このカテゴリ「軍事」の記事一覧です。(全420件、20件毎表示)

2010年07月26日
イラクやアフガンでの不正規戦における戦車運用に関する報告が話題に出ていたので紹介しておきます。


陸戦英語報道 その2 :軍事@2h掲示板
303 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2010/07/21(水) 11:13:41 ID:???
RAND OP287 
RANDの米陸軍研究部門であるアロヨセンターは
不正規戦における機甲戦力の役割について各国軍と海兵隊から聞き取り。

米海兵隊 AAV-7を装甲兵員輸送車として使用。歩兵戦闘車としてみれば
艦艇から上陸海岸までの浮航のための車両であるAAV-7はブラッドレーに劣る。
イラクでは予備役海兵大隊がAAV-7を使っていて大型仕掛け爆弾の炸裂で
転覆し搭乗していた20名超が一度に亡くなったことあり。
戦車はM1A1を使用。TUSK(Tank Urban Survival Kit)の構成装備の多くを取り入れて
いる。また、海兵隊戦車大隊は従来の4個中隊にさらに1個追加しつつあり。
機甲車両は歩兵作戦の支援で、小隊もしくは単車で用いられることあり。

英陸軍 バスラでは軽歩兵作戦を重用するもウォーリアとチャレンジャーも2009年の
撤退まで使い続ける。歩兵作戦のため小部隊で分散運用は海兵隊と同様。
戦車には威嚇効果あり、戦車が一帯にいると武装勢力の活動が著しく低下。
唯一の限界は兵站上の負荷。武装勢力の攻撃で失われたチャレンジャーは無し。
ただし損傷したものはあり。装甲を付加していくうちに車重は75トン近くとなった。


304 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2010/07/21(水) 11:30:07 ID:???
英陸軍続き
 アフガンへチャレンジャーを持ち込んでいない理由
・ヘルマンド州は僻地であり、兵站上で難題となる
・カナダ軍のレオパルド2が隣のカンダハル州に展開しており必要に応じて支援えられる
・ウォーリアをアフガンへ派遣している
ウォーリアは仕掛け爆弾とRPGに対抗すべく装甲追加、軽戦車として使われている

最近の報道では戦車をモスボールし機甲部隊の隊員を他の任務に転じる構えと
伝えられている。実行されれば英陸軍で最重量の装甲戦闘車両は30トンのウォーリア
となる

カナダ軍 
2000年から2001年にその後10年から15年の姿を決する内部検討あり
・古いレオパルド1の後継を用意せず、LAVを用いた軽中戦力へと移行することとなる

しかし、2006年にカンダハル州へ派遣され重戦力についての認識一変
・LAVの25mm機関砲は建造物などに対し威力不足、地雷・迫撃砲・RPG・無反動砲
に対する防護も不十分、機動も路上に制限され路外でははまりこむ
・現地指揮官は戦車の派遣を要請、まずレオパルド1が、続いてレオパルド2を
ドイツとオランダから余剰分を緊急に買い付けて送り込んでいる

レオパルド2が現地展開したのは2008年夏
・レオパルド1にまさる成功をおさめている
・歩兵作戦の支援で小部隊で用いられる、戦車を伴う車列は伏撃の可能性が大きく減る
・これまで重大な損傷を受けたのはレオ1 1両、レオ2 2両 乗員戦死は1名のみ
・路外機動力あり、スタックしたLAVの回収などもしている
・全周にRPG対策の金属装甲、乗員の居住性改善で冷房(cooling system)をとりつけ


305 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2010/07/21(水) 11:41:06 ID:???
デンマーク軍
ヘルマンド州に大隊戦闘群を派遣
・軽歩兵と機械化中隊の混成で、段列・支援部隊がつく
・レオパルド2 1個小隊が2007年から派遣されており、英軍を支援

威嚇効果、小部隊運用は他軍に同じ 山岳地形と兵站上の負荷あり

最大の脅威は仕掛け爆弾で工兵支援が必要となるときある
・しかし、戦車に損傷を与えるには極めて大型のものが必要で埋設は手間

120mm砲は精確で、付随損害・民間人被害を局限
・武装勢力との交戦が始まると即応可
・武装勢力が戦車火力に注意しているのは明らか
・戦車が一帯で行動していると武装勢力の活動がかなり低下

#120mm砲のくだりは比較対象が155mm榴弾砲やGMLRS(誘導ロケット弾)、
航空爆弾(250キロ、500キロ、1トン)などだろう。
#次にイスラエル軍のもあるのだが省略。



ランド研究所の報告書はこれです。

http://www.rand.org/pubs/occasional_papers/OP287/

タイトルは"Observations on Recent Trends in Armored Forces"、「機甲部隊における最近の傾向についての観察」です。

この報告書から、戦車が歩兵支援用として欠かせない存在である事が分かります。そして一方で70トンにまで重量が肥大化すると使い難く、場所によっては30トン前後の歩兵戦闘車で代替せざるを得ない場合がある事も示されています。しかし戦車の120mm砲の使い勝手の良さに比べると、歩兵戦闘車の30mm機関砲では制圧火力として不満が出ますし、装甲も物足りません。

それならば・・・そう、軽い戦車があるなら理想的です。我が国の新型戦車「10式戦車」は重量44トンと軽く、ドイツの新型歩兵戦闘車「プーマ歩兵戦闘車」の最大戦闘重量43トンとほとんど差が有りません。同じ重量なら歩兵が搭乗しない戦車の方が体積が小さいので装甲が厚く、火力は当然、戦車の方が高いです。支援用としては戦車の方が頼りになります。

次世代戦車が機甲戦だけでなく歩兵戦も重視するならば、「軽量化」という要素が重視されるであろう事がランド研究所の報告で分かります。日本の10式戦車はそれを先取りしていると言えるのではないでしょうか?

例えばドイツ軍は現在、アフガンにマルダー歩兵戦闘車を派遣していますが、レオパルト2戦車は派遣しておらず、ドイツ国内での戦車を派遣すべきだという意見に「重い戦車では橋が渡れない」と政府は反論しています。しかし70トン近いレオパルト2戦車ではなく40トン台の新鋭戦車が手元に有ったら・・・ドイツは以前コソボに戦車を派遣した実績が有るので、世論は大きな問題とならず、技術的な問題がクリアされたらアフガンにも戦車を派遣している可能性が高かったと言えるでしょう。それはイギリス軍にも言う事が出来ます。
21時15分 | 固定リンク | Comment (330) | 軍事 |

2010年07月25日
海上自衛隊の潜水艦は現状16隻(実戦部隊配備)+2隻(練習潜水艦)の合計18隻体制ですが、これに2隻以上追加して合計20隻以上にする方針が打ち出されました。


海自潜水艦を増強 活発化する中国海軍に対処 防衛大綱改定:産経新聞
防衛省は24日、年末に改定する「防衛計画の大綱」で海上自衛隊の潜水艦を増強する方針を固めた。現在の18隻態勢から20隻台に引き上げる。昭和51年に初めて策定した防衛大綱で隻数を定めて以降、増強は初めて。



潜水艦の取得ペースは変えずに退役年数を伸ばして保有数を増やす方針です。これにより日本も中国の急速な海軍力増強に端を発するアジア潜水艦増強時代に対応する事になります。

西太平洋・東南アジア方面では、オーストラリアが潜水艦倍増方針を決定(6隻→12隻)、これまで本格的な潜水艦を保有してこなかったベトナムが6隻のキロ級潜水艦をロシアから購入決定、タイも潜水艦保有を検討、マレーシアがフランス/スペイン共同開発のスコルペン級潜水艦を取得中、インドネシアは保有潜水艦の大幅な増強を検討、シンガポールはスウェーデン製中古潜水艦をより新しい艦と入れ替え予定。

極東方面では台湾がアメリカに潜水艦引き渡しを要求中、韓国はドイツ製の新型Type214潜水艦で古いType209潜水艦を更新中、現状の9隻体制を倍増の18隻体制にする事を計画しています。中国は古くて役に立たない潜水艦を一線級の新型潜水艦で更新中、新型原潜と新型ディーゼル潜を多数建造中です。保有合計数は50隻以上になりますが、現状では一線級と言えるのは半分程度。しかしこれが全て一線級の新型で揃えられる日も近いです。

このように日本の周辺国は凄まじい潜水艦建艦競争時代に入っています。一気に潜水艦保有製力倍増を目指す国が複数あり、これまで保有してこなかった新しい潜水艦保有国も複数あります。中国はこれまでの保有する原潜が実験艦レベルを出ずに実用として使うには疑問符が付くものでしたが、新しく建造しているものは一昔前のソ連原潜の技術レベルに追い付いてきており、無視出来ない脅威として力を発揮出来るでしょう。

この動きに海上自衛隊も手を拱いているわけにはいかなくなりました。新型対潜哨戒機、対潜ヘリコプター空母型護衛艦、そして潜水艦勢力の増勢は、日本の周囲の軍事力拡大に対応する事になります。
09時50分 | 固定リンク | Comment (555) | 軍事 |
2010年07月23日
F-15SE用コンフォーマルウェポンベイ(CWB)からAIM120空対空ミサイルを発射する試験が行われました。

Boeing F-15 Silent Eagle Demonstrator Completes 1st Weapon Launch



専門家の中の人の感想によると「ロケットモーター噴射炎が後方の水平尾翼に掛かっている」との事でちょっとマズイという話。かなり無理矢理に取り合えず実行して見た試験のようで、CWBの開発はまだまだこれから時間を掛ける必要があるようです。
01時23分 | 固定リンク | Comment (175) | 軍事 |
2010年07月19日
この報道はまだ一紙のみで情報源もはっきりしないので、防衛省で本当にこのような方針で行くと決まったのかまだ分かりませんが、事実としたら興味深い動きです。可能であるならば次善の策として悪い話では無いでしょう。


F2戦闘機を追加調達 FX選定難航で防衛省検討 中国脅威に防空を穴埋め:産経新聞
次期主力戦闘機(FX)の機種選定の遅れを受け、防衛省がF2戦闘機の追加調達を検討していることが18日、分かった。中国が航空戦力を近代化させていることを踏まえ、防空体制に空白が生じるのを防ぐ狙いがある。平成23年度に終了予定だったF2の生産が途絶えれば、戦闘機の生産・技術基盤が失われるとの防衛産業の懸念もくむ措置でもある。

FXは老朽化した航空自衛隊のF4の後継機で、約50機を導入する。防衛省がF2の追加調達の検討に入ったのは、FXの選定の遅れに加えF4の退役も数年後に迫っているなかで、防空に穴を空けないための「次善の策」といえる。調達数は20機程度を想定。決定すれば23年度予算案の概算要求に盛り込む。


F-35を取得するにしてもF-4の退役に間に合わないので、繋ぎとしてF-2を20機ほど追加で調達を継続するという話のようです。そうなるとF-4更新分は残り30機となるので、新規調達予定数として少な過ぎるので、F-15Pre-MSIP機の更新分もF-35を調達する事になりそうです。つまりこの話は次期戦闘機として比較的早期に取得できる筈のユーロファイター/タイフーンを全く眼中に入れていない事になります。

しかしF-2の追加調達を行うには、一旦廃棄が決まった生産ラインの維持が必要です。日本側の生産担当分はともかく、アメリカ側で生産している部分はどうするのかロッキード・マーチン社と協議する必要があり、そのハードルは低くありません。将来に同社の戦闘機であるF-35を必ず取得する、と云う約束をするなどの条件を示す必要が出て来ます。

それにしても、この報道は晴天の霹靂でした。これまで航空自衛隊内部ではF-2を調達継続する話は検討されておらず、私自身も生産ラインの維持が困難になりつつある様子から可能性は低いと見ていました。これまでの当ブログのF-2関連記事を見ると分かりますが、実はF-2追加調達の話を一切していません。また最近では、エアワールド誌2010年5月号17ページで奥村俊一氏が「F-2の追加調達が“ない”理由」という記事を書いており、防衛省と航空自衛隊に取材した結果、F-2追加調達の考えは殆ど無いと報じていました。それがエアワールド誌掲載から僅か3ヶ月後に覆った事になります、産経新聞の報道が正しければ。

追加の報道、特にロッキードの生産ラインをどうするか具体策が出て来ない限り、まだ何とも言えません。防衛省と航空自衛隊の内部でどのような新たな動きが行われたのか、F-2再生産-追加調達の流れは本当なのか、注意深く見守って行きたいと思います。
05時29分 | 固定リンク | Comment (814) | 軍事 |
2010年07月16日
調達中止の決定が下されているロシアのТ-95試作戦車は、開発元のウラル車両工場のあるニジニ・タギル市で開かれている兵器サロンで限定公開されました。しかし一般向けには公開されず、写真も動画もおろか車両の性能数値すら公表されていません。これでは記事の書きようがないです。

"Т-95" (キリル文字の"Т"じゃないとロシア語の記事は検索で出て来ません)でロシア語ニュース記事やYoutube動画を検索していますが、目ぼしい記事は見つかりません。やはり写真も動画も無いようです。伝聞では152mm45口径砲との事ですが・・・

ウラル車両工場はТ-95の調達中止に納得がいかないらしく、国外での販売(以前インドに提案していた)を模索しているようですが、ロシア政府が自国装備より強力な新兵器の輸出を許可するとは思えません。Т-95調達中止の決定を下したポポフキン国防次官(装備調達担当)は最近、国防第一次官に格上げされており、権限はよりいっそう強化されています。これではТ-95が日の目を見る可能性は、もう無さそうです。
23時46分 | 固定リンク | Comment (222) | 軍事 |
2010年07月10日
去年の書いた記事「DDHひゅうが就役、ボーイングF-15SE発表」で紹介した翻訳家(「宇宙英雄ペリー・ローダン」シリーズ翻訳統括)の五十嵐洋さんから直接メールで知らせて貰いました。ボーイングのF-15Eサイレントイーグルが初飛行したとの事です。

【特報】F-15サイレントイーグル、初飛行!:東洋亭パーツ館新本店

コンフォーマルタンクを利用したウェポンベイ、コンフォーマル・ウェポンベイ(Conformal Weapons Bay)の試験目的なのでしょうか。垂直尾翼が傾けられているようには見えません。こんなに早く飛んだという事は機体側の大きな改修がされているとは考え難いとは思います。デモンストレーター機の正式名は「F-15E1」なので、通常のストライクイーグルからの改修機なのでしょう。来週にはコンフォーマル・ウェポンベイからAIM120を発射試験するそうです。
11時30分 | 固定リンク | Comment (255) | 軍事 |
2010年07月09日
アメリカ海軍の戦略原潜(SSBN)オハイオ級は、ロシアとの核軍縮によって一部の艦がトライデント弾道ミサイルを降ろし、トマホーク巡航ミサイルに積み替えて巡航ミサイル原潜(SSGN)へと生まれ変わっています。オハイオ級SSBN18隻の内、4隻がSSGNへと改装されています。

・オハイオ (USS Ohio, SSGN-726)
・ミシガン (USS Michigan, SSGN-727)
・フロリダ (USS Florida, SSGN-728)
・ジョージア (USS Georgia, SSGN-729)

以上の4隻がSSGN化され、2隻が太平洋側にあるワシントン州バンゴールのキットサップ海軍基地に配備されています。SSGN化されたこの4隻は、SSBNであった時代とは全く異なる任務の為、その行動に大きな変化がありました。SSBNは長大な射程の弾道ミサイルを自国近海から発射する兵器であり、核パトロール任務中は常に潜航し続けて敵の目に触れないように潜んでいますが、弾道ミサイルより射程の短い巡航ミサイルを積むSSGNは、ある程度目標の近くに接近する必要があります。そして平然と浮上し、友好国の港に接岸し、その威容を見せ付けるようになったのです。

以下は2年前に横須賀港に寄港したSSGNオハイオに、岡部いさく氏が取材したレポートです。

【2008年10月23日、岡部いさくSSGNオハイオ取材】


オハイオは日本や韓国の港に現れるようになりました。「見えない抑止力」であった潜水艦を、目に見える抑止力として見せ付けるようになったのです。SSGNオハイオの搭載するトマホーク巡航ミサイルは154発にも上り、これは湾岸戦争で発射されたトマホークの数の半分に相当します。攻撃原潜のバージニア級でもトマホークは搭載できますが、12発のみです。つまり、バージニア級潜水艦12隻分以上の対地打撃力を唯一艦で保有し、2隻集まれば戦争の第一撃を仕掛けられる存在・・・それがSSGNオハイオなのです。その一斉攻撃は大型空母の搭載機全力出撃に相当します。ただし空母とは異なり反復攻撃は掛けられず、ミサイルを撃ち尽くせば港に戻って補給を受ける必要がありますが、これまでアメリカ海軍では空母が担っていた「砲艦外交」としての任務を、SSGNオハイオも受け持つようになりました。存在を秘匿しなければならないSSBNから、存在を積極的にアピールしても構わないSSGN(威圧相手国の海軍力が低ければ位置がある程度バレても構わない)へと変身した事は、大きな意味を持つようになりました。


アジアに米大型潜水艦3隻…「冷戦以来の事件」:中央日報
米国の超大型原子力潜水艦3隻が最近、アジアの戦略要衝海域で水面上に姿を現した。

香港のサウスチャイナモーニングポスト(SCMP)は4日、「米海軍のオハイオ級潜水艦のミシガン・オハイオ・フロリダ艦が先月28日、釜山(プサン)、フィリピン・スビック湾、インド洋の戦略基地ディエゴガルシア島の港に現れた」と報じた。

この潜水艦は米海軍太平洋艦隊所属。米海軍の核心戦力である原子力潜水艦が同時にアジア海域の水面上に浮上したのは冷戦後初めての事件だと、同紙は強調した。政治軍事的な意図が濃厚だということだ。

SCMPは「米国軍当局者はこの潜水艦の登場を中長期的な配置戦略の一環にすぎず、特定の国・危機事態(天安艦沈没事件)を狙ったものではないと話しているが、この潜水艦のメッセージを中国が分からないはずはない」と分析した。


これらの艦がSSBNだった時代では考えられない事態ですが、SSGN化された今後は当たり前に見られる光景となる事でしょう。

busan_michigan.jpg
US.NAVY - The guided-missile submarine USS Michigan (SSGN 727) passes the Olyuk Rocks as she arrives in Busan for a routine port visit.

subic_ohaio.jpg
US.NAVY -The guided missile submarine USS Ohio visits Subic Bay, Republic of the Philippines.

diegogarcia_florida.jpg
US.NAVY - The guided-missile submarine USS Florida (SSGN 728) conducts a fast cruise in Diego Garcia.

soudabay_georgia.jpg
US.NAVY - The crew of the Ohio-class guided-missile submarine USS Georgia (SSGN 729) stands by as they pull up pierside

SSGNオハイオ - フィリピン・スービック湾
SSGNミシガン - 韓国・釜山港
SSGNフロリダ - インド洋・ディエゴガルシア島
SSGNジョージア - ギリシャ・スーダ湾

現在、アメリカ海軍のSSGN4隻は全て外国を訪問中です。今後はSSGNは世界の海を遊弋し、砲艦外交を任務として、潜水艦でありながらその威容を見せ付ける役割を担っていきます。現在、韓国と中国の報道機関はSSGNが姿を現した事に驚いていますが、実はそれはもはや驚くべき事ではありません。SSBNが浮上して姿をワザと見せ付ければ異常事態ですが、SSGNは平然と姿を見せ付けても全然構わないからです。

故に、SSGNが姿を現したからといって大騒ぎするような事ではありません。今後、この4隻のSSGNは常にその威容を見せつけながら世界中を訪問する事になるからです。韓国・釜山に寄港したSSGNミシガンの記事に「routine port visit」とあるように、今後も定期的にこの巨大潜水艦は友好国の港に現れます。搭載する154発のトマホーク巡航ミサイルで敵対国を威圧する為に。
23時42分 | 固定リンク | Comment (218) | 軍事 |
2010年07月02日
中国海軍最大の軍艦である071型ドック揚陸艦「崑崙山」が、海賊対策の海上通商路護衛を任務とする中国海軍第六次アデン湾派遣部隊として出航しました。

中国最大軍艦1.8万頓崑崙山号将遠征亜丁湾:新浪網

これは興味深い動きです。ソマリア沖のこの海域では、アメリカ海軍はNATO派遣艦隊の指揮艦として通信能力の高い揚陸艦を使っていますが、中国派遣艦隊の規模から言えば揚陸艦は本来は不必要な装備です。崑崙山は艦首に76mm速射砲を装備しているので駆逐艦と同様の使い方は出来ますが、船体が大きく小回りが効きません。本来は護衛任務の最前線に立つ艦ではありません。

071型ドック型揚陸艦 - 日本周辺国の軍事兵器

これは中国海軍が外洋海軍へと脱皮する為に、遠隔地で行動する為のノウハウを取得する目的で大型艦を派遣する試験・練習的な意味合いが強いのか、それとも大型駆逐艦の数が足りずローテーションが組めなくなったので代役として一時的に投入されるのか、或いは大型ヘリコプターが運用できる高い捜索能力として期待されたのか・・・やはり、遠隔地で長期間活動する訓練として「崑崙山」を派遣する意図が高いのではないかと思います。

※動画差し替えニュース映像。


ステルス性を意識したスマートな形状です。崑崙山には同型艦は無く、試験的に建造した意味合いが強いです。今後の中国海軍が大型ドック揚陸艦の拡充を目指すのか、それとも新たに強襲揚陸艦(全通甲板式のヘリコプター揚陸艦をこう呼ぶ)を建造するのか、あるいは両方を取得していくのか、各国から注目されています。
18時00分 | 固定リンク | Comment (199) | 軍事 |
2010年06月28日
V-22オスプレイはドアガンを取り付けようにも側面ドアが小さい為に取り付けが困難で、後部ランプドアに機関銃を取り付けていました。しかしそれでは射界が狭く不便だという事で用意されたのが、「Interim Defensive Weapon System : IDWS」です。



機体腹部収納式にしたM134ミニガン(7.62mm)と電子光学/赤外線(EO/IR)センサーを連動したシステムです。BAEのリモートガーディアンシステム (RGS) をV-22オスプレイ用に搭載したもので、このシステムは車両にも搭載可能です。

Remote Guardian™ System - BAE Systems

上記のBAE公式サイトのページにPDFファイルの資料も有ります。(右クリックで表示やズームを行えます。)
下記のページでは大きな画像が置いてあります。

Special Operations Forces Industry Conference - BAE Systems

IDWSないしRGSの詳しい資料は少なく、今のところは開発元のBAEに掲載された資料以上の物は見付かりませんでした。以前から気になって探していたのですが、画像や動画も含めて情報の種類は少なく、あまり注目されていないようですが、このシステムは夜間でも正確な射撃が可能なので、不審船や海賊対策にも有効なものであり、日本も哨戒ヘリコプターに搭載する事を検討してもよいかもしれません。

ガンナーコントローラ

※)ガンナーコントローラ
23時59分 | 固定リンク | Comment (151) | 軍事 |
2010年06月26日
以前書いた記事「PAK-FAのキャノピーとリベットの件」で説明したとおり、試作機は表面処理をしないまま飛ぶ場合があるので、ステルス機であろうとリベットが見えている事は別に不思議じゃない、PAK-FAもそうだがF-35もそうだったよ、という話をしました。

その事を全く理解していなかった軍事小説家の大石英司氏は他に、「ロシア機って昔からリベットには無頓着なんです。」とも主張していました。しかしこれも間違いだったのです。


祝! PAK FA初飛行:大石英司の代替空港
あと興味深いのは、Youtube の動画の最後、パイロットが降りてくるシーンで一瞬コントラストのせいでクローズアップされる機首のリベット部分ですよね。
ロシア機って、昔からリベットには無頓着なんです。昔、MIG−31が確かパリで初公開された時に、エンジニアな方と見に行って、「これでマッハ3出すのか!?」と絶句された記憶があります。

第5世代と言った時に、それに求められるいろんな要素があるだろうけれど、少なくともこれはどこから見てもステルスじゃない(^_^;)。米空軍がらぷタソのステルス性能を維持するために日々払っている(こんな所まで!?という)涙ぐましい努力を聞くと、せいぜい4.5世代が良い所じゃないの? という気がします。


其処へ「本物のエンジニア」の人がツッコミを入れにやって来ました。



    /^l'"'"~/^i''''''ツ'ッ.,
  ヾ           ヾ    もふもふ。
  ミ ´ ∀ `       彡
  ッ       _     ミ
 (´彡,. ( ̄A ̄)(,,_,ノ" _,,.ヽ
 ̄ ̄ ̄ ̄↑>11 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

それはそうと、ロシアの飛行機の機体表面は
場所ごとに、気流状態に応じて粗度が管理されているもさね。
MiG-31はその典型と言われるもさが、大石さんは「いっしょに見学した技術者さん」にその件を教えてもらえなかったもさかな。




大モサ師匠ことTFR師が言うなら間違いない情報だろう・・・とは思いましたが、それを私の方でも証明できる資料は無いものかと探していたら、某作家Mさんから助言を頂けました。「ああ、それならべレンコについて書かれた本にも載っていますよ」と。MiG-25戦闘機に乗って日本に亡命してきたベレンコ中尉について書かれた本、特に軍事マニア向けに偏重しているわけではない一般向けの本にすら記載されている事だったのです。


「ミグ-25ソ連脱出 ベレンコは、なぜ祖国を見捨てたか」ジョン・バロン (著), 高橋 正 (翻訳)  発行:株式会社パシフィカ (1980年) p232
鋲の頭が突き出ていたのは、それによって起こる気流が飛行にブレーキを掛ける抵抗力とならない部分だけであった。技術の未熟さを物語ると思われていた鋲も、流体力学上の性能をいささかも損なわず、むしろ機体を強化していたのである。


ミグ-25ソ連脱出 ベレンコは、なぜ祖国を見捨てたか 232ページ

というわけで大石英司氏の言う「ロシア機って昔からリベットには無頓着なんです。」という主張は間違っています。ロシア機のリベットは流体力学で計算し尽くされたものだったのです。勿論ステルス機のリベットは従来機とは違うものになりますが、表面処理を行えばリベットは目立たなくなります。


航空ファン2010年4月号「ロシアの次世代戦闘機 スホーイ"PAK FA"(T-50)登場」 藤田勝啓 p31
初飛行のビデオを見て、リベットがぼつぼつと見える機体でステルスと称するとは恐れ入るといった論評をネット上で見かけたが、まだ電波吸収のコーティングをする前なのだから、リベットが見えて不思議はない。


航空ファン2010年4月号 31ページ

なお藤田勝啓氏はその後、航空ファン2010年6月号「ロシア次世代戦闘機PAK FA追加考察」でPAK-FAについて、以下のような情報を報告されています。

「ダクトからエンジンが直接見える」
「エンジンのブレードに対する特殊なカバー(レーダーブロッカー)を開発中」
「量産機のキャノピーは枠無し一体成型になる予定」

PAK-FA量産型は試作機とはまた別の姿で登場するようです。
23時58分 | 固定リンク | Comment (133) | 軍事 |
2010年06月20日
世界中の戦車不要論者を屋根の上に登らせておいてから、梯子を外したカナダ陸軍の事は何度も紹介して来ました。冷戦終結後、戦車を廃止して装甲車だけにすると決めた方針を、アフガンでの実戦を経験し「やっぱり戦車が必要だ」とレオパルト2戦車を緊急調達した事で、戦車不要論を撤回したのです。

これまで何度かカナダ陸軍の古いレオパルト1(レオパルトC2)戦車の事は紹介して来ましたが、今回は新しく調達したレオパルト2A6Mと戦車回収車や装甲工作車がアフガンでどのように運用されているか、動画を紹介します。動画の大半は工作車のドーザーとクレーン、アームショベルの作業です。



カナダ陸軍のアフガンでの戦訓・・・「車長はハッチから身を乗り出して直射日光で暑いから、折り畳み式の日傘を固定装備してみたよ!」

一方こちらはイスラエル軍の「メルカバの車窓から」動画。運転席からの視点です。



プーチン、PAK FAを視察するの巻。



コックピットに足を掛けたプーチンが異様に格好良いです。

以上、最近見付けて来た軍事動画いろいろでした。
02時45分 | 固定リンク | Comment (89) | 軍事 |
2010年06月19日
フランスのパリで開かれている兵器見本市ユーロサトリ2010。今回の目玉はイスラエルがメルカバMk.4戦車を出展してきた事と、ドイツのKMW社がレオパルト2系列の最新型レオパルト2A7+を出展して来た事です。またラインメタル社は主力戦車用(実質上レオパルト2用)アップグレードキット「MBT Revolution」を出展しています。


Kojii.net - 今週の軍事関連ニュース (2010/06/18)
・イスラエルが EUROSATORY に Merkava Mk.4 戦車を出展。初期型を公表したことはあるが、Trophy APS (Active Protection System) などの最新装備を揃えた仕様で公開したのは初めて。海外にポテンシャル カスタマーを求める動きの現われ。(DefenseNews 2010/6/14)

・KMW (Krauss-Maffei Wegmann GmbH & Co. KG) は EUROSATORY の席で、Leopard 2 戦車の次世代型・Leopard 2 A7+ について発表した。モジュラー構成の防御装備を持ち、不正規の市街戦にも大規模正規戦にも対応、新開発のサスペンションや駆動系によって機動性を改善、冷却性能の改善と APU (Auxiliary Power Unit) の装備によって 24 時間の連続交戦が可能な持続性を実現、第 3 世代の ATTICA 熱線サイトによる偵察能力強化、射撃精度も向上させている。遠隔操作式ウェポン ステーション・FLW 200 の装備による、車内から機関銃の射撃が可能。(KMW 2010/6/15)

・Rheinmetall Defence AG は、主力戦車 (MBT : Main Battle Tank) 向けのモジュラー アップグレードについて発表した。RPG・IED・地雷・子爆弾・運動エネルギー弾・誘導兵器といった、現時点で存在するあらゆる脅威に対応できる全周防禦の実現、射撃統制装置の改善、デジタル通信網の導入、最大 70 度の仰角を持つ車長用ペリスコープ、全周をカバーする状況認識能力、INIOCHOS システムによる指揮統制機能、緊急時に使用する車長用ブレーキ、RCWS (Remote Control Weapon Station)、温度の影響を受けない装薬を使用する世界初の運動エネルギー弾と最新仕様の化学エネルギー弾 DM11、出力 17kW の APU (Auxiliary Power Unit)、双方向の外部通信システム、といった特徴を備える。(Rheinmetall Defence 2010/6/15)


【Merkava Mk.4 video, Eurosatory2010】


【Leopard2A7+, Eurosatory2010】


ロシア紙の報道を見ていると、ロシアは既にメルカバMk.4を見て回ったそうですが、T-95の代わりにメルカバ導入というのは少し考え難い話ですので、説明を聞きに来ただけでしょう。レオパルト2A7+については、以前発表されていた市街戦用モジュラーキット「PSO」の要素が取り入れられています。しかし追加装甲で増えた車体重量を支える為に、足回りや駆動系を取り替える必要に迫られています。出展された車両は茶色系統の迷彩色で、アフガン派遣を念頭に入れているようです。ラインメタルの「MBT Revolution」は数年前には発表されたモデルと基本的に同じものです。

Jane's - Eurosatory 2010 > Exhibition News

ジェーンの特集記事でユーロサトリ2010の殆どの出展品をチェックできます。
17時57分 | 固定リンク | Comment (79) | 軍事 |
6月14日に陸上自衛隊は富士学校で新戦車(TK-X)「10式戦車」の試作車両(3号車)を報道陣に公開しました。

「10式」戦車を公開=来年度から部隊配備へ−陸自:時事通信
陸自ハイテク戦車お披露目 “ヒトマル式”来年配備:共同通信

ところが報じたのは時事通信と共同通信だけで、しかも写真は小さく、分析にはあまり役に立ちません。暫くしたら自衛隊の方で公式サイトに写真がUPされるかなと待っていたのですが、音沙汰がありません。これではあまり意味が無いです。来月以降の軍事雑誌で特集される事に期待するしかありません。

小さな公開写真をを見て目に付くのは、ドーザーが付いてヘッドライトの位置が真ん中寄りに変わっている点ですが、90式戦車の場合も通常型とドーザー付きではヘッドライトの位置が同様に変わっており(丸ごと移動させている)、埋め込み式ヘッドライトの10式戦車の場合は、ドーザーを付けた場合はヘッドライトをあの位置に新たに追加しているのかもしれません。

今後、10式戦車が我々の目の前に姿を現す機会があるとしたら以下のイベントが考えられます。

7月11日 富士学校・富士駐屯地開設56周年記念行事
8月29日 平成22年度富士総合火力演習

7月11日の富士学校祭、参議院選挙の投票日と被ってますので、見に行く人は先に不在者投票を済ませておくのがいいかもしれません。
10時21分 | 固定リンク | Comment (132) | 軍事 |
2010年06月17日
フランス政府がアメリカにトマホーク巡航ミサイルの購入を打診して敢え無く断られてから、何年経ったでしょうか。やはりアメリカがトマホークを渡すのはイギリスくらい・・・と思っていたらオランダやスペインまでトマホークを購入、しかしフランスには売ってくれず、露骨な区別にフランスは怒りましたが、アメリカからすれば自分の言う事をあまり聞かない国に強力な武器を与えるわけにもいきません。そこでフランスは自前で海軍用の巡航ミサイルを開発する事を決め、このほどその試射に成功する事が出来ました。


La France tire son premier missile de croisière naval - Le point
Plus de deux semaines après l'événement, la Direction générale de l'armement annonce le succès du premier tir d'un missile de croisière naval (MDCN), effectué le 28 mai au centre d'essai de missiles de Biscarosse (Landes). Commandé à 200 exemplaires au missilier européen MBDA, ce nouvel armement apportera à la marine française une capacité de tir à longue distance (environ 1.200 km) contre des cibles à terre. L'engin entrera en service sur la première frégate multimission FREMM, L'Aquitaine, qui doit être admise au service actif à l'été 2014, si le calendrier actuel est tenu.


巡航ミサイル「SCALP Naval」(スカルプ・ナヴァール)の射程は1200kmと、初期型トマホーク(射程1600km)にも及ばず現行型のタクティカル・トマホーク(射程3000km)とは到底比べ物になりませんが、艦載型巡航ミサイルとしては十分な性能を持っています。

ベースとなったのはMBDA社が開発しフランスとイギリスが装備している航空機搭載型巡航ミサイル「ストームシャドウ」です。フランス名を「スカルプ-EG(SCALP-EG)」と呼ぶこのミサイルは、断面が四角形なので艦艇用VLS(垂直発射ランチャー)への収納は不向きで、大改造を必要としました。スカルプ・ナヴァールは断面が円形となり、もはや形状だけ見ると別のミサイルと化しています。





フランス海軍はスカルプ・ナヴァールを新型フリゲート(FREMM計画)のアキテーヌ級から搭載していく方針です。これにより、ただ一隻しかない為に必要な時に稼働状態にはあると限らない原子力空母シャルル・ドゴールに頼ることなく、フランス海軍は安定的な対地火力投射能力を得る事が出来ます。
23時19分 | 固定リンク | Comment (111) | 軍事 |
起工から17年。ソ連崩壊のゴタゴタで工事が遅れていたロシア海軍の新型攻撃原潜「セヴェロドヴィンスク」が15日に進水しました。


第4世代型原潜が進水式 11年配備予定: The Voice of Russia
新型原子力潜水艦「セヴェロドヴィンスク」の進水式が15日、ロシア北西部にある同名の都市で行われた。ソ連崩壊後、危機的な状況に陥ったロシアの造船業。国は軍民をまたぐ技術革新を目指している。




スクリューを覆っているカバーがうっすら透けているようにも見えますが、気にしてはいけません。きっとギラギラしたテープ?のおかげで形状は分からない筈・・・。



なお、やはり17年の歳月は長く、昨年起工された同級2番艦「カザン」は各所に改良が施された設計になっており、2番艦にして早くも改型として登場して来る事になります。

ヤーセン型原子力潜水艦 - Wikipedia

攻撃兵装は533mm長魚雷および超音速巡航ミサイルP-800「オーニクス」です。
20時10分 | 固定リンク | Comment (82) | 軍事 |
オーダーイズオンリーワン(命令は只一つ).「サーチアンドデストロイ(見敵必殺)」,オーバー(以上).


ロシア軍の“処罰” 海賊より手荒:東京新聞
海賊を急襲した部隊が所属するロシア太平洋艦隊高官は本紙に対し、海賊対策の内規には拘束後の処置に関する記述がなく、事実上、現場で判断できる実態を明らかにした。内規に明記されている取り締まり目的は海賊行為の「発見と確認」、そして「壊滅」だという。


目標を発見し確認、そして破壊せよ。ロシア海軍では海賊を捜索撃滅(Search and Destroy)せよ、としか指令が出ていないという事です。この事件は捕縛した海賊を「漂流刑」に処した事で問題化していますが、実際には捕虜を全員射殺した後に体裁を整える為に漂流刑云々を持ち出したのではないか、とすら疑われています。

露の海賊“漂流刑”に批判 議論呼ぶ行動、ソマリア沖600キロに放置:産経新聞

この事件の経緯は、2010年5月5日にロシアのタンカー「モスクワ大学」号がソマリア沖で海賊に乗っ取られた後、ロシア海軍太平洋艦隊のウダロイ級対潜駆逐艦「マルシャル・シャポシニコフ」が救援に駆け付け、偵察の艦載ヘリコプターが接近した際に海賊から攻撃を受けたので、反撃して先ず海賊1人を射殺、その隙に海軍歩兵(陸戦隊)をボートで乗り込ませて海賊の残り10人を捕縛した事になっています。そして漂流刑に・・・

【シャポシニコフ号のタンカー救出作戦、CG動画解説】


前年の2009年4月29日に対潜駆逐艦「アドミラル・パンテレーエフ」が海賊船を拿捕し29名の海賊を捕縛した時は、死人は出さずに済んでいたのですが・・・(以下の動画で海賊の死体みたいなのが転がっていますが、負傷していますが死んでません。)なお海賊船は燃やして置きました。

【パンテレーエフ号、海賊船を拿捕】


捕虜に取るのは指揮官の自由裁量なのか、うっかり全員射殺した場合だけ誤魔化したのか・・・ただ単に漂流刑をやってみたかっただけなのか。

【アドミラル・トリブツ号、アデン湾をパトロール】


この動画は海賊対策でのKa-27へリックス艦載ヘリコプターの運用がよく分かります。盛大に機関銃を撃ってます。

ロシアのソマリア沖海賊対策 - Wikipedia

ロシア海軍のソマリア沖海賊対策の派遣艦艇は基本的にフリゲート「ネウストラシムイ」とウダロイ級対潜駆逐艦が何隻かでローテーションを組んで行われています。他には外洋遠征でインド海軍との合同演習に来た原子力重ロケット巡洋艦「ピョートル・ヴェリキー」号が海賊退治に飛び入り参加しています。なお余談ですがロシア語「ネウストラシムイ」(Неустрашимый) の意味は「恐れを知らない、大胆な、不敵な」となります。
00時48分 | 固定リンク | Comment (201) | 軍事 |
2010年06月13日
イスラエルは旧式戦車に大きく改修を施す事で第一線に投入し続けて来ましたが、一方ではメルカバ戦車の新シリーズを新規生産で量産し調達を続けています。イスラエルも本音を言えば戦車は新車で揃えたいのです。


MERKAVA - 40 Years of Action - Defense-Update.com
“The IDF and MOD are supporting continued production of Merkava and Namer vehicles, at least throughout the next decade. This continuous production of Merkava Mk4 will enable the IDF to gradually phase out older tanks, that are more difficult to maintain and difficult to upgrade” said Livnat.


イスラエル陸軍メルカバ計画主任ヤロン・リヴナット准将曰く、「軍と国防省は、少なくとも今後10年間はメルカバ戦車とナメル装甲車の継続的な製造を行っていきます。メルカバMk.4の連続生産は、維持整備する事が困難になり改修も難しい旧式戦車を、段階的に退役させていく事が可能になります」とあります。

旧式戦車魔改造の雄、イスラエルが「魔改造にも限度がある、新車を調達する方がいいよ」と言っているわけで説得力があります。イスラエルが旧式戦車を改造して使っていたのは国防の為に世界中から掻き集めた機材がそれしか無かったからで、軍事的に余裕の出てきた現在では新型戦車を製造し続けて旧式戦車を無くしたいというわけです。

なお以下の動画は長いので興味がある人だけご覧下さい。アラブ系メディアのアルジャジーラがイスラエルのメルカバ戦車シリーズが生まれた背景を紹介し、イスラエルの慰霊施設まで紹介しています。





「メルカバ」とは旧約聖書のエゼキエル書で神の戦車を意味する言葉です。此処で言う戦車はChariot、戦闘馬車の事です。

ちなみにメルカバ戦車の車体を流用したナメル装甲車は、この写真を見ると人物との対比でとても巨大な装甲車である事が分かります。ところでこの写真の元記事は「Mobile Toilet Features Heavy Armor」という題名で「ナメル装甲車にはトイレが付いているよ」という記事だったりします。
05時03分 | 固定リンク | Comment (122) | 軍事 |
2010年06月12日
関門海峡の事故から8ヵ月以上が経ち、海上自衛隊の護衛艦「くらま」の修理が完了しました。


護衛艦くらま 修理終える:西日本新聞
関門海峡で昨年10月に韓国船籍のコンテナ船と衝突炎上し、艦首が大破した海上自衛隊佐世保基地配備の護衛艦「くらま」(5200トン)は9日、長崎市の三菱重工長崎造船所での修理を終えた。試験航海後、佐世保港に帰港する。

同基地によると、くらまは1月から同造船所で修理。修理費用は総額9億4千万円とみられる。


約10億円の修理費用は、軍艦の値段を知っている者からすると「意外と安くついた」と思い込みがちですが、民間船の値段を知っている者からすると「カリナスター級のコンテナ船が丸ごと一隻買えてしまう」という高い金額になります。

以下は2010年1月28日のテレビ朝日ニュース動画です。



関門海峡で炎上する「くらま」の様子が見えます。

レーダー画像で「くらま」に非が無かった事が分かります。

修理ドック入りする前の「くらま」の様子が見えます。

もう、大手マスコミは興味を失って報道してくれないかもしれません。ですが地元の西日本新聞はちゃんと「くらま」の復帰を記事にしてくれています。我々も関門海峡事故の事を決して忘れてはなりません。護衛艦「くらま」に非はありませんでした。少なくとも事故の大部分の責任は相手側にあります。この事を出来る限り多くの人達が理解してくれる事を望みます。
08時00分 | 固定リンク | Comment (144) | 軍事 |
2010年06月04日
水深45mくらいというと、どんな感じになるのか図解にしてみました。

depth45m

韓国コルベット「天安」沈没地点は水深30〜40mの地点で、韓国軍の推定によると北朝鮮小型潜水艇はやや外洋寄りの水深40〜50mの地点で待ち構え、潜望鏡深度(10m未満)まで浮上して水平距離約3000mから魚雷攻撃を行って来たと考えられています。すると天安に原潜が衝突したとする陰謀論では水深35m前後、これでは大きな原潜の行動は著しく困難で、そもそも侵入して来る事自体が考えられません。

水深50mならば中東のペルシャ湾の平均水深と同じですが、ペルシャ湾内は中央付近の水深が最深部で100m近くあって平均水深70〜80m付近の水路があり、沿岸部に水深20〜30mの浅瀬が広がっています。

Persian Gulf: depth contours - Britannica (地図)

米海軍のロサンゼルス級原潜はペルシャ湾では深い部分を中心に行動しており、潜航したまま沿岸の浅瀬をうろつく事は基本的にありません。それでも事故は発生しています。それなのに韓国西海岸の浅瀬(潮流も早い)を原潜がうろうろしていたというのは、ちょっと考え難い話です。

Depth45m_Typhoon

追加でタイフーン級を入れて見る。無茶過ぎ・・・。
21時27分 | 固定リンク | Comment (567) | 軍事 |
2010年06月03日
韓国コルベット天安撃沈事件で、陰謀論を唱える勢力は原潜コロンビア(ないし原潜コロンバス)を犯人に仕立て上げようと画策しました。陰謀論者曰く、真珠湾に帰還していない原潜がいて、それが天安沈没と深く関わっている、現場海域に原潜が沈んでいるのだ・・・しかし沖縄県うるま市が原潜コロンビアとコロンバスの両方の健在を確認、この陰謀論は明確に否定されました。

(2010/05/23)沖縄県うるま市が原潜コロンビアとコロンバスの健在を保証
(2010/05/23)米原潜コロンビアを天安沈没の犯人扱いする頭の悪い陰謀論を唱える人達

速攻で否定された陰謀論者たちは、困り果てた結果、第三の疑惑潜水艦を登場させる事にしました。先ず韓国でその陰謀論が提唱され、日本では陰謀論者として著名な副島隆彦氏がそれを導入しました。氏のサイト「副島隆彦の学問道場」でそれが読めるのですが、会員限定なので、引用紹介している陰謀論賛同者のサイトが幾つかあるのでそれをご覧ください。

韓国哨戒艦沈没の真相〜真犯人はやはりアメリカ〜 - 暗黒夜考〜崩壊しつつある日本を考える〜

陰謀論者が新たに三番目のスケープゴートに選んだのは、バージニア級攻撃型原子力潜水艦「ハワイ」(USS Hawaii, SSN-776)です。アメリカ海軍の最新型の原潜です。艦名はハワイ州にちなんで名付けられており、母港もまたハワイ州のオアフ島真珠湾(パールハーバー)となっています。この原潜ハワイが2010年3月30日に点検のため真珠湾の乾ドックに入渠しています。海軍海洋システムコマンド(NAVSEA; Naval Sea Systems Command)から正式発表が出ています。

(PDF) April 5, 2010 Pearl Harbor Shipyard Dry-docks USS Hawaii - NAVSEA
PEARL HARBOR, Hawaii – Pearl Harbor Naval Shipyard and Intermediate Maintenance Facility (PHNSY & IMF) dry-docked USS Hawaii (SSN 776) March 30.

そして米海軍公式サイトに乾ドックに入渠した原潜ハワイの写真(100414-N-3944N-002)が掲載されており、それを見た陰謀論者が騒ぎたてたのです。曰く、「潜望鏡が付いていない!」と。陰謀論者はこう続けます、「原潜ハワイ号が潜望鏡で天安を引き裂いたのだ!」と。

【乾ドックに入渠した原潜ハワイ】
乾ドック内の原潜ハワイ

【セイル(艦橋)のアップ】
原潜ハワイのセイル(艦橋)


だからどうした?


馬鹿らしい・・・取り合えず下の画像を良く見て反省して下さい。

【原潜ハワイ号進水式の様子】
USS Hawaii(SSN-776)

【潜望鏡を引っ込めて航行中の原潜ハワイ号】
水上航行中の原潜ハワイ

あのね? 潜水艦の潜望鏡とか、通信アンテナとか、レーダーやシュノーケルも含めて、全て綺麗に収納出来ます。だって出っ張りがあったら水中で航行する際に大きな抵抗になってしまうでしょう? 潜望鏡などは使用時にのみセイル(艦橋)から延ばします。浮上して水上を航行する場合は通信アンテナなどは出し続けておく場合が多いです。水中抵抗に比べれば空気抵抗は無視しても良いですからね、アンテナ程度の大きさならば。潜水艦が港に停泊している場合も通信アンテナは出し続けている事が多いです。だってそうしないと不便じゃないですか。電話もしたいですしラジオも聞きたいですし衛星放送も見たいです。

【韓国釜山港で一般公開中の巡航ミサイル原潜オハイオ】
釜山港の原潜オハイオ

陰謀論者はこの写真を提示して「原潜の通常の状態はこんなに潜望鏡やアンテナが立っている!」としています。これはハワイ号ではなく、巡航ミサイル原潜「オハイオ」号です。昨年、韓国の釜山港を訪れて一般公開している際のものですね。事前に日本の横須賀港にも立ち寄っています。赤字で囲まれている部分で分かる通り潜望鏡やアンテナを伸ばしていますが、前述のように港に停泊中ならばアンテナを出し続けておく方が便利ですし、一般公開時のサービスも兼ねて潜望鏡も出してあります。日本の海上自衛隊でも一般公開時にはそういうサービスしますよ。見学者は潜望鏡を覗かせてもらえるんです。

【原潜ハワイ号同型艦ニューハンプシャー号】
バージニア級原潜ニューハンプシャー号

【原潜ハワイ号同型艦ニューハンプシャー号】
バージニア級原潜ニューハンプシャー号

・・・と、このように「潜水艦は潜望鏡やアンテナを綺麗に収納できる」という当たり前の事を知っていればこんな稚拙な陰謀論に騙される事はありません。真珠湾の乾ドックに入渠した原潜ハワイ号の写真を見る限り、セイル(艦橋)には損傷が見受けられません。櫓を立てているのは単に音響タイルの貼り直しと剥げた塗装の補修の為でしょう。それ以前に、潜望鏡が当たったくらいで1200トンのコルベットが真っ二つに裂けてしまうわけがありませんし、3月26日夜に天安が沈没してから僅か4日後にハワイまで帰って乾ドックに入渠するとなると、8000kmほどの道程を平均時速83km(45ノット)で突っ走る計算になりますが、これは原潜ハワイ号(バージニア級)の推定最大速度35ノット(公表25ノット)を大きく上回ります。物理的に無理でしょう、損傷した状態でなんて速度を出せば気が済むんですか? 

陰謀論者に警告しておきますが、今後、第四第五第六第七第八第九・・・の疑惑潜水艦を登場させ続ける気ならば、私はその都度徹底的に晒し上げますので、覚悟しておいて下さい。
22時39分 | 固定リンク | Comment (429) | 軍事 |