このカテゴリ「軍事」の記事一覧です。(全417件、20件毎表示)

2010年05月23日
大元は韓国KBSで、それに陰謀論者が飛び付いたというパターンです。この頭の悪い陰謀論によると、韓国コルベット天安を沈めたのは米原潜コロンビアで、コロンビアも沈んでしまってまだハワイに帰還していないそうです。コロンビアが5月3日にハワイに帰って来ているという米軍発表は嘘なんですって。・・・こんなバカな話を信じるとか、頭は大丈夫ですか?

池田香代子ブログ : 米原潜コロンビア未だ帰還せず 韓国軍艦沈没の闇

・田中宇
・池田香代子
・デヴィ夫人
・河信基
・田畑光永
・岩垂弘

妄想陰謀論者ばっかり。特に田中宇の壮大な妄想ストーリーは頭が痛くなります。どうして最大射程3000kmのトマホーク巡航ミサイルを発射するのに韓国沿岸にギリギリまで接近しないといけないの? 太平洋から撃っても北朝鮮にまで余裕で届くのに? 大きな原子力潜水艦で座礁する危険を冒して水深30mの潮流も速い海域に乗り込む? 有り得ないし意味が無いし話にならないです。

USS Columbia Returns to Pearl Harbor | NAVY.mil(Release Date: 5/4/2010)

米海軍は5月4日付の発表で「原潜コロンビアは5/3に真珠湾に帰投」としています。ところが陰謀論者は同型艦の原潜コロンバスがどうとか影武者艦だとか、分けの分からない事を主張しています。コロンビアとコロンバスは名前が似ているので米軍自身もよく取り違えていると言うだけの話なのに・・・乗組員宛ての郵便物の誤配達なんて日常茶飯事です。イギリス海軍なんかだと「名前が良く似ているので紛らわしい」という理由で軍艦の名前を後から変更した例もあります。「補給艦フォート・グランジ→ロザリーに改名」 これの大元は某南米海軍のレーダー屋さんが「グランジは退役済みだ」と言いだした時のお話。ネームシップを改名させる英軍も英軍ですが。ちょっと話が逸れましたが、更にこう言う話もあります。


原潜コロンバス、またWB海軍桟橋に接岸:rimpeace 「追跡!在日米軍」2010-4-6
4月5日午前、沖縄・ホワイトビーチに原潜コロンバスが入港、海軍桟橋に接岸した。

コロンバスは母港のパールハーバーを09年11月下旬に出港、西太平洋における任務航海に入った。その後コロンバスは頻繁にホワイトビーチに寄港している。
09年12月11日沖合一時寄港、10年1月20〜25日海軍桟橋停泊、その後は2月3日、2月22日に沖合一時寄港と、コロンバスはホワイトビーチにやってくる。西太平洋が任務航海の範囲ということだが、実際は沖縄近海でうごめいていると言える。

琉球新報Web版によれば、ホワイトビーチには4月3日に原潜2隻が一時寄港している。原潜ヒューストンとコロンビアだ。


コロンビアもコロンバスも4月初めに沖縄県のホワイトビーチに来ています。・・・韓国コルベット天安が沈んだのって3月26日の話でしたよね?

3日で米原潜3隻 ホワイトビーチにコロンブス入港:琉球新報 2010年4月5日

陰謀論者はリムピースと琉球新報の報道にも「コロンバスの写真はあるがコロンビアの写真が無い」と言い張りまだ抵抗しています。もうアホなんじゃなかろうか・・・コロンビアもコロンバスも頻繁に日本の横須賀、佐世保、ホワイトビーチにやって来る原潜です。次にやって来た時にもまだ言い張るのでしょうか。何時までその主張が続くのでしょうか。本当に頭が悪い人達だ。具体的な艦名を出してしまったら真贋がはっきりするのは時間の問題なのに、そんな寿命の短い陰謀論を信じ込むとか自殺願望でもあるのですか?

もういい加減にしろ。
10時57分 | 固定リンク | Comment (215) | 軍事 |

2010年05月21日
軍事小説作家の大石英司氏は、先月末、韓国コルベット沈没に関連して韓国での報道が北朝鮮魚雷説に大きく傾いていた時期であったにも拘わらず、このような発言を行っていました。


大石英司の代替空港 2010.04.28
※ 哨戒艦沈没:切断面を観察した専門家の意見(上)
http://www.chosunonline.com/news/20100426000029

>「魚雷を船底に直接命中させるには、下から上に上がってこなければならないが、わたしの知る限りでは、そのような魚雷は存在しない」

 艦艇を意図的に真下から攻撃するというのは、そんなに効率的じゃないんですよね。どちらかと言えば、真横に当てて横転させるのが確実だから。そもそもあの程度の深さで真下から攻撃するというのもそう簡単にできる話ではないし。

 北の可能性が全く無いとは言わないけれど、現状の情報でそうだと断定する人々は、何か安っぽい軍ヲタ・フィクションの読み過ぎではと思うw。


しかし現実には5月20日の韓国政府公式発表で北朝鮮製魚雷の証拠部品が提示され、大石英司氏の「安っぽい軍ヲタ・フィクションの読み過ぎ」という言葉が大石英司氏自身に跳ね返って来るという、自業自得とは言えあまりにも痛々しい展開となりました。恐らく大石英司氏は「当時の情報では…」と弁解するでしょうけれど、実際には大石英司氏の該当日記よりも二日前の4月26日には米軍当局者が北朝鮮による魚雷攻撃と判断していると報じられており、当時の情報で既に北朝鮮魚雷説が非常に有力となっていました。

U.S. official: N. Korea torpedo likely sunk S. Korean warship | CNN.com Blogs (April 26th, 2010)

それでも「韓国政府の公式発表まで断定は避けよう」という表現であったのなら、予想が外れたところで誰も問題にはしなかったでしょう。ですが、「何か安っぽい軍ヲタ・フィクションの読み過ぎではと思うw」などというレベルの低い煽りを加えてしまったのは完全に余計な行為でした。私はこれを読んだ時に大変驚きました。その幼児性にも呆れましたが、軍事フィクション小説を書いている作家、当の本人がこんなセリフを言い放つとは、非常に信じがたい自殺行為であると写りました。これは他の同業作家と軍事フィクション小説の愛読者を愚弄する行為であり、このジャンルの関係者全てに対する挑戦行為に他ならないからです。大石英司氏が自分の書く軍事フィクション小説だけは別だ、安っぽいものではない、と思っているのだとすれば、それは傲慢な思い上がり以外の何物でもありません。

そして最終的な結果が北朝鮮魚雷説で正解となれば、「安っぽい軍ヲタ・フィクションの読み過ぎ、いや書き過ぎなのは大石英司さん自身でしたねw」と返されてしまうのは当然の帰結であり、言われても仕方がないものです。大石英司氏は批判されて当然の事をしました。しかも、彼にはこれとは別にまだ大きな問題点があるのです。

※ 哨戒艦沈没:切断面を観察した専門家の意見(上)
http://www.chosunonline.com/news/20100426000029
>「魚雷を船底に直接命中させるには、下から上に上がってこなければならないが、わたしの知る限りでは、そのような魚雷は存在しない」

この部分は朝鮮日報の記事からですが、韓国の専門家の意見は「魚雷の直撃では無い」というものです。それは接触式の信管による直撃爆発ではなく、磁気信管を用いた非接触での艦底爆破である、という意味です。魚雷と磁気信管に付いて理解している人なら誰でもそう解釈できます。しかし、大石英司氏の反応はこうでした。


大石英司の代替空港 2010.04.28
艦艇を意図的に真下から攻撃するというのは、そんなに効率的じゃないんですよね。どちらかと言えば、真横に当てて横転させるのが確実だから。そもそもあの程度の深さで真下から攻撃するというのもそう簡単にできる話ではないし。


大石英司氏の認識は全てが間違いです。これは磁気信管による非接触での艦底爆破を理解していないとしか・・・まさか魚雷の磁気信管を知らない、だなんて。この人は素人の一般人ではなく軍事作家の筈なのに! 信じがたい話です。魚雷用の磁気信管など第二次世界大戦の頃から普及している技術です、この業界のプロの人間で知らないだなんて有り得ない話です。磁気信管による非接触での艦底爆破ならば目標艦の真下に魚雷を潜り込ませればいい訳で、どんなに浅くても艦底爆破は可能です。また艦底爆破によるバブルパルス(バブルジェットの正式名称)は圧力の逃げ場が無く威力を集中できる上に、防御の弱い艦底を打撃出来るので真横に当てるより効率が良いというのも軍事常識レベルの話の筈です。艦の真横(舷側)に当てると圧力が上に逃げて破壊力が落ちる上に、舷側の方が艦底よりも多重に隔壁で仕切られているので防御が高く、破るのは難しくなります。現代では対水上艦用に使う長魚雷の場合は殆どが磁気信管による非接触での艦底爆破方式です。

再度の紹介になりますが、魚雷の発射手順と磁気信管の起爆に付いては以下の動画で勉強して下さい。



また、海上自衛隊の最新の長魚雷用磁気信管を紹介しておきます。

長魚雷用アクティブ磁気近接起爆装置:朝雲新聞

海中に磁場を作り目標を確実に捕捉し、ステルスやデコイを見破り撃沈するという進化した磁気信管です。
22時51分 | 固定リンク | Comment (357) | 軍事 |
産経新聞の野口裕之記者(軍事専門編集委員)は社内でも一番の右翼タカ派ですが、軍事が専門で社内で担当しているのにも関わらず、軍事の知識がお粗末で毎回のようにデタラメな軍事解説記事を量産する大変に困った人です。そして今回の韓国コルベット撃沈事件でも中途半端な知識を披露して失笑を買う羽目になりました。

最初に私から解説しておきますが、確かに今回の事件で北朝鮮の水中戦闘能力が高いことは実証されており、日米韓の軍事関係者は驚きを持って結果を受け入れています。ですがそれは単に「浅い水深で雷撃に成功したから」が理由ではなく、「潮流が速く海底地形が複雑な海域で雷撃に成功したから」が理由です。浅い水深という要素はそれに関連するものですが、野口裕之記者は単に浅いから難しいのだと誤解してそのまま記事に書いてしまっているのです。


【哨戒艦調査結果】想定を超えた北の雷撃能力:産経新聞
しかし、現場は水深40〜45メートル。こうした浅海では、潜水艦による作戦行動は困難で、小型潜水艦か潜水艇が発射母体となる。北保有の小型潜水艦(サンオ級)は発表と同サイズの魚雷を無理をすれば装填(そうてん)できるが、この水深での魚雷発射は「針の穴に糸を通す」より難しい。発表によると、魚雷は水深6〜9メートルで爆発したから、魚雷の通る幅は31〜39メートルでしかなかった。

世界トップ級の技量を誇る海自潜水艦でさえ浅海・東シナ海の水深200メートル海域での対潜訓練で魚雷発射に苦労している。しかも、サンオ級も潜水艇(ユーゴ級)も水中での工作員放出が主任務であり、魚雷発射は副次的だ。過去に座礁したり漁網に引っかかったりしており、操艦技術も低いとみられていた。

水深のより深い西か南側から発射する戦法が合理的だが、そうであれば斜め上方向に艦を安定させ、至近から発射した可能性がある。それでも「的」の幅は狭い。今回の作戦に特化した技量向上に向けた猛訓練を繰り返したとしか考えられない「熟達ぶり」だ。


>この水深での魚雷発射は「針の穴に糸を通す」より難しい。

水深45mがどうしたと言うんですか。太平洋戦争中、旧日本海軍の特殊潜航艇「甲標的」が、水深12m程度の港湾に襲撃を何度も仕掛けて雷撃を成功させた事実は無視ですか? ハワイの真珠湾、マダガスカルのディエゴ・スアレス、オーストラリアのシドニーで、戦艦を相手に雷撃に成功していますがなにか? (真珠湾襲撃は近年の研究で戦艦への雷撃に成功したとされる。マダガスカル襲撃は英戦艦ラミリーズを大破、シドニー襲撃の戦果は宿泊艦「クッタブル」撃沈)

>発表によると、魚雷は水深6〜9メートルで爆発したから、魚雷の通る幅は31〜39メートルでしかなかった。

31〜39mの水深範囲の何が問題になるのか全く理解できません。

一般的な雷撃は潜水艦自身が潜望鏡深度(自艦のサイズ次第、5〜15m)まで上がって目標を視認してから行います。すると魚雷の通る水深範囲など5m以内の話でしょう。31〜39mで何が問題なのですか。「でしかなかった」って何の積りなんですか。31〜39mならむしろ範囲多いでしょうに。

それとも野口記者は北朝鮮潜水艇が海底に着座(或いは海底付近で懸吊)したまま潜望鏡を使わず、音響ソナーだけで敵を探知して雷撃したと想定されているのでしょうか。その場合で問題となるのは潜水艇のソナーと誘導魚雷の性能次第です。しかしこの場合はむしろ「雷撃深度が深い事による困難さ」なのであって、「31〜39mでしかなかった」という野口記者の形容と矛盾します。

要するに野口記者は潜水艦による雷撃の手順を何も知らない上に、過去の戦例も把握していない、軍事音痴な右翼タカ派記者という事を曝け出しています。産経新聞社内でも特に有名な右翼タカ派である野口記者ですが、その軍事知識はド素人以下のレベルであり、口を開けば毎回のようにデタラメな事を喋り、記事を書いています。お願いですから軍事担当からはもう外れて下さい。

>世界トップ級の技量を誇る海自潜水艦でさえ浅海・東シナ海の水深200メートル海域での対潜訓練で魚雷発射に苦労している。

そのような事実は存在しません。デマを流さないようにして下さい。

>水深のより深い西か南側から発射する戦法が合理的だが、そうであれば斜め上方向に艦を安定させ、至近から発射した可能性がある。

はぁ、小学生レベルの発想でむしろ楽しくなっちゃいますね。『斜め上に魚雷発射☆戦法』ですか。素敵ですね。

・・・魚雷発射の手順はこれを見て勉強して下さい。第二次世界大戦の潜水艦戦をモデルにしたゲームなので現代戦での手順とは異なりますが、基本は理解できます。非常にリアルな潜水艦ゲーム「サイレントハンター」です。



磁気信管による艦底爆破は第二次世界大戦頃から既に実用化されています。音響誘導魚雷については大戦末期に投入され始めていますが数は少なく、使用されたのは殆ど直走魚雷です。
11時28分 | 固定リンク | Comment (222) | 軍事 |
2010年05月20日
韓国の調査団は決定的な証拠を掴んでいました。攻撃に使われたのは北朝鮮製「CHT-02D」魚雷であるとまで判明するなど、具体的に完全に特定されています。


「北朝鮮製250キロ級魚雷で天安艦沈没」 調査団が公式発表:中央日報
合同調査団は攻撃に使われた魚雷は北朝鮮の小型潜水艦艇から発射された250キロ級の感応魚雷「CHT−02D」と指定した。15日に沈没海域から引き揚げられた魚雷プロペラなどを決定的な証拠とした。

合同調査団は「西海(ソヘ、黄海)の北朝鮮海軍基地で運用されていた一部の小型潜水艦艇とこれを支援する母船が天安艦攻撃の2−3日前に西海の北朝鮮海軍基地を離脱し、攻撃2−3日後で基地に復帰したのが確認された」とし「証拠を総合すると、魚雷は北朝鮮の小型潜水艦艇から発射されたとしか説明できない」と発表した。


詳細が判明次第、更に追記していきます。なお今後は「沈没事件」ではなく「撃沈事件」と呼称する事にします。

韓国海軍コルベット天安が沈没した当初は、仮に北朝鮮の攻撃であったとしても機雷の可能性が高く魚雷攻撃の可能性は低いと見積もられていましたが、直ぐに魚雷攻撃説が高まって行き、調査の途中報告でも魚雷の可能性が濃厚となっていき、最終報告では使用魚雷の詳細まで判明しました。これで北朝鮮海軍が小型潜水艇による浅海域での夜間雷撃を成功させた事になり、その水中戦闘能力はこれまで見積もられてきた「取るに足らない程度」の物などではなく、警戒すべき衝撃的な作戦能力を有していることが事実となります。これは韓国海軍のみならず、日米海軍をも攻撃可能ということであり、決して対岸の火事などではありません。

http://l.yimg.com/go/news/picture/2010/15/20100520/2010052010292376715_102833_0.jpg

回収された魚雷の残骸写真です。スクリュー周辺部品がほぼ丸ごと回収されています。破片どころの話ではなく部品の回収です。

http://l.yimg.com/go/news/picture/2010/15/20100520/2010052010385587615_103636_0.jpg

こんな決定的な証拠を得ていたとは・・・スクリュー部品に北朝鮮の字体でハングル文字が刻印されています。


韓国哨戒艦沈没、調査報告書の要旨:日本経済新聞
回収した魚雷の部品、スクリュー、コントロール装置は北朝鮮の武器紹介本に提示されている「CHT―02D」魚雷の設計図面と正確に一致。魚雷の後部推進体内部で見つかった「1番」というハングルの表記は我々が確保している別の北朝鮮製魚雷の表記の仕方と一致。CHT―02Dは直径21インチ、重さ1.7トン、爆発装薬250キロ


設計図面と刻印が全て一致。詳細に確定的な証拠。

※魚雷の表記が「CHD-02D」、「CHT-02D」と報道に混乱があるので、どちらが正しいか調べ直してきます。→「CHT-02D」が正解でした。

○今日の記者会見の様子の動画。


○昨日、報道陣に公開された天安の破断船体の動画。
11時02分 | 固定リンク | Comment (484) | 軍事 |
2010年05月13日
我が国の新戦車TK-Xがグーグルマップに写っていたようです。


[TK-X]陸自新戦車スレ試製82号[10式戦車]|軍事@2ch掲示板
322 :名無し三等兵:2010/05/11(火) 22:15:25 ID:???
戦車っぽいもの
http://maps.google.co.jp/maps?hl=ja&q=35.567349%2C139.331752


323 :default ◆Px8LkJH2Lw :2010/05/11(火) 22:19:14 ID:???
>>322
TK-Xっぽい


324 :名無し三等兵:2010/05/11(火) 22:19:47 ID:i1jG3Iv6
焼き肉安楽亭の方が気になる


325 :名無し三等兵:2010/05/11(火) 22:21:17 ID:???
なるほど新戦車っぽいな。ようやった褒めてつかわす。

しかしなんちゅータイミングで写真撮ったんだ・・・


場所は神奈川県の三菱重工業相模原工場ですね。グーグルアースでも確認をしてみましょう。

三菱重工相模原工場

三菱重工相模原工場

確かに新戦車っぽいです。
04時52分 | 固定リンク | Comment (162) | 軍事 |
先月お伝えした「Т-95(開発中止)」の通り、ロシア新戦車T-95の開発は中止され、調達は取り止めになりました。ポポフキン国防次官によるロシア軍の大改革は、ソビエト連邦時代から続く兵器体系を刷新し、一時的に外国の兵器を繋ぎとして導入してでも、自国の兵器産業を生まれ変わらせる決断をしたのです。

さてこの結果、ロシアの新戦車T-95は博物館行きとなります。それは日本の新戦車TK-Xに一体どのような影響を与えるのでしょうか。先ず「これで先進国で新型戦車を開発している国は無くなった」と言い出すような輩は出て来ないでしょう。ロシアのT-95が消えても、イスラエルのメルカバMk.4、中国の0910工程(99A2式)、韓国のXK-2(K-2)といった新型戦車が日本のTK-X以外にも存在しており、特に日本の最大のライバルである中国の新型戦車開発計画「0910工程」は、日本の新戦車TK-Xとよく似た軽量化コンセプトを採用しており、お互いの方針の正しさを証明し合う存在となっています。

(2009/09/28)中国次期戦車0910工程とTK-Xの類似点

またイスラエルのメルカバ戦車は、Mk.3が日本の90式戦車とほぼ同じに1990年頃に登場しており、Mk.4は2004頃に登場しています。メルカバMk.4はTK-Xより一足早く出て来たわけですが、その搭載砲は140mm砲が噂されながら実際には44口径120mm砲であり、大口径化どころか長砲身化すら選択して来ませんでした。44口径120mm砲を選んだという点は日本のTK-Xも同じです。メルカバ用120mm44口径砲のモデル名は、MK.3用が「MG251」でMk.4用が「MG253」と、新設計になっていて威力等が上がっています。これも同じ44口径ながら威力増大を狙って来た日本と同じとなります。

韓国のXK-2については、フランスのルクレール戦車やドイツのレオパルト2A6と似通った仕様でありますが、当初は140mm砲の搭載を企画していましたが55口径120mm砲の搭載に落ち着いた経緯があります。なお中国も140mm砲の試作を、日本では135mm砲の試作が行われており、その上で採用を見合わせています。つまり日本、イスラエル、中国、韓国の4カ国は新戦車への大口径砲の搭載をやろうと思えば可能だったのに、敢えて見合わせたという共通点があります。

この傾向には乗らずに、世界の戦後第4世代戦車への流れを作るかと思われていたのが、152mm砲ないし135mm砲を搭載していると伝えられていたロシアの新戦車T-95でした。


「新戦車は必要か」 清谷信一,コンバットマガジン2010年2月号,p126〜p127
ロシアは新型戦車T-95を開発中である。その詳細は不明だが、無人砲塔や152mm砲を採用しているなどの情報がある。いずれにしても西側3.5世代を圧倒する事を目標に開発が進められているには間違いないだろう。戦車の正面装甲は普通自分の砲弾の直撃に耐えられるように設計されるが、となればT-95がより強力な152mm砲を採用すれば、それには耐えられない事になる。これらの戦車が実用化されれば、新戦車はあっという間に旧式戦車の仲間入りをする。20世紀初頭に英国海軍は『ドレードノット』級戦艦を採用したが、これにより他の戦艦は全て旧式化した。同じような事が現代の戦車にも充分起こり得る。対して西側諸国は現用戦車を2020年代ぐらいまで使用を続ける予定であるので、T-95が完成してから、それに対抗する戦車を開発すれば良い。


この清谷氏の懸念は、一部は的を射ていました。重量55トンと伝えられていたT-95で、自分の152mm砲弾の直撃に耐えられるように設計が可能かどうかは大きな疑問がありますが、防御はともかくとして少なくとも火力が圧倒的である可能性はありました。152mmガンランチャーならさほど怖くは無いですが、152mm高初速砲を搭載してきたら(55トンで反動を吸収できるのか怪しいが)、従来の戦車では対抗できない恐れもありました。

しかしT-95は調達中止され、そのような懸念は無くなりました。

これは日本、イスラエル、中国、韓国の4カ国が自国の新戦車に大口径砲を与えなかった方針が正しかったという事を意味します。またロシアは20年以上前の設計のT-90を何時までも使い続ける気は無く、T-95とも違う全く新しい新戦車の開発を行う方針です、それは恐らく冷戦時代の(ソビエト時代の)発想とは異なる、軽量で使い易い戦車となるのではないでしょうか。そしてそれが出て来る頃には、日本はTK-Xのその次の新々戦車を調達し始めている頃で、ちょうど良い更新サイクルとなります。

結論から言えばロシアのT-95開発中止は、日本、イスラエル、中国、韓国の4カ国にとって朗報でした。T-95に対抗する必要が無くなり、自分達の新戦車の方針を修正する必要が無くなったからです。一戦車ファンとしてみればT-95調達中止は残念ですが、日本国新戦車TK-Xを擁する立場としては、T-95調達中止は歓迎すべき案件であるという複雑な思いがあります。T-95の開発中止は戦後戦車の恐竜的進化が止まった事を意味しており、大きく重くなり過ぎた兵器が軽量で使い易くなるように方向性が変化するのは至極真っ当な流れであり、軽量化コンセプトを逸早く打ち出していた日本のTK-Xと中国の0910工程の先見性の高さを証明したものであると言えます。

なおロシアでは以前から自国の戦車の大半が旧式な事に危機感が抱かれており、近代化改修で凌ぐ事も否定的な声がありました。


ロシア戦車の危機的状況 - 「独立軍事解説」2003年3月7日号
1)ロシア連邦軍の2万両の戦車のうち、現代の要求に合致するのは20%しかない。
2)保管中の戦車のうち、保管期間の異なる3つのグループ(いずれも保管期限内のもの)の走行試験をしたところ、50〜300kmの走行で全車が故障した。
3)米国の戦車要員がプロ4人により構成されるのに対し、ロシアの戦車は中卒の2年勤務兵3名で構成される。整備員も同様でロシア戦車の運命は、稚拙な整備により予め決まっている。

「製造」(または改修)後10年が経過した戦車の能力が不適当になる事を現実は示している。T-72およびT-80戦車のライフサイクルコスト延長のために近代化改修をすることは、次の理由で不適切である。兵器である戦車の製造と運用経験は、これらの機械のライフサイクルコストが偏差(±5年)を含めておよそ30年であることを証明している。したがって、すでに時代遅れになった機材に近代化改修を施すことは、軍に旧式戦車の飽和をもたらし、正しい行為とはみなされない。有望な戦車の再編成、乗組員の訓練レベルの向上および整備の新システムの形成などの明確な総合的運用なくして、我々の機甲部隊が、現代および将来の要求に応えることは決してないだろう。我々の軍の責任者は、T-80UおよびT-90戦車の軍事的な特性が外国戦車に劣っていないばかりか、いくつかのパラメーターに関しては勝っているとみなしている。一方、これらの勝っているパラメーターを示す際に、彼らは、なぜか謙虚になってしまう。T-80UおよびT-90戦車の戦闘能力は外国の戦車に著しく劣っており、これは新しい戦車を製造する必要を示すものである。」


これは月刊「グランドパワー」2004年5月号「日本軍中戦車(2)」 に掲載された、一戸崇雄氏による翻訳文です。元の露文資料はロシア独立新聞の発行する「独立軍事解説」の記事"Танковый кризис"(戦車の危機)の小タイトル「К НОВОМУ ТАНКУ」(新しい戦車へ)の部分です。7年前のWEB記事がまだ閲覧できるという、日本の新聞ではあり得ない親切さです。

しかしロシア軍は、ようやく得ようとしていた新戦車T-95を諦める事になりました。ソビエト連邦の時代に計画された冷戦時代の古いコンセプトの戦車は、今の時代に不適合であるという決断でした。これに対し日本の新戦車TK-Xは、冷戦終結後からかなり経ってから計画された戦車であり、今の時代に相応しいコンセプトの戦車となっています。
01時59分 | 固定リンク | Comment (79) | 軍事 |
2010年05月09日
5月9日は大祖国戦争勝利記念の軍事パレードがロシアのモスクワで開かれました。今年は初めてNATO軍を招待するなど政治的にも意味のあるパレードになりましたが、見物する上で最も目玉となったのが大祖国戦争(第二次世界大戦の独ソ戦)当時の戦車を登場させた事です。それではT-34戦車とSU-100自走砲の大群をご覧ください。



※縦横比がおかしかったので差し替え。他に良さそうな動画を見付けて来たら順次追加していきます。

なお、T-34とSU-100はトランスポーターで赤の広場近くまで運びました。



そして降ろした後に自走でパレード出発位置まで移動していきます。



↑追っ駆けファンに付き纏われる有名人の如く民衆に集られるТ-34/85さん。

こちらは航空機編。

21時17分 | 固定リンク | Comment (123) | 軍事 |
2010年05月06日
速報です。


北朝鮮の攻撃と米韓が判断 哨戒艦沈没、韓国紙報道:共同通信
【ソウル共同】6日付の韓国紙、東亜日報は、沈没した同国海軍哨戒艦の船体から、魚雷に使われる火薬の成分が検出されたと一面で報じた。また、沈没現場から回収された哨戒艦と材質の異なるアルミニウム片は、魚雷の破片であることが判明。沈没原因は北朝鮮による攻撃との判断で米韓が一致したと伝えた。


東亜日報電子版「dongaA.com」(韓国語版)では、当然トップニュース扱いです。日本語版や英語版はまだ更新されていません。
11時10分 | 固定リンク | Comment (320) | 軍事 |
2010年04月30日
I.Amraamski氏のI.Amraamski on Twitterの呟きで知りましたが、今世界で話題になっているロシア製のミサイルシステムがこれなのだそうです。



旧ノヴォトール設計局(現・Концерн Моринформсистема-Агатの一部門として残っている)のクラブ巡航ミサイルを民間用コンテナに偽装して発射するミサイルシステムで、何処からでも対艦・対地攻撃を可能とします。

クラブ巡航ミサイルには様々な種類があり、先ず発射形態で大きく分かれます。潜水艦発射型を「クラブS」、水上艦発射型を「クラブN」、地上発射型を「クラブM」、空中発射型を「クラブA」と言い、このコンテナ偽装型は「クラブK」と呼ばれます。クラブKは基本的にクラブMと同一で、ランチャーが若干異なります。またミサイル自体も幾つか種類があり、特殊対艦型、通常対艦型、対地攻撃型、対潜型とあるのでそれぞれ区別する必要があります。通常は亜音速で巡航するミサイルなのですが、特殊対艦型は目標の敵艦に突入する直前に弾頭部を切り離し、ロケットモーターに点火してマッハ3で突っ込んでいきます。

世界中がこのミサイルシステムに注目する理由は当然、「民間コンテナに偽装する」というコンセプトです。テロリストやテロ国家相手に向けて販売する気なのか、と騒がれています。メーカーの動画にこんな名前のコンテナが写ってましたし・・・。

DONGNAMA

「DONGNAMA」= 韓国の海運会社「東南亜海運」の事ですが、どういう意味で登場させているのやら・・・世界中から疑念の声を受けたメーカー側は、Youtube上で釈明する事にしました。広報のお姉さんが説明しています。



広報のお姉さんは「あくまで正規軍での運用を考えています、偽装は軍隊で定番の手法です」と述べていますが、民間コンテナに偽装するのは全然定番じゃありません。これは例え正規軍が使用するとしても民間施設を巻き添えにしかねない(攻撃側が「クラブKが潜んでいるかもしれない」と民間施設を攻撃する口実になる)偽装方法であり、問題のあるシステムです。ロシア政府は兵器輸出を管理しているのでテロリストには渡らないとしていますが、イラン経由でそのままヒズボラに流れたら大変な事になりそうなんですが・・・どうなんでしょうねこのシステムは・・・通常のミサイルシステムを購入側が勝手に改造するのは止めようがないとしても、メーカー側が予め用意して世界中に売りに行くのはちょっと・・・・
20時51分 | 固定リンク | Comment (224) | 軍事 |
2010年04月28日
cnfj02

cnfj01

( ゚д゚)ポカーン

アメリカ海軍の駆逐艦に、空母と見間違うような船は無い筈なのですが・・・海上自衛隊のヘリコプター護衛艦「ひゅうが」ならともかく・・・まさか此処までレベルが低いとか思わなかったですよ。原子力空母ジョージ・ワシントンの名前を知らなかったのはともかくとして「この船はなんですか?」ってそりゃあ無いでしょう、ちょっと。


空母

駆逐艦

いいですか、上の大きいのがアメリカ海軍のニミッツ級原子力空母です。「ジョージ・ワシントン」の同型艦です。航空母艦を略して空母と言いますが、その名の通り航空機の母艦です。ニミッツ級は80機くらいの航空機を搭載できます。下の小さいのはアメリカ海軍の駆逐艦です。「アーレイ・バーク級」と言います。イージス・システムを搭載しています。現在アメリカ海軍の駆逐艦と言ったらこの「アーレイ・バーク」級です。もうすぐ新しい「ズムウォルト」級駆逐艦も出て来ますが、それはこんな形をしています。

ズムウォルト級駆逐艦

最近の軍艦はステルス形状が流行しています。これが日本に寄港してきたら皆、どんな船なのか理解出来ないんだろうなぁ・・・潜水艦と間違えられたりして。
23時53分 | 固定リンク | Comment (326) | 軍事 |
2010年04月26日
今日の記事はdragonerさんの記事を紹介するだけです(週末でも無いですし)。実はあちらからトラックバックを送って貰ったようなのですが、エラーが出て送れないという事をTwitterで聞いたので、こちらから紹介する事にしました。

検証TK-X:新型国産120mm滑腔砲についてのエトセトラ(暫定版) - 下総ミリタリースクエア

防衛省技術研究本部が平成8年度より研究していた「将来火砲」の詳細解説です。ラインメタルの砲よりも重量が軽い上に最大腔圧が上がっています。これが新戦車TK-X搭載の新型国産砲の元となったものです。試作砲である「将来火砲」には砲口制退器(マズルブレーキ)と排煙器(エバキュエーター)が付いていましたが、正式採用された新型国産砲には付いておらず、完全に同一のものではありません。

120mmL44JAPAN

120mmL44新型国産砲

私は、TK-X初公開当初は砲身の段差のある部分を「薄い排煙器だな」と思っていたのですが、後日それは排煙器ではないと知りました。ただ、フランスのルクレール戦車の52口径120mm滑腔砲CN120-26には段差は無く、TK-Xの砲と異なっています。

CN120-26/52

排煙器が無いのであれば通常はCN120-26と同じような形態で良い訳で、TK-Xの砲がどうしてああなっているのか、その辺りはまだよく分かっていません。
19時16分 | 固定リンク | Comment (111) | 軍事 |
2010年04月25日
沈没した韓国海軍ポハン級コルベット「天安」の残る艦首が引き揚げられ、更なる調査が行われた結果、水中爆発によるものとほぼ断定され、魚雷攻撃説が更に強まりました。先週引き揚げた艦尾の調査でも「魚雷攻撃の可能性が高い」と既に出ており、更に裏付けられた格好です。




後はどの国が魚雷を使って攻撃してきたのか特定を急ぐ事になります。犯行国が特定された場合、韓国は武力行使を含むあらゆる手段を用いて問題の解決を図るとしています。迂闊な武力行使は全面戦争に発展しかねないので慎重な対応が求められますが、過去の事例として参考になる報復戦の例があります。

プレイング・マンティス作戦 - Wikipedia

このマンティス作戦は1988年に行われました。アメリカ海軍の軍艦がイランの設置した機雷に触雷して被害を受け、その報復として行われ、太平洋戦争以後としては史上最大の海戦に発展しました。この戦いでアメリカ海軍は先ず手始めに、イランの所有する石油海上プラットホームを破壊します。



イラン海軍は先ず武装高速艇で反撃に出ますが、アメリカ海軍空母エンタープライズの艦載機A-6Eイントルーダー攻撃機がクラスター爆弾攻撃を行い、6隻が撃沈されます。

a-6e_mantis

イラン海軍のkamman級ミサイル艇「P225"Joshan"」は航空攻撃をやり過ごし、アメリカ海軍水上部隊Cグループ(ベルナップ級ミサイル巡洋艦×1、ノックス級フリゲート×1、O.Hペリー級フリゲート×1)と会敵、対艦ミサイル攻撃を仕掛けますがチャフにより回避されます。アメリカ海軍の巡洋艦とフリゲートはスタンダード対空ミサイルを対水上戦モードで使用し、命中撃破。最後は砲撃で撃沈しています。イラン海軍はAlvand級フリゲート「Sahand」も出撃させましたが、アメリカ空母エンタープライズ艦載機のA-6Eイントルーダー攻撃機と交戦、ハープーン対艦ミサイル2発とレーザー誘導爆弾4発の直撃で弾薬庫が誘爆、沈没。同型艦の「Sabalan」も被弾し、退却していきます。アメリカ海軍はこれ以上の追撃を行わず、マンティス作戦は終了します。

sahand

この戦いは小競り合いで終わりました。イラン軍としてはそれ以上の作戦能力が無く、アメリカ海軍に鎧袖一触で蹴散らされています。しかし韓国海軍のコルベット「天安」撃沈事件の場合、迂闊に報復戦を始めれば大戦争に発展する恐れがあり、小競り合いで済む保証がありません。

慎重な対応が求められます。
23時43分 | 固定リンク | Comment (228) | 軍事 |
台湾が開発凍結していた長距離ミサイルの開発を再開、北京を射程圏内に入れる計画です。


台湾:一転再開 北京射程のミサイル開発|毎日新聞
馬政権は当初、中国の首都・北京を射程圏とするミサイル開発で中国を刺激することは避けたい考えだった。また、開発停止の背景には沖縄海兵隊を含む在日米軍の「抑止力」があった。安全保障の問題を専門とする台湾の淡江大学国際事務・戦略研究所の王高成教授は「日米安保条約は冷戦終結後、アジア太平洋の安全を守る条約となった。条約の継続的な存在は台湾の安全にとって肯定的なものだ」と指摘する。

一方、開発停止からの方針転換が明らかになったのは、楊念祖・国防部副部長(国防次官)が先月29日の立法院(国会)で行った答弁だった。

楊副部長は「有効な抑止の目的を達成するため、地対地中距離ミサイルと巡航ミサイルを発展させる方向性は正しい」と述べ、開発を事実上認めた。未公表だった開発停止には触れずに、実は方針転換をしていたことが初めて明らかになった。

楊副部長の発言は、台湾自らの抑止力を強化することで中国に圧力をかける狙いがある。関係筋は「普天間問題に代表されるように、台湾に近い沖縄にある米軍の存在や役割が変化する事態もあり得る。米軍が台湾を守る力にも制限が加わる可能性が出てきたことから、抑止力を高める方向に再転換したのではないか」とみている。


1750km_1000km

巡航ミサイル「雄風二E」(Hsiung Feng 2E)の射程延伸型、開発再開です。現状の雄風二Eでは射程1000kmなので北京までは届きませんが、改良型で届かせる計画です。しかしそれはトマホーク巡航ミサイルの初期型並みの射程になるので、原形を止めないほどの改造(直径拡大)が必要になるでしょう。ただ、楊念祖国防次官の言うもう一つの「地対地中距離ミサイル」というのは一体なんでしょう? 超音速対艦ミサイル「雄風三」の対地攻撃型ではない・・・本当に弾道ミサイルを? 中山科学院(台湾国防科学技術研究所)がそんな物を開発している動きは聞いた事が無かったのですが、それが事実なら、台湾は将来の核武装まで視野に入れていることになりますが、本気なのでしょうか。巡航ミサイルや短距離弾道ミサイルはともかく、中距離弾道ミサイルの開発は俄かには信じがたい話です。



これは雄風二Eの原形である対艦ミサイル「雄風二」通常型。

HF-3

これは超音速対艦ミサイル「雄風三」。マッハ2.5超と速い代わりに射程は雄風2Eより短いです。
10時06分 | 固定リンク | Comment (266) | 軍事 |
2010年04月24日
これは事前情報が全くなかったので意表を突かれました。中止されたT-90戦車用「ブルラク(Бурлак)」砲塔とは別に、全くの新型砲塔が用意されているというのです。



Модернизация танка Т-90 завершится до конца 2010 года | АРМС-ТАСС
МОСКВА, 7 апреля. (ИТАР-ТАСС). Модернизация танка Т-90 завершится до конца текущего года, сообщил во вторник начальник вооружения ВС РФ, заместитель министра обороны Владимир Поповкин.

По его словам, "на данный момент ведутся комплексные работы по модернизации Т-90". Как уточнил заместитель главы оборонного ведомства: "Ведутся работы по увеличению боевой мощи, по оснащению приборами ночного видения, по вынесению боевого отделения из кабины танка и совершенствование брони".


Модернизация танков Т-90 может быть завершена до конца года - РИА Новости
Модернизация стоящих на вооружении в российской армии танков Т-90 может быть завершена до конца 2010 года, заявил заместитель министра обороны РФ Владимир Поповкин журналистам.

"Сейчас делается комплекс работ по модернизации Т-90, по увеличению боевой мощи, по оснащению приборами ночного видения. Ведутся работы, чтобы все снаряды вынести из кабины танка", - отметил он.



元ソースはRIAノーボスチやイタル・タス通信で、ポポフキン国防次官の言葉として伝えられています。2010年までに用意されるT-90用の新型砲塔は、新型の暗視装置(恐らくフランス製のライセンス生産品)を有して・・・えっ?

"Ведутся работы, чтобы все снаряды вынести из кабины танка", - отметил он."

弾薬の配置を変える? 


T-90 tank to get all new turret - Russia and CIS Defense & Policy Blog
“There is comprehensive work under way to modernize the T-90 tank, increasing its combat potential, fitting it with a night vision system, placing the ammunition compartment outside the crew section, and the armor, including the active armor, is being improved,” Vladimir Popovkin told reporters.


"placing the ammunition compartment outside the crew section"

弾薬庫は乗員区画と別に置く? 

それって西側戦車と同じく砲塔バスルに弾薬を積み込み、自動装填装置も砲塔内に組み込んで、ソビエト-ロシア独自方式の「カセトカ式自動装填装置」を止める、という事なんでしょうか。現物を見るまでは判断は保留にしておくべきでしょうか・・・過去にロシアでもオムスク輸送機械(既に倒産)が「チョールヌイ・オリョール」という試作戦車で西側と同じ方式の自動装填装置を搭載した事があるので、有り得ない話ではないです。

【自動装填装置】・・・カセトカ式では弾薬と乗員は同じ区画に。


【チョールヌイ・オリョール】・・・砲塔後部バスルに弾薬を積む。
02時43分 | 固定リンク | Comment (63) | 軍事 |
2010年04月23日
メールやトラックバックで「T-95の開発中止は本当なのか?」と疑う声が幾つか寄せられましたが、T-95(オブイェークト195)計画は完全に終了し、将来復活する可能性も全くありません。ウラジーミル・ポポフキン国防次官(装備担当、上級大将)がはっきり明言しています。動画がありますので、直接ご確認下さい。



○記者「時代の要求に沿った条件があるなら(製作に)取り掛かるようになるのか?」

○次官「貴方が取り上げたものはすべて、武器のタイプにしても軍事技術にしても優先性がない。予算が付かない。オブイェークト195(T-95)については2009年から中止している」

"А про 195-й объект — мы эту работу прекратили с 2009 года."

T-95については既に1年前から中止されてました。公になったのは最近の話ですが、とっくに決まっていた事なのです。ポポフキン次官の説明からすると、将来に復活する可能性も見出せません。会見の発言を全て文字起こししたサイトがありますので、そちらもチェックして下さい。(私はロシア語の先生に見て貰いました)

Поповкин про объект 195 - andrei_bt

向こうのコメント欄の反応を見ても、ポポフキン次官を非難する声が多いです。曰く、元宇宙軍司令だから地上軍の事が何も分かっていない、など・・・マニアとしてその気持ちはよく分かります。ただ、ロシアの大手マスコミの間では軍の大改革を断行するポポフキン次官を評価する声の方が大勢です。また、T-95の今後についてですが・・・


Министерство обороны России будет приобретать современное вооружение за рубежом - Фонтанка.Ru
Поповкин, полностью закрыты работы и по «объекту 195». Это тот самый новейший танк Т-95, который иные генералы обещали принять на вооружение еще десять лет назад. В ближайшее время танк будет рассекречен и выставлен на всеобщее обозрение на оружейном салоне в Нижнем Тагиле.


完全にオブイェクト195プロジェクトは終わった、近く機密扱いを解かれてニジニ・タギル(ウラル車両工場のある都市)で開かれる兵器サロンで一般公開される、とあります。どうやら夏(7月)に行われる展示会にT-95がその全貌を現すようです。恐らくクビンカ戦車博物館送りにされる前の晴れ舞台として・・・試作戦車の展示品として生涯を終える事になります。
22時23分 | 固定リンク | Comment (63) | 軍事 |
2010年04月18日
先月末に沖縄県の陸上自衛隊第一混成団が改変され、第十五旅団に格上げされました。それに伴い新たな装備が配備されていますが、不満を漏らすマスコミがありました。東京新聞の軍事担当として知られている半田滋・編集委員の記事です。


沖縄に新旅団 中途半端な改編:東京新聞
混成団ではトラックとジープ型車両だけだったが、軽装甲機動車と高機動車が追加され、迫撃砲も増えた。陸自幹部は「機動力、戦闘力ともアップする」という。陸自がテロ対処にも有効と自慢する戦車は引き続き、配備しない。


記事の殆どの部分にツッコミが入る内容ですが、取り合えずこの部分だけでお腹一杯です。いやいや、離島防衛に戦車だとか、輸送の事を考えたらどう考えても不便な話ですから・・・ああでも、新たに編成された偵察隊(第15偵察隊)にコイツが配備されてますから、本来の使い方ではないですけれど、戦車の代わりをある程度は務まりますよ?

87式偵察警戒車

第15旅団に新たに加入した戦力の中で最も強力な装甲車両はこれです、「87式偵察警戒車」。重量15トン、主武装は25mm機関砲。実は昨年末の時点で既に沖縄に来ていて、航空自衛隊那覇基地エアーフェスタ2009で特別ゲストとして公開されています。この他には82式指揮通信車と軽装甲機動車、高機動車がやって来ていて、小回りの効く車両ばかりが用意されています。余裕があればもっと重い車両があってもよいのでしょうけど、その場合は遠く離れた離島へ送り込む手段も合わせて考えなければなりませんから、戦車よりも軽装甲機動車とヘリコプターの方が先に重要視されるのは当然です。

ただ半田滋氏が紹介している通り、「戦車はテロ対処に有効」な代物です。これは陸上自衛隊だけが主張している事ではなく、カナダ陸軍がアフガンで身を持って体験した事実です。戦車を全廃し装甲車だけで改編しようとしていたカナダ陸軍は、アフガンの戦場でそれが間違っていた事を痛感し、新たな戦車を緊急調達しています。今や「戦車はテロ対処に有効」というのは世界各国共通の認識と言ってよいでしょう。カナダの決断は戦車不要論に最後の止めを刺したのです。ですから、陸自は世界の軍事常識を述べただけで別に自慢などしてはいません。沖縄に配備していないのは重過ぎて輸送が困難だからです。沖縄本島だけで戦闘をするなら構いませんが、離島の防衛も行わなければならないことを考慮しなければなりません。

ただし、沖縄防衛でのテロ対処では、敵は特殊部隊の侵入というケースになるので、IED(即席爆発装置)で待ち構えてくることは無いですし、対戦車兵器は持っていても極少量になるでしょうから、アフガンのような戦場で要求されている程の重装甲は必要ではなく、求められているのは高い火力という事になります。そうすると装甲車の車体に戦車砲を積んだ車両でも十分役に立ちます。これなら軽いので運用し易くなります。

機動戦闘車

実はちょうどそういう車両を、たまたま開発中だったりします。「機動戦闘車」です。105mm戦車砲を装備し戦車並みの高い火力を有しています。これが完成し調達できるようになれば沖縄に配備しましょう。あるいは本土に置いて航空自衛隊の新型輸送機(XC-2)で空輸すれば即座に展開可能です。空輸不可能な戦車では出来ない即応性を発揮できるでしょう。

防衛省・自衛隊:平成19年度 事前の事業評価 評価書一覧

政策評価の「機動戦闘車」の項目を開けば分かりますが、島嶼侵攻に対する防衛やテロ対処に使う兵器である事が謳われています。

機動戦闘車 運用構想図

この機動戦闘車は開発にあたって、第一に性能の高いロシア空挺軍の新型空挺戦車と渡り合える性能を目標としていました。しかしロシアの新型空挺歩兵戦闘車「BMD-4バフチャーU」と新型空挺自走対戦車砲「2S25スプルートSD」は調達中止となり、仮想敵としては中国海軍陸戦隊の新型水陸両用戦車の方が最も強力な相手となっています。ロシアの水陸両用戦車PT-76は古い上に76mm砲と火力が低いのでもう使われていませんが、中国の新型水陸両用戦車は105mm砲を備え、125mm砲の2S25スプルートSDよりは劣りますが、主力戦車に準ずる火力を有しています。

05式両棲突撃車(ZTD-05) - 日本周辺国の軍事兵器

05式水陸両用歩兵戦闘車(ZBD-05)の派生形で105mm砲を搭載したものです。



ZTD-05の諸元は正確には判明していません。水上航行能力で必要な浮力を得る為に車体が大型化していて、主力戦車より大きく、調達単価も主力戦車を上回るコストが掛かると言われています。現状で世界最強の水陸両用戦車と言える存在です。水上航行能力もアメリカ海兵隊のEFV(遠征戦闘車)に次いで高い速度で移動する事が出来ます。

これが開発中の機動戦闘車の想定する対抗目標になります。
04時34分 | 固定リンク | Comment (148) | 軍事 |
2010年04月17日
陸上自衛隊の「将来装輪戦闘車両」は研究中の次世代装輪装甲車です。色んな派生形が計画されていますが、主力となるのはテレスコープ弾(Cased Telescoped Ammunition)を発射するCTA機関砲を搭載した車両になります。(テレスコープ弾の研究:防衛省技術研究本部)

その40mmCTA機関砲を搭載した将来装輪(対空型)のテスト車両が「下総ミリタリースクエア」にて始めてネット上で報じられた時、砲塔デザインに各所から否定的な声が上がりました。

将来装輪(対空)テスト車両

「防衛省・自衛隊:平成20年度 事後の事業評価 政策評価書一覧」でも試作品の概要として紹介されています。確かに野暮ったいのですが、実はこれとよく似た砲塔を外国兵器メーカーが造っているのです。それがこれです。

Skyshield 35/1000, Anti-aircraft system - Army Guide

スカイシールド35mm機関砲

スイスのエリコン社(今はドイツのラインメタル社の子会社)の製作品です。35mm単装機関砲の地上設置型で、35mmスカイシールド機関砲と言います。これは簡易型で、砲塔の周りは防水キャンバスで覆っているだけです。機関砲の砲身を支えている支持架などの特徴が、日本で開発中の40mmCTA機関砲試験砲塔と同じ形式で、明らかに日本側がスカイシールドを参考にしている事が分かります。このスカイシールドには、防水キャンバスではないちゃんとした外装パネルを装着したバージョンがあります。それがこれです。

Skyshield

砲身支持架にパネルを装着し、ステルス砲塔に身を包んだこれは、中身はスカイシールドそのままです。システムを発展させて「NBS C-RAM」と呼ばれるものは迫撃砲弾やカチューシャロケットを迎撃可能です。スカイシールドの車両搭載バージョンは「スカイレンジャー」と呼称されています。

Skyranger

つまり・・・日本の将来装輪戦闘車(対空型)の40mmCTA機関砲塔も、量産型ではお洒落にリファインされたデザインで登場してくるに違いありません。きっとスカイレンジャーそのままの姿で出て来るでしょう、そしてラインメタルに怒られる様子が目に浮かびます・・・いやもうちょっと日本独自の格好良さを追求して欲しいですけど・・・もし試験砲塔そのままで量産が決定したら凄くがっかりですが、その時はこういう表情を用意しておきます。

toro_bull.jpg

ただ、エリコン35mm機関砲と日本の40mmCTA機関砲では大きさが異なりますから、砲塔サイズは日本の方が大きくなって当然なので、砲身カバーが装着されるかどうかの問題になりますね。砲身冷却の観点から見ると不利になるんですが、ステルス性及び格好良さの観点からは付けた方が素敵です。

40mCTA機関砲試験砲塔

Rheinmetall Skyranger 35mm Gun System

どうも内部構造では35mmスカイレンジャー砲塔に比べ40mmCTA試験砲塔には余裕が無さそうです。ちなみにラインメタル・エリコンのスカイシールド、スカイレンジャーに関連したシリーズの海軍バージョンはミレニアム35mm機関砲です。



この35mm機関砲が使用するAHEAD弾は、高知能時限信管を使用し、目標手前で的確に起爆し、タングステン散弾を撒き散らします。日本の40mmCTA機関砲の対空弾も同じく高知能時限信管を使う方式です。
21時08分 | 固定リンク | Comment (218) | 軍事 |
2010年04月16日
沈没した韓国海軍ポハン級コルベット「天安」の尾部が引き揚げられ、沈没原因の調査が始まっています。海中に沈んでいた当初は切断面が綺麗だと報道されていましたが、実際にはギザギザに引き裂かれており、疲労破壊の可能性はほぼ無くなった上に、弾薬が誘爆した形跡も無く、内部爆発の可能性も無くなりました。そして艦底の鉄板の折れ曲がり具合から、外部爆発である事が特定できています。


哨戒艦沈没:「魚雷による水中爆発の痕跡」|朝鮮日報
軍の1次調査で暫定結論
船底の鉄板が外側から内側に折れ曲がる

軍当局は15日、引き揚げられた哨戒艦「天安」の船尾に対する1次調査の結果、「天安」は魚雷などの直接打撃を受けたのではなく、水中爆発での「バブルジェット(一種の水大砲)」によって船が真っ二つに切断された可能性が高い、という暫定結論を下したという。また、「天安」に外部衝撃を与えた手段は、機雷より魚雷の可能性がはるかに高いと判断していることも分かった。

国防部の高官は同日、「船尾調査団が1次調査を行った結果、魚雷などが『天安』の側面に直撃したという形跡は発見されなかった。その代わり、『天安』の底部水中で魚雷などの強力な爆発が発生、バブルジェットによって船に大きな衝撃が加わり真っ二つに割れたという痕跡を見つけた」と話した。通常、魚雷が船に直撃した場合、大きな穴が開くなどの跡が残る。

調査団は、水中爆発が船の真ん中ではなく、中心部から左寄りの位置で発生した可能性があるとみて、詳しく調査している。調査団はまた、「天安」の船底の鉄板も外側から内側に折れ曲がっていることを確認、今回の事故原因が内部爆発ではなく、外部衝撃だという暫定結論を下したという。

この日姿を現した「天安」の船尾は、左舷が右舷より6メートルほど長い状態で斜めに切断され、左舷甲板が逆V字型に上に突き出していたことから、強力な爆発が艦艇下部で発生し、上部に向かったとみられる。

民間と軍の合同調査団も同日、本格的な調査活動に着手した。現場の調査団は軍関係者26人と民間人10人、米国の調査要員2人で構成された。

ユ・ヨンウォン軍事専門記者



現段階では確定には至りませんが、魚雷の磁気信管作動による艦底水中爆破である可能性が高いという暫定結論が出ています。事故ではなく攻撃であり、その攻撃方法と攻撃を仕掛けた国をどう特定していくかが鍵になります。

韓国聯合ニュース写真特集「哨戒艦"天安"沈没」
23時29分 | 固定リンク | Comment (244) | 軍事 |
ロシア軍はポポフキン国防次官(装備担当、上級大将)の決断により、たとえ一時的にであっても国外から兵器を購入し、国内の兵器開発力が回復するまでの繋ぎとすることを決めました。具体的には先ずイスラエルから無人偵察機を購入する事と、フランスからミストラル級強襲揚陸艦を購入する方針です。どちらも2008年に勃発したグルジア戦争でその必要性を認識し、可及的速やかに調達する事が求められました。

この動きは周辺国に大きな影響を与えました。特に強襲揚陸艦ミストラルの購入は、ロシア軍の上陸作戦能力を飛躍的に向上させる事に繋がる為、バルト三国など周辺国は懸念を表明しました。それらの声に対し、ロシア側は「あくまで自衛的兵力である」と、以下のように反論しています。


"Мистраль" обеспечит безопасность Курильских островов : Lenta.Ru
Министерство обороны России намерено использовать десантные вертолетоносцы класса "Мистраль" для обеспечения безопасности Курильских островов и Калининградского эксклава, пишет газета "Коммерсант" со ссылкой на слова заместителя министра обороны Владимира Поповкина. В экстренных случаях корабли будут обеспечивать масштабную переброску войск в эти регионы.
(ロシア国防省はクリル諸島とカリーニングラード飛び地領の安全保障に備える目的としてミストラル級強襲揚陸艦を使う事をコメルサント紙がウラジーミル・ポポフキン国防次官の言葉として伝えました。)


ロシアは強襲揚陸艦ミストラルを逆上陸用の防衛的兵器であると主張しています。これがなければクリル諸島やカリーニングラードに多数の兵士を張り付けて防衛しないとならず、今のロシア軍にはその余力が無い為、「取らせてから取り返す」方式しかないという説明です。孤立した土地にいくら多数の兵力を張り付けても、相手が十分に準備した上で先制攻撃してきたら持ち堪える事は困難で、どちらにしろ増援が必要になるからです。それならば張り付け戦力を最低限にして、増援用戦力を整備すれば兵力単位の自由度が増します。孤立した土地への張り付け戦力は動かし難く、別の場所の有事には投入できないので軍全体の負担が大きいのです。また、逆上陸以外には自国民を脱出させる為に使う事も強襲揚陸艦の重要な役割になります。港に接岸して避難民を収容していると、艦自体の港湾脱出が危うくなりかねないのですが、沖合に停泊してヘリコプターで反復輸送すればその危険性を大幅に減らせます。アメリカ軍はベトナム戦争でのサイゴン撤退作戦「フリクエント・ウィンド」で、洋上待機する複数の空母にヘリコプターが反復輸送を行い多数の人員を脱出させています。

"Курильских островов"・・・クリル諸島(北方領土)
"Калининградского эксклава"・・・カリーニングラード=飛び地領

クリル諸島(北方領土)とカリーニングラード(飛び地)

ポポフキン国防次官はロシアが持つ東西の孤立した土地、孤島であるクリル諸島と飛び地であるカリーニングラードの両方に付いて言及していますが、報道はクリル諸島(北方領土)の方を強調しています。これはミストラル級調達第一隻目は先ず最初にロシア太平洋艦隊に配備される予定だからです。


Окончательное решение по "Мистралю" будет принято в ближайшее время : РИА Новости
В случае положительного решения первые корабли этого типа планируется направить на Дальний Восток, на укрепление Тихоокеанского флота,
(肯定的な答えが出た場合、太平洋艦隊を強くする為、同型(ロシア向けミストラル級)の最初の艦は、極東地域の指揮下に置かれる計画です。)


これは太平洋艦隊の艦艇を修理維持できず、北方艦隊に比べ大きく戦力が低下しているからです。ロシアはソ連時代にイワン・ロゴフ級という大型揚陸艦を三隻建造し、うち二隻を太平洋艦隊に配備しました。しかし太平洋艦隊の1番艦「イワン・ロゴフ」は除籍され、2番艦「アレクサンドル・ニコラエフ」は予備艦扱いになり、北方艦隊に所属する3番艦「ミトロファン・モスカレンコ」のみが稼働しているのが現状です。その為、新しく取得するミストラル級を太平洋艦隊に先に廻す必要があります。

«Иван Рогов»・・・イワン・ロゴフ級大型揚陸艦(満載排水量14,000t)
イワン・ロゴフ

«Мистраль»・・・ミストラル級強襲揚陸艦(満載排水量21,500t)
ミストラル

ロシアの立場からからすれば、これはあくまでイワン・ロゴフ級の更新用であり、他国から文句を言われる筋合いはない、という事になります。そもそも極東方面ではイワン・ロゴフ級を上回る大型揚陸艦が次々と就役しており、ミストラル級でも用意しなければバランスが取れない状況になっています。

日本・・・「おおすみ」級(満載排水量14,000t)×3隻
韓国・・・「ドクト」級(満載排水量18,850t)×1隻(2番艦計画中)
中国・・・「昆侖山」級(満載排水量17,600t)×1隻

日本の「おおすみ」級は固有のヘリコプターを持ちませんが、ヘリコプター護衛艦「ひゅうが」級2隻と連携運用すれば強襲揚陸作戦が可能になります。更にイタリアの新型多目的空母「カブール」に匹敵する能力を備えた満載排水量27,000tの拡大型ヘリコプター護衛艦(22DDH)の予算も通り、順当にいけばこれを2隻造る事になります。「ひゅうが」級2隻と合わせ、ヘリコプターを用いた強襲揚陸が可能な艦として数えると、日本はヘリ揚陸艦×4、ドック揚陸艦×3という強力な戦力を保有する事になります。ヘリコプター護衛艦の半数は本来の対潜任務に専念させるとしても、使える大型揚陸艦は5隻となります。ヘリコプター護衛艦と多目的空母は専用の揚陸艦よりは輸送能力が劣るので、それを割り引いて考えたとしても、合計でミストラル級3〜4隻分の戦力はあるでしょう。日本はこれを専守防衛用(逆上陸用)及び国際貢献用(災害派遣用)と称して整備しています。

「おおすみ」型輸送艦
oosumi401.jpg
「ひゅうが」型護衛艦
hyuga.jpg
「22DDH」計画艦
gachar_de_22ddh.jpg

韓国のドクト級揚陸艦は、ほぼミストラル級に匹敵する能力を有しています。韓国は自国が朝鮮戦争で負けなかったのは、マッカーサーの大博打「仁川(インチョン)上陸作戦」が成功したからだという事を身に染みて理解しています。その韓国軍が強襲揚陸作戦能力の獲得を目指すのは当然で、これもまた国家防衛用(逆上陸用)及び国際貢献用(災害派遣用)と称して整備しています。

「ドクト」級強襲揚陸艦
Dokdo.jpg

中国の「昆侖山」(071型ドック揚陸艦)は1隻のみで、試作艦の意味合いが強いです。これまで中国海軍は台湾攻略用に中型揚陸艦や小型揚陸艇の数を揃える事を重視して来ましたが、もっと遠距離での揚陸作戦を可能とする大型揚陸艦の整備に着手し、これがその第一弾という事になります。

「昆侖山」(071型ドック揚陸艦)
kunrun.jpg

極東地域ではこの他に、佐世保にアメリカ海軍第七艦隊の強襲揚陸艦1隻とドック揚陸艦3隻の計4隻が居ます。アメリカ海軍の強襲揚陸艦は「ミストラル」級の2倍の大きさで、ドック揚陸艦は「昆侖山」級とほぼ同じ大きさです。

今から30年前の当時、ソ連太平洋艦隊にイワン・ロゴフ級大型揚陸艦とキエフ級航空巡洋艦が配備された時は、日中韓の海軍の揚陸作戦能力は著しく低く、アメリカ海軍第七艦隊を除けば極東地域ではソ連太平洋艦隊が突出して高く、当時叫ばれていた「北方脅威論」の象徴としてイワン・ロゴフ級大型揚陸艦「イワン・ロゴフ」「アレクサンドル・ニコラエフ」、キエフ級航空巡洋艦「ミンスク」「ノヴォロシースク」は日本人に恐れられていました。キエフ級の本来の役割は長距離巡航ミサイルによる対艦攻撃と搭載ヘリコプターによる対潜任務ですが、ヘリコプター搭載艦として揚陸作戦の支援も可能です。しかしイワン・ロゴフ級2隻とキエフ級2隻の揚陸能力は今日の目から見れば、日中韓の海軍がそれぞれもうすぐ獲得できる程度の能力という事になります。これは日中韓の海軍力が拡大してきた事、そして1980年代のソ連軍を対象とする「北方脅威論」が誇張され過ぎたものであった事の、両方の要素があります。

«Минск»・・・キエフ級重航空巡洋艦「ミンスク」(満載排水量41,400t)
minsk_world.png
※除籍後、屑鉄として韓国に売却され中国に転売される。

なにしろソ連‐ソビエト連邦は、1991年には消滅してしまうのです。崩壊に至るまで衰退は、既に1980年代から顕著になっていました。ソ連はアフガン侵攻で手一杯で、とても極東に攻め込む余力は無く、むしろ逆に攻め込まれる事を心配していました。アメリカのように二正面作戦を行える国力は有していなかったのです。この事はソ連崩壊後の資料公開で明らかとなります。ソ連は本気で日本人がクリル諸島を取り返しに来る事を警戒していました。フォークランド紛争(1982年)でアルゼンチンが行った事を、日本は行って来ないと何故言えるのか? ロシア人は日本の憲法9条など信用していませんでした。そして同じ事が今現在も言えます。ロシアは2年前のグルジア戦争からこう理解しています。

「グルジアのような軍事的弱小国が戦争を挑んできた。領土紛争とはそういうものだ。日本がクリル諸島を奪い返しに来ないと何故言える? ましてや日露戦争、太平洋戦争で日本は大国相手にばかり挑んできた。 平和憲法? そんなものを信用できるものか。」

常識的に考えれば、日本人がまともな政治判断をしている限りは、平和憲法の通り軍事力に訴えて北方領土を奪い返しに来る事は無いでしょう。しかし、グルジアのサーカシビリ大統領のような愚かな判断(アメリカが助けてくれると勝手に期待してロシアに戦争を仕掛けた)をする指導者が出て来ない保障など無いのです。可能性としては非常に低い話です。でも例えば今の日本の首相は何を考えているのか全く分からない、理解不能な面があります。とはいえ鳩山首相の方向性はグルジアのサーカシビリ大統領というよりは、ウクライナのキエフ市長レオニード・チェルノベツキー(Леонид Черновецкий)に近いのですが・・・鳩山首相は宇宙人に例えられますが、キエフ市長も宇宙的な人だったりします。

キチガイなキエフ市長:MURAJIの戯れ言

「"宇宙人リョーニャ"(レオニードの愛称)に匹敵する"宇宙人ハトヤマ"を総理大臣に据えてしまう日本国民が、次にサーカシビリと似たような人物を選ばないと何故言える? 選挙でマトモな判断が期待できるのか?」

そうロシア人に問い掛けられてしまったら、返答に困ってしまうのも確かです・・・。


さて以上は「ロシアから見たミストラル級配備の意義」です。あくまでロシア視点なので日本人には理解し難い面もあるかもしれませんが、ロシア人は結構本気で強襲揚陸艦を防御的な役割で必要だと考えているようなのです。孤立した地域が奪われた時に奪い返す為の役割と、孤立した地域から人員を脱出させる為の役割を考えています。ロシアがミストラル級を取得しようと思い立ったきっかけはグルジア戦争からですが、懸念しているのは黒海方面だけではなく、クリル諸島とカリーニングラードの維持もかなり気にしているのです。ロシア人から見れば日本自衛隊の揚陸能力の向上は著しいですし、仮に逆上陸用の戦力があってもウラジオストクから救援に行くには宗谷海峡を突破せざるを得ず、強力な空中援護と水上艦の護衛が無ければ辿り着く事すら難しいのです。地形的に見てロシアが北方領土を維持する事は大変難しく、もしロシアが核兵器を使わないのなら、現状の戦力では自衛隊が本気で北方領土を奪い返しに来たら、ロシアに勝ち目はありません。アメリカ軍抜きで勝敗は決します。

kuril_zouen.png

つまり逆説的な話ですが、宗谷海峡の安全通行を確保しなければクリル諸島の救援はおぼつきません。艦隊整備の関係と流氷の問題で、カムチャッカ半島に水上艦の根拠地を置くのは無理ですし、間宮海峡廻りで迂回して来るのも流氷の時期には無理です。つまりクリル防衛には北海道の海峡周辺へ限定侵攻し、安全通行を確保し、その上で救援に向かうのが最も確実です。地球温暖化で間宮海峡とオホーツク海の流氷が気にならなくなれば戦略も変わってきますが、現状では「もし日本が北方領土奪還作戦を掲げて攻めてきたら、ロシア軍はお返しに全力で北海道に攻め込む」という作戦が有り得ます。ロシアは2年前のグルジア戦争で、紛争地域の南オセチアとアブハジアを大きく超えてグルジア本領奥深くまで攻め込みました。同じように領土紛争で係争地以外への侵攻は十分に有り得るケースです。

しかし、それを行うには水陸両用戦能力の大幅な拡充が必要で、太平洋艦隊に廻すミストラル級1〜2隻程度では全く十分ではなく、陸海空全体の質の向上が求められる事になります。
20時25分 | 固定リンク | Comment (216) | 軍事 |
2010年04月12日
航空自衛隊のF-2戦闘機で99式空対空誘導弾(AAM-4)を運用できるように、搭載レーダーJ/APG-1の探知距離を延伸する改修を行う事になっていますが、このレーダー改修に付いての詳細はこれまで判明していませんでした。外観や重量を大きく変えずに、電子機器とソフトウェアの変更で性能向上を図るという事しか伝えられていませんでしたが、「軍事研究」誌の今月号でJ/APG-1(改)のレーダー視程に関する話が語られていました。


「防空力拡張:新要撃機F-2/FX&KC-767タンカー」 軍事研究2010年5月号,軍事情報研究会[監修:河津幸英] 134ページ
結果、J/APG-1火器管制レーダー(改)の「空対空射撃」能力は、どの程度向上するのか。一説では、F-X候補機でもあるボーイングF/A-18E/Fスーパーホーネット戦闘攻撃機の積むレイセオン製AN/APG-79AESAレーダー以上とも言われる。


驚くべき内容です・・・「一説では」と、あやふやな情報なので確定には程遠いのですが、もしこれが事実なら・・・射程の長いAAM-4、加速力と機動性に優れる機体、そしてこのJ/APG-1(改)の性能があれば、ストライクイーグルやユーロファイターとも互角以上に渡り合える空戦能力をF-2戦闘機は獲得する事になります。現段階ではまだ信じられません・・・後追い情報が続いて裏付けが取れるまで半信半疑ですが、一応の報告です。


J/APG-1
21時06分 | 固定リンク | Comment (356) | 軍事 |