このカテゴリ「軍事」の記事一覧です。(全419件、20件毎表示)

2009年09月28日
10月1日には、中国の北京で建国60周年記念軍事パレードが開かれます。この時に初めて公に紹介される新兵器は数多く、その中には新型戦車も含まれます。開発コード「0910工程」とされる中国の次期主力戦車は、そのコンセプトが日本の次期主力戦車TK-X(10式戦車)と似通っている部分があります。

それは、重くなり過ぎた現行の主力戦車よりも、軽量化を図っている点です。


次期主力戦車(「0910工程」/99A2式戦車) - 日本周辺国の軍事兵器(中国・台湾)
【開発経緯】
99/99G式戦車は、攻・防・速の各項目において良好なスペックを得ることに成功したが、インフラの限界に近い54tの重量、動力区画のコンパクト化の必要性、超信地旋回の出来ない従来型の機械式変速装置など多くの解決すべき課題も指摘されていた。

開発陣が注目したのは、1990年代にパキスタンと共同開発した90-II式戦車(MBT-2000/アル・ハーリド)であった。90-II式/アル・ハーリドは、極めてコンパクトなウクライナ製の6TDディーゼルエンジンを搭載した事で、動力部の容積を最小限に抑える事に成功しており、車体長は6.487mと99式(7.3m)より1m近く短くする事に成功していた。また、全自動変速装置を搭載しており、中国製戦車としては唯一超信地旋回が可能であった。新型戦車の開発陣は、この90-II式/アル・ハーリドの車体に99式戦車の砲塔を搭載する事で、99式の攻撃・防御能力を維持しつつ全備重量を50t以内に抑えた新型戦車のベースとする事が出来ると考えた。


車体長と車幅の両方を90式戦車より小さくしたTK-Xと違い、「0910工程」は99G式戦車と車幅は殆ど変わらず車体長を短くしています。「0910工程」の予想される重量は46〜48トン前後で、それでいてより重い99G式戦車よりも装甲を強化する事を狙っています。



砲塔には新型の爆発反応装甲が搭載されたため、その外観は99G式とはかなり異なっている。装着された分厚い爆発反応装甲はHEAT弾だけでなく運動エネルギー弾に対する防御能力も兼ね備えており、特に爆発反応装甲に対する貫通能力の高いタンデム式成形炸薬弾に対する抗堪性を強化したのが特徴である。運動エネルギー弾に対する防御要求は、韓国のXK-2戦車の55口径120mm滑腔砲から発射されるAPFSDS弾に対する防御能力の獲得が目標とされたとのこと[4]。車体下部の装甲も強化され、対戦車地雷に対する防御能力を向上させている。99G式ではアクティブ防御システムが搭載されていたが、新型戦車でも中国製の新たなアクティブ/パッシブ防御システムが採用される予定。


特に車体下面の装甲強化にも気を配っている点が注目です。

よくTK-Xの事を指して「軽量化しているから装甲が薄い」「上面装甲と下面装甲が薄い」と主張する軍事ライターが居ますが(例えば清谷信一氏など)、車体そのものを小さくしてしまえば軽量化を行いながら装甲の強化を図ることは可能です。日本のTK-Xも中国の0910工程も、前作の重い主力戦車よりも小型軽量化を行いながら、装甲の強化を図っています。

例えば第二次世界大戦でのドイツ軍の5号戦車パンター(45トン)と、ロシアの重戦車IS-2(46トン)は重量が殆ど変わりません。ですが装甲はIS-2の方がかなり厚いです。これはIS-2の方が小さかったからです。小さければ必要とされる資材も少なくて済むのです。軽くなっても小さければ装甲は厚い場合があることは、把握しておいた方が良いでしょう。

そして日本のTK-Xの上面装甲は、90式戦車よりも強力になっている可能性が高いのです。

(PDF) 防衛省技術研究本部50年史 第1研究所 P204〜238
第一研究所 P213

TRDI(技術研究本部)は既に90式戦車に使われていた複合装甲や防弾鋼よりも性能の良いものを開発し終えており、当然TK-Xにも採用されています。下面装甲についても、中国の次期戦車0910工程で強化が図られているように、車両重量を軽量化しながら装甲を強化する事は可能です。

これまで日本のTK-Xの「従来の主力戦車よりも軽量化を行う」というコンセプトそのものについて、批判されることがありました。装甲が薄くなってどうするのだ、世界の趨勢と逆の方向だ、という意見です。しかし中国の次期戦車0910工程が、アプローチの方法は違えどTK-Xと同様のコンセプトを同じような動機(国内のインフラに合わせる)で狙ってきた上に、軽量化しながら装甲の強化を図っている点でも同様でした。TK-Xという戦車の在り方は、0910工程によって間違っていなかった事が証明されたと言えます。

現在、主力戦車を自主設計し量産できる国をアメリカ、ロシア、ドイツ、イギリス、フランス、イタリア、イスラエル、日本、中国、これに韓国を加えた10カ国として見ます。このうち新たに軽量化コンセプトを打ち出してきたのは日本と中国で、まだ少数派です。ただ、既存の戦車の改修を続けて新型戦車の調達を行わない国(アメリカ、ドイツ、イギリス、フランス)と、新型戦車を調達しばかりorこれから調達予定の国(ロシア、イタリア、イスラエル、日本、中国、韓国)で見ると、日本と中国は多数派の中に居ます。ただ、イタリアのアリエテMk.2がどうなるかは不透明ですが・・・また、インドは自主開発の主力戦車アージュンが失敗作である為、ロシアと共同で戦車を開発する事にしました。それは無人砲塔であると情報が出ており、ロシアの新型戦車T-95をベースにするものと推測されます。これで世界の戦車大国ロシア、中国、インドで新型戦車の調達が始まるのですから、アメリカと西欧も何時までも旧式戦車の改修を続ける、というわけに行かなくなる日がもうすぐ来るのかもしれません。

さてダラダラと書いてきましたが最後にTK-Xの調達価格について。


陸自、新戦車(TK-X)を58両調達:M³I(M-Cubed I)
調達数を58両で価格は561億円。
一括調達により経費を削減するとのこと。
1両あたり約9.67億円という価格は目標の7億円を上回りますが、今後さらに調達が進むにつれ最終的に量産効果で達成すると思われます。


防衛省が目標としていた7億円ではありませんでしたが、初期調達価格で7億円を達成していたら逆に怖い(量産が進めば更に下がる)くらいですから、90式戦車の初期調達価格が1両あたり11億円で、平均量産価格は8〜9億円だったことを考えると、TK-Xの最終的な平均量産価格が7億円台に収まる可能性も十分にあります。

なお「月刊PANZER 2008年5月号」では三鷹聡氏が「TK-Xの概要と問題点」で以下のように述べていました。


月刊PANZER 5月号 その2(TK-X関連記事) - 飛べない豚
三鷹氏は「(90式の事例を考えても)初期生産価格が10億円を下回るとは私は思えない」と書いておりますが、この点は同氏の指摘通りとなる可能性は十分にあります。


三鷹氏の予測は外れ、TK-Xは初期生産価格で1両当たりの単価で10億円を下回りました。後は予定の600両分をフルに生産できるかどうかに掛かってきますが、量産が進めばもっと下がる事は確実です。
01時57分 | 固定リンク | Comment (269) | 軍事 |

2009年09月06日
防衛省の出したPDF:平成22年度防衛予算概算要求の22DDHのイメージ図には、近接防御兵器(CIWS)として20mmバルカンファランクスの他にSeaRAMが描かれていました。

searam22ddh.jpg

近接防御兵器「SeaRAM」とは、RAM(21連装)の小型版(11連装)を20mmバルカンファランクスの架台に載せた代物です。

RAM | Weapons School

そして平成21年度の事前の事業評価 評価書一覧にある護衛艦(19,500トン型DDH)参考(PDF:69K)の対比表では、こうあります。

22ddhikaku.jpg

22DDHの「対空ミサイル発射機2基」とは、SeaRAMを2基という意味なのだと思われます。配置は右舷艦橋前方は分かるとして、あと1基は一体何処にするのかはイメージ図からは読み取れませんでした。

22DDHはMk.41VLSも三連装単魚雷発射管も無く、目立った武装は近接防御兵器に絞って搭載機の運用に徹している事が分かります。同規模のイタリアの多目的空母カヴール級がアスター短SAM32発(8VLS×4)、76mm速射砲2門を装備しているのに比べると個艦防空能力は弱くなります。

22DDHの速力は30ノットを予定しており、カヴール級の28ノットよりも優速です。機関の詳細は決まっていませんが、LM2500系のガスタービンエンジンは最新型で1基3万馬力以上あり、LM2500+では4万馬力に達しており、十分に達成できます。

22DDHは多目的空母として、補給(給油)能力と輸送(揚陸)能力を有しています。輸送能力としてはカヴール級と同程度になると思われます。
02時56分 | 固定リンク | Comment (248) | 軍事 |
2009年09月03日
今日の「お前が言うな」のコーナーです。なお前回はこれでした。

(2009/08/19)中国がインドの軍拡を「狂っている」と非難、インド人「お前にだけは言われたくない」

他の誰に言われても、中国人にだけは言われたくなかったよ・・・


日本「準空母」計画に警戒=次期政権をけん制−中国紙:時事通信
中国の国際問題紙・環球時報は2日、日本の防衛省が最大規模のヘリコプター搭載護衛艦の建造を来年度予算の概算要求に盛り込んだことを1面トップで報道。「日本の準空母の主な狙いは中国の潜水艦。日本は西太平洋でさらに大きな戦略的野心を持っている」という軍事専門家の見解を載せて、強い警戒感を示した。

「(次期政権を担う)民主党がこの計画を承認すれば、西太平洋の海上軍備拡大競争に号砲を鳴らすことになるだろう」という別の専門家の見方も紹介し、次期政権をけん制した。 

同紙は日本が明治以来、海軍の軍備拡大に努めていると指摘したが、中国軍が計画を進めている初めての国産空母の建造については言及していない。


時事通信も最後に皮肉っていますが、まさか自国で6万トン級大型戦闘空母の建造計画を進めている中国が、日本の2万トン級多目的空母建造計画22DDHを指差して「軍拡だ」とか言ってくるとは思わなかったですよ。

こんな事を中国マスコミが書いてくるのは「日本の新しい民主党政権がこちらの難癖を真に受けてくれると拾い物だ」くらいの感じで記事を書いているのでしょう。自民党相手では通用しませんが、新政権ならば確かにあるいは、効果が出るかもしれません。駄目元でやってみる価値があると判断したのでしょうね。ただし自分たちの知性を自ら貶めながら、ですが。

>日本の準空母の主な狙いは中国の潜水艦。

うん、そうですね。で、それの何処が問題なのだろう?




             ∧..∧   日本準空母は中国潜水艦狩り用
           .( `ハ´ )   西太平洋での戦略的野心の現れ
           cく_>ycく__)     軍拡競争に号砲を鳴らすアル          
           (___,,_,,___,,_)  ∬
          彡※※※※ミ  旦
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  \ お前が言うな!   /  \ わははは!  /
    \          /      \    ∞  /
 l|||||||||||||| ∩,,∩ ∩,,∩  ∩,,∩ ミ∩ハ∩彡
 (,    )(,,    )    ,,)(    )(    )
01時05分 | 固定リンク | Comment (226) | 軍事 |
2009年08月31日
mixiでノホホンと22DDHの話で雑談をしていたら「その図は仕事が早過ぎるでござるよ」「まぁ元ネタがありましたので」「え?ご自分で作製されたんですか?」「ひゅうがスレのほうには名無しで投稿しましたが、ハイ」と、アララびっくり雑談相手が製作者当人だったでござるの巻。

早速その場で製作者の「ガ・チャー・de・畜生」さんに画像の掲載許可を頂きました。

22DDH比較図

「こんなやっつけ仕事でも明日には中韓系のサイトやブログに転載されるかもしれないと思うと憂鬱だお・・・」というご本人の弁があったので、世界に先駆けて私のブログに許可を得て転載、其処から世界中に発信する事に。毒食わば皿まで?ちょっと違うか。

また「ガ・チャー・de・畜生」さんはmixiで、

「人員4000人というのは、カブールが海兵隊325名、揚陸艦のエセックス級が2000人というところを見ると一桁間違えてるんじゃないかという気もしますね。」

とも述べられていました。どうも22DDHマスコミ報道にある「人員4000人輸送」というのは、船体規模的に有り得ない感じです。ただ、太平洋戦争当時の軍艦で、戦争終結後に海外に残された日本人を本土に帰還させる復員船に改造された空母「葛城」は、実に5000人(3000人説もある)も収容する事が出来たそうです。故に軍事作戦を意図しなければ可能な数値なのかもしれません。
22時26分 | 固定リンク | Comment (341) | 軍事 |
防衛省の要求する22DDHは基準排水量2万トン(満載排水量は2万トン台後半)の多目的空母となります。多目的空母とは最近、各国の海軍で建造されているタイプの軍艦で、軽空母としての基本能力に加え、輸送艦・揚陸艦・補給艦としての能力を兼ね備えたもので、22DDHはイタリアの新型多目的空母「カヴール」、スペインの新型多目的空母「ファン・カルロス一世」とほぼ同サイズ、同能力を有します。「カヴール」は最大速度28ノットで空母寄り、「カルロス一世」は最大速度21ノットで強襲揚陸艦寄りの性格で、22DDHは「カブール」に近いタイプになります。


最大の「空母型」護衛艦配備方針=ヘリ14機、洋上給油も−防衛省:時事通信
 防衛省は31日、海上自衛隊に最大規模のヘリコプター搭載護衛艦(基準排水量19500トン)1隻を配備する方針を決め、2010年度予算の概算要求に1166億円を盛り込んだ。艦首から艦尾まで甲板がつながる「空母型」で、ヘリ5機の同時発着艦のほか、他艦への洋上給油が可能。
 同じタイプの「ひゅうが」(13950トン)から機能は大幅にアップするが、予算を見直すとしている民主党政権の下、無事「船出」できるかは不透明だ。
 新たな護衛艦は全長248メートルで、哨戒ヘリ3機が同時発着できるひゅうがより51メートル長い。甲板と格納庫でヘリ14機を搭載する。
 輸送力も増強し、陸上自衛隊のトラック約50台、人員約4000人を運ぶことができる。
 護衛艦「しらね」(5200トン)の後継だが、洋上給油もでき、周辺海域での継続的な警戒監視、海外派遣や大規模災害時の物資、邦人輸送など、さまざまな場面で中枢艦の役割を果たすという。


日本国防衛省
我が国の防衛と予算−平成22年度概算要求の概要−(PDF:3M)
※両面印刷用のため、ページの一部が空白となっています。


22DDHイメージ図
22DDH.jpg

参考比較16DDH
16DDH.jpg

22DDHは16DDHよりも全長が長くなった分、ヘリコプターの発着スポットが一つ増えています。後部エレベーターはサイド方式となり、イタリアの「カブール」級と同様の配置です。CIWSは艦の周囲に4基配置しています。VLSが見当たりませんが、搭載しないのでしょうか。

C-552 Cavour
cavour552.jpg

多目的空母はその名の通り、様々な任務に投入できる艦です。ただし空母としての能力は軽空母程度で、アメリカ海軍の大型原子力空母のような高い航空打撃力は有していません。オーストラリアもスペインの造船所に「カルロス一世」の同型艦を発注しており、この種の艦は各国海軍で採用例が相次いでいます。

しかしせっかくの22DDH計画も、民主党が予算を白紙にしてしまうのであれば御破算となってしまいます。概算要求の中には量産を開始するTK-X(10式戦車)や防空レーザー砲の研究なども含まれています。レーザー砲・・・鳩山首相(予定)に見せるとどんな反応が返って来るのやら。

以下は2ch軍事板22DDHスレッドより転載。

22年度概算要求で新たに加えられた主なもの

・PAC3を全国6高射群に配備
・F-2へのAAM-4搭載改修とレーダー改修
・F-15のECM能力向上

・基準排水量2万トン級の新拡大ひゅうが型1隻の整備
・新音響測定艦の整備
・掃海用MCH-101の整備
・海賊対策用LRADの整備
・代替整備予定のない4隻の護衛艦の早期除籍化

・新戦車10式の整備
・新NBC偵察車の整備
・第1師団を即応近代化対処用に改編

・03式中距離対空改の開発
・防空用高出力レーザーの開発
・戦闘機用先進センサシステムの開発
・電波・光波複合センサシステムの開発(巡航・弾道ミサイル・ステルス機探知用)
・統合通信衛星・宇宙監視衛星の研究
・サイバー防衛準備室の設置とサイバー防衛研究
・装軌車用ハイブリッド動力(原動機+蓄電池)の研究

・防衛政策局、統幕監部の組織強化と(文武官の混在化と次官新設)、整備計画局の新設
・中国軍への留学・招聘、ベトナム軍人の招聘などの交流拡大
21時00分 | 固定リンク | Comment (189) | 軍事 |
2009年08月19日
・・・と思うだろうな、インド人(まだインド側の反応は無いので勝手に予想)。他のどの国に軍拡を非難されても許容できるけど、中国にだけは言われたくないです。だって去年までず〜っと、世界最大の武器輸入国は中国だったんですよ? それが今年、インドが世界最大の武器輸入国となりそうだからって、中国から「狂ったように武器を購入している」とか言われたくないでしょう。中国にそんな事を言う資格は無いです。


インドはなぜ狂ったように武器を購入するのか:人民網 (人民日報インターネット版)
 インド国防省が先日発表した報告は、同国がすでに世界最大の武器輸入国であり、毎年60億ドル余りを海外からの武器購入に費やしていることを明らかにしている。この毎年数十億ドルもの「巨大なパイ」を前に、世界の戦闘機メーカー6社も垂涎し、インド空軍の戦闘機126機、100億ドル相当の発注を奪い合っている。

 8月15日には、米ボーイング社の戦闘機F-18E/F2機の試験飛行が、インド南部・バンガロールの空軍基地で行われた。米ロッキード・マーティン社の戦闘機F-16C/D、フランスの新型戦闘機「ラファール」、欧州4カ国が共同開発した新型戦闘機「タイフーン」、スウェーデンの戦闘機JAS39「グリペン」なども、続々とインドで試験飛行を行い、発注争奪戦を演じている。

 戦闘機の大口購入から、武器購入におけるインドの気前の良さがわかる。インド政府は現在、巨額の資金を投じて軍隊の改造に取り組んでいる。インド財務省は今年度の予算で軍事費を大幅に引き上げた。その総額は前年度比25%増と急増している。陸海空軍は2012年までに300億ドル相当の武器を海外から購入する計画だ。購入予算の増大のほか、インドは最近、原子力潜水艦でも大きな動きを見せた。インド初の国産原子力潜水艦の進水式が7月26日にベンガル湾の海軍基地で行われた。排水量約6000トン、建造費29億ドル、最大射程700キロ以上の弾道ミサイルが搭載可能で、2011年に就役する予定だ。現在、インド海軍は航空母艦1隻、ミサイル駆逐艦8隻、護衛艦約40隻、潜水艦16隻、そして大量の補助軍艦を保有する。陸軍と空軍の近代化も急速に進んでいる。インド陸軍は近代的な武器・装備を常に配備しており、彼らが最も重視するのは戦車だ。インド陸軍は現在、4000両を超える世界最大の主力戦車群を保有している。インド空軍は作戦機1000機以上を保有し、さらに戦闘機を拡充し続けている。

 インドの急速な軍備拡張には2つの主要原因がある。第1にテロ対策、第2に軍拡競争だ。昨年のムンバイ同時多発テロの暗雲がまだ晴れない中、インド政府は、新たなテロ攻撃への警戒を強調している。また、隣国パキスタンなどとの関係も常に緊張しており、軍備強化は確実に相手国への圧力となる。

 度重なるインドの動きは、パキスタン側にも警戒を引き起こしている。パキスタン海軍の報道官はインドの原子力潜水艦開発について、「地域全体の安定を破壊し、南アジア地域の平和と勢力の均衡を脅かすものであり、新たな軍拡競争を引き起こすだろう」と指摘している。(編集NA)

 「人民網日本語版」2009年8月19日


さてこの記事は政治的に見ると大変に興味深い点が幾つかあります。人民日報は中国共産党中央委員会の機関紙であり、中国という国家としての見解と考えてよいです。

まず、注目点はインドの戦闘機調達計画(MMRCA)の紹介部分です。アメリカのボーイング社製F-18E戦闘機、ロッキード社製F-16戦闘機やフランスのラファール戦闘機(一時MMRCA選考から脱落するも政治的に復活)、欧州共同開発のユーロファイター/タイフーン戦闘機、スウェーデンのグリペン戦闘機の紹介がありながら、何故かロシアのMiG-35戦闘機だけが紹介されていません。MiG-35は本命候補であるにも関わらずに、です。しかも冒頭に「世界の戦闘機メーカー6社も垂涎し」と6社と書いておきながら、5社しか紹介していません。ロシアのMiG-35だけが無視されています。あまりにもあからさまで、意図的に紹介しなかった可能性が高いです。つまり中国政府は、インドの武器購入相手国にロシアが居ることを自国民になるべく知らせたくなかった、という意図が浮かび上がってきます。ロシアはインドの武器輸入最大取引相手国です。

中国もロシアから武器購入を行っていますが、最近は違法コピー兵器問題でロシアが中国を怒ったりと、購入関係はあまり良くありません。一方、インドはロシアとの武器購入関係は良好で(空母ゴルシコフ売却問題で少し揉めてはいますが)、ロシアは中国には最新兵器を売らずにインドにはワンランク上の兵器を売却しています。更にはインドとロシアが共同で新兵器(ブラモス巡航ミサイルなど)を開発したりと、中国よりも仲が深い状態です。これは、ロシアと中国は国境を接しており、将来敵対関係に陥る可能性があるのに対し、地理的にロシアとインドは敵対関係になることが有り得ないので、このような差が意図的に設けられているのです。中国はこの事実を自国民にあまり知られたくないのかもしれません。

次に人民日報はインドの軍備拡張の理由に「テロ対策」と「軍拡競争」を挙げていますが、インドの軍拡競争の相手はパキスタンであるとして、自国(中国)がインドの軍拡の原因であることに触れていません。これもあからさまに過ぎます。

インドの対立国パキスタンはインドよりも弱く、陸海空の三軍でどれもインド軍の方が1.5倍の優位にあります。しかもインド軍は志願制であり、パキスタン軍は徴兵制です。これは国力で相当に劣っている為で、それは軍事力にも現れています。無理をしてまで軍備を維持してきたパキスタンに対し、余力を残しているインド・・・しかもパキスタンは今、国内のタリバーン勢力と熾烈な戦闘状態にあります。パキスタン軍は対テロ戦争で酷く消耗しており、インドとの軍拡競争など行える筈もありません。

人民日報の挙げたインドの軍備拡張理由は二つとも、嘘です。インドが今揃えようとしている兵器は大型兵器ばかりで、テロ対策ではありません。パキスタンとの軍拡競争も発生していません。テロ対策云々を言うならパキスタンの方が遥かに大変な状況です。

インドの大規模な軍拡は明らかに中国に対抗する目的のものです。インドは最近、中国との国境線(国境紛争の火種は今も燻っている)に配備している兵力を増強しました。陸軍2個師団を新たに配備し、旧式化したT-55戦車をT-72戦車と入れ替え、Su-30MKI戦闘機を最前線に18機、張り付けます。このインド軍の中国方面への兵力増強を受けて、パキスタン軍はインド国境に張り付けた戦力の一部を西部の対タリバーン掃討戦に引き抜いています。

またインドは、中国海軍がインド洋周辺に海外根拠地を確保(パキスタン、ミャンマー、スリランカ)している点や、ソマリア海賊対策に中国艦隊が遠路進出してきた事を受けて、将来的に中国海軍の有力な艦隊がインド洋に進出、軍事プレゼンスを発揮してくる可能性を憂慮しています。今はまだ脅威になりませんが、20年後、30年後に中国が空母機動部隊を編成してくれば、それは非常に面倒な存在です。中国はパキスタンとの仲が深い同盟関係にあります。インドとパキスタンはシムラ協定によって、両国間の紛争に他国を介入させないと取り決めていますが、いざ紛争が始まった折にインド洋へ中国艦隊が入ってくれば、何もしなくてもそれは示威行動と成り得ます。万が一の際にこれを問題なく排除できる戦力が必要になるでしょう。インド側がそれを持っていれば、中国もおいそれとちょっかいは出せない筈です。インド海軍は、空母と原潜、そしてロシアと共同開発した超音速巡航ミサイルで中国艦隊を迎え撃つ予定です。

そしてそういった戦術面以上に重要なのが戦略面です。つまり核弾道ミサイルの配備です。インドは、明らかに対パキスタンには過剰な射程の長距離弾道ミサイルの配備を計画しています。その目標が北京であることは明白で、パキスタンとの紛争を邪魔されないこと、そしてもっと単純に直接的な対抗勢力として中国そのものを敵として扱う事、それが今のインド軍の総合戦略です。

インドの目指している箇所は明白であるのに、中国はそれを隠しながら、インドの軍備拡張を非難しています。インドとロシアの関係も隠しながらですから、中国の言論のコントロールはかなり細かい部分にまで渡っている事が分かります。
23時55分 | 固定リンク | Comment (178) | 軍事 |
2009年08月16日
以前インド原潜アリハントについて書いた記事で、

また「アリハント」の意味が「敵を滅ぼす者」とされていますが、サンスクリット語(梵語)で調べてみると修行者・聖職者を意味するとあり、何処からこういう意味が出てきたのかよく分かりません。

と言うことを書きましたけれど、mixiで指摘を受けてようやく意味を理解しました。この場合の敵とは煩悩を表し、それを無くす事の出来た者=修行者・聖職者という意味らしいです。

阿羅漢 - Wikipedia

ただアリハントの意味としては通俗語源解釈で、本来の意味とは異なるようなのですが、梵語(サンスクリット語)はサッパリなのでこれ以上詳しくは分かりませんでした。

(2009/07/29)インド初の国産原子力潜水艦「アリハント」
(2009/07/29)インドの弾道ミサイル、K-15サガリカとシャウルヤの関係について

さてこれだけでは文章が短過ぎるので、アリハントに搭載が検討された事もあるPJ-10ブラモス巡航ミサイルの動画を紹介しておきます。ブラモスはインドとロシアが共同開発した巡航ミサイルで、基本的にロシアのヤホント巡航ミサイルがベースとなっています。





上がブラモスで下がヤホントです。基本構造は殆ど同じミサイルで、ラムジェットエンジンのエアインテークを塞ぐ弾頭カバーが付いており、潜水艦から水中発射する事が出来ます。この弾頭カバーにはサイドスラスターが装着されており、垂直発射された後に直ぐに姿勢を一気に変えて飛んで行きます。ミサイル最後部にTVCを付けて姿勢を変更するよりも、弾頭カバーにサイドスラスターを付けてしまえば投棄する手間が一回で済んで合理的というわけです。
03時09分 | 固定リンク | Comment (35) | 軍事 |
2009年08月14日
毎度恒例?メールフォームからの質問に答えるコーナーです。

Q.「ロシアの新型SLBM"ブラヴァ"が発射試験失敗を繰り返していますが、ブラヴァは既に成功しているICBM"トーポリM"の改修型なのに、どうして失敗を繰り返しているのですか?」

A.「ぶっちゃけブラヴァはトーポリMとは完全に別のミサイルと思った方が良いです。なにしろ大きさが全然異なります。トーポリMは全長20m超えますがブラヴァは12mくらいです。重量も10トン以上の差があります。実質上、完全な新型ミサイルを開発しているのと同じと考えた方が良いので、開発はすんなり行くものではありません。」


比較


トーポリMは長過ぎて潜水艦には搭載できません。潜水艦に積む為には、太くて短い形状になります。ブラヴァはアメリカのトライデントT(現行型トライデントUの前身)より少し大きいくらいのサイズです。ロシア海軍のプロジェクト955「ボレイ」型戦略ミサイル原子力潜水艦は、当初は搭載する弾道ミサイルにR-39Mを予定していました。「タイフーン」型に積んでいたR-39の改良版です。しかし試験結果が思わしくなく、すぐに開発中止されてしまい、現在のブラヴァ開発計画に移行するのですが、そのブラヴァまでもが開発に難航しており、またこれを中止して別のミサイルを開発するわけには予算的にも無理な話で、このままではボレイ型1番艦「ユーリー・ドルゴルキー」の就役には肝心の搭載ミサイルが間に合わないです。

しかしどうしてブラヴァの大きさがトーポリMと全然違う事があまり知れ渡っていないのか・・・

R-30 (ミサイル) - Wikipedia

Булава (ракета) — Википедия

RSM-56 Bulava - Wikipedia

どうも日本語版ウィキペディアの「R-30 ブラヴァ」の項目に記載されたスペックの数値がおかしい(ブラヴァの全長が21.9mとあるが、その数字はトーポリMのものだろう )のが原因なのかも・・・重さ(約32t)も何か違っているような。英語版とロシア語版には重量36.8トンとあります。
23時14分 | 固定リンク | Comment (28) | 軍事 |
2009年08月08日
現在、米英軍が中心となってアフガニスタン南部で大規模なタリバーン掃討戦を行っていますが、北部に駐留するドイツ軍も、派遣以来初めての積極的な攻勢作戦を始めています。


アフガン:独軍、タリバン掃討戦 異例の本格軍事行動|毎日新聞
ドイツのユング国防相は22日記者会見し、アフガニスタン北部に駐留するドイツ軍が、アフガン軍と合同で旧支配勢力タリバンの掃討作戦を実施中であると明らかにした。治安維持活動や復興支援を中心に展開してきたドイツ軍が、本格的な軍事行動に乗り出すのは極めて異例だ。

ユング国防相によると、ドイツ軍は06年に北部に駐留して以来初めて装甲戦闘車や重武装兵を投入する。ドイツ軍300人とアフガン軍800人が参加し、攻撃機も使って北部クンドゥス周辺の半径30キロ地域から武装勢力を排除するという。

作戦の狙いについて、ドイツ軍は「8月20日投票のアフガン大統領選を無事に実施するため」としている。ただ、軍関係者は、比較的平穏とされてきたアフガン北部の急激な治安悪化に加え、タリバンがドイツ軍を集中的に攻撃の標的にしている点を指摘する。

ドイツは9月27日に総選挙を控えており、アフガン情勢が悪化すれば、世論に撤退機運が高まる可能性もある。


ドイツ軍は戦車こそ持ち込んでいませんが、マルダー歩兵戦闘車やトーネード戦闘爆撃機を含む重装備をアフガンに派遣しており、本格的な戦闘を行う事が出来ます。長い駐留期間の中、既にドイツ軍は戦死者も出していますが、これまで積極的な攻勢作戦は一度も行って来ませんでした。最近、ドイツでの世論調査ではアフガン駐留反対派が増え、賛成3割反対6割という状況です。それを見たタリバーンは「最も追い出すのが簡単そうな相手」と見てドイツ軍を執拗に狙っていたのですが、まさか本国ドイツの世論を気にせずドイツ軍が反攻作戦を仕掛けてくるとは、総選挙も近いのに何故・・・と、少し不思議に思いましたが、ドイツで別の世論調査の結果を見て納得しました。


ドイツ:「首相続投を」80% 大連立を評価|毎日新聞
9月27日投開票のドイツ総選挙まで2カ月に迫る中、メルケル首相の続投を望む有権者が80%に達している。首相対立候補のシュタインマイヤー副首相兼外相への期待は13%で戦術の再考を迫られる低迷ぶりだ。世論調査では、メルケル首相のキリスト教民主・社会同盟は第1勢力として政権にとどまる可能性が高く、同党を軸とした次期連立政権の組み合わせが焦点だ。

世論調査機関エムニトによると、メルケル首相への8割に上る期待は現職首相として過去数十年見られなかった異例の現象という。首相の人気は与野党で広く浸透し、シュタインマイヤー外相が所属する社民党支持者も84%が首相の続投を望んでいる。

メルケル首相は7月19日の公共テレビとの対談で「大連立政権の総決算は非常に良い」と自画自賛。05年11月の就任以来、年金改革法、養育施設拡充法、健康保険改革法など憲政史上最多と言われる489件の政府提出法案を成立させた自信を示した。

メルケル首相はこの対談で「ドイツに必要な景気上昇は(野党)自民党との連立でより良く実現できる」と述べた。経済危機克服などのため、総選挙後は社民党との大連立を解消し、経済政策でより共通項の多い自民党との連立を目指す考えを改めて強調したものだ。民主・社会同盟と自民党の「中道右派連合」への支持は最近の世論調査で50%をわずかに上回っており、総選挙での過半数獲得が大連立解消と中道右派連合実現の条件となる。


続投支持率80%と圧倒的な数値を叩きだしたメルケル首相には、もう何の不安要素も無いのです。駐留反対派が増えようと、それでも平然と攻勢作戦の開始を指示できるのは、自身の高い支持率に加え、大連立を組むSPD(ドイツ社会民主党)も反対していない為に、政治的争点にならないからです。
20時33分 | 固定リンク | Comment (64) | 軍事 |
パキスタンでのタリバーン勢力指導者ベイトゥラ・メスード司令官が、アメリカ軍の無人機によるミサイル攻撃で殺害された模様です。


パキスタン・タリバーンの司令官、殺害 米の攻撃で:朝日新聞
【イスラマバード=四倉幹木】パキスタン当局は7日、イスラム原理主義武装勢力「パキスタン・タリバーン運動」(TTP)のリーダー、ベイトゥラ・メスード司令官が、米国の無人機による5日の攻撃で殺害されたことを確認した。TTP幹部も同司令官の死亡と新リーダーの選出が進んでいることを認めた。

TTPは、隣国アフガニスタンの反政府勢力タリバーンに、アフガン側から地上部隊の攻撃を受けない「聖域」を提供し、パキスタンでも自爆テロを繰り返してきており、同司令官の死亡は対テロ戦上の大きな成果といえる。


TTP側も認めているので、これが本当にTTP関係者の弁ならば、どうやら本当のようですね・・・これでタリバーンとの和平の道は無くなり、殲滅戦への道へと転がり落ちる事になるのでしょう。パキスタン領内のタリバーンが殲滅できれば、アフガニスタン領内のタリバーンもジリ貧になっていきます。メスード司令官の死亡によって戦況が一気に好転するか、或いは逆に自爆テロの誘発を招いて戦闘が激化するだけに終わるか、それはまだ分かりませんが、司令官の殺害が確かならば、もう和平の道が一気に遠退いた事だけは言えるでしょう。

使用された米軍の無人機は恐らくMQ-9リーパー。"Reaper"とは英語で「刈る者・物」の意味で、この場合は魂を刈る死神を表します。ミサイルはAGM-114ヘルファイア。「地獄の業火」を意味します。

アメリカは、ロシアがチェチェンでやったように、敵武装勢力の司令官を尽く暗殺していく気なのでしょう。ロシア軍は空爆や特殊部隊による強襲などでチェチェン独立派大統領を3人殺害しています。そして実際にロシアは第二次チェチェン紛争に勝利しました。成功例がある以上、真似をするのは当然かもしれません・・・ただ今回の米軍の作戦は直接的なTTP弱体化を狙った効果よりも、パキスタン政府に後に引けなくさせる効果の方が、この場合は政治的に重要なのではないかと思います。
03時35分 | 固定リンク | Comment (74) | 軍事 |
2009年07月29日
インド初の原潜「アリハント」に搭載されるK-15「サガリカ」弾道ミサイルは、地上発射型「シャウルヤ」弾道ミサイルと同一のものと推測されています。これは以前からそのような推測が為されていた上に、DRDO(インド国防省直轄の兵器開発機関)が行ったシャウルヤ発射試験の様子が以下のようなものだった為に、ほぼ確定したと思われていました。

shourya1.jpg
shourya2.jpg
shourya3.jpg
shourya4.jpg

これがシャウルヤの発射実験の画像です。弾頭部の保護カバーが空中で個別にロケット噴射を行って外れていく様子が分かります。これはSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)が水中発射された場合に水面に出るまで弾頭部を保護する為のもので、空中に飛び上がってから外す仕様なのだと解釈されました。つまりシャウルヤは、K-15サガリカSLBMの地上発射試験用の機材であると理解されました。

シャウルヤ発射実験の動画もあるのですが、弾頭部の保護カバーが外れるシーケンスは、ほんの一瞬の出来事です。



その為、じっくり見るにはコマ送り動画になります。



保護カバーをロケット噴射でミサイル本体から外す時、2回目の噴射を片方だけにして保護カバーを横方向にずらし、ミサイル本体が保護カバーを引っ掛けないようにされています。

このシャウルヤと同じようなシーケンスを行うSLBMが、ロシア海軍の史上最大の戦略原潜「タイフーン」級に搭載されていた、史上最大のSLBMである「R-39」です。

r39.jpg



この動画でのR-39がシャウルヤと違う点は、保護カバーを真っ直ぐ打ち出した後に、ミサイル本体が方向を変えて飛んでいく点です。保護カバーを引っ掛けないようにする意図は同じですが、方法が異なっています。なおR-39は、ミサイル本体は真っ直ぐそのままで保護カバーを横方向に弾き飛ばす事も、両方出来ます。

このように「空中で弾頭部保護カバーを外す」というシーケンスは、基本的にSLBM以外には必要がありません。固定陣地のICBMならサイロの蓋を開け閉めするだけでいいですし、保護カバーは要りません。移動式ランチャーに搭載されるロシアのICBM「トーポリ」などは、発射前に蓋を外してしまいます。

以下はトーポリ転用の民生ロケット「スタルト」によって、人工衛星を打ち上げる動画です。発射装置は軍用品と何も変わらず、これは弾道ミサイル発射の手順と同じです。



高感度カメラで捉えた映像ですが、スタルトが寝かされている状態で、何の工夫も無く蓋をそのまま地面に落としています。大きな金属音を立てて転がる蓋。それからスタルトを垂直に立てて、発射態勢に・・・という流れです。つまり、地上発射型の弾道ミサイルならば、わざわざ空中で弾頭部の保護カバーなり蓋なりを外す必要性が特に無く、地上で前以て外しておけばいいわけです。

以上の点から、「シャウルヤ」弾道ミサイルはK-15「サガリカ」弾道ミサイルの地上発射型である、そういうものだと思っていました。発射直後にロケット噴射で外す弾頭部保護カバーは、地上発射型には必要が無いものです。

しかしシャウルヤ発射実験の直ぐ後に、DRDOは「シャウルヤとサガリカに関係は無い」と主張、こちらは困惑する羽目になっています。


インド 弾道ミサイル"Shaurya"、打ち上げ実験に成功:インド新聞 11/12/2008
シャウルヤについては、現在開発中のK-15潜水艦"サガリカ"用弾道ミサイルではないかとの予測が出ていた、DRDOはこれを否定。新ミサイルは地対地ミサイルであり、"サガリカ"プロジェクトとは無関係としている。

同情報筋はこれについて、「実験発射は、特殊な内臓燃料により地下30-40フィートから行われた。発射ピットには水は一切入っていない」と説明した。


それじゃあ、SLBMと同じ空中でロケット噴射で外す弾頭部保護カバーは一体何なのか、よく意味が分からないです・・・地上発射型の弾道ミサイルで同様の装備を持ったものの例を、自分は知らないですから。もしかして意外と普通のものなんでしょうか、私が知らないだけで。
22時19分 | 固定リンク | Comment (43) | 軍事 |
インド初の国産原子力潜水艦「アリハント」が進水しました。インド軍総合情報サイト「バラト・ラクシャク」より。


Dive into future: India goes nuclear, under water | Bharat-Rakshak
Named INS Arihant (destroyer of enemies), the submarine will complete India's triad of nuclear weapons which can be fired from land, air and under the sea

The 5,000-ton vessel will be armed with 12 nuclear-armed K-15 ballistic missiles which have a 700 km range.

The K-15s will later be replaced by 3,500 km-range K-X missiles.

Its 80-MW nuclear reactor will ensure that it can stay submerged for as long as it takes.

With a speed of 22 knots, it'll be much faster than conventional submarines, and for a ballistic missile-firing sub, it is diminutive: its 104-metre length and 10-metre width earning it the title of the baby boomer.


INS「アリハント」
排水量5000トン
全長104m
全幅10m
原子炉出力80メガワット
速力22ノット
K-15弾道ミサイル12発(射程700km)
※後日、開発中のK-X弾道ミサイル(射程3500km)に換装可能

ただし別ソースでは排水量5000-6000トンと幅があり、速力も24ノットとする資料があります。インド政府の防衛研究開発機関DRDO(Defence Research and Development Organisation)のサイトを見ても詳しいスペックは載って居らず、英語版Wikipediaの「INS Arihant - Wikipedia」に記載されたスペック数値はあらゆる数値がデタラメなもので、原子力関係の専門家に見せたら盛大に吹いてしまいました。



> インド国産原潜「アリハント」

JSFさんのご紹介で英語wiki
INS Arihant - Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/INS_Arihant
を見てみましたが、スペックで盛大に吹きました。

Propulsion: 80MW PWR with 40% enriched uranium fuel;
艦の割にはかなりの熱出力だな、と思っていたのですが
1 turbine (47,000 hp/70 MW);
何ですか?これは。
 軸出力が70 MWなら英馬力に換算すると約94000馬力。何故、単純な単位換算で倍も違うのかと小一時間。その前にMWが正しいとして熱出力から熱効率を計算すると87.5%とは、インドの科学は化け物なのでしょうか(大汗)。
 実際の感覚では、この手の原子力潜水艦(軍事用舶用炉)の熱効率
(補機系や艦内の電力需要を満たす発電機も回さないといけないため、商業用軽水炉PWRで常識的な33%(1/3)前後からは、その分だけ確実に低いことになります。)
は大体20-25%(1/5-1/4)そこそこ。
 簡単に20%とすると原子炉熱出力が80MWなら、軸出力は16MW = 21500 hpそこそことなって、大まかに言って同じくらいの大きさ、速度のイギリスのトラファルガー級の数字15000hpと比べても、さほどオーバーな数字ではなくなります。

 ただ、これでは数値の原形をとどめていないのが何ともですし、hpとMWの換算で「きれいに2倍」間違えているのはいったい何だと小一時間。
 まあ、この手の情報は錯綜するものですが、少なくとも蒸気タービン機関の常識的な熱効率と、単位の換算ぐらいはまともにやって欲しいと思うところです。
「へぼ担当」 in mixi



しかも英語版Wikipediaはアリハントの搭載ミサイルK-15「サガリカ」についても、無茶な事が書かれています。「Sagarika - Wikipedia」によると、この弾道ミサイルは全長18.5mで直径1.8m、重量19トンとあるのですが、そんな大きなサイズのミサイルを僅か5000トンの潜水艦に12発も積む事は出来ないです。別資料では直径0.74mという記述もあり、全長についても10mや7mという数値が錯綜しています。これは初期型が全長7mで現在は10mという事なのかもしれません。

ですがウィキペディアの記述は幾ら何でも・・・そもそも全長18.5mって、アリハントの船体上下幅より大きいですよ。絶対に入らないです。

インド側の報道を見る限り、アリハントの搭載する弾道ミサイルは二列に配置された4つの大型チューブ内に3つずつセルを収納して合計12発とする方式です。直径74cmのミサイルならなんとか入りそうですが、直径1.8mの大型ミサイルではチューブに1発入れるのが限度です。開発中のK-Xが大型化して4発搭載にするのかもしれませんが、その場合でも全長18.5mは有り得ません。物理的に入らないです。

K-15「サガリカ」の地上発射型である「シャウルヤ」(DRDOはサガリカとは無関係と主張しているものの、同じ系統のものだと推測されている)については「Shaurya missile - Wikipedia」には妥当な数値(重量6.2トン、全長10m、直径74cm)が書かれているのに、どうしてアリハント関連のスペック数値は無茶苦茶になっているのでしょう。潜水艦についてはスペックを馬鹿正直に発表する国は存在しないですから、情報がある程度錯綜するのは分かるのですが、物理的に有り得ないスペックまで飛び交っている現状は・・・情報戦か何かの一環なんでしょうか。

また「アリハント」の意味が「敵を滅ぼす者」とされていますが、サンスクリット語(梵語)で調べてみると修行者・聖職者を意味するとあり、何処からこういう意味が出てきたのかよく分かりません。

スペックに謎の多いインド初の原子力潜水艦アリハントですが、現状では世界的に珍しい小型の短距離戦略弾道ミサイル原子力潜水艦という事になります。攻撃目標が隣国パキスタンなので、長射程ミサイルが必要無く、スカッド弾道ミサイル後期型と同程度の射程のK-15サガリカ弾道ミサイルでも、核弾頭さえ積めば十分「戦略弾道ミサイル」として機能します。

しかし出来るならパキスタン沖に進出するよりも、インド東部沖の安全なベンガル湾からパキスタンに撃ち込める方が生存性が格段に上がります。射程3500kmのK-X弾道ミサイルは、その為に開発中・・・というだけではありません。実はそのような用途に限定するなら射程2500kmもあれば十分です。そして3500kmという射程があれば、ベンガル湾から中国の首都・北京を射程圏内に収める事が可能になります。つまりK-X弾道ミサイルは、ベンガル湾からパキスタン深奥部を核攻撃で叩く任務と同時に、中国への核抑止力としても機能するように要求されています。

K-XがK-15とほぼ同サイズのまま射程3500kmを狙うのか、大型チューブぎりぎり一杯のサイズまで直径を拡大するか、それはよく分かりません。弾頭重量を極端に減らせば、K-15程度の小さな弾道ミサイルでも大幅な射程延伸は可能ですが、それは核弾頭の小型化が前提条件です。普通に考えればミサイル直径拡大と、潜水艦自体を新規建造艦で大型化して、搭載チューブ4本を12本程度に増やす方向になるとは思います。
02時21分 | 固定リンク | Comment (84) | 軍事 |
2009年07月12日
「J/APG-1のレーダー視程について」の記事内容について、大塚好古さんから意見を頂けました。

航空機用レーダーの話:好古の新潜水艦日記

大塚さんの記事を要約すると、以下の通りです。

・APG-65/73はAPG-66の倍の探知距離を持ち、ルックダウン探知距離(対戦闘機)も倍の40〜60nmである可能性。
・専門誌記事に書いたAPG-65/73の探知距離80nmとは、ルックダウン時の対大型機の数値である可能性。

そうなると私の指摘はピントが外れていたわけで、申し訳なく思います。大塚さんに言い掛かりを付ける形になり、誠にすみませんでした。

APG-66に関する数値については三つ並んだ項目について、

Range 80 nm (max)
Look-down 20 - 30 nm
Look-up 25 - 40 nm

・AN/APG-66のMAX80nmという探知距離は対大型機の数値である。
・Look-downとLook-upは対戦闘機の数値である。

とのことで、全て対戦闘機と思い込んでいた私が資料の読み方を間違えていました。

AN/APG-66ではありませんが、近い性能のAN/APG-67のデータで対大型機80nm、対戦闘機ルックダウンで31nmとあるので、大塚さんの見解が正しいでしょう。

apg67.jpg

※英航空専門誌フライトグローバルより

そうなると最初に書いた「J/APG-1のレーダー視程について」の内容はその多くを撤回・修正する必要があります。現状、F-2戦闘機のJ/APG-1レーダーの「対戦闘機、ルックダウンで35nm」という性能は、F-16戦闘機のAN/APG-68(ルックダウンで27.5nmとする資料)よりは上で、F/A-18C戦闘機のAN/APG-73よりは劣る、とする方が正しいようです。

「The Naval Institute Guide to World Naval Weapons Systems」ならこちらでも確認が取れるのですが、さすがに「海軍関係者から貰った公表されていない資料」までは分からず、AN/APG-73の対戦闘機ルックダウン探知距離が80nmかどうかは、確認が取れませんでした。

私が新たに見付ける事が出来た資料では、そういった記述は見つかりませんでした。

[DOC] APG-73(V) - Archived 10/2008 | Forecast International

apg73.jpg

こちらの資料では、

Range >60 nm

と書いてあるだけで、対戦闘機の探知距離なのだとは思うのですが、ルックダウンかどうかは良く分かりません。ルックダウンだとすれば大塚さんの修正された数値で正解となり、通常時の数値ならルックダウンはそれよりも数値が下がる事になります。

AN/APG-73が対戦闘機ルックダウンで80nmという数値は、大き過ぎるのではないかと思うのですが、私の手持ちの資料とネット上で捜索した結果では、証明するまでには至りませんでした。
14時21分 | 固定リンク | Comment (83) | 軍事 |
2009年07月07日
F-2戦闘機の搭載レーダーJ/APG-1については、あまり確かな情報が出ていません。初期不具合が伝えられていた頃は「戦闘機サイズの目標で探知範囲が20nm程度しかない」という絶望的な数字が報道されていました。nmとはノーティカル・マイルの事で海里(1.852km)の事ですから、20nmでは37km程度の探知距離しか無かった事になります。

ところが最近の情報ではJ/APG-1について「戦闘機サイズの目標で探知距離35nm(ルックダウン時)」という数値が出ています。この数値が各航空専門誌で書かれています。ルックダウンで35nm(65km)の探知距離があるなら、通常高度への目標にはそれ以上の探知距離を発揮できます。以下は参考までに、F-16の初期型に搭載されたレーダー、AN/APG-66のデータです。


APG-66(V) - Archived 10/2004 | Forecast International
Range 80 nm (max)
Look-down 20 - 30 nm
Look-up 25 - 40 nm


そして次はF-16に現在搭載されているAN/APG-68のデータです。ソースはブリタニカ百科事典電子版のレーダーの項目からです。


radar (electronics) :: Examples of radar systems -- Britannica Online Encyclopedia
The AN/APG-68(V)XM radar built for the U.S. F-16 (C/D) fighter is shown in the photograph. This is a pulse Doppler radar system that operates in a portion of the X-band (8- to 12-GHz) region of the spectrum. It occupies a volume of less than 0.13 cubic metre (4.6 cubic feet), weighs less than 164 kg (362 pounds), and requires an input power of 5.6 kilowatts. It can search 120 degrees in azimuth and elevation and is supposed to have a range of 35 nautical miles (65 km) in the “look-up” mode and 27.5 nautical miles (50 km) in the “look-down” mode. The look-up mode is a more or less conventional radar mode with a low pulse-repetition-frequency (prf) that is used when the target is at medium or high altitude and no ground-clutter echoes are present to mask target detection. The look-down mode uses a medium-prf Doppler waveform and signal processing that provide target detection in the presence of heavy clutter. (A low prf for an X-band combat radar might be from 250 hertz to 5 kHz, a medium prf from 5 to 20 kHz, and a high prf from 100 to 300 kHz.) Radars for larger combat aircraft can have greater capability but are, accordingly, bigger and heavier than the system just described.


ブリタニカに記載されたAN/APG-68の探知距離の数値はこうあります。

"It can search 120 degrees in azimuth and elevation and is supposed to have a range of 35 nautical miles (65 km) in the “look-up” mode and 27.5 nautical miles (50 km) in the “look-down” mode."

F-16戦闘機のAN/APG-68はルックアップ時の探知距離が35nm(65km)、ルックダウン時の探知距離が27.5nm(50km)と記されています。つまりF-2搭載のJ/APG-1のルックダウン時の探知距離35nm(65km)という数値は、F-16搭載レーダーの性能を上回っていると言えます。AN/APG-68はAN/APG-66と比べて探知距離が特に上がっているわけではないようで、戦闘機VSモードの最大探知距離は同じ80nmです。またF/A-18Cの搭載するAN/APG-73レーダーも、対戦闘機の最大探知距離は80nmとされています。

(※ただこう考えると、3種のレーダーが全て同じ探知距離というのも不自然な話で、80nmという数値は本当の数値を隠すための適当な数値である可能性もあります。レーダーの正確な性能は軍事機密であって当然です。しかしそれを言い出したらJ/APG-1の35nm(ルックダウン時)という数値も本当かどうか怪しくなってきます。其処まで疑ったら考察自体が出来なくなるので、今回の記事は「公表された数値は正しい」という前提で話を進めています。)

上記で挙げた英文ソースの数値の比率に従うならば、対戦闘機のルックダウンで35nmの探知距離があるJ/APG-1は、最大探知距離で80nmを優に超えている事になります。AN/APG-68でルックダウン時の探知距離が27.5nm、最大探知距離は80nmですから、35nmのルックダウン探知距離を持つJ/APG-1は最大探知距離102nm(189km)であると推定できます。

対戦闘機で最大探知距離が100nmを超えているとすると、J/APG-1の不具合という話は何処かへすっ飛んでしまうのでは・・・ルックダウンで35nmの探知距離という数値が本当であるならば、そう解釈する事になります。F-2のレーダー性能はF-16現行型を完全に上回っています。

そしてそれを示唆するような話が、アメリカ軍司令官によるF-2への公式評価として出ています。米軍準機関紙「Stars & Stripes」(星条旗新聞)に載った、F-2対F-16によるDACT(異機種間戦闘訓練)についての記事で当時、三沢の第五空軍司令官だったトーマス・ワスコー中将のコメントにはこのようにあります。


USFJ Commander takes a spin in Japan's new F-2 fighter[July 8, 2004 Stars & Stripes]
The U.S. commander said he was impressed with the F-2, which is designed and built by the Japanese. The aircraft has some capabilities “that our aircraft does not,” Waskow said, mentioning the Active Electronically Scanned Array radar, which has three times the range of a conventional antenna.


ワスコー中将は“日本が設計したF-2に感動した、我々(のF-16)には無い幾つかの能力を持っている”と、AESA(Active Electronically Scanned Array radar)を優位点とし、それは従来のレーダーに比べ3倍の捜索範囲を持っていると言及しました。

捜索範囲とは捜索距離とは異なるので、この証言を持って探知距離が長いとは言えませんが、少なくともF-16の搭載レーダーよりも大きく劣るものがこのように褒められたりはしない筈です。ワスコー中将の意図が日本へのお世辞や本国アメリカへの「F-16にもAESAを付けたい」という、おねだりのダシとしてF-2のJ/APG-1が褒められただけ、という可能性を否定はしませんが、この件に関し別方面から、純粋にJ/APG-1の性能がF-16搭載レーダーを上回っていた、とする話も出ています。


F-2 | Missle&Arms
搭載レーダーであるJ/APG-1はアクティブ・フェイズド・アレイ方式によるパルス・ドップラー・レーダーで以下のような特徴を備えている。

・多目標同時追尾
・対空・対艦同時捜索
・遠距離艦船探知
・高分解能グラウンド・マップ
・ルックダウン能力
・高ECCM能力
・小型・軽量、高信頼性、対環境性
・オフ・ボアサイト性(追跡時に脅威方向に対するレーダー反射面積が小さい事)

この中では特に高分解能に重きを置いていると思われ、レイド・アセスメント能力やグラウンド・マップの鮮明さは従来のものとは比較にならない程優れていると言われており、電子戦システムからの情報と併せて脅威目標の識別並びに優先度判定が行える。この能力は目標の個艦識別能力を持つASM-2(93式空対艦誘導弾)の運用に当たって威力を発揮すると思われる。 またアクティブ・フェイズド・アレイ方式は発射する電波のビームの生成が自由自在であり、ビームを細く絞ることによる遠距離探知も可能である。(同じくアクティブ・フェイズド・アレイ方式を採用する米空軍のF-22に搭載されるAPG-77はこのモードを用いて400kmという遠距離探知を行った事があると言う)また電子的にビームを振るため高速なスキャンが可能なためオフ・ボアサイト能力も優れていると予想され、格闘戦においても高い能力を発揮する筈である。また電子走査式の先進敵味方識別質問/応答装置(AN/APX-113(V))を備えており、これは味方を探すレーダーと言って良い。(伝聞ではあるが、米軍三沢基地配備のF-16Cとの演習において、F-16Cに探知される遥か以前に敵側のF-16Cをレーダーで探知可能であったと言う)


この最後の部分の情報は伝聞に過ぎず、確定情報として扱う訳にはいかないのですが、このサイトの著者keenedge氏は防衛関連の関係者であり、氏の伝聞情報は只のマニアの情報源とは一線を画しています。無視できるものではないでしょう。最近では一部で「F-2を擁護しているのはワスコー中将と週刊オブイェクトだけ」と揶揄されていますが、私などよりも以前からkeenedge氏はF-2を擁護されています。私は一介のマニアに過ぎませんが、当時現役の高級軍人だったワスコー中将(現在は退役されている)と防衛関係者のkeenedge氏の証言は、F-2の本当の性能を伝える貴重な情報であると思います。

現在、F-2戦闘機はAAM-4(99式空対空誘導弾)の搭載改修を行う研究が済んでおり、同時にAAM-4の長射程を生かすべくJ/APG-1レーダーの視程延長改修も行っています。後は予算を付けて実戦部隊に配備しているF-2を順次、改修していきます。


(PDF)平成15年度政策評価書(事前段階の事業評価):アクティブ・電波・ホーミング・ミサイル搭載に関する研究
本研究は、F−2支援戦闘機を試験対象母機とし、アクティブ・電波・ホーミング・ミサイルを搭載した際、当該ミサイルの最大性能を発揮するために必要となる機体の構成要素に関する研究(システム設計、レーダーの探知距離延伸等)を実施するものである。(その1)では、システム設計、レーダーのソフトウェア改修、レドーム(注2)改修等を、その2ではレーダーのハードウェア改修、ミサイルの指令送信装置(注3)の改修等を、その3ではミサイル関連ソフトウェア、ハードウェア改修等を実施する。

(注2)レドーム:レーダーアンテナを収容しているドーム
(注3)指令送信装置:ミサイルに対して目標情報等を送信するための装置


戦闘機で敵巡航ミサイルを迎撃する場合はルックダウンでの戦闘になる上、しかも巡航ミサイルは戦闘機よりも小さな目標です。AAM-4の最大射程(100km以上)を生かすためには、F-2のルックダウンで35nm(65km)という探知距離は不足なのでしょう。このAAM-4搭載改修とJ/APG-1視程延長改修により、F-2の空戦性能は飛躍的に高まります。果たしてこのF-2のJ/APG-1改が、F-16Block60のAESA(AN/APG-80)やF/A-18E Block2のAESA(AN/APG-79)に匹敵する性能かどうかは、全く情報が無いので何も分かりません。しかしF-16現行型のAN/APG-68やF/A-18CのAN/APG-73を改修前のJ/APG-1が上回っている以上、アメリカ軍の最新型AESAに匹敵する性能の達成は、改修次第で可能であると思います。


ところで私も記事を執筆した航空情報8月号には、F-2のJ/APG-1レーダーに関する間違った考察が為されている記事が、幾つか散見されます。


大塚好古が考える「F-2改」の可能性 (航空情報 2009年8月号p22)
本機は格闘戦であれば「F-22」を除く、F-X候補機を含めた現在各国で就役中の全戦闘機に負けないだけの能力はある。

その一方で、本機は開発時に要撃戦闘機としての運用は従とされたこともあり、FCSである「J/APG-1」レーダーは複数の目標に対するルックダウン・シュートダウン機能を含めて、現代の要撃機に必要とされる機能は概ね付与されてはいるが、戦闘機程度の目標に対する最大探知距離は35海里(約65km)程度(ルックダウン時:推定)と「F/A-18C」が搭載するAN/APG-73の約80海里(約148km)に比べて短い。FCSの最大探知可能範囲が短いことは、視界外交戦時に不利となる。


あの大塚好古さんと同じ雑誌に記事を書くという、大変光栄な事が出来てとても嬉しいのですが、大塚さんがこのような書き方をするとは・・・少し残念です。ルックダウン時と通常時では探知距離に大きな違いが出てくるのに、混同して比較しても正しい考察にはなりません。J/APG-1の35海里という数値はルックダウン時のものです。一方、AN/APG-73の80海里とは通常時の数値です。AN/APG-73のルックダウン時の最大探知距離は、35海里前後かそれ以下であり、J/APG-1の方が探知距離は長いのです。J/APG-1の探知距離がルックダウンで35海里であるという数値が正しいなら、そうなります。


あと、清谷信一さんの記事は相変わらずでした。


国内産業にとってのF-2改という選択肢 文;清谷信一(航空情報 2009年8月号p50)
またレーダーにしてもJ/APG-1は世界初のアクティブ・フェーズド・アレイ・レーダーとして鳴り物入りで宣伝されたが、所定の性能が獲得できていない。優秀なレーダーであったなら、なぜF-15の近代化改修で、このレーダーの改良型が採用されなかったのだろうか。


この清谷さんの考察は二つの点で的外れです。

まずF-15Jはライセンス生産であり、その契約上、勝手な改造は許されません。エンジンやレーダーを換装したい場合は、製造元であるボーイングおよびアメリカ政府に許可を得る必要があります。最近ではBAEが日本の次期FX商戦で「ユーロファイターならどんな改造もOK(ただし改修データは提出されたし)」と売り込みに来ていますが、逆に言えばこの条件が特典となるわけで、つまり通常のライセンス生産では勝手な改造は許されないのが普通である、という事なのです。

F-15J改修でAPG-63からAPG-63(V)1への換装となったのは、アメリカが自国製のレーダーを指定した事と、後は単に値段の関係というだけです。AESAであるAPG-63(V)2とAPG-63(V)3は非常に高価であり(なおアメリカ軍初のAESAであるAPG-63(V)2は初期不具合が出ており、実質上試験運用に留まり、APG-63(V)3で量産型となる)、これでF-15Jを近代化改修すると新造機が買えそうな勢いになってしまうので、妥協して非AESAながらも優秀なAPG-63(V)1を選択しています。

さて、もしアメリカ側が快く承諾し、J/APG-1をF-15用に改修、つまりF-15に搭載可能なサイズのぎりぎりまで大型化したものが出来たとして、それってアメリカ製のAESAより安くなるでしょうか? ちょっと無理そうな気がします。だったらAPG-63(V)1の選択は、ごく当然の結果ではないでしょうか。

そして二点目ですが、もう既に語ってしまっていますが、F-15とF-2では機首の大きさが違い、搭載レーダーの大きさも全然変わってきます。大型戦闘機には大型レーダーが搭載され、小型戦闘機には小型レーダーが搭載されます。だから視界外戦闘では大型戦闘機が強いのです。これはロシアの戦闘機、Su-27とMiG-29の搭載レーダーの関係でもそうです。清谷さんの言うような「F-2(小型戦闘機)のレーダーをF-15(大型戦闘機)に何故積まない?」という指摘は、そりゃ積まないのが当たり前ですよ、と言うしかありません。

レーダーの探知距離はパネル面積の大きさが最も影響があり、大きいレーダーは探知距離が長くなります。もちろん出力の影響もあります。大きなパネル面積も、大きな出力も、両方とも大型戦闘機の方が達成し易いのです。

そうするとF-2のJ/APG-1をF-15に搭載して有効に機能させる為には、大幅な改修を必要とします。レーダー自体を大型化させる必要があり、そのような大改修を行う開発費用と、AESAそのものの単価が高価であるという点を踏まえると、新造機に搭載するならともかく既存機の改修に見あう程度の総費用に収まるとは思えません。アメリカ製のAESAですら値段の面でF-15J改への搭載を断念したのに、それより高くなりそうな代物が採用される可能性はそもそもありませんでした。




表紙雑誌の紹介
航空情報 2009年 08月号

航空情報 2009年 08月号

雑誌
出版社: 酣燈社
発行間隔:月刊
サイズ:B5
定価:1350円
ASIN: B002C3WQVE
発売日: 2009/6/20

Amazon.co.jp
22時37分 | 固定リンク | Comment (273) | 軍事 |
2009年07月04日
各所で噂になっているXRIM-4復活の可能性?の話題です。AAM-4(99式空対空誘導弾)をESSM風味に改造して艦載化するXRIM-4計画を海上自衛隊は放棄し、ESSMを採用した事で国産艦対空ミサイルの芽は摘まれてしまったのですが、これを陸上型にして陸上自衛隊が採用するという情報が出て来ました。

ものすごい勢いで飛ぶ高い空:シベリアンジョーク集積所

XRIM-4であります。: keenedgeの湯治場

二人とも防衛関連の関係者なので、そういう話が出ているのは確かなようです。更にはAAM-4ダクテッドロケット型の研究飛翔体の話題まで出ています。

ダクテッドロケット飛しょう体であります。: keenedgeの湯治場

ダクテッドロケットについては以前書いた「ダクテッドロケットエンジンとは?」を参照して下さい。

XRIM-4に関してですが、陸上自衛隊のホーク地対空ミサイル後継の03式中距離地対空誘導弾(03式中SAM)があまりにも高価な為、これを補完する役割としてXRIM-4計画を陸で拾ってみよう、という話が出ているようです。ドイツ軍でも動機は違いますが次期主力地対空ミサイル「MEADS」の補完用により小型の地対空ミサイル「IRIS-T SL」を採用する気で、中小型2種類の対空ミサイル二段構えで野戦防空を行う計画はそれなりに説得力があります。

ただしミサイルのサイズが異なってきます。03式中SAMは重量約570kg、弾体直径約32cmで、大きさはホーク地対空ミサイルとほぼ同じです。XRIM-4はESSMと同じような形になっており、重量などもほぼ同じであるならば、元のAAM-4よりも拡大されて重量は約300kg、弾体直径約25cmというサイズになります。元のAAM-4は重量約220kg、弾体直径約20cmです。

一方MEADSは中身がPAC-3MSEなので、重量約350〜400kg、弾体直径約28cm(重量はよく分からず。元のPAC-3通常型は重量約315kg、弾体直径約25cm)されます。IRIS-T SLは原型のIRIS-T空対空ミサイルが重量約90kg、弾体直径約12.7cmです。地上発射版のIRIS-T SLはロケットモーターが延長されて若干大型化しています。

IRIS-T SLは近距離空対空ミサイルIRIS-Tの地対空型であり、小さめのミサイルです。MEADSとのサイズ差は大きく、棲み分けが出来ています。MEADSのシステムの中に組み込んでしまう方式です。ところが03式中SAMとXRIM-4では大きさの差が小さく、棲み分けというよりはハイロ―ミックスのような関係になっています。

この場合、もしXRIM-4を作ってみて単価が03式中SAMと同程度になってしまったら、正式採用される事は無いでしょう。シースパロー→ESSM化のような改造(後部弾体直径の拡大、翼の形状変更)をせず、AAM-4そのままで地対空ミサイル化するプラン(つまりAMRAAM地上型のSLAMRAAMと同じような感じ)ならVLSに納めず剥き出しで搭載するので安くは出来ますが、それはXRIM-4とは別のミサイルになってしまいます。

ESSM - Wikipedia

WikipediaにESSMとRIM-7シースパローの比較図があります。ESSMがシースパローよりも弾体直径が拡大され、翼が小さくなっている事が分かります。なおAIM-7スパロー空対空ミサイルをRIM-7シースパロー艦対空ミサイルに改造した時は、弾体の拡大などは特に行っていません。



AMRAAM改造の地対空バージョンSLAMRAAM。大きな改造は行わず。

IRIS-T SL / IRIS-T SLS - Diehl BGT Defence

ドイツのミサイルメーカー「Diehl BGT Defence」のサイトより。IRIS-T SLはウニモグに搭載する短射程の地対空ミサイルです。


海上自衛隊はXRIM-4計画を捨てた以上、今さら採用する事はほぼあり得ません。しかし陸上自衛隊で採用されたなら、将来的に思い直して採用してくれるかも、という期待は残ります。しかし陸上自衛隊がXRIM-4を艦載型そのままで陸上化させると予算が掛かり過ぎると判断した場合、SLAMRAAMに似た簡易的なものを作って来る可能性もあります。そうなったら翼が小型化されていないのでクォドパックには入らず、Mk.41VLSの1セルに4発入れる事は出来なくなります。それ以前に弾体直径の拡大が無ければ、ESSMよりも射程が劣るものになります。

また逆に予算を気にせずXRIM-4のダクテッドロケット化を図って来た場合、03式中SAMの射程を上回って棲み分けがグチャグチャになって来るわけで、この計画は何がどうなるのか行く末が迷走しそうな気がします。これで航空自衛隊がTHAADを導入という話になったら、自衛隊三軍の対空ミサイル事情は更に混迷を極めてくるのが目に見えてます。
23時36分 | 固定リンク | Comment (104) | 軍事 |
もう仕方が無い・・・書ける時に書けるネタを消費しておかないと、どんどんネタが貯まっていく一方です・・・

つい最近、イスラエル海軍のドイツ製潜水艦ドルフィン級が、スエズ運河を渡って紅海に入りました。目的地はイスラエルで唯一、紅海に面している港湾都市エイラートですが、そこを基点に何をする気なのかは不明です。名目は演習との事ですが・・・このドルフィン級にはイスラエル国産の空対地ミサイル「ポパイ」を大型化し、潜水艦発射型にした「ポパイターボ」巡航ミサイルを搭載しており、これには核弾頭型もあると推測されています。

Israeli sub sails Suez, signaling reach to Iran | Reuters

ただ本気で核攻撃をする気ならイスラエル本土からジェリコ弾道ミサイルを使えばいいだけの話なので、ドルフィン級を送り込む意味はポパイターボ通常弾頭型による精密攻撃の為、その予行演習としての訓練なのでしょう。ただしエイラートは艦艇修理ドックが存在しないので、戦闘艦の長期駐留は出来ません。

イスラエルは過去にイラクやチュニジアを長躯、航空攻撃を仕掛けましたが、イランが相手となると距離が長過ぎる上に第三国の領空を長時間侵犯しなければ到達できず、難易度が高いです。イラン側も空爆を警戒して重要施設を分散させるなどの警戒を整えています。イラン防空網はザルみたいなものですが、それでも現状のシリア防空網よりは手強い相手で、これまでイスラエル軍はイラクやシリア相手に核施設空爆を成功させてきた実績がありますが、対イランでは成功確率は著しく低下するでしょう。

その為、空爆では無い攻撃力として、潜水艦からの巡航ミサイル攻撃も用意してくる可能性があります。イランのブシェール原発は稼働寸前の段階にあり、立地条件的にペルシャ湾に面している為、航空攻撃よりも海からの攻撃で狙い易い目標です。

Popeye Turbo - FAS.org

Popeye - AGM-142 Have Nap - Sistemas de Armas

二番目のサイトはブラジルの軍事サイト「Sistemas de Armas」です。・・・何故か本家イスラエルの軍事サイトや英語圏のサイトでポパイターボに関する詳しいページが無かったので、こんなところに行きついてしまったわけですが、ポルトガル語が分からなくても雰囲気だけでなんとか理解できると思います。(そうか?)
20時51分 | 固定リンク | Comment (37) | 軍事 |
北朝鮮が短距離弾道ミサイルを発射しました。飛翔距離は400〜500kmと推定され、シルクワーム対艦ミサイルやガイドライン対空ミサイルではありません。スカッド短距離弾道ミサイルの可能性が最も高く、ノドン準中距離弾道ミサイルの射程を制限して発射した可能性もあります。

・・・シルクワーム対艦ミサイルなら無視していたところですが、弾道ミサイルだと政治的な意味合いが違い過ぎて、スルーなんて出来ません。7/4に何かやるとは事前に言われていましたが、本当にやってきました。果たしてブログの更新頻度を落とすという話は何処へ・・・


北朝鮮のミサイル発射、計4発に 短距離「スカッド」か:朝日新聞
北朝鮮は4日午前8時から8時半にかけてミサイル2発を、午前10時45分ごろに1発を、それぞれ東部の江原道旗対嶺(キッテリョン)のミサイル基地から日本海に向けて発射した。韓国政府が明らかにした。韓国軍は3発とも400〜500キロ飛行したと分析している。射程500キロの短距離弾道ミサイル「スカッドC」とみられる。中距離弾道ミサイル「ノドン」を含め、追加発射の可能性がある。

同基地では、5月下旬からスカッドCやノドン計3〜5基を積んだ移動発射台が偵察衛星で確認されていた。関係国の間では、北朝鮮が4日の米独立記念日や8日の故金日成(キム・イルソン)国家主席の命日に向け、弾道ミサイルを発射する可能性が高いとの見方が強まっていた。

スカッドだとすれば、発射されたのは06年7月以来。国連安全保障理事会は6月、北朝鮮の2度目の核実験を受けて全会一致で採択した新決議で、北朝鮮に弾道ミサイル技術を使った「いかなる発射」も行わないよう求めており、これを無視した形になる。

海上保安庁は、北朝鮮が10日まで、東部の元山(ウォンサン)市北東の沿岸海域(長さ約450キロ、幅最大約110キロ)で軍事射撃訓練を実施するとの情報を入手。海域の西南端に旗対嶺があることから、この海域に向けてミサイルを発射したとみられる。

ノドンもスカッドも、発射角度を調節し、燃料を少なくすることで同海域内に落下させることも可能。共に単段式ロケットで、飛行距離が短い場合は識別するのが難しいため、韓国政府が慎重に分析を進めている。


今度は8日にノドンを発射する可能性が高そうな上に、これらの動きとは別に更にICBMも用意しているので、もう何が何やら。立て続けにミサイルを撃つ事で感覚を麻痺させる狙いでもあるんでしょうか。どっちにしろ弾道ミサイルである以上、北朝鮮の発射は国連決議違反です。

うーん、取り合えずスカッドだとあんまり書く事も無いですね・・・せっかくだから不謹慎ソングを紹介しておきます。







次は真面目な記事を予定していますのでご容赦。気分転換にライギョ釣りに行って来ます。
15時25分 | 固定リンク | Comment (52) | 軍事 |
更新頻度を落とすと宣言した途端に、面白バカネタが幾つも出てくるとは何てことだろう・・・RIM-4やJ/APG-1の記事を用意して、この真面目な軍事ネタ二つで1週間を乗り切る予定だったのに、計画があっさり頓挫してしまうとは、何かの陰謀ですか? 北朝鮮は7/4の米独立記念日に何かするかもしれないし、つい昨日イスラエルはドルフィン級潜水艦(核巡航ミサイル「Popeye Turbo」搭載と推測される)にスエズ運河を通過させて紅海に入れるわ、世界中で軍事的に不穏な動きがある中で、そのころ我が国では!


機関砲撃ったら、どぼん 海保巡視船の砲身、紀伊水道に:朝日新聞
同保安部によると、1日に神戸港を出港した「せっつ」は3日午前10時ごろ、和歌山県白浜町の南西約29キロの紀伊水道の海上で実弾を使った射撃訓練を実施。開始から40分後、船の前部甲板にある35ミリ機関砲の砲身が射撃中に根元から外れ約7メートル前方に飛び、そのまま海上に落下、沈んだという。乗組員らにけがはなく、周辺海域に被害はなかった。


以下有名な関連動画。



とはいえ動画のこれは12.7mm機関砲・・・もし「せっつ」の35mm機関砲の衝撃の瞬間の動画があれば世界中で話題になった筈なのに、残念ながらビデオを回している人は居なかった模様です。
02時24分 | 固定リンク | Comment (70) | 軍事 |
2009年06月26日
北朝鮮の弾道ミサイルに対する日米の迎撃態勢よりも、むしろロシアの迎撃態勢の方が段々と激しくエスカレートしてきました。ロシア独自のミサイル防衛システムS300Vだけでなく、最新鋭の迎撃システムS400を極東に配備すると発表した矢先、今度は更に踏み込んだ迎撃方針を示したのです。


北朝鮮ミサイル、国境沿いに飛行すれば撃墜する―ロシア:サーチナ
香港の衛星テレビ局、鳳凰衛視によると、ロシア軍のアレクサンダー・ブルチン中将(写真左)は22日までに、北朝鮮のミサイルがロシア国境沿いに飛行した場合には撃ち落とすと述べた。

ロシア外務省は22日、韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領と米オバマ大統領が発表した5カ国会合を支持する考えを表明。同会合は朝鮮半島の核問題を話し合う6カ国協議参加国のうち、北朝鮮を除く日・米・韓・中国・ロシアによる事態収拾を目的とする。

ブルチン中将は、ロシア外務省の5カ国会合支持の表明に先立ち、北朝鮮がミサイルを発射した場合についてのロシア軍の考えを述べた。ブルチン中将はロシア軍第一副参謀長。

中将によると、北朝鮮が次にミサイルを発射する日程について考えを示すには、まだ早い。しかし、ロシアの観測システムは厳戒態勢をとっており、北朝鮮がミサイルを発射すれば、真っ先に発見できる。もしもミサイルがロシア国境に沿って飛行すれば、ロシアは躊躇(ちゅうちょ)することなく撃墜するという。

ブルチン中将は、ミサイルがロシア領内に飛来した場合だけでなく、「国境沿いの飛行」でも撃ち落とす意向を示した。


なんというアグレッシブな迎撃方針・・・日米の迎撃体制よりも激しさを増しているロシア軍は、自国向けのみならず他国向けだろうと構わず叩き落すというつもりのようです。北朝鮮からアメリカのアラスカ方面に向けてICBMが発射される場合、その弾道はウラジオストクを掠めて飛んで行きます。ロシアはこれをも迎撃すると宣言したに等しいのです。S300VやS400の能力的に、ICBMのブースト段階で迎撃できるとは思えませんが、日米のみならずロシアのMD(ミサイル防衛)までもが北朝鮮の弾道ミサイルを迎撃する構えは、重大な政治的メッセージが込められている事は言うまでもありません。

一方、その頃、北朝鮮は建前をかなぐり捨てて平然と前言を覆しつつあります。4月のテポドン打ち上げには「人工衛星発射である」と称して正当性を訴えていたのに、今度用意しているテポドンには「ICBM発射である」と言い出しました。用意している物は同じ物なのに・・・

そしてこの方針は弾道ミサイルだけでなく、核兵器についても同様の変化があったのです。


北朝鮮「核報復の火の雨が韓国を覆う」 :東亜日報
北朝鮮が、2回目の核実験の強行とウラン濃縮計画(UEP)稼動宣言に続いて、韓国への核攻撃も可能だという威嚇発言を連発している。北朝鮮は、李明博(イ・ミョンバク)大統領を米国の「猟犬」、「忠犬」と表現するなど、韓国への中傷の水位が度を超えている。

北朝鮮労働党機関紙の労働新聞は25日、「論評員の文」を通じて、バラク・オバマ米大統領が今月16日、韓米首脳会談で、李大統領に北朝鮮の核脅威に対抗して「拡大抑止」を約束したことに対して、「結局、われわれの核抑止力保有の名分を持たせるだけであり、有事の際、われわれの核の報復の火の雨が南朝鮮を覆う残酷な事態を招くことになるだろう」と威嚇した。韓国戦争勃発59周年に出たこの発言は、北朝鮮が、核兵器で韓国まで報復攻撃できることを具体的に示した初の事例だ。

労働新聞は、「ホワイトハウス・ローズガーデンでの主人と猟犬の腹立たしい口づけ(李明博逆徒の米国での行為を評する)」というタイトルの文で、韓米首脳会談の合意事項を一つ一つ非難し、李大統領と韓国政府を露骨に中傷した。特に、李大統領に対しては、「米国の侵略的な対朝鮮政策の遂行と反共和国核騒動の先頭に立って踊りを踊り、同族を追い込む忠犬」と非難した。

これまで北朝鮮は、核兵器の開発は米国の攻撃に備えた「自衛的防衛手段」と主張してきたが、最近、態度を変えて、「攻撃用」と明らかにしている。


これまで「北朝鮮の核は綺麗な核だ」「防衛の為の核だ」と言わんばかりに、自国の核開発を防衛用だと正当化していた北朝鮮でしたが、そのような建前をかなぐり捨てて、南を、韓国を核の炎で焼き尽くすと言い出しました。同族を相手に、核兵器を使用するぞと、脅したのです。

・・・今頃、テポドンや核開発で北朝鮮の事を庇っていた人達は、歯軋りしているんじゃないでしょうか? 屋根に上って梯子を外されたようなものでしょう、この状況って。
21時51分 | 固定リンク | Comment (89) | 軍事 |
2009年06月22日
4月の北朝鮮テポドン発射の際には、日本とロシアはMDによる迎撃態勢を整えましたが、アメリカは偵察や警戒、観測は行ったものの、迎撃については特に目立った動きは見せませんでした。しかし北朝鮮は二回目の核実験を強行した後、ICBM(大陸間弾道弾)の発射を行うと宣言、実際にテポドン級の弾道ミサイルを発射する準備を整えつつあります。

4月のテポドン発射は人工衛星打ち上げロケットと称しながら、今度は同じ物をICBMと称して発射する構えを見せている北朝鮮。アメリカは「ICBMなら遠慮は要らない」とばかりに、今回はMDによる迎撃態勢を整えています。




ハワイへはTHAAD迎撃ミサイルと海上配備型Xバンドレーダー(SBX)を配備し、現状におけるMDの中で、移動可能タイプで最も性能の良い物を集めました。加えて海軍のイージス艦に搭載しているSM-3もあります。

ハワイには元々カウアイ島にTHAAD実験部隊が居ますが、今回派遣されるのはアメリカ本土テキサス州のフォートブリス陸軍基地にて編成中のTHAAD実戦部隊を空輸して展開します。編成完了は秋だと聞いていましたが、未成のまま実戦投入されることになります。しかしIRBMならともかくICBMが相手となると、THAADでは少々荷が重く、迎撃可能範囲は著しく狭くなります。そうなるとホノルル市街地中心付近に布陣する必要があります。



※THAADがランチャーから飛び出てくる瞬間がよく見えます。

海上配備型Xバンドレーダー(SBX)については、元々アリューシャン列島付近に配備されているものです。今回はたまたまパールハーバーでメンテナンス中だったらしく、そのままハワイで待機することになったようです。アラスカ方面にはコブラ・デイン早期警戒レーダーもあるので、単発のICBM程度ならそれでも対処できると踏んだのでしょう。



※昨年10月にハワイへメンテナンスの為に寄港したSBX

アラスカとカリフォルニアに配備しているGBI(MD用大型迎撃ミサイル)がハワイにあれば、ハワイから少し離れた場所に落下するテポドンの迎撃も十分可能だったのですが、THAADではホノルル市街地に向かって落ちてこない限り、迎撃する事は出来ません。後はイージス艦のSM-3でやれるかどうかです。

あと一応、パトリオットPAC3もハワイに用意しているようですが、流石にICBMが相手ではPAC3ではちょっと無理があるでしょう。
22時42分 | 固定リンク | Comment (56) | 軍事 |