2008年05月21日
結構あっさり成立しました。

宇宙基本法が成立、防衛目的利用に道開く:日経新聞

とはいえ予算が降って湧いて出るわけでもなく、早期警戒衛星開発など予定にもなく、レーザー迎撃衛星やキネティック弾頭衛星なんて夢のまた夢なのですが、取り合えず諸外国並みの条件で宇宙の軍事利用が可能となります。

取り合えず今の所、これを受けて周辺国は特に何も言ってきていません。なにしろ昨年の段階で中国は衛星破壊実験をしたり、韓国は宇宙軍設立構想(レーザー迎撃衛星の配備を宣言)をブチ上げていたりと、周辺国の方が宇宙戦争にノリ気です。

韓国ミサイル防衛計画(KAMD) - 日本周辺国の軍事兵器

言うだけなら無料ですので、日本も真似して防衛用レーザー迎撃衛星の配備を宣言・・・したら諸外国から馬鹿にされそうだな・・・まだキネティック弾頭を搭載した迎撃衛星のほうが実現性があるけれど、予算的にアメリカですらかなり無理のある計画だし・・・

結局は、イージス艦に搭載するスタンダードSM-3が日本のミサイル防衛の主力になります。今回の宇宙基本法で、宇宙空間での専守防衛行為(つまり迎撃)が公然と認められましたので、大手を振って配備できるようになりました。(従来の国会決議では宇宙空間での戦闘行為自体が出来ないとされていた模様)

既に実戦配備されたSM-3Block1に加え、直径をBLOCK1の35cmから53cmに拡大した開発中のSM-3BLOCK2、多弾頭化(MKV)したSM-3BLOCK2B。海上自衛隊はSM-3BLOCK2Bまで配備する話が持ち上がっています。では、その後はどうなるのでしょうか。

SM-3BLOCK2はMk.41VLSに搭載可能な最大直径53cmまで拡大する計画ですが、アメリカ海軍の次世代艦(DDX、CGX)に搭載予定のMk.57VLSは、海軍版ATACMSのALAM戦術弾道弾を収納すべく、収納可能な最大直径は61cmと従来のVLSの53cmより大きくなっています。つまりまだ計画には無いですが、SM-3を更に61cmまで直径を拡大させる事も可能です。海上自衛隊が将来配備するDDGもMk.57VLSを搭載するのであれば、それを装備できるかもしれません。またアメリカ海軍のCGXには、KEI(Kinetic Energy Interceptor)というMD用の迎撃ミサイルを搭載する計画があります。

Kinetic Energy Interceptor - GlobalSecurity.org

これは直径40インチ(101cm)、長さ39フィート(11.9m)という巨大な迎撃ミサイルで、上昇中の弾道ミサイルを撃墜する役割が与えられています。上昇中の弾道ミサイルならば、その弾頭が多弾頭であっても上手くいけば放出する前に纏めて破壊できるので、効率がよいわけです。ただし弾道弾の上昇中を狙う為には非常に速い速度で迎撃しないと間に合わないので、このような巨大なミサイルとなってしまい、搭載するには専用の大型発射機とそれを収められる大きな船体が必要になってきます。

果たしてこんなものを海上自衛隊が配備できるかどうか・・・CGX並みの大型DDGを配備した場合、1隻建造するだけで海上自衛隊の艦艇建造予算を2年分使ってしまいそうな感じです。
21時31分 | 固定リンク | Comment (37) | 軍事 |

2008年05月12日
ソニックブーム関連で動画を見比べてみようと思います。音速を突破したものと、音速を突破したように思われてそうではないものとの差を。




↑空母の真上で音速を突破するF/A-18戦闘機。音量注意。




↑空母の真横で音速を突破するF-14戦闘機。音量注意




↑コンコルド旅客機による超音速衝撃波。




↑2007年岩国FSDでのF/A-18。音速未満でベイパーコーン発生。

他にも「音速の壁撃破!」という動画もあるが、実際には音速は超えていない。




↑'08 岩国フレンドシップデー F/A-18 ホーネット コンバットブレイク




↑F/A-18戦闘機の円錐の雲


F/A-18戦闘機で円錐の雲ができる瞬間(動画) : Gizmodo Japan
これは機体が音速近くなると出る「Prandtl-Glauert condensation cloud」という現象を捉えた瞬間の映像。

〜中略〜

同じ円錐の雲は条件さえ揃えば、音速より大分遅くても発生するようです。ビルのガラス窓が木っ端微塵というニュースはなかったので、この雲はたぶんそちらでしょうけど、でもすごいですね。


よくベイパーコーンと称されるこの雲は、正確な名称をプラントル・グロワート・コンデンセーション・クラウドと言います(Prandtl はプラントルで濁らないそうです)。音速を超えた瞬間に発生すると誤解されていますが、音速以下でも発生する現象です。(遷音速域で発生する為、音速以下でも、音速を超えた場合でも発生する)しかし誤解が広まっているせいか、この雲が発生しているYouTube等の動画は音の壁を超えたものとして扱われ、動画のタイトルやキャプションに「音速突破」「Sound Barrier」などと付けられている場合がありますが、実際には音速を突破していない場合があります。

実際に機体が音速を突破した場合、本当にズドォォォンと凄まじく響くので、聞き比べてください。
19時24分 | 固定リンク | Comment (98) | 軍事 |
2008年05月09日
5月9日の対独戦勝記念日に、ロシア軍が17年振りに大量の軍用車両を動員した大規模軍事パレードを実施しました。17年前といったら私は小学生だったので、全く覚えてない・・・時の流れを感じます。




↑大型輸送機、戦略爆撃機、戦闘機、ヘリコプターのフライパス。



↑画面固定で軍用車両が行進する様子を10分間取り続けた動画。


取り合えずここまで。まだ動画を漁っている最中です。




↑これは5/5に行われたパレードの予行演習。


なおプーチン(現在は首相職に就いた)は5/5に以下のようなコメントを行っています。


「誰も脅すつもりない」=軍事パレード復活でロシア大統領:時事通信
ロシアのプーチン大統領は5日、対独戦勝記念日の9日にモスクワ中心部の赤の広場で17年半ぶりに行われる大規模な軍事パレードについて、「武器をがちゃがちゃさせるわけではない。われわれは誰も脅すつもりはない」と述べ、「国防力復活」を示すのが目的だと強調した。


「武器をガチャガチャさせるわけではない」とは言っても、実際に戦車はタンタンキュラキュラ行進し、爆撃機はゴォゴォ音を立てながら飛んでいるわけで、慣用句的な言い回しなのでしょうか。

Путин: участие боевой техники в параде - демонстрация возможностей РФ:РИА Новости
「Это не бряцание оружием.」

「これは武器を鳴らすわけではありません」ロシア紙ノーボスチ通信の記事ではこのような感じです。

Show of military force in Red Sq. parade not saber-rattling - Putin:RIA Novosti

ノーボスチ通信の英語版では"Saber-Rattling"とあります。サーベルを打ち鳴らす、これは「武力による威嚇」という意味の慣用句です。






ニコニコ動画にも上がっていたので紹介。



↑これは最初に紹介したYoutube動画のニコ動版。
22時09分 | 固定リンク | Comment (67) | 軍事 |
2008年04月29日
ノーボスチ・ロシア通信によると、An-124ルスラン輸送機の新規製造再開がロシア政府とウクライナ政府との間で合意に達したとの事です。

Россия и Украина возобновят производство самолета Ан-124-100 "Руслан"‐РИА Новости

Russia and Ukraine to resume An-124 Ruslan aircraft production‐RIA Novosti

そして今日、ロシア空軍は新規製造されたTu-160戦略爆撃機を受領しました。

Казанские авиастроители передадут ВВС еще несколько бомбардировщиков‐РИА Новости

Russian Air Force receives new Tu-160 strategic bomber‐RIA Novosti

ロシア航空産業は軍民共々、大型機の再生産に踏み切りました。

ちなみに「ВВС」とは「Военно-Воздушные Силы」の略称で、ロシア空軍の意です。(英国のBBC放送ではない)





大型特殊貨物輸送の需要が結構高く、An-124ルスランの再生産に繋がったのだと思います。日本も海外復興支援用に政府専用機として2機ぐらいの購入はどうでしょうか? 





でも流石に夢履屋さんの新規製造は無理でしょうね。





Tu-160ブラックジャック戦略爆撃機を再生産する意図は良く分かりません。





プーチン閣下の趣味なんだろうか・・・現有15機に新造分15機を足して30機体制にする方針だそうです。





戦術爆撃機のSu-34(Su-32)フルバックの量産も始まり、Tu-160の再生産と併せロシア空軍は長距離侵攻能力を高めつつあります。
23時52分 | 固定リンク | Comment (112) | 軍事 |
2008年04月03日
3/31に書いた記事、「次期輸送機CXの開発遅延」では、C-Xについての詳細よりもオマケで紹介したMRJに立ったフラグの話のほうが反響が多く、驚きました。そのコメント欄の中でC-Xについての興味深い記述があったので紹介しておきます。



神浦さんはね、先日、東京新聞のC-X記事を引用した
日刊ゲンダイのC-Xの構造問題の記事で
「過去に例のない失態」と仰っていたの。

だから、C-Xの問題は、補強する個所が少々多くても大した事じゃないって事だと思うの

Posted by 名無しT72神信者 at 2008年04月01日 07:01:34


↓これですか。

呪われた次期輸送機CX|ゲンダイネット

か、神浦さん、ばんじゃーい ∩(=ω=.)∩

過去の【逆神伝説】の実績からすると、これは強烈なフラグが立ったと言えます。誤神託なのですよ。MRJでは残念なフラグが立ってしまいましたが、「MRJは軍事じゃないから発動しない」「トップシェアになれないというだけ」という予言解釈を信じて、MRJが生き延びる事を願います。

C-Xについてはあまり心配しなくて良いようなので、胴体部分製造担当の三菱は安心するといいのです。
23時09分 | 固定リンク | Comment (56) | 軍事 |
2008年03月31日
順調に開発-生産スケジュールをこなしつつあるXP-1と比べ、C-Xは若干遅れ気味です。このままでは欧州の新型輸送機エアバスA400Mとどちらが初飛行するのか、分からなくなりました。(とはいっても、そもそもA400Mのほうが先に開発を始めているので別に抜かれたわけではないです)

次期輸送機また不具合 防衛省、違約金請求へ|中日新聞(3/16)
空自の次期輸送機、また不具合 初飛行は夏以降|朝日新聞(3/29)

ただ上の報道を見ていると、新たな不具合が見付かったかのような書き方ですが、実際には昨年夏に発覚した不具合を詳細に調べた事後報告です。


防衛省:次期輸送機の開発状況について 平成20年3月28日
次期輸送機(C−X)については、昨年7月、静強度試験において、主脚及びその付近の胴体構造の一部に変形等が発生したことから、じ後、構造設計の再確認を行うこととし、この旨公表しているところです。

再確認作業の結果、主脚取り付け部や中胴・後胴のフレーム及び縦通材、貨物用の扉等において、補強が必要な箇所があることが確認されたことから、現在、所要の強度を確保すべく、試作担当会社において補強作業を行っております。

C-Xの開発日程への影響については、今後の地上での試験・確認によりますが、現時点では、初飛行については、早くとも本年夏頃以降となる見通しです。


要するにどういう事かというと・・・


大気圏の壁に挑むチビモサ - CHFの日記
通行人
2008/03/16 10:47
よく読むと、中日の記事は静強度試験で見つかった不具合を今頃報じている様な気も。
8月以降の初飛行云々も、川重社長が概算要求の頃までに飛びたいと言っていた事とあまりズレがない気が

heinkel
2008/03/16 20:37
新しい情報は違約金請求だけモサリね
墜落云々といい悪質なデマゴーグの見本市みたいな報道モサリ


ただ注目すべきなのは、中日新聞は防衛省による28日の発表より十日以上前に、この内容を把握して記事にしている点です。中日新聞(東京新聞)は防衛省関連筋とのパイプが太く、以前から時折、他の大手紙を出し抜く場合があります。

また北陸中日新聞の連載【A.ポルトフのウラジオ通信】は、「世界の艦船」で貴重なロシア海軍記事を執筆しているアンドレイ・V・ポルトフ氏によるものです。ポルトフ氏は中日新聞(東京新聞)の特約記者として、何度かロシア海軍関連のスクープ記事を報じており、同新聞が軍事情報について独自情報ルート構築に力を入れていることが分かります。とはいえポルトフ氏以外は誤報も多いので、注意して見ないといけませんが、他紙に比べ情報が早いので先行チェックが出来ます。デマを見抜く目が必要ですが。


ところで突然関係無いですが、MRJにフラグが立ちました。


神浦元彰 最新情報 (3月28日)
[コメント]空自の次期輸送機(CX)が機体強度の不足から、新たに改造(改善)が必要という報道で心配していた。同時に、今後は専門性の高い軍事技術よりも、付加価値の広い民間技術が最先端技術をけん引する時代が来ると思っていた。だから、このMRJには期待が大である。ぜひとも海外でも受注を伸ばして世界でトップの小型ジェット旅客機の座を獲得して欲しい。騒音(静粛性)、燃費、安全性(操縦性能)、乗り心地など、まさに世界のトップを狙える新型旅客機になれると信じている。


MRJオワタ\(^o^)/
23時58分 | 固定リンク | Comment (75) | 軍事 |
2008年03月30日
以前に「低騒音の新型哨戒機XP-1」と記事を書いた事がありましたが、この事も広く知れ渡ってきました。


最新鋭哨戒機XP-1は国産でとってもエコ(動画):Gizmodo Japan
そしてこのXP-1が凄いんです。P-3Cと違いプロペラじゃなくって、4発のジェットエンジンを採用しているのですが、なんと騒音がプロペラ以下。しかもジェットの割には燃費も良くってとってもエコ。操作面でもフライ・バイ・ファイバー、光ファイバーを使って信号を伝達する最新鋭。電波干渉を避けることができます。ただ問題は電源が落ちた場合。そこで電源が落ちたら自動的にコックピットの横から風力発電をするプロペラがぽん! と出て自家発電するそうですよ。こんなところもとってもエコっぽいですね。


ギズモードらしい御気楽極楽記事。この調子でどんどん軍事に興味に無い層にもXP-1の良さを知らせて欲しいですね。

ところで光ファイバー操縦システムは「フライ・バイ・ファイバー」で良いんでしょうか。今まで「フライ・バイ・ライト」と思ってました。少し自信が無くなって来たような、でもギズモードだし・・・。

従来の「フライ・バイ・ワイヤー」というシステムは、電線を使った電気信号による機体制御システムの事で、これに対しXP-1は電線を光ファイバーに変えて、光信号で油圧アクチュエータをコンピュータ制御します。実用機では世界初の装備であり、XP-1の技術的挑戦の一つです。

って、此処まで書きながら調べていたら、Wikipediaの記述にはこうあるなぁ・・・。


フライ・バイ・ワイヤ - Wikipedia
操舵信号を電線ではなく光ケーブルによって伝えるシステムはフライ・バイ・ライト (Fly-by-light, FBL) またはフライ・バイ・オプティクス (Fly-by-optics) と呼ばれる。電磁干渉に強くなることなどが利点とされている。


Googleで調べたら以下の通り。

"Fly by light" の検索結果 約 17,400 件
"Fly by optics" の検索結果 約 460 件
"Fly by fiber" の検索結果 約 37 件

フライ・バイ・ファイバーと呼称している所も一応ありましたが、取り合えずフライ・バイ・ライトの方が一般的なようです。

23時17分 | 固定リンク | Comment (23) | 軍事 |
2008年03月29日
陸上自衛隊の新型戦車TK-Xのトランスミッションは、無段階自動変速操向機を採用しています。無段変速機というと自動車に使われる、摩擦を利用するCVT(Continuously Variable Transmission)が有名ですが、スチールベルト式にしろトロイダル式にしろ、戦車のような大馬力大重量で、尚且つ履帯という負荷の掛かる足回りを持つ車両にはCVTは容量不足でまだ対応出来ていません。他に建設作業に使う重機では、油圧式の無段変速機HST(Hydraulic Static Transmission)が使われていますが、これは伝達効率が悪く制御が難しいという欠点がありました。

この欠点を改善する為、HSTに遊星歯車を組み合わせた油圧機械式トランスミッションHMT(Hydraulic Mechanical Transmission) が開発されています。TK-Xの無段変速機はこの種類です。アメリカではジェネラル・ダイナミクス・ランドシステムズ社(GDLS) が既に戦闘車両用HMTを開発、実用化しています。

HMPT-500HP:army-guide.com

GDLS社のHMPTシリーズは基本の500馬力から更に大馬力にも対応する物が開発され、HMPT500系列はMLRSやM2ブラッドレー歩兵戦闘車などに採用済みで、海外へも輸出されています。現状では800馬力まで対応で、より大きな1000〜1200馬力から1500馬力に対応する物も開発されましたが、搭載予定のクルセイダー自走砲が開発中止されたので、今のところ陽の目を見ていません。

つまり今のところ、戦車に油圧機械式トランスミッションHMTを搭載した例は無く、日本のTK-Xが世界初となる予定です。HMTは伝達効率が高く、技術研究本部(TRDI)は「車両質量当りのスプロケット出力を現有戦車に対して格段に向上」と謳っています。これが本当ならば、TK-XのHMTは、HSTどころかトルクコンバータ式ATよりも伝達効率が高いということになります。(ただし技術的根拠は説明されていない為、確認出来ていない。また「現有戦車」が74式を指す場合、特に意味が無くなる)

HMTについては民間企業ではホンダが以前より力を入れており、独自名称「HFT」と呼称し、バイクへの採用を積極的に進めています。以下のホンダの解説ページで、機構の詳細を図で詳しく見ることが出来ます。

HFT | Honda Technology

Hondamatic-Hydraulic Mechanical Transmission
23時14分 | 固定リンク | Comment (33) | 軍事 |
2008年03月24日
イタリアOTOメララ社製62口径76mm速射砲の砲弾誘導システム、STRALES。砲塔内に誘導用のレーダーを組み込み、誘導砲弾DARTを発射する対艦ミサイル迎撃システムです。


OtoMelara Dart Strales


76mm砲をCIWSとしても使用する、イタリア海軍の行き着いた先がこれです。


そして以下は127mm砲用の対地・対艦砲弾Vulcano(ヴルカーノ)。従来の54口径砲、及び新型の64口径砲で発射でき、64口径砲は最大射程120km超と、アメリカ軍の新型62口径127mm砲Mk.45 Mod4のERGM砲弾を上回ります。


Vulcano


砲頓兵器では世界最高レベルの技術力を有するイタリア。こればっかりはヘタリアじゃありません。
23時50分 | 固定リンク | Comment (87) | 軍事 |
2008年03月16日
現在、インド海軍のスレーシュ・メータ大将が空母ゴルシコフとその艦載機MiG-29K取得の為の詰めの協議を行う為、ロシアに滞在中です。

インド海軍大将、航空巡洋艦問題解決のためにロシアへ - VOICE OF INDIA

基本的な問題は既に両政府首脳間で解決済みであり、後は現場レベルでの協議が残っている模様です。ゴルシコフは改修終了後、ロシアでの公試を経てインドに引き渡される予定です。既に艦名はヴィクラマーディティヤ(Vikramaditya)と決まっており、名前の由来はシヴァ神の化身から取られました。

そして最近、ゴルシコフ取得の話が進んでいるにも関わらず、アメリカがインドの次期戦闘機調達計画への売り込みと合わせ、「F/A-18Eを購入するのであればインドに空母キティホークを無償供与する」との報道がアメリカで流れていましたが(日本の報道機関では産経新聞も言及)、しかしこれはインド側に正式に否定されました。提案そのものが無かったというのです。


MiG-29K艦上戦闘機は、5月よりインドへの引渡しが始まる(RIAノーボスチ) - Infinite Justice
その一方、インド海軍参謀総長は、金曜日、時代遅れとなったINSヴィラートを交換する為、インドに対し、遥かに需要のある航空母艦を提供する事を米国が申し出たという「いたずら」報告書に関して言及した。

様々な米国の情報筋によれば、ワシントンは、インドが艦上配置用の65機のボーイングF/A-18E/Fスーパーホーネットの購入に合意すれば、インド海軍に対し、2008年に除籍される予定の合衆国航空母艦キティーホークを無償で譲渡する。

「これらの噂は、メディアによって作成された単なる悪戯です。私が知る限り、我が国はそのような提示を受けた事がありません」
とスレーシュ・メータ大将は記者会見で伝えた。


この誤報は米メディアの創作なのか、それともインド側を勘違いさせる為に米政府関係者が意図的に流した情報なのか、或いは正式提案レベルではなく冗談混じりに交わされた話を拡大解釈したのか、どちらにせよインド海軍のトップがキティホーク供与の件について存在そのものを否定した以上、これでこの件は完全に無かった事になりました。

そう思いながら改めて調べ直してみると、実は既にアメリカ海軍は3/3の時点で正式に否定していた事が分かりました。


Navy discounts Kitty Hawk scuttlebutt - Navy Times
Not gonna happen, the Navy says.

“The Navy has no plans to transfer Kitty Hawk to India, nor is this a subject of discussion between our navies at any level,” Navy spokesman Lt. Clay Doss said.


「そんな事にはならないよ、インドへ空母を引き渡すなんて、海軍はどのレベルでも検討すらしていない」と、アメリカ海軍広報のクレイ・ドス大尉は言いました。

この件については、事前に自分ももっと良く調べておくべきだったと感じています。報道は現地の一次情報ないし可能な限りそれに近いものを調べる、それはロシア報道でもアメリカ報道でも変わらないチェックの基本だと改めて思いました。
06時28分 | 固定リンク | Comment (132) | 軍事 |
2008年03月15日
どうもスホーイと比べて不遇なミグですが、何とか頑張って欲しい所。


産経の軍事報道 低品質…相次ぐガセ記事 墜落寸前 - Infinite Justice
ロシア軍需産業 低品質、納期遅れ…相次ぐ破棄・返却 墜落寸前
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080307-00000088-san-int

武器に戦闘機、潜水艦…後進国から返品相次ぐ ロシアの軍事産業
http://sankei.jp.msn.com/world/europe/080306/erp0803062253006-n1.htm


上の記事で産経は「返品相次ぐ」などと書いているけど、
実際に「返品」されたのは、アルジェリアのMiG-29SMTだけです。


例によって産経新聞が的外れな軍事記事を書いたのですが、アルジェリアがMiG-29SMTを突き返して「代わりにSu-30とYak-130を寄越せ」と言い出したのは事実です。どうにもこれではミグの兵器市場でのイメージ悪化は避けられず・・・一気に名誉挽回するには新規発注の大口契約を、逃すわけにはいかなくなりました。


インドのMMRCA計画は選定を2ヶ月延期 - ★くろいあめ、あかいほし
126機の戦闘爆撃機調達を予定しているインドのMMRCA計画だが、3月に予定されていた選定期限が来月末に延期された。インド側に拠れば選定に参加している各社のうち2社(社名は明らかにせず)から延期要請があったためという。

社運を掛けて参加するRSKミグはもちろん、アメリカは空母キティ・ホークの無償供与まで持ち出して過熱するMMRCA計画だが、結果は少し先延ばしとなった。


アメリカが空母の無償供与まで言い出した事は、単なるパフォーマンスに過ぎずインド側も本気で受け取ってはいません。ロシアから空母ゴルシコフを購入する計画がある以上(いや無くても)、インド軍の予算規模ではキティホークの改装費(寿命延伸工事)と維持費を捻出できませんから。それよりも空母を供与してもよいと言わせたほど、両国の関係が接近している事が重要です。このインド空軍の戦闘機調達計画は当初、ミグで決まりだと思われていましたが、911後の米印接近で分からなくなってきました。

RSK-MiGがインドに提案しているのはMiG-35です。


MIG-29 OVT(vector trust)Manuvrebility Demonstration


MiG-29OVTはMiG-35と同じ推力偏向ノズルの採用で、動画の通り驚異的な機動性を発揮できます。ただしMiG-35が正式採用される時は通常型ノズルになる可能性も有ります。MiG-35は他に主翼を再設計しており、新型のアクティブフェイズドアレイレーダーZhuk-AEやIRSTを更に進化させた光学探知システムOLS(Optical Locator System)を装備し、従来のMiG-29よりも大幅に性能が上がっています。機内燃料タンクも5割増となり航続距離も伸び、兵装搭載量も倍となっています。

MiG-35は第5世代戦闘機誕生まで最高の戦闘機だ - ノーボスチ・ロシア通信社

RSK-MiGはアルジェリアにもMiG-35を再提案、顧客をスホーイに奪われまいとしています。
00時42分 | 固定リンク | Comment (77) | 軍事 |
2008年03月05日
前回の「新型戦車の導入と近代化改修の是非」と連動して、TK-Xについての考察です。軍事ライターの清谷信一氏の上げるTK-Xの問題点について、指摘を行ってみたいと思います。値段についての感想は前回にも述べた通り、1両あたり7億円は俄かには信じがたいほど安価であると私も感じましたが、最近の自衛隊装備では次期哨戒機P-X(XP-1)が予定平均量産価格が1機124億円(米軍次期哨戒機P-8Aの半額)と発表されたり、次期輸送機C-Xは1機100億円(欧州の次期輸送機A400Mは160億円)と報道されていますので、この流れの中で本当に達成してしまうかもしれません。全部アドバルーンである可能性もありますが。

では、今回は主に装甲関連に付いての話です。


TK-X の問題点について - 清谷防衛経済研究所
3.5世代の戦車を第2世代の戦車程度の重さに纏めるのは物理的に無理があります。恐らくはTK−Xは装甲をかなり削っていると思われます。

劇的に重量を減らすのであれば、一人用ないし、無人砲塔を採用するとか、乗員を二人にするとか、ハイブリッドの駆動システムを採用するとか現在の「戦車」の概念からかなり違った形の異形「戦車」にならざるを得ないでしょう。米陸軍はFCSでそれをやっていますが、成功するとは限らないわけです。故に他所の国は敢えて火中の栗を拾うことなく、既存戦車の近代化でしのいでいるわけです。敢えて開発をしないというもの一つの見識です。

恐らくTK−Xはかなり装甲は薄いはずです。特に上部は薄いと思われます。一例を挙げるとハッチの厚みは僅か1センチ程度です。昨今の対戦車兵器はトップアタック型が増えています。このままのハッチで量産型が生産されるのは如何かなものかと思います。


清谷氏は、ハッチの厚みを根拠に上面装甲が薄いのではないかと推察されています。


ハッチ


ただ、他国の戦車には、上面ハッチの下に更にスライド式ハッチを装備するものがあります。


インナーハッチ


TK-Xが内部にこのような構造を有しているかどうかはまだ判りません。ただ、写真を見る限りTK-Xのハッチはシーリング用のパッキン部分が見受けられず、これではNBC防護が果たせないという意見があります。単に試作車だから付いていないだけなのか、下部にもう一枚ハッチがあるから問題が無いのか、そのあたりはまだ何とも言えません。

それと清谷氏はTK-Xを米軍のFCS(戦車型はMCS)と比べていますが、40トン台を目指したTK-Xと20トン台のMCSでは軽量化の次元が違う存在で、そもそもMCSが軽いのは装甲を諦めた事が大きいのですから、単純な比較は出来ません。TK-XはMCSほどの劇的な軽量化は要求されていないにも関わらず、「異形戦車にならざるを得ない」とは大袈裟な話です。

また、電気ハイブリッド駆動システムは軽量化には貢献せず、むしろ逆で重量的にはかなり不利な機構です。それでもMCSがハイブリッドを採用するのは、燃費の向上の他に磨耗部分(トランスミッション)を無くす事で駆動系の負担を減らし、故障発生率を大幅に下げる事を狙っており、同様の効果を狙った一体型ゴム履帯(ゴムバンドトラック)の採用と合わせ、装輪装甲車に近い自走移動能力を与える為です。二人乗りという整備面での不利な点は、故障発生率そのものを下げる事でカバーされています。ただし一体型ゴム履帯はあまり大重量大馬力には耐えられないですから、40トン級のTK-Xに採用するのは無理があるでしょう。

清谷氏は、「90式の防御力自体が既に時代遅れでありそれと同等を目指したTK-Xは問題だ」といいますが、90式の耐弾性能自体が高いものであり、正面装甲は120mm砲の射撃(至近距離からAPFSDS×1、HEAT×3の直撃)に耐え、側面は35mmAPDS弾に抗甚できるのですから十分なものです。TK-Xの砲塔側面の装甲を見れば、対RPG-7を想定した状況ならば90式以上の防御力にも思えます。また、44口径の120mm砲が「90式と大同小異」とするのもどうかと思います。これは従来型とは大きく異なる軽量砲でしょう、このタイプの砲はアメリカがMCS用に120mm44口径XM360を試験中ですし、独仏伊は装輪装甲車用に120mm軽量砲を開発中です。

「TK-X の問題点について」、TK-X固有の部分については大体以上の通りです。他の、74式戦車や90式戦車を近代化改修すべきというの意見は、清谷氏がTK-Xとは無関係に普段から常々言っている主張ですので、前回の「新型戦車の導入と近代化改修の是非」を参照してロシアの軍事報道と見比べて見ると良いでしょう。清谷氏はT-95について言及されていないようですが、この新型戦車は予定通りならば来年若しくは今年中にも姿を見せる筈ですので、その時にでも語って頂けると思います。
21時08分 | 固定リンク | Comment (88) | 軍事 |
2008年03月04日
昨日、私のロシア語の先生からメールが来ました。彼女曰く「物持ちがいいなぁ、独立新聞w」だそうで、昨日紹介したロシア紙「独立新聞」(Независимая газета)の発行する「独立軍報」(Независимое военное обозрение)の記事、「戦車の危機」(Танковый кризис)がまだWeb上の記事で残っているそうです。もう5年も前の記事でしたので、まさかまだ残ってるとは思ってませんでした。元記事が残っていると気付かずに、古本屋でグランドパワー誌を探してきた労力って一体・・・。


Танковый кризис
Почему из 20 000 российских танков 16 000 не соответствуют современным требованиям?

2003-03-07 / Михаил Михайлович Растопшин - кандидат технических наук.



昨日の記事で紹介した部分は、小タイトル「К НОВОМУ ТАНКУ」(新しい戦車へ)の部分です。それより上のメイン部分は長くなるので昨日の記事では紹介しませんでしたが、ロシア戦車の装甲についての衝撃的な内容です。20年前(記事掲載時の話ですから、今からだと25年前)の耐弾試験で、T-80の複合装甲はイスラエル製105mm砲弾によって貫通されてしまった事などが記されています。他にも主砲発射式の対戦車ミサイルが威力不足だとか、運動エネルギー弾にも対処できる筈の爆発反応装甲Kontakt-5がきちんと作動してくれない事なども、過去の号の引用記事("НВО" # 24, 2002 г.)「В хвосте оружейного прогресса」で紹介されています。ただ、この記事でのKontakt-5の評価については、一戸氏はグランドパワー誌上で幾つか疑問点を上げ、kontakt-5は上手く作動できるのではないかとも述べています。

また昨日の記事のコメント番号15の疑問に付いては、該当部分の原文が以下の通りですので、コメント番号16の解釈で概ね良いのではないでしょうか。


Наши военные начальники считают, что боевые качества танков Т-80У и Т-90 не только не уступают, но и по некоторым параметрам превосходят зарубежные аналоги. При этом они как-то скромничают назвать эти превосходящие параметры. Вместе с тем боевые характеристики танков Т-80У, Т-90 ("НВО" # 37, 1999 г., # 24, 2002 г.) значительно уступают зарубежным бронемашинам, что свидетельствует о необходимости создания нового танка.
06時33分 | 固定リンク | Comment (16) | 軍事 |
2008年03月03日
装備が古くなったらどうするか―この場合、二つのやり方があります。一つは、新型を導入し旧型と交代させてしまう事。もう一つは、旧型に改修を施し、長く使って行く事です。もし予算が潤沢にあるなら両方同時に、つまり新型を導入しつつ旧型を改修して保有し続ける事が出来ますが、なかなかそうは行きません。限られた予算の中では、旧型の更新で大事に長く使っていく選択がされる事が多いのですが、それが必ずしも正解ではないという意見も有ります。

以下はガリレオ出版の戦車誌、月刊「グランドパワー」2004年5月号「日本軍中戦車(2)」 に掲載された、一戸崇雄氏(Webサイト「大砲と装甲の研究」管理人)のコラムです。内容はロシア独立新聞(Независимая газета:ニェザヴィーシマヤ・ガゼータ)の発行する「独立軍事解説」2003年3月7日号の記事「戦車の危機」の要約です。メインはロシア戦車の装甲に関する内容ですが、此処で紹介するのは最後の部分で紹介されたロシア機甲部隊の危機的状況についてです。


ロシア戦車の危機的状況 - 「独立軍事解説」2003年3月7日号
1)ロシア連邦軍の2万両の戦車のうち、現代の要求に合致するのは20%しかない。
2)保管中の戦車のうち、保管期間の異なる3つのグループ(いずれも保管期限内のもの)の走行試験をしたところ、50〜300kmの走行で全車が故障した。
3)米国の戦車要員がプロ4人により構成されるのに対し、ロシアの戦車は中卒の2年勤務兵3名で構成される。整備員も同様でロシア戦車の運命は、稚拙な整備により予め決まっている。

「製造」(または改修)後10年が経過した戦車の能力が不適当になる事を現実は示している。T-72およびT-80戦車のライフサイクルコスト延長のために近代化改修をすることは、次の理由で不適切である。兵器である戦車の製造と運用経験は、これらの機械のライフサイクルコストが偏差(±5年)を含めておよそ30年であることを証明している。したがって、すでに時代遅れになった機材に近代化改修を施すことは、軍に旧式戦車の飽和をもたらし、正しい行為とはみなされない。有望な戦車の再編成、乗組員の訓練レベルの向上および整備の新システムの形成などの明確な総合的運用なくして、我々の機甲部隊が、現代および将来の要求に応えることは決してないだろう。我々の軍の責任者は、T-80UおよびT-90戦車の軍事的な特性が外国戦車に劣っていないばかりか、いくつかのパラメーターに関しては勝っているとみなしている。一方、これらの勝っているパラメーターを示す際に、彼らは、なぜか謙虚になってしまう。T-80UおよびT-90戦車の戦闘能力は外国の戦車に著しく劣っており、これは新しい戦車を製造する必要を示すものである。」


上記は「独立軍事解説」の記事翻訳部分で、コラムには一戸氏の考察もあります。氏は「何処の国でもマスコミが政府に批判的なのは常套手段であるし、新戦車開発予算獲得の為に危機を大袈裟に煽っている可能性もある」としながらも、このロシア報道から教訓を得る事が出来るとしています。旧型改修戦車は新型戦車に敵わず、そして旧型改修戦車の大量保有は新型戦車の導入を遅らせる要因となり、結果的に陸軍の弱体化を招きかねないと。

『この情報は、日本の選択が間違ってはいないことを示す事例とも言えるでしょう』
『限られた予算であればこそ、新造を選択するというのが、真に実用に即したものといえるのではないでしょうか』

一戸氏はこう締め括っています。なお「日本の選択」とは74式改こと74式G型(改造費用は約1億円)の調達を4両で止め、90式戦車の配備を優先した事です。しかしこのような意見は、例えば軍事ライターの清谷信一氏の持論とは真逆となっています。一戸氏の記事が書かれてから4年後、陸上自衛隊の新型戦車TK-Xが公式発表され、予定調達価格が1両あたり7億円という衝撃的な発表を終えた後でも、清谷氏は持論を変えませんでした。


TK−X 公開 - 清谷防衛経済研究所
ただ今日の取材で新戦車の導入よりは、その開発の成果を利用して既存の90式及び74式を改良・近代化する方が宜しいという確信を強くしたとだけ述べておきましょう。

TK-Xの問題点について - 清谷防衛経済研究所
個人的な見解では恐らく7億円には収まらないと思います。


しかしTK-Xの予定調達価格が1両あたり7億円と発表された時に、最も打撃を受けたのはこの清谷氏ではないでしょうか。なにしろ清谷氏の古くからの持論「旧型戦車を近代化改修すべし」という意見が、ほぼ否定されたに等しいからです。アメリカ軍のM1A1戦車をC4I付きのM1A2(SEP)に改修する費用は、5〜6億円掛かるとされています。ドイツ軍のレオパルト2A4をA5、A6相当に改修する費用も同程度以上、掛かります。それなのに日本のTK-Xは、C4I付きで完全新型なのに7億円ですから、これは何かの間違いかと疑っても当然の、非常に安い価格です。実際の調達時に7億円で済むかどうかはまだ判りませんが、M1A2やレオパルト2A6の値段(改修費用を考えると、新造ならば・・・)を考えるなら10億円を超えてもおかしくなかっただけに、もし10億円以下で調達できるのであれば大変、お買い得であると言えます。


TK-X発表の2ヶ月ほど前には、ロシア軍から「全くの新型戦車を2009年頃に配備予定」と発表がありました。これは無人砲塔を採用したT-95戦車だとされています。彼らも遂に待望の新型戦車を手に入れようとしています。日本とロシアの選択、第4世代戦車の形が明確に見えてこない中で、従来の主力戦車には無い新型機構を搭載した新型戦車の配備は、世界が注視しています。そしてそれは、他の国が新型戦車を開発する切っ掛けとなる可能性があります。
03時59分 | 固定リンク | Comment (203) | 軍事 |
2008年02月21日
日本で開発中の機動戦闘車とロシアで調達が始まったBMPT。機動戦闘車は戦車砲を搭載した装輪装甲車(タイヤ式装甲車)で、BMPTは戦車の車体に装甲車用の機関砲を搭載しています。両車は正反対の組み合わせで任務も異なりますが、戦車と装甲車の両方の特徴をそれぞれ引き継いでいます。そのせいで一悶着あるのですが、日露両国の対応は明暗を分けました。


新型戦闘車両BMPTの調達始まる - ★くろいあめ、あかいほし
またこの記事で興味深いのは、「BMPTというカテゴリはCFE条約締結の時点で存在しなかった新カテゴリなので、同条約に縛られない」と指摘している点だ。屁理屈のようだが、昨今の情勢を考えれば考慮しないわけにはいくまい。


流石はロシア人です。BMPTは戦車でもなく、兵員輸送用の装甲車でもないから、CFE条約(欧州通常戦力条約)に縛られず報告の義務も保有数の制限も無いので自由に造り放題だぜ! と言い放ったのでありました。

BMPTは戦車(T-72)の車体の重装甲を活かした対歩兵駆逐戦闘車両であり、主力戦車T-90と組み合わせて使う戦車支援戦闘車です。高仰角が取れる機関砲はビルの上から攻撃してくる敵歩兵に対処でき、多数の光学センサーで周囲を警戒。監視用に搭乗員の数も5名と多く、ですが車外戦闘用の歩兵は積みません。確かに、今までには無いタイプの戦闘車両です。

さて、一方我が国で開発中の機動戦闘車は・・・


防衛省:平成20年度予算の概要(PDF)
機動戦闘車の開発 優れた機動力と装甲車両等に対する十分な火力を有する装輪車両の開発※

※: 装備化する場合、戦車と併せ、戦車数量(600輌)を超えないことを想定した開発
防衛省平成20年度予算の概要 機動戦闘車


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装甲が機関砲にしか耐えられず、敵戦車と正面から撃ち合えない機動戦闘車でTK(戦車)枠を潰してどうするんだろう・・・只でさえ戦車枠は1000両から600両に減ったのに。アメリカ軍が開発中のMCSのような装軌車両(キャタピラ式)なら例え軽くても戦車扱いしてもよいでしょうが、機動戦闘車のような装輪車両を戦車扱いするだなんて。

最初に機動戦闘車の話を聞いたときに、「必要無いだろうそんなモノ」という感想でした。どうせ軽量の戦車駆逐車を作るなら、MCSのようにゴムキャタピラ+電動駆動の組み合わせで機械故障の要素を減らせば、装輪車両に近い自走運用が可能です。しかし後になって、「戦車枠外で定数が減る戦車の補完が出来れば意味もあるかな?」と思い直し、どうせ作るなら将来装輪戦闘車両とのファミリー化に拘らず、南アフリカのローイカット戦闘偵察車のようにリアエンジンの専用設計車体で頑丈なのを作って欲しい、と少し前向きな見方に変わっていたのですが・・・戦車枠内って何ですかソレ。

正直、戦車が減るなら機動戦闘車は要らないなぁ・・・国内の戦略機動は44トンの次期戦車TK-Xで向上するし、海外派遣にも戦車を持っていけばいいじゃないですか。例えばカナダ軍は現有のレオパルト1戦車を装輪戦闘車両のストライカーMGSで更新する計画を立てていましたが、アフガニスタン派遣で装輪戦闘車両の限界を感じ、ドイツからレオパルト2戦車をリースして使用しています。そしてレバノンPKOのように、国連平和維持活動でも戦車は頻繁に投入されています。
02時11分 | 固定リンク | Comment (1008) | 軍事 |
2008年02月20日
昨日書いたエントリーの後半部分で、共同通信が事故の騒ぎに乗じてドサクサ紛れにMD批判を始めた事を紹介しましたが、今度はTV朝日「報道ステーション」が捏造を行った模様です。



昨日古舘が「あたごはハワイでのMD試験の帰り〜」と言ってましたね

Posted by 名無しT72神信者 at 2008年02月20日 19:45:20


確認してきましたが、古舘アナウンサーは本当に言っていました。これは完全に間違いです。「あたご」がハワイの演習海域で試射したのは通常型の艦対空ミサイル「スタンダードSM-2」であって、MD用のSM-3ではありません。現在、日本のイージス艦ではまだ「こんごう」一隻しかSM-3を搭載していないのです。しかも海上自衛隊のミサイル防衛計画では、「こんごう」型4隻にSM-3を搭載する予定ですが、「あたご」型2隻にはSM-3を搭載する予定そのものが有りません。

報道ステーションは誤報の訂正を行う義務があります。
20時57分 | 固定リンク | Comment (121) | 軍事 |
え〜っと・・・コメントのしようが無いな、これ。

しらね火災:私物の飲料保温庫が過熱 無許可で持ち込み - 毎日jp

結局、修理は「はるな」の除籍を待ってパーツを移植する方向で落ち着きました。しかしこれ、設備の老朽化による漏電が原因ではない以上、どのような艦にも起こりえる事です。旧海軍時代にも何隻も軍艦を爆沈事故で失っていますが、まさか家電製品が原因で艦を喪失しかけるとは・・・。
19時06分 | 固定リンク | Comment (45) | 軍事 |
夜に家に帰って来るまでこの事故に気付いていませんでした。ニュースを見て驚きました・・・一体、ワッチは何をしていたんだか・・・ハワイ帰りで気が緩んでいたとしか思えない。漁船が無灯火で無かった以上、例え片側しか点灯していなかったとしても、自衛艦側に責任があるでしょう。この事故の場合は航海用レーダーの問題ではなく、単純にワッチ(海事用語で航海当直の見張り員のこと)が漁船を見落としていた事が事故原因です。




最新鋭艦が、就役から1年近く経って・・・乗組員も艦に十分に馴れている筈。インド洋派遣で、国内居残り組艦艇の人員定数割れが酷くなって大変になっている、だなんて言い訳も通りません。戦闘で支障を来たすというならともかく、只の通常航海でそんな情けない主張など出来る筈も無いでしょう。責任者は処罰されなければならないし、行方不明の漁船の二名の捜索に全力を尽くさなければなりません。あってはならない事故で、自衛隊は謝罪しなければいけません。


ですが。ドサクサ紛れに全く無関係な事を結び付けて批判を行う事は、謹んで頂きたいと思います。


膨大経費、MDに逆風も イージス艦衝突事故:共同通信
防衛省内では、今回の事故がMD計画に波及することへの懸念がすでに生じている。同省幹部は「足元の国民を守ることさえできずに、莫大な金を出して配備する必要があるのかと言われかねない」と話す。


この共同通信の伝える「防衛省幹部」なる人物が実在するとは思えません。今回の事故とMDを関連付けるのは、あまりにも関連性が無いと言うか突拍子が無いというか・・・まだ誰もそんな事を言い出していないのにマスコミにこんなコメントをしたら完全に薮蛇でしょう、そのような間抜けの存在は不自然です。

それでもまだ今回の事故の件とMD計画を結びつけて「イージスMDは駄目だ」と言うのであれば、その代替として地上配備型迎撃ミサイル(GBI)やTHAADシステムの導入ないし同等品の自主開発を選択する方法もありますから、イージスMDのみを叩いた所で日本のMD計画は頓挫するわけではありません。そうなると、今回の事故の件に絡めて批判できるMDはイージスMDだけですから、そのようなMD批判をしたところで特に意味は無いのです。
03時12分 | 固定リンク | Comment (223) | 軍事 |
2008年02月13日
「ゲリラに対処」新型戦車を公開=通信機能高め、軽量化も−防衛省:時事通信

(時事通信Yahoo掲載写真)

1両7億、陸自が新型戦車:産経新聞 

↑現在、掲載写真が総計84枚に増殖中

新型戦車:20年ぶりモデルチェンジ…試作車公開 防衛省-毎日jp



レオパルト2A5のショト装甲風味なものを採用しているので、パっと見、似ています。一瞬、メルカバMk.4にも見えましたが、気のせいでした。これまで発表されていたTK-Xの完成予想図とはかなり違った印象です。

完成予想図前期イラスト:Missiles & Armsより
完成予想図後期イラスト:2005年防衛白書より

砲塔のシルエットは側面の空間装甲がある分、90式戦車より大きいです。RPGなどで側面攻撃を受けることを想定した対処なのでしょう。それに産経新聞掲載写真2の側面写真を見ると、TK-Xは車体サイドスカートの下に更にゴムスカートを付けています。(新開発の足回りを隠す為か、消音対策なのか)そして価格の7億円は、90式戦車よりも安く、ほぼ同時期に開発された韓国の新型戦車K-2が83億ウォン(約9億円)であるのと比べてもかなり安いです。産経新聞は7億円を高いかのように書いていますが、間違いです。

細かいスペック、主砲や車体長の詳細、即応弾の数、エンジンの詳細など、これから少しずつ出てくると思います。重量44トンだというのは公式公開の前から情報が出ていました。すると主砲は50口径というのも本当なんでしょうか。50口径にしては全長が短い感じもしますが、エンジンが小さく纏まっている為に短くなっているのかもしれません。

産経新掲載写真:9枚目

側面写真を見る限り短めの砲身です。50口径砲ではなく44口径?


TK-X - Wikipedia

90式戦車 - Wikipedia

74式戦車 - Wikipedia
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2008年01月30日
ロシアの独立新聞(Независимая газета:ニェザヴィーシマヤ・ガゼータ)が以下のように報じています。

Военно-экспортный тупик
(兵器輸出が袋小路に陥った)
Москва теряет крупнейших импортеров оружия
(モスクワは最も重要な兵器輸入業者を失います)


原文のロシア語記事は長いので、以下の時事通信の要約記事をご覧下さい。


ロシアの対中兵器輸出、ほぼゼロに=最新鋭技術の提供めぐり対立:時事通信
 【モスクワ29日時事】ロシア紙・独立新聞は29日、ロシアの中国向け兵器輸出がほぼゼロに激減していると伝えた。この問題を協議するため、セルジュコフ国防相が5月のプーチン大統領退任までに訪中する可能性があるという。
 
ロシアから中国への兵器輸出は最近まで、年間18億〜20億ドルに上り、兵器輸出全体の約4割を占めていた。しかし、同紙によると、ウズベキスタンにある軍需工場の技術者不足から、総額15億ドルに上る軍用機輸出契約が最近頓挫し、現時点で大型契約は残っていない。

また、対中警戒感が根強いロシア軍内で、中国に最新鋭兵器をどこまで提供するかをめぐり意見が統一されていないことから、中国が求める兵器の売却やライセンス生産の権利付与に応じていない。ロシアは一方で、インドには戦闘機を含む最新鋭兵器を売却しており、中国側の不満が高まっているとされる。


ロシアと中国の兵器取引関係悪化は、数ヶ月前からジェーン・ディフェンス・ウィークリー(JDW)でも語られており、購入して暫くしたら勝手にコピー品を大量生産する中国のやり方に嫌気が差したロシアが怒ったのではないか、とKojii.netの井上孝司氏の見解です。

しかし結局の所、この関係悪化は一時的なもので、中国はロシアからの兵器輸入に頼らざるを得ないという分析も為されています。以下は昨年11月の、アメリカのUPI通信の分析です。


Analysis: China eyes new Russian tech - UPI.com
Military observers based in Moscow and Beijing say they believe the recent nadir of military cooperation between China and Russia is only temporary. China will have to rely on Russia to develop its military technologies, as Beijing has no other alternative.

The first new project involves Su-33 shipborne fighters. Experts from the Russian aviation industry are convinced that China is about to start the construction of an aircraft carrier.


「モスクワと北京に拠点を置く軍関係者は、最近の露中軍事協力でドン底まで悪化した関係は、一時的なだけであると言います。北京は他のいかなる選択肢も持たず、中国はその軍事技術を開発するためにロシアに頼らなければなりません。

(空母戦力化の為の)最初の新しいプロジェクトは、Su-33艦上戦闘機を必要とします。ロシア航空業界の専門家は、中国が航空母艦の建造を始めようとしていることを確信しています」

冷戦時代にソ連との関係が悪化した中国は、敵の敵は味方の論理で西側と接近を図り、軍事技術協力を得ようとしましたが、天安門事件でその関係は崩れ、冷戦終結後にロシアと再接近を図り、大量のロシア兵器を購入してきました。しかしロシアは国境を接する中国への兵器輸出に制限を設け、T-90戦車は売らず、フランカー戦闘機も最新型レーダーを搭載したバージョンは売っていません。(一方、地理的にロシアと敵対し得ないインドには最新ロシア兵器が納入されている)

このような状況に不満を募らせる中国は、西側との兵器協力関係を再開したいと考えていますが、アメリカの反対に遭いヨーロッパは二の足を踏んでいる状態で、何時になったら再開できるかは目処が立っていません。そこで中国は仕方なく戦略的パートナーであるパキスタンと兵器共同開発を行っていますが、パキスタンは特筆するような独自技術を持っているわけではなく、金銭的にも裕福な国では無い為に開発資金出資額も限定され、中国が独自開発するのと似たり寄ったりの結果となっています。
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