このカテゴリ「軍事」の記事一覧です。(全420件、20件毎表示)

2008年10月12日
シア・クァンファさんの所より「ベネズエラへ行くロシア海軍艦艇は、核兵器を搭載していない」という情報。


Russia denies nuclear weapons on ships bound for Venezuela - RIA Novosti
MOSCOW, October 9 (RIA Novosti) - Russian warships en route to Venezuela to take part in naval exercises are not carrying nuclear weapons, a Foreign Ministry spokesman said Thursday.

"There are no tactical nuclear weapons on board these ships," Andrei Nesterenko told a news conference at RIA Novosti.

He said the presence of the nuclear-powered Pyotr Veliky missile cruiser in Latin American and Caribbean waters would not violate the Treaty for the Prohibition of Nuclear Weapons.


11月にカリブ海でベネズエラ軍との合同演習を行う為、ロシア海軍が原子力巡洋艦「ピョートル・ヴェリーキイ」を含む艦隊を派遣中なのですが、ロシア外務省はこれ等艦艇には戦術核兵器は搭載されていない、と記者会見しました。「ピョートル・ヴェリーキイ」の動力が原子力機関であることについては、これは条約上、核兵器とは見なされないという見解です。

このロシア外務省アンドレイ・ネステレンコ報道官の発言は、政治的にちょっとした意味を持ちます。ベネズエラのチャベス大統領としては、この合同演習がアメリカに対する威嚇、牽制の意味合いを持つ以上、むしろロシア軍艦が核兵器を積んでくれていた方が効果が大きく、誰も頼んでもいないのに「核兵器は積んでません」と宣言されるのは期待外れな感じです。勿論、ベネズエラの平和市民団体がロシア軍艦の来訪に反対し核兵器搭載疑惑を質した・・・わけでは無いので(そもそもあの国でそのような市民運動は存在しない)、このロシア外務省のメッセージはアメリカ合衆国のホワイトハウスへと向けられています。

「我々は核兵器を持ち込んでおらず、これはかつてのキューバ危機とは全く次元が異なる通常の軍事演習に過ぎない」

アメリカとロシアは第二次戦略兵器削減条約START2で、海軍戦術核兵器の全廃を決めました。海軍戦術核兵器とは、海軍戦略核兵器(SLBM:潜水艦発射弾道ミサイル)以外の全てを指します。核弾頭型トマホーク巡航ミサイルなどが対象です。しかしSTART2は調印されどまだ発効していません。条約として機能していませんが、アメリカとロシアは出来る範囲でSTART2で決めた事の幾つかを、お互いに履行しています。それが海軍戦術核兵器の全廃であり、アメリカとロシアは既に水上戦闘艦への核兵器の搭載を行っていません。

ロシアは今回、特に聞かれてもいないのに核兵器搭載の有無を自分から言い出しました。過去に何度も日本にロシア軍艦が寄港した時、核兵器搭載について何も回答してこなかったのに、アメリカに対しては自分から「核兵器は無いよ」と伝えたのです。

日本の反戦団体は今後、このベネズエラ行きロシア海軍艦艇の事例を持ち出し、日本の港へロシア軍艦が寄港するときに核兵器搭載の有無をロシア政府に迫ってみてはいかがでしょうか。当然、中国やインド、パキスタンや、イギリスやフランスの軍艦の時にも聞いてみるべきでしょう。もしやらないのでしたら、アメリカの軍艦に一々、核兵器搭載の有無を聞くのも止めたらどうでしょうか。
21時15分 | 固定リンク | Comment (28) | 軍事 |

2008年10月05日
ソ連崩壊後、活動が低調になっていたロシア空軍ですが、最近になって偵察飛行を再開し、失われていた士気を取り戻しつつあるようです。ですが、だからといってこれは一体・・・


冷戦時代に逆戻り? 「自信とプライド」を取り戻すロシア空軍兵たち - AFP通信
■偵察飛行は「善意のしるし」

Dmitry Kostyunin副司令官は、長距離偵察の再開は「力の誇示ではなく、世界の融和を目指したもの」だと強調した。スクランブル発進を受けたとしても、ロシアのパイロットは仲間意識のようなものを感じるという。「スクランブルをかけた側も、幸せな気分なんじゃないかな。若いパイロットたちはロシア軍機を見ることができるし、ロシア軍機がいかに美しいかを知ることもできる」

だが、こうしたコメントは、西側諸国から寄せられる数多くの不満とは矛盾している。2月には日本の領空を侵犯したとして、外務省は直ちにロシア大使館に厳重抗議した。

冷戦時代に長距離爆撃機のパイロットをやっていたというKostyunin副司令官は、「(偵察飛行は)力のシンボルであると同時に、善意のシンボルでもある。われわれのことを知れば知るほど、あなた方はわれわれを愛し、そして尊敬することになるだろう」と話した。


凄く・・・キモいです・・・副司令官殿・・・

これって冗談ですよね? もし本気で言っているとしたら、何ともアレ気な話ですが・・・仮にマジだとしても、あくまでエンゲルス基地副司令ドミトリ・コスチュニン大佐の個人的見解であって、ロシア空軍の共通認識では有りませんよね?

いかん、自信が無くなってきた。
00時20分 | 固定リンク | Comment (168) | 軍事 |
2008年09月14日
正体不明潜水艦が潜行したまま潜望鏡を出しながら、領海を侵犯・・・豊後水道の入り口付近です。

国籍不明の潜水艦が領海侵犯 高知県沖|朝日新聞

既に海上自衛隊やアメリカ海軍の潜水艦ではない事は確認済みで、韓国や台湾の潜水艦である可能性も低く、中国、北朝鮮、ロシアの何れかの潜水艦である可能性が高いと思われます。今月25日には横須賀にアメリカ海軍の原子力空母ジョージ・ワシントンが配備予定で、その関連で進出してきた可能性もあります。

取り合えず今の所、情報もあまりないので、漢ちゃんスレを紹介しておきますね。

漢級艦長とともに苦難を乗り越えてゆくスレ其の十五
http://gimpo.2ch.net/test/read.cgi/army/1208317980/97-
まとめサイト
http://hancyan.nobody.jp/

   _          〔//
  ヽッ     臣又    /  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
  >子      糸__   /  ,ィ        漢級 \
                7_//..            \
   ├─     ク      /         \,, ,,/  ヽ
   │       ヨ      /      (●)    (●)|
 ─┴─     心     /       \__■___//
   n            {.         l      //
   l|             ̄フ       l     //
   |l      | l      /         l     | l
   ll      | l    . >      ;:    |    | {
   l|      | l     \ l  l    ;.    l    | !
   |l      | l   ト┬-ヽ. !.   ;     |   | l
   ll      | l   .| l    l   ;..    l   | l
   ll      | l  ' iヾ l      l  ;:     l  j {
   |l      | l   {   |.     ゝ ;:    ー‐-' }
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22時40分 | 固定リンク | Comment (145) | 軍事 |
2008年09月11日
今回のグルジア戦争で、ロシア軍は弾道ミサイルを使用したことが分かっています。ポチ市ではSS-21短距離弾道弾が転がっており、動かぬ証拠となっています。Civil.Ge | Photos

そしてアメリカ海軍の公式サイトに、ゴリ市に着弾したロシア軍の大型ミサイルの不発弾の画像が掲載されています。

A Russian missile lies largely intact in the master bedroom of a home in Gori.|U.S.Navy

直径が大きい・・・もしかして、SS-21ではない? 

ポチ市に着弾したSS-21と画像を比較して見ます。



ゴリ1

ポチ


上がゴリ市で見付かった不発ミサイル、下がポチ市で見付かった不発ミサイルです。下のミサイルは安定翼の特徴などからSS-21の可能性が高いのですが、上のミサイルはそれより一回りは直径が大きいようにも見えます。微妙だし対比できるものも少ないのですが、人物の大きさ、車の大きさから見比べて、大きい気がします。

SS-21は弾体直径が65cm、SS-26(イスカンダル)は直径95cm。スカッドミサイルは直径88cmです。

まさかゴリ市に着弾したものは、イスカンダルなのでは・・・



翼の形状と噴射ノズル辺りの形状から、SS-26 イスカンダルみたいな気がする今日この頃であります。

Posted by 名無しT72神信者 at 2008年09月11日 01:14:47


・・・確かに、これイスカンダルですね。

SS26イスカンダル SS-26イスカンダルの基部(全体)

イスカンダル? 問題の不発ミサイル

ロシア軍のアナトリィ・ノゴビツィン大将はグルジア戦争でのイスカンダル使用を否定していましたが、決定的な証拠が丸ごと見付かった事になります。


ところでこの情報、テクノバーンで見かけてアメリカ海軍の公式サイトに確認に行きました。何時ものように翻訳ミスがあるに違いないと警戒して・・・やっぱりありましたね。


自宅に帰ってきたらびっくり、ベッドルームにはロシアのミサイル|Technobahn
グルジア在住のゴリさん、先月起きたグルジア紛争に被害を避けるためにしばらくの間田舎に疎開。その後、8月25日になって自宅に戻ったところ、びっくりしたという。

なんと自宅のベッドルームには巨大なロシア軍のミサイルが直撃していたからだ。

このミサイル、不幸中の幸いにも、起爆はせず、ほぼ原型を止めた形でゴリさんのベッドルームの壁にめり込んでままの状態で見つかったものとなる。

この写真、紛争地域の視察に訪れた欧州と米国の共同査察団によって撮影されたものとなる。

ドリフのドタバタ・コントのような光景となるが、もちろんコントどころの話では全然ない。


ゴリ(地名)を人物名と勘違いして翻訳ですか。テクノバーンの誤訳の方がドリフばりのドタバタ・コントのように思えるのですが。アメリカ海軍の記事を見付けて来た行動力は評価しますが、余計な翻訳ミスがあるせいでテクノバーンはそのままソースとしては使えません。アメリカ海軍の公式サイトには「ゴリさん」なんて表現は無かったです。どこの刑事ドラマの話ですか、それは。

またテクノバーンは最近、これとは別件で大きな誤報をまたヤラかしています。

バイオ燃料じゃなくて FT 燃料|Kojii.net ココログ別館

アメリカ空軍がテストしている石油代替燃料「FT燃料」(米軍の物は天然ガスがベース)を、バイオ燃料(バイオエタノール)と勘違いして誤報。ありがちな勘違いだけど、致命的なミスをテクノバーンは犯しています。
00時57分 | 固定リンク | Comment (51) | 軍事 |
2008年09月10日
ロシア海軍がジェット飛行艇ベリエフA-42アルバトロスを調達します。原型のA-40は対潜哨戒機ですが、派生型のA-42は捜索救難機です。このシリーズは多目的水陸両用飛行艇と呼ばれ、旅客機型や貨物型、対潜哨戒型や捜索救難型など様々な用途の機体が提案されています。

Российский флот получит первый самолет-амфибию А-42 в 2010 году|РИА Новости

ロシア海軍航空隊のニコライ・クークレフ少将は "В будущем мы планируем закупать А-42 и в противолодочном варианте" とも語っており、将来には対潜哨戒型のA-42(つまりA-40のこと)を購入する予定があると述べています。先ずは捜索救難型A-42を先行して取得する事になります。

A-42は2010年に納入が開始され、2015年以降、老朽化している飛行艇ベリエフBe-12チャイカと交代していきます。Be-12は対潜哨戒型と捜索救難型(Be-12PS)があり、ロシア軍とウクライナ軍が現在も運用中です。そうするとA-42のウクライナへの売り込みもあるかもしれません。またBe-12だけでなく陸上対潜哨戒機イリューシンIL-38メイも対潜哨戒型A-40で更新していくとあります。イリューシンは自社のIL-114旅客機をベースにした新型対潜哨戒機をIL-38の後継に提案していますがまだ採用されておらず、ベリエフの飛行艇にシェアを奪われてしまいました。


ところで軍事ライターの清谷信一氏が「諸君!」4月号で執筆した記事内容に、飛行艇に関する話題があった事を覚えている人も居ると思います。


国産旅客機開発のために「挙国一致体制」を確立せよ|「諸君!」 2008年4月号, 清谷信一
新明和工業のUS-2は現用のUS-1Aの後継で、世界にあまり例のない海自独自の最新鋭の大型飛行艇である。海自の1機あたりの調達コストは約70億円であり、おいそれと消防や民間で出せる価格ではない。実は海自にしてもUS-2を調達する必要性は低い。そもそも軍が救難用に飛行艇を運用しているのは我が国だけである。他国はこのような任務にはヘリコプターを使用している。米軍ですら装備していない贅沢な(あるいは必要性のない)機体を装備する合理的理由は見あたらない。


しかし既に述べたように現在、ロシア軍とウクライナ軍は飛行艇Be-12チャイカの捜索救難型を運用中であり、ロシア軍はその後継機としてA-42アルバトロスを導入する予定です。

Be-12 (航空機) - Wikipedia
A-40 (航空機) - Wikipedia
Beriev Aircraft Company
03時42分 | 固定リンク | Comment (76) | 軍事 |
2008年09月08日
9月3日に書いた記事で紹介した神浦元彰さんのサイトについてなのですが、訂正があります。


防衛省概算要求 クラスター弾対処に着手 調査費など計上(朝日 8月30日朝刊)|神浦元彰 最新情報8月分
代替兵器としては、陸自の5部隊に配備されている多連装ロケットシステム(MLRS)のクラスターロケット弾(子弾644個内蔵)は、子弾のない単弾頭のロケット弾を導入するために約57億円を計上。空自の戦闘機に搭載するクラスター爆弾(子弾202個内蔵)に換えて、精密誘導でピンポイント攻撃が可能なJDAM爆弾(レーザー誘導)を約17億円で導入する。


この部分は神浦さんが朝日新聞の8/30朝刊を読んで自サイトに書き写されたものです。しかしこの転載部分、神浦さんが誤まって転載されたのか、元の朝日新聞記事と記述が異なるようなのです。

×「精密誘導でピンポイント攻撃が可能なJDAM爆弾(レーザー誘導)」

○「精密誘導でピンポイント攻撃が可能な爆弾(レーザーJDAM)」

上が神浦さんの転載部分、下が朝日新聞元記事の記述です。「いせ九条の会」さんの9/1の記事や、他に実際に朝日新聞記事を確認された方からもチェックしました。神浦さんの転載部分は間違っています。・・・朝日新聞記事には「レーザーJDAM」ってはっきり書いてあったのか・・・じゃあ、本当に最新機材の方のLJDAM(Laser JDAM)である可能性が否定できないですよ・・・でもそんなものを自衛隊が導入する話はまるで聞かないんですが・・・予算請求にも見当たらなかったような・・・取り合えず、他に後追い情報が出てくるまで様子見です。ちなみにレーザーJDAMは本当に最新機材で、ボーイング公式サイトによると今年の4月に初めてアメリカ空軍に納入されたばかりで、すぐに他国へ廻せるような余裕はまだ無いと思うのです。(追記:今年7月にドイツ向け販売が成立していました。今すぐ契約すれば2009年の配送に間に合います)

Boeing Delivers 1st Laser JDAMs|April 16, 2008

Boeing Laser JDAM Achieves 1st International Sale|July 24, 2008

そしてつい先月の8月12日、レーザーJDAMは初めてイラクで実戦投入されました。移動目標(トラック)に対して使用し、直撃を得ています。






神浦さんのサイトは、解説部分が間違っているのは何時ものことだから気にしないとしても、新聞記事の転載部分が大きく内容を間違えて転載されていたとは、想定外でした。(内容をそのまま転載したのではなく、短く纏めている過程で間違えたのかも)これはちょっと拙いんじゃないかな・・・恐らく本人に悪気は無く、思い込みで写し間違えたんだと思いますが・・・スカッドミサイルを「スッカド」とか、トラックを「トッラク」などのタイプミスは以前から散見されていましたが、内容の一部分が丸ごと間違っているのは・・・ああ、これが「伝言ゲーム」という奴なんですね。
01時00分 | 固定リンク | Comment (108) | 軍事 |
2008年09月06日
これは・・・一体どういう積もりなのだろう?


米国:軍艦がグルジアのポチに停泊 露と緊張増大も|毎日新聞 9月6日
一方、インタファクス通信はポチ港湾管理者の話として、同艦は全長180メートルと巨大なため入港はできないと伝えた。沖合に停泊したままで、物資は小型船に積み替えて運ばれるという。


ちょっとおかしいですね、ポチ港のキャパシティならブルーリッジ級揚陸指揮艦(満載排水量約2万トン)の接岸には何の問題もない筈です。・・・そういえばバトゥーミ港でも似たような事態になっていました。


人道支援の米駆逐艦がグルジアに到着|AFP 8月24日
米海軍駆逐艦「マクフォール」は、大型でバトゥーミ港に入港できないため、沖合に停泊した。支援物資は、小型船で港まで輸送される。


ポチもバトゥーミもグルジア最大級の港で、黒海沿岸の港としても有数の存在です。それなのにアーレイ・バーク級駆逐艦程度が「大きいから」という理由で接岸できないだなんて、それじゃバトゥーミ港に毎日接岸しているタンカーや定期フェリー(どれも駆逐艦より大きい)はどうなるのでしょう。一方、沿岸警備隊の巡視船ダラスはバトゥーミ港に接岸出来ています。確かにダラスはフリゲートぐらいの大きさで駆逐艦より一回り以上小さいのですが・・・。

YouTube - CGC Dallas reaches Georgia port

ポチ、バトゥーミの港湾の詳細は以下に。水深やバースの長さなどから、2万トン級の船でも問題無く入港接岸できる事が分かります。

Poti Sea Port

Batumi Sea Port

ポチ港については現在、大型船を入れ易い1番バースにトルコ船籍のタンカー「ダフネD」が停泊中で、このせいで揚陸指揮艦マウントホイットニーが接岸できなかった可能性があります。でも他に使えそうなバースが空いているような・・・しかしバトゥーミ港で、駆逐艦マクフォールが接岸できずに巡視船ダラスが接岸していた事については、今一説明がつきません。水深もバース長も十分で、たまたまマクフォール寄港時は岸壁が空いておらず、ダラス寄港時は岸壁が空いていたのでしょうか。

それともグルジア政府の微妙な配慮なのか・・・軍艦を拒否して巡視船を許可した・・・にしては、グルジア政府がそのような事をする必要性が何も無いように思えます。
23時26分 | 固定リンク | Comment (93) | 軍事 |
2008年09月05日
アメリカ第6艦隊旗艦マウントホイットニー(ブルーリッジ級揚陸指揮艦)がグルジアのポチ港に入港しました。




なお救援物資をグルジアのバトゥーミに運んだ第1陣のイージス駆逐艦マクフォールは既に地中海へと戻っています。救援物資を運んだ第2陣のアメリカ沿岸警備隊巡視船ダラスは9/1、バトゥーミ寄港後にウクライナ政府の招待でセヴァストーポリに入港しています。セヴァストーポリ港はウクライナに在りますがロシア海軍黒海艦隊の根拠地でもあり、ウクライナ海軍の司令部もあります。


U.S. warship met by anti-NATO protests in Ukraine's Sevastopol|RIA Novosti 01/ 09/ 2008
The Dallas, which recently delivered humanitarian aid to Georgia's Black Sea port of Batumi, docked at the Crimean port on the invitation of Kiev.


この大胆な行動に対しロシア人が熱烈なお出迎えを。「ヤンキーゴーホーム!」の大合唱・・・日本でも時折、見掛ける事のある光景ですね。

そして5日のマウントホイットニー入港直前の時点で、米露両艦隊が睨み合う事態は避ける旨をロシア外務省が伝えていました。


グルジア支援の米軍艦船への軍事対応なしと、ロシア外務省 |CNN
ロシア外務省当局者は5日、人道支援物資搬送で米政府が海軍艦船などをグルジアに派遣していることに触れ、ロシアは軍事的な対応策は考慮していないと言明した。


3日前の9/2には含むところを見せたプーチン首相でしたが、マウントホイットニーのポチ入港について、今のところは穏やかでヒステリックではない対応です。


NATO艦船に対応策取る=ロシア首相が警告|時事通信
インタファクス通信によると、ロシアのプーチン首相は2日、滞在先のタシケントで、グルジア紛争の避難民への人道支援目的で黒海に派遣されている北大西洋条約機構(NATO)の海軍艦船に対し、ロシアが何らかの対応策を取ると警告した。具体的内容は明らかにしなかったが、「穏やかでヒステリックではないものだ」と述べた。


上の9/2の記事について、ロシア紙ではこの通りに。


РФ ответит на присутствие иностранных кораблей в Черном море - Путин|РИА Новости
без истерики ответит на присутствие иностранных кораблей в Черном море, заявил премьер-министр Владимир Путин.

"Наша реакция будет спокойной, без всяких истерик, но ответ, конечно, будет", - сказал Путин, отвечая на вопрос о присутствии иностранных кораблей в Черном море.


「何らかの対応策は取る」
「穏やかでヒステリックではないものだ」

そして・・・

「もちろん、やるともさ」

プーチン・・・
23時26分 | 固定リンク | Comment (50) | 軍事 |
2008年08月27日
遂にロシア黒海艦隊旗艦・親衛ロケット巡洋艦「モスクワ」が、対アメリカ示威行動の為に積極的な行動に出て来ました。


分断グルジア、新冷戦最前線に=黒海で米ロにらみ合い|時事通信
インタファクス通信によると、ロシア海軍当局者は27日、ロシア黒海艦隊のミサイル巡洋艦「モスクワ」がアブハジアの首都スフミの港に同日入ったことを明らかにした。アブハジア分離派政府のバガプシ大統領が艦船派遣を要請したという。メドベージェフ大統領が約束した安全保障協力が早速始動した形だ。


アメリカ艦隊がやってくる予定のポチ沖合いに進出するのは避けて、緊張が高まり過ぎるのを抑止しつつ、黒海艦隊の旗艦がアブハジア共和国の首都スフミに入港する事で、ロシアがアブハジアの独立を支持する事、ロシア軍がアブハジアを守っていく事を強烈に示す行動です。しかも港の中に居るのでアメリカ艦隊とは直接相対せずに済むので、安全かつ楽でいい。

それでも効果は高かったのか、これを受けて変更したのかどうかは分かりませんが、アメリカ艦隊はポチ入港をまたしても直前に取り止めました。スフミ港はポチ港の北、100kmほどに在ります。


グルジア:米艦船2隻がポチ入港中止、寄港先を変更|毎日新聞
米国は27日、グルジアへの人道支援物資搬入のためイージス駆逐艦マクフォールなど海軍の艦船2隻を同国西部ポチに入港させる計画だったが、直前になって取りやめ、寄港先を別の港に切り替えた。ポチにはロシア軍が進駐しており、緊張の高まりを避けたとみられている。


ロシア黒海艦隊とアメリカ及びNATO諸国の艦隊は、お互いの動向を見据えながら自身の次の行動を変更し、一進一退を繰り返しています。どちらの動きも、無用な緊張の激化は避けつつ政治効果を得ようとしているので、激しい睨み合いには発展しないとは思うのですが・・・
23時54分 | 固定リンク | Comment (93) | 軍事 |
2008年08月26日
アメリカとNATO諸国の艦艇が黒海入りし、24日、イージス駆逐艦マクフォールがグルジア沿岸南部のバトゥーミ港に入港しました。そしてマクフォールは後続の艦と合流し、今度は北上してグルジア沿岸中央部のポチ港を目指し、27日に入港する予定であることが分かりました。


US to deliver aid to tense Georgian port of Poti|AP
TBILISI, Georgia - In a direct challenge to Russia, the United States announced Tuesday it intends to deliver humanitarian aid to the beleaguered Georgian port city of Poti, which Russian troops still control through checkpoints on the city's outskirts.

The aid will be delivered Wednesday by ship, a U.S. embassy spokesman said.


ポチではロシア軍地上部隊が警戒を続けており、アメリカ海軍の行動は直接的な挑戦に近いものがあります。26日、グルジア西方海上近辺では、ロシア海軍黒海艦隊の戦車揚陸艦ヤーマル(ロプーチャ級)が確認されていますが、戦闘艦は居なかった模様です。黒海艦隊の主力であるロケット巡洋艦モスクワは、一旦セヴァストーポリに戻った後に25日、再び出港していましたが直ぐに戻り、26日に帰還しています。アメリカ海軍はロシア海軍の動向を見据えてポチ進出を決めたのかもしれません。



確かに、ロケット巡洋艦モスクワは、8月25日、セヴァストーポリを出港しました。


http://rian.ru/osetia_news/20080825/150665601.html
【ロケット巡洋艦「モスクワ」は、再び黒海へと去った】
セヴァストーポリ、8月25日(RIAノーボスチ)


http://rian.ru/osetia_news/20080826/150684914.html
【ロケット巡洋艦「モスクワ」は、火曜日、セヴァストーポリ基地へ戻った】
モスクワ、8月26日(RIAノーボスチ)


радиотехнического вооружения и бортовых систем
(電波技術兵器および通信システム)
を点検する為の短期間の出港だったようです。

Posted by シア・クァンファ(夏光華) at 2008年08月26日 19:03:11


シア・クァンファ氏のコメントを参考にさせて頂きました。他の指摘も記事の修正に反映します。どうも有り難うございました。

アメリカがポチ入港という大胆な行動に出た背景には、ロシアの決断した重大な政治的決定に対抗する意志を明確にする為でもあると思います。


南オセチア、アブハジアの独立承認=ロシアが一方的決定−国際社会との緊張激化へ|時事通信
ロシアのメドベージェフ大統領は26日、テレビを通じて国民向けに演説し、グルジア領の南オセチア自治州とアブハジア自治共和国の独立を承認する大統領令に署名したと言明した。

国際社会は独立承認を拒否するようロシアに呼び掛けていた。ロシアの一方的な独立承認に対し、グルジアが猛反発するのは必至で、ロシアと欧米の対立も激化するのは避けられない。


・・・まさか、ここまでするとは思いませんでした。独立承認はせず、駐留強化のみを狙っているという予測が欧米の分析でも多かったのですが、ロシアは対立を恐れず平然とルビコン川を渡りつつあります。事態はどんどん悪い方へ転がっています。
22時10分 | 固定リンク | Comment (108) | 軍事 |
今回のグルジア戦争で、ロシア海軍黒海艦隊は対テロ演習の名目でグルジア西方海上に進出し、グルジア海軍と交戦、ミサイル艇を1隻撃沈しています。逃げ帰った他のグルジア残存艦艇は根拠地であるポチに停泊中、地上進攻してきたロシア地上軍に破壊され、壊滅しました。

実戦での戦果を挙げて大きな存在感を示したロシア海軍でしたが、今度はアメリカ海軍が人道支援物資の輸送を名目にグルジアの港へ向かうと宣言、NATO諸国の艦艇も加わりトルコのボスポラス〜ダーダネルス海峡を抜けて黒海に入りました。遂に米露の艦隊が洋上で直接睨み合う事態に発展・・・すると思いきや、米イージス艦がグルジアの港に入港する直前、ロシア黒海艦隊旗艦モスクワはグルジア西方海上でのパトロールを切り上げ、根拠地であるセヴァストーポリに帰還しました。(追記訂正:正確にはノヴォロシースク港を経由して移動しています)

親衛ロケット巡洋艦モスクワ、セヴァストーポリ帰港(2008年8月23日) |Небесный быть

また、当初はポチに入港すると伝えられていたアメリカ海軍イージス駆逐艦マクフォールでしたが、8月24日、南部のバトゥーミ港に入港しています。どちらも政治的な判断で相手に対し配慮した結果で、ロシア海軍は米イージス艦がグルジアに到着する前日に現場海域から立ち去る事で、敵対意志が無い事を表しています。一方で米艦の寄港に反発するロシアは地上軍によるポチ管理を強化すると発表、ポチ東部の監視ポスト(橋を占拠)を残して撤退する方針を撤回し、部隊が居座っている為、アメリカ海軍はこれを刺激しないようポチを避けバトゥーミに入港しました。

人道支援の米駆逐艦がグルジアに到着|AFP通信
>米海軍駆逐艦「マクフォール」は、大型でバトゥーミ港に入港できないため、沖合に停泊した。

なおこのAFP通信の報道は間違いです。バトゥーミ港はグルジア最大級の港湾であり、駆逐艦程度の大きさの艦船が接岸できないような小さな港ではありません。恐らくバトゥーミ港管理事務所とは「岸壁は民間船舶が使用中で空きが無く、取り合えず沖に投錨停泊して欲しい」というやり取りがあったものだと思われます。バトゥーミ港はアゼルバイジャンからの石油積み出し港であり、グルジア経済を支える要所ですが、この戦争ではロシア軍が占拠を狙っては来ませんでした。あまりにもトルコ国境線に近過ぎるからです。

こうしてロシア艦隊とNATO艦隊の直接の対峙は当面の間は避けられました。しかし米イージス艦マクフォールの後続の艦隊がこれからグルジアの港に入港してきます。数が多い為、バトゥーミ港の岸壁が空いていない場合は他の港湾を利用する可能性がある上、欧米がロシアへのポチ撤退圧力として艦隊を利用する決断を下した場合、ポチへの入港もあるでしょう。そうなればロシア黒海艦隊も再び出て来るでしょうから、遅かれ早かれ洋上で睨み合う事態は避けられないのかもしれません。

Russia sends aircraft carrier to Syria|BarentsObserver

ロシア空母クズネツォフが、地中海沿岸にあるシリアのタルトゥース港に向けて出発するという情報もあります。空母はトルコの海峡を通過できませんが、付近に居て睨みを利かせる気なのでしょうか。

なお確認できるだけでアメリカは先行派遣したアーレイバーク級イージス駆逐艦マクフォールの他に、ブルーリッジ級揚陸指揮艦マウントホイットニー、沿岸警備隊のハミルトン級巡視船ダラスを黒海入りさせています。他NATO諸国はスペインとドイツ、ポーランドのフリゲートがトルコの海峡を通過、黒海西部のルーマニアの港湾都市コンスタンツァに入りました。これは元々、この戦争が始まる前から計画されていた合同軍事演習に参加する予定だった艦艇を利用しています。更にトルコ海軍も護衛に参加しています。


Reuters Photo
The U.S. Navy destroyer McFaul (L), heading to Georgia with relief supplies, enters the Bosphorus waterways followed by the Polish Navy frigate ORP General Kazimierz Pulaski in Istanbul, August 22, 2008. REUTERS/Fatih Saribas


黒海入りしたポーランドのフリゲートは、O.H.ペリー級の「ゲネラウ・カジミェシュ・プワスキ」です。ドイツ海軍はブレーメン級フリゲート「リューベック」、スペイン海軍はアルバロ・デ・バサン級イージス・フリゲート「アルミランテ・ファン・デ・ボルボーン」が黒海に入りました。この他にアメリカ海軍のO.H.ペリー級フリゲート「テイラー」も同行しており、前述のイージス駆逐艦マクフォール、指揮艦マウントホイットニー、巡視船ダラスと合わせて合計7隻のNATO艦艇が黒海に進出しています。

ポーランドは、グルジア戦争を見てロシアの脅威を再認識し、アメリカのミサイル防衛導入を決めました。ロシアはこれを強硬に非難し、ポーランドは核攻撃の目標になるとまで脅しましたが、ポーランド政府は自国の軍艦を黒海に派遣する事で、ロシアの脅しには屈しない事を態度で現しています。
01時13分 | 固定リンク | Comment (38) | 軍事 |
2008年08月24日
この件はあまり話題にしてきませんでした・・・というか、以前から知っておきながら見なかった事にしていました・・・いえね、幾ら逆神といえど毎回毎回、誤神託を成就させているわけじゃないんですよ。流石にこればっかりは外してくれないかなぁ、と淡い希望を持っていたわけですが・・・


J-RCOM 神浦元彰 所長挨拶 第93回 (10月 2007年)
そこでFXでF−4EJ改の後継に選定されるのは、米国が開発して配備が進むF−22ラプター戦闘機だと私は確信しています。後継機の候補機としてF−15E(改)やF−18スーパーホーネットなどの名前が上がっています。しかし日本の特別な軍事環境を考えると、FXに選定されるのはF−22ラプター以外にあり得ません。


J-RCOM 神浦元彰 最新情報 7月07年
この際はっきり言うが、日本のFX(次期主力戦闘機)はF−22ラプターしかあり得ない。

さも別の国からFXを導入する可能性があるとか、米国製でもF−15EやF−18スーパーホーネットという可能性は全くない。


J-RCOM 神浦元彰 最新情報 3月06年
さらにこのホームページで書いているように、日本にF−22ラプターがFX(次期主力戦闘機)として本命になりつつある。というよりも、Fー22以外に日本のFXはあり得ないというのが現状である。


J-RCOM 神浦元彰 最新情報 2月06年
米軍事産業界ニュースレター「インサイド・ジ・エアフォース」の最新号によると、米空軍の最新鋭戦闘機F−22ラプターを、日本へ輸出する案が空軍内部で検討され、有力になりつつあると報じた。


流れを見ると2006年2月に「F-22ラプター日本輸出が有力」という情報を得て「日本の次期戦闘機FXはF-22ラプター以外、有り得ない」と確信した神浦さんは、その後2007年に入ってF-22の輸出が非常に厳しくなってくる情勢にも関わらず「FXはF-22以外は有り得ない」と言説を曲げず主張し続けてきました。実に漢らしい・・・見ているこちらは「F-22\(^o^)/オワタ」状態だったんですが・・・しかし、この状況は変わりつつあります。


J-RCOM 神浦元彰 所長挨拶 第102回 (7月 2008年)
最近、私は米政府が日本にF−22戦闘機の購入を認めないと思うようになりました。まだまだ東アジアではF−22戦闘機が存在感を示す必要がないからです。中国が今の兵器の近代化に莫大な国防費を投入し、次世代の兵器が中国軍の中枢を占めるようになって、F−22戦闘機を日本に配備しても、十分に中国軍に敗北感や挫折感を持たせることができます。その気持ちが日本に対する戦争抑止力になると思います。いや本当は、F−22より格安で輸出用のF−35戦闘機を日本のFX(ファントムの後継機)にしても十分なのです。


J-RCOM 神浦元彰 メールにお返事 08年7月15日
ともあれFX選定で、大本命のF−22が消えるとなると、当然ながらF−35が最有力ですが、F4の繋ぎをどうするのか、その辺りでもう一つ大きな山がありそうです。とりあえずF4の後継機は、制空戦闘ばかりか、対地(対艦)攻撃能力を有して、パイロットは2人の複座式ではないアメリカ製の戦闘機が検討されると思います。空自が現有するF−15J戦闘機を改造して、対地(対艦)攻撃能力を付与することが可能かどうかの検討もアリですね。

その辺りから先は、政府も空自もまだ考えが決まっていないようです。今回のFXは誰もがF−22と考えていたので、それがダメになってわかりやすい展開になってきました。すなわち透明性が高くなっています。F−22で大儲けを企んでいた利権政治家は計算が狂ったようです。


ついに最近、逆神の誤神託がブレ始めました。もうこうなってくると結果は読めなくなりました。もし今後、神浦さんが強い調子で「次期戦闘機にF-22は有り得ない」と断言してくるようになると、状況は逆転します。現状ではどっちとも分かりません。

神浦さんには「F-22の生産ラインが閉じちゃったらもう新たに取得は出来ない」という焦りは全く無いようで、中国の戦力がもっと強大化した後でゆっくりF-22を取得すればいいと暢気な事を言っていますが、そんな事は無理な注文です。日本がF-22を取得できるかどうかの時間的余裕はもうありません。それと『F-22で大儲けを企んでいた利権政治家』ってのは何処の誰だよ、というツッコミもしちゃ駄目なんだろうな・・・根拠無く思い込みで口走る人の言動に一々付き合っていても、得るものはあんまり無いです。

要するに神浦さんの主張を見る時は、そのような部分を気にしては駄目で、どのように「誤神託」を見つけて楽しむかに掛かってきます。その意味でF-22ラプター派を絶望のドン底に叩き落していた状況は終わりました。とは言ってもF-22の取得が有力になった事をまだ意味しませんが・・・


【追記】

そうそう、最近の事例で逆神の神通力の高さを証明しておきましょう。



本棚から1年前の「Jwings」2007年8月号を引っ張り出してきました。

P.58 「オレに言わせろ!」第48回目! 軍事ジャーナリスト 神浦元彰 著 より
『そこから私が推測するのは、アメリカは本気で欧州MDを配備する考えではないということである。今のアメリカには、INF全廃条約の破棄を覚悟してまで、欧州へのMD配備を急ぐ事情はない。ロシアもアメリカが本気で欧州にMDを配備しないと知っている。』

さすが逆神さま!!!!見事*的中*です(笑)。
基本的なスタンスとして「イランは核武装なんてできない。単に自分を高く売りつけようとしているだけだ!悪いのはアメリカ!」という思想に溢れた記述です。
そりゃ、逆神託しちゃうよな。願望と事実を取り違えているんだから...

なお、同記事は以下の予測もしています。
ワクワクですね。

『いずれにしてもイランは、近い将来、国連の安保理の決議を受け入れて、核開発の中断を発表するであろう。』

Posted by 真夏のダイバー at 2008年08月18日 09:29:30


ご存知の通り、グルジア戦争を目の当たりにしてロシアの脅威を再認識したポーランドは、アメリカの欧州MD配備に同意しました。見事、1年前の誤神託を成就為されました。アメリカは本気だったのです。

一方、イラン関連の予言は(神浦さんのソレは予測ではなく、予言)、ワクワクできるようなものじゃなく深刻です・・・取り合えず予言されてから1年経ってもイランは核開発の中断を決断しておらず、「近い将来には」という誤神託はやはり成就しつつあります。問題が解決するのは「遠い将来」なのでしょう。
02時33分 | 固定リンク | Comment (142) | 軍事 |
2008年08月21日
イスカンダル続きです。もしかしたらロイター通信がロシア語の翻訳ミスをしている可能性があるので、念の為にロシア語のニュースをチェックしてみました。


"Искандер" с грузинами не воевал|ИнтерНовости
Сегодня, 16 августа, заместитель начальника Генштаба Вооруженных сил РФ генерал-полковник Анатолий Ноговицын сообщил, что российские подразделения не использовали ракетный комплекс "Искандер" в зоне грузино-осетинского конфликта.

Его нет на вооружении в Северо-Кавказском округе.


「Его нет на вооружении в Северо-Кавказском округе.」

・・・北カフカス軍管区の武器庫の中にそんな物(イスカンダル)は存在しない、と言い切っています。ロイター通信の翻訳ミスではなく、アナトリィ・ノゴビツィン大将は本当にこのように会見した模様です。しかし、昨年の段階で北カフカス軍管区では1個ミサイル大隊がイスカンダルを完全充足で受領している事は間違いなく、武器庫の中に在る筈です。

素で忘れてるのか(この方は空軍の人)、すっトボケているのか(一般マスコミなら気付かないでしょうが…)、どういう意図が有るのか無いのか知りませんが、イスカンダルが北カフカス軍管区に配備済みであることは少し調べれば外国の一般人でも分かってしまう事で、ちょっとこの会見は拙いんじゃ・・・ただ、今のところ見付かっている不発弾はSS-21(トーチカ)であり、SS-26(イスカンダル)だとハッキリ判明する残骸は見付かっていないので、証拠はありません。しかしグルジア政府はイスカンダルの着弾を声高に叫んでいます。この辺りは宣伝戦の一環なのでしょう。
20時45分 | 固定リンク | Comment (93) | 軍事 |
昨日紹介した記事なんですが、少し気になった点を見つけました。


Main points from Russian General Staff briefing:Reuters
"There are no Iskander missiles in the North Caucasus military district. The Iskander is a specific type of weapon used for specific tasks and, as for the tasks facing the peacekeeping forces, traditional types of weaponry were sufficient to fulfil those tasks. They were therefore clearly not used and there are no plans to bring them in."


これはロシア軍のアナトリィ・ノゴビツィン准将大将による説明なのですが、

"There are no Iskander missiles in the North Caucasus military district."
(イスカンダルミサイルは北カフカス軍管区にはありません)

と述べています。しかし・・・


Russia to compensate for INF losses with Iskander missile system - RIA Novosti
Russia is planning to equip at least five missile brigades with Iskander-M complexes by 2016. So far, a missile battalion on combat duty in the North Caucasus military district has been fully equipped with Iskander-M, and another battalion will receive the system in 2008.


"So far, a missile battalion on combat duty in the North Caucasus military district has been fully equipped with Iskander-M,"
(今までの所、北カフカス軍管区の戦闘任務に就く1個ミサイル大隊は、イスカンダル-Mを完全充足しています)

ロシア・ノーボスチ通信によると、2007年の段階で既に北カフカス軍管区にイスカンダルが配備済みとあります。一番最初に同ミサイルを受領した部隊です。それなのに何故、ノゴビツィン准将大将は「北カフカス軍管区にイスカンダルは無い」と説明したのでしょうか。

・・・意図的ではないとすると、もしかして素で忘れていたとか? しかし、そんな筈は無いでしょうし・・・
01時53分 | 固定リンク | Comment (30) | 軍事 |
2008年08月20日
ロシア軍は今回のグルジアとの戦争で短距離弾道ミサイルを投入しています。先ず、8/8という早い段階(グルジア軍が未明に大規模攻勢を仕掛けた日)で、SS-21スカラブ(ロシア名「トーチカ」)の自走発射車両をアメリカが確認。恐らく偵察衛星の情報です。


米大統領、胡主席に「指定解除延期」伝える 米中首脳会談:(産経新聞 8/10)
グルジアとロシアの軍事衝突に関しては米政府当局者は米中首脳会談とは別個に、ブッシュ大統領が8日にロシア軍が初めてグルジア領内にSS21ミサイル発射装置2基を持ち込んだという情報を得て、即刻、北京でロシアのプーチン首相に通告して抗議したことを明らかにした。


その後、ロシア軍は南オセチアにSS-21を配備しました。




そしてグルジア軍との戦闘中に、都市に向けて弾道ミサイルを叩き込んでいた事が確認されています。


ポチ市内に着弾した短距離弾道ミサイルRussian Troops in Poti | Civil.Ge
What appears to be an unexploded missile dropped on the military police car in Poti. 「ポチ市で軍警察(憲兵隊)車両に着弾した不発ミサイル」



写真を見る限りは恐らくSS-21です。同じ短距離弾道ミサイルのSS-26ストーン(ロシア名「イスカンダル」)と見比べて、弾体直径の割りに安定翼が大きめで、少し中央寄りに付いている感じがSS-21だろうと思います。しかしグルジア政府は「各所でイスカンダルによる攻撃を受けた」と主張し、ロシア側は「イスカンダルは北カフカス軍管区には元々配備されていない。余所からも運んでいない」と反論している最中です。

Utiashvili Alleges 3 Iskander Strikes - YouTube
「Shota Utiashvili, Head of the Analytical Department at the Georgian Interior Ministry, shows photographs purporting to document debris from three Iskander (SS-26) missiles.」

Main points from Russian General Staff briefing:Reuters
"There are no Iskander missiles in the North Caucasus military district. The Iskander is a specific type of weapon used for specific tasks and, as for the tasks facing the peacekeeping forces, traditional types of weaponry were sufficient to fulfil those tasks. They were therefore clearly not used and there are no plans to bring them in."

そもそもイスカンダルの射程なら、わざわざ南オセチアに持ち込まなくてもグルジアを直撃できるような気が・・・

なお写真のミサイルは弾頭が何処かに行ってしまっていますが、短距離弾道ミサイルは着弾までブースターと弾頭が切り離されない為、クラスター弾頭の子弾散布後である可能性があります。とはいえHE単弾頭でも、着弾の拍子に外れて何処かへ行ってしまった場合もあるので、一概には言い切れません。

それにしても大型ミサイルの不発弾が街中に転がっている光景は凄くシュールです。
00時55分 | 固定リンク | Comment (65) | 軍事 |
2008年08月13日
ロシア軍が作戦行動を停止しました。南オセチアからグルジア軍を駆逐し、アブハジアでもコドリ渓谷に陣取っていたグルジア軍を掃討、両地域の制圧を完了した上での表明です。




後は停戦交渉となるわけですが、当然、この状況下ではロシア側は自分達に優位な条件を要求して来ます。グルジア側としては欧米の外交圧力に期待して、どうにかしてロシアの影響力を削ごうとして来ます。しかし・・・


北野 幸伯 ロシア政治経済ジャーナル No.529 2008/8/10号
グルジアは、停戦の条件として、「南オセチアとグルジアの間に展開する平和維持軍をロシア軍ではなく、NATO軍あるいは国連軍にすること」を求めてくると思います。

そうなれば、NATO加盟国でないグルジアでも、実質NATOに守られることになる。

当然、南オセチアの独立は不可能になるでしょう。


これは話にならないです。国連の停戦監視団はまだしも、国連平和維持軍やNATO軍、EU軍が駐屯するような条件をロシアが呑む筈が無いでしょう。何故、戦争に圧勝している側が譲歩しなければならないのですか。もしグルジアが、欧米の外交圧力を頼みにこんな事を要求してきたとしても、交渉は決裂し戦闘が再開されるだけの話です。グルジアがこの条件をロシアに呑ませるには、一度戦場で大きく押し返さないといけません。しかしそれが出来るくらいなら、8/8からのグルジア軍による大規模攻勢で南オセチア駐留のロシア軍を叩き出せている筈です。まともな軍事的成果を何一つ挙げる事が出来なかった以上、グルジアは譲歩せざるを得ない状況です。

また、ロシアは元々、南オセチア単独での独立を最初から目指していません。究極的には北オセチアとの結合を図ろうとしているのですが、今回の交渉でそこまでは狙ってくる余地はありません。其処までやる気ならトビリシを蹂躙しサーカシビリ政権を打ち倒すぐらいはやってのけているでしょうが、比較的早めに、コドリ渓谷の制圧を一定の成果として戦闘停止している様子から、南オセチアとアブハジアのロシア勢力による支配権を強化できればそれで良いと考えている筈です。




“双頭”ロシア 後手踏む 南オセチア紛争:東京新聞
ロシア軍事筋は「今回の夜間電撃作戦は米軍やイスラエル軍に似ており、ロシア軍では不可能な水準だ」と指摘。

軍事評論家のフェリゲンガウエル氏は「グルジアの軍事力はロシアを除く独立国家共同体(CIS)諸国の中で最精強だ。ロシア軍幹部は一九九〇年代の弱体なグルジア軍の印象にとらわれ、能力を過小評価していた」とみている。


グルジア:大統領、軍事制圧可能と判断?:毎日新聞
ロシアの独立系軍事アナリスト、フェリゲンガウエル氏は「サーカシビリ大統領は軍事力を背景に、いつでも州都制圧は可能とみている。一時撤退したのは国際世論の支持を受けるための政治的判断だ」とみる。



ロシア軍の戦略機動の高さを評価する報道もあれば、グルジア軍の事を大きく評価する報道もあり、一体どちらが本当なのか混乱すると思います。ですが現実問題として、グルジア軍は自ら大規模攻勢を仕掛けておきながら南オセチア駐留のロシア軍を掃討する事に失敗しており、その後の迅速なロシア軍の反撃に為す術がなく、後退を重ねています。「後退は戦略的なものだ」とするには無理があるでしょう、南オセチアから首都トビリシまで殆ど距離がなく、縦深が全くありません。グルジア軍はゴリ市の防衛も放棄しています。中間要衝のゴリからトビリシまでは60kmしかなく、その間に防衛ラインを設定した場合、首都は敵の野戦砲や多連装ロケットの射程に入ってしまいます。それはあまりにも余裕が無さ過ぎる上、たった一枚の防衛ラインを抜かれただけで何もかも失ってしまう事になります。そんな作戦は綱渡りも良い所で、有力な友軍が敵を背後から突いてくれる確約でもなければ自殺行為といってよいです。しかしNATO軍が動いてくれる筈も無く・・・要するにグルジア軍は単純に押されていただけです。ロシアの軍事評論家フェリゲンガウエル氏は、プーチン政権に批判的なノーヴァヤ・ガゼータ紙の評論員も勤めているので(暗殺されたアンナ・ポリトコフスカヤ記者も此処に居た)、その辺を割り引いて判断した方が良いのかも知れません。結局、グルジア軍による再反抗作戦は無かったわけですし。

またグルジア軍の主要装備はまだ西側のものと入れ替わっておらず、戦車や装甲車、戦闘機といった大型装備は依然として旧ソ連時代のものばかりです。実際に報道でグルジア軍の装備はロシア製の戦車や火砲が確認できます。イスラエル製の無人偵察機やアメリカ製の歩兵個人装備、赤外線暗視装置などの導入は進んでいますが、まだ主力大型兵器は纏まった数を導入できていません。つまりロシア軍と質的に大きな差が有るわけではないので、初動での制圧に失敗した後に数で圧倒され始めたら挽回は難しくなります。アメリカは初動段階でグルジアへの直接的な軍事支援は行わない事を表明しており、NATO軍の直接介入も望めなかった以上、グルジア軍は戦術的に手詰まり状態でした。結局、イラクに展開していたグルジア軍はアメリカが送り届けてくれましたが、これはイラク展開前の事前の約束で、急遽戻らなければならなくなった不測の事態にはアメリカが輸送に責任を持つとしていた為で、アメリカとしてもこれ以上の事は出来ませんでした。



フォーリン・アフェアーズ日本語版2007年5月号公開論文より


ロシアの帝国的野心を封じ込めよ ユリア・ティモシェンコ  ウクライナ元首相
歴代のロシア外相は、旧ソビエト地域への介入を「近い外国」における平和維持活動と表現してきたが、こうした介入は実質的にロシアによる支配を意味し、現にロシア軍は、介入した地域で内戦を戦う勢力の一方に加担してきた。ロシアが近隣諸国における安全保障利益を持っているのは事実だ。しかし、ヨーロッパの平和と国際的な安定からみれば、そうしたロシアの利益が軍事的圧力や経済的圧力、あるいは一方的介入という形で満たされるのは好ましくないはずだ。

例えば、コソボがセルビアから独立するとして、ロシアがこれを先例として引き合いに出して、グルジアのアブハジア、南オセチア、アゼルバイジャンのナゴルノカラバフ、モルドバの沿ドニエストル、そしてウクライナのクリミアにおける分離運動を支援する口実とするのを許してはならない。そうしたロシアの支援は、(クレムリンに敵対的な)現地政府を不安定化させることが狙いだ。


1年前のティモシェンコの危惧は当たっていたのでしょうか。



ベルリンの支配者が誰であれ、広大で強力な東方のドイツと国境を接する多くの弱小国にとって、ドイツのパワーは紛れもない脅威だった。西ヨーロッパの指導者たちは、ヒトラーの動機をあれこれとせんさくするよりも、ドイツのパワーに対するカウンターバランスを形成することに時間と労力をあてるべきだった。ドイツが再軍備すれば、もはやヒトラーの動機など重要ではなかった。(1929年から1935年の)ウィンストン・チャーチルの評伝である『荒野の時代』(The Wilderness Years)からも明らかなように、チャーチルは一貫してドイツのパワーに注目すべきだと説き続けた。だがイギリスとフランスの指導者は、チャーチルのメッセージを正面から受け止めることなく、ヒトラーを戦略的なパワーバランス上のリスクとして捉えるのではなく、ヒトラーの動機にこだわり続け、結局、手の打ちようのない事態に直面する。つまり、外交でものをいうのはパワーであって、パワーを形づくる者の動機ではない。


「外交でものをいうのはパワーであって、パワーを形づくる者の動機ではない」

ティモシェンコのこの言葉は示唆に富んでいます。・・・相手の動機なんてどうでもいい、気にするな、問題なのは力を行使できる能力そのもの・・・するとプーチンやサーカシビリの動機をあれこれ考える必要性も、あまり無いのかもしれません。考えてみれば、「敵の意図ではなく能力に備えよ」とは、古来より兵法・戦略論の基本中の基本であり、現実の政治や戦争で相手の意図を気にし過ぎるべきでは無いのでしょう。そういった詮索は歴史家の仕事なのかもしれません。
03時59分 | 固定リンク | Comment (196) | 軍事 |
2008年08月10日
ここ数ヶ月、散発的な小競り合いが続いていましたが、グルジアが北京五輪開催に合わせて大攻勢を仕掛け、南オセチア州都ツヒンワリ制圧を狙ってきました。しかし北京滞在中のロシアのプーチン首相は即座にロシア軍に反撃を指示、北カフカス軍管区の第58軍を南下させ南オセチアに進攻、グルジア軍の駆逐を目指しています。ロシア軍の空爆は南オセチア同様に独立問題を抱えるアブハジアにも飛び火し、グルジアの首都トビリシ近郊や黒海沿岸都市も空爆を受けています。

「8月8日,ロシア-グルジア開戦」 - 軍事板常見問題簡易急造型まとめ

グルジア(英語表記は「Georgia」なのでジョージア州と紛らわしく、英語報道を見るときは注意)のサーカシビリ大統領は総動員体制を宣言、予備役の召集、イラク派遣部隊の帰還・南オセチア戦線への投入を行う予定です。そしてCNNで自らの正当性を訴え、アメリカや欧州の支援を得ようと画策しています。しかし欧米は政治的な支持を表明するも、表立った軍事支援は行わない方針で、依然として主要装備が旧ソ連軍装備であるグルジア軍はこのまま戦い続ければロシア軍の攻勢を支えきれないでしょう。勢いに乗ってロシア軍がグルジア首都トビリシ攻略まで狙ってきたら欧米も黙ってはいないでしょうが、今のところロシア側に其処までの意図は無いようです。

一体グルジアはどのような目論見で大攻勢を仕掛けたのか・・・プーチンが北京に行ってモスクワ不在中の数日以内にツヒンワリを制圧する気でいたなら、目論みは既に失敗。北京五輪開催と合わせて世界世論の注目を浴びるつもりだったのなら、大規模攻勢を仕掛けた側こそが非難されかねず、いくら独立問題の正当性を訴えても逆効果になりかねません。果たして南オセチアから駐留ロシア軍(平和維持部隊)の追い出しを図っても、ロシア本国の地上軍は動かないと判断していたのでしょうか。それとも拙い事態になってもアメリカが助けてくれる筈という見切り発射で仕掛けたのでしょうか。それならばせめて事前に支援の確約を得た上でないと仕掛けるべきではありませんが、現在の状況を見る限りそのような約束をしているようには見えません。どうもサーカシビリ大統領は下手な博打を打ってしまったように思えます。それともまだ表に出てこない密約でもあるのか。





これは4ヶ月前にアブハジア上空を飛ぶグルジア軍の無人偵察機を、ロシア空軍のMiG-29戦闘機が撃墜した事件の動画です。ロシアとグルジアの間で戦争が起こると懸念されたのがこの頃からで、グルジアは攻略の難しそうなアブハジアではなく南オセチアを主戦場に選びました。





8/8、南オセチア。グルジア軍のBM-21「グラート」多連装ロケットと思われる砲撃。
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2008年07月28日
財務省が機動戦闘車を戦車扱いしようとする根拠は「性能が似ているから」だそうですが・・・もし、これだけを理由としていたら財務省の担当官はどう見てもアホの子ですが、腐っても優秀な日本の官僚、単なるアホの子では終わりません。自分の興味の無い分野についてもしっかりと理論武装を行い、防衛省との交渉で、国際条約を持ち出し「機動戦闘車のような車両は国際的に戦車扱いである」と言い出したのです。

その条約とは、欧州通常戦力削減条約、通称CFE条約の事です。同条約第二条C項において、「戦車の定義」が載っています。


CFE TREATY - U.S. Department of State
(C) The term "battle tank" means a self-propelled armoured fighting vehicle, capable of heavy firepower, primarily of a high muzzle velocity direct fire main gun necessary to engage armoured and other targets, with high cross-country mobility, with a high level of self-protection, and which is not designed and equipped primarily to transport combat troops. Such armoured vehicles serve as the principal weapon system of ground-force tank and other armoured formations. Battle tanks are tracked armoured fighting vehicles which weigh at least 16.5 metric tonnes unladen weight and which are armed with a 360-degree traverse gun of at least 75 millimeters calibre. In addition, any wheeled armoured fighting vehicles entering into service which meet all the other criteria stated above shall also be deemed battle tanks.


空虚重量16.5トン以上で75mm砲以上を全周砲塔に搭載する車両は、装輪であっても戦車扱いであると書かれています。ストライカーMGSは全備重量で18.7トンなので、恐らく空虚重量は16.5トンを超えるでしょう。ローイカットは76mm砲なので75mmを超えます。チェンタウロは重量も主砲も両方、超えます。AMX-10RCは重量は16トン弱と軽いのですが105mm砲なので条件を超えます。つまり既存の「戦車砲を搭載した装輪車両」は軒並みCFE条約では戦車扱いされます。(and条件なのでAMX-10RCについてはCFE条約的にはOKか)

ですがこの条約、ヨーロッパ諸国に展開している軍隊にだけ関係するものですから、条約に参加していない日本にはまるで関係無い話で、こんな事を持ち出されても・・・ただ、「戦車の定義」を語る上で簡単には無視できない条件であるのは確かです。とはいえCFE条約の定義には穴が多くある事も事実で、ロシアは新開発したBMPT支援戦闘車はCFE条約に記載されたどの種類の軍用車両にも該当しないと主張し、どれにも該当しない以上、造り放題だと言い出しています。「機動戦闘車とBMPT」

つまりCFE条約を根拠に機動戦闘車の戦車扱いを謀るのであれば、逆に言えばBMPTの類似品ならOKというわけで、「機動戦闘車は戦車とは別枠扱いにしろ、聞き入れられないならBMPTみたいなのを造る」という交渉戦術はアリなんだろうか。無いんだろうな、きっと。

ところでイタリアのOTOメララ社が、チェンタウロにも積める60mm砲を用意しているのは、CFE条約を掻い潜る為・・・なんでしょうか。

HITFIST 60mm - OTO MELARA

CENTAURO - OTO MELARA

「Centauro (8x8) Infantry Fighting Vehicle 60/70 mm gun」という、60mm70口径砲を搭載したモデルがラインナップに載っています。とはいえHITFIST砲塔は元々、ダルド歩兵戦闘車用ですから、CFE条約云々は関係無いのかも・・・
20時40分 | 固定リンク | Comment (258) | 軍事 |
2008年07月27日
ソースが東京新聞、つまり恐らく書いたのは半田滋記者なのでどこまで記事内容が事実に即しているか分かりませんが、「機動戦闘車」について少しだけ希望が持てる話です。


砲塔装備の『機動戦闘車』 予算めぐり火花 - 東京新聞
「戦車そのものではないが、打撃力など戦車の代替機能を持つ」と戦車扱いが相当とする財務省主計局に対し、防衛省防衛計画課は「打撃力、防御力では戦車に劣る。似た装備を持つ各国とも戦車と呼んでいない」と主張する。

防衛省は本年度の予算書に「戦車と併せ、防衛大綱の数量を超えないことを想定」と書き込み、表面上は妥協して財務省に従う姿勢をみせたが、来年行われる大綱見直し作業を通じて「戦車とは別扱い」を狙う。


半年くらい前に「機動戦闘車とBMPT」で予算書では機動戦闘車について「装備化する場合、戦車と併せ、戦車数量(600輌)を超えないことを想定した開発」と書かれていた事を紹介しましたが、まだ防衛省は機動戦闘車の戦車別枠を諦めておらず、抵抗している模様・・・いやいや、抵抗する気なら最初から戦車枠内に入れるとか書くなよ・・・とはいえ、別枠の希望が持てるなら明るい材料です。何とかして財務省を説得して欲しい。

そして東京新聞の記事の最後では、「海外の安い兵器を輸入せよ」と何時も通り何処かで見たような展開。ステレオタイプな主張で、あまり面白みが無いというか・・・


砲塔装備の『機動戦闘車』 予算めぐり火花 - 東京新聞
しかし、機動戦闘車を開発しなくとも、似た装備は米国など他国に既にある。輸入して安くすませることも可能なのに、なぜ国産開発なのか。

防衛省の内部文書は「(海外の)類似装備品は小型化などを目指す陸自の要求性能を満たさない」としている。だが、海外の既存武器に合わない要求性能を出しては国産開発を促し、結果的に防衛産業を保護するのは自衛隊のお家芸。機動戦闘車開発も、防衛産業のための国産化の側面がうかがえる。財務省と防衛省の綱引きの行方をクールに注視する必要がありそう。



既に戦車や装甲車を国産しているのに、機動戦闘車だけ輸入とか有り得ないですから。

それに他国の類似品、ストライカーMGSは軽すぎて主砲の反動を吸収しきれてないし、ローイカットは少し重過ぎて空輸には不向き、そうなると採用できそうなのはチェンタウロくらいですが、これは20年前に開発された車両なので新規購入するには今更感が漂うわけで・・・むしろ海外から輸入しようとする方がどうかな、と思います。90式戦車や次期戦車TK-Xで培った技術、例えば自動装填装置やアクティブサスペンション、車外監視センサーなどを装備した新車両を開発した方が良いと考えるのは自然な流れでしょう。機動戦闘車に何処まで独自技術を装備させる気なのかはまだ分かりませんが、チェンタウロには無い物を持って出てくるのは確実です。

どうせなら全くの新しいコンセプト、例えばアメリカで開発中のMCSのように、電気モーターとゴムキャタピラを採用して故障発生率を抑え、装輪車両に近い運用ができる装軌車両を採用する方法もありますが、開発費用が桁違いになるので主力戦車を犠牲にする覚悟が無ければ出来ません。しかし装軌ならば戦車扱いされても納得は出来ます。

ですが機動戦闘車はあくまで装輪ですから、これを戦車扱いされては困ります。
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2008年07月12日
ロシア新型戦車T-95(ただし正式名称ではない)の続報が入っています。

★くろいあめ、あかいほし : T-95配備は2010年から?

小泉悠氏がノーボスチ通信(英語版)の情報を紹介されています。ロシア新型戦車の実戦配備は2010年以降になるとのこと(以前の情報では2009年でした)、そして搭載される主砲は152mm砲であるそうです。


Russia's new main battle tank to enter service 'after 2010' - RIA Novosti
According to some sources, the new tank may be equipped with a 152-mm smoothbore gun capable of firing guided missiles with a range of 6,000-7,000 meters.


但しノーボスチ通信(英語版)の伝える所ではソース元は明示されておらず、確定情報とするにはまだ少し弱いかもしれません。ですがロシア最大手の通信社の一つが152mm砲搭載と伝えた事は大きな意味を持ちます。ただ、なぜかロシア語版の記事では該当する部分が見当たりません。新型戦車よりもT-90の事を中心に書いている記事は見付かるのですが、2010年以降に新型戦車が出てくるという話の他は主砲サイズについての言及無し・・・この辺りも不安材料です。

T-95の搭載する戦車砲のサイズについては、以前から135mmないし152mmと言われてきました。大方の予想では135mm砲であるだろうとされており、もし152mm砲を搭載して出てくるのなら意外な結果です。ロシア軍の戦車砲は対戦車ミサイルも発射できるガンランチャーでもあるのですが、基本的に通常の戦車砲と同様に、徹甲弾を発射できます。通常の戦車砲にガンランチャー機能を付けたものです。

以前、アメリカとドイツで企画されたMBT70計画では、主砲が152mmガンランチャーでしたが、これは通常の戦車砲ではなく対戦車ミサイルと榴弾(成型炸薬弾を含む)を発射するもので、対戦車徹甲弾を撃つ機能はありませんでした(高初速を与えられない為)。結局この砲は徹甲弾を撃てない事がドイツ側に嫌われ、計画は頓挫する事になります。ミサイルが主弾薬となる為、砲弾消費コストが高くなることも問題でした。ただし高初速を得る必要が無い為、砲そのものは軽く造ることが出来ます。

しかしT-95で搭載されるであろう砲は、純粋なガンランチャーは有り得ず、これまで通り通常の戦車砲である上にガンランチャー機能を付けたものになる筈です。純粋なガンランチャーは、対戦車ミサイル万能論の終わり(成型炸薬弾に対して強靭な複合装甲の登場)と共に廃れた発想の兵器です。戦車砲の主弾薬はあくまで徹甲弾(APFSDS弾)である事をロシア軍が捨て去るとは思えません。貫通効果もさることながら弾薬のコスト面から言って採用はありえません。

しかしそうなると高初速徹甲弾を発射する152mm戦車砲は、とても巨大で重い代物となる筈です。T-95の予想車両重量は55トン、これまでのロシア主力戦車に比べ10トン近く重くなっていますが、それでも152mm砲の反動を単純に吸収できるとは思えません。そうなるとTK-X同様、反動を能動的に押さえ込むアクティブサスペンションの採用の可能性も考えられますが、そういう話も聞きません。一体どういうカラクリなのかまだ分かりませんが、もし本当に152mm戦車砲を搭載して出てきたら、いまだ姿形が見えてこない第4世代戦車の在り方を、T-95が指し示すことになるのかもしれません。


*追記:ロシア語の先生より指摘がありました。



やっぱり152mmという報道関係の記事は見つかりませんね。

古い記事なのでどうかとも思うのですが、独立新聞では

http://www.ng.ru/economics/2007-12-24/1_tank.html

Т-95 превратился в легенду. Существуют даже его предположительные описания. Эксперты видят танк XXI века таким, каким, на их взгляд, он должен быть, – компактным, скоростным, неуязвимым, напичканным электроникой. Масса – не более 50 тонн, экипаж спрятан в бронированной капсуле внутри корпуса, а в башне людей нет. В ней расположены автомат заряжания, гладкоствольная пушка калибра 135 мм (сейчас все танки мира имеют пушки 120–125 мм), система управления огнем, датчики обнаружения противника, средства радиоэлектронной борьбы. Броня композитная с элементами активной защиты «Арена», которые автоматически расстреливают подлетающие противотанковые заряды.

135mmって書いてるような。


ロシア語の記事で152mmという報道が無い以上、ノーボスチ英語版の記事はロシア人ではない英語圏の記者が、ロシア語版の記事の翻訳の過程で付け加えた情報なのかもしれません。やはり確定情報とするには弱いのかも。


*訂正:コメント欄でMBT70は徹甲弾も撃てると指摘がありました。

調べて見たら、何故か英語版よりも遥かに充実しているロシア語版ウィキペディアのMBT70解説でガッチリ説明が。

MBT-70 ‐ Википедия
XM150

Бронебойно-трассирующий подкалиберный с отсоединяющимся поддоном, APFSDS-T

ХМ578Е1

Вес выстрела, кг 18,2
Вес снаряда, кг  9,1
Начальная скорость, м/с 1478

152mm砲弾であるにも拘らず、砲弾の重量は120mm滑腔砲弾と同程度になっています。短口径のガンランチャーで初速を稼ぐ為でしょう。スペック上、XM578E1砲弾の初速は一般的な120mm戦車砲弾よりも若干劣る程度です。
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