2015年10月01日
2015年9月30日、ロシア軍がシリアでの本格介入に踏み切り空爆を開始しました。ロシアは対イスラム国連合を唱えていますがその本当の狙いはアサド政権の存続にあり、ロシア空軍の戦闘機による空爆はイスラム国ではない他の反政府勢力(アメリカが支援している自由シリア軍系列)に実施されている上に、さっそく誤爆で民間人に大量の犠牲者が出ました。それでもロシア国防省はあくまでイスラム国の拠点に対してピンポイント精密爆撃をしていると公式声明で発表しています。


Воздушные удары по объектам террористической группировки ИГИЛ

そしてロシア国防省がシリアでの空爆動画をいち早く公開したのは、ロシア軍が精密爆撃を行っており無差別爆撃はしていないと国際社会にアピールする為かと思いました。しかし、公開された動画の最初の方に、地表に多数の小さな爆発が起きている様子が見えます。

ru_sy1.PNG

これはクラスター爆弾から拡散した多数の子弾が着弾している様子に見えます。つまりピンポイント攻撃ではなく、精密誘導無しで広範囲を面制圧しているのではないでしょうか? 

動画の空爆は3シーンあり、2シーン目の攻撃も同様に地表に多数の着弾が見えます。そして3シーン目の攻撃は単弾頭の爆弾を投下しています。

ロシア軍シリア空爆

建造物を狙って外しているように見えます。精密誘導爆弾ではなく、誘導装置の無い自由落下爆弾の可能性が有ります。この動画からはピンポイント精密爆撃をしているとは受け取る事が出来ません。アメリカ軍の爆撃と比べて、ロシア軍は非常に大雑把な爆撃を行っているようです。ロシア国防省は公式声明でピンポイント精密爆撃をしていると言いつつ、自ら発表した動画でそうではない事を明かしました。

参考:アメリカ軍による対イスラム国シリア空爆、12発の精密誘導兵器による面制圧攻撃(2014年9月14日)

一方でアメリカ軍は誘導兵器による精密爆撃で面制圧しつつ付随被害を局限するという、非常に高度な事を実行しています。
05時05分 | 固定リンク | Comment (27) | 軍事 |

2015年09月30日
現在は停戦し小康状態になっているウクライナ東部での動乱では、ウクライナ政府と東部独立派がお互いに相手を「白燐弾を使用した!」と非難し合っていた事があります。しかし着弾現場から落ちていた不発弾が回収され、両軍が使用しているロシア製多連装ロケット「BM-21グラード」のクラスター焼夷弾型ロケット「9M22S」の「9N510弾頭」に入っている特徴的な六角柱の子弾が発見されています。


МОСПИНО Реактивный зажигательный снаряд 9М22С(六角柱状の焼夷子弾に着火した様子)

Зажигательные снаряды в небе Донецка. 04.02.2015 ドネツクの空、焼夷弾(2015年2月4日)

六角柱の金属ケースはマグネシウム製で内容物は白燐ではなくテルミットです。六角柱の形状やその構造はアメリカ軍が第二次大戦中に使ったM50エレクトロン焼夷弾によく似ています。ロシア製の9M22S焼夷ロケット弾はそれより小さく出来ています。


Ilovaisk、ウクライナ東部(2014年)

9M22S焼夷ロケット弾はクラスター型の為、多数の子弾が燃えながら落ちて来ます。その様子がファルージャやガザで使用されたM825A1白燐弾に似ている為に当初混同されてしまったのでしょう。ただしM825A1白燐弾は剥き身の白燐を空中でバラ撒く仕様で煙幕弾として設計された兵器であり、特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の付属議定書3の焼夷兵器の定義からは除外されています。一方で9M22S焼夷クラスターロケット弾は明確に攻撃兵器として設計されており、CCWで使用制限をされる焼夷兵器に分類されます。つまりM825A1白燐弾よりも深刻な問題とされるべきものでした。ですが、ウクライナ東部での9M22S焼夷クラスターロケット弾の使用に付いて、国際的には殆ど騒がれずに終わっています。

Protocol III to the Convention on Prohibitions or Restrictions on the Use of Certain Conventional Weapons which may be deemed to be Excessively Injurious or to have Indiscriminate Effects - 国連軍縮局(UNODA)

しかし、焼夷兵器の使用制限に関する特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の付属議定書3に、ロシアもウクライナも入っているように見えます。(韓国やイスラエルは受諾していない)
05時29分 | 固定リンク | Comment (5) | 平和 |
2015年09月28日
シリアでアサド政権軍が市街地でナパーム弾を大量使用し問題になっています。内戦初期の頃にはテルミット焼夷弾を大規模に使用して使い尽くし、今は使用されていなかったのですが、今度は代わりにナパーム弾が使われ始めました。




攻撃後に不発弾が回収され、内部にゼリー状の物質が確認されています。火を付けると激しく燃えだし、ナパームであることが確定しました。ナパーム弾を含む攻撃用に設計された焼夷兵器は、特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の付属議定書3で国際的に使用が制限され、市街地での使用は禁止対象となっています。ただしシリアはこの条約に参加していません。

関連記事:シリア軍は白燐弾を使用せず、テルミット焼夷弾を使用(2012年12月16日)
22時10分 | 固定リンク | Comment (9) | 平和 |
2015年08月01日
7月31日、アメリカ海兵隊は新型ステルス垂直離着陸戦闘機F-35Bライトニング2の初期作戦能力(IOC)取得宣言を行い、実戦配備されました。アリゾナ州ユマ海兵航空基地の第121海兵戦闘攻撃飛行隊(VMFA-121)がアメリカ軍最初のF-35実戦配備部隊となりました。日本の山口県岩国海兵隊航空基地には2017年1月に展開する予定です。

U.S. Marines Corps declares the F-35B operational > The Official United States Marine Corps Public Website


F-35B: The Road to U.S. Marine Corps IOC

アメリカ海兵隊のF-35Bは空軍型のF-35Aより先に実戦配備されることになります。F-35Bのソフトウェアはまだブロック2B/ブロック3Iと呼ばれる未完成な状態で機関砲や短距離空対空ミサイルは使えず、中距離空対空ミサイルと対地誘導爆弾(GPS誘導爆弾、レーザー誘導爆弾)しか使用できません。それでも従来機のAV-8Bハリアー垂直離着陸戦闘機よりも優秀な戦闘能力を有すると評価され、実戦配備が急がれました。今後ソフトウェアはブロック3Fへ更新されて完全な戦闘能力を付与されることになります。その後もF-35用ソフトウェアは二年に一度のペースで新しいものが開発され更新され続ける予定です。

開発が難航したF-35戦闘機の中でも特にF-35Bは開発が危ぶまれていた時期がありましたが、この時期を脱して以降はむしろ三形態(空軍型、海兵隊型、海軍型)のなかでは最も早く開発が進み、一番先に実戦配備される運びとなりました。
03時06分 | 固定リンク | Comment (133) | 軍事 |
2015年07月18日
7月10日、中国広東省の湛江海軍基地で半潜没式重量物運搬船(Flo-Flo船)が中国海軍南海艦隊に就役しました。アメリカ海軍のMLP(機動揚陸プラットフォーム)「モントフォード・ポイント」型と同じような能力を有し、遠隔地に重量物を運ぶだけでなく、揚陸作戦で港湾を確保していない段階からでも民間輸送船の荷物を陸地に揚げることが可能になります。


China's PLAN MLP Mobile Landing Platform Donghaidao 868 中国海军

「東海島」は通常の揚陸艦には搭載できない大きさのウクライナ製ポモルニク型(ズーブル型)エアクッション揚陸艇を遠隔地に運ぶことが可能という点も中国海軍にとっては大きな利点であり、動画でその様子を見る事が出来ます。


【関連記事】
揚陸作戦での民間輸送船の活用と機動揚陸プラットフォーム(MLP):(2013年01月12日)
リムパック2014に参加した機動揚陸プラットフォーム:(2014年08月02日)
機動揚陸プラットフォーム・MLPの揚陸訓練(動画):(2014年11月13日)
21時39分 | 固定リンク | Comment (62) | 軍事 |