このカテゴリ「軍事」の記事一覧です。(全420件、20件毎表示)

2009年01月27日
航空自衛隊は無人偵察機を導入する方針を固めました。試作研究用の機体をそのまま採用、配備する方針です。


離島有事に無人偵察機 防衛省、21年度導入へ:産経新聞 2009年1月24日
無人機開発は、防衛省で自衛隊装備の研究開発を担う技術研究本部が平成16年度から「無人機研究システム」として実施してきた。開発経費は103億円で当面の開発予定は4機。機体は全長5・2メートル、全幅2・5メートル、高さ1・6メートル。最大飛行高度は約12キロで、敵のレーダーに探知されにくいステルス性もある。

無人機はF15の翼の下に搭載され、偵察地域に近づいた段階で切り離されて発進後、無人での自律飛行に入る。ラジオコントロール方式の遠隔操作ではなく、事前に設定されたプログラムに沿って飛行。GPS(衛星利用測位システム)で位置を補正しながら偵察し、終了後は滑走路に自動着陸する。


この記事だけだと4年前から研究開発を始めたように読み取れますが、実際には「無人機研究システム」の以前から「多用途小型無人機」という名称で1995年から開発が始まっています。通称はTACOMです。もうかれこれ14年も研究してきた、古くからある計画で、当初は試作研究用で終わり、実戦配備するにしても現場からの仕様要求を踏まえて新たに開発し直すのだと思っていましたが・・・ターゲットドローン(標的機)としてならともかく、偵察用にそのままの形で配備するとは思っていませんでした。

実はこれについて5年以上前に朝日新聞経由で人民日報が報じています。


防衛庁、小型無人機を本格開発 不審船の偵察想定 :人民日報 2003年9月22日
無人機は95年度から技術研究本部で基礎技術の研究を進め、すでに原型となる試作品は完成。04年度予算の概算要求には開発経費3億円を計上した。自動滑走着陸できるようにしたうえで、試作した無人機を使って活用方法を探るほか、関連装備も開発する。この無人機は全長約5メートルで、F15戦闘機に搭載して空中で発進。ジェットエンジンで高度1万メートル前後を飛行し、数百キロの航続距離性能を見込む。


これは朝日新聞の記事を提携している人民日報が丸ごと転載したものです。つまり書いたのは朝日新聞ですが、今回の産経新聞の記事よりよほど詳しいです。なお防衛省はTACOMを不審船対策に使えると主張していますが、運用形態や機体性能を見る限りそのような使用目的には全く向いておらず、単なる予算獲得の方便に過ぎないと思います。

当初、TACOMは空中発射されて偵察任務を終えた後、パラシュートとエアバッグにより洋上に着水して回収される方式でした。これは後に「無人機研究システム」の時に基地への無人自動着陸方式へと改められています。この際に車輪式着陸装置を付けたりと様々な改修を行った結果、機体が若干大型化しています。パラシュート回収方式の時は全長4.7m、重量620kgだったのが、着陸装置を付けた事などにより全長5.2m、重量700kgまで増えています。また、「多用途小型無人機」の頃は主翼を折り畳み空中投下後に展開する方式でしたが、現在は取り止められているようです。主翼途中で上に跳ね上げてあるのに、どうやって落下中の空気抵抗に負けずに展開するのか謎な仕様でしたが、やはり無理だったようで・・・エンジンも途中で変更されているらしく、テレダイン製からアリソン製になっているようなのですがちょっと詳しい確認が取れません。ただ、以前には推力450kgだった表示が今ではそれより上がっているので、エンジン変更による出力向上があったようにも見受けられます。


chf_pack解説-TACOM
機体概要
全長:5.2m
全幅:2.5m
全高:1.6m
エンジン推力:約0.5t
重量:約0.7t
速度:遷音速


ターボファンジェットエンジンのエアインテイクを機体上面に設置するデザインはUAV(無人機)の定番といっても良い形です。人が乗ったコクピットを考慮せずに済み、空戦機動を行わないので大迎え角での飛行状態を考えなくて良いなら、自然とそうなります。RQ-4グローバルホーク、EADSバラクーダ、アレニアSky-Xなど、ターボファンジェットエンジンを搭載するタイプのUAVは多くがこの形式です。

このスペックを見て分かる事は、TACOMはあまりUAVらしくないな、という点です。機体サイズはストームシャドウ巡航ミサイルと同等で、それでいて重量は半分強、エンジン推力は同等です。つまりTACOMの巡航速度はストームシャドウ(1000km/h)より速いと見るべきですが、超音速までは出ないでしょう。TACOMはデルタ翼を採用しており、幅も短く、滑空性は全く良くありません。UAVとして長距離・長時間飛び続けることを目指しておらず、高速性を持って強行偵察任務を達成しようという腹積もりなのでしょうね。その為に主翼は小さく、エンジン出力は機体重量に比して高い機体です。他のUAVとは性格がかなり異なります。

グローバルホーク(最大重量12トン)やバラクーダ(最大重量3.25トン)はTACOMの最大重量700kgと比べると機体規模が違い過ぎますが、アレニアSky-Xは最大重量が1.1トンでエンジン推力430kgと、結構近い数値です。しかしSky-Xは全長7mに対し全幅6mと、TACOMに比べて十分な主翼の長さと面積を確保しており、航続力と滞空時間はこちらの方がかなり上になる筈です。

UAV Sky-X simula rifornimento in volo | DN - DifesaNews

上のイタリアサイトにSky-Xの上から見た構図の写真があります。Sky-Xは空中発進のTACOMとは違い、発進も基地から自力で滑走離陸を行います。

下は両者の比較図です。

比較

大きさや重量はTACOMの1.5倍あるSky-Xですが、それ以上に主翼形状の差から両者のコンセプトの違いが分かります。
02時42分 | 固定リンク | Comment (188) | 軍事 |

2009年01月22日
イージス艦あたご衝突事件で海難審判が採決されました。事故の主因はあたご側にあるとされ、海上自衛隊へ再発防止に向けた勧告が出されています。つまり通常の裁判所で言えば全面的に敗訴したのと同じです。

国土交通省・海難審判所ホームページより、公開されている裁決資料の全てです。

護衛艦あたご漁船清徳丸衝突事件(裁決言渡):横浜地方海難審判所
護衛艦あたご漁船清徳丸衝突事件(裁決本文):横浜地方海難審判所

事故からもう1年近く経つんですね・・・当時、私の書いた記事はこれです。

イージス艦「あたご」が漁船を沈めてしまう事故を起こす:2008年02月20日

これを書いた時は、出回っている情報が少ない段階であたごに非があるとした為、幾つかのコメントで反論、お叱りを受けましたが、私としては全く根拠が無いのに書いたつもりはありませんでした。海上交通法の教育は受けていましたし、航海の経験もあったからです。もう昔の話で経験として今の役に立つようなものではないのですが、あの当時、洋上でイージス艦「こんごう」と擦れ違った時、レーダーにどんな反応が出るんだろう、漁船並みの小さな影と言うのは本当なのか、ワクワクしながら見ていた覚えがあります。(違いは全然分かりませんでしたが)

だから「あたご」の事故は本当に残念な思いです。自分の当初の予想通りの結果になってしまいましたが、全然嬉しくありません。今後、二度とこのような事故が起きないように願うばかりです。
23時59分 | 固定リンク | Comment (71) | 軍事 |
2009年01月10日
これはまた懐かしい話が掘り起こされたものです。

ハイブリッド戦車などCO2削減対策…自衛隊も省エネ作戦(2009年1月9日 読売新聞)

読売新聞は「ハイブリッド戦車」と見出しに書いていますが、新型戦車TK-Xを開発したばかりの自衛隊が新たにハイブリッド戦車を作るわけがなく、正しくは「ハイブリッド車両」の事でしょう。世界的に見ても軍隊がエコロジー化を図る傾向にあることはちょうど一年前に当ブログでも記事にしています。自衛隊がこの流れに乗ることは当然で、不思議な話ではありません。

エコロジー軍隊プロジェクト(2008年1月2日 週刊オブイェクト)

2年半前に小池百合子議員が環境省時代に「省エネ化を行う環境に優しい自衛隊を」と講演した時は、馬鹿にする声も多かったわけですが、結果的に小池百合子議員は正しかったわけですね。

なお防衛省技術研究本部は「将来コンポーネント(電気駆動装置搭載車両)」という研究に既に取り掛かっています。

[PDF] 戦闘車両シミュレータの研究に関する外部評価委員会の概要 平成18年
[PDF] 戦闘車両シミュレータの研究に関する外部評価委員会の概要 平成19年
[PDF] 2211 大型車両用シミュレータの研究
[PDF] 防衛庁長官官房秘書課採用試験室 平成17年

最後のPDFファイルは防衛省職員(事務官・技官)の募集パンフレットなのですが、「先輩職員への質問」や「先輩職員からのメッセージ」に、既に以下のような記述があることを確認できます。


『最近力を入れている研究は、自衛隊の戦闘車両をハイブリッド自動車のように電気で走行させるもので、色々と新しい発見もあり非常にやりがいを感じます。』

『また近年CO2の排出規制など環境問題が大きな話題となっていますが、自衛隊施設においても例外ではなく、これに対応すべく、太陽光発電や風力発電等新エネルギーの積極的な導入を図っているところです。』


つまり今年の読売新聞の報じた記事よりも以前から、それどころか小池百合子議員の講演以前から、とっくに自衛隊はエコロジー化プロジェクトに着手済みだったんです。技術研究本部の研究論文の平成15年度 論文発表で「電気駆動システム」という論文があります。これは掲載された防衛技術ジャ−ナルを確認していないのでハイブリッド技術に関するものか分かりませんが、もしこれがそうなら基礎的な研究は更にもっと前からやっていることになります。

ところがこの事を理解していない人たちは、前述のように小池百合子環境相(当時)の講演内容を馬鹿にしたり、昨年11月の技術研究本部研究発表会でコマツ社が展示していたハイブリッド装甲車の研究を見て「これこそまさに技本が研究すべきテーマではないだろうか?」と言ってみたりと、技術研究本部の中の人が聞いたら苦笑するんだろうな、と思ったりします。もうとっくにやってるよ、と。
04時06分 | 固定リンク | Comment (117) | 軍事 |
2009年01月04日
ニコニコ動画を回っていたら懐かしい映像を見掛けました。BBC編集の「実録!!フォークランド紛争」です。




5分20秒あたりから、イギリス海軍空母機動部隊の出港シーンが印象的。見送りに埠頭に詰め掛ける大勢の民衆、汽笛の音、鐘の音・・・昔に見た時はバグパイプの音色も聞こえていた気がしましたが、今見るとそれは無かったです。何処で記憶を混同しちゃったかなぁ。デアリングが進水した時の印象が重なってしまったのかも。




こっちはこっちで、現物を見るまでサンプソン・レーダーがグルグル回るとは知らなかったので、びっくりした覚えがあります。
23時57分 | 固定リンク | Comment (71) | 軍事 |
2008年12月30日
一年近く前に「ロシア、中国との兵器取引関係が一時断絶」という記事をお伝えしましたが、ロ中間での話し合いが纏まり、コピー兵器の輸出禁止を条件に関係は改善、近く両国の兵器取引は本格的に再開される見通しです。


<中ロ>軍事技術分野の知的所有権保護で合意、「パクリ」兵器の輸出禁止へ : Record China
2008年12月15日、米軍事専門紙・ディフェンスニュースは中国とロシアが11日に軍事技術分野における知的所有権保護の協議に調印したと報じた。これにより中国はロシアの技術を利用して製造した兵器を勝手に輸出することが出来なくなるという。19日、東方網が伝えた。

中国はロシア軍需産業にとって最大のお得意様であると同時に、最大のライバルでもある。その典型例ともいえるのが中国「自主開発」の戦闘機・殲撃11。ロシアのスホーイ27を元に開発されたものだが、中国は「自主開発」したものと主張、自国で配備するばかりか、パキスタンなどにも売却、軍事兵器市場でロシア製戦闘機と競合関係にあるという。

中国の「パクリ」行為にロシアも態度を硬化、新規の兵器売却契約をストップするなど両国の対立が続いていたが、このたび軍事技術分野における知的所有権保護が両国間で確認されることとなった。同協議によりロシアから技術供与を受けた兵器の輸出が禁止されたため、中国製兵器の輸出に影響が生じると見られている。


どれどれ・・・とディフェンス・ニュースの記事を見てみると・・・


Russia, China Sign Intellectual Property Agreement - Defense News
It is unlikely that this intellectual property agreement will stop China from copying Russian arms, but Russia will have more leverage to demand that China stop re-exporting its copies to other countries, said Konstantin Makiyenko, a defense analyst with the Center for Analysis of Strategies and Technologies, a think tank in Moscow.


この知的所有権協定の合意があっても中国がロシアの武器をコピーするのを止めることはありそうもない、と半ば投げ遣りな識者のコメントが最後に載っていました。とはいえこれまで以上に制約が厳しくなる事は事実で、中国も派手な振る舞いは出来なくなるとは思います。

これで中国の国産空母に搭載される艦載戦闘機はSu-33になるでしょう。

一方でフランスと中国の関係はチベット問題で急激に悪化しており、一昔前に「中国への武器輸出が解禁され、ルクレール戦車やラファール戦闘機を中国が買うのではないか」という懸念は何処かへ吹っ飛びつつあります。

フランス製品ボイコットか、仏大統領とダライ・ラマの会談受け―中国 : Record China

ブラジルの原潜建造に技術支援、通常型4隻でも フランス : CNN

大口の顧客を別にGetしたので、フランスとしては中国への兵器販売は取り立てて急ぐ必要が無くなったのでしょうね。ブラジルはヘリコプターや戦闘機までフランスから買う予定です。原潜を何に使う気なのかは知りませんが・・・
00時57分 | 固定リンク | Comment (54) | 軍事 |
2008年12月15日
自分は一年位前まで、P-X(XP-1)は4発のエンジンを洋上哨戒中に1〜2基停止して運用するものだと思っていました。航空専門誌でP-Xに関してそのような解説があった事、プロペラ動力とジェット推進の混合動力であるP-2ネプチューン哨戒機はターボジェットエンジンを離陸時と緊急時以外は使用しない事、ターボファンエンジン4基搭載のニムロッド哨戒機も哨戒飛行中はエンジンを1基停止して3発で飛ぶらしい(英文資料を確認せず、誤情報の可能性)というのを聞いていたので、ああP-Xもそうなのか・・・と思っていたのです。

ですがP-X/C-Xに関して熱心に追い続けているCHF氏によると、P-Xは哨戒飛行中のエンジン停止を行わないとの事です。「経空脅威増大に対する回答としての4発化」であるが故に「n発停止しての"運用"」は有り得ない、というわけで、自分も調べ直してみると確かに自衛隊側はこれまでP-Xについて「エンジンn発停止しての運用」という話を一切、していませんでした。そうなるとP-Xのエンジン停止の話は一体何処から出てきたのか、航空専門誌は何をソースにしていたのか・・・もし根拠が何も無い場合、何時の間にか唱えられていた俗説という事になります。


アグスタウエストランド、日本支社開設 : 清谷信一公式ブログ(2008/04/09)
それからレセプションで川重航空宇宙カンパニーの堀川英嗣執行役員に、PXは低空では4発のエンジンの内、2発を停止して2発のみで飛行するという俗説がホントかどうか尋ねてみました。氏は即座に電話でPXの主設計者に連絡をとってくれました。結論としては低空では2発で飛ぶというのはガセでした。
 
レシプロ機ならばプロペラを停止させてそのような運用も可能ではあるが、ジェットの場合、エンジンを止めてもファンが回ってしまって抵抗が増えるし、再起動も問題である、よって低空でも4発で飛ぶ、ということでした。


概ねこの情報で結論は出たようにも思えますが、残念な事にこの情報は仲介者を通した又聞きで、PXの主設計者から直接取材した結果ではない事です。PXの主設計者の名前を出した上で「設計者はこう語った」という内容の報告であるなら、決定打と言えたのですが・・

そして問題は最近、日本を代表する航空専門誌が二誌、上記と相反する内容の記事を連続して掲載したばかりという事です。


航空ファン 2008年11月号 63ページ 「やっぱり日本にはP-1が最適‐P-8Aポセイドンとの徹底比較」 文:小野正春
一般的に、陸上基地から運用する固定翼哨戒機は、目的海域までは高高度を高速で巡航し、目的海域に到着後は低高度を低速で飛行する。また、基地との往復と哨戒中の飛行時間を合わせると、長い航続距離が求められる。こうした運用構想を満たすべく、XP-1は比較的小型のエンジンを4基搭載し、洋上を哨戒中は1〜2基のエンジンを停止する事で、燃料の消費量を抑えるとされている。


航空情報 2008年12月号 18ページ 「XP-1はASWをどう変えるのか PartT XP-1の実力」 文:松崎豊一
ASW機は作戦海域において、低空を400km/h前後の低速で長時間哨戒飛行を行う必要がある。そのためP-Xは敢えて推力6tクラスのエンジン(F7-10)4発とし、哨戒作戦時にはそのうち2発を停止し、双発による燃料消費に有利な推力で飛行する方式を取っている。P-8Aは推力12tクラスのCFM56-7双発で、合計推力はP-Xと同等であり、当初は片発停止による哨戒飛行を計画していたが、やはり安全性、操縦・安定性などに問題があるとみえて、この方式は不採用となる可能性が高い。恐らく両エンジンの推力を絞った状態での哨戒飛行を行うことになるのだろうが、燃費の点でP-Xより優れているとはいえないだろう。


ほぼ同時期に、二つの異なる紙面上で、異なる人間が「XP-1(P-X)は哨戒飛行中にエンジンを停止させる」という記事を書いています。しかし両者の記事は共にハッキリした根拠を明示しておらず、これでダブルチェックが出来たという事にはなりません。「航空ファン」の記事を書いた小野正春氏、「航空情報」の記事を書いた松崎豊一氏は一体どういった情報を元に書かれたのでしょうか。海系は「世界の艦船」しかないのに比べて空系は専門誌が3誌以上あるので、そのうち「Air World」や「J-Wing」が後追い記事を書いてくれると良いのですが。
22時25分 | 固定リンク | Comment (220) | 軍事 |
2008年12月12日
先月に「インド洋で活動中のドイツ海軍、武器使用基準緩和を検討」という記事を東京新聞が報じたことを紹介しましたが、その続報です。


ドイツが艦船派遣へ ソマリア近海の海賊対策 : 東京新聞
 【ベルリン=三浦耕喜】ドイツ政府は十日の閣議で、ソマリア近海で相次ぐ海賊被害に対応するため、海軍艦船を派遣することを決定した。対海賊作戦を発動した欧州連合(EU)の一員として参加する。派遣計画では武器使用基準を緩和することで、強制的な船舶検査も認めている。

計画では、艦船一隻と人員千四百人を動員し、EUが九日から開始した対海賊作戦に参加する。任務は逃亡する海賊船の追跡や相手の同意を得ないでの船舶検査も含み、抵抗された場合の武器使用を認めている。ドイツ政府は十九日に連邦議会の承認を求める。

現在、ドイツは米国主導の有志連合によるテロ対策「不朽の自由」作戦(OEF)に艦船を派遣。ソマリアが面するアデン湾などで警戒に当たるが、海賊対策は主任務ではなく、船舶検査も相手の同意が必要だった。

EUの対海賊作戦には、ドイツのほか英国、フランス、イタリア、スペイン、ベルギー、オランダが参加。合わせて艦船六隻、航空機三機を派遣する。


議会の承認が得られ次第、ドイツ海軍は軍艦を一隻、対海賊作戦に派遣します。
しかし、これにはギリギリ間に合いませんでした。


<ドイツ客船>アデン湾の海賊避け、乗客246人空路で迂回 : 毎日新聞
客船は先月末、イタリアの港から出発。スエズ運河を経て紅海を南下中だが、アデン湾通過にあたり独海軍の護衛を独政府に依頼したが断られたため、船長が「予防的措置」として決断したという。


ほんの少し、タッチの差で護衛任務は適用できなかったみたいです。日本のタンカーを襲った海賊船を発見しておきながら臨検できなかった事に加え、自国の客船も守る事が出来なかったドイツ海軍インド洋派遣部隊ですが、法環境の整備を行った上で遂に海賊退治に乗り出します。もし日本がドイツと同じ選択をするというなら、ドイツと同じように武器使用基準を大幅に緩和する必要性があります。それが出来ない、交戦規定の議論すら行わないのであれば、行くべきではありません。現状の日本政界ではこの問題について与野党間でまともな議論は行われておらず、今のままでは海上自衛隊が参加すべきではないでしょう。


米、陸上作戦の承認要求=ソマリア海賊制圧で決議案−安保理 : 時事通信
米国は11日までに、ソマリアの海賊掃討のため、同国沿岸部での空爆を含む拠点制圧作戦実施を1年間の期限付きで認める決議案を国連安保理各国に配布した。安保理は既に、ソマリア領海内での各国艦船の軍事行動を承認しているが、米国は陸上での作戦も不可欠と判断した。


とうとうソマリア沖での海賊対策は、海上での行動のみならず沿岸部の拠点を掃討することまで視野に入って来ました。地上掃討戦はロシアもすでに主張しており、国連安保理がこれを承認すれば、EU諸国を含め大規模な戦力が送り込まれます。

自衛隊がソマリアでの作戦に参加するという事は、単なる海賊退治というよりは、戦争に参加する事と同義であることを十分に理解すべきです。インド海軍のように海上で誤って民間人を巻き添えにする可能性や、地上戦で確実に発生するであろう誤爆の存在を前提に議論を行い、それでも海賊を取り締まる事のメリットが上であると、大勢の国民が納得した上で行かせるなら構いません。

しかしこの問題に熱心な人(積極的な臨検活動の行使を求める人)は、海賊取り締まりのメリットばかり強調し、自衛隊が初めて人を殺すことになる可能性の高い任務であることを軽視しているように思えます。
19時51分 | 固定リンク | Comment (78) | 軍事 |
2008年12月10日
大陸軍、じゃない、タイ陸軍が最近、ロシア製のMi17輸送ヘリコプターを導入しようと計画しています。しかしこの話で何を勘違いしたのやら・・・


わざわざ旧式ヘリを買って探られる、タイ陸軍の“腹の中” : フォーサイト12月号
確かに、タイ陸軍が以前導入を検討していた米シコルスキー社製の「UH60(ブラックホーク)」に較べると、Mi17は三分の一の価格ながら、搭載人員は三倍と「お得な買い物」ではある。しかし、Mi17は初飛行が一九七五年の、旧式のヘリコプターだ。

このため、九月に誕生したソムチャイ内閣で、一時は副首相に返り咲いたチャワリット元陸軍司令官の存在が、今回の決定に影響したとの観測が出ている。


初飛行が1975年のMi17は旧式ヘリコプターなのですか。
ちなみに比較として上がっているUH60の初飛行は1974年です。



なんという馬鹿記事、あっという間に論拠が崩壊。Mi17の原型のMi8は初飛行が1961年ですから、その辺を書いておけばまだマシだったんですが・・・もう後の祭りです。なんでMi17の初飛行年度を把握しておきながらUH60については調べなかったのでしょうね。

それとタイ陸軍がMi17の導入を検討するのはこれが初めてではありません。


kojii.net 今週の軍事関連ニュース (2005/08/26)
コメでヘリを買う (JDW, 2005/8/17)
タイはソ聯時代の末期にコメ輸入に関して発生した 3,600 万ドルの借款返済手段として、ロシアから、2-4 機の Mi-17 ヘリを入手する検討を進めている。ただし、実現に際してはいろいろとハードルが多い。


ロシアから「借金のカタ」として兵器を受け取るという選択は、韓国が既に行っている事が広く知られています。マレーシアでもパーム油の代金としてMiG-29戦闘機を受け取るなど、国家間取引としては結構常態化している物々交換(バーター取引)です。

この時のタイの契約は翌年の軍事クーデターのゴタゴタで流れてしまったので、今回の契約はその点を踏まえれば、それほど奇異な契約ではないと思います。これまで確かにタイ陸軍はアメリカ製兵器が中心で、ロシア製の主要兵器は導入してきませんでしたが、中国製の戦車や多連装ロケットは既に導入した事がありますから、ロシア製の兵器を導入するからといって大騒ぎするようなことではないでしょう。

Mi17についてはインド空軍が80機購入する大口契約を締結したばかりです。Mi17は決して旧式の時代遅れなヘリコプターではありません。改良が続けられ、今後も中型輸送ヘリコプターのベストセラー機として、世界中の空を飛び続けます。なお中国では今年の5月からMi171(Mi17の改良型)のライセンス生産を始めています。契約上は兵器扱いではなく実際に生産されるタイプも民間型なんですが、輸送ヘリコプターの場合は軍用型も民間型も本質的な違いはなく、人民解放軍が使用します。Mi17シリーズはロシア製ヘリコプターとしては今でもよく売れている人気製品なんです。だから「わざわざ旧式ヘリを・・・」などと馬鹿にされるような代物じゃ、ありませんよ。

ミル Mi-17ヒップH輸送ヘリコプター : UNITED DEFENCE
23時35分 | 固定リンク | Comment (107) | 軍事 |
2008年12月04日
事件発生当初からそうじゃないかなとは思っていたけど、ほぼ決定的に・・・




11月23日に、南オセチアの境界付近でグルジアのサーカシビリ大統領とポーランドのカチンスキ大統領の乗った車の車列に銃撃が加えられた事件ですが・・・


サアカシュヴィリ狙撃事件の真相‐ニコニコ動画
最近のサアカシュヴィリの政治的立場の急速な悪化と、そんな中で南オセチアとの境界線付近で発生した、ポーランド大統領をも巻き込んだ謎の“狙撃事件”(2008/11/23)。番組では両者の因果関係を追っていきますが、端的に言えば、結局その事件はサアカシュヴィリが苦しまぎれに起こした、自演に近い茶番だったらしい。事件を調査したポーランド国内保安局も「グルジアの自演」との報告書を出し、その内容は現地の新聞でも報道されました。それにしても、グルジア側の仕掛けは穴だらけだったようです。

Shooting a ‘Georgian provocation’ according to Polish security : Polskie Radio
Poland’s Minister of the Interior, Grzegorz Schetyna, announced today that Prime Minister Donald Tusk will receive the official report regarding the shooting in Georgia on Sunday this afternoon, and claimed that, according to the Internal Security Agency (ABW) investigation, it was a “Georgian provocation.”


グジェゴシュ・スヘティナ副首相兼内務行政相によると、ポーランドABW(国内保安局)がドナルド・トゥスク首相に提出した報告書は、『グルジアによる挑発』、つまり自作自演行為であったと結論付けられています。本来ならばグルジア寄りの立場にあり、一緒に銃撃されたとされる側であるポーランドからも疑われている始末では、もはやどうにもならない・・・どうするんですか、コレ。
23時28分 | 固定リンク | Comment (60) | 軍事 |
2008年12月03日
BBCによる糾弾番組以降、一気にグルジア批判を始めた欧米のマスメディア(欧米に見捨てられ始めたサーカシビリ)、そしてグルジア国内での政権批判の追求に、とうとうサーカシビリ大統領は南オセチアへの先制攻撃を公式に認めました。

「先に攻撃した」グルジア大統領認める 「正当」とも : 朝日新聞

そして12月にNATO外相会議で予定されていたグルジアとウクライナのNATO加盟の判断は、結論を先送りする事が決まりました。

NATO外相会議:グルジアとウクライナ、加盟候補国先送りへ 米、慎重姿勢に転換 : 毎日新聞

欧州はグルジア戦争の原因を調査し、来年夏を目処に国連に報告する予定です。結果次第ではグルジアのNATO加盟は更に遠のく事になるでしょう。NATO加盟に失敗すれば、サーカシビリ政権の存続は非常に危うくなります。

そしてこの大変に拙い状況の中で、耳を疑うような告発がありました。


元駐露グルジア大使、開戦当初の内幕を暴露‐ニコニコ動画
2008年11月25日、グルジア議会により南オセチアでの戦争の実相究明のため開かれた公聴会において、参考人として召喚された元駐露グルジア大使、キツマリシュヴィリは「戦争を始めたのはグルジア側である」と主張し、さらに「サアカシュヴィリとその取り巻きは5月にアブハジアを、7−8月に南オセチアに侵攻する計画を立てていた。一方的に米国の支援を当てにし、それがあればロシアは積極的に介入しないとの楽観的な予想をしていた云々」と当時の指導部の内情を暴露しました。この模様がTVで中継されたことで、グルジアの世論は現在大騒ぎになっています。Ex-ambassador blames Georgia for war with Russia : Associated Press





暴露話が本当だった場合、予想されていた以上にサーカシビリ政権の無能さが際立ちます。なんという楽観論で始めた戦争なのだろう・・・自身の何十倍も強大な敵に仕掛けるにしては、あまりにお粗末過ぎる気がします。
01時11分 | 固定リンク | Comment (78) | 軍事 |
2008年11月30日
インドのムンバイで起きた同時テロは200人近い死者を出す惨劇となりました。捕まった犯行グループの供述からパキスタンに本拠を置くイスラム過激派組織「ラシュカレトイバ」の関与が疑われています。これはまだ初期段階の情報なので確定ではありませんが、ラシュカレトイバが犯行グループだとするとインドとパキスタンの関係が非常に危うくなります。

何故ならラシュカレトイバはアフガニスタンのタリバーンと同じく、パキスタン三軍統合情報部ISI(Inter-Services Intelligence)の子飼い組織である疑いが濃厚だからです。


インドにおけるテロの新しい流れ : フォーリン・アフェアーズ
ラシュカレトイバは1989年にパキスタンの宗教組織が立ち上げた軍事部門だ。1990年代には、この集団はパキスタンの軍統合情報部(ISI)から資金と訓練を得る代わりに、ジャム・カシミールのヒンズー教徒をターゲットに攻撃を行い、インド内のイスラム過激派を訓練することを約束したとも言われている。

9・11後、アメリカ政府がラシュカレトイバをテログループのリストに公式に加えると、イスラマバードはこの組織を非合法化した。その後、この組織は地下にもぐり、分散し、違う名前を用い、テロの犯行声明を出さなくなった。しかし、ラシュカレトイバは、2001年12月のニューデリー議会の襲撃テロ、2006年のムンバイの列車爆破テロ、2007年2月のインド・パキスタン横断鉄道の爆破事件にも関与していると考えられているし、2008年11月のムンバイでのテロへの関与も取りざたされている。


そこで今回のインド同時テロに関して、ISI長官がインドに呼ばれて直接問い質される事になっていたのですが、僅か数時間後に取り止めになりました。

パキスタン:ISI長官訪印を撤回 軍統制の弱さ露呈 - 毎日新聞

911テロ後、公式にはラシュカレトイバとISIとの関係は切れたことになっていますが、インド側はそうは思っていません。これはアフガニスタン政府がタリバーンとISIの関係が切れていないと思っているのと同様です。そしてこれについてアメリカやヨーロッパ諸国も同じ疑いを抱いています。パキスタン政府はISIを統制できておらず、ISIは独自の活動を行っていると疑われています。この事についてパキスタン政府自身も頭を悩ませています。


情報機関の政治部門廃止か パキスタン
【イスラマバード24日共同】パキスタンの民放ドーンニュースなどによると、同国政府筋は23日、軍の情報機関「3軍統合情報部(ISI)」の政治部門を廃止すると語った。本来の任務である情報活動に人員を配置転換し「テロとの戦い」に傾注するとしている。

政策決定にもかかわるISIは絶大な影響力を誇り「国家内国家」とも呼ばれ、国内政治にも度々介入してきた。政府高官は同ニュースに「(ISIは)今後、政治家の調査や政治工作、操作は行わない」と語った。

今回の「廃止」には、政権基盤が弱く軍とのかかわりが薄いザルダリ大統領が、ISIの影響力を排除しようとする狙いがありそうだが、その実現可能性を疑問視する声もある。

ISIは旧ソ連軍による1979年のアフガニスタン侵攻後、イスラム過激派に資金を供給し、アフガンの旧政権タリバンやパキスタンのイスラム武装勢力を育成したとされる。


1948年に設立されたISIは、クーデターで成立したパキスタン初の軍人政権アユーブ大統領の時代、1950年代後半から急激に権限が拡大され、今やパキスタン国内で強大すぎる存在と化しており、ザルダリ政権はISIの権限を取り上げようとしています。2ヶ月前にISI長官の首を挿げ替えたのに続き、大胆な組織改革を行おうとしています。




しかし5ヶ月前の7月の段階で仕掛けた、ISIを内務省の管轄下に置こうとする政治闘争は軍部の強い反対に遭い頓挫しており、今回のザルダリ大統領の目論見が実現するかどうかは全く不透明です。下手をすれば暗殺の危険性すらあります。この国では昨年、ブット元首相が暗殺されたばかりです。

ISI長官の首を挿げ替える程度のことはムシャラフ前政権の時代にも行われており、前長官のナディーム・タジ、前々長官のアシュファク・パーヴェズ・キヤニ、前々々長官のエサン・ウル・ハクの何れもムシャラフ派です。4代前のISI長官マフムード・アーメドはムシャラフと仲が悪く、タリバーンと深い繋がりがあり、911テロ実行犯の関係者への資金提供の疑いがあったことで解任されています。ISIはアルカイーダ本体との繋がりすら疑われており、この時にムシャラフ政権はISI内部を浄化した筈でした。ですが、水面下で表に出さないように処理してきた為に粛清しきれてはいませんでした。

2001年のインド国会襲撃事件でも、犯行グループ(「ラシュカレトイバ」ないし「ジェイシモハメド」が疑われるも犯行声明無し)とパキスタンISIの関与が疑われ、印パ両国は国境線に大規模な兵力を移動させ、一触即発の状況になりました。印パ両国が1998年に核武装した後、1999年にカシミールでカルギル紛争が起きた時には、全世界が核戦争への発展を懸念しました。核武装国同士の直接戦争は小規模な紛争レベルであっても常に核戦争の危機を孕んでいます。

印パの情勢不安、アフガニスタンでのタリバーン掃討、そしてアルカイダとの対テロ戦争について、パキスタン三軍統合情報部ISIは現在も鍵を握り続けている疑いがあります。パキスタン政権によるISIのコントロールが失敗に終わった場合、最終的にはアメリカが動き出すでしょう。そして次期アメリカ大統領バラク・オバマは、パキスタンへの介入を積極的に行う事を政策に掲げています。次期オバマ政権では国防長官にゲーツ長官が留任する可能性が高くなっていますが、これはゲーツ長官が主導したイラクで行われている新戦略(敵勢力の一部を味方に引き込む)が評価されているのと同時に、元CIA長官であるゲーツ長官が同じ情報機関であるISIへの対応に適していると判断されたのかもしれません。
03時43分 | 固定リンク | Comment (71) | 軍事 |
2008年11月28日
先日、インド海軍のフリゲート「タバール」がアデン湾で海賊船を撃沈したのですが、実はタイのトロール漁船で、海賊に乗っ取られたものだったらしく・・・漁船乗組員が撃沈時に海賊と共に乗船していたかどうかは不明ですが、十数名が行方不明のままです。




インド洋での海賊退治の困難さがいきなり露呈されてしまいました。もし日本も海上自衛隊の艦艇を出して、これと同じ様な事をしてしまったら、大変な事になります。時の政権など吹き飛んでしまいかねません。相手船に臨検班を乗り込ませれば様子を探れるものの、送り込むのに手間が掛かる上に、敵船上で反撃されれば臨検班が重大な危機に晒されます。距離があるうちに艦載砲で処理してしまえばこちらは安全ですが、どうしてもこのような誤認、巻き添えの問題が発生し易くなります。

一方でインド海軍側は、ただのトロール漁船にしては爆発が派手すぎると懐疑的です。



「攻撃を受け沈んでいく船籍の写真を見ると、非常に大きい火柱が立っていることが分かる。つまり、船には大量の武器が積まれていたということ以外に他ならない。ただのトロール漁船があんなに激しく爆発するわけがない」

インド国防省関係者は、「重要なのは、敵がわれわれを攻撃しようとして、われわれの行為は正当防衛だったということだ…船がなんであったとしても。あれは公海上の海賊船で、その行為は挑戦的だった」と語った。


ただ、漁船の爆発といえば、ちょうど1年ほど前に日本の根室沖でサンマ漁船が激しい炎上の末に沈没した事例があり、その時の火災の様子が今回のタイ漁船炎上の様子と酷似しています。あの時のサンマ漁船は、とても只の漁船が炎上したとは思えない派手な爆発振りでしたが、もしも「漁船の爆発とはこういうものだ」というデフォルトであるならば・・・2つの事例をちょっと見比べてみて下さい。

【北海道】サンマ漁船が爆発、沈没(画像あり) : 2007/09/27

サンマ漁船炎上 ←根室沖サンマ漁船炎上

タイ漁船炎上 ←アデン湾タイ漁船炎上


・・・・インド海軍、やってしまっちゃったのかも・・・・
01時59分 | 固定リンク | Comment (173) | 軍事 |
2008年11月23日
現在ソマリア沿岸では当事国の了承の元、国連の要請もあり、各国の海軍が艦艇を派遣、既にイギリス海軍とインド海軍が海賊船を撃沈するなど掃討戦が始まっています。ロシアNATO大使ドミトリー・ロゴージンはソマリア沿岸へ地上戦を実施して海賊の拠点を叩き潰せと主張していますが、流石にこれは実現は難しいです。(ロゴージンはロシア民族派愛国主義政党ロージナの代表でもあり、過激な発言は何時もの事ですので、発言は大抵スルーされます)また、新たに韓国海軍も駆逐艦をインド洋に派遣し、活動を開始する予定です。

そんな最中、インド洋に艦艇を派遣しているドイツ海軍は、現地での活動を積極的に行う為に、武器使用基準の緩和を検討しています。


海賊対策 独、武器使用緩和へ ソマリア近海 船舶検査抵抗時に : 東京新聞
【ベルリン=三浦耕喜】ドイツ政府は二十一日、ソマリア近海で相次ぐ海賊被害に対応するため、船舶検査での武器使用基準を緩和する方針を固めた。独国防省筋が本紙に明らかにした。政府は年内に連邦議会の同意を得たいとしている。

ドイツは現在、米軍主導の「不朽の自由」作戦(OEF)の一環で艦船を派遣し、ソマリア近海のアデン湾などで警戒に当たっている。だが、同作戦はアフガニスタンへの武器流入阻止が主目的で、海賊の拘束は任務外。船舶検査も相手の同意が必要となる。

実際、今年四月に日本の大型タンカーが海賊船から発砲された事件では、直後にドイツ軍の艦船が不審船を捕捉したが、武器で抵抗するそぶりを示したため、検査を断念した経緯がある。

このため、ドイツ政府は緊急時の武器使用権限を拡大することで、相手の同意がない場合の船舶検査や、相手船舶からの武器押収を可能にするという。ただ、新基準の下では海賊との「交戦」も想定され、連立与党内から異論も出そうだ。


ドイツ海軍のエムデン号が、日本のタンカーを襲った海賊船の臨検を断念した経緯は、以下のエントリーでも触れました。

「また産経ですか・・・エムデンの艦載ヘリが海賊船を追い払ったわけではありません」
「エムデン報道で京都新聞に劣る産経新聞の姿勢」

この時にも述べましたが、エムデンが臨検できなかった件については「ドイツにも日本と同様の問題がある。共にどうするか考えていこう」とすべき話であって、もし当時に産経新聞がそのような内容の記事を書いておけば、今回のドイツ海軍の武器使用基準緩和の話に繋げて「日本もドイツを見習って武器使用基準を緩和しよう」と訴えることも出来たわけです。しかしエムデンの活躍を強調したいがあまり、臨検できなかった件を全力でスルーしていた産経新聞が今更になって都合の良い箇所だけ摘み食いしてドイツ海軍を持ち出して武器使用基準を緩和しろと言い出した場合、あまりにも節操が無い話で、まぁ何と言いましょうか、なんとも阿呆なことをしたもんだなと冷笑するぐらいしかできませんね。

産経新聞が初志貫徹してエムデンが臨検できなかったことを報道しない方針を貫いた場合、ドイツ海軍が武器使用基準を緩和する事を大々的に報道できません。武器使用基準緩和を大々的に報道した場合は、以前の報道との整合性が問われます。産経的に美味しいネタが転がっているのに料理できない状況を自らから作り出してしまたわけで、後先考えずに大局的な視点を放棄して子供じみた報道を行ったツケが回ってきています。

現時点でドイツ海軍の武器使用基準緩和の話題を報道している日本マスコミは東京新聞だけです。産経新聞は後手に廻るでしょう。もしかしたら触れる事すらできないかもしれません。


私は、海上自衛隊のインド洋での活動は補給活動に専念すべきだと思っています。海賊退治に参加するのであれば、最低でもドイツのように武器使用基準を緩和し、きちんとした交戦規定を定める必要があります。その上で自衛隊が戦闘を行い死者が出ることへの政治的リスクを踏まえた上で、行かせると政府が決断したのであれば、それは仕方のないことですが、よく考えもせずに、行け行けGoGo的な気楽なノリで行かせる気なら、止めた方が良いです。

インド海軍のフリゲート「タバール」(ロシア製クリヴァクV型輸出バージョン)は、海賊退治に重砲を持ち出しました。そんな物を撃ち込めば、死者が出ることは避けられません。自衛隊の駆逐艦が127mm砲を撃ち込む覚悟はあるのか、そして臨検で相手の船に乗り込んだ後で戦闘になった時、船内銃撃戦を行う覚悟があるのか、殺し殺されるリスクをよく考えなければならない筈です。海賊との戦闘は、PKO派遣やイラク派遣などよりも遥かに簡単に死人が出ます。ドイツ連邦軍はすでにアフガニスタンの陸地で殺し殺される経験を積んでいますが、自衛隊にまだその経験はありません。初めての重みを背負うだけの価値がある戦場なのか、もっと議論すべきです。何時の間にか派遣が決まった、という事態にはならないで欲しいです。
05時13分 | 固定リンク | Comment (76) | 軍事 |
2008年11月19日
中国が空母の建造を目指している、というのは取り立てて珍しい情報でもないですが、将官クラスの談話としてはあまりにぶっちゃけ過ぎた内容で・・・中国国防省外事弁公室の主任、銭利華少将の談話です。


初の空母建造を示唆、防衛目的と 中国国防省の高官 - CNN
同少将は、問題は空母を保持するかどうかではなく、何に使うかだとも強調、空母を持つのは軍事大国の夢だとも主張した。


「空母が欲しい」とは子供が高価なオモチャを欲しがるのと同じです、と認めちゃったよ。イヤイヤそこは恥ずかしいから人前では言うのを控えるものなんですが・・・英FT氏のインタビューで銭利華少将(Major General Qian Lihua)が答えた所によると、問題の発言部分はこのような感じです。

"The navy of any great power... has the dream to have one or more aircraft carriers,"

見えを張って空母を買ったはいいが、マトモに運用できていないタイ海軍のように、実はこういう理由で空母を欲しがる国って意外と多いかもしれないですね。銭利華少将によると中国の空母は沿岸防御目的だそうですが、それなら基地航空隊と潜水艦を増強した方がコスト的、戦力的にも優位です。だからこそ空母を欲しがる理由は「力の象徴」という精神的な意味合いと、結局の所は遠隔地へのパワープロジェクションが可能な装備を欲しているのでしょう。後者については少将は「空母を防御目的で1〜2隻程度持つ国と、10個以上の空母を持つ大国(そのような国はアメリカのみ)とは違う」と否定していますが、それは言い訳の理由にはならないです。例えばイギリスは今後保有する空母を2隻体制で遠征用として使う予定であり、英本土防御目的ではありません。1〜2隻の数だからといって自国防御用だ、海外遠征用ではないとする根拠には、ならないでしょうね。


中国、初の空母戦闘群の建造着手か…香港紙報道
この専門家の証言によると、建造中の空母はディーゼルエンジンによる通常推進型で、米国の原子力空母よりは規模が小さく、搭載機は60機程度。4年後には就役し、海賊行為が相次いでいる南シナ海を管轄する「南海艦隊」に配属され、中国の原油輸送ルートを警護する任務に当たる。


海賊ではなくインド海軍の空母と睨み合う羽目になるわけですね。4年後というとちょうどインド向けにロシアで改修作業中の空母「ヴィクラマーディティヤ」が引き渡される予定です。しかし中国の空母が本当に4年後に出てくるかというとちょっと疑問でして、また60機搭載となると結構大きいですし、ディーゼルエンジンという選択もよく分からないです。カタパルトを積まないのであろうことは分かりますが・・・

大連、5万馬力クラスの船舶ディーゼルエンジン製造: 新華網 2007/07/02

中国は5万馬力クラスの船舶用ディーゼルエンジンを国産可能です。これを4基積めば5万トンクラスの空母を30ノット超で走らせる事が出来ます。ですが、ディーゼルエンジンの空母というと速度の遅い護衛空母ぐらいしか過去に例が無く、蒸気タービンでもガスタービンでもない理由がよく分かりません。完成してみたら低速の強襲揚陸艦だったというオチは・・・Su-33を艦載機として欲しがっている様子から有り得ないでしょうけれど。
23時38分 | 固定リンク | Comment (99) | 軍事 |
2008年11月18日
グルジアでの戦争が起こった直後、欧米のメディアはロシアに批判的でグルジアに同情的でした。グルジアのサーカシビリ大統領は悲劇の主人公のような扱いでしたが、その後、何人かの識者はサーカシビリは愚か者だったと切って捨て始めましたが、メディアの全体的な論調はまだ同情的な空気が支配的でした。しかし・・・最近になって流れが変わりつつあります。


BBCによるグルジア軍の戦争犯罪の検証 1‐ニコニコ動画
2008年10月28日、BBCのニュース番組「News night」で放映された第2次南オセチア紛争についてのドキュメンタリー。BBCが南オセチアで独自に行った取材と停戦直後にこの地に立ち入った人権団体の情報をもとに、事実上、グルジア軍による残虐行為があったことを認める内容となっています。まあ、西側メディアのこれまでのグルジア一辺倒の報道の方が不自然だったわけですが、それがいきなり姿勢を変えたというのは、実はサアカシュヴィリに対する「用済みフラグ」ではないか?との話もあります。しかし、日本のマスコミからスルーされてるのは何故なんでしょう?



BBCによるグルジア軍の戦争犯罪の検証 2‐ニコニコ動画
続きです。イギリスでこの番組が放映されたその当日に、グルジア大統領サアカシュヴィリは首相を解任。その何日か後には軍の参謀総長を更迭。どうやら敗戦や戦争犯罪の責任を全て彼らに押し付けることで、政権を維持する腹積もりのようです。しかし、この「戦争犯罪」の件は欧米メディアの各所に飛び火しつつあるようなので、日本のメディアでも、その内言及されるかもしれません。果たして最大のパトロンであったブッシュや共和党ネオコンの面々が退場した後の、サアカシュヴィリの運命やいかに?


次期オバマ政権のブレーンには民主党タカ派で反ロシア最強硬派のブレジンスキーが居ますが、果たしてサーカシビリの新たなパトロンとなるのかどうか・・・無能な味方は要らないと相手にされなかった場合は、サーカシビリ終了のお知らせです。


「ロシアの侵攻準備、盗聴で察知し先手」グルジアが説明 (朝日新聞 9/17)
【トビリシ=喜田尚】8月のロシアとの軍事衝突のきっかけとなったグルジア軍による南オセチア自治州進攻について、グルジア政府が自治州の親ロシア分離派政府兵士の携帯電話の盗聴記録から「ロシア軍がグルジアへの侵攻態勢を整えた」と判断して先手を打った、と欧米諸国に説明していることが分かった。サアカシュビリ大統領も16日の記者会見で認めた。

軍事衝突はグルジア軍が自治州の制圧を目指して進攻し、ロシア側が反攻に出たとされるが、グルジア軍が突然自治州に攻め入った理由については不明な点が多い。武力行使を命じたサアカシュビリ大統領の判断を疑問視する声が欧米諸国にもあり、大統領は説明を迫られていた。


もうこの辺りから説明が苦しくなっています。開戦の決断がよりにもよって「敵兵士の雑談」ですか・・・この程度の理由で先制予防攻撃が許されるなら、例えるならイラク戦争の開戦判断も問題が無かったことになります。


グルジア大統領が国連演説 領土保全で「降伏しない」 (共同通信 9/27)
各国に対し「(国連憲章の)原則のために立ち上がるのか、それとも戦車の下で人が押しつぶされるのを許すのか」と問い掛け、グルジアへの支持を求めた。


国連憲章の原則に照らし合わせると、真っ先にグルジアの開戦行為が問われるわけですが・・・・


グルジア:開戦責任問う声強まる 反露結束に亀裂 (毎日新聞 10/16)
8月8日の軍事衝突後、首都トビリシでは連日、数万人の市民が反ロシアデモを繰り広げた。親欧米派の大統領は求心力を高め、戦闘終結後は「我々はロシアに勝った」と宣言した。しかし、ロシアがグルジアからの独立を主張する南オセチアとアブハジアを国家承認したことを受け、グルジア国内には「両地域を事実上失った」との敗北感が漂う。

今月1日、ブルジャナゼ前国会議長は今回の紛争に関する「43項目の質問状」を政府に突きつけた。「ロシア軍との軍事衝突はなぜ避けられなかったのか」「だれが紛争の政治的、軍事的、経済的結果に責任を負うのか」など政府を厳しく追及している。ブルジャナゼ氏は03年の民主化運動「バラ革命」で大統領になったサーカシビリ氏と共闘した盟友だが、強権的な政治手法を取る同氏への批判を強め、今年4月に与党を離党。現在は政策シンクタンク代表の立場で、ロシアとの対話再開を求める。

欧米メディアはブルジャナゼ氏を次期大統領の有力候補に挙げる。米国は11月の米大統領選後を見越し、これまでのサーカシビリ氏に代わって、ブルジャナゼ氏の後ろ盾になったとの観測もある。




サーカシビリ、下手したら吊るされるなぁ・・・なんでこの男はあのタイミングで大規模攻勢を仕掛けたのでしょう? 本気で勝てると勘違いしたのであれば、戦争責任を負うことになります。




プーチンに吊るされるのではなく、自国民によって吊るし上げられるとしたら・・・何処の国が亡命を受け入れてくれるのでしょうね。
23時21分 | 固定リンク | Comment (93) | 軍事 |
2008年11月09日
ロシア潜水艦が大変な事に・・・

ロシア原潜事故 死者20人、22人病院搬送 日本海を航行試験中 : 日経新聞

消火設備の誤作動による消火ガスが原因であり、潜水艦にはダメージが無く、原子炉にも影響は無いそうです。放射能漏れはありません。


Во время ЧП подводники не могли покинуть задраенные отсеки - источник : РИА Новости
Результаты судебно-медицинской экспертизы подтверждают, что причиной гибели людей стало попадание в легкие газа фреона.


ノーボスチ通信を読むと、消火ガスは Фреон とあり、フロンガスであると分かります。フロンガス系のハロン消火剤なら、通常ならば窒息するような濃度で使用しないので、誤作動を起こし続けて室内のガスが高濃度になって窒息したのだと思われます。

事故を起こした潜水艦は攻撃型原子力潜水艦アクラ級の К-152 Нерпа(Nerpa)です。ネルパは完成後にインド海軍にリースされる予定でした。ネルパとはロシア語でアザラシの意です。
22時14分 | 固定リンク | Comment (85) | 軍事 |
2008年10月16日
これはCGで作られたネタ動画です。機密保持扱いの映像・・・ではないですよねぇ・・・


トランスフォームする戦闘機(動画) : Gizmodo Japan
戦闘機がトランスフォームします。本物です。

機密保持扱いのはずの映像が、先週YouTubeにアップされていました。これは2年前に米ノースロップ・グラマンが撮影した映像。後にF-35と呼ばれる戦闘機のプロトタイプ「X-35」だそうです。デモテープですら公開が許されてなかったはずなのに思いっきりYouTubeにあって、これに関わっていた担当者は肝が潰れそうになったとのこと。

でもこうして公開されちゃったんだからもう機密保持もなにもないですね。


このCG映像、実は1年前に出回っていたものです。ギズモートが「先週YouTubeにアップされていた」と示している動画と同じ内容のものが、別個に去年の段階で既に投稿済みだったんです。

YouTube - F-35B/BF-1 First Flight (追加日: 2007年11月22日)

それに映像の機体はF-35量産型の2号機「BF-1」です。尾翼に思いっきり書かれています。この機体は概念実証機X-35(F-35とは完全別物の試作機)ではありません。ギズモートの説明は色んな意味で間違っています。とりあえずこれ、偽物です。






恐らく一番最初だけ本物のBF-1で、次にCG動画、途中に本物のX-35の飛行映像、最後にX-35の映像を加工してBF-1風にしたものだと思います。(あれ、でもBF-1の完成は昨年12月なので、最初のも全部CGなのかも)


以下の動画は本物のBF-1が、今年の6月に初飛行した時の動画です。ただし普通に飛んだだけで、まだ垂直離着陸モードでの飛行は行っていません。






なおSTOVLモード地上固定テストの動画はこちらで。

「F-35Bがどんどんヤコブレフ化している件について」
19時08分 | 固定リンク | Comment (61) | 軍事 |
2008年10月15日
本日、進水した「そうりゅう」型潜水艦(改おやしお型から呼び名を変更)の2番艦の名前は「うんりゅう(雲龍)」と命名されました。

海自の潜水艦「うんりゅう」進水式:産経新聞
新型潜水艦「うんりゅう」の命名・進水式(動画あり):関西テレビ

流石に水中を行動する艦に「ひりゅう(飛龍)」とは命名し難かったのか(でも「雲」なら似たようなものでは…)、そうなると次の候補は「こうりゅう(蛟龍)」や「かいりゅう(海龍)」あたりになるのでしょうか。そのうち「〜りゅう」シリーズもネタが尽きてくるので、次の新たなシリーズが出てくるのでしょう。

なおこのクラスは5番艦から従来の鉛蓄電池に代わり、リチウムイオン電池が採用される予定で、大幅な性能強化が見込まれています。防衛省の平成18年度 事後の事業評価 政策評価書一覧に「潜水艦用新型主蓄電池の研究」という項目がPDFファイルで載っていますが、これによるとリチウムイオン蓄電池は重量容積当たりのエネルギー密度が鉛蓄電池の2倍以上、高効率の充電が可能であること、充放電繰り返しによる性能低下が少ない事、充放電繰り返し回数が鉛蓄電池の1.5倍以上ある事などの優位点が挙げられています。

欠点としてはリチウムイオン電池は内容物が水に触れると発熱・発火する事です。鉛蓄電池も硫酸を使っている関係上、海水が流れ込むと有毒な塩素ガスが発生するのですが、リチウムイオン電池は火災の危険性がある分、厄介な代物です。そこで新技術により、安全性の高いリチウムイオン電池が開発されています。

発火・爆発の心配がない新型リチウムイオン電池:WIRED VISION
リチウムイオン電池の性能3割向上、寿命2倍に:WIRED VISION
東芝、高速充電リチウムイオン電池を事業化:Design News Japan

最初の記事は誇大広告ですが、酸化コバルトを用いない事で発火の危険性を大きく下げる事が出来ます。日本のメーカーでは酸化チタンを用いているようなので、「そうりゅう」型でもこれが使用される予定なのでしょう。
22時32分 | 固定リンク | Comment (136) | 軍事 |
2008年10月14日
昨年、海上自衛隊のP-3Cは20機がモスボール保存されていると書きました、実際には保管機ではなく予備機に廻され、多くは実働部隊の機体と入れ替えながら使用されており、一部の機体は部品取りにされて飛行不能状態になっている事が分かりました。入れ替えの事は以前にメールで部隊の人から聞いてはいたのですが、名前を出してよいかと聞くと拒否されたので、公開できる情報を探していましたが(公開できる条件のものは意外なほど無かった)、清谷信一氏のブログのコメント欄で、信頼の置ける個人名を含む情報が出ていましたので、それをこちらでも掲載します。


国際航空宇宙展その3 PXは必要か? - 清谷防衛経済研究所
>P3Cの余剰機ですがモスボールされて

この件に関しては最近よく質問されるので、国際航空宇宙展で講演した海上自衛隊幕僚監部、防衛部 装備体系課長 内嶋治1等海佐に確認しました。回答は以下の通りです。

現在海自では余剰機は部隊でローテーションでまわしています。モスボールはしていません。ただ、予算が足りないため、一部の機体は部品取り用に使っており、飛行可能な状態にはありません。

キヨタニ
2008/10/13 12:23



内嶋治1等海佐の名前は清谷氏がジャーナリストの立場から紹介しているので、公開自体に問題は無く、この情報の信憑性は確実に信頼できると判断できます。1年前の「P-3Cはモスボールされている」とする私の見解は此処に撤回し、訂正します。間違った情報をお伝えしてしまい、実に申し訳ありませんでした。

なお私がP-3Cはモスボールされていると判断したのは、海人社の『世界の艦船』誌に、以前から何度も記述があった為です。実はつい先月号(2008年10月号)にもP-3Cがモスボールされているという記述がありました。



シーレーン防衛の切り札 対潜哨戒機「P-3C」配備

P-2Jに代わる対潜哨戒機として昭和56年度より就役が始まった。上の写真は56年12月,アメリカで生産された1〜3号機が厚木基地に到着した際の一齣。その後シーレーン防衛構想の柱の一本である「P-3C 100機体制」のもとライセンス生産が進み,平成9年度までに101機が調達され,海上自衛隊は本家の米海軍に次ぐ「P-3C王国」となった。そのASW能力は導入当初から定評があったが,以後も段階的に近代化が図られており,現在も世界最高峰の性能を有する。下の写真はこの100機体制が完成した頃の撮影だが,現在は潜水艦脅威の減少もあり,80機だけを現役とし,残りはモスボール状態で保管している。総重量56トン,速力731キロで,攻撃兵装は対潜魚雷4本など。

『世界の艦船』 2008年10月号,35ページ



「世界の艦船」に限らず、軍事情報誌は間違いが掲載されている事がよくあるので、複数の情報源から注意深く情報を集めて精査していく事が大事だと改めて認識しました。
02時37分 | 固定リンク | Comment (355) | 軍事 |
2008年10月13日
Президент(大統領)」、「Глава государства (国家元首)」、「Верховный главнокомандующий(最高司令官)」。ロシアの最高権力者、ドミトリー・アナトリエヴィッチ・メドヴェージェフ(Дмитрий Анатольевич Медведев)氏の肩書きです。そのメドヴェージェフ大統領が北方艦隊の空母クズネツォフを視察中に「ロシアの新型空母は原子力でなければならない」と宣言しました。


Медведев: РФ начнет строить авианесущие крейсеры в ближайшие два года|РИА Новости
Президент выразил надежду на то, что "в ближайшее время мы выйдем на первые решения, а на конкретное создание кораблей выйдем в ближайшие один-два года".

Напомнив, что авианесущий крейсер строится в среднем около пяти лет, глава государства высказал мнение, что "к 2013-2015 году мы сможем получить первые результаты, если отсчитать пять лет от принятия решения".

При этом он отметил, что "если делать, то многое делать по-другому". "Энергетические установки должны быть атомными. Это создает другие возможности. Электронная начинка и вооружения также должны меняться", - считает Верховный главнокомандующий. Вместе с тем, он подчеркнул, что "этого не сделать за один год, поскольку не все к этому готовы".


"Энергетические установки должны быть атомными."
(パワープラントは原子力でなくてはならない)


建造のタイムスケジュールにかなり無理があるような気がしますが、機関が原子力になるという事は、これまでの空母建造計画は変更され、大型空母の建造に着手するということなのでしょうか。それとも中型で原子力なのか、或いは大統領の発言とは関係なく、実は最初から原子力空母として設計済みだったのでしょうか。単純に大統領が軍の計画を無視して口走っただけ、というオチなら全ロシアが泣いた。・・・いやまさか・・・

ウリヤノフスク級航空重巡洋艦(原子力空母)|ユナイテッド・ディフェンス

これはソ連時代に計画され未完成に終わった原子力空母ウリヤノフスク。
01時18分 | 固定リンク | Comment (72) | 軍事 |