策の明示−−の4項目に文書での回答を求めている。

20日は、組合員や社民党市議ら約10人が総監部を訪れ「事故で4時間にわたり通航止めとなり、港湾関係者は多大な損害を被った」「全国でも有数の難所を通航する必要があるのか」といった声が上がった。応対した宇仁健一郎総務課長は「迷惑をかけ遺憾に思う。安全には十分に注意していきたい」と述べる一方、上司に報告し正式に回答すると答えた。


なぜ被害者側である海上自衛隊が謝罪を行わなければならないのでしょうか? しかし社民党と労組は、加害者側である韓国コンテナ船「カリナスター」を保有する南星海運には、このような要求を行っていないようです。それはあまりにもおかしな行動で、貴方達は何処の国の人間ですかと問いたくなります。

今回の「くらま」の事故は「あたご」と事故とは全く状況が異なるもので、教訓は活かしようがありませんでした。また「全国でも有数の難所を通航する必要があるのか」といった声については、以下を御参照下さい。

(2009/11/09)くらま事故で海自を無理矢理に叩こうとする三宅勝久の頭の悪い記事が週刊金曜日に掲載

週刊金曜日の的外れな記事を真に受けた人が、社民党か労組の中に居たようです。

彼らは謝罪の他に自衛艦の関門海峡通航停止を要求しています。そんな事を受け入れたら呉基地の護衛艦や輸送艦が日本海に緊急展開する事が出来ず、国防に重大な支障が生じてしまいます。このようなドサクサ紛れに日本の防衛力を削ごうとする意図は、完全に打ち砕かなければなりません。

海上自衛隊佐世保地方総監部は後日に文書で正式に回答するそうですが、毅然とした態度で臨んで貰いたい・・・って、あれ?「くらま」の所属は佐世保基地ですが地方隊ではなく、護衛艦隊の第2護衛隊群ですから、社民党と労組は抗議文書を出す相手を間違えていますね。佐世保地方総監部の加藤耕司総監宛てにこんな事を要求しても意味が無いです、「くらま」は地方隊の指揮下には無いのですから。「くらま」の所属する第2護衛隊群の司令は野口均・海将補です。

第2護衛隊群 - Wikipedia
佐世保地方隊 - Wikipedia

佐世保地方隊の公式ページがあまり充実していなかったので、Wikipediaより簡単な参考まで。

・・・何してるんですかね、労組と社民党は。
23時18分 | 固定リンク | Comment (143) | 軍事 |
2009年11月16日
以前書いた記事「護衛艦くらま炎上とUSSベルナップ炎上の共通点」は、この2隻の共通点が「衝突事故で火災が発生するも弾薬は誘爆せず、復旧可能」というものでした。ベルナップは上部構造物が全て崩れ落ちましたが復活し、くらまは艦首が大破しましたが、これから修理に入る模様です。

そして意外にも同じ状況に陥った軍艦の例が他に見当たらず、この2隻特有の事例となっています。あれから可能な限り軍艦が衝突事故を起こした際に炎上した例や弾火薬に引火爆発した例があるかどうか調べ直して見ました。ですがやはり他には見当たりませんでした。

近い事例として、第一次世界大戦中にアメリカ海軍の駆逐艦「マンリー(Manley)」が、対潜護衛任務中にイギリス海軍の仮装巡洋艦「モタガ(Motagua)」と衝突事故を起こし、爆雷が暴発した事故なら見付かりましたが、引火しての爆発ではなく衝撃で爆発し、その後に炎上(熱せられた弾片がガソリン缶とアルコールタンクを貫通、炎上)という事例なので、状況としては順序が逆になります。

マンリーとモタガの事故は凄まじい状況だったようです。


http://www.ussmanleydd940.org/Newsletter/Jan2009/ManleyNotesJan2009_1.pdf
The HMS Motagua had rolled down on a depth charge in the depth charge projector which was mounted on the port side of Manley’s after deckhouse. The charge blew up in a shattering detonation as the destroyer shuddered and lost way .


モタガが、マンリーの爆雷投射機の上に乗り上げてきた? 「had rolled down」とあるから爆雷が転げ落ちてきた・・・のではなく、爆雷の上に仮装巡洋艦がロールしながら乗り上げてきたという話のようで、その衝撃で爆雷が暴発した結果の事故のようです。

depth_charge.jpg

水上戦闘艦用の対潜水艦兵器である爆雷は旧式兵器で、今はもう主流ではありません。爆雷の設置はこのような方式で、剥き出しに並べてある場合が多くなります。写真は「爆雷投下軌条」で、「爆雷投射機」は若干の火薬で爆雷を打ち出す装置です。

剥き出しで並べてある上、艦の一番外側の低いところに置いてあるので、その上に他艦が乗り上げてきたら確かに危ないです。ただ、この種の事故例もこれだけみたいです。
23時58分 | 固定リンク | Comment (29) | 軍事 |
2009年11月14日
前回の記事で、軍艦搭載の火薬類よりも、民間の危険物積載船の方が遥かに危険である事を紹介しました。もしLNGタンカーが吹き飛べば核爆発級の被害が発生しますし、ケミカルタンカーは衝突炎上事故を頻繁に起こしています。「"タンカー" "衝突" "炎上"」といったキーワードで検索すれば、沢山の例を目にする事が出来ます。

その一方で「軍艦が衝突事故を起こした際に弾火薬に引火、爆発した例は存在しません」とも書きました。それは事実として、見当たらないのです。

しかしこれに対して、無理筋な言い掛かりを付けて来た人が居ます。


はてなブックマーク - 護衛艦の弾薬を「大量の爆発物」と危険視する思い込みの弊害 : 週刊オブイェクト
tari-G 『軍艦が衝突事故を起こした際に弾火薬に引火、爆発した例は存在しません』明らかに要出典だろが(笑) 2009/11/13


scopedog氏も相変わらずでしたが、この人はそれに輪を掛けて可哀想な有様になっていますね・・・

「無い事」の出典を出せとか、それは典型的な「悪魔の証明」です。思考する経路が逆でしょう、出典できるようなものが一切無かったからこそ「例は存在しません」と私は判断しています。

それでも私の判断では信用できない、不十分だと仰られるのでしたら、現役の有名な軍事ライター氏の意見を紹介しておきましょう。

そもそも軍艦は衝突して爆発どころか燃えた例が殆ど無い

ベルナップ (ミサイル巡洋艦) - Wikipedia

軍艦が衝突事故を起こした際に弾火薬に引火、爆発した例は存在しません、それどころか炎上した例すら滅多に無く、「ベルナップ」と「くらま」の2例が知られている程度なのです。これは軍艦の海難事故史上、稀有な事例と言えます、軍艦は衝突事故ぐらいで弾薬が爆発したりはしないし、燃える事も滅多にありません。

軍艦の事故 - Wikipedia

もちろん、Wikipediaに事故例が掲載されているといっても記載漏れだって有り得るでしょう。ですが現役の有名な軍事ライターである「ROCKY」こと江藤巌さんが、Wikipediaの軍艦の事故の項目を見る前から「衝突事故から弾薬の爆発に至った例はあるんですかね? 私は思い出せない」と発言している事に注目して下さい。そんな例は私も知らなかったので、これでプロの意見と一致した事になります。

江藤巌 - Wikipedia

氏のプロフィールについてはこちらを参照して下さい。航空評論家"浜田一穂" 軍事評論家"野木恵一" 宇宙開発評論家"江藤巌" ハンドルネーム"ROCKY(ロッキー)"。全て同じ人です。

tari-G氏へ。「軍艦が衝突事故を起こした際に弾火薬に引火、爆発した例」に心当たりがあるなら、コメント欄にてお知らせ下さい。
00時01分 | 固定リンク | Comment (231) | 軍事 |
2009年11月13日
11月9日の記事で、護衛艦「くらま」の搭載弾薬の火薬量は5トンにも満たず、仮に爆発しても自艦には致命的な損害は出ますが、浅瀬を挟んで数百m先にある陸地まで吹き飛ばすような大爆発は有り得ず、むしろ民間の危険物積載船の方が千トン単位、万トン単位で遥かに大量の危険物を積んでいる為、爆発した際の危険性がより大きい事を示しました。もし大型LNGタンカーが吹き飛んだ場合、核爆発に匹敵するエネルギーが発生します。それに対し戦艦大和ですら搭載弾薬の火薬部分の総量は400トン程度に過ぎず、大和と同サイズの数万トンのLNGを搭載するタンカーの方が遥かに危険である事が分かります。ましてや護衛艦の数トン程度の火薬と、護衛艦と同サイズの数千トンの内航LNGタンカーのどちらが危険かは自明の理です。

護衛艦「くらま」の主砲である127mm砲は、砲弾1発の重量は薬莢込みで50kgありますが、砲弾の炸薬と薬莢の装薬は合わせても10kgで、200発搭載しても火薬の量は2トン程度。そしてシースパロー艦対空ミサイルの弾頭炸薬重量が1発40kg、短魚雷(アスロック含む)の弾頭炸薬重量が50kgです。これらは「くらま」には即応弾で22発、火薬としては1トン程度。

主砲弾を何発積んでいるか、ミサイルや魚雷は予備弾を積むのか、ミサイルやアスロックの固体燃料推進剤は含めるのか、といった変動はあるにせよ、火薬類5トンでもかなり多めに見積もった数値です。

よって、以下のような意見は的外れです。


護衛艦くらま、コンテナ船と衝突、艦首炎上長崎県平和委員会
しかし通行隻数の多い、わずか500メートル幅の狭い海峡を、大量の弾薬・ミサイルを積んだ軍艦が航行していることも問題視しなければならないでしょう。


護衛艦「くらま」に搭載されている火薬類は5トンに満たず、そして現場海域は危険物を千トン単位、万トン単位で積んだLNGタンカーやケミカルタンカーが普段から沢山行き交っていて、それらは護衛艦搭載の数トン程度の火薬類の数千倍から数万倍の爆発力を秘めています。護衛艦に搭載されている危険物を問題視する一方で、民間の危険物積載船の存在を無視するという態度は、海の世界の常識を知らない戯言に過ぎません。

しかし、これに対し奇妙な反論を唱えてきた人が居ます。


はてなブックマーク - くらま事故で海自を無理矢理に叩こうとする三宅勝久の頭の悪い記事が週刊金曜日に掲載 : 週刊オブイェクト
scopedog これはひどい 危険物を安全に輸送するための油送船と危険物を兵器として積んでいる護衛艦の危険度を比較するのに火薬類の重量を使うのが適切とは思えない。 2009/11/12


相変わらずおかしな主張をする人ですね・・・

「危険物を安全に輸送する」
「危険物を兵器として積む」

この二つは別に相反するものではありません。両立しているのです。軍艦は搭載弾薬を安全に運ばなければなりません。何故なら、敵から攻撃を受けた時に弾薬が容易に誘爆されては困るからです。軍艦は危険物を兵器として積んでいるが故に、厳重な防御装置を組み込んでいます。弾火薬庫は何重もの隔壁の奥に配置され、温度が上昇して発火しそうになったら海水の注水を行い暴発を防ぐ事が出来ます。軍艦よりも危険物を積載した輸送船の方が遥かに容易に誘爆し、爆発時のエネルギーも桁違いの規模となります。

これは軍艦と輸送船の構造を見比べれば容易に理解できます。以下にLNG(液化天然ガス)を輸送するタンカーの断面図を示します。

LNG_tanker.png

このように輸送用の船舶は積み荷を満載する為、船体の何処にミサイルが当たっても容易に誘爆を引き起こしてしまいます。危険物積載船は安全の為に二重船殻(ダブルハル)が義務付けられますが、逆を言えば隔壁の数はその程度でしかありません。積み荷を満載する以上、軍艦のように弾火薬庫を船体の奥に配置するというわけにはいかないからです。

そして軍艦の構造はこのようになっています。

Zumwalt_class_destroyer.png

これはズムウォルト級駆逐艦です。前部に2基ある155mm砲の弾薬庫は、艦底部付近に設けられています。前後の弾薬庫がなるべく離された上に微妙にずらされているのは、片方の弾薬庫が爆発しても簡単には誘爆しないようにする設計です。輸送船の積み荷と比べて軍艦の弾薬は少ないので、危険な個所そのものが小さい事が分かります。スペースが小さいので、何重もの隔壁を経た奥に配置する事が出来るので、余裕の少ない輸送船の危険物積載よりも安全性は高いでしょう。

そもそも、軍艦が衝突事故を起こした際に弾火薬に引火、爆発した例は存在しません。冷房設備が無かった、能力が低かった時代に弾火薬庫の温度上昇による爆発事故の例は幾つかありますが、今の時代には見られない事故です。またLNGタンカーが大爆発を起こした重大事故の例も、まだありません。これらの危険性を論じることは杞憂かもしれませんが、もし万が一爆発した場合、軍艦よりもLNGタンカーの方が遥かに重大な事故に発展する事になります。

なお、LPGタンカーやケミカルタンカーならば重大な爆発事故は何例も発生しています。


第十雄洋丸事件の記録
衝突によって第十雄洋丸はリザーブタンク後方付近の外板に大破口を生じ、可燃性の強い液体であるナフサは衝突時の衝撃と火花によって簡単に引火し、一瞬にして大爆発を起こすととともに長大な火柱が立ち上り、ナフサを含んだ炎を浴びたパシフィック・アレスも船全体が猛火に包まれ、船上だけではなく船内までも灼熱地獄と化した。

そして、ナフサは海面にも流れだし、海面火災を起こした現場一帯は文字通りの火の海となっていた。


scopedog氏へ。3000トンのLNGやガソリン、ナフサなどを搭載する民間タンカーよりも、5トンの火薬を搭載する護衛艦の方が危険だと言い張るのでしたら、具体的な根拠の提示をお願いします。
01時18分 | 固定リンク | Comment (218) | 軍事 |
2009年11月12日
関門海峡の護衛艦「くらま」事故で、初期報道では「くらま」は9ノットで航行していたと書いてあったと思い込んでいましたが、今になって調べ直すと幾つかのブログ記事や軍事ジャーナリスト神浦元彰氏のサイトにそう書かれているくらいで、元のマスコミ記事が見付かりませんでした。もしかすると現場海域の最大潮流速度9ノットと護衛艦の速度を勘違いした恐れが、そしてその発信源は神浦氏であるような気がしてきました・・・以前にも似たような事があったような・・・ただ、事故発生当初の報道にこのようなものがありました。


(2009年10月28日23時36分 読売新聞)
この交信は衝突の約2分前。コンテナ船とくらまとの距離は約2キロで、両船は、12〜14ノット(時速22〜26キロ)の速度で進んでいた。


これは事故翌日の読売新聞の記事ですが、護衛艦「くらま」と韓国コンテナ船「カリナスター」は双方とも12〜14ノットだったとあります。何故か初期報道の時点で「くらま」の航行速度に言及している記事は殆ど見当たらず、ネット上ではこれぐらいでした。

ところが10月30日に、ネット上にはありませんが紙面の方でこのような報道が為されている事が分かりました。


護衛艦衝突 「くらま」逆進で惨事回避 艦首十数メートル後方に弾薬庫
2009.10.30 読売新聞 東京朝刊 39頁 (全391字)
海上自衛隊の護衛艦「くらま」と韓国のコンテナ船が衝突した事故で、「くらま」は直前に逆進をかけ、停止寸前の速度でぶつかったため、「あわや大惨事」の事態を未然に防いでいたことが、第7管区海上保安本部(北九州)の調べで分かった。損壊・焼損した艦首部分十数メートル後方の甲板下には弾薬庫があり、捜査関係者は「衝突が激しければ、後方の弾薬庫に引火、爆発していた可能性がある」とし、死傷者が出た恐れもあったとみている。

7管などによると、事故の際、コンテナ船は前方の貨物船を避けようと左に急旋回し、ほぼ真横を向いた状態だった。対向してきた「くらま」はコンテナ船の右舷前部にほぼ直角に衝突し、その場に停止。コンテナ船はV字形に幅約5メートルにわたって損壊した。7管は、この損傷状況から、約16ノット(時速約30キロ)で航行していた「くらま」が直前に逆進をかけ、停止に近い状態になっていたとみている。
読売新聞 2009.10.30


記事本文の方はジー・サーチの新聞・雑誌記事横断検索から、画像の方は頂き物で中部支社発行版です。 

これはどういう事でしょう、10月30日の時点で既に「くらま」は16ノットだったという報道が為されています。しかし、その上で速度について何も問題視されていません。むしろ逆進を掛けて停止寸前の状態にまであったと、「くらま」が必死に危険を回避しようと操船していた事を賞賛する内容です。

ところが、この読売新聞の報道から11日経った11月10日、突如としてNHKが「くらま」は15〜17ノットで安全速度超過の疑いがあると報道を行いました。

(2009/11/10)護衛艦「くらま」に安全速度超過の疑い?

そしてそのタイミングは、韓国コンテナ船「カリナスター」船長が業務上過失往来危険容疑で書類送検されると決まった次の日の早朝でした。

コンテナ船長を書類送検へ 関門海峡の海自艦衝突事故:共同通信

・・・あまりにも不自然です。仮に「くらま」の航行速度が逆進を掛ける直前まで15〜17ノットというのが本当だったとしても、それは初期段階で判明していた事になるのに、問題視されるのが10日間以上のタイムラグが空いているというのは・・・NHKの報道内容は読売新聞の報道の焼き直しに過ぎず、ベクトルを変えただけで、何時でも投入出来ていたはずです。11日遅れでの投入は、タイミングを見計らっていた可能性が高いと判断できますが、しかしこれは安易な陰謀論に繋がるので断定は出来ません。

ですが、結果としてみると、反攻用の素材を11日間温存して出来るだけ効果的なタイミングで放ってきたという、NHKの高度な戦略が見えてきます。まるで実際の戦争をしているかのような錯覚に陥りますが、予備戦力の温存と的確な投入は大変に効果的です。その主張が正しいかどうかはともかく。

なお、このNHKの作戦行動に追従したマスコミは、西日本新聞のみです。ですが、その報道内容には大きな不審点があります。


関門衝突事故 くらまも減速せず 数十秒前まで 危険回避怠る?:西日本新聞
7管が船舶自動識別装置(AIS)やレーダーでとらえたデータによると、くらまと貨物船は衝突の約3分前、双眼鏡などで視認できる約2キロの距離を航行。その約1分後には、後ろのコンテナ船もくらまから視認できる位置に入ったとみられる。だが、くらまは減速せず、衝突約1分前に、衝突現場まで約800メートルに接近。進路にコンテナ船が侵入してきて逆進をかけたが間に合わず、コンテナ船と衝突した。


この数字はおかしいです。衝突1分前に衝突現場まで800m? すると、衝突まで分速800mという事になってしまいます。そしてそれは26ノットという信じられない速度になってしまい、15〜17ノットという数字からも大きく逸脱しています。

西日本新聞の記者は記事を書いていて何故おかしいと気付かなかったのですか? もし26ノットで海峡に突入してきたら関門マーチスが悲鳴を上げて制止していた筈です。そうなれば事故報道は初期から「くらま」非難になって居た筈ですが、しかしそのような事実はありません。

無茶苦茶な数値を報道しないで下さい。
00時39分 | 固定リンク | Comment (184) | 軍事 |
2009年11月11日
最近のホットな中国軍ニュースとして、J-10戦闘機のパキスタン輸出の話と、新開発の第五世代戦闘機(ステルス戦闘機)J-14を近いうちに試験飛行させると、空軍副司令官の何為栄中将が認めた事です。J-10のパキスタン輸出については実は今年4月に合意済みで、パキスタン名「FC-20」という呼称まで決まっています。

J-10戦闘機には今年になって確認された改良型のJ-10Bというタイプがあります。目立った改良点はダイバータレスエアインテークによるステルス性能の向上にあります。J-10Aのロシア風で剛健な雰囲気のエアインテークから、J-10Bは柔らかい丸みを帯びた形状のエアインテークとなり、印象がガラリと変わっています。



J-10Aのダイバータ付きエアインテークが可変式だったのに対し、J-10Bのダイバータレスエアインテークは当然、固定式です。その為J-10Bの最高速度はJ-10Aよりも低下しているでしょうが、ステルス性の向上との引き換えとなります。

j-10a.jpg
※J-10A戦闘機

ダイバータは機体表面との摩擦による空気の遅い流れを吸い込まないように、インテークを浮かせて取り付けたものですが、強い電波反射を生む為、出来れば無くした方が良いです。しかし形状の工夫だけで空気の境界層を制御する事は大変で、アメリカはステルス機であるF-22戦闘機ですらダイバータレス採用を諦めてエアインテーク付近にRAM(電波吸収材)を貼り付けています。次に開発したF-35戦闘機でようやくダイバータレス化を行っています。研究自体はF-16戦闘機の頃からやっていますが、実戦配備用として採用されるのはF-35からです。

中国は先ずパキスタンと共同開発したFC-1戦闘機でダイバータレス化を行い、次いでJ-10戦闘機にも採用しましたが、本当の目的は完全なステルス戦闘機である第五世代戦闘機開発計画J-XXへの習作という意味合いなのでしょう。現在、J-XXはJ-14という名で呼ばれています。

j-xx.jpg

完成イメージCGは未来的過ぎるエースコンバット登場オリジナル機体のような姿ですが、実際に開発中のものとは姿形は懸け離れている筈です。J-14計画は近く試験飛行を行い8〜10年後に実戦配備とのタイムスケジュールですが、開発は恐らく難航して遅延するでしょう。しかし既にステルス技術を習熟しようと、実用戦闘機に少しずつですが反映させている中国は、決してフルスペックのステルス機開発が不可能なのではありません。中国の技術力は着実に進歩しています。

一方で我が国のステルス実験機ATD-X「心神」はダイバータ付きエアインテークです。

atd-x.jpg

日本でもダイバータレス化の研究を行うべきではないかと思います。
03時48分 | 固定リンク | Comment (266) | 軍事 |
2009年11月10日
NHKが護衛艦「くらま」は安全速度超過の疑いがあると報道しています。


護衛艦も速度出しすぎの疑い:NHKニュース
護衛艦は、関門海峡に入っても外洋を航行するときと同じ15ノットから17ノットで航行し、今回、事故が起きた海峡の最も狭い部分で船とすれ違うことを予測していたにもかかわらず、速度を落としていなかったことが新たにわかりました。関門海峡を通過する船舶に適用される港則法は「船舶に危険を及ぼさないような速力で航行しなければならない」と定めていて、海上保安庁では護衛艦が安全な速度を超えて航行していた疑いがあるとみて捜査を進めています。


15〜17ノット? 初期報道では9ノットで航行していたと聞いていましたが、違っていたんですか。潮流は2〜3ノットで西向きに流れていたので、西行航路の「くらま」にとって船足が速くなりがちですが、それにしても・・・海上自衛隊の護衛艦が外洋を巡航する場合は20ノット巡航が基準です。20ノット巡航するのはアメリカ海軍と日本海上自衛隊だけで、15〜17ノットならそれよりも遅い事にはなるわけですが、蒸気タービン艦の「くらま」では20ノット巡航は経済速度ではないので、外洋を単艦で行動していた場合に常に20ノット巡航していたとも限りません。

関門海峡では潮流の速度を3ノット超えて航行するように義務付けられていますが、最高速度制限の明確な数値は無く、カリナスター側も12〜14ノット出している上、カリナスターの突然の急旋回が事故の主原因である事には変わりは無く、「くらま」の速度が事故原因にはなりませんが、9ノットではなく15〜17ノットだったとなると、これまでの予測と変わってくる要素が出てきます。

【追記】

この記事は早朝に急いで書いたものをタイマーセットで正午にUPしたので、少し書き足りないので追加しておきます。

先ず不思議なのは何故今頃になって、という点です。事故関係船の航行速度は真っ先に判明してる筈なのに、このタイミングで新事実として出てきたのは何故か。

コンテナ船長を書類送検へ 関門海峡の海自艦衝突事故:共同通信

韓国コンテナ船カリナスター船長の書類送検が決まり、門司港管制官は立件が見送られたのと同時に出て来るとは・・・結果的に、事故の主原因が韓国船にあることは依然として変化は無いものの、韓国船が悪いという印象を弱める効果が生まれています。

また15〜17ノットという数値が事実だとすると、初期報道にあった9ノットという数値は一体なんだったのか。まさか9ノット=17km/hなので、単位を見間違えたなんて流石にありえないですし・・・


神浦元彰 日本軍事情報センター 2009.10.28
護衛艦「くらま」の速度は9ノット(約時速15キロ)というから、港則法にのっとり航行していたと推測できる。


幾ら逆神がこう発言したからといって、誤神託は既に起こった事象を覆せるような神通力は無い筈で・・・いや、まさか・・・
12時00分 | 固定リンク | Comment (152) | 軍事 |
韓国コンテナ船「カリナスター」の船長は業務上過失往来危険容疑で書類送検される一方で、海上保安庁の関門マーチス管制官については罪を問わない事になりそうです。


関門海峡衝突事故:管制官を立件せず…海保方針 - 毎日新聞
関門海峡で海上自衛隊の護衛艦「くらま」と韓国船籍のコンテナ船「カリナスター」が衝突した事故で、直前にカリナスターへ針路変更を助言した関門海峡海上交通センター(北九州市)の管制官について、海上保安庁は刑事責任を問わない方針であることが、捜査関係者への取材で分かった。指示の法的権限がなく、過失に当たらないと判断した模様だ。

門司海上保安部などは、カリナスター側が前方をよく見ていなかったことが事故につながったとみて、韓国人船長(44)を業務上過失往来危険容疑で書類送検する方針。


海上自衛隊は悪くないし、海上保安庁も悪くない、事故の主原因は韓国船ということで落ち着きそうです。残った問題は護衛艦「くらま」の修理費用を「カリナスター」船主の南星海運がどれだけ払ってくれるのか、という点に絞られました。実際に払うのは保険屋さんなので大丈夫とは思いますが・・・過失割合がどういう配分になるかです。お互いに航行中の場合、過失割合10:0になるケースはよほど特殊な状況に限られていますから、どこまで海上自衛隊側の主張が認められるかです。22DDHの予算通過にもどのように影響が出てくるのか、護衛艦側に落ち度が無かった以上、これはあまり関係は無いとは思いますが・・・
06時25分 | 固定リンク | Comment (74) | 軍事 |
2009年11月09日
関門海峡の事故で護衛艦「くらま」に落ち度は無く、韓国コンテナ船「カリナスター」の無理な追い越しが事故の主な原因だった事は既に判明しています。しかしそれでも無理矢理に自衛隊を叩こうと、無茶な記事が「週刊金曜日」に掲載されました。以下はその記事を書いたジャーナリスト三宅勝久氏のブログからです。


護衛艦くらまの事故について:三宅勝久ブログ
【護衛艦「くらま」あわや爆発か/日本一危険な航路を選んだ怪】

「関門海峡は日本中で一番危険な海域。なぜ鹿児島の大隅半島を回るルートじゃなくて、危ない内海航路を通ったのか。同僚らも言っていますよ」

関門海峡で一〇月二七日夜、海上自衛隊の護衛艦「くらま」(基準排水量五二〇〇トン、艦長柏原正俊一佐)と韓国籍のコンテナ船(総トン数七四〇一トン)が衝突、双方が炎上した事故について、ある現職の三等海曹は疑問を口にする。

海上幕僚監部や佐世保基地の説明によれば、「くらま」は相模湾での観艦式を終えて佐世保基地を目指して太平洋を航行、四国沖から進路を北にとって内海に入り、豊後水道を通って関門海峡に差し掛かったところで事故に遭った。

現場は「早鞆瀬戸」と呼ばれる関門海峡の最狭部。潮流も速く操船が難しい場所だ。見通しも悪い。近年、通峡経験の少ない外国船が増えたこともあって事故が増えており、第七管区海上保安部(七管)によれば過去五年で九件の衝突事故が起きているという。この危険海域に大型船三隻が錯綜する格好で事故はおきた。

関係者の証言によれば、「くらま」には砲弾や魚雷、地対空ミサイルなどの弾薬類も積まれている模様だ。七管の職員が本音を漏らす。

「弾薬に引火しなかったのが不幸中の幸いです」

事実、火災を起こした艦首付近には速射砲の弾薬庫があり、一時温度が上がったとも伝えられる。 「艦首ではなく船腹にぶつかっていたら爆発したり沈没した可能性はあった」と前述の自衛官はいう。爆発していれば乗組員だけでなく対岸の民家や関門橋、陸上施設の被害は必至だ。危険を避けるもっとも確実な方法が、関門海峡を通らず、九州南部を回って佐世保に入る南回り航路である。

だが「くらま」はあえて危ない関門海峡を通った。すこしでも早く入港したかったのか、あるいは訓練だったのか。関門海峡の通過を誰がいつ決断したのか。また、同行の船はいたのか。他の船はどのルートを通ったのか。海上幕僚監部は「海保の捜査中でわからない」というばかりだ。

あるいは、早鞆瀬戸を通る際「行会調整」と呼ばれる交互通行を実施する方法もある。七管の説明では、総トン数一万トン以上の船、または同三〇〇〇トン以上の油送船は行会調整が義務づけられている。だが護衛艦の場合、石油以上の「危険物」を積んでいたとしても対象外だという。

関門海峡はイージス艦も通っている。「くらま」の事故が不可避だったとすれば、迎撃ミサイルを積んだ新鋭艦とて同じ。市民生活の目の前で大事故を起こし得るということである。

三宅勝久・ジャーナリスト

週刊金曜日2009年11月6日号


あまりにも頭が悪い内容の記事で呆れるより他は無いです・・・「くらま」の操船に難癖を付ける事が出来ないからと、関門海峡を通った事自体を問題視しようだなんて、なんて馬鹿げた主張なのでしょう。海上交通の事情を何にも理解していないとしか言いようが無く、証言者の「ある現職の三等海曹」は存在自体が疑わしいです。

なぜ関門海峡を通ったと言われても、それが普通の航路だったのだから文句を言われる筋合いはありません。鹿児島県の大隅半島を回る航路で佐世保港に帰ろうとすると、瀬戸内海を通過する航路よりも1.5倍近く時間と燃料代が掛かってしまいます。

こういう事を言ってのける人は、ピースボートがソマリア沖で海上自衛隊の護衛を受けた事をどう認識しているのでしょうか?

『ソマリア沖は世界中で一番危険な海域。なぜ南アフリカの喜望峰を回るルートじゃなくて、危ないアデン湾の航路を通ったのか。お仲間らも言っていますよ』

しかし関門海峡は交通の難所であっても海賊が出るわけではないのです。普通の海上通航ルートに過ぎず、ここを避けて通れとか、後付けで無茶苦茶な事を言われてもお話になりません。

護衛艦は危険な弾薬類を積んでいるから狭い水路は通るべきではない? 現場海域は弾薬や石油よりも危険なLNG(液化天然ガス)を積んだ船が普通に航行していますが何か。危険な液体化学薬品を積載するケミカルタンカーだって普通に航行していますが何か。工業用の毒性ガスや強酸、強アルカリ性の薬品などをどうやって運んでいると思っているのでしょうか。関門海峡を「危険物積載船」がどれだけ航行しているかも知らないのですか。それとも、それらの船に対しても関門海峡を通行するなとでも言うのでしょうか。

関門海峡は1万トン以上の大型船と3000トン以上の危険物積載船には水先案内人を同乗させて行会調整を行いますが、今回の事故では護衛艦もコンテナ船も貨物船も該当しません。護衛艦搭載の弾薬類は、弾頭炸薬と装薬、推進薬の量、つまり火薬類(5インチ砲、対潜魚雷、対空ミサイルの火薬)を全部合わせても5トンに満たないからです。弾薬を貨物船に集中して載せた場合は危険物積載船に該当しますが、通常の戦闘艦はそれほど多くの危険物を搭載しておりません。意外かも知れませんが、戦艦大和ですら搭載する約1000発分の主砲弾の装薬量は合計約360トン、46cm砲弾内部の炸薬を含めても約400トン相当の火薬しか積載していないのです。

なお第二次世界大戦でドイツ空軍のハヨ・ヘルマン大佐が爆撃機Ju-88のパイロット時代の1941年にギリシア戦で、夜間に港へ機雷を散布する任務なのに命令違反を承知で250kg爆弾をついでに搭載し、任務終了後に適当な船に投弾したところ、偶然にも弾薬を満載していた貨物船であった為に、周囲の船舶10隻を全て巻き添えに吹き飛ばす大戦果を挙げ、命令違反は不問にされたという漫画みたいなエピソードがあります。この時の貨物船は数千トン以上の火薬を搭載していた筈で、このように危険物を満載した輸送船の方が戦闘艦よりも遥かに危険な事は自明の理です。

軍艦は危険な弾薬を搭載している、だけど民間船は安全だ、という認識は誤りです。軍艦に搭載されている火薬類の量は意外と少なく、危険物を積載している民間船の方が遥かに危険である、という事が言えます。

関門海峡は、3000トン未満の危険物積載船には水先案内人を同乗させて行会調整を行う必要がありません。そして護衛艦「くらま」の危険物積載量は火薬類では5トンに満たず、民間の危険物積載船よりも積載量は著しく少ないのです。「くらま」よりも1000トンのケミカルタンカーの方が引火した際の被害は遥かに大きいでしょう、それでも事前に行会調整を行う義務はありません。「くらま」は基準排水量5000トンなのに3000トン以上の危険物積載船に該当しないのは、輸送用の船舶では無い為、3000トンの輸送船よりも多くの貨物を搭載する事は絶対に不可能だからです。輸送能力からすると数百トン級の小型船よりも劣ります。

ジャーナリスト三宅勝久氏は、護衛艦は弾薬を搭載した危険な存在だと主張したいようですが、海の世界ではもっと危険な荷物を何千倍と積載した民間輸送船がウロウロしているのが実状です。一度、香川県の丸亀港に行って見ると良いです。この港は危険物積載船の溜まり場で、LNGタンカーも良く来ています。そしてその多くが、関門海峡よりも危険な渦潮の鳴門海峡を通過して来ています。

また、LNGタンカーはこれまで大事故を起こした事は世界的に見てもまだありませんが、もし事故を起こした際の被害は凄まじいものになります。


米国で増える液化天然ガス施設、テロ対策は万全?(上) | WIRED VISION
LNGの輸送に使われるタンカーの危険度を総合的に検証した最近の政府報告書は、テロリストはタンカーに大きな穴を開ける能力を持つと結論づけた。つまり、その穴からLNGが漏れ出して爆発し、そこから約500メートルの範囲にいる人々に重傷を負わせ、建物を吹き飛ばす可能性があるということだ。そこから1.6キロほど離れた場所にいる人でさえ第2度の火傷を負う、と報告書には書かれている。


どれくらいのLNG流出量を想定しているのかこの記事には書かれていませんが、半径500mを吹き飛ばし、1.6km先の人間に第2度の火傷を負わせるという威力は、10キロトンクラスの核爆発に相当する為、数万トンクラスの大型LNGタンカーを想定したものだと思われます。このサイズの船は喫水の関係で関門海峡には入れませんが、小型の内航用LNGタンカーやケミカルタンカーは普通に通っています。そして3000トンのLNGタンカーが事故を起こして吹き飛んだ場合、護衛艦の搭載する数トン程度の火薬類とは比較にならない大被害をもたらす事になるでしょう。

ジャーナリスト三宅勝久氏が週刊金曜日に寄稿した記事は、海の事情を何も理解していない独り善がりな内容で、碌な取材を行っているとは思えず、程度の低いド素人が脳内妄想で書き上げた、無理筋な自衛隊叩き記事でしかありません。いいですか、関門海峡は一般的な航路で其処を通る事自体は当たり前の話なんですよ? なんで其処が問題視されなくちゃいけないんですか? どうしてそこまでして無理矢理にでも自衛隊を叩くのですか? 週刊金曜日の読者ならこれでも喜ぶから良いだろうと? それは読者をあまりにも馬鹿にしています。幾ら自衛隊に批判的な左翼誌であっても、そこまで程度の低い読者は沢山居る筈がありません。
00時31分 | 固定リンク | Comment (163) | 軍事 |
2009年11月08日
東海大学の山田吉彦教授(海賊問題のプロだが海難事故は専門外)は護衛艦「くらま」の事故に関して、「くらま」はもっと右に寄れた筈、とNHKで主張しました。しかし、この山田教授の主張は全く持って的外れであると言わざるを得ません。

何故ならコンテナ船「カリナスター」は急激な左旋回を行い、護衛艦「くらま」の針路に対して直角に近い角度で衝突している為、仮に「くらま」が座礁の危険を冒して航路の右端ギリギリを航行していたとしても、結局は衝突は避けられなかったからです。海上保安庁の説明では「くらまと衝突しなければカリナスターは座礁していた」とすらあり、「カリナスター」が右へ転舵して針路を戻そうにも、あの狭い海峡の中では物理的な余地が無かった事が語られています。

いいえ、それだけではありません。

もし山田教授の言う通りに「くらま」が航路の右端ギリギリを航行していた場合、この事故はより悲惨な状況になっていた事が、ほぼ間違いありません。

以下にその想定を行いました。

もし右端を通っていたら・・・

かなり適当な図で角度や距離がいい加減で申し訳ありませんが、もし「くらま」が右側の浅瀬ギリギリを航行していた場合どうなるかを、図に表わしてみました。

まず現場の海峡は幅600m、浅瀬を除いて航路として使える幅は500mです。この半分の250mが片側通航分の幅となります。そして「くらま」は全長159mです。「カリナスター」は全長127mです。

実際の事故では、左へ急旋回した「カリナスター」が「くらま」の航路に進入し、船体の横を「くらま」に向けて立ち塞がるような格好になりました。そして「カリナスター」の右船首付近に「くらま」の艦首が衝突しています。そしてこの衝突場所は、大雑把になりますが西向き航路の中央部分で、片側通航分の幅250mの半分、125mの所です。つまり航路全体の中央部分から下関側へ125m、岸寄りの箇所です。

ではもし、「くらま」が座礁の危険を冒してギリギリまで岸寄りに詰めたとすると、もう125m寄る事が出来ます。ではこの状態で、「くらま」の針路に直角に突っ込んでくる「カリナスター」を避けることができるでしょうか?

この場合、実際の衝突事故よりも125mの距離が稼げています。しかし「カリナスター」は殆ど減速をしないまま突っ込んできており、12〜14ノットで突進してきます。仮に12ノットとします。125mを約20秒でやってきます。「くらま」は9ノットで航行中、「カリナスター」の異常な左転舵に気付き、後進を掛けています。

もし「くらま」が減速せずに9ノットで走ったままだった場合、20秒間に92m進みます。そして「くらま」の全長は159mです。つまり、この場合は「カリナスター」が「くらま」の横腹に突っ込んで来ます。では「くらま」が減速に成功し、平均的に換算して半分の4.5ノットまでで落ちたとして計算してみましょう。20秒間に46m進みます。やはりこれも真横から「カリナスター」に突っ込まれてしまいます。この更に半分の平均2.25ノットまで落ちたとしても、23m進んで5インチ砲直下付近にぶつかってしまいます。自分より重いコンテナ船が真横から突っ込んでくるわけですから、最悪の場合は「くらま」は大破横転の可能性すらあり、弾火薬庫に当たれば爆発、缶室が破壊されて蒸気が噴き出していたら、多数の犠牲者が出る事になっていたでしょう。

つまり「カリナスター」が真横から突っ込んでくる限り、「くらま」が横方向に多少の余裕があっても無関係にぶつかってしまいます。両船舶が交差コースに乗っているわけで、仮に「くらま」が停止する事に成功しても船首がぶつかる事になります。

この場合、減速ではなくむしろ増速して振り切るしかないでしょう。「くらま」の全長159mを、猶予の20秒間で走り切れば衝突を回避できます。20秒間を平均16ノットで走り抜けばよいです。しかし「くらま」は9ノットで走っていました。加速の具合にもよりますが、平均16ノットを出すには終速を25ノット近くにしないと達成できず・・・蒸気タービン艦で20秒間で9ノット→25ノットの加速は、到底不可能です。「カリナスター」が左へ急旋回し始めた直後に気付いて増速を掛けたとしても、合計40秒程度では厳しいでしょう。衝突しそうだと判断した段階で、減速で回避せずに増速して回避しようと決断するのは、よほど加速性能の高い小型高速船でなければ出来ない話です。

以上が「くらま」がもし浅瀬ギリギリの右端を航行していたら?という仮定です。減速回避では船体真横に激突されてしまい、増速回避も間に合わない、そして浅瀬ギリギリなのでこれ以上は右へ舵は切れない・・・真横から突っ込まれたら実際の状況よりも危険な状態に陥ってしまいます。

実際の事故では、コンテナ船「カリナスター」は前方の貨物船「クィーン・オーキッド」の右後方から左へ急旋回している為、護衛艦「くらま」からすれば突然飛び出してきた形になり、緊急対処は困難です。猶予は20秒程度しか無く、どうにもなりません。右へは浅瀬まで125mしかなく、しかも「くらま」からすれば左カーブになるので、右へ転舵すれば座礁は避けられません。座礁覚悟で右旋回したところで、「カリナスター」とぶつかり合いながら両方とも座礁する可能性が高かったでしょう。

もし「カリナスター」が真横から突っ込んでくるのでは無く、「くらま」と正対して衝突しそうだったら、右へちょっとズレるだけで回避できるのですが、そうではなかったのです。
14時56分 | 固定リンク | Comment (62) | 軍事 |
2009年11月04日
東海大学の山田吉彦教授(海賊事件の専門家であるが海難事故の専門家ではない)が自身のブログ「海賊日誌」において、NHKでの関門海峡事故のコメントに関する批判への反論を行っています。


関門海峡の事故-海賊日誌
この事故の原因として関門マーチスの問題を指摘した。海保の仕事を支援してきた立場として、あえて言及したのである。しかし、コンテナ船の無理な追越が第一の原因であると考えている。おそらく3ノットほどの潮流があり、コンテナ船をより下関側に流したのである。
また、事故の翌日、AISのデータを確認し、コンテナ船と自衛艦の衝突位置を特定した。自衛艦が中央によりすぎていることは他船の航跡から判断できる。しかも4分前にはコンテナ船の変針が確認できたはずである。海上衝突予防法において後進をかけた船舶は、汽笛短音三回鳴らすことが義務つけられているがなぜ鳴らさなかったのだろうか。
海保、コンテナ船、自衛艦 多かれ少なかれ、それぞれの問題があるようだ。
一部の自衛隊の支持者は私の見解に不満のようだが、事実を検証し確認してゆくことが私の役割であると考えている。事故の原因を冷静に判断することが、事故の再発を防ぐことにつながる。
6月海賊対処法の参議院外交防衛委員会で、自衛隊の活動に期待を寄せ派遣の正統性を述べた。自衛隊の正統な認識を得るためにも、客観的な判断を述べているのである。私たちの国の安全を守ってくれている自衛隊にある程度高度な能力を求めてはいけないのだろうか。


それではこの反論に対し、「一部の自衛隊の支持者」によるツッコミを開始します。

>おそらく3ノットほどの潮流があり、コンテナ船をより下関側に流したのである。

私も10月28日の時点では潮流の影響が濃いと思っていました、しかし10月29日にコンテナ船「カリナスター」の衝突時の姿勢状況が判明するに至って、「潮流によって流された影響が主原因ではなく、単純にコンテナ船「カリナスター」の急旋回が衝突事故の原因」と判断するようになりました。あの狭い海峡部分で護衛艦「くらま」の針路に対し直角に曲がっていったのは潮流だけでは説明できません。

>自衛艦が中央によりすぎていることは他船の航跡から判断できる。

これまでの報道では貨物船「クィーン・オーキッド」が中央寄りに航行していたことは報じられていますが、「くらま」についてはそのような指摘はこれが初めてです。山田教授が両者を混同している可能性はありませんか? もし「くらま」にそのような問題点があったら、マスコミ報道がこれまで放って置く筈は無かった筈です。

kouhyouzu.jpg
※西日本新聞から引用

またこの状況下で護衛艦「くらま」が座礁の危険を冒して右に寄っていたところで、コンテナ船「カリナスター」は「くらま」の針路に対して直角に曲がって立ち塞がっているので、衝突はどちらにしろ避けられません。また「くらま」が右に寄るのではなく右に旋回していたら、確実に座礁します。「くらま」からすると事故現場は左カーブだからです。

>しかも4分前にはコンテナ船の変針が確認できたはずである。

10月30日の記事でも触れましたが、4分前はまだコンテナ船「カリナスター」は変針していません。関門マーチスから「前方の貨物船の左から抜いて」と誘導を受けたにも拘らず、コンテナ船「カリナスター」は事故の寸前まで前方の貨物船「クィーン・オーキッド」の右後方に付けていた事が判明しています。車で言えば追い越し車線ではなく走行車線に居たわけで、そんな状況からいきなり対向車線に飛び込んでくるのを予測しろというのは不可能です。コンテナ船「カリナスター」が貨物船「クィーン・オーキッド」とぶつかりそうになり、左へ急変針を始めたのは護衛艦「くらま」と衝突する、僅か数十秒前の出来事でした。

>海上衝突予防法において後進をかけた船舶は、汽笛短音三回鳴らすことが義務つけられているがなぜ鳴らさなかったのだろうか。

汽笛を鳴らすと艦首付近に居た乗組員への退避命令が掻き消されて伝わらなくなる為、まず乗組員を後方に退避させるのを優先していたからです。そして汽笛を鳴らす余裕も無いまま衝突しています。これは28日の防衛大臣による臨時会見でそのように説明されています。・・・まさか自衛隊側の言い分を聞かずにNHKでコメントしていたとは、思いませんでした。

大臣臨時会見概要 平成21年10月28日(11時19分〜11時30分)

またこの場合の汽笛は自動車で言うクラクションにあたりますが、これはある程度余裕が無いと意味が無いもので、もうすぐ衝突するという状況で鳴らしたところで事故回避には何の役にも立たない筈です。

それとも山田教授は、退避命令が掻き消されてもいいから、タイミング的には手遅れで意味の無い汽笛を鳴らせと仰るのですか? 汽笛の話を持ち出して護衛艦「くらま」に問題があるかのような言い草は、事故をどうすれば回避できたかという視点から酷く懸け離れたものに感じます。

私は、汽笛を鳴らす事よりも乗組員の退避を優先させた「くらま」艦長の判断は正しかったと思います。山田教授の見解は、違うのでしょうか。それとも「汽笛を鳴らしていたら事故は回避できていたはずだ」とでも仰られたいのでしょうか。

山田教授、貴方の反論はそれで本当に宜しいのですか? 汽笛を鳴らさなかった事を問題視すべきと、本気で思っているのですか?
03時05分 | 固定リンク | Comment (271) | 軍事 |
2009年11月02日
今日の朝日新聞の記事で、関門海峡の護衛艦「くらま」炎上事故の件について、「くらま」を擁護する水先案内人の弁が掲載されていました。


関門海峡の船舶往来、15年で3割増 危険性指摘する声:朝日新聞
関門海峡で20年以上水先案内をしていた男性は「船の数が増えたこともあり、ルールを守らない無免許運転のような外国船が目立つようになった」と言う。今回事故のあった早鞆(はやとも)瀬戸で航路の右端を西へ通航していると、対向する船が「左側通航」をしてくるため、ぶつかりそうになる。「右側は浅瀬だから右には舵(かじ)を切れない。速度を落として、相手がよけてくれるのを待つしかなく、お手上げ状態です」という。



今回の事故のあった早鞆瀬戸の航路を西へ通行していたのは、護衛艦「くらま」です。右側は浅瀬で右に舵は切れず、速度を落とす以外に対処の方法は無く、「くらま」はお手上げ状態だったという事です。

・・・で、どうして事故当時に西行していたのは「くらま」だと朝日新聞は記事内にはっきりと書いてくれないのでしょうか? 貴重な証言でしょう、NHKで東海大学海洋学部の山田吉彦教授が「護衛艦はもっと右に寄れた筈」と解説していたのを真っ向から否定する内容です。勿論、この水先案内人の証言が無くても浅瀬の存在は海図や衛星写真を見れば誰にでも分かる事で、「くらま」が右に緊急回避する余地が無かった事は自明の理です。

山田教授の主張は全く理解できませんし(そもそも山田教授は海賊問題の専門家であって海難事故の専門家ではないのに使ったNHKがおかしい)、水先案内人の証言を載せておきながら、それが「くらま」の状況と合致している事を説明しない朝日新聞の書き方も残念です。

とはいえ、朝日新聞は今回の事故の件では、他紙と比べれば唯一、韓国船の非を初期報道から言及しており、今日の記事も「くらま」の立場を有利にする水先案内人の証言が掲載されているわけで、結果として自衛隊に最も擁護的です。事故初期報道で「自衛隊の不祥事」と書いてしまった産経新聞と比べれば雲泥の差となっています。

【護衛艦衝突・炎上】北沢防衛相「遺憾と言うしか…」 海幕長が“助け舟”も:産経新聞
>政権交代後に初めて直面した、自衛隊の重大な不祥事。

普段は自衛隊を応援している積もりらしいですが、肝心な時にまるっきり役立たずの産経新聞・・・

一方で朝日新聞の事故報道にも問題が無いわけではありませんが、初期報道で韓国船の船長の証言を取ってきたり、今回の水先案内人の証言など、護衛艦「くらま」に非が無い事を証明できる素材を提供してくれている事は確かです。
23時13分 | 固定リンク | Comment (186) | 軍事 |
2009年10月30日
護衛艦「くらま」と衝突した韓国コンテナ船カリナスターは、門司港管制の誘導とは違う行動を取っていた事が分かりました。


関門衝突事故 コンテナ船減速せず 貨物船追い越し 誘導と違う航路:西日本新聞
7管関係者によると、衝突の数分前、貨物船の右後方にいたコンテナ船は、センターから左から追い越すよう誘導された。その際、貨物船は航路中央付近におり、左から追い越すには(1)左にかじをきり、対向するくらまの進路に進入する(2)かじをきらずに減速し、貨物船が右に寄って左側が空くのを待つ‐の選択があった。

7管の調べで、船舶自動識別装置(AIS)などの記録から、貨物船は関門橋まで航路中央付近を航行し、コンテナ船は、貨物船の2倍以上の速度をほぼ維持し、進路変更しないまま航行を続けていたことが判明した。

2船は関門橋の下付近で最接近。その際、コンテナ船の船首は、貨物船の船尾右側に位置していた。貨物船は、航路中央を航行し続けて減速しながら右に進路変更し始めており、コンテナ船は貨物船に追突寸前となり、左へ急旋回。前方から直進してきたくらまと衝突したとみられるという。

7管関係者は「貨物船が誘導後すぐに右に寄らなかったのは一般的には考えられない。ただコンテナ船が減速せず、右から追い越すコースをとり続けたことが事故につながった可能性がある」とみている。


護衛艦衝突で貨物船を調査:中国新聞
船長は関門海峡海上交通センター(北九州市門司区)から「コンテナ船が右舷側から追い越す」と連絡を受けたが、ゆるやかに右舷側に針路を取る航路のため「右では困る」と応答。その後、連絡はなかったと説明したという。

さらに、船長は「コンテナ船はかなりの速度で近づいてきた。警笛は聞こえたが、どの船へのものなのか分からなかった」とし、現場の海域は「狭く、航路も直線ではないので針路変更は危ない」と指摘したという。


【登場船舶と関連】
○護衛艦「くらま」・・・基準排水量5200トン。
○貨物船「クイーン・オーキッド」・・・9046総トン。
○コンテナ船「カリナ・スター」・・・7401総トン。
○関門マーチス・・・門司港にある海上交通情報センター。

kanmonjiko.jpg
※読売新聞からの引用

最初にこの図を見て位置関係が間違っていると感じていたのですが、西日本新聞の記事を読んで理解しました。この図は正しかったのです。そしてこれから言える事は、カリナスターはクィーン・オーキッドを左側から追い抜くつもりが全く無く、関門マーチスに左から抜くように言われていたのに、その準備を全くしておらず、クィーン・オーキッドの右後方の位置に付けたまま進路を取り続けているのです。減速もしていません。そしてクィーン・オーキッドが緩い右カーブを曲がる為に右寄りに進路を変えた時に、右後方に居たカリナスターの針路を塞ぐ形になり、衝突しそうになったカリナスターは急激に左へ転舵して、「くらま」と事故を起こした事になります。

結論から言えば、カリナスターは最後の瞬間までクィーン・オーキッドを右から抜くつもりだったようです。関門マーチスの言う事を聞いた上で、無視しているとしか思えない行動を取っています。それなのに事故後の言い訳は「関門マーチスに左から抜けといわれた」ですか・・・そんな出鱈目が通用するとは思わない事です。

関門海峡衝突炎上事故:内航.com

内航.comさんの昨日の記事に、より詳しい時系列が載っています。
23時58分 | 固定リンク | Comment (261) | 軍事 |
2009年10月29日
関門海峡の事故で海上自衛隊の護衛艦「くらま」に落ち度が無いと判明した後に、事故原因を門司港管制側に擦り付けようとする動きもありましたが、今度は韓国コンテナ船「カリナスター」の異常操舵が明らかになりました。


海自護衛艦衝突:韓国船、関門橋の真下で急旋回 - 毎日新聞
海上自衛隊の護衛艦「くらま」(5200トン)と韓国船籍のコンテナ船「カリナスター」(7401トン)が関門海峡で衝突した事故で、カリナスターは関門橋の真下付近で進行方向に向かって左(山口県下関市側)へ急旋回し、衝突時はくらまの航路にほぼ直角に交わる方向を向いていたことが、第7管区海上保安本部の調べで分かった。くらまと衝突していなければ、座礁したか下関側の岸壁にぶつかっていた可能性があった。7管はカリナスターに操縦ミスがあった可能性もあるとみて、捜査している。


コンテナ船、大きく急旋回=「追い越しとは考えられない」−事故直前、追突回避か:時事通信
海上自衛隊の護衛艦「くらま」と韓国籍のコンテナ船「カリナスター」が関門海峡で衝突した事故で、第7管区海上保安本部がレーダー情報などを解析した結果、衝突数十秒前にコンテナ船が不自然な急旋回をしていたことが29日、分かった。門司海上保安部は、前方の貨物船への追突を避けられず直前に大きくかじを切った可能性もあるとみて、原因を詳しく調べる。

コンテナ船側はこれまで、「港湾管制当局の指示で左側から、前方の貨物船を追い越そうとした際に衝突した」と説明していたが、7管幹部は直前の急旋回について「通常の追い越しとは考えられないぐらいの大きな旋回だ」としている。


左に曲がったまま進路を右に戻せなかったのは、「前方船とぶつかりそうになって慌てて至近距離から曲がったので角度が大きくなり過ぎて、当然、時間的余裕も残されて居らず、更に潮流の影響も受けて、どうにもならなくなってしまった」という、潮流の影響はあったものの主要因ではなく、韓国コンテナ船「カリナスター」の操船ミスが事故の原因であることが濃厚となりました。

(2009/10/28)くらま事故での韓国船カリナスターの動き

昨日の記事の解説では「潮流に流されてしまったせいだ」という言い逃れもある程度出来ましたが、いまや潮流の影響はあったにせよ主要因ではないので、カリナスターの操船ミスの問題が重要視されます。また「管制は追い越しを中止させるべきだった」という指摘も、カリナスターが実際には前方船を追い越したのではなく緊急回避していたとなると、減速させる事も時間的に間に合わなかったとなります。また「くらま」が居なければカリナスターはそのまま陸地に突っ込んで自爆事故を起こしていたというのは、要するにあんな狭い場所で急激な転舵を行ってしまえば、再変針を行える距離的余裕そのものが残されていないということです。もうどうにもなりません。

関門橋
※こんな場所で直角になるまで急旋回。信じ難い暴走。

それにしても、こんな狭い海峡の航路内で船体が真横になるだなんて・・・自動車がハーフスピンしながら中央分離帯を乗り越えて対向車に突っ込んでいくようなものです。最初の記事で紹介した霞橋の事故と本当に良く似た状況だったんですね。こんなの対向車は避けようがありません。狭くて危険な海峡部分で、追い越しにろ緊急回避にしろ、行ってしまった時点で他者を巻き込む危険性が出てきます。「くらま」は酷い貰い事故に遭う事になってしまいました。果たしてちゃんと直せるでしょうか。


江田島の「はるな」:呉の護衛艦撮影日記
さて、本日はみかんを求めて江田島に行ってまいりました。
「はるな」は現在、江田島の解体工場にいます。
外観からはまだ解体は進んでいないようです。


上記ブログでは、除籍されて江田島にドナドナされていったヘリコプター護衛艦「はるな」の様子が写真付きで紹介されています。10月28日時点では本格的な解体作業には入っていない模様です。

艦首部切断、挿げ替え手術を行って「くらま」に移植することは可能かもしれません。
23時29分 | 固定リンク | Comment (231) | 軍事 |
2009年10月28日
護衛艦「くらま」と韓国コンテナ船「カリナスター」の衝突事故は、カリナスターの前方に居た貨物船の速度がかなり遅かった為に(カリナスター12ノット、貨物船が6ノット)、これを追い抜こうとしたカリナスターが左側に転舵(取り舵)して起こした事故だと分かりました。

関門海峡海上交通センターは、抜く場合には左側から抜けるようにカリナスターに助言しています。こんな狭い海峡で右側に寄ってしまうと、陸地に接近し過ぎて直ぐに浅瀬で座礁してしまいます。カリナスター側の当初の証言では「右側から抜きたい」と管制側に打診しているようで、管制側から「抜くなら左側から」と返事を受けていますが、右側から抜かせなかった事自体は妥当な判断でしょう。しかし、狭い海峡では対抗船がいる場合は追い抜きはすべきでなく、前方船が故障していた場合などで極端に遅い場合以外は、追い抜き自体を止めるべきだったかもしれません。今回の場合は前方船は6ノット、遅いには遅いですが微妙です。管制側の助言は法的拘束力は無く、最終判断は各船長に委ねられます。

kuramajiko3.jpg
※この図はNHKカメラの位置などを元にした推定図であることに注意

問題はカリナスターが遅い貨物船を追い抜いた後に、進路を戻す事が出来ずにそのまま「くらま」に突っ込んでいる事です。管制側は「前方から護衛艦が接近中なので注意せよ」とカリナスターに伝えているにも拘らず、カリナスター側も「くらま」を認識しているにも拘らず、舵の修正が出来ていません。

これはカリナスターが強い潮流に押し流されて、舵の修正が遅れた可能性が高いです。

moji1.gif

moji2.gif

門司海上保安部・早鞆瀬戸における航法(港則法に基づく特定航法)より

つまり、最初は前方船を右側から追い抜こうと考えていたカリナスターが、管制側から左側から抜けと助言されて急遽変更、前以て予想していなかった潮流に対応できず舵の修正が遅れ、進路を戻す事が出来ずに「くらま」と衝突した可能性が高くなります。

門司潮流
※今回の事故よりも遥か以前に書かれた図である事に注意

門司海上保安部の「早鞆瀬戸における航法」を良く把握していれば、左に転舵した後に潮流に流される事を計算に入れて、当て舵(カウンターステア)を早めに入れるのですが、カリナスターの船長はその事を良く把握しておらず、とっさの判断変更で対応が遅れたのでしょう。

しかし前方船を右側から追い抜けば座礁は必至で(レーダー見ている筈なのになんで陸地に気付かないんだろう?)、追い抜くなら左から行くしかないわけで、その後の進路修正に失敗するとは・・・結局の所、カリナスター側の操船ミスであることに間違いは無いでしょう。事故を回避するとしたら、最初に述べたように管制側が追い抜き行為自体を中止させてカリナスターに速度を落とさせるという方法がありますが、海峡部分で最もくびれた事故現場付近は潮流が一番早く、下手に速度を落とすとそれこそコントロールを失う可能性もあります。

どちらにせよ海上自衛隊の護衛艦「くらま」側に非はありません。「くらま」の右側は陸地が近く浅瀬が広がっており、これ以上回避する余地がありませんでした。「もっと右に避けられた筈だ」という主張をする者が居るようですが、理解しがたいです。衛星写真からも浅瀬の存在は分かる筈ですし、航路図には細かい水深も明記されている筈です。回避の余地などありません。

もし「くらま」がとっさの判断で規則とは逆の左側へ回避行動を取っても、今度はカリナスターが追い抜いた遅い貨物船とぶつかっていたでしょう。緊急手段として全力で後進を掛けて停船させる方法は、「くらま」は取っています。右側に回避しながら減速しています。つまり「くらま」は取れるべき回避手段を全て取っており、法的にも違反は無く、責任を覆い被せようとする主張は完全に的外れだと言えます。
22時56分 | 固定リンク | Comment (235) | 軍事 |
しらね型ヘリコプター護衛艦「くらま」が韓国コンテナ船「カリナスター」と衝突、艦首部が大破、炎上しました。場所は関門海峡です。

くらま炎上

「くらま」の艦首は酷い事になっています。


海自護衛艦と貨物船衝突、炎上し3人けが 関門海峡:朝日新聞
「カリナスター」の韓国人の船長(44)は朝日新聞の取材に「前を走る船を追い越そうとしたときにぶつかった。前から(護衛艦が)来ているのはわかり、早めにかじを切ったがぶつかった」と話した。

防衛省によると、両船はほぼ正面衝突だったとみられる。海保によると、海上衝突予防法で海峡の航行は「右側通行」と定められており、前方に相手船を発見した場合も互いに「右へ回避」が原則。だが、「カリナスター」は船首右側が損傷しており、海保は今後その経緯を調べるとみられる。関門海峡は大規模海難事故の起こりやすい「ふくそう海域」に指定されており、港則法の細則で追い越しなどは禁止されている。


どう考えても悪いのは韓国船カリナスターの側であり、くらま側は被害者という形になります。追い越し禁止の狭い海峡での違反行為、そして右回避義務があるにも拘らず船首右側の破損、この船長の証言はどれもカリナスター側に不利な要素です。

朝日新聞記事
※朝日新聞紙面版より、クリックすると拡大

カリナスター号
※面舵ならば有り得ないカリナスター号の損傷箇所

しかし、例え海上自衛隊が被害者側であろうとも、イージス艦と並んで水上戦力の中枢であるヘリコプター護衛艦(DDH)が民間船との衝突で大破し使い物にならなくなるなど、もし必要な時、つまり戦時になった時にどうすればいいのですか・・・同型艦「しらね」も2年前に火災事故を起こし、CIC(戦闘指揮所)が丸焼けになった為に廃艦すら検討されました。このクラスの艦に受難が続きます。退役の迫ったDDH前型の「はるな」「ひえい」ではなく、まだ暫く使う予定の「しらね」「くらま」にばかり重大事故が相次ぐという間の悪さです。もし「くらま」が修理不能となれば、22DDHが建造予算を確保できたとしても、「ひえい」除籍後の数年間はDDHの数に穴が空きます。

こちら側に非が無かろうと相手の暴走を操舵で避けろ、と要求するのは酷かもしれません。関門海峡は難所中の難所です。あんな場所で追い越しを掛けた韓国船の所業は理解し難い話です。自動車で例えるならS字カーブが連続した最中に追越を掛けるようなもので、対向車が来たら回避できないのは当たり前の話です。少し状況は違いますが、霞橋の事故で被害側が避けようが無かったようなものです。

そうであっても、夜間の衝突事故が相次いでいる事実がある以上、これ以上、事故で戦力を減らしてしまう事態は避けなければなりません。海上自衛隊は常に人手不足で艦の乗組員の充足率は小さく、少ない人員で艦を動かす無理を強いられています。それにインド洋派遣とソマリア海賊対策が重なり、派遣部隊の乗組員を満足に充足させてから送り出すために、国内の艦は乗組員が引き抜かれ、充足率は更に下がっています。少ない人数で動かす以上、満足な動きが出来ない場合があります。人員確保の為に予算を付ける必要があります。

その他には赤外線暗視装置による夜間見張り能力の強化が挙げられます。最近の各国海軍では不審船による自爆テロ対策として、FLIR(赤外線前方監視装置)や、これに可視光カメラやレーザー測遠機を組み合わせた複合センサーを艦船に搭載する例が増えています。これは対テロだけでなく普段の航海にも役に立つので、海上自衛隊も新造艦だけでなく既存の艦艇に追加搭載することを検討すべきですが、予算が沢山掛かります。



上の動画は航空機に搭載するEO/IRセンサー、カナダL-3ウェスカム社製MX-20。

SASS

SELEX Galileo - Naval Solutions

こちらはイタリアのセレックス・ガリレオ(ガリレオ・アヴィオニカ)製海軍用光学センサーのラインナップで、「SASS」はFREMM型フリゲートへの搭載が予定されています。

護衛艦「くらま」の修理費用は韓国側に出させるとして、海上自衛隊側も人員の確保や最新型センサーの導入による見張り能力の強化などを行う必要があります。今回の事故は海上自衛隊側に非はありませんし、避けろというのも非常に困難な状況です。しかし戦力が使えなくなる事態が深刻であることに変わりは無く、人員と機材に予算を投じて再発防止策を模索するしかありません。韓国船の操船が荒い事は以前から有名な話で、民間船同士の衝突事故は多発しており、一向に改善する気配が無い為、こちらで警戒するしかないのです。
05時25分 | 固定リンク | Comment (498) | 軍事 |
2009年10月12日
CRSさんのmixi日記でその存在を拝見。



IMI Introduces a new design for the Wildcat Armored Vehicle | Defense Update

15トン級の4輪装甲車です。

「なんか猫バスみたいなデザインだ」
「ガンポートはどこの国もやめてるのになぜ採用」

イスラエルの車両らしく耐地雷を十分に考えた底面V字設計ですが、この設計で最低地上高をある程度確保しようとすると、やっぱり腰高にならざるを得ないですね。逆にどうせ腰高になるのならと車高の方も十分に取って、後方ランプだけでなく側面にもランプを付けて、搭乗歩兵が乗り降りし易いようになっています。でもこれ重心が高くなって引っくり返りそう・・・。

そして問題は防弾ガラス覗き窓と一体化したガンポートです。

wc1.jpg

wc0.jpg

搭乗歩兵は車両の上部ハッチを開放して射撃も出来るのに、ガンポートまで用意されています。これはガンポート復活の狼煙になるんでしょうか? 脅威レベルの高い所では増加装甲を付けてガンポートは使えなくなるみたいですが、脅威レベルの低い所ではガンポートが十分に有効であるとイスラエルは判断している模様です。市街地の警備用ということを重視しているのでしょう。4輪ですからかなり小回りが効きますし。
07時40分 | 固定リンク | Comment (87) | 軍事 |
2009年10月08日
台湾陸軍の次期主力戦車調達計画は、台湾に武器を供給できる国が限られている為にアメリカ製のM1A2エイブラムス戦車が予定されていました。しかし、高価な攻撃ヘリコプターAH-64Dアパッチの購入費用が嵩み、次期主力戦車調達計画は延期される事になりました。

そして延期が決まって直ぐに、次期主力戦車調達計画を根本から見直さざるを得ない事態に陥りました。今年、台湾を襲った台風8号「モーラコット」は未曾有の大災害を引き起こし、その際に台湾の道路インフラが想定していたよりも遥かに脆弱だった事が分かり、重量級の戦車を配備する事には無理があると判明してしまったのです。

以下は台湾・自由電子報の記事からです。


風災斷橋效應/陸軍戰車夢 「重量級」幻滅:自由電子報
〔記者許紹軒/台北報導〕八八風災吹醒陸軍的重戰車之夢!據表示,陸軍下一代主戰車原本鎖定美陸軍現役的M1A2戰車,也認為台灣道路橋梁應能負荷近七十噸的車重,但這次風災上百座橋梁應聲而斷,陸軍才發現原來高估橋梁堅固程度,正重新檢討作戰需求,下修車輛重量。

陸軍現役的主戰車為M60A3與M48H兩種,服役年限都將近卅年,早已面臨需要汰換的情況;美軍M1A2戰車幾乎篤定是陸軍下一代戰車的選項,由於車重六十餘噸,在國內就有許多質疑的聲音,但是軍方初步研究認為台灣的道路橋梁應能負荷,不影響採購。

但這次風災後,救災主力的陸軍官兵到災區救援,發現許多原本認為安全係數較高的大橋照樣保不住,更不要說次等或更小的橋梁,幾乎是不見蹤影,這才知道原來按照造橋標準進行的評估,實務上卻有不小落差。

軍方人士指出,交通要道上的大橋在戰時都可能因敵軍空襲而毀損,部隊的移動與部署必須仰ョ次要道路、橋梁或甚至要涉水而過,這次風災顯現出橋梁確實高度易毀,M1A2的車重未來可能會有困難。

也因此陸軍內部重新評估M1A2是否真的完全適合台灣地形。有軍官指出,台灣需要的是四十到五十噸之間的戰車,或許陸軍可借鏡南韓在技術移轉下發展小一號M1戰車的模式,找到適合台灣的戰車。



八八風害(台風8号は8月8日に上陸した)で100基の橋脚が寸断されましたが、強度に問題がある事が判明してしまいました。設計強度は70トンを確保していたのにそれ以下だった為、60トンを優に超えるM1A2戦車では橋を通れない恐れが出てきました。そこで、陸軍当局は延期された次期主力戦車調達計画を一から見直し、M1A2戦車が適当かどうか再評価する、とあります。ある軍の将校は、台湾の求めているのは40〜50トンの戦車であるとし、韓国がM1戦車の小型版(K-1戦車)を調達したように、台湾に適合した戦車を探し出す、と言っています。

偶然かもしれませんが、日本や中国が次期主力戦車で40トン台の軽量な戦車を調達する予定(日本「TK-X」、中国「0910工程」)と同じ路線を、同じ理由(国内インフラ事情)の為に台湾も歩もうとしています。政治的な制約が無ければTK-Xを売り込みに行きたいところですが無理なので、台湾はアメリカと共同でM1戦車小型版を開発する方向になりそうです。台湾陸軍は今はアパッチの購入に資金を使っているので、次期主力戦車調達は10年以上先送りされます。新型戦車を開発する期間の余裕はあるわけです。

しかも・・・実はアメリカ側にもM1戦車軽量化の話が、台湾の話とは全く別個に持ち上がっており、渡りに船の話になるのかもしれません。

以下はコメント欄の常連投稿者「利緒」さんからのメールです。



こんばんは。いつも楽しく、記事を読ませていただいてます。

 今回、私が主催しているチャットルームで、M1A3なる車両の話題が上がったので、記事のネタになれば・・・と思い、メールさせていただきました。
http://www.armytimes.com/news/2009/09/SATURDAY_army_tanks_092609w/

http://www.network54.com/Forum/211833/thread/1254543107/last-1254631359/M1A3+Abrams+Main+Battle+Tank+Looks+To+Shed+15+tons
どうやら、全備重量75t(M1A2TUSK?)の現用車両を、全備重量60tまで落とした上で、能力の維持・向上を目指しているように読めたのですが、英語が苦手な私では以下略。
 もしそうなら、軽量化の流れにアメリカが乗った という事になるのでしょうかね?


これは知りませんでした。75トンというのは良く分からないのですが、ショート・トン(米トン)での数値? TUSKのキットって4〜5トンもするんですか? あれ、じゃあ60トンというのもショート・トンだとすると、メートル・トンでは54トン相当になるんですが・・・なんだかゴチャゴチャして来ました。

M1A2SEPの重量が69.5ショート・トン(63.0メートル・トン)です。

さて、これから何処まで重量が減るんだろう・・・情報が無いので良く分からないのですが、M1戦車の軽量化構想があるらしいのは何となくは分かりました。もしそれが大胆な軽量化方針だった場合、主力戦車の軽量化は時代の大きな流れになるのかもしれません。
02時41分 | 固定リンク | Comment (215) | 軍事 |