2006年01月24日
2件連続でスパイ事件発覚。無人ヘリ不正輸出事件と、対空ミサイル情報漏洩事件です。

ヤマハ発動機が無人ヘリを対中不正輸出、経産省が検査

ヤマハの無人ヘリRMAXは自衛隊にも納入されています。自重30kg程度の小さな機体で、同じく自衛隊に採用されている富士重工のFFOS(RPH-2)が自重300kg、アメリカ軍のRQ-8Bファイアスカウトが自重1400kgといった、より本格的なものと比べるとラジコンヘリに近い代物です。というよりはラジコンヘリに自律操縦システムを組み込んだものです。RMAXは手動操縦型が千数百万円で、自律操縦型が一億数千万円と10倍も値段が違います。

中国は以前、非ヘリ型の無人偵察機「ハーピー」をイスラエル・エアクラフト・インダストリー(IAI)から購入していましたが、この件を巡ってアメリカがイスラエルに制裁を掛けています。(現在、輸出停止中)このような状況の中で、日本から無人機の不正輸出が行われたことは全く宜しくありません。それが例えラジコンヘリに毛の生えた程度の代物であっても。

「中国公機関から派遣」と供述、無人ヘリ輸出仲介の貿易社員
>同社の中国人男女2人は福岡県警の調べに「中国の公的機関から派遣された」と供述している。

「公的機関」か、懐かしいフレーズだ。(分かる人には分かるネタ)
結局この事件は中国人の不法就労事件の家宅捜索から芋蔓式に発覚した模様です。


そしてこちらは03式中SAMのデータが北朝鮮に流出していた事が発覚。

防衛庁のミサイル研究データ、総連系企業に流出

薬事法違反で朝鮮総連を強制捜査した時に発覚と、無人ヘリの件と同じく別件捜査で発覚。これは本当に偶々なのか、それとも最初から本命はこちらで最初の捜査理由は何でも良かったのか…どっちなんでしょうね? 

 三菱電器→三菱総合研究所→朝鮮総連系ソフトウェア会社

下請けが下請けに仕事を任せている内に情報がダダ漏れというパターン。今回は「秘」相当のデータが漏れていました。(機密レベルは「機密」→「極秘」→「秘」の順番に重要度は3段階に分かれています)このパターンは魚雷データが民間に流出した時と同じです。魚雷の件は「秘」ですら無かったのですが、今回の03式中SAMの場合は「秘」ですから、関係者の処分は免れないでしょう。

漏れたデータ自体は最大射程や迎撃高度(公式には発表されていない)くらいで、それほど深刻な問題ではありませんが、こういったつまらない理由で情報が漏れるような体質はどうにかして欲しいです。
20時57分 | 固定リンク | Comment (37) | 軍事 |

2006年01月02日
昨年末に発覚していたお話です。スペイン海軍F100級フリゲート「アルバロ・デ・バザン」(イージス・システムを搭載)が、ペルシャ湾に展開中のアメリカ海軍ルーズベルト空母戦闘群と合同作戦を行っていたとの事。


アルバロ・デ・バザン
アルバロ・デ・バザン級


スペイン:フリゲート艦がイラク米艦隊に合流[毎日新聞 12/29]
右派エルムンド紙によると、アルバロ・デバザンは9月10日〜12月1日の間、ペルシャ湾での米艦隊軍事作戦の展開に参加した。スペイン国防省はいったん、「参加してはいない」と否定したが、同紙は米海軍提供のペルシャ湾上の「アルバロ・デバザン」の写真を掲載。国防省幹部は匿名で「初の米艦隊への『合流』」を認めた。

日本が護衛艦「こんごう」級をインド洋に派遣する際、マスコミはイージス艦、イージス艦と大騒ぎしていたものですが、毎日新聞はスペインのイージス艦を「フリゲート艦」で済ませるんですね。いや勿論、アルバロ・デ・バザンはフリゲートですから合ってますけど。…それ以前にイージス艦だと気付かれてない? そもそも、イージス艦だからといって大騒ぎするのは日本だけのような気もします。

今回、スペインは発表もせずに自国の軍艦を行動させました。海軍の艦艇は他国との合同作戦が陸軍などに比べ行い易く、フランス海軍もイラク戦争の直前に原子力空母「シャルル・ド・ゴール」をペルシャ湾に送り込みましたが、地中海マルタ島沖でアメリカ海軍と合流した上で一緒にスエズ運河を渡り、紅海経由で到着しています。これは情勢の変化次第でフランスが何時でも参戦できるように準備するものでした。今回のスペイン海軍艦艇の行動は、アメリカとの関係修復を目的としたものでしょう。

スペインのイージス艦と言えば、アスナール政権時代にアメリカからトマホーク巡航ミサイル60発を購入する計画があり、F100級フリゲートとS80潜水艦への搭載を予定していました。しかし2004年のサパテロ政権誕生で計画見直しが図られると思われていましたが、今回のアルバロ・デ・バザンのペルシャ湾派遣がスペイン政府の意思であるならば、スペインへのトマホーク輸出は現実味を帯びてきます。現在、トマホークを運用しているのはアメリカとイギリスだけですが(フランスは購入を打診するも拒否される)最近ではオランダが購入を決定しました。

ところで自前の人工衛星を持たないオランダやスペインがどうやってトマホークを運用するのでしょうね。トマホークはDSMAC(情景照合)、TERCOM(等高線照合)といった誘導装置に偵察衛星からのデータを入力してやる必要があります。EU共同で使う偵察衛星を使用するのか、それともアメリカからデータの提供を受けるのか…そしてこんな情報もあります。

The Tomahawk cruise missile--once restricted to the United States and United Kingdom only--appears to be headed for Spain and possibly other nations in the near future, but perhaps in different variants (GPS-only guidance). (全米海軍連盟2003年記事)

トマホーク巡航ミサイルの最新型「タクティカル・トマホーク」はDSMACやTERCOMに加えGPS誘導も追加されましたが、それをGPSだけの装備にして売る廉価版、という事なんでしょうか。でもそれだと射程の長いSLAMでしかないような気がします。
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2005年12月22日
サウジアラビアはBAEシステムズ(本社イギリス)と戦闘機「ユーロファイター/タイフーン」の契約について調印しました。

EF2000


BAE signs landmark Eurofighter contract with Saudis [12/22 The Times]
BAE SYSTEMS was celebrating the first big export order for the Eurofighter last night after Britain and Saudi Arabia signed a memorandum of understanding that could secure £10 billion of work for the British firm and its sub-contractors.

It is thought that up to 72 Typhoon jets will be delivered to the kingdom from 2008, but neither government would confirm the size of the order.


2008年から72機納入、100億ポンド(2兆円)の大口契約です。以前の情報では400億ポンド(8兆円)と報道されていましたが、そこまでの巨大契約には至りませんでした。けれど、2兆円で72機・・・1機あたり300億円近いですね。これは単純な機体価格ではなく、メンテナンス費用やミサイルなどの装備品込みの価格だからで、機体本体価格は100億円もしない筈です。

輸出商戦で苦戦していたユーロファイター/タイフーン(ユーロファイターは欧州圏での愛称、タイフーンは輸出名)が、遂に一定の成果を上げました。F-35Aの開発が危ぶまれる中、もしかすると意外に数を伸ばすかもしれません。


【追記】
Kojii.netさんの所で続報がありました。

「金額については BBC が 60 億ポンド (106 億ドル) と伝えているが、100 億ポンドという説もある」(DID, 2005/12/23)

「サウジアラビアは、同国が発注することになったタイフーン戦闘機のパッケージ総額は報道されている 70 億ポンドを下回っている、と主張している。この件では 9 月に、英 Guardian 紙が 400 億ポンド説をブチ上げたことがある」(DefenseNews, 2005/12/23)

との事です。The Times 紙の100億ポンド説よりもBBCの60億ポンド説の方が近い模様。これだと1兆2000億円で72機、1機あたり166億円。欧州向けの価格としては高いですが、サウジ向けとしてならむしろ良心的価格かも。
21時28分 | 固定リンク | Comment (93) | 軍事 |
2005年12月18日
名前が元に戻ってた。

Name Change for F-22 Raptor
The Air Force has changed the designation of the F/A-22 to the F-22A Raptor.

F/A-22のF/Aとは「Fighter(戦闘機)/Attacker(攻撃機)」を表し、戦闘攻撃機を意味します。F-22AのAは、単なるABCD…アルファベット順番上のAで、初期生産型を意味します。今後改良型が出て来ればF-22B、F-22Cという番号が割り振られます。

ラプターは3年前に予算を通すための議会対策(なんでも出来る万能機であるとのアピール)でF-22からF/A-22に名前を変更していたのですが、部隊配備が始まった途端に元に戻してしまった事になります。

しかし予算獲得戦争はまだ継続しており、空軍は更なる予定配備数の増加を、議会は減少を狙って攻防は続いたまま。果たしてどうなる事やら・・・
17時50分 | 固定リンク | Comment (21) | 軍事 |
2005年12月03日
1ヶ月前に横須賀への原子力空母配備が決定されましたが、配備される空母はニミッツ級6番艦「ジョージ・ワシントン」に正式決定しました。建造中のニミッツ級10番艦(次世代空母CVXのテストベッドとしてあらゆる新装備が盛り込まれる)が就役したら東海岸に置いておきたいので、ノーフォークが母港のワシントンを転出するということになった模様です。


キティホーク
キティホーク級航空母艦

ニミッツ
ニミッツ級航空母艦


地元では原子力空母反対運動が起こっているようですが、アメリカ海軍は通常動力空母を造っておらず何れ原子力空母だけになってしまうので「通常動力空母を配備しろ」という要求は無理です。そうなると横須賀以外への配備を促すしかありません。つまり佐世保です。(佐世保商工会議所は原子力空母の誘致に積極的、地元民は消極的)

通常動力空母CV-63「キティホーク」の退役が2008年、それまでに横須賀と佐世保の原子力空母押し付け合いが始まる・・・事は無いでしょう。厚木の空母艦載機地上基地を岩国に移転するので佐世保の方が近くなるのですが、横須賀でそのまま決まると思います。佐世保は前線に近過ぎますから。



空母と言えば、中国の大連に繋がれている空母ワリヤーグはお色直し(錆び落としと再塗装)されました。ソ連が崩壊しウクライナの持ち物となった未完成のこのクズネツォフ級2番艦は、中国に屑鉄として売られた後も暫く放ったらかしにされ赤錆だらけでした。


エンジン付いてないドンガラ
クズネツォフ級航空母艦


購入した時の名目はマカオで水上ホテルにする計画だったそうですが、恐らく人民解放軍は艦載機発着訓練用プラットホームとして使うのだと思います。(ワリヤーグは機関が付いておらず(ウクライナ側が引き渡す際に機関を破壊済み)、自走は出来ない)なにしろ同様にロシアからスクラップとして購入(先ず韓国企業がロシアから購入、それを中国へ転売)したキエフ級空母ミンスクは、テーマパーク「明思克航母世界」(ミンスク空母ワールド)として運営されていたものの倒産。マカオ水上ホテル計画の採算が合うとも思えません。

ワリヤーグがそのまま空母として再就役するわけでは有りませんが、何時の日か中国海軍は空母を保有しようとするでしょう。それは20年後、或いは30年後くらいの話なのでしょうけれど。その頃には「ジョージ・ワシントン」の退役時期が迫っているでしょうから、横須賀にニミッツ級の後継艦CVXが来る事になるかもしれません。日米同盟が、続いていればの話ですが。
23時33分 | 固定リンク | Comment (37) | 軍事 |
2005年11月22日
一番無難と思われていた空軍仕様(A型)の計画に暗雲が広がる。

Pentagon said bent on killing F-35 fighter model [Nov 18 Reuters]
The Pentagon is seeking to cancel the Air Force version of Lockheed Martin Corp.'s (LMT.N: Quote, Profile, Research) F-35, the world's biggest fighter program, a leading defense consultant said Friday.

代わりにF/A-22を増産する気なんだろうか。でもそれだと余計に予算が・・・
23時58分 | 固定リンク | Comment (45) | 軍事 |
2005年10月29日
日本で騒ぎになっているアスベスト問題は、海外でも同様に対策が遅れており、フランスでも深刻な被害が及んでいます。


アスベスト死者10万人に 仏上院調査団が予測 [10/27 共同通信]
アスベスト(石綿)被害に関するフランス上院の調査チームは26日、アスベストが原因の死者が今後、同国で最大10万人に達すると予測する報告書を公表した。日本と同様、フランスでもアスベスト対策が遅れ、深刻な健康被害を招いたことが浮き彫りになった。

そしてフランスのアスベスト問題で象徴的なのが1997年に退役した空母クレマンソー。

8年も前に退役したのになかなか解体されず、今年に入ってようやく船体をバラし始めたらしいと伝えられています。アスベストとPCBが大量に使われている事が発覚し、解体するのにも費用が掛かりすぎて解体業者をたらい回しにされて地中海をウロウロと放浪。スペインの業者が契約違反で取引停止された時はイタリアのシチリア島で放棄されてしまい、結局フランスのツーロン港へ戻されました。そしてドイツの業者と再契約し、ツーロンでアスベスト除去作業を開始。船体構造を維持したまま九割は取り除きましたが、残りの一割、20トン程は船体をバラしながら取り除くしかないのですが、そのままインドへ送られてしまいました。

鉄屑にして儲けを出す為には欧州でバラすわけにはいかなかったのです。しかしインドの造船業界は作業環境が劣悪で、アスベストを作業員に影響なく除去する技術はありません。「STOP the Clemenceau!」と、空母クレマンソーをインドに送るなという運動が環境団体の間で行われましたが結局送られてしまいました。

The Indus Telegraph:Asbestos laden ship steering for Indian shore

日本でも1986年に空母ミッドウェー改修工事を横須賀のドックで行った際、大量のアスベストが出てきて問題になったことがあります。アスベスト問題は軍艦に限ったものではありませんが、航空母艦という艦種は50年近く使われることが珍しくない為(通常、船の寿命は25年ほど)古い艦が目立つのですが・・・クレマンソーの姉妹艦「フォッシュ」はブラジルに現役として売られました。現在空母「サンパウロ」としてブラジル海軍の中軸を担っていますが、10年もすれば退役する話が出てきます。その時、またアスベスト問題で頭を悩ます事になるでしょう。

こういう話を聞いて少し心配になるのが中国にスクラップとして売られたロシア製空母。あれはアスベスト使ってるんでしょうか・・・・かなり使ってそうです。(ロシアはアスベストの大産地)どれもまだ港に繋ぎっぱなしでバラしてないですから、問題になっていませんが。
06時29分 | 固定リンク | Comment (23) | 軍事 |
2005年10月28日
五日前の日経新聞の記事は正しかったようで、横須賀への原子力空母配備は決定事項となりました。空母キティホークが2008年に退役、そして空母ジョン・F・ケネディが2006会計年度(2005年10月〜2006年9月)中に退役、もはや残る空母は全て原子力空母になります。(2009年時にエンタープライズ級×1、ニミッツ級×10の11隻体制)


米原子力空母初配備へ 横須賀に08年 [10/28 共同通信]
米政府は27日、神奈川県の米海軍横須賀基地を事実上の母港とする通常型空母のキティホークが2008年に退役し、後継艦に原子力空母を配備すると発表した。米海軍が保有する9隻のニミッツ級原子力空母のうち1隻を充てる。原子力空母の日本配備は初めて。

ただ、日経新聞が報じたところの『建造中の空母「ジョージ・H・W・ブッシュ」が有力』というのは間違いだった模様。

米海軍が保有する9隻のニミッツ級原子力空母のうち1隻を充てる。

空母ブッシュは建造中のニミッツ級10番艦ですから、現在保有する9隻の中からというのであれば外れます。この最後のニミッツ級となる10番艦は次世代空母CVXのテストベッドとしてあらゆる新装備が盛り込まれますから、テスト結果を参照しやすいように母港はアメリカ本土の東海岸に置くのが便利でしょうし。

しかし半年前のイングランド海軍長官(当時:現国防副長官)の「空母ケネディの退役延期の可能性(横須賀配備も有り得る)」という発言は何だったのでしょうか。氏は元々空母11隻体制への推進派だったのでこれを最初に聞いたときは驚いたものですが、結局は元の鞘に収まったということに。
20時31分 | 固定リンク | Comment (33) | 軍事 |
2005年10月23日
この週末に日経新聞と産経新聞が軍事関連記事を書いていました。


横須賀母港の米空母、後継は原子力艦に・日米が調整 [10/22 日経新聞]
空母「キティホーク」の後継艦として、2009年をメドに原子力空母を配備する方向で調整に入った。原子力型の国内母港化は初めてとなり、同年に新造艦として配備予定の「ジョージ・ブッシュ」が有力だ。11月16日に京都で開く日米首脳会談で言及し、関連施設の整備や受け入れに向けた地元との調整作業に着手する。

これまで横須賀基地を母港とした米空母は「ミッドウェー」「インディペンデンス」「キティホーク」の3隻。動力はいずれもディーゼルによる通常型だった。

まず最初に日経新聞の記者さんに言っておきたいのは、「キティホーク」のような通常動力型空母はディーゼルではなく蒸気タービンだということ。

さて記事の内容ですが・・・半年前にはキティホークの後継は通常動力艦の「ジョン・F・ケネディ」になると報道されていました。ところがまた原子力艦にしたいという話になっています。しかも2009年に配備できる中で最新鋭のCVN-77「ジョージ・H・W・ブッシュ」(現在建造中)を廻すと。名前からして余計に反戦団体に反発されそうです。勿論、この名は現在のブッシュ大統領から名付けられたわけではなく、お父さんの方の名からですが。

この記事が本当なら、米海軍は空母12隻体制から11隻体制に移行、空母ケネディは来年に退役、2008年にキティホークが退役するとアメリカの空母は全て原子力艦となります。12隻体制を維持する予定ならケネディは2018年まで現役に留まりますが、やはりその先は原子力艦だけという状況になります。どうせ受け入れる事になるわけですし、横須賀や佐世保では原子力潜水艦は普通に見受けられるわけですから、「原子力艦反対」と言われても今更な感じ。


日本版「動く海上基地」で高速輸送艦を導入 政府、米に伝達 [10/23 産経新聞]
日本が導入する高速輸送艦は、海上自衛隊が保有する最大艦艇の補給艦「ましゅう型」(一三、五〇〇トン)を上回る大型艦を想定。甲板ではヘリコプターのほか、偵察機などの航空機の離着陸も可能にするが、攻撃型の空母とは運用も装備も異なっている。

政府は早ければ、平成十九年度予算にも研究費を盛り込み、二十年度から建造などに着手したい意向だが、コスト面で新規購入は困難との見方もある。このため、来月に東京−小笠原・父島間で就航を予定しながら、東京都が導入を事実上断念した超高速船「テクノスーパーライナー」(TSL、一四、五〇〇トン)を改造、転用する案も浮上している。

現在アメリカ軍はオーストラリアのインキャット社からウェーブピアサー型高速フェリーをレンタルして使っていますが、日本も同じような物を持てと。でもテクノスーパーライナーの改造転用は止めて欲しい。あれは車両輸送向きじゃないですし。でも新規建造すると予算が大変だし、そもそも3年後に建造開始(設計に掛けられる準備期間は一年)だとスケジュール的に厳しい。インキャット社からレンタルするにしても、ウェーブピアサー船型は13500トンを上回る大型艦として造るには無理がある。

やっぱりテクノスーパーライナー救済目的で改造転用の方向なんでしょうか。
09時50分 | 固定リンク | Comment (166) | 軍事 |
2005年09月27日
EF2000


Blair in secret Saudi mission [9/27 Guardian]
Tony Blair and John Reid, the defence secretary, have been holding secret talks with Saudi Arabia in pursuit of a huge arms deal worth up to £40bn, according to diplomatic sources.


40ビリオンポンド(400億ポンド)。現在の為替レートで1ポンド約200円なので8兆円。目玉商品は欧州共同開発のEF2000ユーロファイター/タイフーン。このところ不景気なイギリス軍事業界に降って湧いたような儲け話です。それにしても金額が大きすぎるような気が・・・桁が違わないですか? 8兆円あったら補修パーツや兵装一式を含めても600機くらい買えてしまいます。機数が異常に多すぎるし(サウジ空軍は全作戦機が300機程度)、そもそもF-15をS型を含め100機以上保有しているサウジアラビア空軍に今更ユーロファイターが必要だとは思えません。既に運用しているヨーロッパ製の戦闘機トーネードIDS/ADVの代替用として義理的に購入するなら分からないでもないですが、それなら数十機程度の購入でよいはずです。


どうもこの商談はおかしい気がします。金額の規模自体がサウジアラビアが必要とする以上であるし、何かの間違いではないかと。・・・そしてガーディアン紙によるとサウジアラビアが政治的取引を要求して来たとあります。


Defence, diplomatic and legal sources say negotiations are stalling because the Saudis are demanding three favours. These are that Britain should expel two anti-Saudi dissidents, Saad al-Faqih and Mohammed al-Masari; that British Airways should resume flights to Riyadh, currently cancelled through terrorism fears; and that a corruption investigation implicating the Saudi ruling family and BAE should be dropped. Crown prince Sultan's son-in-law, Prince Turki bin Nasr, is at the centre of a "slush fund" investigation by the Serious Fraud Office.

政治犯を釈放しろ(定番だなー)、リヤド行き航空便を再開しろ(これはまぁいいけど)、王族が関係する不正資金捜査を止めろ(賄賂やったと認めるのか)・・・この要求の為に交渉は難航しているとガーディアン紙は書いています。しかし400億ポンドという金額が現実離れしている事については何も書かれていません。国防予算が年間2兆円程度のサウジアラビアが8兆円の買い物をする、という事態は「日本政府はF-22を1000機買います」というのと同じくらいの無茶さ加減です。


どうにも、もう少し具体的な取引内容が公開されないとなんとも言えません。ガーディアン紙の誤報かもしれませんし・・・
23時02分 | 固定リンク | Comment (16) | 軍事 |
2005年09月04日
この角度まで行くと主砲弾の揚弾ができなくなるハリケーン・傾いた米戦艦。【AFP=時事】

これを見た瞬間、『アラバマお持ち帰りしたい・・・』と思った私は負け組。
13時22分 | 固定リンク | Comment (5) | 軍事 |
2005年08月24日
今日、長崎で進水した14DDG(イージス駆逐艦)の名称は「あたご」と命名されました。旧海軍では巡洋艦に付けられていた由緒ある名前で、現在海上自衛隊に在籍しているイージス艦「こんごう」級4隻が旧海軍の金剛型戦艦(こんごう、きりしま)と巡洋艦の妙高型(みょうこう)、高雄型(ちょうかい)から名付けられていますから、順当な命名であると言えます。

先の4隻が4音節の名前だったのですが、今度のクラスは3音節となりました。そうなると2番艦である15DDGも3音節となる可能性が高いのですが、その際の第一候補である高雄(たかお)が中国・台湾を刺激しかねないので面倒です。(勿論、由来は京都の高雄山からなんですが、台湾には高雄(カオシュン)という都市があります。「こんごう」も大阪の金剛山からなのですが、朝鮮の金剛(クムガン)山と勘違いした人もいるくらいなので笑えません)

そうなると15DDGの名称で最有力候補は旧海軍の妙高型の羽黒(はぐろ)となるでしょう。高雄型の摩耶(まや)も捨てがたいんですが2文字ですし、2文字となると他に富士、阿蘇くらいしか無いので(那智は発音がちょっと拙い)・・・新しく岐阜県の恵那(えな)山から取ってもいいかも。

護衛艦隊に配備されている8隻のDDGの内、6隻まではイージス艦になります。残り2隻がイージス艦で更新されるかどうかは分かりませんが、その時にでもまた・・・その前に2年後には16DDHが進水予定。無難に考えていくとやっぱり「あかぎ」なんだろうなと予想してみる。
12時37分 | 固定リンク | Comment (78) | 軍事 |
2005年08月23日
この手の記事は誤報が多いので、鵜呑みにするのはアレなんですが。

米・欧3機種に絞り選定=新戦闘機調査費要求へ−防衛庁 [8/23 時事通信]
航空自衛隊F4戦闘機の後継となる次期主力戦闘機(FX)の選定で、防衛庁が米国の最新鋭F22戦闘攻撃機とFA18スーパーホーネット、欧州戦闘機ユーロファイターの3機種に絞り選定作業を本格化させていることが23日、分かった。

これが正しいとするとストライクイーグルとグリペン、ラファールが候補から外れたことになります。つまりボーイング社(F-15EとF/A-18Eの会社)はスーパーホーネットを、ブリティッシュエアロスペース社(ユーロファイターとグリペンの販売代理会社)はユーロファイターを売り込むことになりました。ダッソー社(ラファールの会社)は最初から相手にされていない? ロッキード社は開発中のF-35が時間的に間に合わないのでF-22ラプターを推すことになります。

・・・欧州機のユーロファイターはまず選ばれないでしょうから、ラプターかスーパーホーネットの争いになります。が、恐らく最初からラプターで決まっているのでしょう。あと1、2年の間に正式決定してしまうでしょうから、その間に防衛政策の大幅な見直し(某野党のような防衛費5000億円削減とか、某財務省主計官のような2000億円削減とか)が無い限り、日の丸ラプターが誕生する・・・予定?

自分としてはラプターかストライクイーグルかと思っていたので、あっさりストライクイーグルの目が無くなった事が少し残念なようなそうでないような。
22時37分 | 固定リンク | Comment (381) | 軍事 |
2005年08月19日
長崎で建造中で近く進水予定の14DDG(イージス艦)の名前は「あしがら」辺りになると思っていましたが・・・


自己規制?名前白紙に 海自、新型イージス艦 [8/19 共同通信]
長崎市の造船所で今月下旬に進水する海上自衛隊の新型イージス艦(7、700トン)の名称について、海自の内部募集でほぼ決定していた当初案が白紙撤回されていたことが19日、分かった。当初案は旧海軍の主力戦艦名だったとされ、「軍国主義復活」との批判を避けようと自己規制が働いたらしい。

海自は再募集して、艦名を内定。24日の進水式に合わせ公表する。

防衛庁海上幕僚監部は今春、各地の部隊や出先機関から新型イージス艦の名前を募集。集約して候補名を絞ったが、海幕上層部から「待った」がかかり、5月になり異例の再募集をしたという。
当初案を造船所関係者は「旧海軍を代表する名前」と話し、旧日本海軍最大の戦艦「大和」だったと示唆する。一方、海自幹部は「多くの作戦に参加し戦後まで生き残った『長門』だった」と話した。


えええ、「大和」や「長門」なんて駄目でしょう、『軍国主義復活』云々の馬鹿げた理由じゃなくて、たかがイージス艦如きに勿体ないでしょうに。・・・そういう理由で再募集したんだと思います、共同通信の記者さんはその辺の拘りが理解できなかったので自己規制か何かだと勘違いしたのかと。

今までずっと旧海軍からの伝統的艦名を護衛艦に命名してきた海上自衛隊が、戦艦の名前を付けたところで「軍国主義復活の懸念」だなんて・・・今更でしょう。旧海軍の巡洋戦艦の名前なら既に4隻分、命名してしまっているのですから。
23時58分 | 固定リンク | Comment (84) | 軍事 |
2005年08月11日
パキスタン空軍の新型戦闘機JF-17(中国名FC-1)の更なる受難。


Chinese FC-1 faces export hurdle [2005/7/18 Jane's
Russian engine manufacturer Chernyshev Moscow Machine Building Enterprise has banned China from entering its RD-93-engined FC-1 attack fighter aircraft in any procurement competition where it is up against a Russian aircraft.


『RD-93を中国が勝手に第三国に転売することを禁止』

更に記事は、パキスタンがこの対象に含まれることを伝えています。以前からロシア政府は第三国への輸出には否定的でしたが、エンジン製造のチェルニシェフ社から直接言われてしまいました。そうすると別のエンジンを調達してくるしかありません。しかし他国のエンジンは高価過ぎて安さが利点のFC-1の意味が無くなり、中国製のエンジンとなると大幅な性能低下は避けられません。

例によってRD-93を違法コピーするのは、スホーイ戦闘機やJ-10のエンジンの供給を止められてしまうので無理があるし・・・結局の所、中国が国内に配備するFC-1に搭載する分のRD-93については問題ないわけですから、一番ワリを喰っているのは開発資金を負担したパキスタンということに。

他のエンジンに付け替える場合、性能的に問題なくても機体の方を改修しなければならず完成は大きく遅れるでしょうし、RD-93を違法コピーする場合もエンジン開発にそれなりに時間を取られます。もういっそFC-1を諦めて、韓国からT-50を購入した方がパキスタンにとってお得なんじゃないかと思えてきました。性能的にも似たような機体だし。
00時58分 | 固定リンク | Comment (27) | 軍事 |
2005年07月29日
一週間も放置していたお便りから


【質問】
中国軍事費は公表の2〜3倍、周辺脅威に…米国防総省
[読売新聞]

非常に日本にとっても危機的な状況だと思いますがどうなんでしょうか
これをネタにBlogの更新をお願いします


【回答】
中国の軍事費が公表の3倍というのは、ずっと以前から知られている事です。そして中国は経済成長する以上の速度で、軍事予算は拡大の一途を辿っています。中国軍の軍拡は日本への脅威と成りつつあるでしょう。そう、“成りつつ”あります。逆を言えば今まで脅威ではなかった、という事でもあります。

中国人民解放軍は冷戦期間中、軍事予算を核戦力へと振り向け通常戦力の整備を後回しにしてきました。『ズボンを履かなくても核武装を by毛沢東』それは核戦争の脅威の時代には正しい選択と言えるでしょう。そしてある程度の核戦力を揃えた冷戦末期頃から通常戦力の整備を始めたのです。

その頃の中国人民解放軍の通常戦力は、日本にとって無視して良い存在でした。戦闘機の殆どは時代遅れのMig-19、駆逐艦や潜水艦は第二時世界大戦時の技術レベル・・・当時の日本が相対していたソビエト連邦の極東戦力と比べれば、脅威とすら思われていませんでした。

それから20年。経済成長著しい中国は、途中に天安門事件で制裁を受け西側からの軍事技術取得が出来なくなり兵器近代化に悪影響が出ましたが、増え続ける軍事予算のおかげで着実に戦力が強化され続けています。湾岸戦争という「極端な質の差があると数では対抗できない」戦争を目の当たりにした中国は、兵器の近代化を大急ぎで進めていきました。

こうして今まで日本にとって大した脅威ではなかった中国軍の通常戦力が、次第に脅威として台頭してきました。しかし、冷戦期のソ連軍と比べればまだまだ脅威レベルは低く、危機的な状況とまでは言えません。今後20年、30年となるとどうなるかは分かりませんが、もし中国の軍拡ペースに衰えが見られないようなら、日本もこの競争に付き合わざるを得ない日が来るのかもしれません。




【質問】
アジア各国が「空母保有」競争
[朝鮮日報]

ご存知かもしれませんけどネタの進呈です
JSFさんの見識はいかがでしょうか。


【回答】
タイ海軍が二隻目の空母を保有しようとしているだなんて話は聞かないし(予算的にも無理。空母本体よりも艦載機と兵装が買えない)、インド海軍は今までずっと空母二隻体制だった(現在は更新の谷間で空母「ヴィラート」一隻が老骨に鞭を打って頑張っている)ので増やそうとしているわけではないですし・・・中国の空母保有計画に至っては、まだ何も具体的に進められてはいないので今から初めても20年以上先の話です。韓国のLPXは強襲揚陸艦で空母ではないし、日本の16DDHはヘリ以外積む気はないですし・・・まぁ、中国海軍がインド海軍の保有する位の大きさの空母を建造し始めたら「空母保有競争」が始まったと言えるかもしれません。
00時52分 | 固定リンク | Comment (46) | 軍事 |
2005年07月26日
二週間ほど前に韓国で建造中の揚陸艦LPX(計画名)が進水しました。名前は「独島(竹島の事)」です。進水前からそういう名前に決まりそうだという情報は得ていたので驚きはしませんでしたが、そういう命名のやり方(国際的に自国の領土だと確定していない領域の地名)はあんまり縁起が良くないので止めておけば良いのにな、と思いました。

この手の命名のやり方の先駆者が居ます。それは帝政ロシアでした。1860年7月2日、ロシア海軍の輸送艦「マンジュール(Манчжур)」号が金角湾(Золотой Рог:トルコの金角湾に似ている事から命名)に到着。この日がウラジオストク港の開基日でした。また、日露戦争で開戦した日に巡洋艦ワリヤーグと共に仁川沖で日本艦隊に沈められた砲艦「コレーツ(Кореец)」号もまたその手の命名のされ方でした。(ちなみにコレーツ級2番艦の名も「マンジュール」でした)

 ・マンジュール(Манчжур)=ロシア語で「満州の、満州人」
 ・コレーツ(Кореец)=ロシア語で「韓国の、韓国人」

つまりロシアはまだ占領してもいない地域の名前を軍艦の名前に命名していたわけです。ウラジオストク(Владивосток)=東方を征服せよ、という命名スタイルから合わせると、何れ満州も朝鮮も全て占領する積もりだったのでしょう。ところが道半ばにして目的は達成できませんでした。


・・・とまぁ、あまり縁起の良くない命名スタイルなのです。それに、満載で2万t近い艦にちっぽけな無人島の名を付けるとは、勿体無いです。海上自衛隊では島の名前を持つ艦種は掃海艇です。何故、韓国海軍は「仁川(インチョン)」と命名しなかったのか不思議でなりません。朝鮮戦争の仁川上陸作戦、起死回生の大逆転・・・揚陸艦の艦名として、これほどふさわしい物は無いでしょう。

実はアメリカ海軍も他国の地名を名付けた艦を保有しています。ただしそれは帝政ロシアのような侵略的意図ではなく、自国の海兵隊が先陣を切る上陸作戦が行われた地名を、古戦場名として強襲揚陸艦に名付けていました。タラワ、ペリリュー、サイパン、イオージマ、オキナワ・・・そしてインチョン(Inchon)もありました。晩年を機雷戦指揮艦に改装されたMCS-12インチョンは既に退役しており(退役間際に火災事故を起こしてゴタゴタしてたような・・・退役後だったかな?)韓国海軍が自軍の揚陸艦へ名付けるのに何ら不都合はありません。

でもそれを使わなかったのは、まさか『北朝鮮を刺激しない為』だったりしたら・・・ああ、なんだかそんな気がしてきました。これからきっと同形艦も造られるでしょうが、どんな名前になるやら・・・まさか「対馬」とか命名はしないでしょうけれど。
23時53分 | 固定リンク | Comment (35) | 軍事 |
2005年05月27日
ひらめき日本海海戦100周年ホームページ

ちょうど今頃が東郷ターンを始めた時間です。(100年前の話)

100年一昔。当時の砲撃戦の間合いは数km程度でしたが、今やミサイルを使い数十km〜数百kmの間合いで撃ち合う時代になっています。戦艦が海戦の主役であった時代は遠く過ぎ去り・・・空母と潜水艦の時代となりました。しかし空母同士の海戦は太平洋戦争でしか発生せず、潜水艦に至って潜水艦同士の水中戦闘の事例がまだありません。艦隊決戦で雌雄を決するといった戦争形態は過去の物となりました。

そんな歴史的記念日が今日なのですが、そのうちにまた国民の祝日に戻して欲しいですね。『海軍記念日』っていう名称が駄目ならそのものズバリ「日本海海戦記念日」「対馬沖海戦記念日」あたりが良いでしょう。

・・・なんだかロシアだけでなくお隣の国が怒り出しそうな気もしますが。
14時05分 | 固定リンク | Comment (14) | 軍事 |
2005年04月10日
よりにもよって、これはかなりヤバイんじゃないだろうか・・・


北の長射程砲の無力化任務が韓国軍へ委譲 [2005/04/10 中央日報]
在韓米軍第2師団が担当していた対火力戦任務が、今年中にも韓国軍に委譲される見通しだ。 対火力戦任務とは、北朝鮮の長射程砲など、前線に配備された砲兵を無力化するもので、開戦初期での要となる任務だ。 昨年、韓国軍が在韓米軍から委譲された10の軍事任務の中でも最重要の任務だ。

しかし、2年ほど前の報道ではこうあります。


「米、北への軍事行動を排除しないはず」 [2002/12/18 朝鮮日報]
リチャード・パール(Perle)米国防政策委員会委員長は17日、本紙との単独インタビューで、北朝鮮の核問題と関連し「ブッシュ政権は浮き彫りとなっている危険が余りにも実質的なため、全ての方策を考慮するはず」とし、軍事的な方策も排除してはいけないと主張した。

同委員長は「北朝鮮は韓国の相当部分を含む軍事分界線(DMZ)地域に大きな打撃を与える可能性があるという点で、イラクとは違う」とし、「韓国政府が北朝鮮側の砲撃発射地点を追跡し、即時反撃することのできる対砲兵(counter-battery artillery)技術を充分採択しないでいるのは無責任であり、理解できないこと」と批判した。

カウンターバッテリーアーティラリー(対砲兵)、つまり敵軍の大砲が発射した砲弾を“対砲レーダー”で捉え、発射地点を割り出して反撃を加える技術です。この装備が発達した近年では、砲撃戦は僅か数分で陣地転換を繰り返しながら戦闘するといった形態になっています。

つまりパール委員長の言によると韓国軍は対砲レーダーの数が足りない。しかしここ2、3年の間に大量追加配備したという話を聞きません・・・それなのに、アメリカは対火力戦任務を韓国軍に任せる事を決めました。韓国軍はK-9自走砲やMLRS、ATACMSなどの砲戦用攻撃装備の充実にばかり目が行って、対砲兵技術がまだ不完全であるにも関らずに、です。

朝鮮半島で戦争になった場合、韓国軍はアメリカ軍からE-8ジョイントスターズ(地上目標捜索レーダーを搭載した航空機)や無人偵察機からの敵砲兵位置の情報提供を受けられる事には変わりが無いのでやはり北朝鮮軍に比べて有利な状況は変わりませんが、在韓米軍が対火力戦任務を請け負っていた時に比べると弱体化しています。

・・・アメリカは韓国から撤退する気なのでしょうか。少なくとも最近の動きは、戦時に韓国への被害が大きくなるがアメリカ軍の被害は少なくなるよう後方へ下がるといった主旨になっています。


関連:在韓米軍の戦時予備物資計画、来年に廃止 [2005/04/08 東亜日報]
22時18分 | 固定リンク | Comment (12) | 軍事 |
2005年03月27日
1998年、インドとパキスタンが相次いで核実験を行い核武装の宣言をしました。
国連安保理はこれを非難する決議案を採択、アメリカと日本は直ちに経済制裁を含む厳しい措置をインド、パキスタン両国に講じたのに対し、フランスとロシアは懸念を表明したものの制裁措置を取ることには反対するという足並みの乱れが見られました。アメリカは1990年のパキスタン核開発疑惑の時点で、パキスタンと契約していたF-16戦闘機売却を引渡し途中で中断するなどしていましたが、ロシアとフランスにとってインドとパキスタンは大事な顧客であり、輸出制裁は取りたくなかったからです。


カリー・ド・マルシェ【インド軍装備】
[陸軍]・・・主力戦車はT-72などロシア製。新型国産戦車アージュンは失敗作の為、新たにロシアからT-90を配備開始。
[海軍]・・・潜水艦はドイツ製TYPE209級とロシア製キロ級。駆逐艦やフリゲート艦は自力建造。更に航空母艦(イギリス製)を保有。
[空軍]・・・作戦機はMig-21やSu-30などロシア製戦闘機で大半を占める。これにフランス製ミラージュ2000、英仏共同開発のジャガーが加わる。

ぱきすタン【パキスタン軍装備】
[陸軍]・・・数上の主力戦車は中国製の59式戦車、69式戦車、85式戦車。他にアメリカ製のM48戦車、ウクライナ製のT-80UD戦車を装備。
[海軍]・・・主戦力となる潜水艦はフランス製アゴスタ級。水上戦闘艦はイギリス製のTYPE21級フリゲート。
[空軍]・・・作戦機は中国製:フランス製:アメリカ製が6:3:1の割合。殲撃7、ミラージュV、F-16など。


このようにインド軍の主力装備はロシア製であり、対するパキスタン軍の装備は中国製とフランス製が主力です。ロシアとインドの関係は良好であり、パキスタンはロシアから兵器を買う事ができません。しかし国力的に軍事予算も少なく、欧米の高価な兵器を主力にする事は出来ません。すると必然的に安い中国製の兵器を主力にせざるを得ませんが、基本的に中国製兵器はロシア製兵器の劣化コピーです。数的にインドを上回る事ができないパキスタンが質でも劣っていたら勝ち目はありません。そこでフランス製やアメリカ製の兵器を一部に混ぜています。ところがフランスはインドにも武器を大量に販売しており、フランス製兵器を準主力としてしまうとやはり質の面でも差が出なくなってしまいます。

そこでパキスタンはアメリカ製兵器の導入を始めました。1980年代はソ連のアフガニスタン侵攻が始まり、アメリカは対ソ連ゲリラのムジャヒディンを支援する為にアフガニスタン後背地のパキスタンと接近する必要性がありました。パキスタンはその引き換えに武器購入を要求したのです。インドはソ連と仲が良い以上、インドがアメリカ製兵器を買おうとしたらソ連はあまり良い顔はしません。・・・ならばパキスタンがアメリカ製兵器を採用すれば、インドに対して質の差が維持できます。

しかしその矢先に、ソ連がアフガンから撤退し利用価値が無くなったパキスタンに対して、アメリカは核開発疑惑を理由にパキスタンへ武器を売ってくれなくなったのです。それに対しインドはイスラエル製の兵器を購入し始め、質の面でも向上を図り始めました。ならばパキスタンはフランス製の最新兵器を購入すれば良いのですが、既に述べた様に予算は足りない上に、フランスは平気な顔をしてインドにも武器を売ってしまいます。どうやって安く高性能な武器を手に入れてインドに対抗するのか。相反する条件に悩むパキスタン・・・そんなパキスタンへ武器の商談を持ちかける国がありました。[…続きを読む]
19時46分 | 固定リンク | Comment (45) | 軍事 |