民主党を批判する理由として「安全保障政策」を掲げる人に対して、そんなことは心配要らない、むしろ民主党政権になれば安全保障政策はより前進する、と解説する人が居ます。
民主党政権だと安全保障政策が進展するというパラドックス | 政局LIVEアナリティクス 上久保誠人「マニフェスト選挙」に踊らされる民主党の愚(前編) - かみぽこぽこ。政権を担う立場になれば安全保障政策は現実的なものに転換せざるを得ず、事実、民主党は以前からの主張を変えて来ています。それは確かにそうです。過去の事例を見れば日本でも海外でも、左派政党がいざ政権に参加したら、以前の右派政権よりも前進した安全保障政策を取るケースが非常に多い事は確かです。
しかし実はこの点について私は最初から問題視していません。なにしろ民主党は一部の安全保障政策では、主張の転換前から自民党よりも戦闘的な案(陸自アフガンISAF参加)を出しているケースすらあります。むしろ「外交面での安全保障政策」では、民主党は自民党よりも自衛隊を危険に晒す可能性を批判していたほどです。
(2007/10/20)
海での貢献で済むなら陸に派遣する必要は無い私が民主党の安全保障政策を批判していた最大の理由は、外交面ではなく内政面、それも憲法9条や集団的自衛権とかそういうものではなく、もっと直接的なもの、つまり「防衛予算」の金額そのものを、民主党が大幅な削減をするのではないかという懸念です。過去に民主党は「防衛予算5000億円削減」を掲げています。その上に過去に民主党は「機甲師団の解体」を主張しており、それを実行してくるのではないかという懸念です。最大の不安は予算であり、次の不安は機甲戦力の存続に関するものです。この点について政治評論家や政治系ブロガーに不安をぶつけて見ても、恐らく有効な回答は返って来ません。彼らの分析能力の埒外にある話だからです。
(2007/09/26)
民主党の国防政策と長島昭久議員を評価しない理由 (2009/07/16)
民主党鳩山代表が過去の「機甲師団廃止」の公約を匂わせる発言なお民主党の掲げた防衛予算案の推移は以下の通りです。
【菅直人】2004年民主党政府対抗予算案防衛費
「1000億円削減」【岡田克也】2005年民主党政府対抗予算案防衛費
「5000億円削減」【前原誠司】2006年民主党政府対抗予算案
「金額を提示せず」【小沢一郎】2007年民主党政府対抗予算案「そもそも作成せず」
2004年の時も民主党は当初は防衛予算5000億円削減を掲げていましたが、党内の抵抗に遭い1000億円削減に落ち着いています。ところが2005年では何の抵抗も無く5000億円削減となっています。この時の民主党の党首は岡田克也です。なお同氏は今年の5月にも防衛予算の削減に言及しています。
岡田克也幹事長が防衛費と私学助成の削減に言及: たむたむの自民党VS民主党岡田克也幹事長の過去の行動、最近の言動から見ても、この人が今、民主党の代表ではないという事実はせめてもの救いです。この人が民主党の代表であった場合、かなり高い確率で防衛予算の大幅な削減が実行されていたでしょう。5000億円削減も有り得たかもしれません。現在の民主党の鳩山-小沢ラインならば、幾らなんでも5000億円削減と言う無茶な削減幅は実行しないでしょう。しかし1000億円程度の削減を実行してくる可能性は残ります。
何故ならば民主党の掲げる政策はどれも金が掛かることばかりなのに、財源がまるで見当たらないからです。無駄な部分を省いて捻り出すと言っていますが、そんなものが何兆円と見付かる筈も無く、必要な部分もカットせざるを得なくなります。既に民主党の一部の福祉政策は実質増税となっており、防衛予算にも手を付けてくる事は簡単に予想できます。
朝日新聞と東京大学の共同調査(2009年8月23日)
減らしたほうがよいという意見が多かったのは、自民候補は国際協力(21%)、公共事業(17%)、防衛(7%)の順。ただこの3分野でも8〜9割は削減を求めず、削減分野をひとつも選ばなかった候補が64%に及んだ。予算削減に消極的な姿勢は鮮明だ。
民主候補は72%が公共事業を選び、防衛(29%)、国際協力(19%)が続いた。公共事業と防衛で削減に前向きなのが、自民との違いといえそうだ。
公共事業減額を求める声は民主のほか、みんな(92%)、共産(91%)、社民(76%)で強かった。防衛の削減論が強いのは共産(100%)、社民(同)、公明(51%)。国民は40%が国際協力の減額を唱えた。
現状では民主党が政権に就いた場合、防衛予算を大幅に削減してくる懸念が強いです。自民党も過去7年、防衛予算を削減し続けてきました。微減をずっと続けていたわけですが、周辺国の大幅な軍拡競争、いや周辺どころかアジア全体の大軍拡が始まった事を受けて、軍縮傾向を転換しようと方針を固めていた矢先でした。果たして民主党は地域の軍事バランスを無視して大幅な軍縮を行ってしまうのでしょうか。その可能性は高いと言わざるを得ません。
民主党の直嶋正行ネクスト防衛大臣は、「民主党は防衛政策について何も決まっていない」と言っているようです。また8月5日の朝日新聞記事では、以下の様な民主党の方針が語られていました。

鳩山氏は政権交代後にオバマ米大統領と信頼関係を築くことを優先する考え。安保政策の各論に踏み込めるのは来年夏の参院選単独過半数を確保してから、というのが党内の共通認識だ。年末の防衛計画大綱見直しも「先送りすればいい」(政調幹部)といった声が早くも出ている。
社民党を切り捨てるまでの1年間、安全保障政策の制定は棚上げする目論見だそうです。1年後の参院選で単独過半数を得たら社民党との連立は解消し、民主党の自由な安全保障政策を打ち立てるそうですが・・・その為に1年間も安全保障政策を空白なまま放っておく? 防衛大綱も放置? 呆れてモノが言えないです。只この懸念は、総選挙で民主党が大勝すれば心配する必要が無くなります。
衆院選:民主320議席超す勢い 本社世論調査 - 毎日新聞
民主党は衆院選後、社民、国民新両党と連立政権を組む方針を示しているが、衆院の3分の2(320議席)以上を占める大勝となれば、提出法案が参院で否決されても単独で再議決が可能となる。
民主党が衆議院で3分の2を占めれば、社民党の影響力を大幅に落とす事が出来るので、連立政権を組んだ場合でも民主党は踏み込んだ安全保障政策を取る事が出来ます。いざとなれば再議決をチラつかせれば社民党は何も抵抗できなくなります。ただしこれは1年後の参院選で自公が勝利して単独過半数を奪い返したとしても、民主党の政権運営に大きな支障を来たさないということでもあります。
それでは最後に、各国で左派政権が誕生した際に安全保障政策がどうなったかを紹介しておきます。
○イギリス労働党政権・・・イラク戦争、アフガニスタン戦争に参加。
○ドイツ社会民主党政権・・・単独政権時代に安全保障政策の大転換を決断。
独軍改編へ、介入・平和維持・後方支援の新3軍に(2004/1/17/ 読売新聞)
第二次大戦後長らく、国外派兵に厳しい足かせをはめてきたドイツ軍が、全世界への展開にむけて名実とも生まれ変わることになった。全軍(現在28万5000人)を世界各地の紛争や危機に即応できる「介入軍」、平和維持を主任務とする「安定化軍」、および両軍の後方支援などを担う「支援軍」の3軍に新編成する方針を明らかにしたからだ。
第二次大戦の反省から、ドイツは1990年代半ばまで、派兵を北大西洋条約機構(NATO)域内に限定してきたが、今回の新編成で「戦後」と完全に決別することになる。
シュトルック国防相は昨年5月、ドイツ軍の主任務を「専守防衛」から「国際紛争への対処」に切り替える方針を示し、今月13日、その新編成を発表した。
○スペイン社会労働党政権・・・イラクからの撤退を実行するも、代わりにイージス艦をペルシャ湾に派遣。そしてトマホーク巡航ミサイルの購入をそのまま実行。
(2006/01/02)
スペイン海軍のイージス艦がペルシャ湾で米艦隊と合流 ●政府、トマホーク購入へ【スペイン マドリッド 2007年5月14日】
スペインは、アメリカ合衆国、イギリスに次いで世界3番目にトマホークミサイル保有国となる。政府は、米海軍を仲介に、24基のトマホークミサイルを米国Raytheon社から7200万ユーロで購入予定。トマホークは1,600キロ先の標的を10メートルの誤差で狙えるミサイルで、湾岸戦争やコソボ紛争、アフガニスタン、イラク戦争で米軍により使用された。スペイン軍では、2008年から2012年の間にフリゲート艦F-100及び潜水艦S-80に配備する予定。
F-100級フリゲート=アルバロ・デ・バサン級イージス艦
S-80級潜水艦=スコルペン級潜水艦
○イタリア民主党(ルニオーネ)政権・・・イラクからの撤退(ただしこの方針は右派の前政権が決めていたことだったので総選挙の争点にはなっていない)、アフガニスタン派遣継続、ヴィチェンツァ米軍基地拡張。
プローディ首相が米軍基地拡張に賛成:La STAMPA News Clips
プローディ首相が、ヴィチェンツァ(ヴェネト州)の米軍基地拡張を認める意向を示した。この基地はエーデレキャンプと呼ばれ、Setaf(南欧機動部隊)の司令部が置かれている。今回の拡張では1,800人の兵士を増員し、規模を倍にしたい考え。関係者と合わせて1万2,000人が生活することになる。ベルルスコーニ前政権は既に同意の意向を示していたが、現プローディ政権ではPrc(共産主義再建党)、Pdci(イタリア共産主義者党)、Verdi(緑の党)などの政党を始めとして反対の声が多かっただけに、この決定を受け、中道左派内には亀裂が入り、中道右派とアメリカは大満足しているようだ。
○オーストラリア労働党政権・・・イラク撤退、防衛予算拡大、ミサイル防衛システム導入の継続、潜水艦の倍増(6隻→12隻)、多目的空母の建造継続。
(2009/05/08)
東南アジアに拡散する潜水艦 ラッド首相は家族ぐるみで親中国派ですが、その政権は中国の軍拡が原因による地域全体の軍拡競争を指摘、対抗する為にオーストラリアも軍拡を行う事を表明。なお今年のオーストラリア財政は戦後最大の赤字を記録しそうな勢いであるにも拘らずに、です。
さて、日本の民主党がオーストラリア労働党政権のような決断を降してくれるでしょうか・・・望みは薄いのですが、ただ日本の民主党はミサイル防衛システムの導入には終始一貫して賛成の立場にあり、その点については心配が要りません。ただし、鳩山由紀夫党首は過去にレーザー兵器によるミサイル防衛システムの開発を主張しており、何か技術的に過度な期待を掛けている恐れがあります。
今年の年末にアメリカでエアボーンレーザーの実地迎撃試験が初めて行われます。これが成功を収め、レーザーで破壊される弾道ミサイルの映像が報道された場合、鳩山党首の勘違いが更に進化してしまう事を心配してしまいます。